TOP > 国内特許検索 > ES細胞の分化誘導方法 > 明細書

明細書 :ES細胞の分化誘導方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5092124号 (P5092124)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月5日(2012.12.5)
発明の名称または考案の名称 ES細胞の分化誘導方法
国際特許分類 C12N   5/0735      (2010.01)
C12N  15/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 5/00 202C
C12N 15/00 ZNAZ
C12Q 1/02
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 39
出願番号 特願2007-517854 (P2007-517854)
出願日 平成18年5月24日(2006.5.24)
国際出願番号 PCT/JP2006/310324
国際公開番号 WO2006/126574
国際公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
優先権出願番号 2005150800
優先日 平成17年5月24日(2005.5.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】粂 昭苑
【氏名】白木 伸明
【氏名】吉田 哲
【氏名】後藤 秀生
【氏名】粂 和彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】水落 登希子
参考文献・文献 特表2004-506412(JP,A)
国際公開第2005/040361(WO,A1)
日本発生生物学会第37回大会要旨集,2004年 5月10日,p.43
Surgery,2003年,Vol.134,p.189-196
Gastroenterology,2005年 4月,Vol.128, No.4, Suppl.2,p.A702
Development,2004年,Vol.131, No.7,p.1651-1662
Biochem.J.,2004年,Vol.379,p.749-756
第25回日本バイオマテリアル学会大会予稿集,2003年12月16日,p.255
J.Biomater.Sci.Polymer Edn.,1999年,Vol.10, No.10,p.1047-1061
Nature Biotechnol.,2011年,Vol.29, No.3,p.267-272
治療学,2009年,Vol.43, No.6,p.43-48
Theriogenology,2003年,Vol.59,p.1257-1264
調査した分野 C12N 1/00-15/90
C12Q 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
M15細胞の存在下で、アクチンビン、塩基性線維芽細胞成長増殖因子(bFGF)及びノギンを添加して哺乳動物由来のES細胞を培養することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する方法。
【請求項2】
M15細胞の存在下でES細胞を培養する際にさらにニコチンアミドを添加して培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1からの何れかに記載の方法によりES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する工程、及び分化誘導された内胚葉系細胞を蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)によって分離する工程を含む、ES細胞から分化誘導された内胚葉系細胞を取得する方法。
【請求項5】
M15細胞の存在下で、アクチンビン、塩基性線維芽細胞成長増殖因子(bFGF)及びノギンを添加して哺乳動物由来のES細胞を培養することによってE S細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法。
【請求項6】
被験物質が成長因子又は低分子化合物である、請求項に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
内胚葉で発現するマーカーの発現量を指標として、内胚葉系細胞へと分化誘導の程度を測定する、請求項5又は6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である、請求項5から7の何れかに記載のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ES細胞の分化誘導方法に関する。より詳細には、本発明は、中胚葉由来の細胞株を支持細胞として用いてES細胞を内胚葉へと分化誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ES細胞はその多能性のため、発生期の遺伝子機能の研究に有用なモデル系であり、医療用の移植可能な細胞源となる可能性がある。糖尿病などの疾患において細胞補充療法にES細胞を用いるためには、分化を制御する必要があり、これは依然として大きな課題である。神経組織、造血組織および心臓組織へのES細胞の分化に関する理解はかなり進んでいるが(Yamashita, J., Itoh, H., Hirashima, M., et al. (2000). Flk1-positive cells derived from embryonic stem cells serve as vascular progenitors. Nature 408, 92-6;及びYing, Q. L., Stavridis, M., Griffiths, D., Li, M., and Smith, A. (2003). Conversion of embryonic stem cells into neuroectodermal precursors in adherent monoculture. Nat Biotechnol 21, 183-6)、内胚葉系組織へのES細胞の分化に関する知見はほとんどない。
【0003】
2001年に、nestin陽性神経細胞集団が濃縮される条件下で培養した後に特定の因子を添加することにより、in vitroでES細胞からインスリン含有膵細胞が形成されることが報告された(Lumelsky, N., Blondel, O., Laeng, P., Velasco, I., Ravin, R., and McKay, R. (2001). Differentiation of embryonic stem cells to insulin-secreting structures similar to pancreatic islets. Science 292, 1389-94)。しかし、このインスリン陽性細胞は、膵および十二指腸双方の内胚葉の機能性膵β細胞のマーカーであるPdx1を発現しない。この細胞はインスリンI転写物も発現しないが、痕跡量のインスリンII転写物を発現した。また、これらの細胞はインスリンについての染色は陽性であるが、インスリンのde novo合成の副産物である抗C-ペプチド抗体では染色されなかった(Rajagopal, J., Anderson, W. J., Kume, S., Martinez, O. I., and Melton, D. A. (2003). Insulin staining of ES cell progeny from insulin uptake. Science 299, 363)。これらの知見は、インスリン染色は培地からのインスリン取り込みが原因であって細胞自身はインスリンを合成していないことを示しており、nestin陽性細胞がインスリンを産生するβ細胞を生じるのかどうかについては疑問であった。しかしながら、nestin陽性細胞に選択的な同様の条件を用いてES細胞からインスリン分泌細胞が産生することを他の研究者が報告しており、この問題はまだ解明されていない(Blyszczuk, P., Czyz, J., Kania, G., et al. (2003). Expression of Pax4 in embryonic stem cells promotes differentiation of nestin-positive progenitor and insulin-producing cells. Proc Natl Acad Sci U S A 100, 998-1003;Hori, Y., Rulifson, I. C., Tsai, B. C., Heit, J. J., Cahoy, J. D., and Kim, S. K. (2002). Growth inhibitors promote differentiation of insulin-producing tissue from embryonic stem cells. Proc Natl Acad Sci U S A 99, 16105-10;及びMoritoh, Y., Yamato, E., Yasui, Y., Miyazaki, S., and Miyazaki, J. (2003). Analysis of insulin-producing cells during in vitro differentiation from feeder-free embryonic stem cells. Diabetes 52, 1163-8)。グルコースを培地に添加した場合、nestin陽性前駆細胞がインスリンを遊離する細胞集団を生じさせるが、注目すべきことにC-ペプチドの遊離は全く検出されないことが最近報告された(Hansson, M., Tonning, A., Frandsen, U., et al. (2004). Artifactual insulin release from differentiated embryonic stem cells. Diabetes 53, 2603-9)。これは、この細胞が機能性のインスリン分泌・細胞ではないことを示唆している。従って、ES細胞を操作して内分泌性の膵β細胞を作製するという課題は依然として未解決である。
【0004】
マウス胚では、Pdx1の発現が最初の分化シグナルであり、8.5日目胚で腸管の背側内胚葉に検出される。9.5日目胚では、Pdx1発現は背側および腹側の膵芽、と十二指腸の内胚葉で認められる。成体では、Pdx1発現は、十二指腸上皮とインスリンを分泌する膵島β細胞において維持されており、インスリン遺伝子の転写制御において重要な役割を果たしている(Offield, M. F., Jetton, T. L., Labosky, P. A., et al. (1996). PDX1 is required for pancreatic outgrowth and differentiation of the rostral duodenum. Development 122, 983-95)。マウスでのPdx1の標的突然変異導入から、膵および吻側十二指腸の発生にPdx1が必要であることが示されている(Ahlgren, U., Jonsson, J., and Edlund, H. (1996). The morphogenesis of the pancreatic mesenchyme is uncoupled from that of the pancreatic epithelium in IPF1/PDX1-deficient mice. Development 122, 1409-16)。従って、Pdx1は膵臓の発生に必須の分子であり、膵前駆細胞および胃、十二指腸、胆管などの他の内胚葉由来組織の初期マーカーとしても有用である。
【0005】
