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明細書 :ES細胞の分化誘導方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5124820号 (P5124820)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
発明の名称または考案の名称 ES細胞の分化誘導方法
国際特許分類 C12N   5/0735      (2010.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/00 202C
C12Q 1/02 ZNA
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 28
出願番号 特願2009-517844 (P2009-517844)
出願日 平成20年5月30日(2008.5.30)
国際出願番号 PCT/JP2008/060029
国際公開番号 WO2008/149807
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権出願番号 2007143225
優先日 平成19年5月30日(2007.5.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年1月21日(2010.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】粂 昭苑
【氏名】白木 伸明
【氏名】梅田 香穂子
【氏名】粂 和彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】幸田 俊希
参考文献・文献 SHIRAKI,N. et al.,Guided differentiation of embryonic stem cells into Pdx1-expressing regional-specific definitive endoderm.,Stem Cells,2008年 4月,Vol.26, No.4,pp.874-85
SHIRAKI,N. et al.,Differentiation of mouse and human embryonic stem cells into hepatic lineages.,Genes Cells,2008年 7月,Vol.13, No.7,pp.731-46
SOTO-GUTIERREZ,A. et al.,Differentiation of mouse embryonic stem cells to hepatocyte-like cells by co-culture with human liver nonparenchymal cell lines.,Nat. Protoc.,2007年 2月,Vol.2, No.2,pp.347-56
SOTO-GUTIERREZ,A. et al.,Reversal of mouse hepatic failure using an implanted liver-assist device containing ES cell-derived hepatocytes.,Nat. Biotechnol.,2006年11月,Vol.24, No.11,pp.1412-9
DASGUPTA,A. et al.,E-cadherin synergistically induces hepatospecific phenotype and maturation of embryonic stem cells in conjunction with hepatotrophic factors.,Biotechnol. Bioeng.,2005年11月 5日,Vol.92, No.3,pp.257-66
SAITO,K. et al.,Promoted differentiation of cynomolgus monkey ES cells into hepatocyte-like cells by co-culture with mouse fetal liver-derived cells.,World J. Gastroenterol.,2006年11月14日,Vol.12, No.42,pp.6818-27
LAVON,N. AND BENVENISTY,N.,Study of hepatocyte differentiation using embryonic stem cells.,J. Cell. Biochem.,2005年12月15日,Vol.96, No.6,pp.1193-202
LARSSON,S.H. et al.,Subnuclear localization of WT1 in splicing or transcription factor domains is regulated by alternative splicing.,Cell,1995年 5月 5日,Vol.81, No.3,pp.391-401
調査した分野 C12N 5/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することを含む、ES細胞から肝細胞へと分化誘導する方法。
【請求項2】
M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養する際にさらにBMP4を添加して培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ES細胞をアクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、アクチビン、及びbFGFの添加を中止して、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である、請求項1から3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の方法によりES細胞から肝細胞へと分化誘導する工程、及び分化誘導された肝細胞を蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)によって分離する工程を含む、ES細胞から分化誘導された肝細胞を取得する方法。
【請求項6】
M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することによってES細胞から肝細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞への分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から肝細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法。
【請求項7】
被験物質が成長因子又は低分子化合物である、請求項に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
肝細胞で発現するマーカーの発現量を指標として、肝細胞へと分化誘導の程度を測定する、請求項又はに記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
哺乳動物由来のES細胞がマウス、サル又はヒト由来のES細胞である、請求項からの何れかに記載のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】

本発明は、ES細胞の分化誘導方法に関する。より詳細には、本発明は、特定の支持細胞として用いてES細胞を肝細胞へと分化誘導する方法に関する。

【背景技術】
【0002】

胚性幹(ES)細胞は、胚盤胞の内細胞塊(ICM)に由来する多能性細胞である。ES細胞は未分化状態では無制限に培養でき、刺激されると多様な細胞型に分化できる。ES細胞のin vitro分化の研究によれば、ES細胞は神経細胞、造血性細胞、ならびに膵臓や肝臓などの内胚葉系の細胞への誘導が可能である。多くの研究結果が示唆するように、ES細胞は通常の発生段階を再現するため、発生生物学での初期誘導プロセスのin vitro分析、細胞療法、肝毒性研究への応用標的、創薬における薬物代謝研究に使用できる(非特許文献1及び2)。

【0003】

肝臓は、炭水化物代謝、尿素および脂質代謝、必須栄養素の貯蔵、ならびに薬物の生体内変換などの複雑な機能を有する重要な臓器である。薬物の生体内変化には、親分子よりも代謝産物の毒性が強い場合、解毒だけでなく生体内活性化も含まれる。従って、創薬プロセスの初期段階で、薬物の生体内変化は重要な役割を果たす。初代培養は、短命で、長期間、培養を維持することができない。さらに初代培養では、ドナー由来の変異がかなり大きい。ES細胞は、新たな薬物をスクリーニングする戦略の開発のために大量の細胞を常に用意できるという点で魅力的な原料である。

【0004】

脊椎動物の肝臓は、腹側前腸内胚葉から発生する。腹側前腸内胚葉の組織からは他に、肺、膵臓、甲状腺が発生する(非特許文献3及び4)。これまでの研究結果から、腹側前腸のさまざまな部位は、その下にある中胚葉からのシグナルによって領域化されていることが判明しているが、特定の内胚葉組織が発生する機序に関しては十分には明らかになっていない。WellsとMeltonの研究によれば、外中胚葉からのシグナルが内胚葉を領域化し、内胚葉が特定の特質を獲得する。その後、脊索に由来するシグナルが背側膵に強いシグナルを送る。他方、心臓中胚葉および横中隔間葉に由来するFGFとBMPは心臓誘導ならびに肝臓遺伝子発現と内胚葉増殖に必要不可欠であることが示された(非特許文献5及び6)。心臓中胚葉由来のFGFシグナルは上腹側内胚葉の運命を膵臓ではなく肝臓へと変化させる(非特許文献7)。

【0005】

ES細胞がin vitroとin vivoの両方で肝細胞へ分化誘導されたことを報告する研究がある。in vitroでの手法には、肝臓器官形成誘導に必要な微小環境を模倣した胚様体の形成(非特許文献8及び9)や、肝細胞分化にとって重要な特定の成長因子やサイトカインを使用した処理(特許文献10)がある。また、ES細胞と胎児性間葉細胞の共培養により、ES細胞が肝細胞に分化することが判明している(特許文献11)。最近の研究では、BMP4を使用したES細胞由来の幹細胞のin vitroでの作成が報告されている(非特許文献12)。こうした研究結果は有望ではあるものの、肝細胞の発生が不完全であるために十分量の肝細胞を作成するには至っていない。

【0006】

また、特許文献1には、支持細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養することを含む、ES細胞から内胚葉系細胞へと分化誘導する方法が記載されている。

