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明細書 :腸管免疫賦活剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5114713号 (P5114713)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
発明の名称または考案の名称 腸管免疫賦活剤
国際特許分類 C07K   1/08        (2006.01)
A61K  39/385       (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
FI C07K 1/08
A61K 39/385
A61K 47/42
A61K 47/48
A61P 37/04
A61P 37/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 18
出願番号 特願2007-542750 (P2007-542750)
出願日 平成18年10月31日(2006.10.31)
国際出願番号 PCT/JP2006/321720
国際公開番号 WO2007/052641
国際公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
優先権出願番号 2005317905
優先日 平成17年11月1日(2005.11.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年3月25日(2009.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】庄司 省三
【氏名】三隅 将吾
【氏名】中山 大介
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】川嵜 洋祐
参考文献・文献 国際公開第2004/032971(WO,A1)
Lambkin I et al.,Toward targeted oral vaccine delivery systems: selection of lectin mimetics from combinatorial libraries.,Pharm Res.,2003年 8月,Vol.20 no.8,pp.1258-1266
Quadri SM and Vriesendorp HM.,Effects of linker chemistry on the pharmacokinetics of radioimmunoconjugates.,Q J Nucl Med. ,1998年12月,Vol.42 no.4,pp.250-261
調査した分野 A61K 31/00 - 31/327
A61K 31/33 - 31/80
A61K 33/00 - 33/44
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)(4Fmoc-4DK-NH-Resin)をピペリジン中で処理することによって2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)を製造する工程;
(b)2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)にトリメトキシベンゾイルクロライドを反応させて、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)を製造する工程;及び
(c)2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)に三臭化ホウ素を反応させて、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)を製造する工程を含む、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)を製造する方法。
【請求項2】
(a)(4Fmoc-4DK-NH-Resin)をピペリジン中で処理することによって2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)を製造する工程;
(b)2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)にトリメトキシベンゾイルクロライドを反応させて、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)を製造する工程;
(c)2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)に三臭化ホウ素を反応させて、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)を製造する工程;及び
(d)2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)に、ペプチド結合又はシッフベースを介して、ペプチド、タンパク質、脂質又は糖を結合させる工程:
を含む、下記式1で示される化合物からなる腸管免疫賦活剤の製造方法。
式1:TGDK-CH2-CH2-NH-R