本発明者らは以前に、Pdx1座位にlacZレポーター遺伝子を持つES細胞株を用いてPdx1陽性細胞を効率的に生成させるプロトコールを報告した。ES細胞を胚の膵原基または膵間葉と共培養することにより、Pdx1発現細胞に分化誘導される細胞の数の著しい増加が誘導されることを示した。われわれはES細胞の膵への分化を促進する増殖因子のスクリーニングを行い、TGFβ2が膵原基のもつ分化導能活性を部分的に模倣する因子であることを明らかにした。ニワトリmixファミリー(cmix)遺伝子の過剰発現のような遺伝子操作(Peale, F. V., Jr., Sugden, L., and Bothwell, M. (1998). Characterization of CMIX, a chicken homeobox gene related to the Xenopus gene mix.1. Mech Dev 75, 167-70;及びStein, S., Roeser, T., and Kessel, M. (1998). CMIX, a paired-type homeobox gene expressed before and during formation of the avian primitive streak. Mech Dev 75, 163-5)により、ES細胞の内胚葉系への分化が特異的に促進された。しかしながら、大量の誘導源が必要な場合には、ES細胞の分化を誘導するために胚の膵原基または膵間葉の応用は困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、ES細胞の培養条件を変える方法を用いて、インスリン抗体で染色される細胞が増えてくることが報告されている。しかし、この方法で検出される細胞は、生体内でインスリン産生β細胞が正常に作られる過程を辿ってできた細胞ではない。しかも、細胞が培地中のインスリンを吸着することにより見かけ上の現象であることが指摘されている(Rajagopal, J. et al., Science 299, 363, 2003)。これを解決するためには、膵臓の発生初期マーカーの発現が誘導されるような培養方法が有効となる。本発明は、大量のES細胞でも内胚葉系へと分化誘導することを可能とするような新規なES細胞の分化誘導方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
何れかの種類の細胞が内胚葉細胞の増殖を促して前後軸上での特定の細胞への分化へと導いており、それらの細胞は膵原基あるいは膵間葉からのシグナルを代替すると本発明者らは推測した。そこで、本発明者らは、このような誘導源を発見する目的で、株化培養細胞のスクリーニングを行い、中胚葉由来の細胞株がES細胞の内胚葉への分化を誘導する強い活性を示すとともに、膵または肝の発生を促進することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する方法が提供される。
好ましくは、支持細胞は、中胚葉に由来する細胞である。
好ましくは、支持細胞はM15細胞、MEF細胞又はST2細胞である。
【0009】
好ましくは、ES細胞から、未分化な内胚葉の前駆細胞、内胚葉由来器官の未熟な細胞、又は内胚葉由来器官の成熟細胞の何れかへと分化誘導する。
好ましくは、内胚葉由来器官は、膵臓、肝臓、肺、咽頭、又は小腸である。
好ましくは、支持細胞の存在下でES細胞を培養する際に、アクチンビン、塩基性線維芽細胞成長増殖因子(bFGF)、及び/又はノギンを添加して培養する。
好ましくは、支持細胞の存在下でES細胞を培養する際にさらにニコチンアミドを添加して培養する。
好ましくは、哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である。
【0010】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の方法により得られる、ES細胞から分化誘導された内胚葉系細胞が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法によりES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する工程、及び分化誘導された内胚葉系細胞を蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)によって分離する工程を含む、ES細胞から分化誘導された内胚葉系細胞を取得する方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法により得られるES細胞から分化誘導された内胚葉系細胞を、2-メタクリルオイロキシエチル ホスホリルコリンで被覆したプレート上で培養することを含む、ES細胞から分化誘導された内胚葉系細胞の維持培養方法が提供される。
好ましくは、上記の維持培養方法では、ノックアウト血清リプレースメント(KSR)の存在下で培養を行う。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養することによってES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法が提供される。
【0014】
好ましくは、被験物質は成長因子又は低分子化合物である。
好ましくは、内胚葉で発現するマーカーの発現量を指標として、内胚葉系細胞へと分化誘導の程度を測定する。
好ましくは、哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
本発明は、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する方法に関するものであり、特に支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養することを特徴とする方法である。
【0016】
本発明の分化誘導方法では、支持細胞を用いてES細胞から膵などの内胚葉由来の消化器の細胞を分化誘導することができる。支持細胞を用いて、内胚葉系細胞を分化誘導することはこれまで報告がなく、本発明により初めて達成された。本発明の実施例では、膵幹細胞の遺伝子マーカー遺伝子(Pdx1)の発現を蛍光蛋白質で可視化して、迅速かつ感度の良い検出を可能にした。本発明では、支持細胞との共培養によって、ES細胞は分化誘導しやすい状態にある。そのため、特定の成長増殖因子を添加すると、さらに分化誘導が促進される。従って、本発明の方法は、未知の分化誘導因子のスクリーニングとしても利用できる。
【0017】
本発明で用いるES細胞は、哺乳動物由来のES細胞であればよく、その種類などは特に限定されず、例えば、マウス、サル又はヒト由来のES細胞などを使用することができる。ES細胞としては、例えば、その分化の程度の確認を容易とするために、Pdx1遺伝子付近にレポーター遺伝子を導入した細胞を用いることができる。例えば、以下の実施例で使用しているような、P dx1座位にlacZ遺伝子を組み込んだ129/Sv由来ES細胞株R1、J1又は、Pdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスジーンをもつES細胞SK7株などを使用することができる。あるいは、Hnf3β内胚葉特異的エンハンサー断片制御下のmRFP1レポータートランスジーン及びPdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスジーンを有するES細胞PH3株を使用することもできる。
【0018】
哺乳動物由来のES細胞の培養方法は常法により行うことができ、例えば、所望によりフィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理マウス胚線維芽細胞(MEF)の存在下において、LIF(ESGRO 1000単位/ml、Chemicon製)を添加した分化培地(10%ウシ胎児血清(FBS)、0.1mM 2-メルカプトエタノール、100μM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ製))で維持することができる。
【0019】
本発明では、ES細胞を支持細胞の存在下で培養すること、即ち、ES細胞を支持細胞と共培養する。本発明で用いる支持細胞としては、ES細胞を内胚葉系細胞へと分化誘導できる細胞であれば、特に限定されないが、好ましくは、中胚葉に由来する細胞を支持細胞として用いることができる。ES細胞を内胚葉系細胞へと分化誘導することができる中胚葉に由来する細胞の具体例としては、M15細胞、MEF細胞、又はST2細胞などが挙げられる。
【0020】
M15細胞(mouse, mesonephros)は、登録番号ECACC 95102517として、細胞バンク(CAMR Centre for Applied Microbiology & Research (ECACC, Salisbury, Wiltshire))に登録されている。M15細胞は文献(Larsson, S. H., Charlieu, J. P., Miyagawa, K., et al. (1995). Subnuclear localization of WT1 in splicing or transcription factor domains is regulated by alternative splicing. Cell 81, 391-401)の記載に従って入手可能である。M15についてのバンク情報を以下に記載する。
【0021】
Version 4.200201
M15 (mouse, mesonephros)
ECACC 95102517
Morphology: Epithelial
Mouse mesonephric epithelium, polyoma virus large T transformed
Depositor: Prof V van Heyningen, MRC Human Genetics Unit, Western General Hospital, Edinburgh, UK (Originator)
No restrictions. Patent: None Specified By Depositor
Properties: Products: WT1 (expressed gene) Applications: Gene expression and protein studies connected to kidney development and Wilms' tumourigenesis.
Available in the following LABORATORY:
CAMR Centre for Applied Microbiology & Research (ECACC, Salisbury, Wiltshire)
DMEM + 2mM Glutamine + 10% Fetal Bovine Serum (FBS). Split confluent cultures 1:5 to 1:10 i.e. seeding at 5x1,000 to 1x10,000 cells/cm2 using 0.25% trypsin or trypsin/EDTA; 5% CO2; 37C [cell growth impaired at lower densities]. Karyotype: Hyperdiploid
Hazard: CZ-II
The WT1-expressing mesonephric cell line M15 (alias Meso15) was established from mouse mesonephros transgenically expressing the large T protein of polyoma virus under the control of the early viral enhancer. As a tumour suppresser gene with a key role in urogenital development, WT1 is implicated as predisposition gene in the pathogenesis of Wilms' tumour (WT).
Further information
Research council deposit: Yes
Price_code: C
Bibliographic references:
Cell 1995;81:391
By Beatrice...
