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明細書 :金属の回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5666835号 (P5666835)
公開番号 特開2011-026701 (P2011-026701A)
登録日 平成26年12月19日(2014.12.19)
発行日 平成27年2月12日(2015.2.12)
公開日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発明の名称または考案の名称 金属の回収方法
国際特許分類 C22B   3/18        (2006.01)
C22B  25/00        (2006.01)
C22B  58/00        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
C01G  19/00        (2006.01)
C01G  15/00        (2006.01)
FI C22B 3/00 F
C22B 25/00 101
C22B 58/00
C12P 3/00 A
C01G 19/00 Z
C01G 15/00 B
C01G 15/00 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2010-143216 (P2010-143216)
出願日 平成22年6月23日(2010.6.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)刊行物名:環境省循環型社会形成推進科研費 レアメタル特別枠委員会 公開シンポジウム要旨集 頒布日:平成22年3月15日 発行所:環境省循環型社会形成推進科研費「レアメタル再資源化総合システム評価技術開発」 (2)刊行物名:ケミカルエンジニヤリング2010年5月号 頒布日:平成22年5月1日 発行所:株式会社化学工業社
優先権出願番号 2009148486
優先日 平成21年6月23日(2009.6.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年6月4日(2013.6.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】小西 康裕
【氏名】荻 崇
【氏名】斉藤 範三
個別代理人の代理人 【識別番号】110001896、【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
【識別番号】100098464、【弁理士】、【氏名又は名称】河村 洌
【識別番号】100149630、【弁理士】、【氏名又は名称】藤森 洋介
【識別番号】100111279、【弁理士】、【氏名又は名称】三嶋 眞弘
【識別番号】100110984、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 敬子
審査官 【審査官】向井 佑
参考文献・文献 特開2009-006269(JP,A)
特開2007-113116(JP,A)
特表2002-533218(JP,A)
米国特許第05030425(US,A)
米国特許第05030426(US,A)
資源・素材2004(盛岡),「希薄溶液からの金のバイオ還元・回収」,P.117,118
資源・素材2003(宇部),「嫌気性細菌による金イオンの還元・回収」,P.247,248
化学工学学会秋季大会研究発表講演要旨集(CD-ROM),Vol.37,P.V040
資源・素材2005(室蘭),「還元細菌 Shewanella algaeによる金ナノ粒子の細胞内合成」,P.311,
hydrometallurgy,vol.81,no.1(2006),p.24-29
荻崇 他4名,バクテリアを利用したインジウムのバイオ回収 ,資源・素材2009(札幌),日本,社団法人 資源・素材学会,2009年,Vol.2009 No.2,Page.199-200
調査した分野 C22B 3/00
C22B 25/00
C22B 58/00

JSTplus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物が溶解された溶液に、鉄還元細菌を添加し、インジウム、ガリウムまたはスズを回収する、金属の回収方法。
【請求項2】
前記金属含有物は、インジウムおよびスズを含む混合物である、請求項1に記載の金属の回収方法。
【請求項3】
前記鉄還元細菌は、シワネラ アルゲまたはシワネラ オネイデンシスである、請求項1または2に記載の金属の回収方法。
【請求項4】
前記鉄還元細菌をアルカリ処理または焼成してインジウム、ガリウムまたはスズを回収する、請求項1ないし3のいずれかに記載の金属の回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、インジウム、ガリウム、スズを回収する金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウムは、酸化スズインジウム(ITO)、透明導電性薄膜、ハンダペースト、InP,InAsなどの半導体材料として使用されている。通常は、使用後はスクラップとして廃棄される。一方、インジウムは、固有の含有鉱物がなく、例えば亜鉛鉱中に10~20ppmしか存在しない希少な金属である。このため、インジウムは、需要に見合う供給量を確保するのが容易ではない。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイでは、約1,400ppmのインジウムが使用されている。したがって、資源保護の観点から、上記インジウムを使用した製品のスクラップからインジウムを回収することが試みられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1には、スズとインジウムとの含有物を酸化剤の存在下で、塩酸で溶解し、インジウムを溶出させて、スズとインジウムとを分離する方法が開示されている。しかし、この文献に記載の方法では、インジウムを完全に溶出させることはできない(特許文献1、実施例)。このため、スズ中に残存するインジウムをさらに分離する必要がある。また、スズとインジウムとの含有物から、簡単な工程でそれぞれ別個に回収することができれば、より好ましい。
