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明細書 :蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5920763号 (P5920763)
公開番号 特開2013-078298 (P2013-078298A)
登録日 平成28年4月22日(2016.4.22)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発明の名称または考案の名称 蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体及びその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/542       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 F
C12M 1/00 A
C12Q 1/68 A
G01N 33/542 A
G01N 33/543 575
G01N 33/53 M
G01N 21/64 F
請求項の数または発明の数 7
全頁数 28
出願番号 特願2011-221332 (P2011-221332)
出願日 平成23年10月5日(2011.10.5)
審査請求日 平成26年10月2日(2014.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】浅沼 浩之
【氏名】樫田 啓
【氏名】近藤 展代
【氏名】大澤 卓矢
【氏名】赤羽 真理子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】田中 晴絵
参考文献・文献 国際公開第2011/105610(WO,A1)
特表2005-529606(JP,A)
特表2002-531071(JP,A)
特表2004-507248(JP,A)
調査した分野 C12N 15/09
C12Q 1/68
CAplus/WPIDS/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体であって、
少なくともヌクレオチド又はその誘導体を第1のモノマー単位として備える一本鎖ポリマー鎖を備え、
蛍光色素を備える第2のモノマー単位を3個以上前記ポリマー鎖中に備えるとともに、
これらの第2のモノマー単位間には、2個以上4個以下の前記第1のモノマー単位を備える、
、オリゴヌクレオチド誘導体。
【請求項2】
前記第2のモノマー単位は、少なくとも4個以上前記ポリマー鎖に備えられる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
【請求項3】
前記第2のモノマー単位は、以下の式(1)で表される、請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチド誘導体
【化15】
JP0005920763B2_000017t.gif
(式中、Xは、蛍光色素を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表す。また、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。A1は、オリゴヌクレオチド誘導体の5’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表し、B1は、オリゴヌクレオチド誘導体の3’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表す。)
【請求項4】
共鳴によるエネルギー移動を生じる2つの蛍光色素をそれぞれ有する2個以上の前記第2のモノマー単位を備える、請求項1~のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
【請求項5】
前記蛍光色素は、縮合環系色素である、請求項1~のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体が固相体に固定化された固定化体。
【請求項7】
標的核酸の検出方法であって、
請求項1~のいずれかに記載の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と標的核酸を含有する可能性のある核酸試料とを両者をハイブリダイズ可能に接触させるハイブリダイゼーション工程と、
前記蛍光色素を検出可能な条件下で前記ハイブリダイゼーション工程における前記蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と前記標的核酸とのハイブリダイズ産物を検出しようとする検出工程と、
を備える、検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体とその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の有する塩基が相補的な塩基と塩基対を形成することに基づくハイブリダイゼーションは、標的とする塩基配列(標的配列)を有する標的核酸を同定、検出、定量等などの広い用途に用いられている。標的とする塩基配列は、相補的な塩基配列を有するプローブとのハイブリダイゼーションによって二重鎖を形成する。こうした二重鎖を特異的に検出するためのプローブとして、いくつかの手法が試みられている。
【0003】
一つはモレキュラービーコンである。モレキュラービーコンは、標的配列と相補的な一本鎖DNAのループと、このプローブを配列を挟むように設計された相補鎖のアームがアニールした二本鎖のステムと、から構成されている。ステムの末端には蛍光色素と蛍光色素を消光するクエンチャーとを備えるようにし、ステム形成時には、蛍光色素はクエンチャーにより消光されているが、標的核酸とプローブとがハイブリダイズすると、ステムがほどけて蛍光色素とクエンチャーとが分離して蛍光色素が発光して、ハイブリダイズした二重鎖を検出できる。
【0004】
こうしたモレキュラービーコンとしては、ステムの両末端に蛍光色素を配してこれらが会合して消光し、標的核酸とのハイブリダイゼーションにより会合状態が解けて本来の蛍光を発するようになっている(特許文献1)。DNAプローブアレイ上における複数のプローブに配した蛍光色素を近接する他のプローブの蛍光色素と会合させてさらに、蛍光色素の自己会合による消光とその解消による発光とを利用したプローブを固定化したDNAプローブアレイも提案されている(特許文献2)。
【0005】
さらに、DNAなどの一本鎖のチミンを介してチアゾールオレンジなどの2つの色素を導入することで、相補的塩基配列をハイブリダイゼーションしたときのみ色素由来の蛍光が発光するシステムも検討されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2005-80637号公報
【特許文献2】特開2002-281978号公報
【特許文献3】特開2009-171935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1等に開示されるモレキュラービーコンでは、蛍光色素を消光させるためのステム構造が必須であるが、標的核酸とのハイブリダイゼーションのためにはこのステム構造を崩壊させる必要があるため、応答が遅いという問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、隣り合うプローブが備える蛍光色素同士の自己会合による消光においては、精度や感度の問題があった。さらに、特許文献3に記載の手法では、消光状態が必ずしも十分でない上、効率的に合成できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明では、標的核酸のハイブリダイゼーションを検出するために、標的核酸との非ハイブリダイズ時の消光状態及びハイブリダイズ時の発光状態を効果的に実現できる蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体及びこの利用を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ステム鎖とクエンチャーを用いないで効果的に消光状態を形成することについて種々検討した。その結果、ヌクレオチド誘導体のポリマー鎖において、蛍光色素を有するモノマー単位を所定の配列状態で導入することで、非ハイブリダイズ時には簡易な構造で効果的な消光状態を形成できると同時に、ハイブリダイズ時には蛍光色素が発光することを見出した。これらの知見に基づき、以下の手段が提供される。
【0010】
(1) 蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体であって、
少なくともヌクレオチド誘導体を第1のモノマー単位として備える一本鎖ポリマー鎖を備え、
蛍光色素を備える第2のモノマー単位を3個以上前記ポリマー鎖中に備えるとともに、これらの第2のモノマー単位間には、少なくとも一つの前記第1のモノマー単位を備える、オリゴヌクレオチド誘導体。
(2) 前記第2のプローブは、少なくとも4個以上前記ポリマー鎖に備えられる、(1)に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
(3) 前記第2のモノマー単位間に配される前記第1のモノマー単位は、少なくとも2個である、(1)又は(2)に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
(4) 前記第2のモノマー単位間に配される前記第1のモノマー単位は、4個以下である、(1)~(3)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
(5) 前記第2のモノマー単位は、以下の式(1)で表される、(1)~(4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
【化1】
JP0005920763B2_000002t.gif

