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明細書 :プラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びフォトニック結晶製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5100840号 (P5100840)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
発明の名称または考案の名称 プラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びフォトニック結晶製造方法
国際特許分類 H01L  21/3065      (2006.01)
G02B   1/02        (2006.01)
FI H01L 21/302 105A
G02B 1/02
請求項の数または発明の数 15
全頁数 23
出願番号 特願2010-526556 (P2010-526556)
出願日 平成21年8月27日(2009.8.27)
国際出願番号 PCT/JP2009/004178
国際公開番号 WO2010/023925
国際公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
優先権出願番号 2008224035
優先日 平成20年9月1日(2008.9.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年5月17日(2012.5.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】高橋 重樹
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】関根 崇
参考文献・文献 特開2008-004711(JP,A)
特開平01-270231(JP,A)
特開平11-087319(JP,A)
調査した分野 H01L 21/3065
G02B 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
基体を高アスペクト比でエッチングするためのプラズマエッチング方法であって、
該基体の表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有する電界制御体を、該基体の表面に配置し、
該電界制御体を配置した基体表面に該プラズマを生成し、
該プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、
該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる
ことにより該基体を高アスペクト比でエッチングすることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記イオン導入孔が前記電界制御体の表面に対して垂直に延びていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記イオン導入孔の断面が前記電界制御体の表面においてよりも内部においての方が小さいことを特徴とする1又は2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記イオン導入孔が、基体側に設けられた1個の開口から異なる方向に複数本延びていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記電位差の形成中に前記電界制御体を前記基体表面に沿って移動させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記電界制御体が前記イオン導入孔を複数備えることを特徴とする請求項5に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記基体表面と前記電界制御体の間に隙間を設けることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記イオン導入孔の前記基体側の開口に、所定のパターンで多数の孔を設けたマスクを配置することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記電界制御体における前記傾斜方向が可変であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記電界制御体における前記イオン導入孔の開口面積が可変であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項11】
基体を高アスペクト比でエッチングするためのプラズマエッチング装置であって、
該基体の表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有し、前記基体の表面に配置された電界制御体と、
該電界制御体を配置した基体表面に該プラズマを生成するプラズマ生成手段と、
該プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる電位差形成手段と、
を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項12】
基体を高アスペクト比でエッチングするためのプラズマエッチングによるフォトニック結晶製造方法であって、
誘電体から成る該基体の表面の一部である孔形成領域に、所定のパターンで多数の孔を設けたマスクを配置し、
前記基体表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有する電界制御体を、前記基体側の該イオン導入孔の開口を前記孔形成領域の位置に合わせて配置し、
前記電界制御体を配置した基体の表面に該プラズマを生成し、
前記プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、
該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる
ことにより該基体を前記所定のパターンで高アスペクト比のエッチングを行う工程を有することを特徴とするフォトニック結晶製造方法。
【請求項13】
前記エッチングを複数回、各回毎に前記電界制御体の向きを変えて行うことを特徴とする請求項12に記載のフォトニック結晶製造方法。
【請求項14】
a)1回目のエッチングにおいて、
a-1) 複数の帯状の領域に分けた帯状領域のうち4n番目(nは整数)の帯状領域に孔が周期a1で形成されると共に、(4n+2)番目の帯状領域に孔が周期a1であって帯の長手方向にa1/2だけずれた位置に形成されたマスクを用い、
a-2) 前記イオン導入孔が前記基体表面の法線に対して帯状領域が延びる方向に第1の角度で傾斜するように前記電界制御体が配置され、
b) 2回目のエッチングにおいて、
b-1) 前記帯状領域のうち(4n+1)番目の帯状領域に孔が周期a1で形成されると共に、(4n+3)番目の帯状領域に孔が周期a1であって帯の長手方向にa1/2だけずれた位置に形成されたマスクを用い、
b-2) 前記イオン導入孔が前記基体表面の法線に対して帯状領域が延びる方向に、前記第1角度とは異なる第2の角度で傾斜するように前記電界制御体が配置される、
ことを特徴とする請求項13に記載のフォトニック結晶製造方法。
【請求項15】
前記イオン導入孔が前記基体表面側に設けられた1個の開口から異なる3方向に延びていることを特徴とする請求項12に記載のフォトニック結晶製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の微細加工に適したプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置、並びにその方法を用いたフォトニック結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい光デバイスとして、フォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶とは周期屈折率分布をもった光機能材料であり、この周期屈折率分布の構造が光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造を形成する。特に、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ、略称:PBG)が形成されることが特徴である。また、この屈折率分布の中に乱れ(欠陥)を導入することにより、PBG中にこの欠陥によるエネルギー準位(欠陥準位)が形成され、欠陥準位に対応する波長の光のみが、この欠陥位置において存在可能になる。これにより、点状の欠陥から成る光共振器や線状の欠陥から成る光導波路等をフォトニック結晶内に設けることができる。また、光導波路の近傍に、その光導波路を伝播する光の波長帯に含まれる大きさの共振波長を持つ光共振器を配置することにより、そのフォトニック結晶は光導波路を伝播する光のうちこの共振波長と同じ波長の光を光共振器に取り出すこと(分波)ができると共に、その波長の光を光共振器から光導波路に合流させること(合波)ができる光合分波器となる。
【0003】
フォトニック結晶には主に2次元フォトニック結晶(例えば特許文献1参照)と3次元フォトニック結晶(例えば非特許文献1、特許文献2)がある。特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶は、板状の誘電体から成る本体に空孔を周期的に形成したものである。非特許文献1に記載の3次元フォトニック結晶は「ヤブロノバイト」と呼ばれ、誘電体から成るブロックの表面の法線に対して35°の角度で、互いに120°ずつ異なる3方向に延びる孔を多数形成したものである。特許文献2に記載の3次元フォトニック結晶は「ウッドパイル型」と呼ばれ、誘電体から成るロッドが平行に周期的に配列されたストライプ層を、最隣接のストライプ層のロッド同士が直交し次隣接のストライプ層のロッド同士が平行且つ半周期ずれるように積層したものである。3次元フォトニック結晶は欠陥位置に存在する光が外部に漏出し難く、光共振器や光導波路の損失を極めて低く抑えることができるという利点を有する。
【0004】
従来、ウッドパイル型の3次元フォトニック結晶は、ストライプ層同士の位置を正確に合わせなければならないという点で製造が難しいとされていた。それに対して、最近、特許文献3において、誘電体から成る基体の表面に対して傾斜した第1の方向を指向する第1のエッチングを行ってこの第1方向に延びる孔を形成した後に、第1方向と所定の角度で交差する第2の方向を指向する第2のエッチングを行ってこの第2方向に延びる孔を形成することにより3次元フォトニック結晶を製造することが提案された。この方法では、4n番目(nは整数)のストライプ層及びそれに次隣接の(4n+2)番目のストライプ層は第1のエッチングにより、(4n+1)番目及び(4n+3)のストライプ層は第2のエッチングにより、それぞれ製造される。この方法によれば、ストライプ層同士の位置合わせを行う必要がないため、製造が容易である。
【0005】
一方、2次元フォトニック結晶は3次元フォトニック結晶よりも製造が容易であるという利点を有する。最近、TE偏波及びTM偏波の双方に共通のPBG(完全PBG)を、従来よりも広いエネルギー領域に亘って形成することができる2次元フォトニック結晶が提案された。特許文献4には、板状の基体の表面における三角格子の各格子点から、互いに異なる方向に延びる3個の空孔(3方向傾斜孔)が形成された2次元フォトニック結晶が記載されている。それら3個の空孔は、本体に平行な方向には互いに120°ずつ異なり、本体に垂直な方向にはいずれも本体の法線に対して約36°傾斜した方向に形成されている。従来の2次元フォトニック結晶では完全PBGの幅は最大でも数%(完全PBGの中心値に対する幅の大きさで定義)であったのに対して、この2次元フォトニック結晶では約15%(基体にSiを用いた場合)の幅を持つ完全PBGを形成することができる。
【0006】
特許文献3に記載の3次元フォトニック結晶、及び特許文献4に記載の3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶はいずれも、基体に対して所定の角度だけ傾斜した方向に基体をエッチング(斜方向エッチング)することにより製造される。このような斜方向エッチングはフォトニック結晶の製造の場合に限られず、半導体デバイスの微細加工や微小電気機械システム(microelectromechanical system、略称:MEMS)の製造等にも用いることができる。
【0007】
特許文献5には、基体の表面に対して傾斜した縁を持つ電界制御板を基体表面に配置し、プラズマ中のイオンにバイアス電圧を印加してイオンを基体表面に入射させることにより基体表面をエッチングすることが記載されている。この方法によれば、傾斜した縁に沿って等電位面が変形し、その等電位面に対して垂直に近い角度で基体表面に対して斜め方向にイオンが入射するため、斜めエッチングを行うことができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2001-272555号公報
【特許文献2】特開2001-074955号公報
【特許文献3】国際公開WO2006/095648号パンフレット
【特許文献4】特開2007-256382号公報
【特許文献5】特開2008-004711号公報
【0009】