【0005】
また、細菌を用いて金属含有材料から金属を回収することが試みられている(特許文献2)。この文献では、シアン生成及び分解菌を用いてシアンを生成し、このシアンを用いて金属含有材料から金属を溶解し、金属を回収する方法が開示されている。しかし、この方法では、異なる金属が含まれている場合に、特定の金属を効率よく回収することは難しい。すなわち、純度の高いインジウムを回収するためには、更に精製工程を必要とする。
【0006】
また、発光ダイオードなどの半導体材料として用いられるガリウムも、インジウムと同様に、固有の含有鉱物がない、例えばボーキサイト中に含まれる微量成分である。このため、ガリウムも、需要に見合う供給量を確保するのが容易ではない。
【0007】
なお、本発明者らは、鉄還元細菌を用い、貴金属または白金族のイオンから貴金属または白金族を還元して金属を回収する方法を開発している(例えば、特許文献3参照)。

【特許文献1】特開2009-35808号公報
【特許文献2】特開2007-308762号公報
【特許文献2】特開2007-113116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易な処理により、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物から、効率的にこれらの金属を回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物を、鉄還元細菌で処理することにより、インジウム、ガリウムまたはスズを回収できることを見出し、本発明を完成した。なお、鉄還元細菌は、従来電子供与体から電子の供給を受けて、鉄を還元する。あるいは、貴金属または白金族のイオンを直接還元する。一方、本発明では、鉄還元細菌は、インジウム、ガリウムまたはスズを還元せずに、これらを微生物細胞に分離・回収することを見出した。すなわち、本発明は、鉄還元細菌の新たな機能を見出し、その機能を利用するものである。また、前記鉄還元細菌をアルカリ処理または焼成してインジウム、ガリウムまたはスズを回収すると、これらの金属を高濃度に濃縮できることから、工業的に再利用するのが容易である。
【0010】
さらに、インジウムおよびスズを含む混合物であっても、条件を選択することで、それぞれ単独で回収できる。したがって、分離工程を必要とせず、簡易な工程で回収することができる。
【0011】
また、本発明のインジウムの回収方法で用いる鉄還元細菌は、シワネラ アルゲまたはシワネラ オネイデンシスであると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法では、従来鉄イオンなどの金属イオンの還元に関与していた鉄還元細菌をインジウム、ガリウムまたはスズの回収に用いる。これにより、インジウム、ガリウムまたはスズを高純度で効率よく回収することができる。また、精製工程を必要としない。
【0013】
本発明の方法を用いると、インジウムおよびスズを含む混合物であっても、回収条件を選択することで、それぞれの金属を別個に回収することができる。この結果、分離工程を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図2】図2は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図3】図3は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図4】図4は、初期細胞濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図5】図5は、初期細胞濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図6】図6は、初期インジウム濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図7】図7は、初期インジウム濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図8】図8は、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時分析を行って得られた、熱分解挙動を示す図である。
【図9】図9は、シワネラ アルゲの表面のTEM写真及びインジウム元素マップを示す写真である。
【図10】図10は、シワネラ アルゲを乾燥、粉砕したものをXRD分析した結果を表すチャートである。
【図11】図11は、塩化スズ水溶液からのスズの回収率を示すグラフである。
【図12】図12は、塩化スズ水溶液からのスズの回収率を示すグラフである。
【図13】図13は、スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収率を示すグラフである。
【図14】図14は、スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収率を示すグラフである。