(式中、TGDK-CH2-CH2-NH-は、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinyl]aminoethylamino基を示し、Rは、ペプチド結合を介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖:あるいはシッフベースを介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖を示す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管免疫賦活剤に関する。より詳細には、本発明は、パイエル板のM細胞を識別することによって腸管免疫を賦活化することができる腸管免疫賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腸管免疫系は、からだの中で最も大きな免疫装置である。この腸管免疫系には大きな特徴がある。食品のように安全なものと、病原細菌のように病原性のあるものを識別し、判別し、食品は取込まれ、病原細菌は排除されている。腸管免疫系を構成しているのは、(1)パイエル板、(2)小腸上皮細胞とそこに存在する腸管固有リンパ球、(3)粘膜固有層とそこに存在する粘膜固有リンパ球であり、その数は全免疫系細胞の約60%で、経口的に体内に入る抗原が非常に多いため、それに対応すると考えられる。
【0003】
腸管腔内に侵入した抗原(病原性細菌)は、パイエル板のM細胞を通って体内に取り込まれ、パイエル板のなかで一般的な免疫応答が起こり、IgAが産生され、病原性細菌は排除される。また、抗原タンパク質等が、消化されず、腸管上皮細胞の間隙を通って、あるいは腸管上皮細胞内に取りこまれる形で体内に入り、このような抗原が腸管免疫系と接し、全身的な免疫応答が誘導され、IgG、IgEが産生されると食物アレルギーが発症することになるが、腸管粘膜を介して取込まれたタンパク質に対してアレルギー反応を起こさせない仕組みが経口免疫寛容である。経口免疫寛容が崩壊・破綻すると容易に食物アレルギーが発症すると考えられる。パイエル板のM細胞が食物中のアレルゲンを取込み、パイエル板のなかで一般的な免疫応答が引き起こされると、IgAが産生され、IgAがアレルゲンと結合し、中和され、排除されると同時にアレルギーの原因であるIgE、IgGの産生がおさえられ、食物アレルギーが抑制されると考えられる。
【0004】
アレルギーは免疫反応が過敏になったときに起きる疾病であるが、1965年においてこのアレルギーの発症頻度は、学童では約1%と報告されているが、約27年後の1992年の調査ではその罹患率は約40倍に増え、40%を越えている。2000年では、約2人に1人が何らかの形でアレルギーを持ち合わせている。アレルギーの発症には遺伝以外にも食生活の洋風化、都市環境の変化、大気汚染、ストレスの増加など、われわれの身の周りの変化もアレルギー増加の大きな原因といわれているので、これに対する対策が急務である。
【0005】
スギ花粉症は日本の代表的なアレルギー疾患の一つで、花粉の中のある種のタンパク質がアレルギー反応を引き起こすことが突き止められた。このタンパク質をマウスに食べさせると明らかにアレルギー発症が抑制されることが分かった。おそらく、アレルギー誘因性タンパク質に結合しているレクチン(複合多糖体)を介してパイエル板のM細胞を通って体内に取り込まれ、パイエル板のなかで一般的な免疫応答によるIgAの産生、この免疫反応が全身免疫として拡大され、アレルゲンが取り除かれたと考えられる。
【0006】
また、経口ワクチンの大成功例として、ポリオの生ワクチンがある。弱毒化されたポリオウイルスを経口投与するとパイエル板のM細胞を通って体内に取り込まれ、粘膜免疫が活性化し、免疫応答が引き起こされ、全身免疫として拡大し、ポリオウイルスの侵入を防いでいる。ここにおいても、M細胞が極めて重要な働きを司っている。
【0007】
腸管免疫機構が食品のように安全なものと、病原性細菌のように病原性のあるものを識別、判別できる能力を有する細胞はM細胞であり、病原性細菌はM細胞を介して、生体内に取込まれ生体の免疫系が発動して、排除していると考えられる。病原性細菌のM細胞にターゲットする分子は病原性細菌の表面に存在する複合糖タンパク質の表面に結合しているレクチン部分でる。その部分の分子をミミックした分子がD-リジンの4分子の縮合体の4個の1級アミンにgallic acidが酸アミド結合したものであろうと考えられている(Hamashin et al. Bioorg.Med. Chem.,11(2003)4991-4997)。
【0008】

【非特許文献1】Hamashinet al. Bioorg.Med. Chem.,11(2003)4991-4997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
