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明細書 :油状態監視方法および油状態監視装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5190660号 (P5190660)
登録日 平成25年2月8日(2013.2.8)
発行日 平成25年4月24日(2013.4.24)
発明の名称または考案の名称 油状態監視方法および油状態監視装置
国際特許分類 G01N  17/00        (2006.01)
G01N  33/30        (2006.01)
G01N  21/59        (2006.01)
FI G01N 17/00
G01N 33/30
G01N 21/59 M
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2011-519597 (P2011-519597)
出願日 平成22年6月22日(2010.6.22)
国際出願番号 PCT/JP2010/004155
国際公開番号 WO2010/150526
国際公開日 平成22年12月29日(2010.12.29)
優先権出願番号 2009148911
優先日 平成21年6月23日(2009.6.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年12月7日(2011.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】本田 知己
【氏名】岩井 善郎
【氏名】佐々木 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100135448、【弁理士】、【氏名又は名称】北川 泰隆
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2007-256213(JP,A)
特開2007-263786(JP,A)
特開2004-084498(JP,A)
特開2008-014652(JP,A)
本田知己,”潤滑油の劣化診断・検査技術”,精密工学会誌 Vol.75,No.3,2009年 3月 5日,359~362頁
本田知己,岩井善郎,”潤滑油の劣化と色”,トライボロジスト Vol.53,No.5,2008年 5月15日,319~325,285(2)頁
調査した分野 G01N 17/00
G01N 21/59
G01N 33/30
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
機械または設備で使用された油の劣化の状態を監視する油状態監視方法であって、
前記油を、フィルタによってろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で前記油をろ過し、ろ過前の前記油の中に存在していた汚染物を捕捉した前記フィルタから油分を除去するフィルタ処理工程と、
前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された光が前記フィルタを透過した透過光の色成分を検出する透過光検出工程とを含むことを特徴とする油状態監視方法。
【請求項2】
前記透過光検出工程は、前記ろ過工程でろ過前の前記油が存在した側に配置されていた前記フィルタの第1面の側に設けられた第1光源で発光され、前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された第1光が前記フィルタを透過した第1透過光の色成分を、前記第1面の裏側の面である第2面の側で検出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の油状態監視方法。
【請求項3】
前記第1光が前記第1面で反射した第1反射光の色成分を、前記第1面の側で検出する反射光検出工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の油状態監視方法。
【請求項4】
前記透過光検出工程は、さらに、前記第2面の側に設けられた第2光源で発光され、前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された第2光が前記フィルタを透過した第2透過光の色成分を、前記第1面の側で検出する工程を含み、
前記反射光検出工程は、さらに、前記第2光が前記第2面で反射した第2反射光の色成分を、前記第2面の側で検出する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の油状態監視方法。
【請求項5】
機械または設備で使用された油をろ過し、ろ過前の前記油の中に存在していた汚染物を捕捉し、油分が除去されたフィルタによって、前記油の劣化の状態を監視する油状態監視装置であって、
前記油の劣化の状態を監視するために前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される光を発光する光源と、
前記光源で発光された光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した透過光の色成分を検出するカラーセンサとを備えることを特徴とする油状態監視装置。
【請求項6】
前記光源として、少なくとも、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタの一方側の面であって、前記ろ過の際、ろ過前の前記油が存在した側に配置されていた第1面の側に設けられ、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される第1光を発光する第1光源を備え、
前記カラーセンサとして、少なくとも、前記第1面の裏側の面である第2面の側に設けられ、前記第1光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した第1透過光の色成分を検出する第1カラーセンサを備えることを特徴とする請求項5に記載の油状態監視装置。
【請求項7】
前記カラーセンサとして、さらに、前記第1面の側に設けられ、前記第1光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを反射した第1反射光の色成分を検出する第2カラーセンサを備えることを特徴とする請求項6に記載の油状態監視装置。
【請求項8】
前記光源として、さらに、前記第2面の側に設けられ、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される第2光を発光する第2光源を備え、
前記第1カラーセンサは、さらに、前記第2光が前記第2面で反射した第2反射光の色成分を検出し、
前記第2カラーセンサは、さらに、前記第2光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した第2透過光の色成分を検出することを特徴とする請求項7に記載の油状態監視装置。
【請求項9】
前記第1光源と前記第1カラーセンサとは、非対向状態で前記油状態監視装置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の油状態監視装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、油状態監視方法および油状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機械または設備では、潤滑油、油圧作動油、タービン油などの油が使われている。油の劣化は機械などの故障やトラブルを引き起こす原因となる。具体的に、油の劣化の状態が所定の段階に到達したとき、その油は、寿命を迎える。寿命が尽きた油を、そのまま使うと、機械などがトラブルなどを引き起こす可能性が高まる。したがって、これらのトラブルなどを未然に防ぐためには、油の劣化の状態を監視することが重要である。これに関連した規格が制定され、また、各種の技術が提案されている。
【0003】
従来から使われている、油の寿命を調べる方法の一つとして、油それ自体の色によって判定するASTM D1500が知られている。この方法では、油の色が黄色から赤、赤褐色、黒褐色と変化する性質を利用して、油の色が黒に近づくと、油の寿命が短い(油が劣化している)と判定する。しかし、機械の潤滑または油圧のような操作は、油の色によって行っているのではない。油の粘度その他、油の潤滑性能を利用しているものであり、油の潤滑性または操作性は、油の色とは直接関係しない。したがって、油の寿命を調べるためならば、油の汚染度を調べなければならない。
【0004】
油の汚染度を調べる方法としては、粒子サイズ・グループの粒子数で判別する方法と、汚染物の重量を測定する方法とがある。前者の代表的方法には、NAS1638,ISO 4406,JIS B9930がある。後者には、ASTM D4898,JIS B9931がある。
【0005】
また、油の寿命を調べる方法として、ASTM D943(通称TOSTとして知られている)およびASTM D2272(RPVOT法)がある。しかし、最近、省資源の観点から機械に使われる油槽は、小さくなる傾向が進んでいる。そのため、これらの方法で合格した油を使っていても、油の酸化生成物により、油が使えなくなる例が増えている。そこで、油の酸化防止剤の残存量を調べるボルタン・メトリー法(ASTM D6810)が、使われるようになった。
【0006】
なお、潤滑油の貯油槽へ色差計の測光部を直接に挿入し、潤滑油の色変化を測定して測定値が所定値を超えた場合に警報装置を動作させるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、潤滑油簡易寿命判定器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。潤滑油簡易寿命判定器は、潤滑油を一定の厚さに収容保持し得る形状の容器からなる。潤滑油簡易寿命判定器には、見本色部分が設けられる。見本色部分は、該容器の厚さ方向に位置しかつ外部から目視可能な内面に潤滑油の劣化経過に応じて変化する潤滑油色を段階的に分けて複数の見本色として着色してなる。潤滑油簡易寿命判定器によれば、潤滑油の容器内収容保持状態において色見本部分で見える色と見えない色との関係から潤滑油の劣化程度が推定されて寿命が判定される。
【0008】
また、潤滑油劣化モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。潤滑油劣化モニタ装置には、潤滑油を透過した可視光を3原色に分けて検知する手段と、該検知手段から出力される検知信号に基づいて潤滑油に対する3原色夫々の吸光度を検出する手段とが設けられる。潤滑油劣化モニタ装置では、検出された吸光度から潤滑油の劣化度合が読み取られる。
【0009】
また、潤滑油劣化度判定方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。潤滑油劣化度判定方法では、試料セルに入れた試料潤滑油に光が投射される。その試料潤滑油を透過した透過光は3つに分けられ、各光をそれぞれフィルタを通過させた後、電気信号に変換して色の三刺激値とされる。これらのうちの1つおよび三刺激値から得られる色度座標と試料潤滑油の種別に応じて予め設定された定数とを基に潤滑油評点が求められる。この潤滑油評点を基に試料潤滑油の劣化、汚損状態が判定される。
【0010】
また、潤滑油および潤滑油剤の劣化度測定方法と、この方法に関連した簡易測定具および自動測定装置とが提案されている(例えば、特許文献5参照)。劣化度測定方法などでは、ほぼ一定の表面あらさを有する平らな判定用表面に被測定試料が付着される。そののち、この試料がほぼ一定厚さに均される。この一定厚さに均された試料によって着色される判定用表面の黒化度に基づいて潤滑油および潤滑油剤の劣化度が判定される。
【0011】
この他、いくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献6参照)。また、本出願の発明者らにおいても、いくつかの研究成果を報告している(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】実開昭63-39661号公報
【特許文献2】実開昭64-10658号公報
【特許文献3】特開平6-34541号公報
【特許文献4】特開平5-223729号公報
【特許文献5】特開平1-178865号公報
【特許文献6】特開2007-256213号公報
【0013】

