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明細書 :遺伝子導入剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5092123号 (P5092123)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月5日(2012.12.5)
発明の名称または考案の名称 遺伝子導入剤
国際特許分類 C08G  69/34        (2006.01)
A61K  47/40        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C08G 69/34
A61K 47/40
A61K 48/00
A61P 43/00 111
A61P 43/00 105
請求項の数または発明の数 5
全頁数 27
出願番号 特願2007-505934 (P2007-505934)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
国際出願番号 PCT/JP2006/303669
国際公開番号 WO2006/093108
国際公開日 平成18年9月8日(2006.9.8)
優先権出願番号 2005052650
優先日 平成17年2月28日(2005.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】有馬 英俊
【氏名】上釜 兼人
【氏名】平山 文俊
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】岩田 行剛
参考文献・文献 特開2001-103969(JP,A)
特開2003-231748(JP,A)
特開平11-290073(JP,A)
特開2004-026866(JP,A)
特開平07-313191(JP,A)
Kaneto Uekama,Design and Evaluation of Cyclodextrin-Based Drug Formukation,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,2004年,52,900-915
調査した分野 C08G 69/34
A61K 47/40
A61K 48/00
A61P 43/00
特許請求の範囲 【請求項1】
α-シクロデキストリンとジェネレーション3のデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されている上記結合体からなる遺伝子導入剤。
【請求項2】
糖がマンノース又はガラクトースである、請求項に記載の遺伝子導入剤。
【請求項3】
導入すべき遺伝子と、α-シクロデキストリンとジェネレーション3のデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されている上記結合体とを細胞ともにインキュベーションすることを含む、細胞に遺伝子を導入する方法。
【請求項4】
糖がマンノース又はガラクトースである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
血清の存在下で細胞に遺伝子を導入する、請求項3又は4に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、糖で修飾したシクロデキストリン・デンドリマー結合体、該結合体からなる遺伝子導入剤、及び該結合体を用いて細胞に遺伝子を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の疾病の原因が遺伝子レベルで明らかにされつつあり、遺伝子に欠陥のある細胞に外部から遺伝子を導入することによって疾病を治療しようとする遺伝子治療に関する臨床研究が活発に行われている。しかしその一方で、かかる遺伝子治療の治療実績は十分とは言えないのが現状である。この原因の一つとして遺伝子導入効率の低さが挙げられ、その改善を目的として遺伝子導入剤の改良が試みられている。
【0003】
従来の遺伝子治療で用いられているベクターの多くはウイルスベクターである。しかし、ウイルスベクターは、ベクターの中から増殖能力があるウイルスを完全に除外できる保証が得られないこと、さらに導入遺伝子を含むウイルスのゲノムが染色体に組み込まれる際に他の遺伝子を不活性化したり活性化したりする可能性を有するといった欠点が指摘されている。一方、非ウイルス性ベクターの開発も行われ、カチオニックリポソーム、カチオニックリピッド、カチオニックペプチドなどのいわゆるカチオニックキャリアーに関する報告が数多くなされている。しかしながら、現在市販されている遺伝子導入剤の多くは、血清の存在により、その遺伝子導入効率が著しく低下することが知られている。
【0004】
また、特開2001-103969号公報には、シクロデキストリンとデンドリマーとの結合体であって、前記シクロデキストリンがα、β又はγシクロデキストリンであり、前記デンドリマーがポリアミドアミン型であることを特徴とするシクロデキストリン・デンドリマー結合体を遺伝子導入ベクターとして使用できることが記載されている。しかしながら、特開2001-103969号公報に記載の遺伝子導入ベクターを用いて遺伝子導入を行った場合も、血清が培地中に存在すると遺伝子導入効率が低下するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、血清の存在下においても高い効率で遺伝子導入を行うことができる遺伝子導入剤を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シクロデキストリンとジェネレーションが3であるデンドリマー(G3)との結合体をさらに糖で修飾したものを用いて遺伝子導入を行うことによって、血清の存在下においても高い効率で遺伝子導入を行えることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、シクロデキストリンとジェネレーション3のデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されている上記結合体が提供される。
【0008】
本発明の別の側面によれば、シクロデキストリンとジェネレーション3のデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されている上記結合体からなる遺伝子導入剤が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の側面によれば、導入すべき遺伝子と、シクロデキストリンとジェネレーション3のデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されている上記結合体とを細胞とともにインキュベーションすることを含む、細胞に遺伝子を導入する方法が提供される。
【0010】
好ましくは、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリンである。
好ましくは、糖はマンノース又はガラクトースである。
好ましくは、本発明の遺伝子導入方法では、血清の存在下で細胞に遺伝子を導入する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)シクロデキストリン・デンドリマー結合体
本発明の結合体は、シクロデキストリンとジェネレーションが3であるデンドリマー(G3)との結合体であって、さらに糖で修飾されていることを特徴とする。
本発明の結合体の構造の一例を、図1に例示する。シクロデキストリン・デンドリマー結合体は、デンドリマーとシクロデキストリンを溶媒中で加熱・混合することにより容易に製造することができる。
【0012】
(シクロデキストリン)
シクロデキストリン・デンドリマー結合体を構成するシクロデキストリンは、α、β、またはγシクロデキストリンである。これらα、β、またはγシクロデキストリンは、化学修飾型または非修飾型のシクロデキストリンであることもできる。これらα、β、またはγシクロデキストリンは市販品を容易に入手できる。本発明ではこれらのうちα-シクロデキストリンを用いることがが、その導入剤としての効果が最も優れているため、好ましい。
【0013】
シクロデキストリンはその水酸基の一部もしくは全部がアセチル化されていてもよく、またはグルコース、マンノース、サッカロース等の糖で修飾されていてもよい。これらの修飾剤と、シクロデキストリンとの反応は、両者を例えば水溶液にし、加熱・攪拌することにより製造することができる。導入剤として用いる場合は、変性しない方が導入効率が高いため好ましい。
【0014】
(デンドリマー)
本発明で用いられるシクロデキストリン・デンドリマー結合体のひとつの構成成分であるデンドリマー (Dendrimer)は、アンモニアあるいはエチレンジアミンをコア分子とし、その分子にマイケル付加反応でアクリル酸メチルおよびエチレンジアミンを付加し、この反応を繰り返すこと (Generation) により得られる高度に枝分かれした樹枝状構造を特徴とし、その末端に多数の一級アミノ基を有した新しいタイプの合成ポリマーである。本発明で用いるデンドリマーとしては、ポリアミドアミン型であることが好ましい。
【0015】
