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明細書 :傾斜分離装置および当該傾斜分離装置を用いた分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5899536号 (P5899536)
公開番号 特開2013-043140 (P2013-043140A)
登録日 平成28年3月18日(2016.3.18)
発行日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成25年3月4日(2013.3.4)
発明の名称または考案の名称 傾斜分離装置および当該傾斜分離装置を用いた分離方法
国際特許分類 B01D  21/02        (2006.01)
B01D  21/24        (2006.01)
FI B01D 21/02 C
B01D 21/24 D
B01D 21/24 G
B01D 21/24 T
B01D 21/24 F
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2011-183694 (P2011-183694)
出願日 平成23年8月25日(2011.8.25)
審査請求日 平成26年8月20日(2014.8.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】平野 博人
個別代理人の代理人 【識別番号】100112003、【弁理士】、【氏名又は名称】星野 裕司
【識別番号】100118544、【弁理士】、【氏名又は名称】野本 可奈
【識別番号】100145344、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 和徳
審査官 【審査官】目代 博茂
参考文献・文献 特開昭53-083157(JP,A)
特開平08-112505(JP,A)
特開昭53-011362(JP,A)
特開昭62-163713(JP,A)
特開2006-075685(JP,A)
特開昭60-209215(JP,A)
特開昭58-112007(JP,A)
国際公開第2009/129590(WO,A1)
調査した分野 B01D21/00-21/34
特許請求の範囲 【請求項1】
懸濁溶液である被処理液を分散質と分散媒とに分離する傾斜分離装置であって、
下部傾斜板および当該下部傾斜板の上方に当該下部傾斜板から間隔を隔てて設けられた上部傾斜板を含み、前記下部傾斜板の下方から前記分散質および前記分散媒の一方を取り出すとともに前記下部傾斜板および前記上部傾斜板の上方から前記分散質および前記分散媒の他方を取り出すように構成された容器と、
前記容器内に前記下部傾斜板に沿って前記下部傾斜板と前記上部傾斜板との間に当該下部傾斜板および当該上部傾斜板からそれぞれ間隔を隔てて設けられ、前記容器内の前記下部傾斜板上に被処理液を供給する供給管と、
を含み、
前記供給管は、第1の高さおよび第1の高さよりも低い第2の高さにそれぞれ設けられた第1の流出口および第2の流出口を有する傾斜分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の傾斜分離装置において、
前記上部傾斜板は、前記下部傾斜板に平行に設けられた傾斜分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の傾斜分離装置において、
前記供給管は、前記下部傾斜板に平行に設けられた傾斜分離装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか一項に記載の傾斜分離装置において、
前記供給管は、前記下部傾斜板と前記上部傾斜板との中間に配置された傾斜分離装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか一項に記載の傾斜分離装置において、
前記供給管は先端が閉塞され、前記第1の流出口および前記第2の流出口は、前記供給管の側面に設けられた傾斜分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の傾斜分離装置において、
前記供給管は、前記第1の高さおよび前記第2の高さにそれぞれ複数の前記第1の流出口および複数の前記第2の流出口を有する傾斜分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の傾斜分離装置において、
前記供給管の前記複数の第1の流出口および前記複数の第2の流出口は、それぞれ、前記下部傾斜板および前記上部傾斜板に対向する方向とは異なる方向に設けられた流出口を含む傾斜分離装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか一項に記載の傾斜分離装置において、
前記分散質は沈降物であって、前記容器は、前記下部傾斜板の下方から前記分散質である沈降物を取り出すとともに前記下部傾斜板および前記上部傾斜板の上方から前記分散媒である清澄液を取り出すように構成された傾斜分離装置。