(式中、Xは、蛍光色素を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表す。また、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。A1は、水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表し、B1は、水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表す。)
【0011】
(6) 共鳴によるエネルギー移動を生じる2つの蛍光色素をそれぞれ有する2個以上の前記第2のモノマー単位を備える、(1)~(5)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
(7) 前記蛍光色素は、縮合芳香族環系色素である、(1)~(6)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
(8) 蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体であって、
少なくともヌクレオチド又はその誘導体を第1のモノマー単位として備える一本鎖ポリマー鎖を備え、
蛍光色素を備える複数個の第2のモノマー単位を、以下の(a)及び(b):
(a)標的核酸との非ハイブリダイズ時には、互いに会合して自己消光する。
(b)標的核酸とのハイブリダイズ時には、前記会合の解消により蛍光を発する。
を充足するように、前記各第2のモノマー単位間を前記第1のモノマー単位で離隔して前記ポリマー鎖に備える、オリゴヌクレオチド誘導体。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体が固相体に固定化された固定化体。
(10) 標的核酸の検出方法であって、
(1)~(8)のいずれかに記載の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と標的核酸を含有する可能性のある核酸試料とを両者をハイブリダイズ可能に接触させるハイブリダイゼーション工程と、
前記蛍光色素を検出可能な条件下で前記ハイブリダイゼーション工程における前記蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と前記標的核酸とのハイブリダイズ産物を検出しようとする検出工程と、
を備える、検出方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の概要を一例を挙げて説明する図である。
【図2】実施例1で得た蛍光スペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得た蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得た蛍光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例3で得た蛍光スペクトルを示す図である。
【図6】実施例4で得た蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の開示は、蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体及びその利用に関し、特に、自己消光と発光とがステム構造及びクエンチャーを要することなく実現できる、蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体に関する。また、特に、簡易な構造によって自己消光と発光とを標的核酸とのハイブリダイゼーションによって制御可能な蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体に関する。

【0014】
本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の典型的な自己消光-発光制御形態を図1に示す。
本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体によれば、蛍光色素を有する第2のモノマー単位を3個以上、かつ第2のモノマー単位間に少なくとも一つの第1のモノマー単位を有する形態のポリマー鎖とする。蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の標的核酸が非存在のとき、すなわち、こうしたポリマー鎖が一本鎖の状態で存在するとき、図1に示すように、ポリマー鎖はランダムコイル状態となり、第2のモノマー単位に含まれる蛍光色素は会合して自己消光する。

【0015】
一方、標的核酸が存在するとき、3個以上の第2のモノマー単位を含むポリマー鎖部分が当該部分の有する塩基配列と相補的な塩基配列を有する他のポリマー鎖とハイブリダイズするとき、図1に示すように、ポリマー鎖は、他のポリマー鎖と二重鎖を形成し、この結果、蛍光色素は二重鎖中にインターカレートするなどして、相互の会合状態か解消される。この結果、蛍光色素はそれ自体が有する蛍光を発光することができる。

【0016】
以上のように、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体(一本鎖)によれば、ステム構造やクエンチャーなどの消光のための要素を用いなくても、蛍光色素を有する第2のモノマー単位の3個以上を、少なくとも一つの第1のモノマー単位で離間して備えることで、標的核酸の非存在時には自己消光し、標的核酸とのハイブリダイズ時には発光することができる。

【0017】
さらに、共鳴による励起エネルギー移動(FRET)を生じうる二つの蛍光色素をそれぞれ有する少なくとも二つの第2のモノマー単位を備えることで、FRETにより標的核酸を検出することもできる。

【0018】
こうした蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体によれば、標的核酸の検出にあたり、本願発明の背景に記載の先行技術等に対して、例えば以下の利点を発揮することができる。
(1)ハイブリダイゼーション後において洗浄等の処理を省略しても、標的核酸を検出することができる。
(2)ステム鎖やクエンチャーを排除することができる。
(3)自己消光のために複雑な構成を要さず、簡易な構成により自己消光と発光とを実現できるため、プローブの製造コストを低減できる。
(4)標的核酸とのハイブリダイゼーションのためにステム鎖を開放する必要がないので、応答性のよいハイブリダイゼーション及び検出が可能となる。
(5)第2のモノマー単位をポリマー鎖中の所定の塩基配列に対して付加的に導入できるため、塩基配列にかかわらず任意の部位及び個数で蛍光色素を導入できる。また、かかる付加的導入のためにハイブリダイズ用配列と標的配列とのハイブリダイゼーションを阻害しないため、応答性よく標的核酸とハイブリダイズできる。
(6)第2のモノマー単位数及び第2のモノマー単位間の介在させる第1のモノマー単位数によって、自己消光状態や発光状態(発光強度等)を容易に調節できる。