ポリアミドアミン型デンドリマーは、アンモニアにアクリル酸メチルとエチレンジアミンとを反応させて(アンモニア:アクリル酸メチル:エチレンジアミン=1:3:3(モル比))、ジェネレーション0(G0)と呼ばれる中心核を合成する。ジェネレーション0はアンモニアに由来する窒素の周りに、アクリル酸メチルとエチレンジアミンの縮合体(アミドアミン)が3つ結合した形を有する。ジェネレーション0(G0)のアミドアミンの末端にエチレンジアミンの一方のアミノ基が存在する。そこで、この中心核(ジェネレーション0(G0))にアクリル酸メチル:エチレンジアミン=3:3(モル比)を反応させることで、上記アミドアミンの末端のアミノ基に2つのアクリル酸メチルとエチレンジアミンの縮合体(アミドアミン)が結合する。このようにG0のアミノ基由来の窒素に2つのアクリル酸メチルとエチレンジアミンの縮合体(アミドアミン)が結合したものは、ジェネレーション1(G1)と呼ばれる。このようにして順次、アクリル酸メチルとエチレンジアミンの縮合体を結合させていくことで、ジェネレーション2、3、4、5、6(G2、G3、G4、G5、G6)が得られる。この状態を下記の反応スキームに示す。本発明では、ジェネレーションが3であるデンドリマーを使用する。
【0016】
【化1】
JP0005092123B2_000002t.gif

【0017】
ポリアミドアミン型デンドリマーは、市販されており、市販品を容易に入手できる。本発明の結合体に用いるデンドリマーは、G3に属するものであれば、特に限定されない。
【0018】
デンドリマー・シクロデキストリン結合体は、デンドリマーとシクロデキストリンとを混合し、水性媒体の存在下で加熱攪拌するというわずか2段階の反応で合成できる。
【0019】
本発明で用いるシクロデキストリン・デンドリマー結合体におけるシクロデキストリンとデンドリマーとのモル比は通常1.1~5:1、好ましくは1.1~4:1程度であることが好ましい。
【0020】
シクロデキストリン・デンドリマー結合体は、後述の実施例で示すように、トシル化シクロデキストリンとデンドリマーとを加温条件下で数時間反応させることで合成できる。トシル化(トルエンスルホニル化)シクロデキストリンは、p-トルエンスルホニルクロライドとシクロデキストリンとをピリジン中で反応させることで得られる。
【0021】
本発明の結合体は、上記のようにして得られたシクロデキストリン・デンドリマー結合体をさらに糖で修飾することによって製造することができる。修飾のために使用する糖の種類は特に限定されず、単糖類、二糖類、又はオリゴ糖類でもよいが、好ましくは単糖類又は二糖類であり、さらに好ましくは単糖類である。糖の具体例としては、マンノース、ガラクトース、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、フコース、マルトースなどが挙げられ、特に好ましくはマンノース、又はガラクトースである。
【0022】
シクロデキストリン・デンドリマー結合体を例えば、マンノースで修飾するためには、後述する実施例で示すように、シクロデキストリン・デンドリマー結合体を含む溶液に、α-D-Mannopyranosylphenyl isothiocyanate溶液を添加し、室温で反応させればよい。ガラクトースで修飾する場合には、α-D-Mannopyranosylphenyl isothiocyanateの代わりに、対応する試薬を用いればよい。
【0023】
(2)遺伝子導入剤及び遺伝子導入方法
上記した、シクロデキストリンとジェネレーションが3であるデンドリマー(G3)から成り、さらに糖で修飾されている本発明の結合体は、細胞に遺伝子を効率的に導入するための遺伝子導入剤として用いることができる。
【0024】
本発明による遺伝子の導入方法は、導入すべき遺伝子と本発明の結合体とを細胞とともにインキュベーションすることによって行うことができる。導入すべき遺伝子には制限はない。例えば、遺伝子治療に有用な遺伝子や、植物及び動物の品種改良に有用な遺伝子等を挙げることができる。遺伝子導入の条件は、例えば、遺伝子を導入すべき細胞を含有する培地0.5ml(細胞量約2×105個)に、導入すべき遺伝子を含有する溶液と本発明の結合体を含有する溶液とを添加する。導入すべき遺伝子を含有する溶液は、例えば、遺伝子量が0.1~10μg/μlとなるように添加し、シクロデキストリン・デンドリマー結合体を含有する溶液は、例えば、シクロデキストリン・デンドリマー結合体が約0.8nM~75μMとなるように添加することができる。添加後、所定の時間だけインキュベートすることにより、細胞に上記遺伝子をトランスフェクションすることができる。遺伝子を導入すべき細胞を含有する培地の種類や量は、使用する細胞に応じて適宜決定することができ、また、遺伝子及びシクロデキストリン・デンドリマー結合体の添加量やインキュベーション時間も適宜変化させることができる。特に、本発明の遺伝子導入剤を用いて遺伝子導入を行う場合には、培地に血清が含まれている状態でも、高い遺伝子導入効率を維持して遺伝子を導入することができる。これは、従来の遺伝子導入剤の問題を解消したものであり、特に実用上の有用性が高い。
以下に実施例を挙げて本発明につき更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら制約されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1:糖で修飾したデンドリマー/シクロデキストリン結合体の調製
(1)トシル化α-CyD の調製
ベンゼンで水分を共沸除去した乾燥α-CyD 8 g を無水ピリジン 500 mL に溶解後、5℃ 以下に冷却、攪拌しながら p-トルエンスルホニルクロライド 6 g を加え、室温で 2 時間攪拌した。 反応溶液に水 (約 100 mL) を注ぎ込み反応を停止させた後、減圧濃縮し、アセトン 100 mL を添加して析出した沈殿物を濾取した。沈殿物は吸着クロマトグラフィーを用いて分離、精製した。
(多孔質ポリスチレン樹脂 (DIAION(商標) HP-20、MITSUBISHI CHEMICAL); 溶離液:メタノール/水=0/100 v/v → 100/0 v/v、収率29%)。FAB-MASS [M-H]- m/z 1125。
【0026】
(2)α-CDE 結合体の調製
デンドリマー (G3) (ALDRICH CHEMICAL) 0.5 mL を試験管に加えて減圧下メタノールを完全に留去した。 その後、トシル化 α-CyD 60 mg および DMSO 0.5 mL を加えて軽く混和し、試験管内を窒素置換後、油浴中、60℃ で 24 時間攪拌した。反応物をTOSOH TskGel HW-40S (5.3 cm2 x 70 cm、溶出液: 0.1 M Ammonium hydroxycarbonate) を用いてゲルろ過した。α-CDE 結合体を含むフラクションを濃縮後、濃縮液を 0.5 mL の水に再溶解し、メタノール 3 mL を加えて十分に白濁するまで混和した。 沈殿物を含む溶液を 1,500 rpm、15 分間遠心分離後、上清のメタノールを取り除き、再びメタノール3 mL を添加してよく混和した。 同様に遠心分離し、上清を取り除いた後、残渣中のメタノールを試験管エバポレーターにより完全に留去し、α-CDE 結合体を得た。
【0027】
なお、比較用に、上記のデンドリマー(G3)の代わりに、デンドリマー(G2)を用いて同様にα-CDE 結合体を作製した。
【0028】
(3)TRITC-α-CDE 結合体 (G3) の調製
α-CDE 結合体 (G3) 10 mg を溶解した 0.9% (w/v) NaCl 溶液 200μL と TRITC 1.36 mg を溶解した DMSO 200 μL を混合し、室温、遮光条件下、24 時間反応させた。 その後、透析およびアルコール沈殿により精製した。
【0029】
(4)Man-α-CDE 結合体の調製
α-CDE 結合体 70 mg を 0.15 M NaCl (pH 9.0) 1 mL に溶解後、DMSO に溶解した25 mg/mL の α-D-Mannopyranosylphenyl isothiocyanate 溶液 1 mL を添加し、室温で 24 時間攪拌した。 反応物をTOSOH TskGel HW-40S (5.3 cm2 x 70 cm、溶出バッファー: 0.1 M Ammonium hydroxycarbonate) を用いてゲルろ過した。 Man-α-CDE 結合体を含むフラクションを減圧下濃縮後、濃縮液を 0.5 mL の水に再溶解し、メタノール 3 mL を加え十分に白濁するまで混和した。 沈殿物を含む溶液を 1,500 rpm、15 分間遠心分離後、上清のメタノールを取り除き、再びメタノール3 mL を添加してよく混和した。 同様に遠心分離し、上清を取り除いた後、残渣中のメタノールを試験管エバポレーターにより完全に留去し、Man-α-CDE 結合体を得た。
【0030】
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) : 収率 65% ; 1H-NMR (500MHz, D2O)δ(from TMS) 7.05-7.10 (phenyl), 5.43-5.51 (mannose), 4.94 (H1, α-CyD), 3.94-3.61 (H3, H5, H6, α-CyD, mannose), 3.60-3.33 (H2, H4, α-CyD, mannose), 3.27-3.13 (dendrimer methylene), 3.05-2.81 (dendrimer methylene), 2.72-2.51 (dendrimer methylene), 2.36-2.31 (dendrimer methylene).