TITLE:M15
DATE:2005/04/24 00:32
URL:http://www.biotech.ist.unige.it/cldb/cl3312.html
European Collection of Cell Cultures,
Health Protection Agency, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, UK
June Poulton
European Collection of Cell Cultures
Health Protection Agency,
Porton Down
SP40JG Salisbury, Wiltshire UK
Phone: +44-1980-612512
Fax: +44-1980-611315
E-mail: ecacc@hpa.org.uk
URL: http://www.ecacc.org.uk/
【0022】
MEF(ICRマウスより)はATCCにカタログ番号ATCC # SCRC- 1046として登録されている。また、MEF細胞は、文献(Nagy A , et al. Manipulating The Mouse Embryo: A Laboratory Manual. Third Edition Cold Spring Harbor Press; 2003)の記載に従って入手可能である。
【0023】
ST2細胞は、RCB0224として、独立行政法人理化学研究所筑波研究所バイオリソースセンターに登録されている。また、ST2細胞は、文献(Ogawa, M., Nishikawa, S., Ikuta, K., Yamamura, F., Naito, M., Takahashi, K. and Nishikawa, S. EMBO J 1988; 7:1337-1343)の記載に従って入手可能である。
【0024】
これらのフィーダー細胞は、血清などを補充した動物細胞用の通常の培地(例えば、RPMI培地又はDMEM培地など)を用いて常法に従って培養することができる。
【0025】
支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養する方法は特に限定されないが、例えば、支持細胞をフィーダー細胞として使用して、ES細胞を培養することができる。例えば、未分化のES細胞をトリプシンで解離させ、未処理培養皿で分化培地中LIF非存在下に懸濁培養し、胚様体を形成させる。2日間分化させた胚様体をトリプシンで処理し、フィーダー細胞(支持細胞)であらかじめ一層に生着させた(プレコートした)プレートで分化培地中播種する。以下、数日間培養することにより、内胚葉系細胞へと分化誘導を行うことができる。
【0026】
本発明の分化誘導方法においては、支持細胞の存在下でES細胞を培養する際に、他の物質(例えば、増殖因子又は低分子化合物など)を添加して、培養することもできる。例えば、アクチンビン、bFGF、及び/又はノギンを添加して培養することにより、ES細胞から内胚葉系細胞への分化誘導をさらに促進することができる。また、アクチンビン、bFGF、及び/又はノギンを添加する際に、さらにニコチンアミドを添加して培養することにより、ES細胞から内胚葉系細胞への分化誘導を促進することができる。
【0027】
本発明による支持細胞を用いたES細胞の分化誘導方法によれば、ES細胞から、未分化な内胚葉の前駆細胞、内胚葉由来器官の未熟な細胞、又は内胚葉由来器官の成熟細胞の何れかへと分化誘導することができる。内胚葉由来器官としては、膵臓、肝臓、肺、咽頭、又は小腸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ES細胞から内胚葉系細胞への分化は、内胚葉に特異的なマーカーの発現量を測定することにより確認することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養することによってES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における内胚葉系細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法が提供される。被験物質としては、成長因子又は低分子化合物などを使用することができる。この際、内胚葉で発現するマーカーの発現量を指標として、内胚葉系細胞へと分化誘導の程度を測定することが可能である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(A)実験方法
(1)ES細胞株
Pdx1座位にlacZ遺伝子を組み込んだ129/Sv由来ES細胞株R1は、Christopher Wright博士(バンダービルト大学)から提供された。Pdx1/LacZ ES細胞株は、フィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理マウス胚線維芽細胞(MEF)の存在下にLIF(ESGRO 1000単位/ml、Chemicon製)を補充した分化培地(10%ウシ胎児血清(FBS)、0.1mM 2-メルカプトエタノール、100μM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ製))で維持した。
【0030】
Pdx1プロモーター制御下のEGFPレポータートランスジーンをもつES細胞SK7株は、Pdx1/EGFP遺伝子とホモ接合性のトランスジェニックマウスから樹立した。ES細胞SK7株は、LIF(1000単位/ml)、15% Knock-out Serum Replacement(KSR、Invitrogen)、1%FBS、100μM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムを補充したグラスゴー最小必須培地(GMEM、シグマ製)中、MEF上で維持する。
【0031】
Hnf3β内胚葉特異的エンハンサー断片制御下のmRFP1レポータートランスジーン及びPdx1プロモーター制御下のEGFPレポータートランスジーンを有するES細胞PH3株は、Hnf3β/mRFP1遺伝子とヘテロ接合性のトランスジェニックマウスと、Pdx1/EGFP遺伝子とホモ接合性のトランスジェニックマウスとを交配して得られる胚盤胞から樹立した。ES細胞PH3株は、MEFなしで維持すること以外は、ES細胞SK7株と同様に維持する。
【0032】
カニクイザルES細胞CMK6株は、旭テクノグラス(株)より購入した。カニクイザルES細胞株は、フィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理マウス胚線維芽細胞(MEF)の存在下に20% KnockOut Serum Replacement(KSR、 Gibco BRL)、0.1mM 2-メルカプトエタノール、100μM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムを補充したダルベッコ改変イーグル培地とF-12栄養混合物の1対1混合培地(DMEM/F12、シグマ製))で維持した。
【0033】
ヒトES細胞KhES-1株は、京都大学再生医科学研究所より供与された。ヒトES細胞株は、フィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理マウス胚線維芽細胞(MEF)の存在下に20% KnockOut Serum Replacement(KSR、 Gibco BRL)、0.1mM 2-メルカプトエタノール、100μM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地とF-12栄養混合物の1対1混合培地(DMEM/F12、シグマ製))で維持した。
【0034】
(2)ES細胞の分化
分化研究には、ゼラチンコーティングプレート上で一度継代したPdx1/LacZ ES細胞を用いた。未分化のPdx1/LacZ ES細胞をトリプシンで解離させ、未処理培養皿(バクテリアグレード、岩城硝子)で分化培地中LIF非存在下に3.0×105個/90mmプレートの濃度で懸濁培養し、胚様体を形成させた。2日間分化させた胚様体をトリプシンで処理し、フィーダー細胞でプレコートした24ウェルプレートで分化培地中1ウェル当たり5000個を播種した。対照のウェルはゼラチンのみでプレコートした。対照のゼラチンコーティングウェルまたはフィーダー細胞でコートしたウェルに播種したES細胞を分化培地中で12日間分化させた後に、細胞を固定してX-Gal染色について解析した。
【0035】
MEF上で継代したES細胞SK7株は、ゼラチンコートプレート上に一度継代した後、胚様体を形成させずに分化研究に直接用いた。フィーダー細胞でプレコートした24ウェルプレート中で、1ウェル当たり500個のES細胞SK7株を分化培地中に播種し、3~4日間培養した。3日目又は4日目に、記述した時点でFBSをKSRに置き換え、増殖因子を添加した。培地は6日目に1回のみ、増殖因子を補充したKSR置換分化培地と交換した。増殖因子を添加した正確な日付、または分化培地をKSR置換分化培地と交換した正確な日付は、各図中に記したとおりである。ES細胞の蛍光写真は、実体顕微鏡(ライカMZFLIII)下で24時間ごとに撮影した。