【請求項9】
請求項1から8いずれか一項に記載の傾斜分離装置を用いて前記懸濁溶液の前記分散質と前記分散媒とを分離する分離方法であって、
前記容器内に、前記分散質および前記分散媒の前記他方と前記懸濁溶液との界面が前記第1の高さに位置するように前記懸濁溶液を連続的に供給する分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜分離装置および当該傾斜分離装置を用いた分離方法に関し、とくに、懸濁溶液を分散質と分散媒とに分離する傾斜分離装置および当該傾斜分離装置を用いた分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁溶液から懸濁物質である分散質を分離して清澄液を取り出す技術として、重力分離を用いた傾斜沈降分離装置等の傾斜分離装置が知られている。
特許文献1(特開昭53-83157号公報)には、懸濁物質を傾斜配置された管状通路を下から上に通すことにより液体流から懸濁物質を分離する構成の装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開平8-112505号公報)には、それぞれ内側に流路を形成するように複数個の筒体を相互に隣接させた形状の成形体からなる流路形成体又は対向する板状部材間に流路を形成するように配置された複数枚の板状部材からなる流路形成体を、流路が水平面に対して傾斜するように配置し、流路内を上から下に向かって流れるように被処理液を案内しつつ被処理液中の懸濁物を沈降させるようにした下向流傾斜沈降装置が記載されている。特許文献3(特開昭53-11362号公報)にも、傾斜板間に懸濁水を流すことにより、フロックが凝集し、水と分離して下方に流れるとともに、水が上方に流れることにより水とフロックとを分離する構成の固液分離装置が記載されている。
【0004】
特許文献4(特開昭62-163713号公報)には、被処理水が一側から供給されて他側から流出される沈殿槽に、流出側へ傾斜した傾斜板を上下方向に並列させることにより、被処理水が傾斜板に沿って斜に上昇しながら流過するので、横向流式を採用しつつも上向流式の場合と近い流れとするようにした傾斜板沈殿槽が記載されている。
【0005】
特許文献5(特開2006-75685号公報)には、懸濁液分離槽に沈設されて、懸濁液から懸濁物質を分離して清澄液を取り出す傾斜流路モジュールにおいて、筐体と、筐体に垂直方向に積層して取り付けられて複数の傾斜流路を形成する複数の傾斜板を有するとともに、傾斜板を蛇腹を介して連結して、傾斜板の相互の間隔を変更自在にした構成の傾斜流路モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開昭53-83157号公報
【特許文献2】特開平8-112505号公報
【特許文献3】特開昭53-11362号公報
【特許文献4】特開昭62-163713号公報
【特許文献5】特開2006-75685号公報
【0007】