【図15】図15は、実廃液Bからのスズの回収率を示すグラフである。
【図16】図16は、シワネラ オネイデンシスを用い、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。
【図17】図17は、初期ガリウム濃度を変えた場合のガリウムの回収率を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の金属の回収方法によれば、インジウム、ガリウムまたはスズを、以下の工程により回収することができる。
【0016】
[鉄還元細菌]
本発明で用いる鉄還元細菌は、電子供与体から電子の供給を受けて、鉄を還元する細菌のうち、還元作用を行わずに、インジウムを水酸化インジウムとして吸着できる細菌である。このような鉄還元菌としては、例えば、ゲオバクター属(代表種:Geobacter metallireducens:ゲオバクター メタリレデューセンス、ATCC(American Type Culture Collection)53774株)、デスルフォモナス属(代表種:Desulfuromonas palmitatis:デスルフォモナス パルミタティス:ATCC51701株)、デスルフォムサ属(代表種:Desulfuromusa kysingii:デスルフォムサ キシンリDSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)7343株)、ペロバクター属(代表種:Pelobacter venetianus:ペロバクター ベネティアヌス:ATCC2394株)、シワネラ属(Shewanella algae:シワネラ アルゲ、(以下、「S. algae」という):ATCC51181株、Shewanella oneidensis:シワネラ オネイデンシス:(以下、「S.oneidensis」という)ATCC700550株)、フェリモナス属(Ferrimonas balearica:フェリモナス バレアリカ:DSM9799株)、エアロモナス属(Aeromonas hydrophila:エアロモナス ヒドロフィラ:ATCC15467株)、スルフロスピリルム属(代表種:Sulfurospirillum barnesii:スルフロスピリルム バーネシイ:ATCC700032株)、ウォリネラ属(代表種:ウォリネラ スシノゲネス:Wolinella succinogenes:ATCC29543株)、デスルフォビブリオ属(代表種:Desulfovibrio desulfuricans:デスルフォビブリオ デスルフリカンス:ATCC29577株)、ゲオトリクス属(代表種:Geothrix fermentans:ゲオトリクス フェルメンタンス:ATCC700665株)、デフェリバクター属(代表種:Deferribacter thermophilus:デフェリバクター テルモフィルス:DSM14813株)、ゲオビブリオ属(代表種:Geovibrio ferrireducens:ゲオビブリオ フェリレデューセンス:ATCC51996株)、ピロバクルム属(代表種:Pyrobaculum islandicum:テルモプロテウス アイランディカム:DSM4184株)、テルモトガ属(代表種:Thermotoga maritima:テルモトガ マリティマ:DSM3109株)、アルカエグロブス属(代表種:Archaeoglobus fulgidus:アルカエグロブス フルギダス:ATCC49558株)、ピロコックス属(代表種:Pyrococcus furiosus:ピロコックス フリオサス:ATCC43587株)、ピロディクティウム属(代表種:Pyrodictium abyssi:ピロディクティウム アビーシイ:DSM6158株)などが例示できる。これらの鉄還元細菌は、嫌気性細菌である。
【0017】
本発明で用いる鉄還元細菌は、当該細菌に適した培地を用いて、増殖・維持を行えばよい。例えばS. algaeは、例えば、pHが7.0で、電子供与体として乳酸ナトリウム(32mol/m)が、電子受容体としてFe(III)イオン(56mol/m)が含まれている、クエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて、回分培養して増殖させ、維持する。鉄イオンの塩は、この例では、クエン酸塩であるが、使用する培地、使用する鉄還元細菌の種類により、適宜選択すればよい。
【0018】
本発明で用いる鉄還元細菌のうち、特に好ましい鉄還元菌は、S. algaeまたはS.oneidensisである。
【0019】
[インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物]
本発明で処理対象は、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物である。
【0020】
本発明で用いるインジウムまたはスズ含有物としては、例えば、ITOターゲット材スクラップ、非鉄金属精錬などで得られるインジウム滓、インジウムまたはスズを含有するソルダーペースト屑、半導体、半導体生産廃液などを用いることができる。
【0021】
本発明で用いるガリウム含有物としては、例えば、半導体、半導体生産廃液などを用いることができる。
【0022】
[インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物からのインジウム、ガリウムまたはスズの回収]