【0036】
サルES細胞の分化培養方法
培養0日目: 24well plateにサルES細胞を1ウェル当たり20,000個のサルES細を分化培地に播種する。培養1,3,5,7,9日目に培地交換する。分化培地はマウスES細胞の分化培地と同様。
【0037】
ヒトES細胞の分化培養方法
ヒトES細胞の分化培養条件は以下の通りである。培養0日目に24ウエルプレートにヒトES細胞を20,000細胞/wellの濃度で播種し、培養1,3,5,7,9,11日目に培地交換した。培地はKSR置換分化培地(10%KSR/DMEM (high glucose)を用いた。
【0038】
(3)フィーダー細胞株
胎生腎由来の細胞株M15細胞は、三菱化学生命科学研究所のT. Noce博士から供与された。ST2細胞は、ES細胞から血液細胞への分化を促進する能力をもつことが既知である間質細胞である。MEFは、胚齢12.5~14.5日の胚から単離した。ST2細胞は5%FBSおよび0.1mM 2-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地中で、他の細胞は10%FBSを補充したDMEM培地中で培養した。ST2細胞以外のフィーダー細胞は、使用前に200μg/mlのマイトマイシンCで2.5時間処理した。M15細胞は、ゼラチンコートした24ウェルプレートに、1ウェル当たり2×105個の濃度で播種した。MEF細胞は、1ウェル当たり1×105個で用いた。ST2細胞はマイトマイシンC処理を行わずに用い、ES細胞を播種する3~4日前に24ウェルプレートに5×104個/ウェルで播種した。
【0039】
(4)増殖因子
組換えヒトフォリスタチン300(GT、#2669)はGTから購入した。組換えヒトアクチビンA(GT、#2338)は10ng/mlで使用した。組換えマウスノギン/Fcキメラ(R&D、#719-NG)は100ng/mlで使用した。組換えヒト骨形成タンパク(BMP)2(Osteogenetics GmbH、ヴュルツブルク、ドイツ)は、5ng/mlまたは25ng/mlで使用した。ニコチンアミドはSigmaから購入した。
【0040】
(5)β-ガラクトシダーゼ活性検出のためのX-gal染色
ES細胞培養物を、PBS中4%パラホルムアルデヒド中で室温で20分間固定し、PBSで数回すすぎ、β-ガラクトシダーゼ活性について染色した。X-gal染色のために、細胞を、1mg/mlのX-galの存在下、PBS中に20mM K3Fe(CN)6、20mM K4Fe(CN)6-3H2O、2mM MgCl2、0.02% Nonidet-P40、0.01%デオキシコール酸を含む緩衝液中で37℃で一晩インキュベートした。各ウェルのLacZ陽性細胞数を顕微鏡下でカウントした。X-gal染色後に細胞からDNAを抽出して定量した。各ウェルの細胞の総数をDNA標準から測定し、各ウェルでのX-gal陽性細胞の割合を算出した。12日間分化させた細胞の総数は3×105~1×106個であった。
【0041】
(6)GFP陽性細胞の定量
ES細胞の蛍光写真を実体顕微鏡(ライカMZFLIII)下で24時間ごとに撮影し、Lumina Visionソフトウェア(三谷商事、日本)で蛍光強度を定量した。免疫蛍光写真は、CCDカメラ(DP50)を使用したOlympus IX70で撮影した。
【0042】
(7)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)による解析
TRIZOL試薬(Gibco BRL)、その後DNase(Sigma)を使用して、ES細胞からRNAを抽出した。逆転写(RT)反応には、M-MLV逆転写酵素(Toyobo)およびオリゴdTプライマー(Gibco BRL)を用いて、3μgのRNAを逆転写した。1μlの5倍希釈cDNA(逆転写産物の1/100に相当)をPCR解析に用いた。
【0043】
プライマーの各組み合わせについて、サイクル数と直線範囲のRT-PCRに必要なcDNA量を経験的に決定した。プライマーの配列、各プライマー対に用いたサイクル数を表1に示す。RT-PCR産物の1/5を5%非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にロードし、DNA感受性の色素SYBRGreenI(Molecular Probes)を用いてFluoroImager(Molecular Dynamics)で解析した。
【0044】
【表1】
JP0005092124B2_000002t.gif

【0045】
PCR条件:
Iapp, Ins2 及びPP:
96℃(変性)で30秒、60℃(アニーリング)で2秒、及び72℃(伸長)で45秒(Hot start)
Amylase, Ins1 及び Kir6.2
96℃(変性)で30秒、及び70℃(アニーリング及び伸長)で30秒(Hot start)
その他:
96℃(変性)で30秒、60℃(アニーリング)で2秒、及び72℃(伸長)で45秒
【0046】
(8)免疫組織化学検査(図5及び図16の実験方法)
全マウント免疫組織化学検査を行う際、中胚葉細胞又はES細胞をNunc Thermanox Colerslips 24well type (Nunc, # 174950)上に置いた。細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で室温で20分間固定し、0.1%tween含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)で充分に洗浄した。1% TritonX-100を含有するPBSで室温で10分間浸透させ、ブロッキング溶液(x5 Blocking One, Nacalai Tesque)で1時間インキュベートした後、ブロッキング溶液中の一次抗体を試料に添加し、4℃で一夜インキュベートした。試料をPBS-Tで充分に洗浄し、PermaFluor Aqueous Mounting Medium (IMMUNON)でマウントした。共焦点画像をLeica Spectral Confocal Scanning System, TCS-SP2 (Leica)を用いて取得した。
【0047】
検出に用いた抗体は、ウサギ抗AFP (Biomeda, #A02)、ヤギ抗アルブミン(Sigma, #A1151)、マウス抗Cdx2 (BioGenex, #MU392-UC)、マウス抗CK19 (DAKO, #M0888)、ヤギ抗HNF3β(Santa Cruz, #sc-9187)、ウサギ抗Pdx1 (Chemicon, #AB5754)、及びウサギ抗T (Santa Cruz, #sc-20109)、ウサギ抗Nkx2.1 (Santa Cruz, #sc-13040)、ウサギ抗GFP(MBL, #598)である。用いた二次抗体は、Allexa 568結合ヤギ抗ウサギ及びマウス抗体(Molecular Probes, #A11036 and #A11019), Allexa 488結合ヤギ抗ウサギ及びマウス抗体(Molecular Probes, #A11070)、C y3結合ロバ抗ヤギ抗体(Jackson Lab, #705-166-147)である。
【0048】
(9)蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)(図12の実験方法)
M15細胞は、ウエル当たり2×10個で播種し、使用前に培養した。5,000細胞のSK7 ES細胞を、分化培地中の中胚葉細胞層に播種し、8日間分化させた。分化の8日目に、SK7 ES細胞をCell dissociation buffer (GIBCO BRL)を用いて37℃で20分間解離させた。細胞を、モノクローナル抗体(mAb)の組み合わせを用いて染色した。この実験で使用した抗体は、ビオチン結合抗E-カドヘリンモノクローナル抗体ECCD2(熊本大学永渕昭良教授、小川峰太郎教授より供与、非標識抗体はタカラバイオ(株)より購入可能)、PE結合抗Cxcr4モノクローナル抗体2B11 (Becton, Dickinson and Company)である。表面染色のために、細胞を標識したモノクローナル抗体の混合物と一緒にインキュベートした。染色した細胞を、40μmのメッシュで濾過し、ヨウ化プロピジウムを含むHBSS-1%BSAに再懸濁し、FAC S Canto (Becton, Dickinson and Company)で解析した。データは、CellQuest Prosoftware (Becton, Dickinson and Company)を用いて記録し、Flowjo program (Tree Star)を用いて解析した。
【0049】
(10)蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)(図13の実験方法)
マイトマイシン処理したM15細胞は、使用前に90mmプレート1枚当たり6×106個を一晩培養した。3×105個のES細胞SK7株を分化培地中のM15細胞層上に播種し、9日間分化させた。分化の9日目に、ES細胞SK7株を0.25%トリプシン-EDTAで10分間トリプシン処理し、40μmのメッシュで濾過し、1×106~2×106個/mlの濃度で、ヨウ化プロピジウムを含むHBSS-1%BSAに再懸濁し、FACS Vantage SEで解析した。未分化のES細胞SK7株をネガティブコントロールとして用いた。分化したES細胞を緑色蛍光の強度により5画分に分け、RNA抽出およびRT-PCR解析を行った。