【非特許文献1】平野博人ら、化学工学論文集、第35巻、第1号、2009、pp.75-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、たとえば特許文献1から3に示したような構成の分離装置では、処理量が少ないという問題があった。そのため、処理量を多くするために、傾斜板の面積を大きくする必要があり、装置サイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
また、特許文献4や特許文献5に記載されたような横向流式の装置では、傾斜板を垂直方向に多段に積層することにより、処理量を多くできる可能性があるが、流入する懸濁溶液が高濁度の場合、密度流による底流れ現象が顕著となり、下方の分離流路に負荷が集中するという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で装置サイズを大きくすることなく、傾斜分離装置における処理量を増加させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
懸濁溶液を分散質と分散媒とに分離する傾斜分離装置であって、
下部傾斜板および当該下部傾斜板の上方に当該下部傾斜板から間隔を隔てて設けられた上部傾斜板を含み、前記下部傾斜板の下方から前記分散質および前記分散媒の一方を取り出すとともに前記下部傾斜板および前記上部傾斜板の上方から前記分散質および前記分散媒の他方を取り出すように構成された容器と、
前記容器内に前記下部傾斜板に沿って前記下部傾斜板と前記上部傾斜板との間に当該下部傾斜板および当該上部傾斜板からそれぞれ間隔を隔てて設けられ、前記容器内の前記下部傾斜板上に被処理液を供給する供給管と、
を含み、
前記供給管は、第1の高さおよび第1の高さよりも低い第2の高さにそれぞれ設けられた第1の流出口および第2の流出口を有する傾斜分離装置が提供される。
【0012】
このような構成の傾斜分離装置において、分散質の比重が分散媒の比重よりも大きい場合は、分散質が下部傾斜板上に沈降して下部傾斜板に沿って下方に移動するとともに、懸濁溶液から分散質が取り除かれた分散媒は上部傾斜板下を上部傾斜板に沿って上方に移動する。これにより、容器の下方から分散質が取り出されるとともに、容器の上方から分散媒が取り出される。一方、分散質の比重が分散媒の比重よりも小さい場合は、分散質が上部傾斜板下に浮上して上部傾斜板下に沿って上方に移動するとともに、懸濁溶液から分散質が取り除かれた分散媒は下部傾斜板上を下部傾斜板に沿って下方に移動する。これにより、容器の上方から分散質が取り出されるとともに、下方から分散媒が取り出される。
【0013】
ところで、本発明者は、下部傾斜板と上部傾斜板との間にスラリーを上部から供給して、装置下部から排泥を排出し、装置上部から清澄水を取り出す構成の傾斜沈降分離装置について、上部傾斜板下に生成するくさび形の清澄水を考えたモデルを適用した検討を行っている(非特許文献1)。非特許文献1には、スラリーを供給する初期供給高さに比例して、初期供給高さが高いほど沈降速度が増加することが示されている。これは、初期供給高さが高いほど、その箇所から沈降する沈降物が堆積する下部傾斜板の長さを長くすることができるためと考えられる。
【0014】
しかし、本発明者がさらに検討を進めた結果、懸濁溶液を傾斜分離装置の容器に連続的に供給して懸濁溶液の分離を連続的に行う場合に、下部傾斜板の長さだけではなく、上部傾斜板の長さもできるだけ長く利用した方が、より効力よく分離を行えることを見出した。
【0015】
本発明の傾斜分離装置の構成によれば、高さの異なる第1の高さおよび第2の高さにそれぞれ第1の流出口および第2の流出口が設けられているので、高さの高い第1の位置にある第1の流出口から流出した懸濁物質は、下部傾斜板の長さを長く利用することができる一方、高さの低い第2の位置にある第2の流出口から流出した懸濁物質は、上部傾斜板の長さを長く利用することができる。これにより、全体として効率よく分離を行うことができる。
【0016】
本発明によれば、
上記傾斜分離装置を用いて前記懸濁溶液の前記分散質と前記分散媒とを分離する分離方法であって、
前記容器内に、前記分散質および前記分散媒の前記他方と前記懸濁溶液との界面が前記第1の高さに位置するように前記懸濁溶液を連続的に供給する分離方法が提供される。
【0017】
この構成によれば、複数の流出口のうち、高い位置にある第1の流出口と同じ高さに分散質および分散媒の他方と懸濁溶液との界面を維持することにより、分散質および分散媒の他方を上方から精度よく取り出すことができるとともに、界面下での分散質と分散媒との分離を効力よく行うことができる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成で装置サイズを大きくすることなく、傾斜分離装置における処理量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における傾斜沈降分離装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における供給管の構成を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態における傾斜沈降分離装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図5】図1に示した傾斜沈降分離装置にスラリーを供給した状態を示す図である。
【図6】図1に示した傾斜沈降分離装置にスラリーを供給した状態を示す図である。
【図7】実施例の傾斜沈降分離装置の構成を示す断面図である。
【図8】比較例の傾斜沈降分離装置の構成を示す断面図である。
【図9】傾斜沈降分離装置が傾斜容器と供給管との組合せのユニットを複数含む構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。

【0022】
以下の実施の形態において、傾斜分離装置が、分散質と分散媒とを含む懸濁溶液から分散質を沈降させて下方から沈降物を取り出すとともに、上方から分散媒である清澄液を取り出す傾斜沈降分離装置である場合を例として説明する。

【0023】
図1は、本実施の形態における傾斜沈降分離装置の構成の一例を示す断面図である。図2は、図1の断面図である。図2(a)は、図1のA-A’断面図、図2(b)は、図1のB-B’断面図である。