M細胞を標的とする分子センサーを化学合成できれば、このM細胞標的分子センサーを疾病の原因になっている抗原に化学結合させ、経口的に投与することにより、この抗原はM細胞を識別して腸管免疫反応の誘導し、疾病を抑えられる可能性がある。これにより、アレルギー性疾患の抑制、自己免疫病の抑制、HIV-1 の飲むワクチンの開発、いろいろな疾病に対する予防ワクチンの開発に寄与できると考えられる。即ち、本発明は、パイエル板のM細胞を識別することによって腸管免疫を賦活化することができる新規な腸管免疫賦活剤を提供することを解決すべき課題とした。さらに、本発明は、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)の新規な製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、いろいろな抗原と容易に反応する官能基を導入した新たなコアー化合物として、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK,Mr.1053)の化学合成を行うことに成功した。TGDKがM細胞を識別することが培養細胞系を用いて、明確になったので、本化合物を、M細胞識別シグナル分子、M cell Discriminating Signal Molecule(McDS,マクドス)と名付けた。さらに、現在、McDSをアカゲサルの空腸に投与し、空腸のM細胞を識別していることを確認中である。McDSはethylamino基を有するため、活性エステル架橋法及びチオエーテル架橋法、シフベース架橋法等を介して、すべての抗原に結合させることが可能となった。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0011】
即ち、本発明によれば、下記式1で示される化合物からなる腸管免疫賦活剤が提供される。
式1:TGDK-CH2-CH2-NH-R
(式中、TGDK-CH2-CH2-NH-は、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinylaminoethylamino基を示し、Rは、水素原子;ペプチド結合を介して活性エステル基を有する基;ペプチド結合を介してSH基と結合する基;ペプチド結合を介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖:あるいはシッフベースを介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖を示す。)
【0012】
好ましくは、本発明の腸管免疫賦活剤は、自己免疫疾患、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)等の難治性疾患、アレルギー疾患、食物アレルギー、又は自己タンパク質の立体構造変異に起因する疾患の予防及び/又は治療のために使用される。
【0013】
好ましくは、本発明の腸管免疫賦活剤は、パイエル板のM(マイクロホールド)細胞を識別することによって腸管免疫を賦活化する。
【0014】
本発明の別の側面によれば、(a)2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジフルオレニルメチルオキシカルボニルリシニル)リシニル]-アミノエチルアミノトリチル樹脂(4Fmoc-4DK-NH-Resin)をピペリジン中で処理することによって2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)を製造する工程;
(b)2-[N-α, N-ε-(ジリシニル)リシニル]アミノエチルアミノトリチル樹脂 (4DK-NH-Resin)にトリメトキシベンゾイルクロライドを反応させて、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)を製造する工程;及び
(c)2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-ジ-3,4,5-トリメトキシベンゾイルリシニル)リシニル]- アミノエチルアミノトリチル樹脂(4MTBDK-NH-Resin)に三臭化ホウ素を反応させて、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)を製造する工程を含む、2-[N-α, N-ε-ビス(N-α, N-ε-ジガロイルリシニル)リシニル]アミノエチルアミン(TGDK-CH2-CH2-NH2)を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の腸管免疫賦活剤は、下記式1で示される化合物からなることを特徴とする。
式1:TGDK-CH2-CH2-NH-R
(式中、TGDK-CH2-CH2-NH-は、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinyl]aminoethylamino基を示し、Rは、水素原子;ペプチド結合を介して活性エステル基を有する基;ペプチド結合を介してSH基と結合する基;ペプチド結合を介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖:あるいはシッフベースを介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖を示す。)
【0016】
式1:TGDK-CH2-CH2-NH-RにおいてRが水素原子である化合物である、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinyl]aminoethylamine(TGDK-CH2-CH2-NH2)は、本明細書の実施例1に記載の通り、4Fmoc-4DK-NH-Resinを脱保護(脱Fmoc)し、Trimethoxybenzoyl chloride(TMBC)でTrimethoxy Benzoyl化を行い、さらに三臭化ホウ素で脱metoxy化することにより合成することができる。