上記インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物は、酸に溶解させて、処理に用いる。以下、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物は、酸に溶解させたものを、「金属酸性溶液」という。酸性溶液としては、インジウム、ガリウムまたはスズの塩酸、硝酸、硫酸水溶液であればよい。酸の量は、回収する金属により、適宜調整すればよい。例えば、回収する金属がインジウムの場合、最終的にpHが1.5~4.2、好ましくは3.5~4.2になるようにすればよい。また、回収する金属がガリウムの場合、最終的にpHが1.7~3.8、好ましくは2.5~3.8になるようにすればよい。回収する金属がスズの場合、最終的にpHが0.5~1.5になるようにすればよい。インジウムおよび、ガリウムまたはスズを含む金属含有物に、酸を加え、例えばpHが0.5以下になるようにしてインジウム、ガリウムまたはスズを溶解した後に、水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)で希釈してpHが上記の値になるようにしてもよい。あるいは、インジウムおよびスズの混合物を含む金属含有物の場合、先にpHを0.5~1.5にして、鉄還元菌を加えスズを回収した後、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などを加え、pHの値を調整してインジウムを回収してもよい。あるいは、逆にインジウムを最適のpHで回収した後、pHを変えてスズを回収してもよい。さらに、インジウムとスズの回収時間が異なるpHで、いずれかの金属を先に回収して、その後に他方の金属を回収することとしてもよい。
【0023】
ITOターゲット材スクラップは、インジウム、スズ以外に、ガラスや有機化合物を含んでいてもよい。例えば、ITOガラスを電極ガラスとして用いる装置などが挙げられる。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどが含まれる。これらのディスプレイは、いわゆるテレビ用ディスプレイのほか、携帯電話などの移動体通信機器で用いられるディスプレイであってもよく、その用途や大きさ、形状などに制限はない。
【0024】
本発明で用いるインジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物は、使用に際し、粉砕をしてもよい。粉砕方法は特に制限されず、公知の方法を用いて粉砕すればよい。粉砕方法としては、例えばローラー式粉砕機(フレットミル)、振動ミル、ボールミル、ポットミル、乳鉢、自動乳鉢などを用いる方法が挙げられる。
【0025】
ガラスを含む原料を用いる場合は、粉砕してそのまま用いてもよく、ろ過等の公知の分離手段を用いてガラスを除いてもよい。
【0026】
有機物を用いる原料を用いる場合は、焼成して有機物を除いてもよい。焼成は、粉砕前であっても、後であってもよいが、好ましくは粉砕前である。焼成温度は特に制限されず、含まれる有機物の種類によって最適の温度を選択すればよい。好ましくは、インジウム、ガリウムまたはスズの酸化物が還元されて揮発する温度以下であることが好ましい。例えば、500~800℃、好ましくは600~800℃である。焼成時間は、例えば、10分間~10時間である。
【0027】
また、本発明の回収方法を行う前に、インジウム、ガリウムまたはスズを含む酸性溶液を前処理して、インジウム、ガリウムまたはスズを含む酸性溶液に含まれるインジウム、ガリウムまたはスズ以外の他の金属や夾雑物を、公知の方法により、除去してもよい。
【0028】
本発明の金属の回収方法で用いるインジウム、ガリウムまたはスズを含む酸性溶液に含まれるインジウム、ガリウムまたはスズの量は、特には制限されず、用いる鉄還元菌の数によって適宜選択できる。例えば、0.01~10.0mM、好ましくは0.1~1.0mM程度である。
【0029】
本発明の金属の回収方法で用いる鉄還元菌の数は、特には制限されない。一般的に細胞数が少ないほど、処理時間が長くなる。鉄還元菌の数としては、例えば1.0×1014cells/m~1.0×1017cells/m、好ましくは1.0×1015cells/m~1.5×1016cells/m程度であればよい。
【0030】
本発明の金属の回収方法では、酸または酸性水溶液にインジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物を溶解させて上記金属酸性溶液得る。また、必要に応じて金属含有酸性溶液のpHは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸塩、または水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸塩などを用いることで調整してもよい。鉄還元細菌の懸濁液の調製は、まず指数増殖末期に達した鉄還元細菌培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌する。集菌した菌液を、水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)を用いて所定の濃度に調整する。
【0031】
調製した金属含有酸性溶液と鉄還元細菌の懸濁液を嫌気性雰囲気または好気性雰囲気、常温で混合し、スターラーによる攪拌またはガスによりバブリングを行うことでインジウム、ガリウムまたはスズの回収を行う。嫌気性雰囲気または好気性雰囲気のいずれの雰囲気を用いるかは用いる鉄還元菌の種類によってインジウム、ガリウムまたはスズの水酸化物の回収率またはインジウム、ガリウムまたはスズの蓄積率のよいほうを適宜選択すればよい。
【0032】
また、鉄還元菌は、鉄の還元を行う際には、電子供与体として乳酸ナトリウムなどの有機酸塩や水素ガスを必要とする。一方、本発明の金属の回収においては、電子供与体を必要としない。
【0033】