【非特許文献1】E.ヤブロノビッチ 他2名、フィジカルレビューレターズ、(米国)、アメリカ物理学会発行、1991年10月21日、第67巻、第17号、第2295-2298頁(E. Yablonovitch et al.: "Photonic band structure: The face-centered-cubic case employing nonspherical atoms", Physical Review Letters 67 (1991) 2295-2298.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
斜めエッチングを用いてフォトニック結晶その他のデバイスを高精度に作製するためには、基体表面へのイオンの入射角度の均一性を高くすることが必要である。この均一性が低いと、長さ方向に均一な径を持つ孔を形成することができない。孔の径の不均一性は、形成すべき孔が深く、径が小さくなるほど、即ち、孔の径に対する深さの比を示すアスペクト比が高くなるほど顕著になる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高アスペクト比で均一性の高い斜めエッチングを行うことができるプラズマエッチング方法及びそのプラズマエッチング方法を用いたフォトニック結晶製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマエッチング方法は、
基体を高アスペクト比でエッチングするためのプラズマエッチング方法であって、
該基体の表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有する電界制御体を、該基体の表面に配置し、
該電界制御体を配置した基体表面に該プラズマを生成し、
該プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、
該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる
ことにより該基体を高アスペクト比でエッチングすることを特徴とする。