【0019】
なお、本明細書において「核酸」とは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、siRNA,miRNA,hnRNAおよび合成RNAを含む全てのDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、ロックド(ブリッジド)核酸(LNA,BNA)、SNA(Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 1285 -1288),aTNA(J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 14702-14703),メチルフォスフォネート核酸およびS-オリゴ核酸などの人工合成核酸を含む。また、1本鎖であっても2本鎖であってもよい。また、本明細書において「標的核酸」とは、任意の配列を有する任意の核酸である。典型的には、体質、遺伝病、癌などの特定疾患についての発症、疾患診断、治療予後、薬剤や治療の選択などのヒトや非ヒト動物における遺伝子上の指標となる塩基配列を有する可能性のある核酸が挙げられる。指標としては、SNPなどの多型や先天的又は後天的変異が挙げられる。また、病原菌やウイルスなどの微生物由来の核酸なども標的核酸に含まれる。

【0020】
標的核酸は、後述する試料又はその核酸画分をそのまま用いることもできる。典型的には、PCRやマルチプレックスPCRによる増幅反応により、複数の標的核酸が増幅された増幅産物を用いることができる。

【0021】
本明細書において「試料」とは、標的核酸を含む可能性のある試料をいい、その起源や取得方法を特に限定しない。試料としては、生物の細胞、組織、ヒトや動物等の血液、尿、唾液等が含まれ、核酸を含む限り任意の試料を用いることができる。こうした各種の試料からの核酸を含む画分は当業者であれば適宜従来技術を参照して取得することができる。

【0022】
本明細書において「標的配列」とは、検出対象の標的核酸に特徴的な1又は2以上の塩基からなる配列をいう。標的配列は、標的核酸に特徴的な配列であってもよい。標的配列は、例えば、標的核酸同士のホモロジーの低い部分配列であってもよいし、試料に含まれる可能性のある他の核酸に相補性もしくは相同性の低い配列であってもよい。標的配列は、人工的に塩基配列を設定あるいは天然の塩基配列を変更したものであってもよい。

【0023】
本明細書において「ヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチド又はヌクレオチドが有する特定塩基との塩基対形成能と同質の能力を有する化合物又は単位を意味している。したがって、ヌクレオチド誘導体には、DNAやRNAの単位であるヌクレオチドのほか、PNA、LNA等の各種人工核酸の単位を構成する化合物又は当該単位が包含される。また、本明細書において「オリゴヌクレオチド誘導体」とは、こうしたヌクレオチド誘導体の連結したポリマー鎖を意味するが、その長さ(単位数)は特に限定されない。また、特に、例示しないが、たとえばスペルミンやpoly(L-lysine)-graft-dextran(Bioconjugate Chem. 1997, 8, 3.、Bioconjugate Chem. 1998, 9, 292.)等を二重鎖形成助剤として加えて標的核酸を検出してもよい。

【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0025】
(蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体)
本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体は、少なくともヌクレオチド又はその誘導体を第1のモノマー単位として備える一本鎖のポリマー鎖を備えるとともに、ポリマー鎖には、蛍光色素を備える第2のモノマー単位を3個以上を備えるとともに、これらの第2のモノマー単位間には、少なくとも一つの前記第1のモノマー単位を備えることができる。

【0026】
(第1のモノマー単位)
ポリマー鎖は、第1のモノマー単位を備えている。第1のモノマー単位は、ヌクレオチド又はその誘導体に基づく構造を有している。すなわち、第1のモノマー単位は、例えば、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、LNA、SNA,aTNA,PNA等の基本骨格からなる重合鎖や他の基本骨格の単位構造を有することができる。こうした基本骨格は、例えば、後述する第2のモノマー単位において好ましく用いられるリン酸-アルキレン鎖からなる単位構造であってもよい。第1のモノマー単位は、典型的には、デオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド等である。第1のモノマー単位が有する単位構造は、1種であっても2種以上であってもよいが、好ましくは、単一の単位構造とする。

【0027】
第1のモノマー単位は、標的配列中の塩基、典型的には天然塩基であるA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、U(ウラシル)及びC(シトシン)と相補的な塩基あるいはその類似体を有することができる。第1のモノマー単位がこうした塩基を有することで第1のモノマー単位が重合して形成されるポリマー鎖において、標的配列とハイブリダイズする相補的な塩基配列を構成できる。塩基としては、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、U(ウラシル)及びC(シトシン)のほか、これらのそれぞれと同等の塩基対形成能を有する公知の塩基類似体であってもよい。

【0028】
第1のモノマー単位内の塩基等の配列により、標的配列とハイブリダイズするための塩基配列が形成されている。こうしたハイブリダイズ用塩基配列の長さ(第1のモノマー単位の個数)は、特に限定しないが、10mer以上60mer以下であることが好ましい。より好ましくは、15mer以上である。また、より好ましくは30mer以下であり、さらに好ましくは25mer以下であり、一層好ましくは20mer以下である。

【0029】
ポリマー鎖は、好ましくはこうした第1のモノマー単位が主体となって構成されており、その長さは特に限定しないが、10mer以上60mer以下であることが好ましい。より好ましくは、15mer以上である。また、より好ましくは30mer以下である。

【0030】
ポリマー鎖は、少なくともハイブリダイゼーションに供するときには、一本鎖である。1本鎖であることにより、非ハイブリダイズ時において、第2のモノマー単位内の蛍光色素が自己会合して消光させることができるからである。なお、必要に応じ、ハイブリダイゼーション前においては、その相補鎖を備えて二重鎖として製造、流通、保存等されるものであってもよい。

【0031】
(第2のモノマー単位)
ポリマー鎖には、蛍光色素を備える第2のモノマー単位を3個以上を備えるとともに、これらの第2のモノマー単位間には、少なくとも一つの前記第1のモノマー単位を備えることができる。このように第2のモノマー単位と第1のモノマー単位との配列を構成することで、ポリマー鎖の非ハイブリダイズ時においては、第2のモノマー単位内の蛍光色素同士を会合させて自己消光させ、ハイブリダイズ時には標的核酸とハイブリダイズ産物において効果的に蛍光を生じさせることができる。