【0050】
(11)ES細胞由来分化細胞の維持培養方法
分化したES(dES)細胞を、M15の下、アクチビン及びbFGFの両方を添加して、10%FBSを添加した培地中で8日間培養した。ES細胞を8日間培養した後、dESを0.05%トリプシン/EDTAでトリプシン処理し、2-メタクリルオイロキシエチル ホスホリルコリン(2-Methacryloyloxyethyl PhosphorylCholine;MPC)を被覆した低細胞結合ディッシュ(ローセルバインディングディッシュ&プレート; Nalgenunc, #145389)に再度播種することでPdx1陽性細胞を維持培養することが出来る。
【0051】
(12)マウス腎臓皮膜下への移植
(上記の項で維持培養1日目のPdx1陽性分化細胞を改修し、移植実験に使用した(図14)。通常の麻酔下で、マウスの左腎臓皮膜下にdES(約3×10細胞)を移植した。移植の1週間後に、ES細胞を移植したマウスを殺し、腎臓を取り出し、4%パラホルムアルデヒドで固定化した。移植片(10μm)の凍結切片を免疫組織化学により解析した。
【0052】
(13)ES細胞の分化(図17の実験方法)
血清なしの条件下での分化のために、SK7 ES細胞を、分化培地中において、中胚葉細胞で予め被覆した24ウエルプレートにウエル当たり5,000細胞で播種し、8日間培養した。培地は2日毎に交換した。胚性内胚葉(E-cadherin +/CXCR4+ cells)に分化したES細胞又はPdx1/EGFP細胞を比較した。ES細胞は、10%FBS (FBS)中において、又は20ng/mlのアクチビンありの場合となしの場合で、10μg/mlインスリン (Sigma), 5.5μg/mlトランスフェリン(Sigma), 6.7 pg/mlセレン(S igma)及び0.25% アルブミン(Albmax, GIBCO) を補充した血清なしの基礎培地(DMEM, Gibco BRL) (ITS)中において分化させた。
【0053】
(B)結果
(1)中胚葉細胞による、ES細胞からPdx1発現腸管内胚葉細胞への分化を促進する因子の産生
共培養系を用いて、ES細胞の内胚葉分化を促進する活性について、初代培養細胞と株化細胞のスクリーニングを行った。Pdx1座位にlacZレポーター遺伝子を挿入したES細胞株を用いたため、Pdx1遺伝子の発現はin situ X-Gal染色により視覚化することができた。その結果、中腎細胞株M15(Larsson, S. H., Charlieu, J. P., Miyagawa, K., et al. (1995). Subnuclear localization of WT1 in splicing or transcription factor domains is regulated by alternative splicing. Cell 81, 391-401)、マウス胚線維芽細胞(MEF)(Nagy A , et al. (2003) Manipulating The Mouse Embryo: A Laboratory Manual. Third Edition Cold Spring Harbor Press)、及びST2細胞(Ogawa, M., Nishikawa, S., Ikuta, K., Yamamura, F., Naito, M., Takahashi, K. and Nishikawa, S. (1988) EMBO J, 7:1337-1343)など数種の中胚葉由来細胞株をフィーダー細胞として用いてES細胞と共培養した場合に、ES細胞のPdx1/β-gal発現細胞への分化が促進されることが判明した。M15細胞株により、ES細胞のPdx1/β-gal発現内胚葉細胞への分化が顕著に促進された。M15細胞層上で培養した場合、分化した全ES細胞の0.1%がPdx1/β-gal発現細胞になった(図1)。これは、胚性膵原基との共培養で誘導されるPdx1/β-gal発現細胞の割合と同様である。MEFにより、ES細胞のPdx1/β-gal発現内胚葉細胞への分化が中程度に促進された。M15細胞上で培養したES細胞は再現性よくPdx1/β-gal発現細胞を最も多く生じさせたため、以後の実験にはM15細胞株を用いた。
【0054】
M15フィーダー細胞層上のPdx1/β-gal発現細胞の時間依存性の変化をモニターした。図2は、Pdx1/β-gal発現細胞数が12日目にピークに達し、その後は減少したことを示す。分化したES細胞を7日目にトリプシン処理し、新たに調製したM15細胞層上で継代した場合、15日目(継代後8日目に相当)にPdx1/β-gal陽性細胞が再び出現した。Pdx1/β-gal陽性細胞の再出現までに、短い時間しか要しないことは、ES細胞をM15フィーダー細胞層上で培養する場合に培養物中に未分化細胞またはある種の内胚葉前駆細胞が存在することを示している。10回まで継代を行ったところ、Pdx1/β-gal陽性細胞の再出現が同様に観察された。
【0055】
(2)Pdx1/GFP発現を利用した生存ES細胞での内胚葉系への分化のモニタリング
蛍光色素を用いて生存ES細胞でのpdx1発現を追跡するため、Pdx1/GFPを含むプラスミドを導入したP#48.9系統のトランスジェニックマウス(Gu, G., Wells, J. M., Dombkowski, D., Preffer, F., Aronow, B., and Melton, D. A. (2004). Global expression analysis of gene regulatory pathways during endocrine pancreatic development. Development 131, 165-79)からES細胞株を樹立した。P#48.9系統のトランスジェニックマウスは、胚形成を通じてPdx1の発現を再現することが示された。当初、ES細胞株を8系統樹立したが、これらすべてはin vitroでの分化中に類似のPdx1/GFP発現パターンを示した。この中で、SK7と命名したES細胞株が良好に増殖したので、これを以後の実験に用いた。Pdx1/GFP発現ES細胞(SK7)をマイトマイシンで処理したM15細胞上で分化させ、Pdx1/GFP発現の時間依存性の変化をモニターした。
【0056】
分化手順の略図を図3Aに示す。ES細胞SK7株は、10%のFBSを含む分化培地を含む24ウェルプレートに、500個/ウェルという低密度で播種した。対照の分化培地と、第4日以降分化培地中のFBSをKnocked-out Serum Replacementで置換えた培地(KSR置換分化培地)で、培養条件を比較した。低密度培養では、ES細胞をKSR置換分化培地中で培養した場合、第4日以降のPdx1/EGFP陽性細胞数が増加することが明らかとなった(図3A)。分化の中のES細胞のコロニーの形態変化を図3Cに示す。コロニーの多くは分化第5日まで盛り上がった形を保ち、6日目前後にはコロニーの中心からの細胞の移動が観察される(図3C)。細胞の移動に伴い、6日目にはPdx1/EGFP発現が検出できるようになり、8日目には発現細胞が最多値に達してその後は減少する(図3B)。Pdx1/EGFP陽性コロニーでは、細胞はコロニーの中心から移動し、その後、Pdx1/EGFP陽性細胞がコロニー周縁部にあり、丸く大きい平坦なコロニーを形成した。Pdx1/EGFP陰性コロニーは、盛り上がった密集したコロニーの特徴を示した。これらの結果は、膵の分化には移動性能の獲得が必要であることを示している。
【0057】
(3)RT-PCR解析によるM15フィーダー細胞層上で分化させたES細胞における膵内分泌マーカーと他の内胚葉由来組織マーカーの発現の検出
M15フィーダー細胞上のES細胞SK7株の分化状態の特徴を明らかにするため、膵内分泌マーカーの発現を解析した。Pdx1の発現は4日目に検出され、8日目にピークに達した(図4)。Nkx2.2、Nkx6.1、Pax 4、Pax6、Isl1、NeuroD、Ngn3などの他の内分泌前駆細胞のマーカーも検出された。Pax4とIsl1の発現は、ゼラチンコートしたウェルで分化した対照ES細胞でも検出されるが、他のマーカーの発現はM1 5フィーダー細胞層上で分化させたES細胞で特異的に誘導される。M15フィーダー細胞層上で分化させたES細胞でのインスリン2発現は、第8日に検出された。グルカゴン、膵ポリペプチド(Pp)、ソマトスタチン(Sst)などの成熟膵の他の内分泌の分子マーカーや外分泌マーカーであるアミラーゼも、M15フィーダー細胞上で分化させたES細胞で特異的に検出される。Iapp、グルコキナーゼ、Kir6.2などの成熟・細胞のマーカーが検出される。
【0058】
また、未熟肝臓マーカー(アルブミン、αフェトプロテイン、Met)、肺のマーカー(Sftpc(図5の免疫染色ではさらにNkx2.1の発現が示されている))、口腔マーカー(Pax9)が検出されている。即ち、M15を用いた誘導方法によって、内胚葉性器官が膵臓以外にも、肝臓、肺、口腔が誘導されている。さらに小腸も(図5)誘導されているので、広い器官誘導能があることが示されている。従って、本発明の分化誘導法は、膵臓、肝臓、肺、小腸、口腔(Pax9, RT-PCR)を含む内胚葉性器官の分化誘導に有用である。