【0024】
傾斜沈降分離装置100は、傾斜容器102と供給管110とを含む。ここで、傾斜容器102と供給管110との組合せを1ユニットとする。
傾斜容器102は、下部傾斜板104aおよび下部傾斜板104aの上方に下部傾斜板104aから間隔を隔てて下部傾斜板104aに沿って設けられた上部傾斜板104bを含む。ここで、上部傾斜板104bは、下部傾斜板104aの鉛直方向上方に設けられた構成とすることができる。また、傾斜容器102は、下部傾斜板104aの下方から沈降物を取り出すとともに下部傾斜板104aおよび下部傾斜板104aの上方から清澄液を取り出すように構成されている。傾斜容器102の下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bの下方には、回収部106および下部排出口108が設けられている。

【0025】
本実施の形態において、下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bは傾斜容器102の側壁の一部を構成している。図2(a)および図2(b)に示すように、傾斜容器102は矩形の断面形状を有し、下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bは、側壁105により接続されている。

【0026】
下部傾斜板104aは、鉛直面に対して角度θ傾斜した構成となっている。角度θは、被処理液の種類に応じて、下部傾斜板104a上に沈降した沈降物が下部傾斜板104a上に堆積せず、下部傾斜板104aに沿って下方に移動する沈降物下降流が生じる角度に設定することができる。

【0027】
また、本実施の形態において、上部傾斜板104bは、下部傾斜板104aに平行に設けられた構成となっている。このような構成により、傾斜容器102内での被処理液の流れが均一になり分離効率が良好となる。また、後述するように、複数のユニットを配列して用いた場合、各傾斜容器102の下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bをそれぞれ平行とすることにより、装置設計上の効率も良好にすることができる。

【0028】
供給管110は、傾斜容器102内に挿入され、傾斜容器102内の下部傾斜板104a上に分散質と分散媒とを含む懸濁溶液である被処理液を供給する。本実施の形態において、供給管110は、下部傾斜板104aに沿って下部傾斜板104aと上部傾斜板104bとの間に下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bからそれぞれ間隔を隔てて設けられる。

【0029】
本実施の形態において、供給管110は、傾斜容器102内に配置したときに異なる高さとなる複数の位置にそれぞれ設けられた複数の流出口112を有する。ここで、複数の流出口112のうち、最も上部の高さHに設けられた流出口112を流出口112h(第1の流出口)として示している。高さは、下部傾斜板104aの下端からの高さとすることができる。流出口112hは、下部傾斜板104aや上部傾斜板104bの上端よりも低い位置となるようにする。これにより、後述するように、傾斜容器102から清澄液124を精度よくオーバーフローさせることができる。

【0030】
供給管110は下端(先端)が閉塞され、複数の流出口112は、供給管110の側面に設けられている。本実施の形態において、複数の流出口112は、供給管110の延在方向に沿って、所定間隔で設けられた構成とすることもできるが、他の例において、間隔が異なるようにすることもできる。

【0031】
また、複数の流出口112のうち、最も下部の流出口112は、下部傾斜板104aの下端と略等しい高さに位置するように設けることができる。これにより、後述するように、上部傾斜板104bの長さを長く利用することができる。

【0032】
本実施の形態において、供給管110の略同じ高さとなる箇所には、n個(nは複数)の流出口112が設けられた構成とすることができる。このように略同じ高さとなる箇所に複数の流出口112を設けることにより、被処理流体を傾斜容器102中に均等に供給することができ、効率よく分離を行うことができる。これらn個の流出口112は、供給管110を延在方向に対して垂直な面で切った断面上に位置し、各方向に略均等な間隔に配置された構成とすることができる。たとえば、n=2の場合は、同じ高さに設けられた2つの流出口112が互いに対向するように設けられた構成とすることができる。

【0033】
図3は、供給管110の構成を示す拡大図である。ここでは、説明のために供給管110にハッチングを付している。ここでは、直径dの供給管110に直径d’(d>d’)の流出口112が設けられている。図1、図2(b)、および図3に示した例では、供給管110の略同じ高さとなる箇所に、それぞれ供給管110を貫通するように、同じサイズの2個の流出口112が設けられている。