【0032】
なお、ポリマー鎖中の全ての第2のモノマー単位は、ポリマー鎖中の標的配列とハイブリダイズするように設計された部分(ハイブリダイズ用配列)において備えられるようにすることが好ましい。こうすることで、第2のモノマー単位内の蛍光色素による蛍光強度を効果的に高めることができる。

【0033】
第2のモノマー単位が3個以上備えられることで、効果的に消光させることができるとともに、十分な蛍光を生じさせることができる。第2のモノマー単位が2個以下であると、消光が十分行われにくくなる。第2のモノマー単位は、好ましくは4個以上備えられることが好ましい。蛍光色素数が増大すると、蛍光強度が増強されやすい傾向にあることのほか、4個以上であると、標的配列と完全相補的な状態でハイブリダイズしたときの蛍光強度がミスマッチな状態でハイブリダイズしたときの蛍光強度に比べて大きいからである。また、第2のモノマー単位数の上限は特に限定しないが、ハイブリダイズ用配列の長さに応じて適宜決定される。

【0034】
第2のモノマー単位の間には、少なくとも1個の第1のモノマー単位が備えられる。第2のモノマー単位間に第1のモノマー単位が配されることで、自己消光と発光とを両立することができる。より好ましくは2個以上である。2個の第1のモノマー単位を介在させることで、自己消光が効果的に行われるとともに、発光強度が増強される蛍光がある。一方、介在される第1のモノマー単位は、好ましくは、4個以下である。5個以上であると、色素同士の自己消光の効率が低下するからである。

【0035】
第2のモノマー単位は、ハイブリダイズ用配列を構成するポリマー鎖部分に付加的に導入される。すなわち、ハイブリダイズ用配列中の特定の第1のモノマー単位を置換するのでなく、ハイブリダイズ用配列を構成する所定数の第1のモノマー単位に対して付加される。第2のモノマー単位が、第1のモノマー単位で構成されるハイブリダイズ用配列に対して付加的に導入できるため、ポリマー鎖はハイブリダイズ用配列の長さや構成塩基に関わらず高い自由度で第2のモノマー単位を備えることができ、第1のモノマー単位の介在状態も自在に調節できる。このため、消光程度や蛍光の強度も制御が可能となっている。

【0036】
第2のモノマー単位は、第1のモノマー単位に適用されうる基本骨格を有することができる。すなわち、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、LNA、PNA、SNA,aTNA,及びその他の公知のハイブリダイズ産物を形成する基本骨格単位の塩基を除く構造を単位構造として有することができる。第2のモノマー単位は、第1のモノマー単位と異なり、塩基等に替えて蛍光色素を有している。第2のモノマー単位が有する基本骨格は、第1のモノマー単位と異なっていてもよいし、同一であってもよい。第2のモノマー単位は、好ましくは、以下の式(1)で表されるアルキレン鎖(R1)を主体とする単位構造を備える。式(1)において、A1は、オリゴヌクレオチド誘導体の5’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表し、B1は、オリゴヌクレオチド誘導体の3’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表す。好ましくは、A1及びB1の少なくともいずれかがリン酸基又はホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表す。

【0037】
【化2】
JP0005920763B2_000003t.gif

【0038】
式(1)において、Xは蛍光色素を表す。蛍光色素については、特に限定されず、後述するように公知の蛍光色素を適宜選択して利用できる。好ましくは、縮合芳香族環系の蛍光色素であり、典型的には、Xは、置換されていてもよいペリレン基を有している。ペリレン基は、光化学的に安定であり、量子効率が高いという利点がある。ペリレン基は、Z又は適当な連結基に連結される炭素原子以外の1又は2以上の炭素原子に結合する水素原子は適宜置換されていてもよい。置換基は、特に限定されないが、例えば、それぞれ独立に、水素原子;未置換またはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基で置換された炭素原子数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基;未置換またはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基で置換された炭素原子数2~20のアルケニル基もしくはアルキニル基;水酸基;ハロゲン原子;アミノ基;ニトロ基;またはカルボキシル基を表すことができる。

【0039】
式(1)において、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表す。また、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表す。R2は、R1のアルキレン鎖の5’側の酸素原子から2つ目の炭素原子に結合していることが好ましい。

【0040】
式(1)において、Zは、直接の結合又は連結基を表す。連結基としてのZは、例えば、-NHCO-、NHCS-、CONH-、-O-等あるいはこれらの基を含むものが挙げられる。なお、連結基への連結部分(点線部分)において、蛍光色素の大きさ等との関係を考慮して、置換されていてもよいフェニレン基、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基から選択される1種又は2種以上を組み合わせて介在させてもよい。また、蛍光標識として使用する化合物は、式(1)で表される単位に連結されるために適宜誘導体化されていてもよい。また、式(1)で表される単位に対して連結される蛍光標識上の原子は特に限定されない。

【0041】
式(1)におけるR1~R2の置換基としては、未置換の又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基等で置換された炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4のアルキル基又はアルコキシ基;未置換又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基等で置換された炭素原子2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~4のアルケニル基若しくはアルキニル基;水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基等が挙げられる。さらに、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基が挙げられる。R1の置換基は、そのアルキレン鎖のいずれの炭素原子に連結されていてもよいが、5’の酸素から2つ目又は3つ目の炭素原子に連結されることが好ましい。

【0042】
複数の第2のモノマー単位に関し、式(1)における、R1におけるアルキレン鎖の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。