【0013】
本発明に係るプラズマエッチング方法では、プラズマ中のイオンを前記電位差によりイオン導入孔を通して基体表面に入射させ、イオンの運動エネルギーを利用した物理的スパッタリング又は反応性スパッタリングによって基体をエッチングする。その際、等電位面は、イオン導入孔のプラズマ側の開口においてイオン導入孔に引き込まれ、イオン導入孔の延びる方向に対して垂直に近い形状になる。そのため、イオンはイオン導入孔に平行な方向の力を受けてイオン導入孔内に導入される。
【0014】
イオン導入孔に導入されたイオンのうち、イオン導入孔の傾斜方向から所定の角度以上ずれて入射したものは、イオン導入孔の内壁に非弾性的に衝突して運動エネルギーを失い、エッチングにはほとんど寄与しない。従って、イオン導入孔の傾斜方向に近い角度で入射したイオンだけを基体表面に入射させることができ、基体表面へのイオンの入射角度のばらつきを抑え、基体を高アスペクト比でイオンの入射方向にエッチングすることができる。ここで、イオン導入孔の開口が小さくなるほど、また、イオン導入孔が長くなるほど、イオン導入孔の傾斜方向からの入射方向のずれが大きいイオンをイオン導入孔の内壁に衝突させることができるため、基体表面へのイオンの入射角度の精度を高くすることができる。
【0015】
前記イオン導入孔の前記基体側の開口に、所定のパターンで多数の孔を設けたマスクを配置することにより、その所定パターンに対応した形で基体をエッチングすることができる。
フォトニック結晶の製造の際あるいは半導体デバイスの微細加工の際には、通常、数μm又はそれ以下(マイクロメートルオーダー又はそれ以下)の径の孔を持つマスクを使用する。このようなマスクの孔は、仮に基体表面の法線に対して傾斜した方向に形成したとしても、以下の理由により、電界制御体のイオン導入孔と同様に作用することはない。通常のプラズマ生成装置でプラズマを生成すると、プラズマ密度や自己バイアス電圧の大きさに応じて、前述のマスクの径よりも大きい約10μm~10mmの厚みを持つイオンシースが基体の表面付近に形成される。このようにマスクの孔よりもイオンシースの厚みの方が大きいと、等電位面はマスクの孔の中にほとんど引き込まれない。そのため、イオンは電界による孔に平行な(基体表面の法線に対して傾斜した)方向の力をほとんど受けず、イオン軌道の方向が孔の傾斜方向から大きくずれてしまう。そのため、マスクの孔とは別に、それよりも大きい(例えばミリメートルオーダーの)径を持つイオン導入孔を備えた電界制御体を用いる必要がある。
【0016】
なお、電界制御体は、基体あるいはマスクの表面に接するように配置(載置)してもよいが、例えば基体の側方から基体上にオーバーハングさせた支持具を用いて保持すること等により、基体あるいはマスクとの間に隙間を設けてもよい。
【0017】
前記イオン導入孔には断面が前記電界制御体の表面においてよりも内部においての方が小さいものを用いることができる。表面側の断面が大きいことにより、等電位面がイオン導入孔側により深く引き込まれる。内部の断面が小さいことにより、入射方向のずれがより小さいイオンをイオン導入孔の内壁に衝突させることができるため、入射角度の精度をより高くすることができる。
【0018】
前記イオン導入孔には、前記基体側に設けられた1個の開口から異なる方向に複数本延びているものを用いることができる。これにより、複数の方向に対する斜めエッチングを同時に行うことができる。
【0019】
本発明に係るプラズマエッチング方法において、前記電位差の形成中に前記電界制御体を前記基体表面に沿って移動させてもよい。これにより、高アスペクト比でエッチングを行うという特徴を維持しつつ、イオン導入孔の径よりも広い範囲に対して斜めエッチングを行うことができる。その際、前記イオン導入孔を前記電界制御体に複数設けておけば、広い範囲を効率よくエッチングすることができる。ここで、電界制御体は、そのままの向きで移動させてもよいし、向きを変えつつ移動させてもよく、更には、その場で向きを変え(回動させ)てもよい。また、「電界制御体を基体表面に沿って移動させる」とは、電界制御体と基体表面との相対的な位置関係の変化を表現したものであり、基体の位置を固定して電界制御体を移動させることの他、電界制御体の位置を固定して基体を移動させることや、電界制御体と基体の双方を移動させることも含むものである。
【0020】
本発明に係るプラズマエッチング方法において、前記電界制御体における前記傾斜方向は可変とすることができる。このような傾斜方向が可変の電界制御体は、例えば2枚又はそれ以上の枚数の羽根板を同方向に回動可能とし、その回動軸が並ぶようにそれらの羽根板を配列することにより構成することができる。この場合、羽根板と羽根板の間の空間がイオン導入孔となる。イオン導入孔の傾斜方向は、エッチング対象の基体毎に変化させてもよいし、1つの基体をエッチングしている間に変化させてもよい。1つの基体をエッチングしている間に傾斜方向を変化させると、意図的に、曲がった孔を基体に形成することができる。
【0021】
また、本発明に係るプラズマエッチング方法において、前記電界制御体における前記イオン導入孔の開口面積を可変とすることもできる。このような開口面積が可変の電界制御体は、例えば、上述のイオン導入口の傾斜方向を可変とする場合と同様に、2枚又はそれ以上の枚数の羽根板を配列したものを用いることができる。その場合、イオン導入口の開口は、各羽根板をその配列方向に移動可能とすることにより、開口面積を可変とすることができる。
【0022】
本発明に係るプラズマエッチング装置は、基体を高アスペクト比でエッチングするためのものであって、
該基体の表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有し、前記基体の表面に配置された電界制御体と、
該電界制御体を配置した基体表面に該プラズマを生成するプラズマ生成手段と、
該プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる電位差形成手段と、
を備えることを特徴とする。

【0023】
本発明に係るフォトニック結晶製造方法は、上記プラズマエッチング方法を用いたものであり、
基体を高アスペクト比でエッチングするためのプラズマエッチングによるフォトニック結晶製造方法であって、
誘電体から成る該基体の表面の一部である孔形成領域に、所定のパターンで多数の孔を設けたマスクを配置し、
前記基体表面の法線に対して傾斜した方向に貫通する孔であって、かつ、プラズマ中のイオンが形成するイオンシースの厚みよりも大きい径のイオン導入孔を有する電界制御体を、前記基体側の該イオン導入孔の開口を前記孔形成領域の位置に合わせて配置し、
前記電界制御体を配置した基体の表面に該プラズマを生成し、
前記プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成し、
該イオンを前記電位差により前記イオン導入孔を通して該基体表面に入射させる
ことにより該基体を前記所定のパターンで高アスペクト比のエッチングを行う工程を有することを特徴とする。