【0007】


【特許文献1】国際公開WO2006/126574号公報
【非特許文献1】Davila, J. C., Cezar, G. G., Thiede, M., Strom, S., Miki, T.and Trosko, J. (2004). Use and application of stem cells in toxicology. Toxicol Sci 79, 214-23.
【非特許文献2】Kulkarni, J. S. and Khanna, A. (2006). Functional hepatocyte-like cells derived from mouse embryonic stem cells: a novel in vitro hepatotoxicity model for drug screening. Toxicol In Vitro 20, 1014-22.
【非特許文献3】Wells, J. M. and Melton, D. A. (1999). Vertebrate endoderm development. Annu Rev Cell Dev Biol 15, 393-410.
【非特許文献4】Zaret, K. S. (2000). Liver specification and early morphogenesis. Mech Dev 92, 83-8.
【非特許文献5】Jung, J., Zheng, M., Goldfarb, M. and Zaret, K. S. (1999). Initiation of mammalian liver development from endoderm by fibroblast growth factors. Science 284, 1998-2003.
【非特許文献6】Rossi, J. M., Dunn, N. R., Hogan, B. L. and Zaret, K. S. (2001). Distinct mesodermal signals, including BMPs from the septum transversum mesenchyme, are required in combination for hepatogenesis from the endoderm. Genes Dev 15, 1998-2009.
【非特許文献7】Deutsch, G., Jung, J., Zheng, M., Lora, J. and Zaret, K. S. (2001). A bipotential precursor population for pancreas and liver within the embryonic endoderm. Development 128, 871-81.
【非特許文献8】Asahina, K., Fujimori, H., Shimizu-Saito, K., Kumashiro, Y.,Okamura, K., Tanaka, Y., Teramoto, K., Arii, S. and Teraoka, H. (2004). Expression of the liver-specific gene Cyp7a1 reveals hepatic differentiation in embryoid bodies derived from mouse embryonic stem cells. Genes Cells 9, 1297-308.
【非特許文献9】Heo, J., Factor, V. M., Uren, T., Takahama, Y., Lee, J. S., Major, M., Feinstone, S. M. and Thorgeirsson, S. S. (2006). Hepatic precursors derived from murine embryonic stem cells contribute to regeneration of injured liver. Hepatology 44, 1478-86.
【非特許文献10】Teratani, T., Yamamoto, H., Aoyagi, K., Sasaki, H., Asari,A., Quinn, G., Sasaki, H., Terada, M. and Ochiya, T. (2005). Direct hepatic fate specification from mouse embryonic stem cells. Hepatology 41, 836-46.
【非特許文献11】Ishii, T., Yasuchika, K., Fujii, H., Hoppo, T., Baba, S., Naito, M., Machimoto, T., Kamo, N., Suemori, H., Nakatsuji, N. et al. (2005). In vitro differentiation and maturation of mouse embryonic stem cells into hepatocytes. Exp Cell Res 309, 68-77.
【非特許文献12】Gouon-Evans, V., Boussemart, L., Gadue, P., Nierhoff, D., Koehler, C. I., Kubo, A., Shafritz, D. A. and Keller, G. (2006). BMP-4 is required for hepatic specification of mouse embryonic stem cell-derived definitive endoderm. Nat Biotechnol 24, 1402-11.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

本発明は、ES細胞を確実に肝細胞に分化させるためのシステムを確立することを解決すべき課題とした。

【課題を解決するための手段】
【0009】

本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、支持細胞としてM15細胞を用いて哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することによって肝細胞へと分化誘導できることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0010】

即ち、本発明によれば、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することを含む、ES細胞から肝細胞へと分化誘導する方法が提供される。

【0011】

好ましくは、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養する際にさらにBMP4を添加して培養する。

好ましくは、ES細胞をアクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、アクチビン、及びbFGFの添加を中止して、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養する。

好ましくは、哺乳動物由来のES細胞はマウス、サル又はヒト由来のES細胞である。

【0012】

本発明の別の側面によれば、上記した本発明の方法により得られる、ES細胞から分化誘導された肝細胞が提供される。

本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法によりES細胞から肝細胞へと分化誘導する工程、及び分化誘導された肝細胞を蛍光標識によるフローサイトメトリー(FACS)によって分離する工程を含む、ES細胞から分化誘導された肝細胞を取得する方法が提供される。

【0013】

本発明のさらに別の側面によれば、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することによってES細胞から肝細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞への分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から肝細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法が提供される。

【0014】

好ましくは、被験物質は成長因子又は低分子化合物である。

好ましくは、肝細胞で発現するマーカーの発現量を指標として、肝細胞へと分化誘導の程度を測定する。

好ましくは、哺乳動物由来のES細胞はマウス、サル又はヒト由来のES細胞である。

【0015】

本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法により得られる、ES細胞から分化誘導された肝細胞に被験物質を投与し、該肝細胞に対する影響を分析することを含む、肝臓毒性試験方法が提供される。

本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法により得られる、ES細胞から分化誘導された肝細胞に被験物質を投与し、該被験物質の代謝を分析することを含む、薬物代謝試験方法が提供される。

【発明の効果】
【0016】

本発明の方法によれば、ES細胞から肝細胞を効率よく分化誘導することができる。また、本発明の培養方法を用いることにより、未知の物質の肝臓への分化誘導効果を感度良く測定することができることから、肝細胞への分化誘導物質のスクリーニング方法として応用できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】

以下、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。

本発明は、ES細胞から肝細胞へと分化誘導する方法において、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することを特徴とする方法である。

【0018】

上記の通り、本発明は、ES細胞からの肝細胞様細胞の誘導に関するものである。ES細胞由来の肝細胞を分析した結果、これらの細胞はグリコーゲンを貯蔵し、アルブミン、胆汁酸トランスポーター、チトクロームP450代謝酵素などの分子マーカーを発現しているという点で成熟した肝細胞に類似していることが判明した。

【0019】

本発明で用いるES細胞は、哺乳動物由来のES細胞であればよく、その種類などは特に限定されず、例えば、マウス、サル又はヒト由来のES細胞などを使用することができる。ES細胞としては、例えば、その分化の程度の確認を容易とするために、Pdx1遺伝子付近にレポーター遺伝子を導入した細胞を用いることができる。例えば、以下の実施例で使用しているような、Pdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスジーンをもつES細胞SK7株などを使用することができる。あるいは、Hnf3β内胚葉特異的エンハンサー断片制御下のmRFP1レポータートランスジーン及びPdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスーンを有するES細胞PH3株を使用することもできる。

【0020】

哺乳動物由来のES細胞の培養方法は常法により行うことができ、例えば、マウス胎児線維芽細胞(MEF)上で白血病抑制因子(Chemicon)1000 units/mL、KSR(ノックアウト血清代替物;Gibco)15%、ウシ胎仔血清(FBS;Hyclone)1%、非必須アミノ酸(Invitrogen)100μM、L-グルタミン(Invitrogen)2 mM、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)1 mM、ペニシリン50 units/mL、ストレプトマイシン(Invitrogen)50 μg/mL、βメルカプトエタノール100μMを加えたGlasgow minimum essential medium(Invitrogen)を用いて維持することができる。

【0021】

本発明では、ES細胞を支持細胞であるM15細胞の存在下で培養すること、即ち、ES細胞をM15細胞と共培養する。

【0022】

本発明で用いるM15細胞(mouse, mesonephros)は、登録番号ECACC 95102517として、細胞バンク(CAMR Centre for Applied Microbiology & Research (ECACC, Salisbury, Wiltshire))に登録されている。M15細胞は文献(Larsson, S. H., Charlieu, J. P., Miyagawa, K., et al. (1995). Subnuclear localization of WT1 in splicing or ranscription factor domains is regulated by alternative splicing. Cell 81, 391-401)の記載に従って入手可能である。M15についてのバンク情報を以下に記載する。

【0023】

Version 4.200201

M15 (mouse, mesonephros)

ECACC 95102517

Morphology: Epithelial

Mouse mesonephric epithelium, polyoma virus large T transformed

Depositor: Prof V van Heyningen, MRC Human Genetics Unit, Western General Hospital, Edinburgh, UK (Originator)

No restrictions. Patent: None Specified By Depositor

Properties: Products: WT1 (expressed gene) Applications: Gene expression and protein studies connected to kidney development and Wilms' tumourigenesis.