【非特許文献1】T. Honda, Y. Ito, K. Kodo, Y. Iwai, A. Sasaki: Color Characterization of Membrane Patches, STLE's 62nd Annual Meeting & Exhibition, Philadelphia, Pennsylvania (USA), (2007) CD-ROM
【発明の概要】
【0014】
ところで、粒子サイズ・グループの粒子数で判定する方法として上述した、NAS1638,ISO 4406,JIS B9930は、汚染物のサイズと数とを測定するものであって、汚染物の性質とは無関係である。また、汚染物の重量を測定する方法として上記した、ASTM D4898,JIS B9931は、油100cc内の汚染物総量を重量として測定するが、どのような汚染物が存在するのかは判定できない。また、ボルタン・メトリー法で、十分な添加剤が残存していると判定されても、油の酸化生成物が発生して、ガスタービンの操作が不能になる例が少なくない。
【0015】
油を使う立場のユーザが知りたい情報は、当該油は、そのまま使用できるかとか、浄化することによって引き続き使用可能なのか、または、浄化しても寿命が尽きているのかということである。したがって、上記従来の方法(構成)は、ユーザの要望を、十分に満たしたものであるとはいえない。
【0016】
油という製品は、基油と添加剤とからできている。このような油を長期間使用すると、汚染物が増加して、機械の潤滑および操作に悪影響を与えるようになるだけでなく、油中の添加剤が消耗すると、油に付与されていた性質を失う可能性が高まる。したがって、油が本来持っている特性、例えば、酸化防止性能を失った油を浄化して長く使用しようとしても、所望の効果を得られない可能性がある。油の酸化防止性能は、基油が本来持っている性能と、添加剤によって付与された性能がある。添加剤という反応性の高い物質が、自己犠牲によって油を酸化変質から守っている間に、新油の補給などによって、消耗された添加剤を補給すると、基油それ自体まで損傷が及ばず、油を長く使用することができる。
【0017】
発明者達は、特に、油という資源の枯渇が近い将来に起こる可能性がある現在、油の寿命を適切に予測することは、解決すべき重要な技術課題の一つであると考える。
【0018】
本開示は、各種の機械または設備で使用された油の寿命予測を適切に行うために、油の状態を精度よく監視可能な、油状態監視方法および油状態監視装置を提供することを目的とする。
【0019】
本開示は、各種の機械または設備で使用された油の劣化の状態を監視するに際し、この油をろ過し、油分を除去したフィルタに光を投射し、投射された光がフィルタを透過した透過光の色成分を、検出するものである。ここで、本開示において、各種の機械または設備で使用された油には、例えば、潤滑油、油圧作動油、タービン油が含まれる。本開示では、これら各種の機械または設備で使用された油を総称して、単に「油」ともいう。
【0020】
本開示の一側面によれば、機械または設備で使用された油の劣化の状態を監視する油状態監視方法であって、前記油を、フィルタによってろ過するろ過工程と、前記ろ過工程で前記油をろ過し、ろ過前の前記油の中に存在していた汚染物を捕捉した前記フィルタから油分を除去するフィルタ処理工程と、前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された光が前記フィルタを透過した透過光の色成分を検出する透過光検出工程とを含むことを特徴とする油状態監視方法が提供される。
【0021】
したがって、油の劣化の状態を、フィルタの内部で捕捉された汚染物に基づき監視することができる。そして、各種の機械または設備で使用された油の寿命予測を適切に行うために、油の状態を精度よく監視可能な、油状態監視方法を得ることができる。
【0022】
上記の油状態監視方法は、次のようにしてもよい。すなわち、上記の油状態監視方法によれば、前記透過光検出工程は、前記ろ過工程でろ過前の前記油が存在した側に配置されていた前記フィルタの第1面の側に設けられた第1光源で発光され、前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された第1光が前記フィルタを透過した第1透過光の色成分を、前記第1面の裏側の面である第2面の側で検出する工程を含むようにしてもよい。これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの内部で捕捉された汚染物に基づき監視することができる。
【0023】
また、この油状態監視方法は、前記第1光が前記第1面で反射した第1反射光の色成分を、前記第1面の側で検出する反射光検出工程を含むようにしてもよい。これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの第1面で捕捉された汚染物と、フィルタの内部で捕捉された汚染物とに基づき監視することができる。なお、フィルタの第1面で捕捉された汚染物は、第1面近傍で捕捉された汚染物を含む。
【0024】
また、この油状態監視方法によれば、前記透過光検出工程は、さらに、前記第2面の側に設けられた第2光源で発光され、前記フィルタ処理工程の対象となった前記フィルタに投射された第2光が前記フィルタを透過した第2透過光の色成分を、前記第1面の側で検出する工程を含み、前記反射光検出工程は、さらに、前記第2光が前記第2面で反射した第2反射光の色成分を、前記第2面の側で検出する工程を含むようにしてもよい。
【0025】
これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの第1面および第2面で捕捉された汚染物と、フィルタの内部で捕捉された汚染物とに基づき監視することができる。ここで、フィルタで捕捉された汚染物について、第1面側からと、第2面側からとによって、複合的に判定することができる。すなわち、フィルタにおける汚染物の分布に関わりなく、油の劣化の状態を監視することができる。なお、フィルタの第1面で捕捉された汚染物の場合と同様に、フィルタの第2面で捕捉された汚染物は、第2面近傍で捕捉された汚染物を含む。