【0024】
上記フォトニック結晶製造方法においては、前記エッチングを複数回、各回毎に前記電界制御体の向きを変えて行うことが望ましい。例えば、非特許文献1に記載のヤブロノバイト型の3次元フォトニック結晶及び特許文献4に記載の3方向傾斜孔を持つ2次元フォトニック結晶を製造する場合には、前記エッチングを3回、各回毎に前記電界制御体の向きを120°ずつ変えて行う。
【0025】
特許文献2に記載のウッドパイル型の3次元フォトニック結晶を製造する場合には、以下のように、前記エッチングを2回、各回毎に前記電界制御体の向きを変えて行う。
a)1回目のエッチングにおいて、
a-1) 複数の帯状の領域に分けた帯状領域のうち4n番目(nは整数)の帯状領域に孔が周期a1で形成されると共に、(4n+2)番目の帯状領域に孔が周期a1であって帯の長手方向にa1/2だけずれた位置に形成されたマスクを用い、
a-2) 前記イオン導入孔が前記基体表面の法線に対して帯状領域が延びる方向に第1の角度で傾斜するように前記電界制御体が配置され、
b) 2回目のエッチングにおいて、
b-1) 前記帯状領域のうち(4n+1)番目の帯状領域に孔が周期a1で形成されると共に、(4n+3)番目の帯状領域に孔が周期a1であって帯の長手方向にa1/2だけずれた位置に形成されたマスクを用い、
b-2) 前記イオン導入孔が前記基体表面の法線に対して帯状領域が延びる方向に、前記第1角度とは異なる第2の角度で傾斜するように前記電界制御体が配置される。
【0026】
上記フォトニック結晶製造方法において、前記イオン導入孔が前記基体側に設けられた1個の開口から異なる3方向に延びている電界制御体を用いることにより、3方向の斜めエッチングを同時に行うことができるため、ヤブロノバイト型の3次元フォトニック結晶や3方向傾斜孔を持つ2次元フォトニック結晶における空孔を1回のエッチングで同時に作製することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るプラズマエッチング方法により、高アスペクト比で均一性の高い斜めエッチングを行うことができるようになる。このプラズマエッチング方法を用いたフォトニック結晶製造方法により、周期の乱れが少なく、より理論上得られることが期待される特性に近い高特性を有するフォトニック結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るプラズマエッチング方法の一実施形態における電界制御体11の形状及び配置の一例を示す縦断面図。
【図2】電界制御体11の表面付近に形成される等電位面15を示す概略図。
【図3】電界制御体11の上面図及び縦断面図。
【図4】(a)電界制御体11の表面付近に形成される等電位面及び(b)イオンの軌道の計算結果を示す縦断面図、並びに(c)基体表面へのイオンの入射角度の計算結果及び実験結果を示すグラフ。
【図5】電界制御体の他の例である電界制御体11Aを示す縦断面図。
【図6】電界制御体の他の例である電界制御体11Bを示す縦断面図。
【図7】基体S側の開口から異なる方向に複数本延びているイオン導入孔を有する電界制御体21を示す上面図、下面図及び側面図。
【図8】イオン導入孔の開口よりも広い範囲をエッチングする例を示す概略図。
【図9】比較例におけるイオンの軌道の計算結果を示す縦断面図。
【図10】ウッドパイル型3次元フォトニック結晶を示す斜視図及び断面43における断面図。
【図11】本発明に係る方法によりウッドパイル型3次元フォトニック結晶を作製する工程を示す縦断面図。
【図12】本発明に係る方法によりウッドパイル型3次元フォトニック結晶を作製する際に用いるマスクを示す上面図。
【図13】ウッドパイル型3次元フォトニック結晶を作製した実験における、第1のエッチングを行った後の基体の(a)上面及び(b)縦断面の電子顕微鏡写真。
【図14】本発明に係る方法により作製されたウッドパイル型3次元フォトニック結晶の上面の電子顕微鏡写真。
【図15】本発明に係る方法により作製されたウッドパイル型3次元フォトニック結晶の反射率及び透過率の(a)測定値及び(b)理論値。
【図16】3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶の一例を示す斜視図(a)及び平面図(b)、並びに3方向傾斜孔の斜視図(c)。
【図17】3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶の第1の製造方法を示す上面図((a-1), (b), (c))及び縦断面図((a-2))。
【図18】3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶の第2の製造方法を示す縦断面図(a)及び上面図(b)。
【図19】ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶の一例を示す斜視図。
【図20】イオン導入孔の傾斜方向が可変である電界制御体の例を示す上面図(a)及び縦断面図(b)。
【図21】イオン導入孔の開口面積及び傾斜方向が可変である電界制御体の例を示す上面図(a)、縦断面図(b)及び開口面積を変化させた後の縦断面図(c)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1) 本発明に係るプラズマエッチング方法の実施形態
図1~図9を用いて、本発明に係るプラズマエッチング方法の実施形態を説明する。図1は、本発明に係るプラズマエッチング方法を用いて基体Sに対して斜めエッチングを行う際の電界制御体11の形状及び配置の一例を縦断面図で示したものである。電界制御体11は、基体S上にマスク14を介して配置されており、基体Sの表面の法線に対して角度θだけ傾斜したイオン導入孔12が貫通している。電界制御体11の表面(上面)13は、イオン導入孔12の上側開口の位置においてイオン導入孔12に対して垂直に形成されている。マスク14には、イオン導入孔12の下側開口の直下の位置に、基体Sをエッチングする形状に応じた孔(図示せず)が多数設けられている。

