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明細書 :ニトログアノシン-3’,5’-サイクリック1リン酸化合物およびプロテインキナーゼG活性化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4956752号 (P4956752)
登録日 平成24年3月30日(2012.3.30)
発行日 平成24年6月20日(2012.6.20)
発明の名称または考案の名称 ニトログアノシン-3’,5’-サイクリック1リン酸化合物およびプロテインキナーゼG活性化剤
国際特許分類 C07H  19/213       (2006.01)
A61K  31/708       (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P  15/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07H 19/213 CSP
A61K 31/708
A61P 9/12
A61P 9/10
A61P 15/10
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2007-505936 (P2007-505936)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
国際出願番号 PCT/JP2006/303671
国際公開番号 WO2006/093110
国際公開日 平成18年9月8日(2006.9.8)
優先権出願番号 2005052649
優先日 平成17年2月28日(2005.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】赤池 孝章
【氏名】芥 照夫
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】伊藤 幸司
参考文献・文献 米国特許出願公開第2004/0087539(US,A1)
国際公開第01/005837(WO,A1)
特開2002-523462(JP,A)
Journal of Medicinal Chemistry,1992年,35(24),4549-4556
調査した分野 C07H 19/213
A61K 31/708
A61P 9/10
A61P 9/12
A61P 15/10
A61P 43/00
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式で表される8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化1】
JP0004956752B2_000008t.gif

【請求項2】
請求項1に記載の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項3】
高血圧治療剤、狭心症治療剤、又は勃起不全症治療剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
プロテインキナーゼGを活性化することにより、高血圧、狭心症又は勃起不全症を改善する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有するプロテインキナーゼG活性化剤。
【請求項6】
下記化合物1:
【化2】
JP0004956752B2_000009t.gif
をブロミンと反応させることによって下記化合物2:
【化3】
JP0004956752B2_000010t.gif
を製造し、次いで、上記化合物2を亜硝酸と反応させることによって下記化合物3:
【化4】
JP0004956752B2_000011t.gif
を製造することを特徴とする、請求項1に記載の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸のアゴニストであり、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸依存的蛋白質リン酸化酵素(プロテインキナーゼG)活性化作用を有する新規な8-グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、および該化合物を有効成分として含有する医薬組成物、特にプロテインキナーゼG活性化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(cGMP)は、一酸化窒素(NO)やnatriuretic peptidesなどの細胞外からのシグナルを細胞内に伝える細胞内情報伝達分子である。グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸のレセプター蛋白質としては、これまで、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸依存的蛋白質リン酸化酵素(プロテインキナーゼG)、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸制御チャンネル、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸分解酵素(ホスホジエスラーゼ)が分かっている。特に、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸の情報伝達の初発反応が、プロテインキナーゼGの活性化であるとされている。プロテインキナーゼGは、セリン/スレオニンリン酸化酵素であり、μM前後のcGMP濃度で活性化される。血管平滑筋細胞においては、プロテインキナーゼGは、MLCP (myosin light chain phosphatase) を構成するMBS(myosin-binding subunit)の695番目のセリン(Ser)を含む数箇所をリン酸化し、血管平滑筋細胞が弛緩するものと考えられている。また、小胞体に存在するイノシトール3リン酸(IP3)receptor-associated cGKI substrate(IRAG)のSer683とSer696(ウシ型)をリン酸化し、IP3で誘導されるCaの小胞体からの放出を阻害する。この他に、Ca依存性Kチャンネル、ATP感受性Kチャンネル、L-, N-, T-型チャンネルがリン酸化により活性化されることが知られており、神経終末におけるCaチャンネルのリン酸化は神経伝達物質の遊離を促進するものと考えられる。PDE5もプロテインキナーゼGによって活性が調節されており、Ser92(ヒト型)がリン酸化されることでcGMPをGMPに分解する。