【0026】
本開示の他の側面によれば、機械または設備で使用された油をろ過し、ろ過前の前記油の中に存在していた汚染物を捕捉し、油分が除去されたフィルタによって、前記油の劣化の状態を監視する油状態監視装置であって、前記油の劣化の状態を監視するために前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される光を発光する光源と、前記光源で発光された光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した透過光の色成分を検出するカラーセンサとを備えることを特徴とする油状態監視装置が提供される。
【0027】
したがって、油の劣化の状態を、フィルタの内部で捕捉された汚染物に基づき監視することができる。そして、各種の機械または設備で使用された油の寿命予測を適切に行うために、油の状態を精度よく監視可能な油状態監視装置を得ることができる。
【0028】
上記の油状態監視装置は、次のようにしてもよい。すなわち、上記の油状態監視方法は、前記光源として、少なくとも、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタの一方側の面であって、前記ろ過の際、ろ過前の前記油が存在した側に配置されていた第1面の側に設けられ、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される第1光を発光する第1光源を備え、前記カラーセンサとして、少なくとも、前記第1面の裏側の面である第2面の側に設けられ、前記第1光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した第1透過光の色成分を検出する第1カラーセンサを備えるようにしてもよい。これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの内部で捕捉された汚染物に基づき監視することができる。
【0029】
また、この油状態監視装置は、前記カラーセンサとして、さらに、前記第1面の側に設けられ、前記第1光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを反射した第1反射光の色成分を検出する第2カラーセンサを備えるようにしてもよい。これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの第1面で捕捉された汚染物と、フィルタの内部で捕捉された汚染物とに基づき監視することができる。なお、フィルタの第1面で捕捉された汚染物は、第1面近傍で捕捉された汚染物を含む。
【0030】
また、この油状態監視装置は、前記光源として、さらに、前記第2面の側に設けられ、前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタに投射される第2光を発光する第2光源を備え、前記第1カラーセンサは、さらに、前記第2光が前記第2面で反射した第2反射光の色成分を検出し、前記第2カラーセンサは、さらに、前記第2光が前記油状態監視装置にセットされた前記フィルタを透過した第2透過光の色成分を検出するようにしてもよい。
【0031】
これによれば、油の劣化の状態を、フィルタの第1面および第2面で捕捉された汚染物と、フィルタの内部で捕捉された汚染物とに基づき監視することができる。ここで、フィルタで捕捉された汚染物について、第1面側からと、第2面側からとによって、複合的に判定することができる。すなわち、フィルタにおける汚染物の分布に関わりなく、油の劣化の状態を監視することができる。なお、フィルタの第1面で捕捉された汚染物の場合と同様に、フィルタの第2面で捕捉された汚染物は、第2面近傍で捕捉された汚染物を含む。
【0032】
また、この油状態監視装置において、前記第1光源と前記第1カラーセンサとは、非対向状態で前記油状態監視装置に設けられているようにしてもよい。これによれば、第1透過光の強度のばらつきに基づく、色成分の誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】油状態監視装置を示す図である。
【図2】メンブランフィルタでの汚染物の捕捉を概念的に説明する図である。
【図3】油寿命予測についてのフローチャートを示す図である。
【図4】ΔERGBを説明する図である。
【図5】RGBカラーモードを示す図である。
【図6】実験に使用したろ過装置を示す図である。
【図7】メンブランフィルタを示す図である。
【図8】油をろ過し、油分を除去したメンブランフィルタの画像を示す図である。
【図9】油をろ過し、油分を除去したメンブランフィルタの反射率に関する実験結果であって、波長領域が190nm~2600nmの範囲における反射率の変化である。
【図10】図9の可視光領域のデータを拡大表示した結果である。
【図11】油をろ過し、油分を除去したメンブランフィルタの反射率に関する実験結果であって、波長ごとの反射率である。
【図12】油をろ過し、油分を除去したメンブランフィルタの透過率に関する実験結果であって、波長領域が190nm~2600nmの範囲における透過率の変化である。
【図13】図12の可視光領域のデータを拡大表示した結果である。
【図14】油をろ過し、油分を除去したメンブランフィルタの透過率に関する実験結果であって、波長ごとの透過率である。
【図15】汚染物の色を3次元的に表示した分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本開示は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成において、所定の構成を省略することもできる。