【0030】
このように電界制御体11を配置した状態で、従来の反応性イオンエッチング法と同様の方法によりプラズマPを生成し、そのプラズマP中のイオンIにバイアス電圧を印加することにより、イオンを加速して基体S及び電界制御体11の表面に照射する。バイアス電圧により、電界制御体11の表面付近に該表面に平行な等電位面15が形成される。そのうち、イオン導入孔12の開口付近において、イオン導入孔12内に引き込まれるような形状の等電位面151が形成され、この開口付近に到達したイオンIは等電位面151に垂直な方向の力を受けつつイオン導入孔12内に入射する(図2)。イオン導入孔12において、イオン導入孔12の延びる方向からずれて入射したイオンは、イオン導入孔12の内壁に非弾性的に衝突して運動エネルギーを失うため、基体Sの表面に到達したとしてもエッチングにはほとんど寄与しない。これにより、基体S表面へのイオンの入射角度のばらつきを小さくし、基体Sを高アスペクト比でエッチングすることができる。なお、イオン導入孔12の内壁に凹凸を設けておけば、イオン導入口12の内壁に衝突したイオンをより基体Sの表面に到達し難くすることができる。

【0031】
なお、本実施形態における電界制御体11では、イオン導入孔12の方向に加えて、電界制御体11の表面13がイオン導入孔12に垂直である(基体Sの表面に対しては傾斜している)ことにより、一層、イオンIをイオン導入孔12の延びる方向に入射させ易くなっている。

【0032】
図3に、電界制御体11につき、縦断面図と合わせて上面図を示す。(a)は電界制御体11の表面13におけるイオン導入孔12の断面を円形にしたものであり、(b)は電界制御体11の表面13におけるイオン導入孔12の断面を溝状にしたものである。


【0033】
図4に、本実施形態の電界制御体11を用いて斜めエッチングを行った場合につき、(a)電界制御体11の表面付近に形成される等電位面及び(b)イオンの軌道の計算結果、並びに(c)基体表面へのイオンの入射角度の計算結果及び実験結果を示す。実験で用いた電界制御体11の材料はAlでありイオン導入孔12の径は0.5mm、長さは2.6mm、基体表面の法線に対する角度は45°である。また、プラズマ生成にはSF6ガス及びO2ガスを使用した。計算では、実験条件に対応させて、自己バイアス電圧を-130V、プラズマ密度を4.5×1016m-3、電子温度(エネルギー)を6eVとしてSF2+イオンの軌道を計算した。

【0034】
図4(a)に示すように、イオン導入孔12の開口付近において、等電位面151はイオン導入孔12内に引き込まれた形状を有する。(b)に示すように、イオン導入孔12内におけるイオンの軌道16は、イオン導入孔12の延びる方向である基体Sの表面の法線に対して45°に近い角度を有する。(c)にはイオン導入孔12の基体側開口におけるイオンの入射角度の入射位置による違いを実験及び計算で求めた結果を示している。実験値は誤差の範囲内で計算値とよく一致している。実験及び計算を行った全範囲において、入射角は40°~47°の範囲内にある。

【0035】
図5に、電界制御体の他の例を示す。(a)に示した電界制御体11Aは、上面が基体Sと平行であり、イオン導入孔12Aが電界制御体上面及び基体Sに対して傾斜するように設けられている。電界制御体11Aを用いた場合に電界制御体上面付近に形成される等電位面を計算した結果を(b)に示す。等電位面15Aのうち、上面側のイオン導入孔12Aの開口付近における等電位面151Aがイオン導入孔12Aに引き込まれており、各等電位面151Aの底の接線152Aはイオン導入孔12Aに対してほぼ垂直になっている。これにより、イオンはイオン導入孔12Aに平行に近い角度でイオン導入孔12A内に導入される。

【0036】
図6(a)に、イオン導入孔の径が内部で変化する電界制御体の例を示す。この図に示した電界制御体11Bは、電界制御体11Aと同様に上面が基体Sと平行であり、イオン導入孔12Bが電界制御体上面及び基体Sに対して傾斜しているのに加えて、電界制御体の上面側121よりも基体側122の方がイオン導入孔の径が小さくなっている。このような形状のイオン導入孔12Bを用いることにより、電界制御体の上面側121の開口で等電位面151Bをイオン導入孔12B側に深く引き込むことができる(図6(b))と共に、基体側122においてイオンがイオン導入孔の内壁に衝突する入射角度の範囲が広くなるため、入射角度の精度をより高くすることができる。

【0037】
ここまで、電界制御体の上面がイオン導入孔に対して垂直である例(図4)と基体Sの表面に平行である例(図5、6)を示したが、電界制御体の上面の角度はこれらの例に限られず、適宜選択することができる。

【0038】
図7に、基体S側の開口から異なる方向に複数本延びているイオン導入孔を有する電界制御体21の上面図、下面図及び側面図を示す。イオン導入孔22は、電界制御体21の基体(図示せず)側の面である下面に1個の開口221を有し、基体側開口221から電界制御体21の上面側に向かって3本の孔(第1孔22A、第2孔22B及び第3孔22C)が延びた構造を有する。第1孔22A、第2孔22B及び第3孔22Cはいずれも基体の表面及び電界制御体21の基体側の面の法線に対して同じ角度だけ傾斜している。このようなイオン導入孔22を用いることにより、第1孔22A、第2孔22B及び第3孔22Cを通して互いに異なる方向にイオンが基体表面に入射するため、それら3方向への斜めエッチングを同時に行うことができる。