【0043】
例えば、式(1)で表される単位として以下のものが挙げられる。
【化3】
JP0005920763B2_000004t.gif

【化4】
JP0005920763B2_000005t.gif

【化5】
JP0005920763B2_000006t.gif



【0044】
式(1)で表される第2のモノマー単位としては、例えば以下の式で表される単位が例示できる。

【0045】
【化6】
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【0046】
さらに、式(1)で表される単位としては、以下の式(2)及び(3)で表されるものが挙げられる。なお、これらの式においては、式(1)と同じ記号は、式(1)におけるのと同義である。なお、Xは式(1)と同様蛍光色素を表すが、各式における-L2-L1-X及び-L4-L3-Xをそれぞれ蛍光色素団としてみなすこともできる。

【0047】
【化7】
JP0005920763B2_000008t.gif



【0048】
式(2)中、L1は、炭素数が2以上4以下のアルキニレン基である。アルキニレン基としては、エチニレン基(-C≡C-)、プロピニレン基(-C≡C-C-、-C-C≡C-)、ブチニレン基(-C≡C-C-C-、-C-C≡C-C-、-C-C-C≡C-)が挙げられる。好ましくは、エチニレン基である。

【0049】
式(2)において、L2はフェニレン基を表す。フェニレン基は、置換されていなくてもよいが、連結に関わらない1又は2以上の炭素原子に結合する水素原子は置換されていてもよい。置換基は、特に限定されないが、例えば、それぞれ独立に、水素原子;未置換またはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基で置換された炭素原子数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基;未置換またはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基で置換された炭素原子数2~20のアルケニル基もしくはアルキニル基;水酸基;ハロゲン原子;アミノ基;ニトロ基;またはカルボキシル基を表すことができる。

【0050】
L2のフェニレン基における連結結合部位は、特に限定しないが、R1に対する連結位置からオルト位、メタ位及びパラ位のいずれにおいて主鎖に連結されていてもよい。好ましくは、パラ位である。

【0051】
式(2)におけるXは、式(1)と同様、蛍光色素を表し、式(1)におけるのと同様に特に限定されず、後述するように公知の蛍光色素を適宜選択して利用できるほか、好ましくは、縮合芳香族環系の蛍光色素であり、典型的には、Xは、置換されていてもよいペリレン基を有している。

【0052】
L1の蛍光色素Xに対する連結位置は特に限定されないが、例えば、蛍光色素がペリレンのとき、ペリレンの1位、2位及び3位等のいずれであってもよい。好ましくは、2位、4位、9位及び10位のいずれかである。

【0053】
式(3)において、Xは、蛍光色素を表し、式(1)におけるのと同様に特に限定されず、後述するように公知の蛍光色素を適宜選択して利用できるほか、好ましくは、縮合芳香族環系の蛍光色素であり、典型的には、Xは、置換されていてもよいペリレン基を有している。

【0054】
式(2)において、L3は、炭素数が2以上4以下のアルキニレン基である。アルキニレン基としては、エチニレン基(-C≡C-)、プロピニレン基(-C≡C-C-、-C-C≡C-)、ブチニレン基(-C≡C-C-C-、-C-C≡C-C-、-C-C-C≡C-)が挙げられる。好ましくは、エチニレン基である。

【0055】
L3の蛍光色素Xに対する連結位置は特に限定されないが、例えば、蛍光色素がペリレンのとき、ペリレン基の1位、2位及び3位等のいずれであってもよい。好ましくは、2位、4位、9位及び10位のいずれかである。

【0056】
式(2)において、L4は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。好ましくは、エチレン基である。

【0057】
式(2)及び式(3)において、A1は、オリゴヌクレオチド誘導体の5’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表し、B1は、オリゴヌクレオチド誘導体の3’側の水素原子、リン酸基、ホスホジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体を表す。ヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、5単糖の5’位の炭素原子にリン酸基を有している。B1がヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドのとき、これらはそのリン酸基によるホスホジエステル結合により連結されている。

【0058】
式(2)及び(3)で表される第2のモノマー単位としては、例えば以下の式で表される単位がそれぞれ例示できる。

【0059】
【化8】
JP0005920763B2_000009t.gif

【0060】
(蛍光色素)
蛍光色素としては、特に限定しないが、蛍光オリゴヌクレオチドが一本鎖のとき自己会合して消光し、蛍光オリゴヌクレオチドがDNA等の相補鎖とハイブリダイズしたとき蛍光を生じるものであればよい。例えば、蛍光色素は、例えば、シアニン系色素、メロシアニン系色素、アクリジン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、フラビン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素等が挙げられ、これらから適宜選択して使用できる。より具体的には、シアニン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、縮合芳香族環色素、キサンテン系色素が好ましく用いることができる。さらに具体的には、縮合芳香族環色素であるピレン、ペリレン及びこれらの誘導体からなる群から選択される。縮合芳香族環系色素は、疎水性であって自己会合しやすく消光効果が大きく、かつ、相補鎖との二重鎖にインターカレートして強い蛍光を発する傾向がある。

【0061】
第2のモノマー単位内の蛍光色素は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、異なった蛍光色素をそれぞれ備える第2のモノマー単位においては、これらの蛍光色素を、共鳴によるエネルギー移動を生じる2つの蛍光色素(供与体(ドナー)と受容体(アクセプター))とすることができる。こうした蛍光色素を1個以上の第1のモノマー単位を介在させて隣接させることで、標的核酸とのハイブリダイズ時において、これら2つの蛍光色素間にFRETを生じさせることができる。こうした二つの蛍光色素を備える第2のモノマー単位の組み合わせとしては、例えば、以下の組み合わせが挙げられる。

【0062】
本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体は、以上説明したように、3個以上の第2のモノマー単位を、第2のモノマー単位間に1個以上の第1のモノマー単位を配して含むように構成されている。適切な第2のモノマー単位の個数、第2のモノマー単位内の蛍光標識色素、第2のモノマー単位間の第1のモノマー単位数等については、適宜決定することができる。すなわち、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体は、
(a)標的核酸との非ハイブリダイズ時には、互いに会合して自己消光する。
(b)標的核酸とのハイブリダイズ時には、前記会合の解消により蛍光を発する。
を充足するように、各第2のモノマー単位間を第1のモノマー単位で離隔してポリマー鎖に備える、ようにすればよい。