本発明の金属の回収方法では、処理時間は特に制限はされない。処理効率を考えると、インジウム、ガリウムまたはスズの濃度と使用する鉄還元菌の数を調整し、30分程度でインジウム、ガリウムまたはスズがほぼ100%回収できるようにすればよい。
【0034】
本発明の金属の回収方法で回収されるインジウム、ガリウムまたはスズは、鉄還元菌の表面または菌体内に水酸化物として回収される、または菌体内において各金属イオンとして蓄積される。水酸化インジウム回収の態様は、使用する鉄還元菌の種類や金属酸性溶液のpHなどにより異なる。例えば、インジウムを含む金属含有物をpH4.0以上の金属酸性溶液として回収処理をすると、ナノオーダの水酸化インジウム微粒子が鉄還元菌の表面に観察される。
【0035】
鉄還元菌の表面に付着した水酸化物や鉄還元菌細胞に捕集された水酸化物または各金属イオンは、例えば超音波処理とアルカリ処理とを併用して、鉄還元菌の細胞を破砕し、焼成等により有機物を除去することで、回収できる。これにより回収される金属は、水酸化物ナノ粒子である。このようにして得られた水酸化物は極めて純度が高く、このまま、ITO、半導体、ソルダーペーストなどの原料として使用することができる。また、燃焼法により、鉄還元菌の表面に付着した水酸化物や鉄還元菌細胞に捕集された水酸化物または各金属イオンを回収してもよい。これにより、鉄還元菌が捕集した金属を高効率で回収することができる。この場合は、回収した金属は精製する必要がある。
【0036】
本発明の金属の回収方法を用いれば、極めて簡易な操作で、短時間に高い効率で、インジウム、ガリウムまたはスズを回収することができる。また、得られた水酸化物や金属イオンも極めて純度が高く、電子材料等に容易に再利用することができる。
【0037】
さらに、従来は、ITOのようなインジウムとスズとの混合物の場合、前処理によりスズを除去した後にインジウムを回収する必要があった。本発明の金属の回収方法を用いれば、同一の処理系で、pHを変えるまたは処理時間を変えることで、インジウムとスズとを別個に回収することができる。このため、処理効率に優れる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0039】
以下の実施例において、インジウム、ガリウム、スズ含有酸性溶液は、以下のように調整した。まず、塩化インジウム、塩化ガリウム、塩化スズをイオン交換水に溶解させて所定の濃度に調製して、インジウム含有酸性溶液を作製した。インジウム、ガリウム、スズ含有酸性溶液のpHは水酸化ナトリウムで調整した。
【0040】
鉄還元細菌の懸濁液の調製は、まず指数増殖末期に達した鉄還元細菌培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌した。次に、集菌した菌液をイオン交換水で再懸濁し所定の濃度に調整した。
【0041】
以下の実施例において、インジウム、ガリウム、スズの回収処理は以下のように行った。まず、バルブ付きねじ口瓶を培養器として用いた。培養温度は、303Kであった。
【0042】
(インジウム回収におけるpHの影響-1)
シワネラ アルゲの細胞濃度:8.3×1015cell/m、初期インジウム濃度:1.0mMの培養液中で、pHを変えてインジウムを回収した。実験は、pH3.5に調整したインジウム含有酸性溶液に水酸化ナトリウムを加え、pH3.7、3.9に調整したものを用いた。対照実験としてpH3.7に調整したインジウム含有酸性溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。また、実験中水素を用いてバブリングをした。結果を図1に示す。図1は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図1において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、○は対照実験を、■はPH3.5のインジウム含有酸性溶液を、●はPH3.7のインジウム含有酸性溶液を、▲はPH3.9のインジウム含有酸性溶液を、それぞれ示す。
【0043】
図1から、PHがpH3.5から3.9に大きくなるに従って、インジウムの回収率が、向上する(51%、67%、83%)ことがわかる。これから、適切なpHを選択することで、インジウムを効率よく回収できることがわかる。
【0044】
(インジウム回収におけるpHの影響-2)
シワネラ アルゲの細胞濃度:9.5×1015cell/m、初期インジウム濃度:0.5mMの培養液中で、pHを変えてインジウムを回収した。実験は、pH3.68に調整したインジウム含有酸性溶液に水酸化ナトリウムを加え、pH3.85、4.02に調整したものを用いた。対照実験としてpH3.68、3.85、4.02に調整したインジウム含有酸性溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。また、実験中水素を用いてバブリングをした。結果を図2に示す。図2は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図2において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)を示す。また、○はpH3.68のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えなかったものを、□はpH3.85のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えなかったものを、△はpH4.02のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えなかったものを、●はpH3.68のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、■はpH3.85のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、▲はpH4.02のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、それぞれ示す。