【0039】
なお、図7には1個の開口から3本の孔が延びるイオン導入孔を示したが、2本あるいは4本以上の孔が延びていてもよい。また、図7では3本の孔が電界制御体21の基体側の面の法線に対して同じ角度だけ傾斜している例を示したが、それら3本(あるいは2本、4本以上)が異なる角度をもって傾斜していてもよい。

【0040】
図8に、イオン導入孔の開口よりも広い範囲をエッチングするために電界制御体を移動させながらエッチングを行う例を示す。図8(a)に示すように、電界制御体31に複数のイオン導入孔32A、32B、32C...を設け、電界制御体31と基体Sの間にマスク14を配置する。マスク14にはイオン導入孔の基体S側の開口よりも広い領域(パターン形成領域141)に亘って孔のパターンが形成されている。エッチングを行う際、プラズマを生成したうえでプラズマ中のイオンを基体S側に引き寄せるように電位差を形成した状態で、電界制御体31のうちイオン導入孔の基体S側開口が設けられている部分がパターン形成領域141の全体を通過するように1回又は複数回移動させる。これにより、パターン形成領域141全体に亘って斜めエッチングを行うことができる。

【0041】
なお、図8では複数のイオン導入孔を設けた例を示したが、イオン導入孔が1個のみである場合にも同様の操作を行うことができる。また、電界制御体との接触により基体やマスクが破壊されることを避けるため、例えば基体の側方から基体上にオーバーハングさせた支持具を用いて電界制御体をマスクより上方に離して(浮かせて)保持すること等により、基体あるいはマスクと電界制御体の間に隙間を設けてもよい。

【0042】
図9に、イオンシースの厚さとイオン導入孔の径の関係について計算した結果を示す。ここでは、上面が基体Sの表面に平行であって該上面におけるイオン導入孔の断面が溝状である電界制御体を用いた場合を例として、イオンシースの厚さが約2.5mmとなるようにプラズマパラメータを設定し、イオン導入孔の径(溝の幅)が(a)イオンシースの厚みよりも大きい4mmの場合と(b)イオンシースの厚みよりも小さい2mmの場合で比較をおこなった。(a)の場合、等電位面15PA((a-1))がイオン導入孔の中に大きく引き込まれるため、イオンは電界による孔に平行な(基体表面の法線に対して傾斜した)方向の力を十分に受ける。そのため、イオン軌道16PA((a-2))を孔の傾斜方向に曲げることができる。それに対して,(b)の場合、等電位面15PB((b-1))がイオン導入孔の中にほとんど引き込まれず、イオンは孔に平行な方向の力を十分に受けることができない。そのため、イオン軌道16PB((b-2))が十分に曲がらず、イオンがイオン導入孔の内壁に衝突してしまう。

【0043】
通常、プラズマエッチングにおけるイオンシースの厚さは約10μm~10mmの範囲の値であり、ほとんどの場合、マスクの孔の径はイオンシース厚さより小さくなる。従って、マスクの孔自体を基体表面の法線に対して傾斜させてマスクを電界制御体の代わりにするとイオンの軌道を十分に曲げることができないため、マスクの孔とは別に、適切な径を持つイオン導入孔を備えた電界制御体を用いる必要がある。

【0044】
(2) 本発明に係るフォトニック結晶製造方法の実施形態
図10~図19を用いて、本発明に係るプラズマエッチング方法を用いたフォトニック結晶製造方法の実施形態を説明する。

【0045】
(2-1) ウッドパイル型3次元フォトニック結晶
図10(a)に、本発明に係る方法で作製されるフォトニック結晶の一例であるウッドパイル型3次元フォトニック結晶40の斜視図を示す。ウッドパイル型3次元フォトニック結晶40はSiやGaAs等の誘電体から成るロッド41が周期aで略平行に並んだストライプ層42を有し、ストライプ層42が積層した構造をとっている。ストライプ層42は4層周期で同じ構造になるように積層しており、互いに次隣接である4n番目(nは整数、以下同様)のストライプ層421のロッド41と(4n+2)番目のストライプ層423のロッド41は略平行且つ1/2周期ずつずれるように並んでいる。(4n+1)番目のストライプ層422のロッド41と(4n+3)番目のストライプ層424のロッド41の関係も同様である。そして、最隣接のストライプ層42同士では、ロッド41は略直交するように配置されている。なお、その交差角が90°から多少ずれたとしても、その積層体は、フォトニックバンドギャップが形成されフォトニック結晶として機能する。

【0046】
図10(b)に、(a)とは異なる方向から見た斜視図を示す。この図では、ストライプ層42に垂直であってロッド41に角度45°で交差する断面43を上面として表した。ストライプ層421及びストライプ層423においては、ロッド41は図の左上から右下に延びるように形成されていると共に、ロッド41の間にある空隙44も図の左上から右下に延びるように形成されている。一方、ストライプ層422及びストライプ層424においては、ロッド41及び空隙44は図の右上から左下に延びるように形成されている。

【0047】
本実施形態のフォトニック結晶製造方法では、本発明のプラズマエッチング法を用いて断面43から斜方向に延びる空隙44を形成することにより、3次元フォトニック結晶40を製造する。その方法を、図11及び図12を用いて説明する。図11に示した断面は、この方法により製造される3次元フォトニック結晶40のストライプ層42に平行な面であり、図11(a), (b)はストライプ層421又は423を通る断面を、(c)~(e)はストライプ層422又は424を通る断面を、それぞれ表している。

【0048】
まず、ロッド41と同じ材料から成る基体Sを用意し、基体Sの表面に第1マスク451を形成する(図11(a))。この第1マスク451は、図12(a)に示すように、断面43においてストライプ層421及び423内の空隙44に対応する位置に孔461を設けたものである。孔461は、ストライプ層に平行な方向に周期a1(例えばエッチング角が基体Sの表面に対して45°である場合にはa1=20.5a)で並んでおり、ストライプ層421に対応する帯状の領域とストライプ層423に対応する帯状領域の間ではa1/2だけずれて配置されている。