【0063】
(蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の製造方法)
こうした蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体は、公知の手法で製造することができる。例えば、蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体のポリマー鎖がDNA、RNA、PNA、PNA等の場合において、こうしたポリマー鎖を第1のモノマー単位に対応するアミダイト誘導体を用いて合成することは当業者において周知である。すなわち、ポリマー鎖がヌクレオチドなどのリン酸エステル結合によるポリマー鎖であるとき、このポリマー鎖は、通常の核酸の固相合成法において、第1のモノマー単位であるヌクレオチドやその誘導体に対応するアミダイト誘導体と第2のモノマー単位をポリマー鎖に導入可能なアミダイド誘導体を用いて合成できる。

【0064】
式(1)で表されるリン酸-アルキレン鎖を単位構造とする第2のモノマー単位のためのアミダイト誘導体は、D-トレオニールや3-アミノ1,2-プロパンジオールなどのアミノアルキルジオール類のアミノ基をアリルオキシカルボニル基などの適当な保護基で保護した上、一方の水酸基をジメトキシトリチルクロリド等で保護し、その後、他方の水酸基に2-シアノエチルN,N,N,N-テトライソプロピルホスホロジアミダイドを導入してアミダイト誘導体を得る。そしてこのアミダイト誘導体に対して、蛍光色素を導入してアミダイトモノマー化してもよい。縮合芳香族環系のペリレン系化合物については、例えば、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)誌2003年125巻2217-2223頁記載の方法、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)誌2007年第48巻6759-6762頁記載の方法を適用することができる。

【0065】
なお、蛍光色素は、アリルオキシカルボニル基等でアミノ基を保護した上記アミダイト誘導体単位を所望の位置に備えるオリゴヌクレオチドを合成後に導入してもよい。例えば、アミノ基を保護したままのユニットを備えたオリゴヌクレオチドをCPG担体上においてアミノ基を脱保護した後、当該アミノ基と反応可能にカルボン酸基やイソシアネート基を導入したあるいは保持する蛍光色素を反応させることで、蛍光色素を導入してもよい。

【0066】
また、式(2)及び式(3)で表される第2のモノマー単位に対応するアミダイト誘導体を取得する方法としては、それぞれ例えば、以下のスキームが例示される。

【0067】
【化9】
JP0005920763B2_000010t.gif

【0068】
上記スキームでは、D-トレオニノールのアミノ基をトリフルオロ酢酸エチルで保護した後、DMTを導入し、脱保護して、D-トレオニノールのDMT誘導体を得る。その後、このDMT誘導体と4-ペンチン酸とを、D-トレオニノールのアミノ基にペンチン酸を導入して、ペンチン酸-DMT誘導体を得る。別途合成したハロゲン(ここではBr)化ペリレンとこのDMT誘導体とを反応させて、エチニレン基を介してペリレンを導入して、エチニルペリレンDMT誘導体とする。次いで、このエチニルペリレンDMT誘導体をアミダイト化する。

【0069】
【化10】
JP0005920763B2_000011t.gif

【0070】
上記スキームでは、4-エチニル安息香酸を合成後、そのカルボキシル基の水酸基にD-トレオニノールのDMT誘導体を導入して、フェニルエチニルDMT誘導体を取得する。その後、ハロゲン化ペリレンと反応させて、エチニレン基を介してペリレンを導入して、フェニルエチニルペリレンDMT誘導体とする。次いで、このフェニルエチニルペリレンDMT誘導体をアミダイト化する。

【0071】
なお、例示はしないが、D-トレオニノール由来のアミダイド誘導体を取得後に、当該アミダイト誘導体を用いて第1のモノマー単位や第2のモノマー単位を形成して最終的なアミダイト誘導体としてもよい。

【0072】
第1のモノマー単位及び第2のモノマー単位に対応するアミダイト誘導体等を取得した後は、従来公知のDNA合成法、例えばネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法にしたがって、所望の部位に第1のユニット又は第2のユニットを備えるオリゴヌクレオチドを合成することができる。

【0073】
(蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の用途)
本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体は、各種の用途に用いることができる。典型的には、プローブであるが、より具体的には、(1)液相でのアッセイに用いるプローブ及びこうしたプローブを備えるキット、(2)リアルタイムPCRやTaqManプローブ等のPCR等を利用したDNA増幅用のプローブとして及びこうしたプローブを備えるキット、(3)DNAアレイ等、捕捉プローブ、該捕捉プローブとして本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体を備える固定化体及びこうした固定化体を備えるキット、(4)ビーズ、ファイバー又はヒドロゲル等の固相体に本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体が固定化された固定化体及びこうした固定化体を備えるキット、(5)細胞内や組織における標的核酸の検出・追跡のためのプローブ及びこうしたプローブを備えるキット、及び(6)蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)用プローブ及びこうしたプローブを備えるキット等として用いることができる。

【0074】
(標的核酸の検出方法)
本発明の標的核酸の検出方法は、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と標的核酸を含有する可能性のある核酸試料とを両者をハイブリダイズ可能に接触させるハイブリダイゼーション工程と、前記蛍光色素を検出可能な条件下で前記ハイブリダイゼーション工程における前記蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体と前記標的核酸とのハイブリダイズ産物を検出しようとする検出工程と、を備えることができる。本検出方法によれば、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体が備える非ハイブリダイズ時の自己消光性とハイブリダイズ時の発光性とにより、効果的に標的核酸とのハイブリダイズを検出することができる。また、従来のモレキュラービーコン等と異なりステム鎖の開放を伴わず、また、蛍光色素は標的配列とのハイブリダイゼーションを阻害しないため、応答性よく標的核酸を検出できる。