Available in the following LABORATORY:

CAMR Centre for Applied Microbiology & Research (ECACC, Salisbury, Wiltshire)

DMEM + 2mM Glutamine + 10% Fetal Bovine Serum (FBS). Split confluent cultures 1:5 to 1:10 i.e. seeding at 5x1,000 to 1x10,000 cells/cm2 using 0.25% trypsin or trypsin/EDTA; 5% CO2; 37C [cell growth impaired at lower densities]. Karyotype: Hyperdiploid

Hazard: CZ-II

The WT1-expressing mesonephric cell line M15 (alias Meso15) was established from mouse mesonephros transgenically expressing the large T protein of polyoma virus under the control of the early viral enhancer. As a tumour suppresser gene with a key role in urogenital development, WT1 is implicated as predisposition gene in the pathogenesis of Wilms' tumour (WT).

Further information

Research council deposit: Yes

Price_code: C

Bibliographic references:

Cell 1995;81:391

By Beatrice...

TITLE:M15

DATE:2005/04/24 00:32

URL:http://www.biotech.ist.unige.it/cldb/cl3312.html

European Collection of Cell Cultures,

Health Protection Agency, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, UK

June Poulton

European Collection of Cell Cultures

Health Protection Agency,

Porton Down

SP40JG Salisbury, Wiltshire UK

Phone: +44-1980-612512

Fax: +44-1980-611315

E-mail: ecacc@hpa.org.uk

URL: http://www.ecacc.org.uk/

【0024】

M15細胞は、血清などを補充した動物細胞用の通常の培地(例えば、RPMI培地又はDMEM培地など)を用いて常法に従って培養することができる。

【0025】

M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養する方法は特に限定されないが、例えば、M15細胞をフィーダー細胞として使用して、ES細胞を培養することができる。例えば、未分化のES細胞をトリプシンで解離させ、未処理培養皿で分化培地中LIF非存在下に懸濁培養し、胚様体を形成させる。2日間分化させた胚様体をトリプシンで処理し、フィーダー細胞(M15細胞)であらかじめ一層に生着させた(プレコートした)プレートで分化培地中播種する。以下、数日間培養することにより、肝細胞へと分化誘導を行うことができる。

【0026】

本発明の分化誘導方法においてM15細胞の存在下でES細胞を培養する際には、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養する。また、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を培養する際にさらにBMP4を添加することも好ましい。このような培養により、ES細胞から肝細胞へと分化誘導することができる。ES細胞から肝細胞への分化は、肝細胞に特異的なマーカーの発現量を測定することにより確認することができる。肝細胞に特異的なマーカーとしては、例えば、アルブミン、胆汁酸トランスポーター、チトクロームP450代謝酵素などの分子マーカーを用いることができる。

【0027】

さらに本発明によれば、M15細胞の存在下で哺乳動物由来のES細胞を、アクチビン、及びbFGFの存在下で培養した後に、デキサメタゾン、HGF、及びオンコスタチンMの存在下で培養することによってES細胞から肝細胞へと分化誘導する際に、被験物質の存在下でES細胞を培養し、被験物質の非存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞への分化誘導の程度と被験物質の存在下でES細胞を培養した場合における肝細胞へと分化誘導の程度とを比較することを含む、ES細胞から肝細胞へと分化誘導を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法が提供される。被験物質としては、成長因子又は低分子化合物などを使用することができる。この際、肝細胞で発現するマーカーの発現量を指標として、肝細胞へと分化誘導の程度を測定することが可能である。

【0028】

さらに本発明によれば、本発明の方法により得られるES細胞から分化誘導された肝細胞に被験物質を投与し、該肝細胞に対する影響を分析することによって肝臓毒性を試験することができ、あるいは本発明の方法により得られるES細胞から分化誘導された肝細胞に被験物質を投与し、該被験物質の代謝を分析することによって薬物代謝を試験することもできる。

以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。

【実施例】
【0029】

実施例1:

(A)材料と方法

(1)ES細胞

Pdx1プロモーター由来のGFPレポーター導入遺伝子を有するSK7(マウスのES細胞)は既報のものを使用した(国際公開WO2006/126574号公報)。SK7 ES細胞は、マウス胎児線維芽細胞(MEF)上で白血病抑制因子(Chemicon)1000 units/mL、KSR(ノックアウト血清代替物;Gibco)15%、ウシ胎仔血清(FBS;Hyclone)1%、非必須アミノ酸(Invitrogen)100μM、L-グルタミン(Invitrogen)2 mM、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)1 mM、ペニシリン50 units/mL、ストレプトマイシン(Invitrogen)50μg/mL、βメルカプトエタノール100μMを加えたGlasgow minimum essential medium(Invitrogen)を用いて維持した。

【0030】

ヒトES細胞(KhES-1)(Suemori, H., et al. (2006) Biochem Biophys Res Commun 345, 926-32.)は中辻博士と末盛博士(京都大学)から分与されたもので、日本政府のhES細胞ガイドラインに沿って使用した。未分化のhES細胞は3%CO2下でKSR20%、L-グルタミン2 mM、非必須アミノ酸100μM、β-メルカプトエタノール100μMを含むDMEM/F12(Sigma)を用いてマイトマイシンC10μg/mLで不活性化したMEFフィーダー層上で維持した。hES細胞の継代には、20%KSRおよび1 mM CaCl2 を含むPBS内で37℃、5分間,0.25%トリプシンと0.1 mg/mLコラゲナーゼIVで処理することでhES細胞コロニーを支持細胞層から分離し、その後、培養液を加え、ピペットで優しく数回吸引することでES細胞塊を小片にした(5-20細胞)。継代は1:2の分割比で実施した。

【0031】

(2)支持細胞

マウスの胎仔腎臓に由来するM15細胞(Larsson, S. H., et al. (1995). Cell 81, 391-401)は、野瀬博士(三菱化学生命科学研究所、東京)とM. Rassoulzadegan博士(ニース・ソフィア・アンティポリス大学[University of Nice-Sophia Antipolis]、仏、アンティポリス)から分与されたものである。M15細胞は10%FBSを含むDMEM内で培養した。M15 細胞は使用前に2.5時間、マイトマイシンC(Sigma)10 μg/mLで処理した。ゼラチンコートした6-wellまたは24-wellのプレートに、well当たりそれぞれ8×105ならびに2×105のM15 細胞を播種した。その後、M15細胞がコンフルエントになった状態で、ES細胞を支持細胞の上に置いた。

【0032】

(3)ES細胞の分化

分化研究用に、MEF非含有のゼラチンコート・プレートにマウスES細胞を移し、MEFを除去するために2日間培養した。その後、事前にM15細胞でコートした24-wellまたは6-wellプレート(Nunc)にそれぞれ細胞数5,000と20,000のES細胞を播いた。その後、非必須アミノ酸100μM、L-グルタミン2 mM、ペニシリン50 units/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、β-メルカプトエタノール100μMを含むDMEM内で、培養当日(d0)から4日目(d4)までは、10%FBSとブドウ糖4500 mg/Lを含む分化培養液で培養し、d4以降は10%KSRとブドウ糖2000mg/Lを含む培養液に変えて最長30日間培養した。最終分化した内胚葉を誘導するため、d0からd4にアクチビンA(20 ng/mL)ならびにbFGF(50 ng/mL)を加えた。d4からd30には、HGF(10 ng/mL)ならびにデキサメタゾン(1μM)を加えた。培養液は2日に1度、成長因子を含む新しいものに取り替えた。成長因子の詳細は分化セクションの最後に記載する。