【0035】
(油状態監視装置)
油状態監視装置100について、図1を参照して説明する。油状態監視装置100は、油の劣化の状態を監視する装置である。油の劣化の状態は、例えば図6に示すように、機械または設備で使用された油をろ過し、ろ過前の油の中に存在していた図2に示すような汚染物216を捕捉し、油分が除去されたメンブランフィルタ210を用いて、監視される。

【0036】
油状態監視装置100は、第1光源120,122と第1カラーセンサ104とを備える。また、油状態監視装置100は、第2光源124,126と第2カラーセンサ108とを備える。さらに、油状態監視装置100は、メンブランフィルタ210をセットするための設置部110を備える。第1光源120,122は、油の劣化の状態を監視するために油状態監視装置100にセットされた、具体的には、設置部110にセットされたメンブランフィルタ210の第1面212の側に設けられる。第1光源120,122は、セットされたメンブランフィルタ210に投射される第1光を発光する。ここで、第1光は、可視光線である。なお、第1面212は、ろ過に関し後述する油状態監視方法の第1工程で、例えば図6に示すように、ろ過前の油が存在した側に配置されていたメンブランフィルタ210の面である。

【0037】
第2光源124,126は、設置部110にセットされたメンブランフィルタ210の第1面212の裏側の面である第2面214の側に設けられる。第2光源124,126は、セットされたメンブランフィルタ210に投射される第2光を発光する。ここで、第2光は、可視光線である。第1光源120,122および第2光源124,126は、例えば白色LEDによって構成される。第1光源120,122および第2光源124,126は、それぞれ、設置部110にセットされたメンブランフィルタ210の所定の範囲を照らす。第1光源120,122および第2光源124,126によって照らされる所定の範囲については、後述する。

【0038】
設置部110には、空洞部114が形成されている。空洞部114によって、第1光源120,122からの第1光に基づく第1透過光は、第1カラーセンサ104側に遮断されず、かつ第2光源124,126からの第2光は、第2面214に到達する。メンブランフィルタ210は、メンブランフィルタ210のうち、油をろ過した部分、つまり汚染物216を捕捉した部分が空洞部114に合致するよう、セットされる。

【0039】
第1カラーセンサ104は、第2面214の側に設けられる。第1カラーセンサ104は、第1光が設置部110にセットされたメンブランフィルタ210を透過した第1透過光、つまり第1面212から入射し、第2面214から出射した第1透過光の色成分を検出する。また、第1カラーセンサ104は、第2光が設置部110にセットされたメンブランフィルタ210の第2面214で反射した第2反射光の色成分を検出する。

【0040】
第2カラーセンサ108は、第1面212の側に設けられる。第2カラーセンサ108は、第2光が設置部110にセットされたメンブランフィルタ210を透過した第2透過光、つまり第2面214から入射し、第1面212から出射した第2透過光の色成分を検出する。また、第2カラーセンサ108は、第1光が設置部110にセットされたメンブランフィルタ210の第1面212で反射した第1反射光の色成分を検出する。

【0041】
第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108は、RGBカラーセンサによって構成され、波長が380nm~780nmの範囲の可視光線領域を、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分(色信号)に分けて検出する。検出される各色成分は、256階調の各値で表される。以下、赤(R)、緑(G)、青(B)の各値を総称して「RGB値」ともいう。

【0042】
第1光源120,122と、第1カラーセンサ104と、第2光源124,126と、第2カラーセンサ108とは、ケース体130に収納された状態で、油状態監視装置100に設置されている。ケース体130は、図1で不図示の開閉扉を備える。油状態監視装置100のユーザは、開閉扉を開き、油状態監視装置100の内部の設置部110に、油をろ過し、後述する所定の処理を行ったメンブランフィルタ210をセットし、開閉扉を閉じる。開閉扉が閉じられた状態で、油状態監視装置100の内部、具体的にはケース体130の内部は、外部から光(外界光)の侵入が遮断された状態、すなわち、暗室状態となる。

【0043】
ここで、第1光源120と第1カラーセンサ104とは、非対向状態で油状態監視装置100に設けられている。第1光源122と第1カラーセンサ104とについても、同様の位置関係である。すなわち、第1カラーセンサ104は、メンブランフィルタ210の第1面212,第2面214、具体的には、メンブランフィルタ210をセットする設置部110において、メンブランフィルタ210がセットされる面である設置面112に対して、垂直な直線3上に配置される。一方、第1光源120は、この直線3に所定の角度をもって交差する直線1上に配置される。また、第1光源122は、この直線3に所定の角度をもって交差する直線2上に配置される。直線1および直線3がなす角度と、直線2および直線3がなす角度とは、同一(略同一)に設定される。

【0044】
同じく、第2光源124と第2カラーセンサ108とは、非対向状態で油状態監視装置100に設けられている。第2光源126と第2カラーセンサ108とについても、同様の位置関係である。すなわち、第2カラーセンサ108は、メンブランフィルタ210の第1面212,第2面214、具体的には、メンブランフィルタ210をセットする設置部110の設置面112に対して、垂直な直線3上に配置される。一方、第2光源124は、この直線3に所定の角度をもって交差する直線4上に配置される。また、第2光源126は、この直線3に所定の角度をもって交差する直線5上に配置される。直線4および直線3がなす角度と、直線5および直線3がなす角度とは、同一(略同一)に設定される。

【0045】
第1面212の側に配置される第1光源120,122と、第2面214の側に配置される第2光源124,126とは、設置部110の設置面112内の直線またはこの設置面112に平行な水平面内の直線を基準として、線対称に配置されている。第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108についても、設置部110の設置面112内の直線またはこの設置面112に平行な水平面内の直線を基準として、線対称に配置されている。なお、設置面112に平行な水平面内の直線は、例えば設置面112に水平にセットされたメンブランフィルタ210内の直線である。このような構成によって、第1面212から第2面214の側に透過する第1透過光と、これとは逆に、第2面214から第1面212の側に透過する第2透過光とを、それぞれ、同一の条件(同一の状態)で、第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108で検出することができる。また、第1反射光および第2反射光についても、それぞれ、同一の条件(同一の状態)で、第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108で検出することができる。