【0031】
(5)TRITC-Man-α-CDE 結合体 (G3) の調製
Man-α-CDE 結合体 (G3) 10 mg を溶解した 0.9% (w/v) NaCl 溶液 200μL と、TRITC 1 mg を溶解した DMSO 200μL を混合し、室温、遮光条件下、24 時間反応させた。 その後、透析およびアルコール沈殿により精製した。
【0032】
実施例2:遺伝子導入アッセイ
(1)細胞の培養
(A549細胞の培養)
ヒト肺上皮細胞癌由来の株化細胞であるA549細胞8×105個を10%FCS含有DMEM培地(590mg/L L-グルタミン、160mg/L NaHCO3、 1×105U/Lペニシリン、0.1g/Lストレプトマイシン)10mLに懸濁し、旭テクノグラス(株)製組織培養ディッシュ(100mm)に播種して、CO2インキュベーター中、37℃、5% CO2下で培養した。セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA法によりディッシュから剥離し、2000rpm 10分間遠心分離後、上清をすべて取り除き、得られたペレットを10%FCS含有DMEM培地に1×105個/mLの密度で分散した。この細胞懸濁液を24 well micro plate に2×105/500μLになるように播種し、6時間培養した細胞をトランスフェクション実験に用いた。
【0033】
(NR8383細胞の培養)
ラット肺胞マクロファージ由来の株化細胞であるNR8383細胞8×105個を10%FCS含有DMEM培地(590mg/L L-グルタミン、160mg/L NaHCO3、 1×105U/Lペニシリン、0.1g/Lストレプトマイシン)10mLに懸濁し、旭テクノグラス(株)製組織培養ディッシュ(100mm)に播種して、CO2インキュベーター中、37℃、5% CO2下で培養した。セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA法によりディッシュから剥離し、2000rpm 10分間遠心分離後、上清をすべて取り除き、得られたペレットを10%FCS含有DMEM培地に1×105個/mLの密度で分散した。この細胞懸濁液を24 well micro plate に2×105/500μLになるように播種し、6時間培養した細胞をトランスフェクション実験に用いた。
【0034】
(HepG2細胞の培養)
ヒト肝芽細胞癌由来の株化細胞であるHepG2細胞8×105個を10%FCS含有DMEM培地(590mg/L L-グルタミン、160mg/L NaHCO3、 1×105U/Lペニシリン、0.1g/Lストレプトマイシン)10mLに懸濁し、旭テクノグラス(株)製組織培養ディッシュ(100mm)に播種して、CO2インキュベーター中、37℃、5% CO2下で培養した。セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA法によりディッシュから剥離し、2000rpm 10分間遠心分離後、上清をすべて取り除き、得られたペレットを10%FCS含有DMEM培地に1×105個/mLの密度で分散した。この細胞懸濁液を24 well micro plate に2×105/500μLになるように播種し、6時間培養した細胞をトランスフェクション実験に用いた。
【0035】
(2)遺伝子の導入及びルシフェラーゼ活性の測定
2×105個/24ウエルの細胞を6時間前培養した。培地500μlで洗浄し、ウミホタルルシフェラーゼをコードするpRL-CMVとデンドリマー、pRL-CMVとα-CDE 結合体、又はpRL-CMVとMan-α-CDE 結合体(G3)を各電荷比に相当する量を添加し、全量400μlとした。この際、FCSを培地に加えた(終濃度10%)実験と加えない実験を行った。
【0036】
FCSを加えた実験では、FCSを加えた培地で24時間インキュベーションし、PBS(500μl)で2回洗浄し、溶解バッファー(500μl)を添加し、ルシフェラーゼ活性を測定した。FCSを加えない実験では、FCSなしの培地で1時間インキュベーションし、その後、FCSを添加してさらに24時間インキュベーションし、その後にPBS(500μl)で2回洗浄し、溶解バッファー(500μl)を添加し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0037】
ルシフェラーゼ活性の測定は以下の通り行った。細胞抽出液20μLをルミノメーター用試験管に採取し、これにLuciferase Assay Substrate(Promega)100μLを添加し、30秒後にルミノメ一ター(Lumat:LB9506)で10秒間の発光量を測定した。ここで得られた値と、タンパク濃度をBCA Protein Assay Kit(PIERCE)により測定した結果から、単位タンパク量あたりのRelative Light Unit(RLU)を算出した。
【0038】
上記実験の結果を図2~図7に示す。
図2は、A549細胞におけるMan-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率に及ぼすチャージ比 (Carrier/pDNA) の影響を示す。デンドリマー(G3)/pDNAの投与量比は50である。培地には10%FCSを添加した。各値は、3~6回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.05(デンドリマーと比較して), ** p<0.01(デンドリマーと比較して)
【0039】
図3は、A549細胞におけるMan-α-CDE 結合体 (G2又はG3)/pDNA の複合体の遺伝子導入効率を示す。Man-α-CDE 結合体)/pDNAの電荷比は50である。培地には10%FCSを添加した。各値は、3回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.01(Man-α-CDE 結合体(G2)と比較して)
【0040】
図4は、A549細胞における血清存在下におけるデンドリマー(G3)、α-CDE 結合体(G3)、及びMan-α-CDE 結合体 (G3、DSM10)とpDNA との複合体の遺伝子導入効率を示す。キャリア/pDNAの電荷比は50である。各値は、3~7回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.05(α-CDE と比較して)
【0041】
図5は、A549細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。白のグラフは血清なしを示し、黒のグラフは血清ありを示す。キャリア/pDNAの電荷比は50である。各値は、4回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.05(血清なしと比較して)
【0042】
図6は、NR8383細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。白のグラフは血清なしを示し、黒のグラフは血清ありを示す。キャリア/pDNAの電荷比は50である。各値は、4回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.05(血清なしと比較して)
【0043】
図7は、HepG2細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。白のグラフは血清なしを示し、黒のグラフは血清ありを示す。キャリア/pDNAの電荷比は50である。各値は、3回の実験の平均±標準誤差を示す。
* p<0.05(血清なしと比較して)
【0044】
図2~図7に示した結果から、本発明の遺伝子導入剤を用いることによって、血清存在下においても高い効率で遺伝子を細胞に導入できることが実証された。
【0045】
実施例3:
実施例3では、Man-α-CDE 結合体の諸性質についてさらに分析した。
(A)方法
(1)プラスミドの調製
pDNA の増幅: pRL-CMV luciferase DNA を導入した大腸菌株 JM109 を 100 μg/mL のアンピシリンを含む LB 培地 (BACTO TRYPTONE 10 g, BACTO YEAST 5 g, NaCl 5 g /1000 mL) 3 mL 中、37℃で一晩予備培養し、その 1 mL を新たな LB 培地 500 mL に加え、37℃で 24~48 時間培養した。
【0046】
pDNA の精製: QIAGEN 製 Plasmid Purification MAXI Kit を用いて行った。精製操作はマニュアルに準じて行い、精製後の DNA 濃度は、Tris-EDTA 溶液 (TE) に溶解して日立製作所 (株) 製 U-2000A 型分光光度計を用い、OD260 = 50μg DNA/mL として算出した。また、OD260/ OD280 の値から、タンパク質混入の有無を判定した。
【0047】
Alexa ラベル化 pDNA の調製: Molecular Probe 製 ULYSIS Alexa Fluor(登録商標)488 Nucleic Acid Labeling Kit を用いて行った。ラベル化の操作はマニュアルに準じて行い、未反応の Alexa488 はセファデックス G50 カラムにより分離した。
【0048】
(2)物性測定
NMR スペクトル測定:
1H-NMR スペクトルは、日本電子製 α-500 FT-NMR スペクトロメーターを用いて 25℃で測定した。溶媒は D2O を用い、各種サンプルの濃度は 10 mM とした。1H-NMR の化学シフトは、D2O のピークを用いて内部標準物質テトラメチルシラン (TMS) からの低磁場シフトとして表した。
【0049】
pDNA との相互作用:
HBSS に溶解した種々濃度の デンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) あるいはMan-α-CDE 結合体 (G3) 10 μL に、TE に溶解した pDNA 2μL (0.1μg/μL) を加え、10 秒間ボルテックス処理後、15 分間室温でインキュベートした。本反応液に重層用試薬 (60% (v/v) グリセロール、1 mM EDTA、0.004% (w/v) ブロモフェノールブルー、0.004% (w/v) キシレンシアノール) 2μL を添加し、泳動用緩衝液 (Tris-borate EDTA : TBE ; 45 mM Tris, 45 mM ホウ酸, 1 mM EDTA) で調製した 1% アガロースゲルを用い、100 V の定圧条件下で約 40 分間泳動した。泳動終了後、アガロースゲルを EtBr (100ng/mL) を含む TBE 溶液中で 30 分間振盪し染色した。 染色終了後、アトー製デンシトグラフによりゲルを撮影した。
【0050】
pDNA の酵素安定性に及ぼす各種キャリアの影響:
HBSS に溶解した種々濃度のデンドリマー (G3) 、α-CDE 結合体 (G3) あるいは Man-α-CDE 結合体 (G3) 5μL に、TE に溶解したpDNA 2μL (0.1μg/μL) を加え、10 秒間ボルテックス後、15 分間室温でインキュベートした。BSA (2 mg/mL) 1μL、反応バッファー (40 mM Tris-HCl, 10 mM NaCl, 10 mM CaCl2, 6 mM MgCl2, 2 mM DTT) 1μL、DNaseI(1 unit/μL) 1μL を添加し、37℃で2 時間インキュベートした。70℃で 10 分間インキュベート後、EDTA (0.5 M) 1μL、SDS (8% w/v) 10μL を加え、さらに 37℃で1 時間インキュベートした。 本反応液に重層用試薬 4μL を添加し、泳動用緩衝液で調製した 1%アガロースゲルを用い、100 V の定圧条件下で約 40 分間泳動した。泳動終了後、アガロースゲルを EtBr (100ng/mL) を含む TBE 溶液中で 30 分間振盪し染色した。染色終了後、上記デンシトグラフによりゲルを撮影した。
【0051】
各種キャリア/pDNA 複合体の粒子径:
HBSS 3 mL に 50 mg/mL のデンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) あるいは Man-α-CDE 結合体 (G3) をそれぞれ 5.24、7.36 および14.64μL (チャージ比50) と、TE に溶解した pDNA 8 μL (1μg/μL) を加え、10 秒間ボルテックス後、15 分間室温でインキュベートし、Beckman 製 Coulter N4 Plus により粒子径を測定した。
【0052】
各種キャリア/pDNA 複合体の ζ-電位: HBSS 3 mL に 50 mg/mL のデンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) あるいは Man-α-CDE 結合体 (G3) をそれぞれ 5.24、7.36 および14.64μL (チャージ比50) と、TE に溶解した pDNA 8μL (1μg/μL) を加え、10 秒間ボルテックス後、15 分間室温でインキュベートし、大塚電子 (株) 製 ELS-8000 により ζ-電位を測定した。
【0053】
pDNA のコンパクションに及ぼす各キャリアの影響:
HBSS 1 mL に pDNA 1μL (1μg/μL)、EtBr 1μL (1μg/μL) および種々のチャージ比に相当するデンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) あるいは Man-α-CDE 結合体 (G3) を加え、10 秒間ボルテックス後、15 分間室温でインキュベートし、蛍光分光光度計 (日立製、F-4500) により蛍光 (λex=510 nm, λemi=590 nm) を測定した。
(3)各種細胞の培養
NIH3T3 細胞の培養:
マウス繊維芽細胞由来の株化細胞である NIH3T3 細胞 8×105 個を 10% (v/v) FCS 含有 DMEM 培地 (L-グルタミン590 mg/L、NaHCO3 160 mg/L、ペニシリン 1×105 U/L、ストレプトマイシン 0.1 g/L) 10 mL に懸濁し、プラスチックディッシュ (100 mm) に播種して、37℃、5% CO2 濃度下で培養した。 セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA 法によりディッシュから剥離し、3,000 rpm で 3 分間遠心分離後、上清を取り除き、得られたペレットを 10% (v/v) FCS 含有 DMEM 培地に 1×105 個/mL の密度で分散した。この細胞懸濁液を 24 well plate に 2×105 個/well になるように播種し、6 時間培養した細胞をトランスフェクション実験および細胞傷害性の実験に用いた。
【0054】
HepG2 細胞の培養:
ヒト肝芽細胞癌由来の株化細胞である HepG2 細胞 8×105 個を 10% (v/v) FCS 含有 DMEM 培地 (L-グルタミン590 mg/L、NaHCO3 160 mg/L、ペニシリン 1×105 U/L、ストレプトマイシン 0.1 g/L) 10 mL に懸濁し、プラスチックディッシュ (100 mm) に播種して、37℃、5% CO2 濃度下で培養した。セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA 法によりディッシュから剥離し、3,000 rpm で 3 分間遠心分離後、上清を取り除き、得られたペレットを 10% (v/v) FCS 含有 DMEM 培地に 1×105 個/mL の密度で分散した。この細胞懸濁液を 24 well plate に 2×105 個/well になるように播種し、6 時間培養した細胞をトランスフェクション実験および細胞傷害性の実験に用いた。
【0055】
A549 細胞の培養:
ヒト肺上皮癌由来の株化細胞である A549 細胞8×105 個を 10% FCS 含有 DMEM 培地 (L-グルタミン590 mg/L、NaHCO3 160 mg/L、ペニシリン 1×105 U/L、ストレプトマイシン 0.1 g/L) 10 mL に懸濁し、プラスチックディッシュ (100 mm) に播種して、37℃、5% CO2 濃度下で培養した。 セミコンフルエントに達した細胞をトリプシン-EDTA 法によりディッシュから剥離し、3,000 rpm で 3 分間遠心分離後、上清を取り除き、得られたペレットを 10% FCS 含有 DMEM 培地に 1×105 個/mL の密度で分散した。この細胞懸濁液を 24 well plate に 2×105 個/well になるように播種し、6 時間培養した細胞をトランスフェクション実験および細胞傷害性の実験に用いた。
【0056】
NR8383 細胞の培養:
ラット肺胞マクロファージ由来の株化細胞である NR8383 細胞8×105 個を10% FCS 含有 F-12 培地 (L-グルタミン590 mg/L、NaHCO3 160 mg/L、ペニシリン 1×105 U/L、ストレプトマイシン 0.1 g/L) 10 mL に懸濁し、プラスチックディッシュ (100 mm) に播種して、37℃、5% CO2 濃度下で培養した。セミコンフルエントに達した細胞をセルスクレーパーによりディッシュから剥離し、3,000 rpm で 3 分間遠心分離後、上清を取り除き、得られたペレットを 15% FCS 含有 F-12 培地に 1×105 個/mL の密度で分散した。この細胞懸濁液を 24 well plate に 2×105 個/well になるように播種し、6 時間培養した細胞をトランスフェクション実験および細胞傷害性の実験に用いた。
【0057】
(4)培養細胞への細胞傷害性およびトランスフェクション
キャリア/pDNA 複合体調製:
1.5 mL エッペンドルフチューブに各種培地を添加し、TE に溶解した pDNA 2 μL (1 μg/μL) を添加した後、HBSS に溶解した各種濃度のキャリアを添加し、10 秒間ボルテックスを用いて攪拌後、15 分間室温でインキュベートし、キャリア/pDNA 複合体とした。
【0058】
細胞傷害性の検討:
WST-1 法により評価した。 細胞を 24 well plate に2×105 個/well になるように播種し、10% (v/v) FCS を含む培地で 6 時間培養した。細胞を無血清培地 500μLで 2 回洗浄した後、上記キャリア/pDNA (2μg) 複合体および 20%FCS 含有培地をそれぞれ 200μL 添加し (最終 FCS 濃度 10%)、37℃、5% CO2 濃度下で 24 時間インキュベートした。その後、HBSS 200μL で 2 回洗浄した後、HBSS 270μL および WST-1 試薬 30μL を添加してよく混和し、37℃、5% CO2 濃度下で 30 分間インキュベートした後、吸光度を測定した (BioRad Model 550 ; 測定波長 ; 450 nm、参照波長 ; 655 nm)。なお、細胞生存率は、キャリア非添加時を 100% として算出した。
【0059】
トランスフェクション:
細胞を 24 well plate に2×105 個/well になるように播種し、10% (v/v) FCS を含む培地で 6 時間培養した。細胞を無血清培地 500μL で 2 回洗浄後、キャリア/pDNA (2μg) 複合体を含む無血清の培地 200μL および 20%FCS 含有培地を200μL添加し (最終 FCS 濃度 10%)、37℃、5% CO2 濃度下で 24 時間インキュベートした。
【0060】
細胞抽出液の調製:
トランスフェクション終了後の各種細胞を PBS (-) 200μL で 2 回洗浄後、細胞溶解剤 500μL を添加し、15 分間室温でインキュベートし凍結融解を 2 回行い、10,000 rpm で 5 分間遠心分離しその上清を細胞抽出液とした。