【0034】
流出口112は、流出口112から供給される被処理液が下部傾斜板104a上に沈降した沈降物の流れや上部傾斜板104b下に上部傾斜板104bに沿って移動する清澄液の流れに影響を与えないように配置することができる。たとえば、供給管110と下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bそれぞれとの距離が小さい場合、流出口112が下部傾斜板104aや上部傾斜板104bと対向しない方向、たとえば側壁105に対向する方向に設けられた構成とすることができる。図2(b)ではこのような例を示している。このような構成により、流出口112から供給される被処理液が下部傾斜板104a上に沈降した沈降物の流れや上部傾斜板104b下に上部傾斜板104bに沿って移動する清澄液の流れに影響を与えないようにすることができる。

【0035】
一方、供給管110と下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bそれぞれとの距離が充分大きい場合や、流出口112からの被処理液の流出量が少ない場合は、流出口112が下部傾斜板104aや上部傾斜板104bと対向する方向に設けることもできる。また、流出口112は、被処理液が下方向に供給されるように構成することもできる。

【0036】
また、供給管110は、下部傾斜板104aと上部傾斜板104bとの中間に配置された構成とすることができる。このような構成により、流出口112から供給される被処理液が下部傾斜板104a上に沈降した沈降物の流れや上部傾斜板104b下に上部傾斜板104bに沿って移動する清澄液の流れに影響を与えないようにすることができる。

【0037】
供給管110は、下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bに平行に設けられた構成とすることができる。このような構成により、傾斜容器102内での被処理液の流れが均一になり分離効率が良好となる。また、後述するように、複数のユニットを配列して用いた場合、供給管110を各傾斜容器102の下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bとそれぞれ平行とすることにより、装置設計上の効率も良好にすることができる。

【0038】
次に、本実施の形態の傾斜沈降分離装置100により被処理液から沈降物を分離して清澄液を得る手順を説明する。図4は、本実施の形態における傾斜沈降分離装置100の構成の一例を模式的に示すブロック図である。

【0039】
傾斜沈降分離装置100は、さらに、スラリータンク150と、第1のポンプ152と、第2のポンプ154と、沈降物回収容器156と、清澄液回収容器158とを含む。スラリータンク150は、被処理液であるスラリー120を収容する。スラリー120は、たとえば炭酸カルシウムスラリー等の懸濁溶液とすることができる。スラリー120はスラリータンク150内で撹拌され、均一な濃度で供給管110を介して傾斜容器102内に供給される。第1のポンプ152は、スラリータンク150から供給管110に供給するスラリー120の供給量を制御する。沈降物回収容器156は、傾斜容器102から排出される沈降物122を収容する。第2のポンプ154は、傾斜容器102から回収する沈降物122の量を制御する。清澄液回収容器158は、傾斜容器102の上面からオーバーフローする清澄液124を回収する。

【0040】
以上のような傾斜沈降分離装置100において、まず、第1のポンプ152を駆動してスラリータンク150から供給管110にスラリー120を流す。このときの傾斜容器102の状態を図5に示す。供給管110にスラリー120を流すと、スラリー120は供給管110の複数の流出口112から順次傾斜容器102内に流出する。傾斜容器102内がスラリー120で満たされるまでは、傾斜容器102に供給されるスラリー120の供給量>下部排出口108から排出される排出量となるように、第1のポンプ152および第2のポンプ154の駆動を制御する。これにより、傾斜容器102内が徐々にスラリー120で満たされ、傾斜容器102上部からオーバーフローする。

【0041】
傾斜容器102内がスラリー120で満たされるのに伴い、各流出口112から流出したスラリー120内の懸濁物質が下方向に沈降する。沈降物122の移動を実線の矢印で示す。下方向に沈降した懸濁物質は、沈降物122として下部傾斜板104a上に沈降し、下部傾斜板104aに沿って下方に移動して沈降物下降流が生じる。また、同時に、スラリー120から沈降物122が取り除かれた清澄液124は上方向に移動する。これにより、一定時間後に定常状態に達するようにすることができる。上方向に移動した清澄液124は、上部傾斜板104b下を上部傾斜板104bに沿って上方に移動して清澄液上昇流が生じる。清澄液124の移動を破線の矢印で示す。