【0033】

ヒトES細胞に関しては、事前にM15細胞を培養した24-wellと6-wellのプレートにそれぞれwell当たりそれぞれ20,000個と80,000個のKhES-1細胞を播いた。ES細胞は最長40日間、分化培養液(10% KSR、ブドウ糖4500 mg/L、非必須アミノ酸100μM、L-グルタミン2 mM、ペニシリン50 units/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、β-メルカプトエタノール100μMを含むDMEM)で培養した。d0からd10に、最終分化した内胚葉を誘導するためアクチビンA(20 ng/mL)を加えた。d10からd40には、肝臓分化を誘導するためにHGF(10 ng/mL)、Dex(1μM)、オンコスタチンM(10 ng/mL)を加えた。培養液は2日に1度、成長因子を含む新しいものに取り替えた。成長因子は以下の(4)に記載する。各成長因子を加えた正確な日程は各図を参照のこと。

【0034】

(4)成長因子と阻害因子

使用した濃度は次の通りである。

組換えヒトアクチビンA(R&D Systems)20 ng/mL、組換えヒトbFGF(Peprotech)50 ng/mL、組換えヒトBMP4(R&D Systems)50 ng/mL;、SU5402(Mohammadi, et al., (1997). Science 276, 955-60.)(Calbiochem)10μM、組換えマウスNoggin/Fc Chimera(R&D Systems)100 ng/mL、組換えヒト肝細胞成長因子(HGF, Peprotech)10 ng/mL、デキサメタゾン(Dex, Sigma)1μM、組換えヒトオンコスタチンM(OSM, Sigma)10 ng/mL.

【0035】

(5)フローサイトメリー分析

細胞を37℃、20分間 Cell Dissociation Buffer(Invitrogen)で解離した。抗体は、ビオチン標識抗Eカドヘリン単クローン抗体(mAb)ECCD2(Shirayoshi, Y., et al., (1986). Cell Struct Funct 11, 245-52.)またはフィコエリトリン(PE)標識抗Cxcr4 mAb 2B11(BD Biosciences Pharmingen)のいずれかを使用した。染色した細胞を40μmメッシュで濾過し、1%ウシ血清アルブミンを含むHank's buffered salt solution(Sigma)にプロピジウムヨウ化物を加えた溶液に再懸濁し、FACS Canto(Becton Dickinson)で解析、またはFACS Aria(Becton Dickinson)で分取した。データはBD FACSDivaソフトウェアプログラム(Becton Dickinson)で記録し、Flowjoプログラム(Tree Star)で解析した。

【0036】

(6)リアルタイムPCR分析

RNeasy mini-kit(Qiagen)を用いてES細胞からRNAを抽出した後、RNAをDNA分解酵素(Quiagen)で処理した。RT反応を調べるため、MMLV reverse transcriptase(東洋紡)とoligo dT primers(東洋紡)を用いて3μgのRNAを逆転写した。5倍に希釈したcDNA(RTプロダクトの1%)の1μLをPCR分析に使用した。表1に各プライマーセットのプライマーシークエンスを記載した。mRNA発現量はABI 7500 thermal cycler(Applied Biosystems)のSyberGreenで定量化した。各遺伝子の発現レベルはβ-アクチンの発現レベルで標準化した。PCRの条件は次の通りであった。95℃で15秒間の変性、及び60℃で60秒のアニーリング及び伸長を40サイクルまで行った。各遺伝子のCt値(PCR 増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数)から平均β-アクチンCt値を引くことでサンプル間のβ-アクチンを標準化した。それぞれの標的mRNAレベルは任意単位で示し、標準曲線法で決定した。SyberGreen検出を用いて増幅産物を5%非変性ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動法により確認し、SYBR Green I(Molecular Probes)で染色した。増幅産物の予想サイズは目視検査により計算したサイズと一致した。

【0037】

【表1】
JP0005124820B2_000002t.gif

【0038】

(7)免疫細胞化学

ホールマウント免疫細胞化学研究のため、ES細胞を24-wellのThermanox coverslips(Nunc)に播いた。TCS-SP2 Spectral Confocal Scanning System(Leica)を用いて共焦点像を得た。IX 71 Inverted(Olympus)を用いて位相差画像を得た。検出に用いた抗体は以下の通りである。マウス抗GFP(Roche)、ウサギ抗α-フェトプロテイン(AFP, Biomeda)、ヤギ抗アルブミン(Sigma)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識Dolichos biflorus agglutinin(DBA)レクチン(Sigma)、ウサギ抗α-1-抗トリプシン(Sigma)、ウサギ抗CYP3A2(Biomol)、ウサギ抗CYP7A1(Santa Cruz)、マウス抗Oct3/4(Santa Cruz)。二次抗体はAlexa568標識ヤギ抗ウサギ抗体、ロバ抗ヤギ抗体(Molecular Probes)およびAlexa488標識ヤギ抗マウス抗体とヤギ抗ウサギ抗体、ロバ抗ヤギ抗体(Molecular Probes)を用いた。細胞はDAPI(Roche)で対比染色した。図3BのAfp発現細胞数を定量化するために、Lumina Vision program(Mitani Corporation)を用いてAfp陽性染色像の領域を分析した。

【0039】

(8)過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色分析

機能的成熟の指標として、培養細胞のブドウ糖の産生及び貯蔵の有無を調べるために、PAS染色を行なった。培養細胞を3.3%のホルマリンで10分間処理した後、細胞内ブドウ糖をPAS染色液(武藤化学株式会社)で染色した。染色はメーカーの指示に従って行なった。

【0040】

(B)結果

(1)中胚葉由来のM15細胞は、ES細胞を肝臓内胚葉細胞に分化させた。

既報の通り、中胚葉由来のM15細胞を用いた共培養法は、胚性原料と代替可能であると考えられ、ES細胞を肺、肝臓、膵臓、腸などの内胚葉系組織に領域特異的に分化させることができる。時系列分析から、ES細胞は複数の過程を経て内胚葉系譜に分化することが明らかになっている。本発明者らの手法を用いた結果、ES細胞はin vitroで、中内胚葉、最終分化した内胚葉、最後に領域特異的に最終分化した内胚葉由来臓器へと順次分化した。これはin vivoでの初期胚の誘導事象を模倣するものである。

【0041】

膵臓と肝臓は発生過程中の胚の前腸腹側内胚葉の近接部から発生する。膵臓と肝臓に共通の前駆細胞が存在すること、ならびに心臓中胚葉からのシグナルが膵臓と肝臓への分化を特定化することがこれまでに報告されている。このモデルによれば、心臓中胚葉からFGFのようなシグナルが送られ、細胞の運命を肝臓に方向づける。膵臓への分化ではなく、肝臓への分化が優位に起こる培養条件を検討した本発明では、Pdx1プロモーターを用いて緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターを発現させたトランスジェニックマウスP#48.9(Gu, G., et al., (2004). Development 131, 165-79.)由来のES細胞SK7(国際公開WO2006/126574号公報)を用いた。本発明者らの近年の研究では、アクチビンとbFGFがES細胞からの中内胚葉ならびに最終分化した内胚葉の発生を促すことが判明しているため、本発明では培養分化の初期4日間にアクチビンとbFGFを加えた。その後、4~8日目に多様な可溶性因子を含み、ブドウ糖濃度を変えた(2000 mg/L または4500 mg/L)FBS内でES細胞を培養し、8日目にE-カドヘリン+/Cxcr4+で定義される最終分化した内胚葉の割合ならびにフローサイトメリー分析によるPdx1発現細胞の割合を評価した(Yasunaga, M., et al., (2005). Nat Biotechnol 23, 1542-50.)。図1Aは、アクチビンならびにbFGFを加えると内胚葉細胞ならびにPdx1発現細胞の割合が増加することを示している。