【0017】
具体的には、先ず、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-difluorenylmethyloxycarbonyllysinyl)lysinyl]- aminoethylaminotritylresin(4Fmoc-4DK-NH-Resin)に20%ピペリジン(脱水DMF中)を添加し、室温で超音波処理することによって、Fmocを除去することができる。
【0018】
次いで、得られた2-[N-α, N-ε-(dilysinyl)lysinyl]aminoethylaminotritylresin (4DK-NH-Resin) を脱水DMF(ジメチルホルムアミド)で洗浄し(超音波処理)する。洗浄した4DK-NH-Resinに、脱水DMF及びTEAを添加し、さらにTrimethoxybenzoyl chlorideを添加し、反応混合物を40℃で撹拌することによって、Trimethoxy Benzoyl化を行う。得られた4MTBDK-NH-Resinを、1%トリエチルアミン(TEA)を含む脱水DMFで洗浄して過剰のTMBCを除去し、さらに、脱水DMFで5回洗浄して、TEAを除去し、洗浄済みの4MTBDK-NH-Resinを調製することができる。
【0019】
次いで、4MTBDK-NH-Resinに、三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液を撹拌しながら添加し、添加終了後、ドライヤーで加温しながら、DMF及び塩化メチレンを除く。反応混合物に水を撹拌しながら加える。反応混合物を遠心分離し、樹脂層と上清を分離し、それぞれ凍結乾燥する。樹脂層を「Ppt Resin」とし、上清を「凍結乾燥上清S」とする。「Ppt Resin」を脱水DMFに懸濁し、樹脂を分離し、さらに、樹脂に脱水DMFを加え、合わせて抽出液とする。この抽出液にトリエチルアミン溶液を加え、アルカリ性にし、生じた沈殿を除き、上清にエーテルを加え、生じた沈殿を風乾し、脱水DMFを加え、不溶性沈殿を除き、さらに、エーテルを加えて生じた沈殿を試料(TGDK-CH2-CH2-NH2)とすることができる。また、「凍結乾燥上清S」には脱イオン水を加え、トリエチルアミンでアルカリ性にし、凍結乾燥する。得られた乾燥品に脱水DMFを加え、不溶性残渣を除き、可溶性画分にエーテルを滴下し、生じた沈殿を試料とすることができる。(TGDK-CH2-CH2-NH2
【0020】
また、式1:TGDK-CH2-CH2-NH-Rにおいて、Rがペプチド結合を介して活性エステル基を有する基;ペプチド結合を介してSH基と結合する基;ペプチド結合を介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖:あるいはシッフベースを介して結合しているペプチド、タンパク質、脂質又は糖を示す化合物は、式1:TGDK-CH2-CH2-NH-RにおいてRが水素原子である化合物に対して、それぞれに対応する化合物(ペプチド、タンパク質、脂質、ポリエチレングリコール類又は糖などを含む)を反応させることにより合成することができる。
【0021】
Rがペプチド結合を介して活性エステル基を有する基としては、スクシンイミジル、p-ニトロフェノール等が挙げられる。
【0022】
Rがシッフベースを介して結合するペプチド、タンパク質、脂質、ポリエチレングリコール類又は糖である場合には、グルタールアルデヒドを介してペプチド・タンパク質、アミノ脂質、アミノ糖類、アミノ基をもったポリエチレングリコール類、アルデヒドをもった化合物を反応させることができる。
【0023】
また、上記したような式1:TGDK-CH2-CH2-NH-Rで示される化合物は、TGDK-CH2-CH2-NH2に、多価性試薬(市販品、多機能性ポリエチレングリコール類、日本油脂KK, 2006.、p.10~15)、・二価性試薬、Hetero-bifunctional reagents、アミノ基とSH基との架橋反応が可能な異反応性二価性試薬(市販品、同仁化学研究所2005、p.234~236)を反応させることによって作成することもできる。
【0024】
上記したような各種のRを、TGDK-CH2-CH2-NH2に結合させる方法としては、例えば、TGDK-CH2-CH2-NH2のDMF溶液に二価性試薬及び異反応性二価性試薬のDMF溶液をN-methylmorphorlneアルカリで反応させ、生理的緩衝液で数十倍に希釈し、生理的条件下で、生理活性ペプチド、タンパク質のアミノ基、SH基と反応させる方法を挙げることができる。
【0025】
式1:TGDK-CH2-CH2-NH-RにおいてRが水素原子である化合物である、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinyl]aminoethylamine(TGDK-CH2-CH2-NH2)は、上記した通り、ペプチド結合又はシッフベースなどを介して、ペプチド、タンパク質、脂質、ポリエチレングリコール類又は糖と結合することにより、腸管免疫賦活剤として使用することができる。
【0026】