【0059】
上述の結果は、M15支持細胞が、ES細胞の膵や肝などの内胚葉由来臓器への分化を特異的に促していることを裏付けている。この活性をMesodermal Derived Inducing Activity(中胚葉由来分化誘導活性 ; MDIA)と名づけた。
【0060】
さらに、他のES細胞(R1、及びJ1 ES細胞)に対するMDIA(中胚葉由来分化誘導活性)の効果を調べた。Pdx1、又は内分泌マーカー(インスリン、膵ポリペプチド、及びソマトスタチン)の発現はMDIA処理したR1及びJ1 ES細胞で上昇していた(図4の右図)。従って、MDIAは、各種のES細胞に適用できることが示された。
【0061】
(4)SK7細胞由来の分化細胞における内胚葉関連マーカーの発現の検出
免疫組織化学検査によりSK7細胞由来の分化細胞における内胚葉関連マーカーの発現を検出した結果を図5に示す。図5に示す通り、内胚葉細胞の共通マーカーであるHNF3β、各種内胚葉系器官関連遺伝子:肝臓マーカー遺伝子のアルブミン、肺のマーカー遺伝子のNkx2.1、小腸のマーカーのCdx2遺伝子の発現(赤色)が認められた。また、Hnf3βの発現細胞はPdx1/EGFP陽性細胞と重なるが、肺や肝臓などの膵臓以外の内胚葉系器官関連遺伝子を発現する細胞はPdx1/EGFP陽性細胞(緑)とは異なった細胞であった。
【0062】
(5)MDIA処理により誘導される内胚葉前駆細胞
RT-PCR分析の結果により、他の内胚葉由来組織(肝臓等)もES細胞のMDIA処理により誘導されることが示された。これにより、MDIA処理が、ES細胞から内胚葉への分化を特異的に誘導することが分かる。内胚葉前駆体の分化をモニターするために、Hnf3β遺伝子の内胚葉特異的エンハンサー断片を使用して (Nishizaki, Y., Shimazu, K., Kondoh, H., Sasaki, H.(2001) Identification of essential sequence motifs in the node/notochord enhancer of Foxa2 (Hnf3beta) gene that are conserved across vertebrate species. Mech Dev 102, 57-66)、単量体赤色蛍光タンパク質Iレポーター遺伝子(mRFP1)の発現を制御するように設計したHnf3β/mRFP1遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製した。Hnf3β/mRFP1トランスジェニックマウスは、Hnf3βの発現パターンを既報の通り再現した(Nishizaki et al., 2001)。Hnf3β/mRFP1トランスジェニックマウスは、Pdx1/EGFPトランスジェニックマウス株P#48.9(Gu, G., Wells, J. M., Dombkowski, D., Preffer, F., Aronow, B., and Melton, D. A. (2004). Global expression analysis of gene regulatory pathways during endocrine pancreatic development. Development 131, 165-79)と交配させた。Hnf3β/mRFP1とPdx1/EGFPの両方の導入遺伝子を有するES細胞株を樹立し、PH3と命名したES細胞株を以後の実験で使用した。ES細胞PH3株を、マイトマイシンで処理したM15細胞上で分化させ、Pdx1/EGFP及びHnf3β/mRFP1の発現の時間に依存した動態をモニターした。図6は、 Hnf3β/mRFP1の発現が分化の7日目に観察され、これはPdx1/EGFPの発現より1日先行していることを示す。Hnf3βを発現するES細胞の集団は、Pdx1を発現する集団より大きい。時間依存的な発現及びHnf3β及びPdx1を発現するES細胞の集団は、通常の胚発生を再現する。これらの結果から、ES細胞のMDIA処理により内胚葉前駆体が誘導されることが示された。
【0063】
(6)中胚葉由来分化誘導活性(MDIA)の一部はアクチビンによる作用である
中胚葉由来分化誘導活性(MDIA)の分子メカニズムを明らかにするため、実験に用いたフィーダー細胞株でのアクチビンβA、アクチビンβB、フォリスタチンなどの数種の増殖因子の発現をスクリーニングした。アクチビンβAとアクチビンβBはM15細胞中で高レベルで、MEF細胞中で中レベルで発現している。フォリスタチンは、M15細胞では発現しないが、MEF細胞、ST2細胞では高レベルに発現している(図7A)。ES細胞の分化培養物中でのアクチビンA添加の効果を分析した。10ng/mlのアクチビンAの添加により、M15細胞上でのPdx1/EGFP発現が有意に促進された(図7B、Studentのt-検定、*p<0.01)。フォリスタチンを25ng/mlで添加した場合、Pdx1/EGFP陽性細胞は減少し、250ng/mlで添加するとさらに有意に減少した。アクチビンA(10ng/ml)を外から添加することによるMDIA促進は250ng/mlのフォリスタチンで阻害される。これらの結果は、MDIAを媒介する分子についての研究が、ES細胞の膵への分化に必要とされる誘導シグナルを研究する際に有用であることを示している。上記の結果は、アクチビンがMDIAを媒介する分子の一つであることを示している。MDIAはフォリスタチンによって完全には阻害されないため、ES細胞を内胚葉系細胞に分化させるMDIAに関与するM15細胞には他の分子が含まれている可能性がある。M15細胞、またはMDIAを示す他のフィーダー細胞中で発現される分泌型または膜結合型の分子について研究することにより、ES細胞の内胚葉系への分化の分子メカニズム解明に関する情報を得ることができる。(7)MDIAはES細胞の内胚葉系への分化を促進し、この分化を促進する誘導因子または培養条件のスクリーニングに利用できる
M 15細胞層上で培養したES細胞に添加した際にES細胞の内胚葉系への分化をさらに促進する誘導分子のスクリーニングのために、MDIAを利用できるかどうかをさらに検討した。KSR置換分化培地で培養したES細胞はPdx1/EGFP発現細胞の産生がより多いことが図3Aから示されたことから、血清中に阻害因子が存在する可能性を推測した。BMPの阻害因子であるノギンを様々な時期に添加し、MDIAに対する効果を試験した。その結果、第5 - 8日目に添加した100ng/mlのノギンはMDIAを増強することが明らかになった。図8に示すように、ノギンの増強効果は分化培地の代わりにKSR置換分化培地を用いても観察できる。しかしながら、ノギン添加の効果は分化の後期に限定されなかった。第0 - 4日の100ng/mlのノギンの添加によりMDIAが増強された。より短い時期にノギンを添加した追加実験からは、第3 - 4日のノギン添加が第0 - 4日まで添加した場合と同様の結果になることが示されている(図8)。次に、血清中のBMPがES細胞の内胚葉系への分化に対し阻害的に作用するかどうかを検討した。図9は、第3 - 4日の分化培地へのノギン添加により、ノギン非添加のKSR置換分化培地で培養した場合と同程度のPdx1/EGFP発現細胞が生じたことを示す。KSR置換分化培地中で分化させたES細胞中のPdx1/EGFP発現細胞の数はBMP2添加により減少したが、これはノギンの添加の追加により相殺された(図9)。しかしながら、第0 - 4日に無血清状態でのES細胞の分化では、細胞の増殖が不良なため、Pdx1/EGFP発現が低いことが明らかになった。従って、以後の実験では、ES細胞の内胚葉系への分化を促進するために第3 - 4日目にノギンを添加し、分化第4日以降は分化培地の代わりにKSR置換分化培地を用いている。
【0065】
さらに、ニコチンアミド(NA)をノギンまたはアクチビンAとともに添加した場合の効果を検討した。図10は、ノギンとアクチビン、またはノギンとニコチンアミドの添加で相加効果を示さなかったことを示す。しかしながら、ノギン、アクチビン、ニコチンアミドの添加でPdx1/EGFP発現が促進された。挿入図は、ノギン、アクチビン、ニコチンアミドのいずれかを添加した場合の時系列データを示す。
【0066】
BMP2とニコチンアミドは、M15細胞でも他の細胞株でも発現していないため、これらの結果は、内胚葉分化を促進する増殖因子または化合物のスクリーニングにMDIAが利用可能であることを示している。
【0067】
(8)成長増殖因子の添加による膵臓への分化誘導の促進