【0003】
このため、プロテインキナーゼGを活性化させる薬剤は、高血圧症、肺高血圧症、狭心症、動脈硬化性心・血管疾患や勃起不全症などの治療薬として有用である。プロテインキナーゼGを活性化させる化合物としては、これまでに、
8-ブロモグアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(8-Bromoguanosine 3', 5'- cyclic monophosphate )(8-Br-cGMP)、
8-ブロモグアノシン-3',5'-サイクリック1チオリン酸エステルSpアイソマー(8- Bromoguanosine- 3', 5'- cyclic monophosphorothioate, Sp- isomer) ( Sp-8-Br-cGMPS )、
8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(8- ( 4- Chlorophenylthio) guanosine- 3', 5'- cyclic monophosphate,)( 8-pCPT-cGMP )、
8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸アセトキシメチルエステル(8- ( 4- Chlorophenylthio) guanosine- 3', 5'- cyclic monophosphate, acetoxymethyl ester )( 8-pCPT-cGMP-AM ) 、
8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-3',5'-サイクリック1チオリン酸エステルSpアイソマー(8- ( 4- Chlorophenylthio) guanosine- 3', 5'- cyclic monophosphorothioate, Sp- isomer ( Sp-8-pCPT-cGMPS ) 、
8-(4-クロロフェニルチオ)ベータフェニル-1N2エテノグアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(8- (4- Chlorophenylthio)- s- phenyl- 1, N2- ethenoguanosine- 3', 5'- cyclic monophosphate )( 8-pCPT-PET-cGMP )、
8-(4-クロロフェニルチオ)ベータフェニル-1N2エテノグアノシン-3',5'-サイクリック1チオリン酸エステルSpアイソマー(8- (4- Chlorophenylthio)- β- phenyl- 1, N2- ethenoguanosine- 3', 5'- cyclic monophosphorothioate, Sp- isomer)( Sp-8-pCPT-PET-cGMPS ) 、
グアノシン-3',5'-サイクリック1チオリン酸エステルSpアイソマーGuanosine- 3', 5'- cyclic monophosphorothioate, Sp- isomer ( Sp-cGMPS )、
8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノグアノシン-3',5'-サイクリック1チオリン酸エステル、Spアイソマー(8-bromo-β-phenyl-1,N2-ethenoguanosine-3',5'-cyclic monophosphorothioate, Sp-isomer)(Sp-8-Br-PET-cGMPS )、
1-アミノグアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(1- Aminoguanosine- 3', 5'- cyclic monophosphate) ( 1-NH2-cGMP )、
8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン3',5'-サイクリック1リン酸(8- (2- Aminophenylthio)guanosine- 3', 5'- cyclic monophosphate) (8-APT-cGMP )、
などが知られている。cGMPアゴニストは、cGMPを介した細胞内情報伝達機構の解析として研究試薬として一般的に使用されており、特に8-Br-cGMPの使用頻度が高く、in vitroの培養細胞系での効果のみならず、in vivoにおいては、血管拡張作用があることも分かっている(Eur J Pharmacol. 118, 155-161(1985))。
【0004】
なお、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化させるニトログリセリンなどの有機硝酸製剤、サイクリックGMP分解酵素であるホスホジエステラーゼ5型を特異的に阻害するシルデナフィルなども、細胞内サイクリックGMP濃度を上昇させる作用がある。これらは、いずれも、間接的に、プロテインキナーゼGを活性化させることで薬理効果を発揮しており、すでに高血圧、狭心症や勃起不全治療の医薬品として臨床で使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸のアゴニストであり、プロテインキナーゼG活性化作用を有する新規な化合物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは一酸化窒素や活性酸素が反応して生じる活性酸化窒素種によって修飾される核酸のうち、グアノシン誘導体の新たな化合物を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物が、細胞膜を通過し細胞内のプロテインキナーゼGを活性化し、細胞内情報伝達を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、下記式で表される8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物が提供される。