【0046】
この他、油状態監視装置100は、後述する油状態監視方法(油寿命予測)の実行を制御する制御装置と、所定の情報を出力、例えば表示するモニタ(以下、「表示」を例として説明する。)とを備える。なお、図1では、制御装置およびモニタなどに関する図示は、省略している。制御装置は、油状態監視方法(油寿命予測)を実行するためのプログラムを読み込み、各種演算処理を実行する。なお、制御装置などは、油状態監視装置100が内蔵した構成とすることができる。この場合、制御装置などは、油状態監視装置100の一部である。また、制御装置などは、油状態監視装置100が備える図1で不図示の接続インターフェースを介して、パーソナルコンピュータなどのような装置を接続して、構成することもできる。

【0047】
(油状態監視方法)
油状態監視方法について、図1を参照して説明する。この油状態監視方法の第1工程では、機械または設備で使用された油を、メンブランフィルタ210でろ過する。ろ過には、例えば、孔径0.8μm,直径25mmのメンブランフィルタ210が使われる。油をろ過することで、油の中に存在していた図2に示すような汚染物216が、メンブランフィルタ210によって捕捉される。なお、ろ過は、所定の規格にしたがって行う。

【0048】
汚染物216の捕捉の概念について、図2を参照して説明する。なお、図2は、メンブランフィルタ210の断面を示す。油およびメンブランフィルタ210は、ともに絶縁物であるから、油がメンブランフィルタ210を通過する場合、メンブランフィルタ210に静電気が発生する。汚染物216が、油の酸化生成物のような分子サイズで、かつ油に溶けないような微小なものである場合、微小な汚染物216は、メンブランフィルタ210の表面、つまり第1面212またはその近傍では捕捉されない。しかし、油がメンブランフィルタ210を通過する際、微小な汚染物216は、メンブランフィルタ210内部の空隙部である孔218の中に、静電気で付着する。

【0049】
第2工程では、第1工程を経たメンブランフィルタ210が、例えば石油エーテルで洗浄され、メンブランフィルタ210から油分が除去される。なお、洗浄されて油分が除去されたメンブランフィルタ210は、所定の方法で乾燥される。そして、乾燥されたメンブランフィルタ210は、油状態監視装置100にセットされる。具体的に、油状態監視装置100の開閉扉が開けられ、メンブランフィルタ210が、設置部110にセットされ、開閉扉が閉じられる。

【0050】
開閉扉が閉じられた状態において、この方法の開始指示が、油状態監視装置100に入力された場合、以下に示す第3工程以降の工程が、順次行われる。開始指示は、ユーザが例えば油状態監視装置100または図1で不図示の制御装置の操作部を操作し、入力される。

【0051】
第3工程では、第1光源120,122が発光し、第1光源120,122からの第1光が、メンブランフィルタ210の第1面212に入射し、第2面214から出射される。すなわち、第1光源120,122からの第1光が、メンブランフィルタ210を透過する。メンブランフィルタ210を透過した第1透過光は、第1カラーセンサ104で、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分に分けて検出される。また、第3工程では、第1光源120,122からの第1光がメンブランフィルタ210の第1面212で反射した第1反射光が、第2カラーセンサ108で、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分に分けて検出される。

【0052】
第4工程では、第2光源124,126が発光し、第2光源124,126からの第2光が、メンブランフィルタ210の第2面214に入射し、第1面212から出射される。すなわち、第2光源124,126からの第2光が、メンブランフィルタ210を透過する。メンブランフィルタ210を透過した第2透過光は、第2カラーセンサ108で、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分に分けて検出される。また、第4工程では、第2光源124,126からの第2光がメンブランフィルタ210の第2面214で反射した第2反射光が、第1カラーセンサ104で、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分に分けて検出される。

【0053】
ここで、第3工程および第4工程は、その順序を逆にすることもできる。具体的には、第4工程の手順を実行後、第3工程の手順を行う構成とすることもできる。すなわち、第3工程および第4工程は、同じタイミングで実行されなければ、いずれを先にするかは問わない。第3工程の手順と第4工程の手順とを同じタイミングで実行した場合、第1カラーセンサ104を例とすれば、第1透過光と第2反射光とを区別して、検出することができない。

【0054】
また、第3工程および第4工程では、第1光源120,122からの第1光と、第2光源124,126からの第2光とのそれぞれによって、メンブランフィルタ210の第1面212および第2面214のうち、図7の左側図に示す油をろ過した部分Wの所定の範囲が照らされる。例えば油をろ過した部分Wの所定の広い範囲、具体的に大部分換言すれば略全域が照らされる。

【0055】
(油寿命予測)
油寿命予測について、図3を参照して説明する。油寿命予測は、上述した油監視方法によって取得された情報、つまり第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108によって検出された各色成分に基づき行われる。図3に示す油寿命予測についてのフローチャートは、上述した油状態監視方法の第1工程~第4工程に相当する処理を含めて記載してある。そのため、第3工程および第4工程に相当するフローチャートに記載の処理については、その対応を明示し、その詳細は省略する。なお、フローチャートに記載の処理は、制御装置によって制御される。

【0056】
油状態監視方法の第2工程において上述したこの処理の開始の指示を取得した制御装置は、メンブランフィルタ210が設置部110にセットされていることを、所定のセンサによって検出する(S100)。そして、制御装置は、第1光源120,122と第2光源124,126と第1カラーセンサ104と第2カラーセンサ108とを較正、つまり初期設定する(S102)。すなわち、S102では、自己診断機能が実現される。

【0057】
具体的にS102では、第1光源120,122と第2光源124,126との状態、例えば輝度または光度が、所定のセンサによって検出され、検出された状態が所定のレベルであるか否かが判定される。検出された状態が所定のレベルでない場合、第1光源120,122と第2光源124,126との状態が調整され、制御装置は、調整後の状態を記憶する。また、第1カラーセンサ104と第2カラーセンサ108とが、所定の基準値に基づき調整され、制御装置は、調整後の状態を記憶する。すなわち、自己診断機能によって調整された、第1光源120,122と、第2光源124,126と、第1カラーセンサ104と、第2カラーセンサ108とは、それぞれ調整後の状態に設定される。