【0075】
ハイブリダイゼーション工程の実施形態は、特に限定されない。ハイブリダイゼーション工程は、(1)液相での標的核酸の検出、同定、定量等、2)リアルタイムPCRやTaqManプローブ等のPCR等を利用したDNA増幅による標的核酸の検出、同定、定量等、(3)DNAアレイ等を用いた標的核酸の検出、同定、定量等、(4)ビーズ等を用いた固定化体を用いた標的核酸の検出、同定、定量等、(5)細胞内や組織における標的核酸の検出、同定、定量等、及び(6)蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)による標的核酸の検出、同定、定量等の各種形態で用いることができる。したがって、ハイブリダイゼーション工程においても、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体を、上記した用途等の形態で用いることができる。

【0076】
また、検出工程の実施形態も特に限定されない。検出工程におけるハイブリダイズ産物の蛍光色素による検出は、用いた蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の構造に基づいて予め予定されている蛍光波長で検出すればよい。また、蛍光強度に基づいて、標的核酸の検出、同定のほか、標的核酸の定量等をすることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を具現化した具体例について説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
(ペリレン系蛍光色素を備えるモノマー単位Eを備えるオリゴヌクレオチド誘導体の合成)
1-1.蛍光色素Eを含むDNAの合成に対応するアミダイトモノマーの合成
蛍光色素Eを含むDNAは、以下のスキーム1-1に従い合成した。
【実施例1】
【0079】
【化11】
JP0005920763B2_000012t.gif

【実施例1】
【0080】
化合物1-1は、ケミカルコミュニケーションズ(Chemical Communications)誌2011年第47巻6404-6406頁記載の方法により合成した。すなわち、二口フラスコに化合物1-1(0.70g, 0.951mmol)とPd(OH)2 (180mg)を入れ、乾燥THF約60mlに溶解させ窒素置換した。次にフラスコ内を一旦真空にしてから水素置換し、撹拌した。反応終了後、Pd(OH)2をセライトろ過し、エバポレーションした後、真空乾燥した。これをシリカゲルカラムトグラフィー(展開溶媒組成:クロロホルム:へキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=30:30:30:2.7)で精製し、化合物1-2(0.48 g: 0.65 mmol, 収率68%)を得た。
【実施例1】
【0081】
ナスフラスコに化合物1-2(0.48 g: 0.65 mmol, 1.0eq)を入れ、窒素置換した後、脱水塩化メチレンと脱水アセトニトリルに溶解させ2回共沸した後、脱水塩化メチレン約3.0 mlおよび脱水アセトニトリル約3.0 ml、トリエチルアミン約0.45 mlに溶解させた。続いて氷浴上で2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(0.31 g, 0.293 mmol, 2.1 等量 )をゆっくり滴下し、攪拌した。20 分後氷浴をはずし、室温で約40分反応させることで化合物1-3を得た。DNAへの導入は、ケミカルコミュニケーションズ(Chemical Communications)誌2011年第47巻6404-6406頁に記載の方法に従った。
【実施例1】
【0082】
(標的配列との二重鎖形成に伴う蛍光強度変化の測定)
各塩基を有するアミダイト誘導体を用いて最終的に合成したオリゴヌクレオチドおよび標的配列(b3a2)を含む標的核酸及び部分的に標的配列に一致する配列(b2a2))を含む部分標的核酸を以下に示す。
(蛍光標識オリゴヌクレオチド)
1E 5’ AAGGGCTETTTGAACTC 3’(配列番号1)
2E-2 5’ AAGGGCTETTETGAACTC 3’(配列番号2)
3E-2 5’ AAGGGECTETTETGAACTC 3’(配列番号3)
4E-2 5’ AAGGGECTETTETGEAACTC 3’(配列番号4)
5E-2 5’ AAGEGGECTETTETGEAACTC 3’(配列番号5)
6E-2 5’ AAGEGGECTETTETGEAAECTC 3’(配列番号6)
【実施例1】
【0083】
(標的核酸及び部分標的核酸)
b3a2: 3’-ACTTCCCGAAAACTTGAGAC-5’ (オリゴヌクレオチドと完全に相補的な標的配列を含む)(配列番号7)
b2a2 : 3’-ACTTCCCGAAGAAGGAATA-5’ (オリゴヌクレオチドと部分的に相補的な配列を含む)(配列番号8)(プローブとは下線部に対して相補的である)
【実施例1】
【0084】
これらのオリゴヌクレオチドを用いて、蛍光標識オリゴヌクレオチドの一時重鎖状態及び標的核酸等との二重鎖状態の各蛍光強度を測定するとともに、S/B比(b3a2との二重鎖状態での蛍光強度/オリゴヌクレオチド一本鎖状態での蛍光強度)
【実施例1】
【0085】
一重鎖状態での測定条件は、以下の通りとした。
オリゴヌクレオチド濃度 1μM, pH 7.0 (10 mM リン酸バッファー)、[NaCl] = 100 mM, 20 ℃, 425 nm励起、460 nmの蛍光強度を測定
【実施例1】
【0086】
また、二重鎖状態での測定条件は、以下の通りとした。
オリゴヌクレオチド濃度 1μM, b3a2の濃度 2 μM, pH 7.0 (10 mM リン酸バッファー)、[NaCl] = 100 mM, 20 ℃, 425 nm励起、460 nmの蛍光強度を測定
【実施例1】
【0087】
結果を以下の表に示す。
【実施例1】
【0088】
【表1】
JP0005920763B2_000013t.gif
【実施例1】
【0089】
以上のように、蛍光色素Eの導入数を増やすほど一本鎖状態での蛍光強度は低下し、特に3つ以上で劇的に低下した。一方ターゲット(b3a2)と二重鎖形成すると、蛍光色素Eの数の増加に伴い蛍光強度は増大した。その結果シグナル/バックグラウンド比(S/B比)はEの増加と共に改善され、蛍光色素Eを3つ以上導入したプローブでは高いS/B比を実現できた。
【実施例1】
【0090】
また、4E-2の一本鎖の蛍光スペクトルと、b3a2と二重鎖を組ませた場合の蛍光スペクトル及びb2a2との二重鎖状態での蛍光スペクトルを、図2及び図3にそれぞれ示す。
【実施例1】
【0091】
図2及び図3に示すように、b3a2と二重鎖形成させた場合と部分的にのみ相補的なb2a2と二重鎖形成させた場合とでは、460nmでの蛍光強度はそれぞれ467.5及び12.6であり、40倍近い差があった。このように、本発明の蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体によれば、このように本発明のプローブは十分な配列特異性を有していることが分かった。
【実施例2】
【0092】
(ペリレン系蛍光色素を備えるモノマー単位E’を備える蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
本実施例では、蛍光色素以下のモノマー単位を有する蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
【実施例2】
【0093】
【化12】
JP0005920763B2_000014t.gif