【0049】
次に、基体Sの上の第1マスク451の近傍に、基体Sの上面の法線に対して45°の角度でイオン導入孔48が延びるように電界制御体47を配置する。ここで、電界制御体47は、イオン導入孔48が図の左上から右下に向かうように配置する。その後、電界制御体47の上にプラズマを生成し、プラズマと基体Sの間に電位差を形成することにより、基体Sをエッチングする(第1のエッチング、図11(b))。これにより、基体Sの表面には、イオン導入孔48及びマスクの孔461を通して左上から右下に指向したイオンが入射し、このイオンの入射方向と同じ方向に延びる空隙44を有するストライプ層421及び423が形成される。

【0050】
次に、第1マスク451を除去し、基体Sの表面に第2マスク452を形成する(図11(c))。第2マスク452は、ストライプ層422及び424内の空隙44に対応する位置に孔462を設けたものである(図12(b))。次に、基体Sの上の第2マスク452の近傍に電界制御体47を配置する。ここで、電界制御体47は、イオン導入孔48が図の右上から左下に向かうように配置する。その後、電界制御体47の上にプラズマを生成し、プラズマと基体Sの間に電位差を形成することにより、基体Sをエッチングする(第2のエッチング、図11(d))。これにより、基体Sの表面には、イオン導入孔48及びマスクの孔462を通して右上から左下に指向したイオンが入射し、このイオンの入射方向と同じ方向に延びる空隙44を有するストライプ層422及び424が形成される。その後、第2マスク452を除去することにより、3次元フォトニック結晶40が完成する(図11(e))。

【0051】
図13~図15を用いて、本実施形態の方法によりウッドパイル型3次元フォトニック結晶を作製した例を示す。ここでは、基体の材料にSiを用い、周期aを0.59μmとした。図13は、第1のエッチングを行った後における(a)上面及び(b)縦断面の電子顕微鏡写真である。基体S上面の法線に対して45°の角度で直線状に空隙44が形成されている。図14は、本実施形態の方法により作製されたウッドパイル型3次元フォトニック結晶の上面(図10の断面43に相当)の電子顕微鏡写真である。4n番目のストライプ層421、(4n+1)番目のストライプ層422、(4n+2)番目のストライプ層423及び(4n+3)番目のストライプ層424がこの順で繰り返すように形成されている。

【0052】
こうして作製されたウッドパイル型3次元フォトニック結晶につき、上面から光を照射した場合の光の透過率及び反射率の測定値を図15(a)に、理論値を(b)に、それぞれ示す。測定値と理論値はよく一致している。PBGは波長1.31μm~1.73μmの範囲で形成されている。

【0053】
(2-2) 3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶の製造方法
図16に、本実施形態のフォトニック結晶製造方法により作製される3方向傾斜孔を有する2次元フォトニック結晶の一例を示す。3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50は、誘電体から成る板状の基体Sに、この基体Sに平行な断面において円形である空孔52が周期的に形成されたものである(a)。空孔52は、基体Sの表面531においては三角格子541の格子点521上に配置されており、基体Sの裏面532においては、三角格子541の格子点により形成される三角形の重心の直下にある、三角格子542の格子点522上に配置されている(b)。全ての格子点521から同様に、それに最隣接の3個の格子点522に向かってそれぞれ1個ずつ、基体Sに対して傾斜して延びる斜円柱状の第1空孔柱52A、第2空孔柱52B及び第3空孔柱52Cが形成されている。図16(b)及び(c)に、第1空孔柱52A、第2空孔柱52B及び第3空孔柱52Cが延びる方向を矢印で示した。これら矢印の表面531への射影は、第1空孔柱52A、第2空孔柱52B及び第3空孔柱52Cの間で120°ずつ異なる方向を向いている。

【0054】
3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50は、以下の2通りの方法により製造することができる。
(2-2-1) 第1の方法
第1の方法では、基体表面の法線に対して傾斜した1本のイオン導入孔561が延びている電界制御体56(図17(a-2))を用いる。イオン導入孔561の角度は、プラズマエッチングにより基体Sが第1空孔柱52Aの延びる方向にエッチングされるように、予備実験により求めておく。まず、三角格子状に孔551が設けられたマスク55を基体S上に形成する。次に、形成しようとする第1空孔柱52Aの延びる方向とイオン導入孔561の延びる方向が一致するように、マスク55の上に電界制御体56を配置する(図17(a-1))。その後、電界制御体56の上にプラズマを生成し、プラズマと基体Sの間に電位差を形成することにより、基体Sをエッチングする。これにより、マスク55の各孔561から同じ方向に延びる第1空孔柱52Aが形成される。次に、基体S表面の法線を軸として電界制御体56を120°回転し(図17(b))、基体Sをエッチングする。これにより、第2空孔柱52Bが形成される。同様に、電界制御体56を更に120°回転し(図17(c))、基体Sをエッチングすることにより、第3空孔柱52Cが形成される。以上により、3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50を製造することができる。