【0058】
次に、制御装置は、S104~S108およびS110~S114の各処理を制御する。ここで、S104~S108の処理は、油状態監視方法の第3工程に相当し、また、S110~S114の処理は、油状態監視方法の第4工程に相当する。各処理は、上述したとおりであり、その詳細は省略する。

【0059】
S116で制御装置は、第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108のそれぞれによって検出された、第1透過光の各色成分(RGB値)と、第2反射光の各色成分(RGB値)と、第2透過光の各色成分(RGB値)と、第1反射光の各色成分(RGB値)とを用いて、第1透過光、第2透過光、第1反射光および第2反射光のそれぞれについて、最大色差を演算する。

【0060】
ここで、最大色差は、RGB値の各値のうち、最大値と最小値との差であり、これにより、汚染物の性状を大まかに分類できることがわかっている。なお、この点については、上記非特許文献1において提案されている。最大色差が大きい場合は、汚染物中のトルエンに可溶なスラッジなどの酸化生成物が多く、油をろ過したメンブランフィルタ210の色は茶系に変化する。最大色差が小さい場合は、メンブランフィルタ210の色が黒系、白系のときである。黒系に変化する場合、トルエンに不溶な摩耗粉や混入物が多量に混入している。白系は逆に劣化が進んでいない清浄な油である。

【0061】
第1透過光を例にすれば、第1透過光のR値が「235」で、G値が「219」で、B値が「190」である場合、R値とG値との差(絶対値。以下同じ)は「16」であり、R値とB値との差は「45」であり、G値とB値との差は「29」である。したがって、最大色差は、「45」である。すなわち、制御装置は、第1透過光の最大色差について、「45」を演算結果として取得する。なお、第2透過光などについても、同様に演算される。その説明(例示)は省略する。

【0062】
S116を実行した制御装置は、つづけて、ΔERGBを演算する(S118)。油をろ過したメンブランフィルタ210の色は、油の汚れとともに濃色化し、黒(0,0,0)に収束していくことから、黒(0,0,0)と任意のメンブランフィルタ210との2色間距離をΔERGBと定義した。ΔERGBは、白(255,255,255)である場合に、最大値(441.67)となり、色が濃くなり黒(0,0,0)となると最小値(0)を示す。

【0063】
例として、図4のようにRGB3次元空間中に(220,160,75)の座標をもつ点Aを想定する。このとき、ΔERGBは、式(1)となる。このΔERGBは、RGBカラーの3次元上のベクトルの大きさであり、図5のRGBカラーモードの加法混色と合わせ考え、RGB表色系におけるメンブランフィルタ210の色の発色性を表すものと考える。
【数1】
JP0005190660B2_000002t.gif

【0064】
なお、S118で制御装置は、S116と同じく、第1透過光の各色成分(RGB値)と、第2反射光の各色成分(RGB値)と、第2透過光の各色成分(RGB値)と、第1反射光の各色成分(RGB値)とを用いて、第1透過光、第2透過光、第1反射光および第2反射光のそれぞれについて、ΔERGBを演算する。また、油の酸化生成物の色は、R値≧G値≧B値である。

【0065】
S118を実行した制御装置は、つづけて、油の劣化の状態を、S116とS118との演算結果に基づき、判定する(S120)。S120の判定において、制御装置は、S116で取得した第1透過光、第2透過光、第1反射光および第2反射光のそれぞれについての最大色差と、S118で取得した第1透過光などの各ΔERGBとを複合的に用いて、油の劣化の状態を判定する。そして、制御装置は、S120での判定結果に基づき、色情報および判定結果を、モニタに表示する(S122)。具体的に、制御装置は、油寿命予測の対象となった油(ろ過された油)の色情報と、「油は寿命であり、更油を必要とする」、「油は継続して使用可能であるが、X1%の部分更油を必要とする」、「油は継続して使用可能であるが、X2%の部分更油を必要とする」または「油はそのまま継続して使用可能である」を内容とする情報とを、モニタに表示する。ここで、モニタに表示される色情報は、RGB値およびRGB値から換算できる色パラメータである。色パラメータとしては、最大色差、ΔERGB、色相・明度・彩度つまりHLS(Hue,Lightness,Saturation)値またはL色差(CIE1976)が例示される。「油は継続して使用可能であるが、X1%の部分更油を必要とする」における「X1」と、「油は継続して使用可能であるが、X2%の部分更油を必要とする」における「X2」とは、必要とされる部分更油のパーセントを示し、例えば1~99の所定の数値である。「X1」と「X2」とは、「X2>X1」の関係を有する。更油とは、油の全量を取り換えるという意味である。部分更油とは、一部の油を抜き取り、抜き取った部分を補うという意味である。換言すれば、部分更油は、追油を意味する。

【0066】
S120について、判定基準を例示して説明すると、例えば油がタービン油で、これの酸化劣化の場合、最大色差およびΔERGBについて、「継続して使用可能」または「X1%の部分更油を必要」との判定のしきい値は、最大色差が30程度、詳細には、20~30の範囲で、かつΔERGBが410程度である。制御装置は、このように設定されたそれぞれのしきい値に基づき判定する。これらしきい値は、各種の事情を考慮して決定される。なお、「更油を必要」または「X2%の部分更油を必要」との判定のしきい値についても同様で、例えば、最大色差が50程度で、かつΔERGBが360程度のように設定される。また、S116で取得した第1透過光などの最大色差と、S118で取得した第1透過光などのΔERGBとの用い方について、例えば、第1反射光の最大色差および第1反射光のΔERGBと、第2反射光の最大色差および第2反射光のΔERGBと、第1透過光および第2透過光の最大色差の平均値と、第1透過光および第2透過光のΔERGBの平均値とが複合的に用いられる。