10%FBS入りの分化培地中へのアクチビン、bFGF、又はアクチビン+bFGFの添加により、Pdx1/EGFPの発現細胞の数が増えることが示された。図11Aは、8日目のPdx1/EGFP像を示す。アクチビン20ng/ml, bFGF 5ng/mlになるように加えた。図11Aでは、アクチビンとFGFを加えることで、Pdx1/EGFP陽性コロニーの形態が変化した。陽性コロニーの中心部にあった細胞の塊が消えて、その結果、Pdx1/EGFPを発現する細胞の数が増加した。また、両者を同時にES細胞に作用させることにより、相乗効果を示した。また、d8/M15最上の図は、M15を用いて分化誘導した場合のPdx1/EGFP陽性コロニーは広がった形態を示し、中心には細胞の塊が小さく見え、Pdx1/EGFP陽性細胞がコロニーの辺縁部に位置する(矢印)。Pdx1陰性コロニーでは、中心に丸い大きいコロニーが観察される(矢頭)。+アクチビン(20)では、分化0日目から8日目までアクチビンを20ng/ml加えている。Pdx1/EGFP陽性膵幹細胞が多く出現し、広がったコロニーの形態を示し、Pdx1/EGFP陰性コロニーが減少している。Pdx1/EGFP陽性コロニーの中心に見えていた細胞の小さい塊が消失している。+bFGF(5)では、分化0日目から8日目まで、bFGFを5ng/m l添加している。中心部の細胞の移動が促進され、広がったコロニーの形態を示す。その結果、Pdx1/EGFP陽性細胞がコロニーの辺縁部により集積されるようになる。また、+アクチビン(20)+bFGF(5)では、分化0日目から8日目まで、アクチビンとbFGFを加えている。両者がさらに相乗作用し、Pdx1/EGFP陽性膵幹細胞がさらに多く出現した。
【0068】
図11Bは、図11AにおけるアクチビンとbFGFの両方を加えている条件で得た分化細胞についてC-ペプチドに対する抗体で染色した結果を示す。C-ペプチドはインスリン生合成時の副産物として生じるので、陽性細胞はインスリンを実際生合成していることが示される。Pdx1/EGFP陽性細胞は緑色である。分化細胞では、C-ペプチド単独陽性(赤色)の細胞も観察されたが、多くの細胞がC-ペプチド/Pdx1両陽性(黄色)であった。拡大写真をAとBに示している。
【0069】
さらにFACSを用いて分化を評価した。図12Aでは、内胚葉(胚性内胚葉;definitive endoderm)はE-cadherin,Cxcr4両陽性細胞とする。膵臓前駆細胞はE-cadherin,Pdx1/EGFP両陽性細胞とする。M15上では、8日目では内胚葉が全細胞の8%を占める。アクチビンとbFGF添加条件では内胚葉の割合が上昇し、全細胞の47%を占めるようになる。また、膵前駆細胞はM15上では内胚葉中の22%を占めるが、アクチビンとbFGF添加条件では内胚葉における膵前駆細胞の割合が67%に上昇した。
【0070】
また、図12Bは、細胞の内部構造の複雑さを反映する側方散乱光(SSC)と細胞の大きさを反映する前方散乱光(FSC)の指標を用いたES細胞、M15細胞、分化ES細胞のFACS展開像を示す。SSCとFSCの指標を用いて、図の多辺形で囲む部分を分取することで、M15細胞を除くことができる。図12Bは、アクチビンとbFGF添加条件での実施例を示しているが、このM15不含画分にPdx1/EGFP陽性細胞が含まれることが分かる。
【0071】
(9)FACSによるES細胞由来Pdx1/EGFP陽性細胞の分離および発現解析
ES細胞由来Pdx1/EGFP発現細胞の分子的特徴を検討するために、分化したES細胞集団をFACSで解析した。図13A及びBは、M15細胞上で分化したES細胞では、未分化ES細胞の場合と比較して、Pdx1/EGPF陽性細胞の集団がGFP陽性側にシフトしていることを示す。分化ES細胞をGFP発現量により5画分に分け、各画分について、膵分化の分子マーカー発現をRT-PCR法で解析した。RT-PCR解析により、GFP陽性シグナルが強いno.4の画分でPdx1発現が高いことが示される(図13C)。この画分は分化したES細胞全体の約1%に相当する(図13B)。GFP陽性シグナルが強いこの画分ではNeuroD、インスリン、PP、Sstの発現も観察されており、この画分の細胞が膵の系譜であることを示している。
【0072】
(10)分化ES細胞の維持培養
分化したES細胞は図14に示す方法で維持培養できる。即ち、分化したES細胞を、M15の下、アクチビン及びbFGFの両方を添加して、MPCを被覆した低細胞結合ディッシュに再度播種することでPdx1陽性細胞を維持培養することができた(図14)。
【0073】
(11)マウスの腎臓皮膜下へ移植したES細胞におけるPdx1/EGFP及びインスリンの発現の維持
分化したES細胞を腎臓皮膜下に移植した。移植マウスを1週間後に殺し、移植片の凍結切片を免疫組織化学により分析した。図15は、Pdx1/EGFP発現が維持され、インスリン発現も見られることを示す。これらの結果は、Pdx1/EGFP陽性細胞は、マウスに移植した際に、増殖してインスリン産生細胞に分化できることを示している。
【0074】
(12)サルES細胞を用いた分化誘導

サルES細胞を用いて、マウスES細胞のと同様にM15上で分化誘導した細胞についての染色像を図16に示す。サルES細胞の培養条件(旭テクノグラス(株)より購入)は以下の通りである。培養0日目に24ウエルプレートにサルES細胞を20,000細胞/wellの濃度で播種し、培養1,3,5,7,9日目に培地交換した。培地は分化培地(10%FBS/DMEM (high glucose)を用いた。図16のA及びBは、分化誘導して4日目と8日目の染色像で、中胚葉前駆細胞のマーカーであるHNF3β、と中胚葉のマーカーT(Brachyury)で染色した結果を示す。4日目と8日目にはともにHNF3βの発現が強く検出された。図16のC,D,Eは、10日目には膵臓前駆細胞のマーカーPdx1、小腸のマーカーであるCdx2、肝臓のマーカーのアルブミン、胆管のマーカーのCK19が発現していることから、内胚葉系細胞(膵臓、肝臓、胆管、小腸)への分化が示された。
【0075】
(13)ヒトES細胞を用いた分化誘導
ヒトES細胞を用いて、マウスES細胞のと同様にM15上で分化誘導した細胞についての染色像を図17に示す。ヒトES細胞の分化培養条件は以下の通りである。培養0日目に24ウエルプレートにヒトES細胞を20,000細胞/wellの濃度で播種し、培養1,3,5,7,9,11日目に培地交換した。培地は分化培地(10%KSR/DMEM (high glucose)を用いた。図17のA, Bおよびにおいて、12日目には内胚葉細胞のマーカーHNF3β、小腸のマーカーであるCdx2、肝臓のマーカーのアルブミン、αフェトプロテイン、胆管のマーカーのCK19が発現していることから、内胚葉系細胞(肝臓、胆管、小腸)への分化が示された。
【0076】
(14)M15支持細胞上における無血清培地を用いた膵前駆細胞の誘導
M15支持細胞上での SK7細胞を用いて、分化能を評価した結果を図18に示す。内胚葉(definitive endoderm)は E-cadherin,Cxcr4 の両陽性細胞とする。内胚葉の維持及びPdx1/EGFP陽性細胞への分化には血清中の因子が必要と考えられる。無血清培地のみでは、M15細胞上では、内胚葉や膵前駆細胞への分化が低いが、アクチビンを加えると、内胚葉や膵前駆細胞への分化能が上昇した(図18)。特に膵前駆細胞へ分化した細胞が2%であり、かなり高い効率を達成できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の方法によれば、ES細胞から膵幹細胞などの内胚葉系細胞を効率よく分化誘導することができる。また、本発明の培養方法を用いることにより、未知の物質の膵への分化誘導効果を感度良く測定することができることから、分化誘導物質のスクリーニング方法として応用できる。本発明によれば、分化したES細胞由来の膵幹細胞又は肝幹細胞などを純化し、それを試験管内で維持培養することができる。また、本発明の方法は、複数種類のES細胞株に応用できる。本発明の方法は、発生が同じ内胚葉起源の細胞にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、各種細胞株における膵分化誘導能のスクリーニングを示す。A:分化誘導法の模式図。Pdx1プロモーターにLacZ遺伝子ノックインしたES細胞を培養細胞上に5000 cells/well (24well)の密度で播種後、血清存在下で培養し12日目にX-gal染色をすることにより各種細胞株の膵分化誘導効果を評価した。浮遊胚様体(EB)形成後2日目に培養細胞上に播種するので、培養14日目でX-gal 染色による評価をしたこととなる。B:X-gal染色像。各写真に支持細胞に用いた細胞名を示した。C:各細胞株を支持細胞 に用いた時のPdx1/β-gal陽性の細胞の占める割合を縦軸に示す。M15, MEF, ST2について誘導効果が認められた。Student's t-test で対照実験のゲル上で分化させたES細胞と差が有意であったもの:**, p<0.01。【図3】図3は、Pdx1プロモーター下にGFPを遺伝子導入したES細胞(SK7細胞)を用いたリアルタイムでのPdx1/EGFP陽性細胞への分化の評価を示す。A:分化誘導法の模式図を示す。SK7を用いた分化誘導方法ではEBを形成せずにM15上に播種する。どちらの図も500cells/well(24well)で播種後、培養4日目までは10%血清培地で培養し、培養4日目からは10% KSR培地で培養した。分化誘導後6 - 8日目のPdx1/EGFP陽性細胞の経時的出現を評価した。高密度(5000cells/well)では10%血清培地のみで分化するが低密度(500cells/well)の場合では分化効率が悪く、10%KSR培地に置換すると6日目からPdx1/EGFP陽性細胞が出現してくる。8日目にはピークに達する。Pdx1/EGFP陽性細胞への分化の評価は蛍光写真について、Luminavision ソフトウエアを用いて蛍光強度の総和により行った。B:M15を用いて分化誘導した場合のPdx1/EGFP陽性コロニーは広がった形態を示し、Pdx1/EGFP陽性細胞がコロニーの辺縁部に位置する。Pdx1/EGFP陰性コロニーは丸いコロニーの形態を示す。分化誘導後7日目の分化像を示す。C:SK7細胞を用いた経時的な培養像とPdx1/EGFP陽性膵幹細胞の出現。分化誘導後5日目までは丸いコロニーを示すが、分化誘導後6日目には、細胞の移動が急激に起こり、広がったコロニーの形態を示す。Pdx1/EGFP陽性細胞がコロニーの辺縁部に位置する。分化誘導後9日目にはPdx1/EGFP陽性細胞が減少する。