【0045】
図2から、溶液のpHが上昇するにしたがって、インジウムの回収率が、向上する(85%、93%、100%)ことがわかる。これから、適切なpHを選択することで、インジウムをほぼ全て回収できることがわかる。
【0046】
(インジウム回収におけるpHの影響-3)
シワネラ アルゲの細胞濃度:8.8×1015cell/m、初期インジウム濃度:0.9mMの培養液中で、pHを変えてインジウムを回収した。実験は、pH2.39に調整したインジウム含有酸性溶液に水酸化ナトリウムを加え、pH3.27、3.57、3.68、3.76、3.80、3.85、3.87に調整したものを用いた。対照実験としてpH2.39に調整したインジウム含有酸性溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。また、実験中水素を用いてバブリングをした。結果を図3に示す。図3は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図3において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)を示す。また、○は対照実験のものを、■はpH2.30のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、●はpH3.27のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、▲はpH3.57のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、▼はpH3.68のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、◆はpH3.76のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、+はpH3.80のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、×はpH3.85のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、*はpH3.87のインジウム含有酸性溶液で、シワネラ アルゲを加えたものを、それぞれ示す。
【0047】
図3から、溶液のpHが上昇するにしたがって、インジウムの回収率が、向上する(7%⇒53%)ことがわかる。これから、適切なpHを選択することで、インジウムをほぼ全て回収できることがわかる。
【0048】
(インジウム回収における初期細胞濃度の影響-1)
初期インジウム濃度:1.0mM、pH3.6の培養液中で、シワネラ アルゲの細胞濃度を変えてインジウムを回収した。実験は、シワネラ アルゲの細胞濃度を4.4×1015cell/m、8.8×1015cell/m、1.8×1016cell/m、3.5×1016cell/mに調整したものを用いた。対照実験として無菌のものを用いた。結果を図4に示す。図4は、初期細胞濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図4において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、□は対照実験を、▼はシワネラ アルゲの細胞濃度が4.4×1015cell/mのものを、▲はシワネラ アルゲの細胞濃度が8.8×1015cell/mのものを、●はシワネラ アルゲの細胞濃度が1.8×1016cell/mのものを、■はシワネラ アルゲの細胞濃度が3.5×1016cell/mのものを、それぞれ示す。
【0049】
図4から、初期細胞濃度が増加するに従って、インジウムの回収率が、向上する(25%、48%、70%、100%)ことがわかる。また、pHが3.6の場合は、シワネラ アルゲの初期細胞濃度が3.5×1016cell/mのものを用いれば、30分以内にほぼ100%のインジウムが回収できることがわかった。これから、処理条件を選択することで、インジウムを効率よく回収できることがわかる。
【0050】
(インジウム回収における初期細胞濃度の影響-2)
初期インジウム濃度:1.0mM、pH3.68±0.3の培養液中で、シワネラ アルゲの細胞濃度を変えてインジウムを回収した。実験は、シワネラ アルゲの細胞濃度を6.3×1015cell/m、8.4×1015cell/m、1.1×1016cell/mに調整したものを用いた。対照実験として無菌のものを用いた。結果を図5に示す。図5は、初期細胞濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図5において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)を示す。また、■は対照実験を、◆はシワネラ アルゲの細胞濃度が6.3×1015cell/mのものを、▲はシワネラ アルゲの細胞濃度が8.4×1015cell/mのものを、●はシワネラ アルゲの細胞濃度が1.1×1016cell/mのものを、それぞれ示す。
【0051】