本発明で用いることができるペプチド、タンパク質、脂質、ポリエチレングリコール類又は糖としては、抗原となり得るものであれば特に限定されず、任意のものを使用することができる。
【0027】
本発明の免疫賦活剤のために用いることができる抗原としては、腫瘍抗原、病原体抗原およびアレルゲン抗原などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで言う病原体抗原とは、病原体に特有の抗原を意味し、ウイルス、細菌、寄生生物または菌類から得られる抗原である。
【0028】
病原体の具体例としては、コレラ菌、毒素原性大腸菌、ロタウイルス、クロストリジウム・ディフィシレ、赤痢菌、サルモネラ・チフィ、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、ストレプトコッカス・ミュータンス、熱帯熱マラリア原虫、黄色ブドウ球菌、狂犬病ウイルスおよびエプスタイン‐バーウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、アレルゲン抗原としては、ハプテン、または花粉、ほこり、カビ、胞子、鱗屑、昆虫および食品由来の抗原などを挙げることができる。
【0029】
本発明の免疫賦活剤においては、式1で示される化合物は、薬学的に許容される担体と一緒に適当な製剤にすることができる。担体として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤などを用いることができる。また、酸化防止剤のような添加剤を配合してもよい。製剤の形態は特に限定されず、液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の任意の形態とすることができる。
【0030】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖又はブドウ糖等の糖類;バレイショデンプン又はコムギデンプン等のデンプン類、;結晶セルロース等のセルロース類;無水リン酸水素カルシウム又は炭酸カルシウム等の無機塩類等、ポリエチレングリコール類等を使用することができる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、プルラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、又はポリビニルピロリドン等、多機能性ポリエチレングリコール類等を使用することができる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、又はアルギン酸ナトリウム等、ポリエチレングリコール類等を使用することができる。潤沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを使用することができる。ナノ粒子化剤としてはコレステロールプルラン、多機能性ポリエチレングリコール類等(日本油脂KK)を使用することができる。
【0031】
本発明の免疫賦活剤は、特に腸管免疫を賦活する腸管免疫賦活剤として好適に使用できる。
【0032】
本発明の免疫賦活剤の投与経路は特に限定されず、経口投与でも非経口投与(例えば、直腸投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔投与および静脈内投与など)でもよいが、好ましくは経口投与である。
【0033】
本発明の免疫賦活剤の製剤中に含まれる式1で示される化合物の量は、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等に応じて適宜設定することができるが、例えば、1μg~1000mg/kg/回、好ましくは10μg~100mg/kg/回とすることができる。
【0034】
本発明の免疫賦活剤は、アジュバントと一緒に投与してもよい。アジュバントとしては、ワクチン(抗原)の投与に先立って投与しておくことにより免疫応答を増強できる物質であれば、任意の物質を使用することができる。殺菌微生物のように抗原性をもつもののほか,alum(硫酸アルミニウム・カリウムなど)や鉱物油のように非抗原性のものでもよい。Freundは1947年抗原水溶液を等量の油(鉱物油85%,界面活性剤15%)と混ぜ,乳剤の状態で注射すると抗体の産生量が増大することを見出した。これは不完全フロインドアジュバントincomplete Freund's adjuvant(IFA)と呼ばれ,これに結核菌の菌体成分を加えたものが完全アジュバントcomplete F's. a.(CFA)である。このほか、水酸化アルミニウム,リン酸アルミニウムなどの鉱酸塩はアジュバント効果を示す。また、細菌内毒素、特にグラム陰性菌のリポ多糖類は抗体産生を著明に促進することができ、有効成分はlipid Aにある。本発明では、上記したものをアジュバントとして使用することができる。アジュバントの投与経路は特に限定されず、経口投与でも非経口投与でもよい。
【0035】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:TGDK-CH2-CH2-NH2の化学合成
(材料)