【0042】
図6はこの状態を示す図である。
傾斜容器102内には、下部傾斜板104a上に沈降物下降流、その上にスラリー120の層、さらにその上に清澄液上昇流の3層が形成される。傾斜容器102の上部には、清澄液上昇流がたまり、下部傾斜板104aから上部傾斜板104bまでの全範囲に清澄液124が存在する清澄液124の層が形成される。

【0043】
傾斜容器102の上部に移動した清澄液124は傾斜容器102の上面からオーバーフローする。清澄液回収容器158は、この清澄液124を回収する。また、沈降物122は徐々に濃縮されて回収部106に堆積する。回収部106に堆積した沈降物122は、第2のポンプ154を駆動することにより沈降物回収容器156に回収される。

【0044】
本実施の形態において、清澄液124の層とスラリー120の層との界面126が、複数の流出口112の中で最も高い位置にある流出口112hと同じ高さとなるように制御する。この制御は、スラリータンク150からのスラリー120の供給量と、回収部106からの沈降物122の排出量とを第1のポンプ152および第2のポンプ154で制御することにより行うことができる。

【0045】
このような制御を行うことにより、傾斜容器102から清澄液124を精度よくオーバーフローさせることができる。

【0046】
また、本実施の形態における傾斜沈降分離装置100の構成によれば、界面126の下方では、各流出口112から流出したスラリー120の沈降物122が下方向に、清澄液124が上方向に移動しながらスラリー120が分離される。このとき、比較的上方に位置する流出口112から流出したスラリー120は下部傾斜板104aの長さを長く利用できるとともに、比較的下方に位置する流出口112から流出したスラリー120は上部傾斜板104bの長さを長く利用できる。そのため、下部傾斜板104aおよび上部傾斜板104bの両方の長さを有効に用いつつ、スラリー120を効力よく分離することができる。

【0047】
また、本実施の形態における傾斜容器102と供給管110との組合せのユニットによれば、装置の構成を単純化・小型化することができる。

【0048】
次に、本実施の形態における傾斜沈降分離装置100の応用例を説明する。
図9は、傾斜沈降分離装置100が傾斜容器102と供給管110との組合せのユニットを複数含む構成の一例を示す断面図である。傾斜沈降分離装置100は、所望の処理量に応じて、必要な個数のユニットを配列した構成とすることができる。

【0049】
このような構成の傾斜沈降分離装置100において、各ユニットの傾斜容器102下部に濃縮された沈降物122やオーバーフローの清澄液124は、各ユニット毎に回収するようにしてもよく、また全ユニットの分を合わせて回収するようにしてもよい。また、複数のユニットへの被処理液の流入量はすべて均一となるようにすることもでき、ユニット毎に被処理水の流入量を変えることもできる。

【0050】
このような構成の傾斜沈降分離装置100によれば、各ユニットでの処理が独立して行われるため、1つのユニット内での処理が他のユニット内での処理に影響することがなく、各ユニット内での処理を均一に行うことができる。また、いずれかのユニットで閉塞等が起こっても、他のユニットでの処理に影響することがなく、他のユニットでの処理を効率よく行うことができる。