【0061】
ルシフェラーゼ活性の測定:
細胞抽出液 20μL をルミノメーター用試験管 (Rohren Tubes、SARSTEDT) に採取し、これにルシフェリン、コエンザイム A、ATP などを含む基質液を 100 μL 添加し、ルミノメーター (Lumat : LB 9507、EG&G BERHTOLD) で 10 秒間の発光量を測定した。
【0062】
細胞抽出液中のタンパク質の定量:
Bio-Rad Protein Assay Kit によりタンパク質の定量を行った。細胞抽出液 10μL に Bio-Rad Protein Assay kit 溶液を 200μL 添加し、室温で 15 分間インキュベート後、450 nm における吸光度を測定した。細胞溶解剤で BSA を希釈したものを標準液に用いて検量線を作成し、上記ルシフェラーゼ活性およびタンパク質濃度より Relative Light Unit (RLU) を算出した。
【0063】
(5)各種糖処理および血清非存在時のトランスフェクション
マンナン、デキストラン、マンノースおよびガラクトース処理:
細胞を 24 well plate に 2x105 個/well になるように播種し、10% (v/v) FCS を含む培地で 6 時間培養した。細胞を無血清培地 500μL で 2 回洗浄後、キャリア/pDNA (2μg) 複合体を含む無血清の培地 200μL およびマンナン、デキストラン、マンノースおよびガラクトース (それぞれ 0.5 mg/mL) を含む 20% FCS 含有培地を 200μL 添加し (最終 FCS 濃度 10%)、37℃、5% CO2 濃度下で 24 時間インキュベートした。
【0064】
血清非存在時のトランスフェクション:
細胞を 24 well plate に 2×105 個/well になるように播種し、10% (v/v) FCS を含む培地で 6 時間培養した。 細胞を無血清培地 500μL で 2 回洗浄後、キャリア/pDNA (2μg) 複合体を含む無血清の培地 400μLを添加し、1 時間インキュベート後、終濃度 10%になるよう FCS を加え37℃、5%CO2 濃度下で 23 時間インキュベートした。
【0065】
(6)pDNA およびキャリアの細胞内取り込み
Alexa ラベル化 pDNA と TRITC ラベル化キャリアを用いてマンナン (0.5 mg/mL) あるいはデキストラン (0.5 mg/mL) 存在または非存在下、トランスフェクションを行った。トランスフェクション 24 時間後、細胞を PBS (-) 500μL で 2 回洗浄、1 mL の PBS で懸濁し、Becton Dickinson 製 FACSCaliburTM によりAlexa および TRITC の蛍光強度を測定した。
【0066】
(7)共焦点レーザー走査顕微鏡による観察
キャリア/pDNA 複合体の核移行性の観察:
TRITC ラベル化キャリア/Alexa ラベル化 pDNA (2μg) との複合体を含む無血清の培地 200 μL および 20%FCS 含有培地 200μL を細胞に添加し (最終 FCS 濃度10%)、37℃でインキュベートした。インキュベーション 24 時間後、HBSS 500μL で 2 回洗浄し、オリンパス 製 FLUOVIEW FV300BX (アルゴンイオンレーザー) により蛍光を観察した。
【0067】
マンナンおよびデキストラン/HVJ-E vector 処理:
マンナンおよびデキストランの HVJ-E vector への封入は、 HVJ-E vector 調製キットプロトコールに準じて行い、封入率はそれぞれ約16%および 18%であった。細胞を glass based dish (35 mm) に 2×105 個/dish になるように播種し、10% (v/v) FCS を含む培地で 5.5 時間培養した。上清を取り除き、無血清培地 500μL で2回洗浄後、HVJ-E vector、HVJ-E vector/マンナン (15 mg/mL) または HVJ-E vector/デキストラン (15 mg/mL) を含む培地 500μL を添加し、37℃ で 0.5 時間培養した。細胞を無血清培地 500μL で 2 回洗浄した後、キャリア/pDNA (2μg) 複合体を含む無血清の培地 200μL および 20%FCS 含有培地を 200μL 添加し (最終 FCS 濃度 10%)、37℃、5%CO2 濃度下で 24 時間インキュベートした。
【0068】
(8)血液生化学的パラメータの算出
4 週齢の BALB/c 雄性マウス (体重約 20 g) をエーテル麻酔下、Man-α-CDE 結合体 (G3) と pDNA (20μg) との複合体 (チャージ比 20) を含む 5%マンニトール懸濁液 500μL を尾静脈より約 30 秒間かけて投与した。投与 12 時間後エーテル麻酔下、腹部大動脈より採血し、血清 200 μL を分取し定量時まで凍結保存した。各種検査値の測定は、血液生化学検査自動測定装置を用いて行った。
【0069】
(B)結果
(1)Renilla luciferase による遺伝子導入効率の検討
デンドリマーのジェネレーションが遺伝子導入効率に与える影響を検討するため、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) と Man-α-CDE 結合体 (G2, DSM 3.3) の遺伝子導入効率を比較した。
【0070】
結果を図8に示す。図8では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。培地には10%FCSを添加した。各値は、4~6回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(Man-α-CDE結合体(G2, DSM3.3)と比較して)
【0071】
図8に示すように、A549 細胞においてチャージ比 (キャリア/pDNA) の増加に伴い、Man-α-CDE 結合体 (G2, DSM 3.3) および Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率は増大した。しかし、いずれのチャージ比においても Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) は Man-α-CDE 結合体 (G2, DSM 3.3) に比べて有意に高い遺伝子導入効率を示し、チャージ比 1 では約 4,000 倍、チャージ比 5~50 では約 1,000 倍、チャージ比 100~200 でも約 50~100 倍高い値を示した。
【0072】
図9は、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) と市販遺伝子導入試薬であるLipofectinTMの遺伝子導入効率の比較を示す。図9では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。培地には10%FCSを添加した。デンドリマー/pDNA、α-CDE結合体/pDNA、Man-α-CDE結合体/pDNA、及びLipofectinTM /pDNAのチャージ比は各々50、50、50及び1である。各値は、4~8回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(α-CDE結合体と比較して)、十字はp<0.05(LipofectinTMと比較して)
【0073】
A549 および NIH3T3 両細胞において、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) は LipofectinTMに比べて有意に高い遺伝子導入効率を示した。
【0074】
(2)Green fluorescence protein による遺伝子導入効率の検討
Green fluorescence protein (GFP) 遺伝子を用いて、A549 細胞へ導入後の GFP の蛍光強度を共焦点レーザー顕微鏡にて観察することにより、遺伝子の発現頻度を検討した。
【0075】
結果を図10に示す。図10では、pEGFPN1 DNAを用いた。細胞をキャリア/pDNA複合体とともに24時間インキュベートし、CLSMで観察した。培地には10%FCSを添加した。デンドリマー/pDNA、α-CDE結合体/pDNA、Man-α-CDE結合体/pDNA、及びLipofectinTM/pDNAのチャージ比は各々50、50、50及び1である。図10に示すように、Renilla luciferase による遺伝子導入効率の検討と同様に、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) において、他のキャリアに比べて強い GFP の発現が観察された。
【0076】
(3)Man-α-CDE 結合体 (G3) の細胞傷害性
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の細胞傷害性を WST-1 法により検討した。図11は、A549 細胞および NIH3T3 細胞における各キャリアの細胞傷害性を示す。図11では、細胞をキャリア/pDNAとともに24時間インキュベートした。細胞生存率をWST-1法で分析した。各値は、3~4回の実験の平均±標準誤差を示す。
【0077】
図11から明らかなように、デンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) および Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) はチャージ比 200 まで細胞傷害性を示さなかったが、LipofectinTMは低チャージ比においても高い細胞傷害性を示した。 これらの結果から、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) は in vitro において安全性に優れることが示された。