【0042】

また、アクチビンとbFGFの添加を中断した後に、デキサメタゾン(Dex)、肝細胞成長因子(HGF)、及びオンコスタチンM(OsM)を添加した場合の効果を検討した。Dex、HGF、OsMの追加によりPdx1発現細胞はさらに減少した(図1A)。

【0043】

最終分化した内胚葉での肝臓分化の範囲を検討するため、リアルタイムPCRを用いて、ソニックヘッジホッグ(Shh)ならびに初期肝臓マーカーである(フェトプロテイン(Afp)の転写量を測定した(図1B)。最終分化した内胚葉(E-カドヘリン+/Cxcr4+)細胞はフローサイトメトリーを用いて分離した。この最終分化した内胚葉細胞由来のcDNAをテンプレートとして、リアルタイムPCR分析を実施した。FBSを用いた場合、Afp転写はほとんど誘導されなかった。KSR条件下では、Afp転写は増加した。さらに低ブドウ糖条件下で、d4からd8にDex、HGF、OsMを加えた場合、Afpを発現した最終分化した内胚葉細胞が最も多くなり、Pdx1/GFP陽性細胞が増加し(図1A、黒)、ShhまたはAfp転写が減少した(図1B黒)。逆に、Dex、HGF、OsMを加えた場合は、肝臓分化が優勢で、その結果Pdx1/GFP陽性細胞が減少し(図1Aグレー)、ShhまたはAfp転写が増加した(図1B、グレー)。

【0044】

免疫組織化学分析により、Pdx1発現細胞ならびにAFP発現細胞が相補的であり、ほとんどが異なるコロニーから発生していることを確認した(図2A)。アクチビンとFGFを継続的に追加するとPdx1発現細胞が優勢になった(アクチビン&bFGF欄)。この2因子の追加を中断し、FBSをKSRに代え、ブドウ糖濃度を2000 mg/Lにした培養液にDex、HGF、OsMを追加すると(2000KSR, Dex&HGF&OsM)、Pdx1発現細胞が減少する一方、相当量のAFP発現細胞の増加がみられた。

【0045】

Dex、HGF、OsMの組み合わせはES細胞の肝臓分化を支持すると考えられるため、KSRをブドウ糖濃度2000 mg/Lで使用して、1因子または2因子を追加した培養状態を比較した。図2BはDex > HGF > OsMの順でAFP発現が促されたことを示す。2因子を加えた場合、DexとHGFの組み合わせが、ES細胞からのAFP発現細胞分化が最も多く、Pdx1発現細胞の分化が最も少なかった(図2B)。同様に、d30に実施したアッセイでは、アルブミン(Alb)発現細胞が最も多くみられた(図2C)。この結果から、d0~d4にブドウ糖高濃度(4500 mg/L)のFBS内で培養液にアクチビンとbFGFを加え、4日目以降、FBSをKSRに代え、ブドウ糖低濃度(2000 mg/L)でDexとHGFを加えた培養液で培養するという条件でさらに詳細な分析を行なった。

【0046】

(2)ES細胞から最終分化した内胚葉が肝臓に分化するためには、BMPとFGFシグナルは極めて重要である。

本発明では、BMP4、bFGFならびにそのアンタゴニストであるNoggin、SU5402 を用いて肝臓分化に与える効果を検討した(図3)。FGFのみを加えるとAFP陽性細胞数は増加した。FGFレセプターIの阻害因子であるSU5402を加えるとAFP陽性細胞数は減少した。Nogginを加えるとAFP発現細胞はほぼ消失したが、bFGFを加えるとAFP発現細胞が回復した。この結果から、BMPシグナル伝達は、肝臓分化に必要であり、FGFシグナル伝達がBMPのこの効果を増強していることが明らかになった。

【0047】

(3)時系列的分析から、分子マーカーの逐次誘導が、肝芽細胞と肝細胞の分化ならびに胆管細胞の分化を示していることが明らかになった。

本実施例では、成熟肝臓分子マーカーの時系列的発現を検討した。免疫組織化学的分析によりAFPまたはAlb発現細胞について検討を行なった(図4)。培養は最長30日まで延長した。図4は、AFP陽性細胞が最初に現れ、その後、Alb陽性細胞が18日目に検出されたことを示している。この時期には、AFPとアルブミンの双方を発現している細胞が存在していた。その後、AFP発現細胞は減少し、Alb発現細胞は増加した。この免疫染色の結果はAFPとAlbが個別に調整されていることを示していることから、ES細胞由来の肝細胞はまず未熟な肝細胞前駆細胞(AFP+/Alb-)を形成し、その後、肝芽細胞(AFP+/Alb+)を経て、肝細胞(AFP-/Alb+)に分化することが示唆された。

【0048】

肝芽細胞は肝細胞と胆管細胞への二分化能を持つ前駆細胞であるため、本実施例では次に胆管細胞系譜の培養を検討した。免疫組織化学分析によれば、肝細胞と胆管細胞は分離して、それぞれAlb+コロニーまたはDolichos biflorus agglutinin(DBA)レクチン+コロニーを形成していることが示された(図5A)。一方、成熟分子マーカーの免疫組織化学分析では、アルブミン陽性細胞の一部が同時に(アンチトリプシンなどの成熟肝臓マーカーとチトクロームP450(Cyp)酵素のうちCyp3AとCyp7A1を発現していることが判明した(図5B)。(1-アンチトリプシンはセリン・プロテアーゼとトリプシンの阻害因子である。Cyp3AはチトクロームP450サブファミリーに属し、薬物およびステロイド代謝酵素であり、Cyp7A1はコレステロール7(ヒドロキシラーゼで、コレステロールを胆汁酸に変える経路を調整している。Cyp7A1は肝臓で発現しているが卵黄嚢組織では発現していないため、肝細胞のマーカーとして有用である。

【0049】

(4)ES細胞由来の肝細胞の機能特性

肝細胞の成熟度を測るため、培養10日目ならびに30日目にリアルタイムPCRで肝臓分子マーカーの分子解析を行い、E12.5胎仔肝臓または成体肝臓の肝細胞と比較した。30日目の分化したES細胞ではAfp転写が減少していた。これは上記の免疫組織化学データ(図5)と一致する。その他の成熟肝細胞マーカーとして、Alb1、ケラチン19(Krt19)、チトクロームP450酵素であるCyp2b10、Cyp3a11、Cyp3a13、ならびにヒドロキシステロイドスルホトランスフェラーゼ酵素(Sult2a1)、グルクロン酸転移酵素(Ugt1a1)、有機アニオン輸送ポリペプチド(Slco1a4)、胆汁塩輸出ポンプ(Abcd11)で検討した(図6)。こうした成熟肝細胞マーカーは分化10日目に検出され、30日目には高レベルに増加した。発現レベルを胎仔と成体の肝細胞と比較した結果、ほとんどのマーカーの発現レベルは胎仔肝臓と同程度であったが、Cyp2b10、Cyp3a13、Slco1a4は胎仔肝臓の肝細胞よりも高い発現レベルを示した。この結果から、ES細胞由来の分化した細胞は多くの成熟肝細胞マーカーを発現することが立証された。

【0050】

次いで、ES細胞由来の肝細胞の特性を機能的に調べた。培養を過ヨウ素酸シッフ染色したところ、分化30日目でほとんどの細胞が赤い細胞質染色を示した。これは成熟肝細胞の特徴であるグリコーゲン貯蔵を示す(図7)。