【0055】
(2-2-2) 第2の方法
第2の方法では、上述の電界制御体21と同様に、基体S側の開口から異なる方向に3本の孔(第1孔58A、第2孔58B及び第3孔58C)が延びているイオン導入孔58を有する電界制御体57を用いる(図18)。イオン導入孔のこれら3本の孔が延びる方向は、第1空孔柱52A、第2空孔柱52B及び第3空孔柱52Cが延びる方向に合わせる。本方法では、一部の領域(孔形成領域)552に三角格子状に孔551が設けられたマスク55を基体S上に形成した後、イオン導入孔58の基体S側の開口581を孔形成領域552の位置に合わせるように、電界制御体57をマスク55の上に配置する。その後、電界制御体57の上にプラズマを生成し、プラズマと基体Sの間に電位差を形成することにより、基体Sをエッチングする。この時、イオンは第1孔58Aを通って第1空孔柱52Aの延びる方向に、第2孔58Bを通って第2空孔柱52Bの延びる方向に、第3孔58Cを通って第3空孔柱52Cの延びる方向に、それぞれ基体Sの表面に入射するため、第1空孔柱52A、第2空孔柱52B及び第3空孔柱52Cが同時に形成される。従って、1回の操作だけで、3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50を製造することができる。

【0056】
(2-3) ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶
図19に、ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶の一例を示す。ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶60は、基体Sの上面に設けられた三角格子状の開口61から、基体S上面の法線に対して35°の角度で3方向に延びる孔62を形成したものである。3方向の孔62は互いに120°の角度を成す。図19には、3方向の孔62が延びる方向を太線で示した。これら3方向の孔62が基体Sの下方に延びることにより、3次元状の周期構造が形成される。

【0057】
ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶60は、より深い孔が形成されることにより3次元状の周期構造が形成されるという点を除いて、3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50と同様の構成を有する。特に、基体Sの表面に三角格子状に配置された開口から3方向の孔が延びているという点で、ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶60と3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50は共通している。従って、ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶60は、より深くまでエッチングを行うという点を除いて、3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶50と同様の方法により作製することができる。

【0058】
ここまではイオン導入孔の傾斜方向が固定された電界制御体を用いる場合について説明したが、図20に示すように、イオン導入孔の傾斜方向が可変である電界制御体70を用いてもよい。電界制御体70は、左右一対の板状の第1枠体711及び第2枠体712の間に、それら第1枠体711及び第2枠体712の板に垂直な回動軸を有する羽根板72を複数、第1枠体711及び第2枠体712に平行な方向に並べたものである。2枚の羽根板72、第1枠体711及び第2枠体712で囲まれた空間がイオン導入孔73となる。この電界制御体70では、羽根板72を回動させることにより、イオン導入孔73の向きを変化させることができる。


【0059】
また、図21に示すように、イオン導入孔の開口面積が可変である電界制御体70Aを用いてもよい。電界制御体70Aは上述の電界制御体70と同様の第1枠体711A、第2枠体712A及び回動軸を有する羽根板72Aを備えている。更に、電界制御体70Aは、第1枠体711A及び第2枠体712Aの互いに対向する面に、羽根板72Aが配列された方向に延びるレール74を有している。2枚の羽根板72A、第1枠体711A及び第2枠体712Aで囲まれた空間がイオン導入孔73Aとなる。そして、回動軸は、羽根板72Aがレール74に沿って移動できるように、レール74に保持されている。電界制御体70Aでは、羽根板72Aをレール74に沿って移動させ、羽根板72Aの間隔を変更することにより、イオン導入孔73Aの開口面積を変化させることができる。なお、電界制御体70Aではイオン導入孔73Aの開口面積と共に、上述の電界制御体70と同様にイオン導入孔73Aの向きを変化させることもできる。

【0060】
なお、基体の表面に対して斜め方向にエッチングを行う場合の他、羽根板72(72A)を基体の表面に対して垂直にすることにより、アスペクト比を高めることを目的として基体表面に垂直な方向にエッチングを行うこともできる。また、このような垂直方向へのエッチングは、イオン導入孔の傾斜方向や開口面積が可変である場合に限らず行うことができる。即ち、基体の表面に、該基体表面の法線方向に貫通したイオン導入孔を有する電界制御体を配置し、該電界制御体を配置した基体表面にプラズマを生成し、該プラズマ中のイオンを前記基体側に引き寄せるように該プラズマと該基体の間に電位差を形成することにより、該基体を基体Sに対して垂直な方向に高アスペクト比でエッチングすることができる。このような電界制御体は、エッチングにより所定のパターンを形成する場合には、そのパターン形成のためのマスクの上に配置する。
【符号の説明】
【0061】
11、11A、11B、21、31、47、56、57、70、70A…電界制御体
12、12A、12B、22、32A、32B、32C、48、561、58、73、73A…イオン導入孔
121…電界制御体の上面側
122…電界制御体の基体側
13…電界制御体の表面
14…マスク
141…パターン形成領域
15、15A、15PA、15PB…等電位面
151、151A…イオン導入孔付近の等電位面
152A…等電位面の接線
16、16PA、16PB…イオンの軌道
221…イオン導入孔の基体側開口
22A、58A…第1孔
22B、58B…第2孔
22C、58C…第3孔
40…ウッドパイル型3次元フォトニック結晶
41…ロッド
42…ストライプ層
421…第1のストライプ層
422…第2のストライプ層
423…第3のストライプ層
424…第4のストライプ層
43…断面
44…空隙
451…第1マスク
452…第2マスク
461…第1マスクの孔
462…第2マスクの孔
50…3方向傾斜孔2次元フォトニック結晶
52…空孔
521、522…格子点
52A…第1空孔柱
52B…第2空孔柱
52C…第3空孔柱
531…基体Sの表面
532…基体Sの裏面
541、542…三角格子
55…マスク
551…マスクの孔
552…孔形成領域
581…開口
60…ヤブロノバイト型3次元フォトニック結晶
711、711A…第1枠体
712、712A…第2枠体
72、72A…羽根板
74…レール
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図15】
11
【図16】
12
【図17】
13
【図18】
14
【図19】
15
【図20】
16
【図21】
17
【図10】
18
【図13】
19
【図14】
20