【0051】
このような構成において、設置する場所に合わせて容易にユニットを組み合わせることにより所望の処理量の処理を帯鋼に売ようにすることができる。そのため、懸濁溶液の濃度や流量に合わせて装置を一から設計することなく対応することができる。また、各ユニットをトレーラーや艀などに載せて必要な場所へ移動させた後にそれらを組み立てて使うこともでき、移動型の傾斜沈降分離装置として使用することもできる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
本実施の形態における傾斜沈降分離装置100により炭酸カルシウムスラリー(濃度0.1g/cm)から炭酸カルシウムを分離して清澄液を得る処理を行った。図7は、本例の傾斜沈降分離装置100の構成を示す図である。
【実施例】
【0053】
傾斜容器102のサイズは、幅(図2のw)×奥行き(図2のw’)=53mm×53mm、長さL=70cmとした。また、下部傾斜板104aの傾斜角度θ=30°とした。上部傾斜板104bおよび供給管110も下部傾斜板104aと平行になるようにした。
【実施例】
【0054】
供給管110の内径(図3のd)は6mmとした。供給管110には、傾斜容器102内に配置したときに、6つの初期供給高さ(H、H、H、H、H、H)にそれぞれ流出口112を2個ずつ設けた。流出口112は、内径(図3のd’)が1.6mmとなるようにした(供給断面積計24.13mm)。ここで、Hは下部傾斜板104aの下端に対応する高さで、Hを基準(ゼロ)としたHからの各初期供給高さは、H=6cm、H=12cm、H=18cm、H=24cm、H=30cmである。
【実施例】
【0055】
このような構成の傾斜沈降分離装置100において、清澄液124の層とスラリー120の層との界面が最も高い位置にある流出口112h(H)と同じ高さになるようにスラリー120の供給量を制御した。
【実施例】
【0056】
(比較例)
図8に示した比較例の傾斜沈降分離装置を用いて、実施例1と同様に炭酸カルシウムスラリー(濃度0.1g/cm)から炭酸カルシウムを分離して清澄液を得る処理を行った。傾斜容器102は、実施例1と同様のものを用いた。上部傾斜板104bおよび供給管10は、下部傾斜板104aと平行になるようにした。ここで、供給管10の内径は5.5mmとし、下端が開口した構成となっている(供給断面積23.76mm)。また、供給管10の下端がH=30cmとなるようにした。
【実施例】
【0057】
このような構成の傾斜沈降分離装置において、清澄液124の層とスラリー120の層との界面が供給管10の下端(H)と同じ高さになるようにスラリー120の供給量を制御した。
【実施例】
【0058】
以上の実施例1および比較例において、スラリー120の供給濃度と供給流量とを乗じて供給固体流束を算出し、供給固体流束を固体処理量として算出した。その結果、実施例の方が比較例に比べて固体処理量が2割程度多くなった。
【実施例】
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0060】
以上の実施の形態では、分散質と分散媒とを含む懸濁溶液から分散質を沈降させて下方から沈降物を取り出すとともに、上方から分散媒である清澄液を取り出す傾斜沈降分離装置を例として説明した。しかし、本発明は、沈降分離だけでなく、たとえば油水を含む懸濁溶液から比重が小さい油を分散質として浮上させて上方から浮上物を取り出すとともに、下方から分散媒を取り出す浮上分離に適用することもできる。この場合も、浮上物の層と懸濁溶液の層との界面が、複数の流出口112の中で最も高い位置にある流出口112hと同じ高さとなるように制御することができる。
【実施例】
【0061】
また、以上の実施の形態においては、供給管110がスラリー120を上方向から下方向に流す構成となっている場合の例を示した。しかし、本発明は、供給管110がスラリー120を下方向から上方向に流す構成となっている場合にも適用することができる。この場合は、供給管110は上端が閉塞され、複数の流出口112は、供給管110の側面に設けられた構成とすることができる。この場合も、浮上物の層と懸濁溶液の層との界面が、複数の流出口112の中で最も高い位置にある流出口112hと同じ高さとなるように制御することができる。
【実施例】
【0062】
また、以上の実施の形態においては、供給管110の略同じ高さとなる箇所には、n個(nは複数)の流出口112が設けられた構成を例として示したが、各箇所に一つずつの流出口112を設けた構成とすることもできる。この場合、流出口112は、被処理液が下方向に供給されるように構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 傾斜沈降分離装置
102 傾斜容器
104a 下部傾斜板
104b 上部傾斜板
105 側壁
106 回収部
108 下部排出口
110 供給管
112 流出口
112h 流出口
120 スラリー
122 沈降物
124 清澄液
126 界面
150 スラリータンク
152 第1のポンプ
154 第2のポンプ
156 沈降物回収容器
158 清澄液回収容器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8