【0067】
また、制御装置は、S122でモニタに表示された判定結果などをデータとして含むファイルを出力する(S124)。出力されたファイルは、所定の記憶媒体、例えば、制御装置が備える記憶部に記憶される。そして、制御装置は、この処理を終了する。

【0068】
(実施例)
本実施形態に基づく油状態監視の有効性を確認するために、実験を行ったので、以下にその結果を説明する。

【0069】
(試料油)
試料油は、発電所のガスタービンで実際に使用されているタービン油を清浄化、具体的には油中に存在する大きなゴミを除去し、その清浄化油を自動酸化劣化油に一定量添加することにより作製した。なお、自動酸化劣化油は、清浄化油を自動酸化させた油である。試料油は、4種類とした。4種類の試料油(A),(B),(C),(D)の詳細を表1に示す。
【表1】
JP0005190660B2_000003t.gif

【0070】
(ろ過装置およびろ過方法)
今回の実験に使用したろ過装置200について、図6を参照して説明する。ろ過装置200は、防塵用蓋202と、シリンダ204と、フラスコ206と、真空ポンプ208とを備える。シリンダ204とフラスコ206との間に、孔径0.8μm,直径25mmのセルロースアセテート製のメンブランフィルタ210(アドバンテック東洋株式会社製、製品名:C080A025A)が取り付けられる。試料油のろ過は、試料油25mlをシリンダ204に注入し、真空ポンプ208を使用してフラスコ206内を減圧して行った。ろ過に用いたメンブランフィルタ210の状態は、図7の右側に示す拡大画像のとおりである。

【0071】
なお、図6で、ろ過装置200内に描画された網点部は試料油を示すものである。具体的には、図6でメンブランフィルタ210より上側に描画された網点部は、ろ過前の試料油を示し、下側に示す網点部は、ろ過後の試料油を示す。

【0072】
(反射率および透過率の測定方法)
図7の左側に示すろ過後のメンブランフィルタ210を石油エーテルで洗浄し、油分を除去・乾燥後に、このメンブランフィルタ210(以下、「油分除去後のメンブランフィルタ210」ともいう。)の反射率および透過率、詳細には、油をろ過した部分Wの反射率および透過率を測定した。反射率および透過率の測定には、日立製作所製の紫外・可視分光光度計を使用した(モデル名:U4100)。

【0073】
反射率の測定について説明する。まず、対照側と試料側のホルダーに未使用のメンブランフィルタ210を挿入してベースラインを測定する。その後、試料側に油分除去後のメンブランフィルタ210を挿入して表2の条件で反射率を測定する。対照側の反射強度をI0、試料側の反射強度をIRとして、反射率=IR/I0とした。
【表2】
JP0005190660B2_000004t.gif

【0074】
透過率の測定について説明する。まず、対照側と試料側のホルダーに未使用のメンブランフィルタ210を挿入してベースラインを測定する。その後、試料側に油分除去後のメンブランフィルタ210を挿入して上記表2の条件で透過率を測定する。対照側の透過強度をI0、試料側の透過強度をITとして、透過率=IT/I0とした。

【0075】
なお、比較例として、油の透過率、つまり油それ自体の透過率についても測定した。すなわち、油の透過率の測定も同様に対照側と試料側に空の石英製の液体セルを挿入してベースラインを測定する。その後、試料側の液体セルに試料油(A)~(D)をそれぞれ入れ上記表2の条件で透過率を測定する。対照側の透過強度をI0、試料側の透過強度をITとして、透過率=IT/I0とした。

【0076】
(実験結果)
油分除去後のメンブランフィルタ210と色パラメータについて、図8に示す油分除去後のメンブランフィルタ210の画像それぞれから明らかなとおり、清浄化油添加量とともにメンブランフィルタ210の色が薄くなった。

【0077】
油分除去後のメンブランフィルタ210の反射率について、図9~図11および表3を参照して説明する。なお、図10に関連し、可視光領域は、波長領域が380nm~780nmの範囲である。また、表3は、図11に対応し、波長ごとの反射率を示す表である。油分除去後のメンブランフィルタ210の反射率は、清浄化油添加量の増加にともなって増加した。中でも、青色の波長での変化が大きく、その増加量は約40%であった。それに対して、表4に示す油の透過率は、清浄化油添加量の増加にともないわずかに増加しているが、その増加量は1%にも満たない。
【表3】
JP0005190660B2_000005t.gif
【表4】
JP0005190660B2_000006t.gif

【0078】
油分除去後のメンブランフィルタ210の透過率について、図12~図14および表5を参照して説明する。なお、表5は、図14に対応し、波長ごとの透過率を示す表である。波長領域が380nm~780nmの可視光領域では、油分除去後のメンブランフィルタ210の色が濃いほど透過率が小さくなった。反射率と同様、図8において色が薄くRGB値に大きな差が見られなかった試料油(C),(D)についても、油分除去後のメンブランフィルタ210の透過率では明確な違いが見られた。
【表5】
JP0005190660B2_000007t.gif

【0079】
以上の結果より、油分除去後のメンブランフィルタ210の透過率も、試料油(C),(D)のような色の薄い油分除去後のメンブランフィルタ210のわずかな色の違いを感度よく判定できる。したがって、メンブランフィルタ210を透過した透過光に基づく要素、具体的には、本実施形態の油状態監視で採用する第1透過光の最大色差とΔERGBとは、油の劣化の状態を監視する上で有効な判定指標となる。このことは、第2透過光についても同じである。

【0080】
次に、汚染物の色について、図15を参照して説明する。図15に示す3次元立体図は、黒(0,0,0),赤(255,0,0),緑(0,255,0),青(0,0,255),白(255,255,255),黄(255,255,0),マゼンタ(255,0,255),シアン(0,255,255)の各色を頂点とし、その空間内に汚染物の色を示すものである。汚染物の色は、黒色,茶色,灰色,白色に集中して分布している。また、黒色と白色を結ぶ対角線を軸にやや赤色よりに分布していて、赤みを帯びた色が多く見られる。赤色よりの放物線上では茶色系が多く、対角線上に黒色,灰色,白色が多く分布する。