【0051】

(5)ヒトES細胞を使った応用

同じ培養手法をヒトES細胞に応用できるかどうかを検討するため、KhES-1細胞を使用した。免疫組織化学分析により、初期未成熟肝臓マーカーであるAFPが分化20日目に誘導されたことが判明した。Dex、HGF、OsMを追加したところ、AFP発現細胞が増加するのと同時に、Oct3/4を発現した未分化ES細胞が減少した(図8A)。

【0052】

分化40日目にAlb陽性コロニーが確認された。このAlb陽性コロニーの中に、胆管細胞の存在を示すDBAレクチン陽性細胞が観察された。これはマウスES細胞ではほとんど検出されなかった(図8B)。アルブミン陽性コロニーとDBAレクチン陽性コロニーの存在はそれぞれ肝臓および胆管細胞への分化を立証するものであり、この結果から、KhES-1もマウスES細胞と同様に肝臓および胆管細胞の双方に分化することが示された。

【0053】

(C)考察

本実施例では、ES細胞を支持細胞であるM15細胞上で培養することによって、ES細胞を肝細胞にin vitroで分化させることに成功した。即ち、成長因子を添加または中断することで、分化誘導に成功した。支持細胞であるM15細胞はアクチビンとFGFを自ら発現していたが、アクチビンとbFGFを外来的に添加することにより、中内胚葉分化、内胚葉分化、ならびに膵臓分化が一層促進された。即ち、アクチビンとbFGFは中内胚葉、内胚葉、膵臓分化のそれぞれの誘導過程において必要不可欠であることが示された。アクチビンまたはbFGFシグナル伝達経路を阻害すると、最終分化した内胚葉への分化が妨げられた。4日目以降、ES細胞をアクチビンとbFGFを除いた条件で培養したところ、Pdx1発現細胞への分化ではなく、肝臓分化が促された。

【0054】

本実施例の結果から、無血清条件下で肝細胞分化が増強されることが示唆された。本実施例では、血清の除去はPdx1発現を阻害する一方、肝細胞誘導を強力に増強することが示された。この結果は肝臓分化を阻害する未知の血清因子の存在を裏付けるものである(図1、及び図2)。

【0055】

本実施例では、BMP、bFGFおよびそのアンタゴニストであるNogginやSU5402についても検討した(図3)。bFGFはAFP発現細胞を増加させ、SU5402が減少させる。NogginはAFP発現細胞を完全に消失させるが、bFGFによりAFP発現細胞は回復する。この結果から、BMP4およびbFGFはいずれも肝臓分化に必要であることが明らかになった。

【0056】

Afp合成は受精直後から始まるが、Alb1転写は早いものでE13.5にRT-PCRで検出されることが報告されているが(Petkov, P. M., et al., (2004) Hepatology 39, 617-27.)、これは本実施例の実験結果と一致する(図4)。動態ならびに定量的PCR分析から、Afp発現はAlb1発現に先行することが示され、ES細胞由来の肝細胞が通常の肝臓発生プログラムを模倣していることが示唆された(図6)。さらに、DBAレクチン陽性細胞がES細胞から分化することも示された。以上から、本発明の手法により、胆管細胞と肝細胞を含む肝臓系譜の細胞を誘導できることが示された(図5)。

【0057】

さらに本発明では、Sult2A、Ugt1A、Cyp2b10、Cyp3a11、Cyp3a13などの解毒化経路における酵素機能がDexならびにHGFによる処理で誘導されることが示された(図6)。Cyp3A4は現在使用されている薬物の半数以上の代謝に関係している。Cyp3A4阻害に関連する臨床上重要な薬物-薬物相互作用や毒性を呈するいくつかの事例にこの酵素が関連している。ある種の薬物はCyp3A4活性レベルを積極的に調節できるため、Cyp3A4の基質である併用薬のクリアランスを変化させる。したがって、創薬過程においてCyp3A4代謝を阻害する薬物の能力を評価することが重要と考えられる。Cyp3A11、Cyp3A13、Cyp3A25はマウスで同定されている6つのCyp3Aアイソフォームに含まれる。

【0058】

リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析から、ES細胞由来の肝細胞が肝臓特異的マーカーや酵素遺伝子を発現していることが明らかになった(図6)。生化学分析では、ES細胞由来の肝細胞で通常の成熟肝細胞の特性であるグリコーゲン蓄積が示唆された(図7)。


【0059】

さらに本実施例では、ヒトES細胞であるKhES-1を、マウスES細胞と同様の手法で、M15細胞上で培養した。本実施例では、M15細胞を支持細胞として用い、成長因子を組み合わせることにより、KhES-1がマウスES細胞と同様の順序でAFPとAlbを発現し、肝細胞に向かう過程をたどることが示された(図8)。

【0060】

実施例2:

(A)方法

(1)ヒトES細胞の分化

ヒトES細胞の場合、KhES-1細胞を、M15細胞を予め撒いた24ウエル又は6ウエルプレートにウエル当たり各々20,000又は80,000細胞で撒いた。ES細胞は分化培地 (10% KSR, 4500 mg/L グルコース, NEAA, L-Glu, PS 及びβ-ME を添加したDMEM) 中で50日目まで培養した。アクチビンA (20 ng/ml)及びLY294002 (10 μM)を分化の10日目から50日目に添加し、HGF (10 ng/ml)及びDex (1μM)を10日目から50日目に添加した。培地は、増殖因子を添加した新しい分化培地に2日毎に交換した。

【0061】

(2)RT-PCR 分析

RNAは、ES細胞又はマウス肝臓からRNeasy mini-kit (Qiagen) を用いて抽出し、DNase (Qiagen)で処理した。ヒト胎児(22-40週)及び成人(51歳)の肝臓の全RNAは、Clontech Laboratories, Incから購入した。逆転写反応としては、3μgのRNAをMMLV逆転写転酵素 (Toyobo)及びオリゴdTプライマー(Toyobo)を用いて逆転写した。1μlの5倍に希釈したcDNA (RT産物の1%) を用いてPCR分析を行った。各プライマーセットのプライマーは表2に示す。リアルタイムPCR分析としては、mRNA発現をABI 7500 thermal cycler (Applied Biosystems)にてSyberGreenを用いて定量した。各遺伝子の発現量は、β-アクチンの発現量を用いて標準化した。PCR 条件は以下の通りである。95℃で15秒の変性、60℃で60秒のアニーリング及び伸長を40サイクル。平均βアクチン(マウス)及びGAPDH(ヒト) Ct値(限界サイクル)を平均の各遺伝子のCtから差し引くことによって、各測定は、各試料についてβアクチン(マウス)及びGAPDH(ヒト)に対して標準化した。各標的mRNA量(任意単位で表したもの)を標準曲線により求めた。

【0062】

【表2】
JP0005124820B2_000003t.gif

【0063】

(3)過ヨウ素酸シッフ(PAS)分析

培養細胞を3.3%ホルマリンで10分間固定し、細胞内グリコーゲンを、PAS染色溶液(Muto Pure Chemicals)を取扱説明書に従って用いて染色した。

【0064】

(4)アルブミン分泌分析

培地を、新しい培地に交換し、条件培地を24時間後に回収し、Lebis ELISAキット (Shibayagi)を用いて、アルブミン分泌を分析した。

【0065】

(5)チトクロームP450 3A活性の測定

チトクロームP450 3A活性を確認するために、3μgのミクロソーム試料を、P450-GloTM CYP3A4 Assay Kit (Promega)を用いて分析した。ミクロソームは、6週齢の雄ICRマウスの肝臓、未分化ES細胞、及び分化したES細胞から調製した。マイクロソーム調製物の蛋白質含量は、Micro BCATM Protein Assay Kits (Pierce)を用いて測定した。