【図4】図4は、RT-PCR解析の結果を示す。各種膵臓前駆細胞関連遺伝子、膵臓内分泌細胞マーカー遺伝子、外分泌細胞マーカー遺伝子、分化β細胞マーカー遺伝子、肝臓マーカー遺伝子の発現が認められた。SK7ES細胞株はICRマウスより樹立したが、ほかのR1, J1 ES細胞株についても同様なM15支持細胞による分化誘導の促進が検出された。M15支持細胞上で分化誘導した細胞では8日目にはpdx1 遺伝子、あるいはインスリン、膵ペプチド, ソマトスタチンなどの内分泌細胞のマーカー遺伝子の発現が検出された。
【図5】図5は、免疫組織化学検査によりSK7細胞由来の分化細胞における内胚葉関連マーカーの発現を検出した結果を示す。HNF3β、アルブミン、Nkx2.1、Cdx2の発現が認められた。
【図6】図6は、ES細胞から内胚葉前駆細胞が誘導されていることを示す。ES細胞から分化した内胚葉前駆細胞の動態をさらに調べるために、マウスHnf3β遺伝子の内胚葉特異的発現制御エンハンサー領域を用いた。Hnf3β遺伝子の発現をmRFP1(monomeric Red Fluorescent Protein 1) レポーター蛋白質で可視化できるように、Pdx1/GFP, Hnf3β/mRFP1 ダブルトランスジエニックマウスよりES細胞株を樹立した。樹立されたPdx1/EGFP- Hnf3β/mRFP1 ES細胞株では、Pdx1/EGFPの発現が8日目より発現しているのに対して、Hnf3β/mRFP1の発現が7日目より(1日早く)検出され、しかもPdx1/EGFP発現細胞より広範囲の細胞においてHnf3β/mRFP1の発現が誘導されている。トランスジニックマウスの解析により、Hnf3β遺伝子は発生初期内胚葉の領域化が決定される時期(胎生8.5日目ころ)の腸管上皮で前後軸に沿って発現していること、pdx1遺伝子に比べて、1日ほど早く、より広範囲において発現していることが確認されているので、このHNF3β陽性細胞が領域化される前のステージにある内胚葉前駆細胞に相当すると示唆された。したがって、M15支持細胞上での分化誘導は正常発生過程を反映しているものと考えられる。
【図7】図7は、M15による分化誘導の機序の一部はアクチビン を介していることを示す。A:M15による膵分化誘導機序を解明するためにスクリーニングで用いた培養細胞についてAffymetrixのGene Chipを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い、生理活性作用を示す遺伝子の発現を調べた。その結果、正常発生において膵分化誘導に関与するアクチビンの阻害因子フォリスタチンがM15で極端に低いことが明らかになった。また、M15細胞、MEF, ST2細胞において、ある程度アクチビンが発現されている。B:アクチビンにより膵分化誘導が促進され、フォリスタチン によって分化誘導が阻害された。アクチビン、フォリスタチンは分化誘導後3日目に添加した。3日目まではFBS入り培地で培養し、3-8日目まではKSRで置換した培地を用いた。8日目のPdx1/EGFP陽性膵幹細胞の出現を評価した。フォリスタチンの影響を評価するために分化誘導時にフォリスタチンを添加すると、濃度依存的に膵分化誘導を阻害した。(Cont 比較して有意Student's t-test, *p<0.05, n=3)。しかし、M15による膵分化誘導効果を100%阻害することはできなかった。また、アクチビン(10ng/ml)により膵分化誘導効果の促進が見られたが、過剰量のフォリスタチン添加によりその効果を阻害することができた(アクチビン 10ng/ml 添加群と比較してstudent's t-test で有意、**p<0.01, n=3)。【図9】図9は、ノギン による膵分化誘導の促進は血清中に含まれるBMP2を阻害することによるものであることを示す。分化誘導3-4日目にノギン100ng/ml、あるいは所定濃度のBMP2を添加した。標記がある場合は3-4日目の培地中のFBSをKSRに置換している。6日目にPdx1/EGFP陽性細胞を評価した。FBS入り分化培地ではノギン 添加により、非添加群と比較し、有意に差があった(Student's t-test, **p<0.01)。KSRに置換した場合は膵分化誘導の促進が見られた(ノギン(-)と比較。Student's t-test, *p<0.05,)。この促進はBMP2の添加により阻害された(KSR置換分化培地ノギン(-)とBMP添加群と比較(*p<0.05, **p<0.01)。BMP2による阻害はノギン添加で再び消去された(**, p<0.01)。【図12】図12は、FACSを用いて、アクチビンとbFGFの添加による膵臓への分化誘導の促進を定量的に評価でき、その程度が非常に大きいことを示す。また、FACSを用いて、M15支持細胞を分化ES細胞から選択的に除くことが出来ることを示す。図12Aは、内胚葉(胚性内胚葉;definitive endoderm)は E-cadherin,Cxcr4両陽性細胞とすることを示す。図12Bは、細胞の内部構造の複雑さを反映する側方散乱光(SSC)と細胞の大きさを反映する前方散乱光(FSC)を用いた分化したES細胞の集団から、M15細胞を選択的に除く前後の、分化ES細胞のFACS展開像を示す。
【図13】図13は、セルソーターを用いたES細胞由来の膵幹細胞の純化とその発現する分子マーカーの解析を示す。M15細胞上でSK7 ES細胞を300,000cells/ 90mm dish でFBS入り培地で分化誘導し、9日目にFACSを行った。分化誘導によりGFP陽性細胞の分画の細胞集団が増えた。分画1 - 4の4つを分取した。分画4はGFP強陽性であり、この分画にPdx1遺伝子の発現細胞が濃縮されている。ほかにもNeuroD, Somatostatin,インスリンを発現している。
【図14】図14は、分化誘導したPdx1陽性膵前駆細胞の維持培養方法を示す。分化したES細胞を、M15の下、アクチビン及びbFGFの両方を添加して、MPCを被覆した低細胞結合ディッシュに再度播種することでPdx1の発現細胞を維持培養できる。
【図15】図15は、分化誘導したES細胞をマウス成体腎臓皮膜下への移植を示す。図14の方法でES細胞由来のPdx1陽性膵前駆細胞をマウス成体腎臓皮膜下へ移植する。図15A及びBは蛍光顕微鏡写真像を示し、Pdx1/EGFP陽性細胞が保持されている。図15Cは、移植片についての免疫組織化学的な解析によりインスリン、Pdx1/EGFPダブル陽性細胞が存在していることを示す。
【図16】図16は、カニクイザルES細胞を用いた内胚葉前駆細胞および肝膵の細胞への分化誘導の結果を示す。図Aでは、分化誘導4日目には内胚葉前駆細胞と中胚葉前駆細胞が多く分化誘導されている。分化後4日目(A)と8日目(B)の細胞について、HNF3β(赤:内胚葉マーカー)、T(緑:中胚葉マーカー)とDAPIによる核染を重ねた像。図Bでは、分化誘導8日目には内胚葉細胞が多く残っている。中胚葉前駆細胞はもう検出できない。図Cでは、分化誘導10日目には膵臓前駆細胞のPdx1陽性細胞(赤色)と小腸前駆細胞のCdx2陽性細胞(緑色)が検出された。両者は異なる細胞集団である。図Dでは、分化誘導10日目には肝臓前駆細胞のアルブミン陽性細胞(赤色)とαフェトプロテイン陽性細胞(緑色)が検出された。それぞれ単独に発現する細胞が多いが、共発現する細胞も観察された。図Eでは、分化誘導10日目には胆管細胞のCK19陽性細胞(赤色)とαフェトプロテイン陽性細胞(緑色)が検出された。それぞれ単独に発現する細胞が観察された。
【図17】図17は、ヒトES細胞を用いた内胚葉臓器への分化誘導の結果を示す。図Aでは分化誘導12日目には内胚葉細胞のHnf3β陽性細胞(赤色)と小腸前駆細胞のCdx2陽性細胞(緑色)が検出された。共発現する細胞が多いが、Cdx2単独陽性細胞も見られた。図Bでは、分化誘導12日目には肝臓前駆細胞のアルブミン陽性細胞(赤色)とαフェトプロテイン陽性細胞(緑色)が検出された。図Cでは、分化誘導12日目には胆管細胞のCK19陽性細胞(緑色)とαフェトプロテイン陽性細胞(赤色)が検出された。
【図18】図18は、M15支持細胞上における無血清培地を用いた分化誘導による膵前駆細胞の誘導の結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17