3,4,5-Trimethoxy Benzoyl Chloride(TMBC) は東京化成から購入し、2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-difluorenylmethyloxycarbonyllysinyl)lysinyl]-aminoethylaminotrityl resin(略記名4Fmoc-4DK-NH-Resin)は渡辺化学より購入した。Disuccinimidyl suberate(DSS)はPIERCE社、fluoroisothiocyanate(FITC)は和光純薬、Tetramethylrhodamine-5-(and-6)-isothiocyanate(TRITC)-conjugateddonkey anti-mouse IgG(H+L) antibodyはJackson ImmunoResearch(U.S.A)から入手した。
【0037】
(方法)
(1)4Fmoc-4DK-NH-Resinの脱保護による4DK-NH-Resinの調製
2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-difluorenylmethyloxycarbonyllysinyl)lysinyl]-aminoethylaminotrityl resin(4Fmoc-4DK-NH-Resin、1g、0.5m mole Fmoc/g resin)に、20%ピペリジン(脱水DMF中)(20 ml)を添加し、室温で20分間、超音波処理(各5秒)し、Fmocを完全に除いた。上記の操作を2回繰り返して、2-[N-α, N-ε-(dilysinyl)lysinyl]aminoethylaminotritylresin (略記名4DK-NH-Resin)を得た。
【0038】
【化1】
JP0005114713B2_000002t.gif

【0039】
【化2】
JP0005114713B2_000003t.gif

【0040】
(2)4DK-NH-ResinのTrimethoxy Benzoyl化による4MTBDK-NH-Resinの調製
4DK-NH-Resinを脱水DMF(15 ml)を用いて6回洗浄した(超音波処理、各5sec)。各行程では、遠心分離した。洗浄した4DK-NH-Resinに、脱水DMF(5 ml)及びTEA (7 mmole) (1 ml)を添加し、さらに脱水DMF(1 ml)中にTrimethoxybenzoyl chloride 1mmole(TMBC、230 mg) を含む溶液を、0.1mlずつ上下に激しく撹拌しながら添加した。Resinの反応混合物(全量10 ml)を40℃で120 分間撹拌した。得られた4MTBDK-NH-Resinを、1%TEAを含む脱水DMF(15 ml)で5回洗浄してTMBCを除去した。さらに、脱水DMF(15 ml)で5回洗浄して、TEAを除去して、洗浄済みの4MTBDK-NH-Resinを調製した。
【0041】
【化3】
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【0042】
(3)4MTBDK-NH-Resinの脱メトキシ化によるTGDK-CH2-CH2-NH2の合成
100mgの4MTBDK-NH-Resin(500 μLのDMF中)に、三臭化ホウ素(BBr3、1mol/Lin ジクロロメタン)10ml(DMF容積の20当量容積)を激しく撹拌しながら約1~2分かけて添加した。激しく発煙、発熱する。途中で反応の色が赤褐色から白く変わり、さらに褐色になる。添加終了後、ドライヤーで加温しながら、DMF及び塩化メチレンを除いた。固化し、赤褐色に着色した。水10mlを撹拌しながら加える。発煙、発泡する。反応混合物を3500rpm で5分間遠心分離し、樹脂層と上清を分離し、それぞれ凍結乾燥した。樹脂層を「Ppt Resin」とし、上清を「凍結乾燥上清S」とした。
【0043】
(i)「PptResin」からTGDK-CH2-CH2-NH2の精製
「Ppt Resin」100mgを脱水DMF1000μLに懸濁し、樹脂を分離し、さらに、樹脂に脱水DMF1000μL加え、合わせて抽出液とした。この抽出液にトリエチルアミン溶液を加え、アルカリ性にし、生じた沈殿を除き、上清にエーテル20mlを加えた。生じた沈殿を風乾し、脱水DMF500μLを加え、不溶性沈殿を除き、さらに、エーテル10mlを加えて生じた沈殿を試料とした。MS分析を行い、純度不良の場合、脱水DMFに溶解し、不純物を除き、エーテル沈殿を行い、この操作を数回して精製した。
【0044】
(ii)「凍結乾燥上清S」からTGDK-CH2-CH2-NH2の精製
100mg4MTBDK-NH-Resinから得られた「凍結乾燥上清S」に脱イオン水5.0 mlを加え、トリエチルアミン0.6mlでアルカリ性にし、凍結乾燥した。得られた乾燥品に脱水DMF1000μLを加え、不溶性残渣を除き、可溶性画分にエーテル15mlを滴下し、生じた沈殿を試料とした。MS分析を行い、純度不良の場合、脱水DMFに溶解し、不純物を除き、エーテル沈殿を行い、この操作を数回して精製した。
【0045】
「Ppt Resin」及び「凍結乾燥上清S」からの合わせた収率は80%で、4Fmoc-4DK-NH-Resin(0.5m molof Fmoc/1gresin)から、MS分析上均質なTGDK-CH2-CH2-NH2(100mg)が得られた。上記の方法で得られた2-[N-α, N-ε-bis(N-α, N-ε-digalloyllysinyl)lysinyl]aminoethylamine(TGDK-CH2-CH2-NH2)のMALDI TOF MSで求めた質量数は1053.38であった。TGDK-CH2-CH2-NH2(McDS)のMALDI TOF MSを図1に示す。