【0008】
【化1】
JP0004956752B2_000002t.gif

【0009】
本発明の別の側面によれば、上記した8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物が提供される。好ましくは、本発明の医薬組成物は、高血圧治療剤、狭心症治療剤、又は勃起不全症治療剤である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、プロテインキナーゼGを活性化することにより、高血圧、狭心症又は勃起不全症を改善する。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有するプロテインキナーゼG活性化剤が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、下記化合物1:
【化2】
JP0004956752B2_000003t.gif
をブロミンと反応させることによって下記化合物2:
【化3】
JP0004956752B2_000004t.gif
を製造し、次いで、上記化合物2を亜硝酸と反応させることによって下記化合物3:
【化4】
JP0004956752B2_000005t.gif
を製造することを特徴とする、8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物の製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物をヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、プロテインキナーゼG活性に関連した疾患(例えば、高血圧、狭心症又は勃起不全症など)の治療方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物をヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、プロテインキナーゼGを活性化する方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、医薬組成物(特に、高血圧、狭心症又は勃起不全症などのプロテインキナーゼG活性に関連した疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物)又はプロテインキナーゼG活性化剤の製造のための、上記した8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物、又はその塩、水和物もしくは溶媒和物の使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の化合物は下記式で表されるものであり、8位にニトロ基が結合している点が特徴である。
【化5】
JP0004956752B2_000006t.gif

【0016】
本発明の化合物は、遊離型、塩型、水和物型(含水塩も含む)又は溶媒和物型のいずれの形態であってよい。たとえば、塩型としては、塩酸塩、硝酸塩又は硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩,クエン酸塩、プロピオン酸塩,酪酸塩,ギ酸塩、乳酸塩又はコハク酸塩などのなどの有機酸塩、もしくはアンモニウム塩などを例示することができ、特に薬学的に許容される塩が好ましい。また、溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0017】
次に、本発明の化合物の合成法について説明する。上記式で表される本発明の化合物は、例えば、次に示すフローチャートに従って合成することができる。
【0018】
【化6】
JP0004956752B2_000007t.gif

【0019】
上記のフローチャートにおいて、出発原料である化合物(1)は公知化合物であるN-ベンゾイルグアノシン-5'リン酸1水和物カルシウム塩と4-モルホリン-N,N'-ジシクロヘキシルカルボキサミジンとピリジン中で100℃で数時間反応させることにより容易に合成することができる(J.Am.Chem.Soc.,83, 698-706, 1961)。なお、原料のN-ベンゾイルグアノシン-5'リン酸1水和物カルシウム塩は溶媒に溶けにくいため、カルボキサミジンと塩交換を行い、溶媒に溶けやすくし、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(縮合剤)で縮合することができる。
【0020】
このようにして調製した化合物(1)とブロミンとをホルムアミドなどの溶媒中で氷中で0.5時間程度反応させることにより化合物(2)を得、化合物(2)と亜硝酸を70℃で5日間程度反応させることにより化合物(3)を得ることができる。本発明の化合物および合成中間体の単離精製は、通常の有機化合物の単離精製手段を採用すればよく、例えば、再結晶、各種クロマトグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0021】
本発明の化合物の用途は、グアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸のアゴニストであり、プロテインキナーゼGを活性化し細胞内情報伝達をおこなうことによって治療可能な疾患、すなわち、高血圧、狭心症、勃起不全症などの治療剤として有用である。