【0081】
本実施形態によれば、例えば次に記載の効果を得ることができる。

【0082】
(1)本実施形態の油状態監視は、メンブランフィルタ210の第1面212の側に設けられた第1光源120,122からの第1光が油分除去後のメンブランフィルタ210を透過した第1透過光を第1カラーセンサ104で検出する構成を採用した。また、本実施形態の油状態監視は、第2面214の側に設けられた第2光源124,126からの第2光が油分除去後のメンブランフィルタ210を透過した第2透過光を第2カラーセンサ108で検出する構成を採用した。すなわち、本実施形態の油状態監視は、光源からの光が油分除去後のメンブランフィルタ210を透過した透過光に基づく要素、具体的には、最大色差とΔERGBとを、油の劣化の状態を判定(監視)するための判定指標として採用した。これによれば、油分除去後のメンブランフィルタ210のうち、油をろ過し、汚染物216を捕捉した部分Wの色が薄い場合であっても、わずかな色の違いを感度よく判定することが可能となる。したがって、本実施形態の油状態監視は、適切な油の寿命予測を行うために、油の劣化の状態を精度よく判定(監視)することができる。

【0083】
(2)本実施形態の油状態監視は、上記(1)の構成とともに、第1光が油分除去後のメンブランフィルタ210の第1面212で反射した第1反射光を第2カラーセンサ108で検出する構成を採用した。また、本実施形態の油状態監視は、第2光が第2面214で反射した第2反射光を第1カラーセンサ104で検出する構成を採用した。これによれば、メンブランフィルタ210での汚染物216の捕捉状態、換言すれば汚染物216の分布状態に影響されることなく、油の劣化の状態を、さらに精度よく判定(監視)することができる。

【0084】
(3)本実施形態の油状態監視は、油状態監視方法の第3工程および第4工程において、第1光源120,122と、第2光源124,126とを、異なるタイミングで発光させることとした。そして、このようにすることで、第1光に基づく第1透過光および第2光に基づく第2反射光の各色成分が、異なるタイミングで、第1カラーセンサ104に検出される。また、第2光に基づく第2透過光および第1光に基づく第1反射光の各色成分も、異なるタイミングで、第2カラーセンサ108に検出される。これによれば、第1透過光および第2反射光の各色成分のそれぞれを区別し、精度よく検出することが可能であるとともに、第2透過光および第1反射光の各色成分それぞれを区別し、精度よく検出することができる。したがって、本実施形態の油状態監視は、油の劣化の状態を、精度よく判定(監視)することができる。

【0085】
(4)本実施形態の油寿命予測は、油状態監視方法の第3工程および第4工程に対応する図3に示すS104~S120の処理に先立ち、自己診断機能に関するS102の処理を実行する構成を採用した。上述したとおり、本実施形態は、第1透過光と第2透過光と第1反射光と第2反射光とを、第1カラーセンサ104および第2カラーセンサ108のそれぞれで検出する(S106,S118,S112,S114)。そして、第1カラーセンサ104などで検出された各色成分(RGB値)を用いて、所定の演算処理を実行し(S116,S118)、油の劣化の状態を判定する(S120)。

【0086】
したがって、これら処理に先立ち、S102の処理を実行することで、精度のよい判定(監視)を実現することができる。換言すれば、S102の処理を実行しない場合、第1光源120,122などからの第1光などの輝度または光度などにばらつきが生じる。すなわち、同じ油分除去後のメンブランフィルタ210であっても、第1カラーセンサ104などで検出される各色成分が変化することとなる。その結果、一定した判定を実現することができない。

【0087】
本実施形態は、例えば次のようにすることもできる。

【0088】
(1)上記では、油のろ過に用いるフィルタとして、メンブランフィルタ210を採用した。しかし、これとは異なるフィルタとすることもできる。すなわち、油のろ過に用いるフィルタは、油の中に存在している汚染物を補足可能な網構造のフィルタであればよい。

【0089】
(2)上記では、第1光源120,122と、第1カラーセンサ104と、第2光源124,126と、第2カラーセンサ108とを備える油状態監視装置100を例に説明した。しかし、これ以外の構成とすることもできる。例えば、第1光源122および第2光源126を省略した油状態監視装置100とすることもできる。

【0090】
また、第2光源124,126と第2カラーセンサ108とを省略した油状態監視装置100とすることも可能で、この場合、油の劣化の状態は、第1透過光に基づき判定(監視)される。この他、第2光源124,126を省略した油状態監視装置100とすることもできる。この場合、油の劣化の状態は、第1透過光に基づき判定(監視)、または、第1透過光および第1反射光に基づき判定(監視)される。また、第2カラーセンサ108を省略した油状態監視装置100とすることもできる。この場合、油の劣化の状態は、第1透過光に基づき判定(監視)、または、第1透過光および第2反射光に基づき判定(監視)される。

【0091】
さらに、第1光源120,122と、第1カラーセンサ104と、第2光源124,126と、第2カラーセンサ108とを備える油状態監視装置100とした場合であっても、油の劣化の状態の判定(監視)において、例えば、第1反射光および第2反射光を除外した構成、つまり第1透過光および第2透過光による構成、もしくは、第2反射光を除外した構成、つまり第1透過光と、第2透過光と、第1反射光とによる構成とすることもできる。また、第2透過光を除外した構成、もしくは、第2透過光および第2反射光を除外した構成などとすることもできる。

【0092】
なお、第1透過光および第2透過光は、ともに油分除去後のメンブランフィルタ210を透過したものであるから、第1カラーセンサ104によって検出される第1透過光の各色成分と、第2カラーセンサ108によって検出される第2透過光の各色成分とは、基本的には同じである。

【0093】
(3)油状態監視装置100は、監視の対象となる油を使用する機械または設備と別体で構成することもできるが、接続した構成とすることもできる。接続した構成である場合、設定された所定のタイミングで、自動的に、機械などの油を、機械などの貯油槽から所定量(例えば25ml)サンプリングし、上述した油状態監視方法(油寿命判定)が実行されるようにしてもよい。所定のタイミングとしては、機械などの駆動開始時または終了時、または、毎日、毎週もしくは毎月決まった日時などが例示される。
図面
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【図2】
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【図4】
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【図15】
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