【0078】
(4)In vivo における血液生化学的パラメータの変化
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体をマウスに尾静脈投与した後の血液生化学的パラメータについて検討した。なお、血液生化学的パラメータは腎障害の指標としてクレアチニン (CRE) および Blood urea nitrogen (BUN)、肝障害の指標として Aspartate aminotransferase (AST) および Alanine aminotransferase (ALT)、細胞傷害の指標として Lactate dehydrogenase (LDH) を用い、チャージ比 20 (キャリア/pDNA)、pDNA 投与量 20μg/mouse の条件下で行った。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
JP0005092123B2_000003t.gif

【0080】
a)クレアチン、b)血中尿素窒素、c)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、d)アラニンアミノトランスフェラーゼ、e)乳酸デヒドロゲナーゼ
各値は、3~4回の実験の平均±標準誤差を示す。
【0081】
表1に示すように、CRE および BUN 値は、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 投与において、それぞれ0.05±0.02 mg/dL および 23.8±4.0 mg/dL であり、コントロールおよび 5%マンニトール (投与液) 投与群と同程度であったことから、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) 投与による腎障害は低いものと推察された。また、AST および ALT 値は、それぞれ 57.5 ± 3.9 U/L および 18.0 ± 2.3 U/L であり、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 投与による肝障害はほとんどないものと推察された。コントロールおよび 5% マンニトール投与群における LDH 値は、それぞれ 318 ± 59 U/L および 305 ± 11 U/L であったのに対して、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 投与では、527 ± 26 U/L と若干増大したが、統計学的な有意差は認められなかった。以上の結果から、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体は本実験条件下 in vivo においても安全性が高いものと考えられた。
【0082】
(5)Man-α-CDE 結合体 (G3) とプラスミド DNA との相互作用
(5-1)アガロースゲル電気泳動
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) と pDNA との相互作用について、それら複合体の正味の電荷を簡便に知ることができるアガロースゲル電気泳動法を用いて検討した。図12は、pDNA 0.2 μg にチャージ比 (キャリア/pDNA) が 0.1~100 になるように各種キャリアを添加後、10 秒間攪拌し、室温で 15 分間静置したサンプル溶液を 1% アガロースゲルにて電気泳動(100Vで40分間)を行い、エチジウムブロマイド (EtBr) で染色した結果を示す。
【0083】
図12に示すように、デンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) および Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) 添加によりそれぞれ、チャージ比 1、2、2 以上で pDNA に起因するバンドが消失した。このように、キャリアと pDNA との相互作用の強さに、キャリア間で大きな差異は認められなかった。
【0084】
(5-2)プラスミド DNA の酵素安定性に及ぼす Man-α-CDE 結合体 (G3) の影響
目的とする細胞に外来遺伝子を導入・発現させるには、pDNA は標的となる細胞内へ送達されるまでインタクトな状態に保たれる必要がある。一般に、pDNA は血清に含まれる DNA 分解酵素 (DNase) により速やかに分解されることから、in vivo において遺伝子を発現させるためには、DNase に対する安定性の確保が重要となる。そこで、DNaseIに対する pDNA の安定性に及ぼす各種キャリアの影響について検討した。DNaseI処理後のキャリア/pDNA 複合体は、SDS 添加により解離させた後、1%アガロースゲルで電気泳動を行った。
【0085】
結果を図13に示す。図13では、チャージ比 (キャリア/pDNA)は50とした。キャリア/pDNA複合体は、0.1unit/mLのDNaseIを含む反応緩衝液中で37℃で2時間インキュベートした。電気泳動は100Vで40分間行った。
【0086】
図13 に示すように、チャージ比 50 (キャリア/pDNA) において、デンドリマー (G3) >α-CDE 結合体 (G3) の順に pDNA 由来のバンド強度が小さくなり、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) では、pDNA の残存は観察されなかった。このように、本実験条件下において、DNaseIに対する pDNA の分解抑制効果は、デンドリマー (G3) >α-CDE 結合体 (G3) > Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の順に低下することが示された。
【0087】
(5-3)Man-α-CDE 結合体 (G3)/プラスミド DNA 複合体の粒子径および ζ-電位
遺伝子導入に際し、キャリア/pDNA 複合体の粒子径および ζ-電位は重要な因子である。また、複合体の荷電状態は、細胞への接着性や血清成分との非特異的な相互作用、さらには粒子自体の水への溶解度にも影響を及ぼす。そこで、各キャリア/pDNA 複合体の粒子径および ζ-電位について検討した。
【0088】
表2に示すように、チャージ比 50 (キャリア/pDNA) において、各キャリア/pDNA 複合体の粒子径は、それぞれ約400 nmであり、キャリア間に有意差は認められなかった。 一方、ζ-電位はデンドリマー (G3) > α-CDE 結合体 (G3) > Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の順に低下し、それぞれ約 26、13、3 mV であった。これは、デンドリマー表面の1級アミノ基にα-CyDおよびマンノース残基を導入することにより、結合体の正電荷が減少したためであると考えられる。
【0089】
【表2】
JP0005092123B2_000004t.gif

【0090】
各値は、3回の実験の平均±標準誤差を示す。*はp<0.05(デンドリマーに対して)、十字はp<0.05(α-CDE 結合体に対して)
【0091】
(5-4)プラスミド DNA のコンパクションに及ぼす Man-α-CDE 結合体 (G3) の影

キャリア/pDNA 複合体中のpDNA のコンパクション状態は、遺伝子導入に影響を与える因子の一つである。そこで、各キャリア/pDNA 複合体中の pDNA のコンパクション状態について検討した。なお、pDNA のコンパクションは、キャリア非添加時のpDNA にインターカレートさせた EtBr の蛍光強度を 100%とし、キャリア添加時の pDNA のコンパクションにより減少した EtBr の蛍光強度を測定することにより評価した。
【0092】
図14は、キャリア/pDNA 複合体のコンパクション状態の測定結果を示す。図14では、pDNA(1.0μg)、エチジウムブロマイド(1.0μg)及びキャリアを1mLのHBSSに各種チャージ比で添加した。溶液を25℃で15分間インキュベートし、蛍光(λex=510nm、λem=590nm)を蛍光分光計で測定した。各値は、3回の実験の平均±標準誤差を示す。
【0093】
図14に示すように、デンドリマー (G3) およびα-CDE 結合体 (G3) の添加により pDNA のコンパクションは、PLL よりは低いものの、チャージ比 (キャリア/pDNA) 依存的に誘導され、チャージ比 10 において EtBr の蛍光強度はそれぞれ約 60%および 75%程度まで低下した。一方、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の添加による pDNA のコンパクションはみられなかった。
【0094】
(6)Man-α-CDE 結合体 (G3) の遺伝子導入効率に及ぼす血清の影響
通常、遺伝子導入の際、血清が存在すると導入効率は低下することが知られている。これは、キャリア/pDNA 複合体への血清タンパク質の非特異的な吸着により複合体の細胞への会合量が減少することや、キャリア/pDNA 複合体の解離、血清中の DNA 分解酵素による DNA の分解などに起因する。しかし、in vivo において遺伝子を発現させるためには、血清存在時でも高い遺伝子導入効率を保持する必要がある。そこで、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率に及ぼす血清の影響を検討した。
【0095】