【0066】

(B)結果

(1)マウスおよびヒトES細胞由来肝細胞の分化誘導効率

マウスES細胞から誘導された細胞について、免疫組織染色法によりアルブミン発現細胞の定量を行った。その結果を表3に示す。αフェトプロテイン陽性細胞が分化8日目には33.1%存在したが、分化30日目には7.4%まで減少した。分化30日目には、アルブミン陽性肝細胞が約18%、DBA陽性胆管細胞が約72%であった。したがって、分化細胞の割合が上昇したといえる。ヒトES細胞については、分化20日目においてAFP陽性細胞が80%という高い効率で分化誘導された(表3)。分化40日目にはアルブミンを発現する肝細胞が9%程度存在した。

【0067】

【表3】
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【0068】

(2)マウスES細胞由来肝細胞のアルブミン分泌能(図9)

OsMはマウス胎児肝細胞の成熟を誘導することが報告されているため(Kamiya, A., Kinoshita, T. & Miyajima, A. (2001) Oncostatin M and hepatocyte growth factor induce hepatic maturation via distinct signaling pathways. FEBS Lett 492, 90-94)、OsMによるアルブミン分泌に対する影響をELISAにより分析した。結果を図9に示す。アルブミン分泌に対するOsMの増強効果は、分化の40日目までは観察されなかった。50日目と60日目に、Dex及びHGFを補充した対照培地と比較して、OsM, Dex 及びHGFを補充した分化培地においてアルブミン分泌の2倍の増加が検出された。

【0069】

(3)マウスES細胞由来肝細胞のP450酵素活性(図10)

さらに、P450酵素Cyp3Aの酵素活性について評価を行った。結果を図10に示す。分化誘導60日目(d60;分化60日目)のマウスES細胞由来の分化細胞ではCyp3Aの酵素活性は成体(AL; 成体)の1/5 程度であった。

【0070】

(4)ヒトES細胞から分化誘導された肝細胞についての分子マーカーの発現検討(図11)

図11Aは、ヒトES細胞由来分化細胞(18日目及び30日目)における内胚葉又は肝マーカーの転写物の発現量を示す。内胚葉マーカーSox17 、並びにAfp, Alb及びCyp7a1が分化した18日目のES細胞で検出された。30日目に、Afpの発現は減少し、Albの発現は著しく増加した。

図11Bでは、アルブミン陽性細胞を18日目に検出した。AFP及びアルブミンの両方を発現する細胞が存在した。30日目に、AFPを発現しないアルブミンのみ陽性の細胞のコロニーが明らかになった。

【0071】

(5)ヒトES細胞から分化誘導された肝細胞についての分子マーカーの発現(図12)

ヒトES細胞由来肝細胞は、成熟肝の分子マーカーを発現した。ヒトES細胞由来肝細胞の成熟の度合いを調べるために、肝分子マーカーを、18日目及び50日目の培養物を用いて定量PCRにより分析した。結果を図12に示す。分子マーカーの発現量を、22-40週の胎児肝臓又は成人肝臓と比較した。Afpは18日目に発現し、50日目に減少した。50日目の発現量は、胎児肝臓の量よりはるかに高かった。アルブミン(Alb), Cyp3a4,肝特異的有機陰イオン輸送ポリペプチド1B1 (Oatp1b1)などの成熟肝細胞のマーカー(Konig, J., Cui, Y., Nies, A.T. & Keppler, D. (2000) A novel human organic anion transporting polypeptide localized to the basolateral hepatocyte membrane. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 278, G156-164)が18日目に検出され、50日目にはかなりの量まで増大した。

【0072】

(6)ヒトES細胞由来肝細胞はPAS陽性である(図13)

24日目と50日目の大部分の分化したヒトES細胞はPAS陽性であり、グリコーゲン沈着を示した。

【0073】

(7)継代培養による分化肝細胞への分化効率の上昇(図14)