【0046】
【化4】
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【0047】
(4)TGDK-SS(活性エステル)の合成
Disuccinimidyl suberate(DSS)(60μmol,36.8 mg)を脱水DMF300μLに溶かし、n-methylmorphorine(50μL)を滴下し、TGDK-CH2-CH2-NH2のDMF solution(500μL,10μmol)を加え、室温で60分反応させた。反応後、Trifluoroacetic acid (TFA,20μL滴下し,pHを中性にした後、dichloromethane 7mlで1回、さらに3.5mlで2回、過剰のDSSを抽出して除いた。残渣に脱水DMF500μLを加え、溶解し、エーテル5mlを滴下して生じる沈殿を脱水DMF100μLに溶解して試料とした。試料の純度はMS分析して求めた。収率は約50%で5μmolである。なお、純度が不良の場合、DMFに溶かし、不溶物を除き、エーテルで沈殿し、DMFに再溶解して用いた。
【0048】
【化5】
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【0049】
実施例2:TGDK-FITCのM細胞へのターゲット
(方法)
(1)TGDKの蛍光ラベル化
TGDKは、以下の方法によりFluoroisothiocyanate(FITC)を用いて、蛍光ラベル化した。TGDK-CH2-CH2-NH2及びFITCをDMFに別々に溶かし、混合し、トリエチルアミンを少量加え、室温で60分作用させ、エーテルを加え、生じた沈殿をMS分析して純度を確認して試料とした。
【0050】
(2)M細胞は、CACO-2細胞にRaji B細胞培養液で形質転換して用いた。具体的には、CACO-2細胞は10,000 cells/well ( Lab-Tek Chamber Slide System, Nunc社製)で21日間培養し(週二回培地交換)、その後RajiB細胞培養上清とCACO-2細胞用培地を1:1で混合した培地でさらに3日間培養した。
【0051】
(3)共焦点顕微鏡を用いたTGDKのM-cell標的の確認
細胞をPBS(-)で洗浄後、TGDK- FITC(10 uM)とポリオウイルス(ヒト経口生ワクチンの1/10量)を加え、30分間室温にてインキュベーションした。その後PBS(-)洗浄し、ポリオウイルス検出マウス抗体(抗Poliovirus単クローン抗体)を処理後、室温で30分インキュベーションした。さらにPBS(-)洗浄し、TRITC標識抗マウス抗体(TRITC-conjugated donkey anti-mouseIgG(H+L) antibody)を処理後、室温で30分インキュベーション後、PBS(-)洗浄・1%パラホルムアルデヒドにて固定化後mounting mediumにてマウントした後、共焦点顕微鏡にて観察した。
【0052】
(結果)
図2にはM細胞の顕微鏡図を示し、a:小腸絨毛組織;b:パイレルパッチ;c: パイレルパッチのM細胞を表している。CACO-2細胞がRaji B細胞培養液で形質転換し、M細胞様に変化(図3a)し、Poliovirusのターゲットが認められた(図3b)ことから、このM細胞様細胞はM細胞と同定できる。次に、蛍光抗体法でTGDK-FITCのM細胞へのターゲットを調べた結果、図3cに示すように、TGDKはM細胞に、ターゲットしていることが明らかになった。さらに、図3dに示すように、PoliovirusのM細胞へのターゲットしている同じM細胞にTGDKがターゲットしていることが、両蛍光色素のMerge(重なり合い)から明確に確認された。以上の結果から、TGDK分子はM細胞ターゲット分子として著効であり、腸管免疫賦活剤として、有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の腸管免疫賦活剤は、パイエル板のM細胞を識別することによって腸管免疫を賦活化することができる。本発明の腸管免疫賦活剤は、例えば、(1)飲むワクチンの基剤、(2)自己免疫病予防・治療ワクチン基剤、(3)アレルギー予防・治療ワクチン基剤、(4)食物アレルギー予防・治療ワクチン基剤、並びに(5)FAP、プリオン病等、自己タンパク質の立体構造変異に起因する疾病の予防・治療用ワクチンの産生基剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、TGDK-CH2-CH2-NH2のMALDI TOF MSを示す。TGDK-CH2-CH2-NH2の質量数は1053.38で、実測値1053.03(安定同位体を含む質量数)及び理論値1052.40(安定同位体を含まない質量数)と良く一致した。
【図2】図2は、小腸の絨毛組織、パイレルパッチ、M細胞を示す。
【図3】図3は、共焦点顕微鏡を用いてTGDKのM-cellへのターゲッティングを確認した結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2