図15は、NIH3T3細胞におけるFCS非存在下及び存在下におけるキャリア/pDNA 複合体の遺伝子導入効率を示す。図15では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。チャージ比(キャリア/DNA)は50である。各値は、4~12回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(デンドリマーと比較して)、十字 p<0.05(α-CDE結合体と比較して)
【0096】
図15から分かるように、NIH3T3 細胞において、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率は、デンドリマー (G3) およびα-CDE 結合体 (G3) に比べて FCS の影響を受けにくかった 。
【0097】
図16は、遺伝子導入効率に及ぼす FCS 濃度の影響を示す。図16では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。デンドリマー/pDNA、α-CDE結合体/pDNA、Man-α-CDE結合体/pDNA、及びLipofectinTM/pDNAのチャージ比は各々50、50、50及び1である。各値は、4回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(デンドリマーと比較して)、十字はp<0.05(α-CDE結合体と比較して)、米印2個は、p<0.05(LipofectinTMと比較して)
【0098】
図16から分かるように、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) では、30%FCS (+) 条件下においても、FCS (-) 条件下の約 80% の遺伝子導入効率を保持したのに対して、デンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) および LipofectinTMによる遺伝子導入効率は、50%以下に低下した。これらの結果より、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率は、他のキャリアに比べて血清の影響を受けにくいことが示唆された。
【0099】
(7)Man-α-CDE 結合体 (G3) の遺伝子導入効率に及ぼすα-CyD の役割
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の高い遺伝子導入効率にα-CyD が寄与しているか否かを確かめるため、デンドリマー (G3) にマンノース残基のみを結合させたマンノース-デンドリマー結合体 (Man-dendrimer 結合体) (G3, DSM 10) を調製し、その遺伝子導入効率を Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) と比較した。
【0100】
結果を図17に示す。図17では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。培地には10%FCSを添加した。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。各値は、4回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(デンドリマーと比較して)、十字はp<0.05(Man-デンドリマーと比較して)、米印2個は、p<0.05(α-CDE結合体と比較して)、
【0101】
図17に示すように、A549 細胞、NIH3T3 細胞および HepG2 細胞におけるMan-dendrimer 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率は、デンドリマー (G3) に比べると高い値を示したが、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) よりは低い値を示した。 これらの結果より、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率改善効果は、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) 分子中のマンノース残基とα-CyD の相加作用によるものと推察された。
【0102】
(8)プラスミド DNA の細胞内取り込みに及ぼす Man-α-CDE 結合体 (G3)の影響
pDNA の細胞内取り込みにキャリア間で違いがあるか否かを確かめるため、A549 細胞を用いて Alexaラベル化 pDNA (Alexa-pDNA) と TRITC ラベル化キャリア (TRITC-キャリア) の細胞内取り込みを検討した。なお、本実験はTRITC-キャリア/Alexa-pDNA 複合体を細胞にトランスフェクション24 時間後における細胞を回収し、Alexa および TRITC の蛍光強度をフローサイトメトリーを用いて測定することにより評価した。
【0103】
図18では、細胞溶解物におけるAlexa-pDNA及びTRITCキャリアの蛍光強度をインキュベーション24時間後にフローサイトメーターにより測定した。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。図19では、細胞溶解物におけるAlexa-pDNAの蛍光強度をインキュベーション24時間後にフローサイトメーターにより測定した。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。
【0104】
図18に示すように、Alexa-pDNA および TRITC-キャリアの細胞内取り込みに、キャリア間で差異はみられなかった。また、Man-α-CDE 結合体 (G2, DSM 3.3) とMan-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) 間にも、Alexa-pDNA の細胞内取り込みに差異は認められなかった (図19)。
【0105】
さらに図20は、A549細胞へのAlexa-pDNA/TRITC-Man-α-CDE 結合体(G3, DSM10)の細胞内取り込みに対するマンナン及びデキストランの影響を示す。図20では、細胞溶解物におけるAlexa-pDNA及びTRITCキャリアの蛍光強度をインキュベーション24時間後にフローサイトメーターにより測定した。マンナン及びデキストランの濃度は、0.5mg/mLであった。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。図20に示すように、A549 細胞における TRTIC-Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) および Alexa-pDNA の細胞内取り込みに、マンナンおよびデキストランは影響を与えなかった。
【0106】
これらの結果より、A549 細胞において、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体の細胞内取り込みには、細胞表面におけるマンノース特異的な認識機構の関与は低いことが示唆された。
【0107】
(9)Man-α-CDE 結合体 (G3) の遺伝子導入効率に及ぼすマンナンの影響
Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率に及ぼすマンナンの影響を検討するため、マンナンおよびマンノースを用いて競合阻害実験を行った。
【0108】
結果を図21に示す。図21では、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をインキュベーション24時間後に測定した。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。競合物質の存在下/非存在下におけるルシフェラーゼ活性の比率を計算した。各種糖の濃度は0.5mg/mLである。各値は、4回の実験の平均±標準誤差を示す。* p<0.05(対照と比較して)
【0109】
図21に示すように、A549 細胞におけるデンドリマー (G3) およびα-CDE 結合体 (G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率は、マンナンおよびマンノースの影響をほとんど受けなかったものの、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率は、マンナンおよびマンノース処理によりそれぞれ約 40%および 50%に低下した。 また、デキストランおよびガラクトースは阻害効果を示さなかった。 これらの結果は、pDNA の細胞内取り込み実験とは異なり、A549 細胞における Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率改善効果に、結合体中のマンノース分子を認識する機構の関与を示唆するものである。
【0110】
そこで、A549 細胞表面と各キャリア/pDNA 複合体の相互作用に及ぼすマンナンの影響を明らかにするため、細胞内取り込みが起こらない 4℃ において遺伝子導入実験を行った。 なお実験は、4℃ においてマンナンまたはデキストラン共存下、各キャリア/pDNA 複合体を細胞へ添加 1 時間後、細胞表面に結合していないキャリアを洗浄し、37℃ で 23 時間培養することにより行った。
【0111】
結果を図22に示す。図22では、チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。競合物質の存在下/非存在下におけるルシフェラーゼ活性の比率を計算した。マンナン及びデキストランの濃度は0.5mg/mLである。各値は、4~7回の実験の平均±標準誤差を示す。
【0112】