M15細胞上で継代することによってアルブミン陽性肝細胞の割合が上昇した。

【図面の簡単な説明】
【0074】

【図1】図1は、従来のES細胞分化のプロトコールを改変することにより、マウスES細胞はPdx1発現細胞ではなくAfp発現肝臓内胚膜細胞に効率よく分化したことを示す。図1の(A)は、最終分化した内胚葉(E-カドヘリン+/Cxcr4+)またはPdx1/GFP発現細胞のフローサイトメトリー分析による定量化を示す。ES細胞をM15細胞上で培養し、d0~d4にアクチビンとbFGFを加えた。d4~d8にES細胞に各種の可溶因子の組み合わせを加え、FBSまたはKSRを含み、ブドウ糖濃度を変化させた(2000または4000 mg/L)培養液内で培養し、d8にフローサイトメトリー分析によりE-カドヘリン+/Cxcr4+で定義される最終分化した内胚葉細胞とPdx1発現細胞の割合を評価した。図1の(B)は、分化したES細胞内で最終分化した内胚葉細胞(E-カドヘリン+/Cxcr4+)におけるShhならびにAfp転写の相対レベルのリアルタイムPCR分析結果を示す。フローサイトメーターを用いてソートした最終分化内胚葉細胞由来のcDNAをテンプレートとして使用した。ShhおよびAfp転写レベルはβ-アクチンのレベルと対比して定量化し、標準化した。その結果を4500FBS内の対照(4500 mg/Lのブドウ糖、10%FBSを加え、成長因子は加えない条件下で分化したES細胞)と比較した。対照の値を1とした。 (A、B)対照(白、成長因子なし)、アクチビン& bFGF(黒、アクチビン20 ng/mLとbFGF 50ng/mL)、Dex&HGF&OsM(グレー、デキサメタゾン1 mM、HGF 10 ng/mLオンコスタチンM 10ng/mL。2000FBS(ブドウ糖2000 mg/L、10%FBS)、200 0KSR(ブドウ糖2000 mg/L、10%KSR)、4500FBS(ブドウ糖4500 mg/L、10%FBS)、4500KSR(ブドウ糖4500 mg/L、10%KSR).
【図2】図2は、ES細胞由来のPdx1/GFP-細胞またはAFP発現細胞の形成における各種因子の作用を免疫組織化学分析で比較した結果を示す。(A)は、d4~d8に加えた各種因子の作用の比較を示す。ES細胞はM15細胞上で培養し、d0~d4にアクチビンとbFGFを加えた。d4~d8にアクチビンとbFGFを取り除き、次の培養条件について検討した。対照(因子なし)、アクチビン& bFGF(アクチビンとbFGF)、Dex & HGF & OsM(Dex、HGF、OsM)を加えブドウ糖濃度が2000 mg/Lまたは4500 mg/mL のKSRまたはFBS(2000FBS, 2000KSR, 4500FBS, 4500KSR)を含む培養液で培養した。(B)は、d4~d8に加えたDex、HGF、OsMの効果を比較した。d4~d8に、3因子のうちいずれも加えなかった場合(上図)、3因子のうち任意の2つをES細胞培地に加えた場合(下図)を示す。(C)では、Albタンパク質(緑)の発現が(B)の条件下で30日目に検出された。(A、B)8日間培養し、ES細胞をAFP(赤)およびGFP(Pdx1:緑)で染色した。(A、B、C)バーは200 mmを示す。
【図3】図3は、ES細胞由来の最終分化した内胚葉からの肝細胞分化にはBMPシグナルならびにFGFシグナル伝達が必要不可欠であることを示す。ES細胞はアクチビンとbFGF、10%FBS、ブドウ糖4500 mg/Lを含む培養液でd0~d4までアクチビンとbFGFとともに培養し、その後10%KSRとブドウ糖2000 mg/Lを含む培養液に代え、指示された成長因子を補給し、あるいは成長因子無しで培養した。(A)疫組織化学分析核では、核を抗AFP抗体とDAPIで対比染色した。Nogginを加えると、AFP陽性細胞への分化が阻害されたが、bFGFを加えるとNogginの阻害作用が相殺された。バーは200μmを示す。(B)対照と比較したAFP陽性細胞では倍数増加していた。各蛍光画像のAFP陽性部位をLumina Visionプログラムで解析した。結果の数値は平均値±標準誤差(n=3)で示した。*p< 0.05および **p <0.01対対照(Studentのt検定)
【図4】図4は、時系列分析から、AFP陽性細胞ならびにアルブミン陽性細胞の逐次誘導が明らかになったことを示す。ES細胞はアクチビンとbFGF、10%FBS、ブドウ糖4500 mg/Lを含む培養液でd0~d4まで培養した。d4~d8に、DexとHGF、10%KSR、ブドウ糖2000 mg/Lを含む培養液に代えた。分化したES細胞をd10、d18、d22、d30にAFP(緑)およびAlb(赤)で染色した。d10に、AFP+肝芽細胞葉細胞が発生した(d10、緑)。分化から18日目にAFP+/Alb+細胞が発生した(d18、黄)。d22では、AFP+/Alb+成熟肝細胞様細胞が増加し(d22、赤)、AFP+細胞(d22、緑)は減少した。d30では、AFP+細胞はほぼ消失し、アルブミン+細胞がはっきりとしたコロニーを形成した。バーは200μmを示す。
【図5】図5は、胆管細胞と肝細胞の分子マーカーの分析を示す。ES細胞は肝臓分化に最適な条件である、DexならびにHGFを含む培養液でd4以降培養された。分化したES細胞をd30にAlb(肝細胞マーカー、赤)ならびにDolichos biflorus agglutinin(DBA)レクチン(胆管細胞マーカー、緑)で染色した。Alb+細胞とDBA レクチン+細胞が別個のコロニーを形成しているのが確認された。(A)分化したES細胞をd30にAlb(緑)ならびに成熟肝細胞マーカーであるa 1-アンチトリプシン、Cyp3A、Cyp7A1(赤)で染色した。バーは200μmを示す。
【図6】図6は、リアルタイムPCRにより、ES細胞由来の肝細胞の肝臓分子マーカーを分子解析し、胎仔肝臓または成体肝臓由来の肝細胞と比較した結果を示す。肝臓マーカー遺伝子の転写はリアルタイムPCR分析により定量化した。転写レベルはβ-アクチンのレベルで標準化した。それぞれの値をd30の分化ES細胞でのレベルで標準化し、d30でのレベルを100として相対的な遺伝子発現レベルをグラフに示した。ES細胞は肝臓分化に最適な条件であるDexとHGFを含む培養液で培養した。M15:M15細胞、ES:未分化ES細胞、d10とd30:M15細胞上で培養した10日目および30日目の分化したES細胞、FL:E12.5胎仔肝臓、AL:成体肝臓
【図7】図7は、ES細胞由来の肝細胞の機能解析を示す。ES細胞は肝臓分化に最適な条件であるDexとHGFを含む培養液で培養した。過ヨウ素酸シッフ染色をd30の分化したES細胞に実施した結果、複数のコロニー内で多くの肝細胞が細胞質にグリコーゲンを貯蔵していた(濃赤)。この現象はd4の分化したES細胞またはM15細胞では認められなかった。ES細胞由来の肝細胞の倒立顕微鏡透過像。
【図8】ヒトES細胞の肝細胞様細胞への分化を示す。M15細胞上で、アクチビン20 mg/L、10%KSR、4500 mg/Lブドウ糖を加えて培養したd10での分化したヒトES細胞(KhES-1)。d10に培養液内容をDex 1 mM、HGF 10 ng/mL、OsM 10ng/mLに切り替えた。(A)d20とd30での分化ES細胞をAFP(未成熟肝細胞マーカー赤)ならびにOct3/4(未分化ES細胞マーカー、緑)で染色した。対照:d10~d20に無処置培養液内で培養した分化したES細胞。アクチビンならびにd40での分化ES細胞(B)をAlb(肝細胞マーカー、赤)、Dolichos biflorus agglutinin(DBA)レクチン(胆管マーカー、緑)で染色した。バーは200 μmを示す。
【図9】図9は、ES細胞由来肝細胞のアルブミン分泌能をELISAで分析した結果を示す。分化培地を、分析の24時間前に新しい培地に交換した。ES細胞由来肝細胞から培地に24時間の間に放出されたアルブミンの量を、分化の8日目、40日目及び60日目の各培地中で測定した。
【図10】図10は、ES細胞由来肝細胞のチトクロームP450 3A4 活性を示す。各値は、蛋白質量で標準化し、グラフは、成人肝臓の活性を1とした場合の相対活性を示す。ES; 未分化ES細胞, d60; 60日目のM15細胞上で生育した分化したES細胞, AL; 成人肝臓。値は、平均±標準誤差(n=3)を示す。
【図11】図11は、ヒトES細胞の肝細胞への分化を示す。20 ng/mlアクチビン、10μM LY294002, 10% KSR 及び4500 mg/L グルコースを添加したM15細胞上で生育させた10日目の分化したヒトES細胞(KhES-1)。10日目に、添加物を、1 μM Dex及び10 ng/ml HGFに変換した。(A)は、分化したES細胞における内胚葉又は肝マーカーのRT-PCR分析を示す。hES; 未分化ヒトES細胞, d18 及びd30;18日目及び30日目におけるM15細胞上で生育させた未分化ヒトES細胞, M15; M15 細胞。(B)14日目、18日目及び30日目の分化ES細胞をAFP (緑)及びアルブミン (赤)で染色した。
【図12】図12は、ヒトES細胞由来肝細胞の分析を示す。肝マーカー遺伝子の転写物をリアルタイムPCR分析で定量した。転写物の量は、Gapdhの量で標準化した。各値は、50日目の分化したES細胞の値で標準化している。グラフは、50日目の値を100とした場合の相対遺伝子発現量を示す。hES; 未分化ヒトES 細胞、18日目及び50日目;分化したES細胞を18日目と50日目にM15細胞で生育させた。FL;ヒト胎児肝臓(22~40週齢), AL; ヒト成人肝臓(51歳)
【図13】図13は、24日目と50日目の分化ES細胞のPAS染色による、コロニー内に細胞質コラーゲン貯蔵(濃い赤)を有する多数の肝細胞を示す。バーは、200μmを示す。
【図14】図14は、継代培養による分化肝細胞への分化効率の上昇を示す。継代なしの場合、全体の18%だったアルブミン陽性細胞の割合を、継代を繰り返すことで、74.2%まで上昇させることに成功した。培養14日目に一回目の継代を行い、継代後24日目(培養38日目)に二回目の継代を行った。三回目の継代は、2回目の継代後12日目(培養50日目)に行った。すべての継代において、トリプシン処理して回収した細胞を新しいM15細胞に4倍希釈で播種した。括弧内の日数はそれぞれの継代後の培養日数を示している。右の表はそれぞれの継代におけるアルブミン陽性細胞の割合を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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