【0022】
高血圧は、血管の過剰な収縮が血圧を高めるひとつの要因になっていると考えられており、高血圧が持続すると血管が障害され、心臓病(狭心症、心筋梗塞など)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)、腎不全、大動脈瘤(大動脈にこぶができて破裂しうる病気)、網膜症(眼底出血など)、動脈硬化症といった合併症が引き起こされる。本明細書中上記した通り、血管平滑筋細胞においては、プロテインキナーゼGは、MLCP (myosin light chain phosphatase) を構成するMBS(myosin-binding subunit)のSer695を含む数箇所をリン酸化し、血管平滑筋細胞が弛緩するものと考えられている。本発明の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物は、プロテインキナーゼGを活性化することによって血管平滑筋を弛緩させる作用を有することから、高血圧治療剤として有用である。
【0023】
狭心症は、血栓や血管の収縮などにより冠動脈(冠状動脈)に血行障害が生じ、心筋の酸素需要に供給が追いつかなくなったために生じる病態のうち、虚血(酸素不足)が一過性で心筋の傷害は可逆的なものである。血管平滑筋を弛緩させ、血管、特に静脈を拡張できる薬剤は、心筋の前負荷を減少させ、これにより心臓の仕事量が減少し、酸素需要を減少することができるので狭心症の治療薬として有用である。本発明の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物は、プロテインキナーゼGを活性化することによって血管平滑筋を弛緩させる作用を有することから、狭心症治療剤として有用である。
【0024】
勃起不全症の主原因は、血管内皮からのNOの分泌低下、並びに陰部神経末端からの中枢よりの神経刺激によるNO分泌低下により、血管平滑筋のグアニル酸シクラーゼ酵素活性低下によって、cGMPの産生低下が起こり、プロテインキナーゼGの活性低下が細胞内へのCaイオンの流入を増大させ、血管平滑筋の弛緩反応が性欲求の刺激の結果として起こらない、あるいは弛緩反応が長く続かないことによる。本発明の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸化合物は、プロテインキナーゼGを活性化する作用を有するので、勃起不全症の治療剤として有用である。
【0025】
本発明の化合物は、上記疾患の治療のために、ヒトに経口、経腸、非経口、局所投与などのいずれの経路によっても投与することができる。投与量は、患者の年齢、病態、体重などによって適宜決定されるが、通常は、1日当たり0.1~1000 mg / kg体重の範囲内から選ばれ、1回または複数回に分けて投与される。
【0026】
本発明の化合物の製剤化に際しては、通常使用される製剤用担体、賦形剤、その他の添加剤を含む組成物として使用するのが普通である。担体としては、乳糖、カオリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、塩化ナトリウムなどの固体状担体、グリセリン、落花生油、ポリビニルピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、水などの液状担体を例示することができる。剤型としては任意の形態を採ることができ、たとえば固体状担体を使用する場合には、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル化剤、座剤、トローチ剤などを、液体担体を使用する場合にはシロップ、乳液、軟ゼラチンカプセル、クリーム、ゲル、ペースト、注射などをそれぞれ例示することができる。
以下の実施例(合成例、及び試験例)によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
合成例:
8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(8-NO2-cGMP)の合成は、Kapuler,A.Mらの方法(Biochemistry 10,4050-4061,1971)を一部改変しておこなった。すなわち、cGMPを出発材料として、第一段階としてブロモ化反応により8-ブロモグアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸(8-Br-cGMP)の合成し、続いて第二段階としてニトロ化反応により8-NO2-cGMPを合成した。なお、有機溶媒試薬は、特別な場合を除き、和光特級試薬を用いた。化合物(1)であるグアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸塩(MP Biomedicals社製)150 mgをホルムアミド5 mlに溶解し、氷中にてブロミン500μlを添加し30分間の反応によりブロモ化をおこなった。これにアニリン2 mlを添加し反応を停止させ、続いて反応体積の3倍量のジエチルエーテルを加えることでアニリンを上層のエーテル層に抽出し除去した。この抽出操作は、3回繰り返し行い、完全にアニリンを除去した。続いて、ホルミアミド層に1N NaOHを添加し、pH 9.0に調整した後、20 mlのブタノールおよび純水 5 mlを添加し、よく攪拌し8-Br-cGMPを下層の水層に回収した。これをロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、さらに4℃で一晩静置することで、8-Br-cGMPを沈殿として析出させた。遠心(15,000 rpm, 30 min, 4℃)により回収した沈殿に再び純水4 mlを加えて溶解した。これを0.45μmフィルターでろ過後、TSKgel ODS-80Ts(21.5×300 mm)(東ソー社製)を用いた逆相クロマトグラフィー(移動相:0.02% trifluoroacetic acid, 20%メタノール、流速3.5 ml / min)にて8-Br-cGMPを精製した。保持時間35分~65分間の約30分間のピーク100 mlを回収し、ロータリーエバポレーターにて1 mlまでに濃縮し、凍結乾燥により化合物(2)の粉末53.4 mg(収率35.6 %)を得た。