【実施例2】
【0094】
上記モノマー単位を3つ有し、以下に示す配列からなるオリゴヌクレオチド誘導体を、テトラへドロンレターズ(Tetrahedron Letters)誌2007年48巻6759-6762頁記載の方法で合成した。また、標的核酸Comp1を以下の配列で準備した。
【実施例2】
【0095】
(蛍光標識オリゴヌクレオチド)
3E’-2:5’-GGTE’TAE’TTE’ATGCCG-3’(配列番号9)
(標的核酸)
Comp1:3’-CCAATAATACGGCCTG-5’(配列番号10)
【実施例2】
【0096】
このオリゴヌクレオチド(3E’-2)を、オリゴヌクレオチド濃度 1μM、pH 7.0 (10 mM リン酸バッファー)、NaCl濃度 100 mM, 20 ℃の条件下、 425 nmで励起した結果及び対応する標的核酸Comp1を濃度が2 μMになるように加え、同じ条件で460nmの蛍光強度を測定した結果を図4に示す。
【実施例2】
【0097】
図4に示すように、一重鎖状態では460 nmの蛍光強度は18.9であったのに対し、それに対し、二重鎖状態での同蛍光強度は467であった。このように、ペリレン系蛍光色素E’を3個導入することでS/B比24.7という高感度を実現できた。
【実施例3】
【0098】
(ペリレン系蛍光色素を備えるモノマー単位Fを用いた蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
本実施例では、以下のモノマー単位を有する蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
【実施例3】
【0099】
【化13】
JP0005920763B2_000015t.gif

【実施例3】
【0100】
上記モノマー単位を4つ有し、以下に示す配列からなるオリゴヌクレオチド誘導体を、ケミカルコミュニケーションズ(Chemical Communications)誌2011年第47巻6404-6406頁に記載の方法に従い、合成した。また、標的核酸Comp2を以下の配列で準備した。
(蛍光標識オリゴヌクレオチド)
4F0L: 5’-AGG-F-TA-F-TCGC-F-AA-F-TCC-3’(配列番号11)
(標的核酸)
comp2:3’-TCCATAGCGTTAGG-5’(配列番号12)
【実施例3】
【0101】
このオリゴヌクレオチドの一本鎖状態及び標的核酸との二本鎖状態での蛍光スペクトルを図5に示す。図5に示すように、オリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド濃度1μM、pH 7.0 (10 mM リン酸バッファー)、NaCl濃度 100 mM, 20 ℃の条件下、 440 nmで励起したところ、478 nmの蛍光強度は11.8であった。それに対し、対応する標的核酸comp2を濃度が1.2μMになるように加え、同じ条件で478 nmの蛍光強度を測定したところ、528であった。本発明のモノマー単位Fを用いることで、S/B比44.7という高感度を実現できた。
【実施例4】
【0102】
(モノマー単位F及びLの双方を導入したオリゴヌクレオチド誘導体の合成)
本実施例では、モノマー単位F及び以下に示すモノマー単位Lを有する蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。また、標的核酸Comp2を準備した。
【実施例4】
【0103】
【化14】
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【実施例4】
【0104】
上記モノマー単位を4つ有し、以下に示す配列からなるオリゴヌクレオチド誘導体を、ケミカルコミュニケーションズ(Chemical Communications)誌2011年第47巻6404-6406頁に記載の方法に従い、合成した。この場合、モノマー単位F中の蛍光色素fの発光スペクトルとモノマー単位L中の蛍光色素lの吸収スペクトルが重なるので、蛍光色素fを励起した場合でも蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により蛍光色素lのみの蛍光が観察された。
【実施例4】
【0105】
(蛍光標識オリゴヌクレオチド)
4F1L: 5’-AGG-F-TA-F-TCLGC-F-AA-F-TCC-3’(配列番号13)
【実施例4】
【0106】
このオリゴヌクレオチドの一本鎖状態及び標的核酸との二本鎖状態での蛍光スペクトルを図6に示す。図6に示すように、オリゴヌクレオチド濃度 1μM、pH 7.0 (10 mM リン酸バッファー)、NaCl濃度 100 mM, 20 ℃の条件下、 440 nmで励起したところ、503 nmの蛍光強度は7.81であった。それに対し、対応する標的核酸Comp2(3’- TCCATAGCGTTAGG-5’)を濃度が1.2 μMになるように加え、同じ条件で503 nmの蛍光強度を測定したところ、183 であった。このように異なる蛍光色素を導入した場合でもS/B比23.4という高感度を実現できた。また、FRETを実現できることもわかった。
【配列表フリ-テキスト】
【0107】
配列番号1~13:蛍光標識オリゴヌクレオチド
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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