図22に示すように、デンドリマー (G3)、α-CDE 結合体 (G3) および Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) と pDNA との複合体の遺伝子導入効率は、マンナンおよびデキストランの影響をほとんど受けず、すべてのキャリアにおいてコントロール、マンナンおよびデキストラン処理間で有意差は認められなかった。これは、前述した A549 細胞における Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率改善効果に、細胞表面におけるマンノース認識機構の関与は低いという結果を支持するとともに、細胞内マンノース・マンナン認識レクチンの関与を示唆するものである。
【0113】
(10)Man-α-CDE 結合体 (G3) の遺伝子導入効率に及ぼす核移行性の影響
(10-1)Man-α-CDE 結合体 (G3)/プラスミド DNA 複合体の核移行性
上記において、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体の細胞内取り込みは、デンドリマー (G3)/pDNA およびα-CDE 結合体 (G3)/pDNA 複合体と顕著な差異が認められないことが明らかになった。また、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に、細胞表面におけるマンノース認識機構の関与は低いことが示唆された。
【0114】
1993 年に初めてグルコース修飾 BSA が核に集積するという結果が得られてから、その他の糖も核膜レクチンによって認識され、nuclear targeting signal (NTS) として働く可能性が報告されてきた。そのため、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/pDNA 複合体も、マンノースを特異的に認識するレクチンを介して核内へ移行する可能性が考えられる。そこで、Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の核移行性について検討した。
【0115】
図23は、TRITC-α-CDE 結合体 (G3) および TRITC-Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10)/Alexa-pDNA 複合体を A549 細胞へ添加 24 時間後に共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果を示す。チャージ比(キャリア/pDNA)は50である。
【0116】
図23から明らかなように、TRITC-α-CDE 結合体 (G3) および Alexa-pDNA は核周辺に局在したのに対し、TRITC-Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) および Alexa-pDNA は、核内での局在が観察された。これらの結果は、核にマンノースを認識して取り込む機構が存在すること、さらにマンノースが NTS として働く可能性を示唆する。
【0117】
(10-2)核移行性に及ぼすマンナンの影響
細胞内へマンナンを直接導入できる HVJ-E vector を用いて、TRITC-Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の核への集積に対するマンナンの影響を検討した。
【0118】
図24は、細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果である。チャージ比(キャリア/pDNA)は50であり、インキュベーション時間は24時間である。HVJ-E vectorによる前処理時間は0.5時間である。培地中におけるマンナン及びデキストランの濃度は15mg/mLである。
【0119】
図24Aに示すように、TRITC-α-CDE 結合体 (G3) は核周辺に局在し、その局在はマンナン封入 HVJ-E vector およびデキストラン封入 HVJ-E vector 添加によって変化しなかった。 一方、TRITC-Man-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) は核へ集積し、その集積はマンナン封入 HVJ-E vector 添加により抑制されたが、デキストラン封入 HVJ-E vector は影響を与えなかった (図24B)。これらの結果は、核にマンノースを認識して取り込む機構が存在することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のシクロデキストリンとジェネレーションが3であるデンドリマー(G3)との結合体であって糖で修飾されている結合体を用いることにより、血清の存在下においても細胞内に遺伝子を効率よく導入することができる。本発明の遺伝子導入剤は、生命科学分野において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、本発明で用いることができるシクロデキストリン・デンドリマー結合体の構造の一例を示す。
【図2】図2は、A549細胞におけるMan-α-CDE 結合体 (G3, DSM 10) の遺伝子導入効率に及ぼすチャージ比 (Carrier/pDNA) の影響を示す。
【図3】図3は、A549細胞におけるMan-α-CDE 結合体 (G2又はG3)/pDNA の複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図4】図4は、A549細胞における血清存在下におけるデンドリマー(G3)、α-CDE 結合体(G3)、及びMan-α-CDE 結合体 (G3、DSM10)とpDNA との複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図5】図5は、A549細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。
【図6】図6は、NR8383細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。
【図7】図7は、HepG2細胞における各種キャリア(G3)/pDNA 複合体の遺伝子導入効率に対する血清の影響を示す。
【図8】図8は、A549細胞における各種投入比率におけるMan-α-CDE結合体(G2,G3)/pDNA複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図9】図9は、A549細胞(A)及びNIH3T3細胞(B)におけるFCS存在下におけるキャリア/pDNA複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図10】図10は、A549細胞における各種キャリア/pDNA 複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図11】図11は、A549細胞(A)及びNIH3T3細胞(B)における各種キャリア/pDNA複合体の細胞傷害性を示す。
【図12】図12は、キャリア/pDNA複合体のアガロースゲル電気泳動分析を示す。
【図13】図13は、DNaseIで処理したpDNAの電気泳動移動度に対するキャリアの影響を示す。
【図14】図14は、キャリア/pDNA 複合体のコンパクション状態の測定結果を示す。
【図15】図15は、NIH3T3細胞におけるFCS非存在下及び存在下におけるキャリア/pDNA 複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図16】図16は、A549細胞における各種濃度のFCSにおけるキャリア/pDNA 複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図17】図17は、A549細胞(A)、NIH3T3細胞(B)、及びHepG2細胞(C)におけるFCS存在下における各種キャリア/pDNA 複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図18】図18は、A549細胞へのAlexa-pDNA/TRITC-キャリアの細胞内取り込みを示す。
【図19】図19は、A549細胞へのMan-α-CDE結合体(G2,G3)/Alexa-pDNA複合体の細胞内取り込みを示す。
【図20】図20は、A549細胞へのAlexa-pDNA/TRITC-Man-α-CDE 結合体(G3, DSM10)の細胞内取り込みに対するマンナン及びデキストランの影響を示す。
【図21】図21は、A549細胞における各種糖の非存在下及び存在下におけるデンドリマー(G3)(A)、α-CDE結合体(G3)(B)、及びMan-α-CDE結合体(G3,DSM10)(C)のpDNA複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図22】図22は、A549細胞におけるマンナン及びデキストランの非存在下及び存在下におけるデンドリマー(G3)(A)、α-CDE結合体(G3)(B)、及びMan-α-CDE結合体(G3,DSM10)(C)のpDNA複合体の遺伝子導入効率を示す。
【図23】図23は、A549細胞へのTRITIC-α-CDE結合体(G3)(A)又はTRITIC-Man-α-CDE結合体(G3, DSM10)(B)/Alexa-pDNA複合体の核移行性を示す。
【図24】図24は、A549細胞への、マンナン/HVJ-Eベクター又はデキストラン/HVJ-Eベクターで処理した後のTRITIC-α-CDE結合体(G3)(A)又はTRITIC-Man-α-CDE結合体(G3, DSM10)(B)/Alexa-pDNA複合体の核移行性を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図11】
9
【図14】
10
【図15】
11
【図16】
12
【図17】
13
【図22】
14
【図10】
15
【図12】
16
【図13】
17
【図18】
18
【図19】
19
【図20】
20
【図21】
21
【図23】
22
【図24】
23