【0028】
化合物(2)の粉末をDMSOに溶解し終濃度83 mMとし、これに5 N塩酸を終濃度34.5 mMになるように添加した。ただちにDMSOに溶解した1 M亜硝酸ナトリウムを添加し終濃度333 mMとし、70℃で5日間反応させることによりニトロ化反応をおこなった。反応終了後、2.3倍量の純水を加え、1N NaOHによりpH8.5-9.0に調整した後、2倍量の体積になるように1-ブタノールを添加・攪拌し、得られた水層をロータリーエバポレーターにて濃縮した。
【0029】
濃縮した試料は、0.45 μmフィルターでろ過後、TSK-gel ODS-80Ts (21.5×300 mm)を用い、移動相の条件の異なる3回の逆相クロマトグラフィーにより高純度の8-NO2-cGMPを得た。逆相クロマトグラフィーの1回目は、移動相として10 mM sodium phosphate buffer (pH7.0), 16%メタノールを用い、流速3.5 ml / minにて保持時間55分~58分間の約3分間のピークを回収した。これをロータリーエバポレーターにて濃縮し、-20℃に冷却した100%エタノールを添加し、析出する塩を遠心により除去した。回収したエタノール上清には、再度100%エタノールを加え遠心し、エタノール層を回収した。エタノールを、ロータリーエバポレーターにて加熱濃縮により気相に除去した後、水溶液の試料を回収した。逆相クロマトグラフィーの2回目は、移動相として10 mM sodium phosphate buffer (pH7.0), 100 mM NaCl, 16%メタノールを用い、流速3.5 ml / minにて保持時間59分~67分間の約8分間のピークを回収し、これをロータリーエバポレーターにて濃縮し、エタノールを用いて脱塩操作をおこなった。逆相クロマトグラフィーの3回目は、移動相として0.02%trifluoroacetic acid , 20%メタノールを用い、流速3.5 ml / minにて保持時間50分~65分間の約15分間のピークを回収し、ロータリーエバポレーターにて濃縮した後、凍結乾燥により化合物(3)の粉末11.1 mg(収率20.8%)を得た。
【0030】
得られた化合物(3)の粉末に純水を加えて溶解し、LC-MS(LCMS-QP8000α)(SHIMADZU)を用いて質量分析を行った。その結果、保持時間15-18分のピークと一致して、[M+H]+390のピークが検出され、理論値と一致した。
【0031】
得られた化合物(3)の1H NMR、MS及びUVのスペクトルデータを下記に示す。
【0032】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):
δ: 4.06 (1H, ddd, J= 4.9, 10, 10 Hz), 4.28 (1H, ddd, J= 1.7, 10, 10 Hz), 4.43 (1H, ddd, J= 20, 10, 4.9 Hz), 4.83 (1H, d, J= 5.4 Hz), 5.02 (1H, ddd, J= 10, 5.4, 1.7 Hz), 6.00(1H, br s),6.33(1H, s), 7.05 (2H, br s), 11.3 (1H, s)
【0033】
MS (ESI, negative):
Calculated for C10H11N6O9P ([M-H]-): 389.02
Found: 389.10
【0034】
UV spectrum:
λmax= 253, 275, 390 nm (solvent: CH3OH)
【0035】
試験例1:プロテインキナーゼG活性化作用
8-NO2-cGMPによるプロテインキナーゼGを介した細胞内情報伝達についての解析は、Sergei D.Rybalkinら( J.Biol.Chem.277,3310-3317,2002)の方法に従って、プロテインキナーゼGの基質蛋白質であるVASP ( Vasodilator Stimulated Phosphoprotein )の157番目のSerのリン酸化をウエスタンブロッティングにより検出することでおこなった。具体的には、ヒト子宮平滑筋細胞( CAMBREX社製 )を10%ウシ胎児血清( FCS )を含むDulbecco's Modified Eagle Medium ( DMEM-10%FCS ) で培養した。6穴プレート (Falcon社製)の各ウエルに細胞数 4×105 cells / wellになるようにまき、24時間培養した後、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で3回洗浄した。続いて、1 mM 8-NO2-cGMP、1 mM 8-Br-cGMP(シグマ社製)を含むDMEM-10%FCSを細胞に添加した。添加後、5分、10分、15分、30分後にすばやく培地を除去しPBSで2回洗浄した後、細胞溶解液(20 mM Tris-HCl (pH8.0), 0.15 M NaCl, 1mM EDTA, 1 mM EGTA, 1% TritonX-100, 2.5 mM sodium pyrophosphate, 1mM β-glycerolphosphate, mM Na3VO4, 1 μg/ ml Leupeptin, 1 mM PMSF)を加えた。氷上で5分間、静置した後、セルスクレーパーにて回収した後、エッペンドルフチューブに移し超音波処理を5秒間、2回行うことで、充分に細胞を破砕した。これを遠心(15,000 rpm、10 min、4℃)し、上清の可溶性画分の蛋白質濃度をBCA protein assay(PIERCE社製)を用いて定量した。10%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に可溶性画分の蛋白質が10μg / laneになるように供し、PVDF膜(Millipore社製)にセミドライブロッティング装置にてブロッティングをおこなった。これを5%(w/v) Skim Milk(Difco社製)を含むTBST(20mM Tris-HCl(pH7.6), 137 mM NaCl, 0.1% Tween 20)にてブロッキングし、1次抗体は、抗VASP (Ser157) マウスモノクローナル抗体(Alexis Biochemicals社製)を5%(w/v) Skim Milkを含むTBSTに1000倍希釈し、4℃で一晩反応させた後、2次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識した抗マウスヤギ抗体(Amersham Biosciences社製)を5%(w/v) Skim Milkを含むTBSTに1000倍希釈し、室温で一時間反応させた。続いて、TBSTで10分、3回洗浄した後、発色剤としてECL-plus(Amersham Biosciences社製)を用い、化学発光をLAS 1000plus (FujiFilm社製)にて検出し、画像ファイルを取り込んだ。引き続き、PVDF膜をリプロービング緩衝液 (62.5 mM Tris-HCl (pH6.7), 2% SDS, 100 mM 2-メルカプトエタノール) を添加し、50 ℃で30分処理することで、抗体を膜から除去し、5%(w/v) Skim Milkを含むTBSTを用いて再びブロッキングした。1次抗体は、抗VASP ウサギポリクローナル抗体(Alexis Biochemicals社製)を5%(w/v) Skim Milkを含むTBST に1000倍希釈し、4℃で一晩反応させた後、2次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識した抗ウサギヤギ抗体(Amersham Biosciences社製)を5% (w/v) Skim Milkを含むTBST に1000倍希釈し、室温で一時間反応させた。その後、上記と同様にLASにて画像を取り込んだ。結果を図1に示す。図1の結果から分かるように、0分ではバンドが検出されなかったが、8-NO2-cGMPもしくは8-Br-cGMPを添加して、5分、10分、15分、30分後に、157番目のSerがリン酸化された50kDaのVASPのバンドが検出された。また、VASP分子全体を認識する抗体を用いた結果では、0分では、47kDaの非リン酸化のVASP蛋白のバンドが濃く観察され、50kDaのバンドは、ほとんど検出されなかったが、8-NO2-cGMP添加5分以後、全てにおいてリン酸化されたことにより高分子側にシフトした50kDaのバンドが濃く検出された。すなわち、8-NO2-cGMPは、cGMPと同様にプロテインキナーゼGを介した情報伝達をおこなうことが示された。
【0036】
試験例2: 血管平滑筋弛緩作用
8-NO2-cGMPの血管平滑筋弛緩作用については、Magnus, Rの方法(Ergen Physiol. 2, 637-672, 1903)に従って、摘出したラット頚動脈リング状標本を用いて、α1アドレナリン受容体アゴニストであるフェニレフリンを作用させて前収縮させた後、各種濃度の8- NO2-cGMPを加えて、その後の弛緩作用をマグヌス実験装置にて測定した。具体的には、SDラット (雄、10週齢、体重350 g、日本チャールス・リバー) をエーテル麻酔下にて屠殺し、頚動脈を摘出後、ステンレス棒を血管内腔に挿入し、擦過することで内皮細胞を除去した約4 mmのリング状血管標本を調製した。血管標本は、Krebs buffer (1.2 mM NaHPO4、120 mM NaCl、5.9 mM KCl、2.5 mM CaCl2、1.2 mM MgCl2、15.5 mM NaHCO3、11.5 mM Glucose ) 3 mlに浸漬させた。Krebs bufferは、あらかじめ、37℃にて保温し95% O2 + 5% CO2を通気させることにより酸素化し、pHを7.4に調整したものを用いた。リング状血管標本を、マイクロティッシュオーガンバスMTOB-2 (ラボサポート社製)内に固定し、アイソメトリックトランスデューサー及びトランスデューサー用アンプ(AG-621G 日本光電)を用いて、1 gの静止張力条件下における等尺性張力を測定した。データの解析には、PowerLabデータ収録装置(AD instruments社)を用いた。Krebs bufferに、l-phenylephrine hydrochloride (Wako社製)を終濃度100 nMとなるように添加し、血管を十分収縮させた後、8-NO2-cGMP、8-Br-cGMPをそれぞれ終濃度1 μM、3 μM、10 μM、30 μM、100 μM、300 μM、となるように累積投与し、血管平滑筋に対する弛緩作用を観察した。結果を図2に示す。図2の結果から分かるように、8- NO2-cGMPは、フェニレフリンにて収縮したラット頚動脈由来の血管に対して弛緩作用を示した。特に、張力変化0.1 g を示す8- NO2-cGMP の濃度は、10μMであるが、8-Br-cGMPの濃度は、30μM必要であり、8- NO2-cGMPは8-Br-cGMPの約3倍強い血管平滑筋弛緩作用があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼG活性化作用を有し、高血圧、狭心症、勃起不全症などの治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸によるプロテインキナーゼGの活性化をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す。
【図2】図2は、本発明の8-ニトログアノシン-3',5'-サイクリック1リン酸による血管弛緩作用を解析した結果を示す。
図面
【図2】
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【図1】
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