図5から、上記(インジウム回収における初期細胞濃度の影響-1)の場合と同様に、初期細胞濃度が増加するに従って、インジウムの回収率が、向上する(38%、63%、100%)ことがわかる。また、pHが3.6の場合は、シワネラ アルゲの初期細胞濃度が1.1×1016cell/mのものを用いれば、15分以内にほぼ100%のインジウムが回収できることがわかった。これから、処理条件を選択することで、インジウムを効率よく回収できることがわかる。
【0052】
(インジウム回収におけるインジウム濃度の影響-1)
シワネラ アルゲの細胞濃度を5.4×1015cell/m、pH3.6の培養液中で、初期インジウム濃度を変えてインジウムを回収した。実験は、初期インジウム濃度を、1、0.5、0.25、0.1mMに調整したものを用いた。結果を図6に示す。図6は、初期インジウム濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図6において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、■は初期インジウム濃度が1mMのものを、●は初期インジウム濃度が0.5mMのものを、▲は初期インジウム濃度が0.25mMのものを、▼は初期インジウム濃度が0.1mMのものを、それぞれ示す。
【0053】
図6から、初期インジウム濃度が0.25、0.1mMのものは、30分以内に90%以上のインジウムが回収できることがわかった。これから、インジウム濃度が低い処理液を用いても、濃縮等の処理をしなくても、インジウムを効率よく回収できることがわかる。
【0054】
(インジウム回収におけるインジウム濃度の影響-2)
シワネラ アルゲの細胞濃度を8×1015cell/m、pH3.87±0.3の培養液中で、初期インジウム濃度を変えてインジウムを回収した。実験は、初期インジウム濃度を、0.45、0.2、0.1mMに調整したものを用いた。結果を図7に示す。図7は、初期インジウム濃度を変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図7において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)を示す。また、□は初期インジウム濃度が0.45mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、▽は初期インジウム濃度が0.2mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、○は初期インジウム濃度が0.1mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、■は初期インジウム濃度が0.45mMで、シワネラ アルゲを添加したものを、▼は初期インジウム濃度が0.2mMで、シワネラ アルゲを添加したものを、●は初期インジウム濃度が0.1mMで、シワネラ アルゲを添加したものを、それぞれ示す。
【0055】
図7から、初期インジウム濃度が薄いほどインジウムの回収率が増加することがわかる。0.2、0.1mMのものは、30分以内に90%以上のインジウムが回収でき、特に、0.1mMのものは、5分以内にほぼ100%インジウムを回収できることがわかった。これから、インジウム濃度が低い処理液を用いても、濃縮等の処理をしなくても、インジウムを効率よく回収できることがわかる。
【0056】
(細菌内におけるインジウムの存在状態の確認)
インジウムを回収したシワネラ アルゲを用いて、細胞内のインジウムの存在状態を測定した。湿潤状態の細菌細胞の混濁液に、Spring-8において、放射光X線を照射し、XANES(X線吸収スペクトル(XAFSスペクトル)の吸収端付近)スペクトルを測定した。標準試料として金属インジウム、酸化インジウム(In)、水酸化インジウム(In(OH))、塩化インジウム(InCl)水溶液を用いた。細菌細胞においても、インジウムのXANESスペクトルが測定できた。このことから、シワネラ アルゲが細胞に捕集されていることがわかった。また、標準試料のXANESスペクトルのフィッティング結果から、細菌細胞に回収されたインジウムは、インジウム(III)として65%、水酸化物として35%存在していることがわかった。
【0057】
(インジウムの回収-1)
シワネラ アルゲ乾燥細胞とインジウムを回収したシワネラ アルゲ乾燥細胞(初期InCl濃度115ppm)とを用いて、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時分析を行い、熱分解挙動を調べた。結果を図8に示す。図8は、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時分析を行って得られた、熱分解挙動を示す図である。図8から、700℃以上において、重量変化(図中、DTA)および吸・発熱反応(図中、TG)が起きていないことがわかる。このことから、700℃以上で焼成すると、細胞が除去できることがわかった。
【0058】
(インジウムの回収-1)
上記インジウム回収におけるpHの影響-1において、インジウムを回収したシワネラ アルゲ乾燥細胞をニッケル坩堝に入れ、マッフル炉で焼成した(700~800℃以上)。焼成後のサンプルについて、インジウム濃度を測定した。この結果、インジウム濃縮率が40%程度の一次濃縮物が生成していた。濃縮率は、初期InCl濃度の約3500倍であった。
【0059】
インジウム回収におけるpHの影響-2において、pH4.02で上記インジウムを回収した、シワネラ アルゲの表面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)により観察し、元素分析によりインジウム元素マップの作成を行った。結果を図9に示す。図9は、シワネラ アルゲの表面のTEM写真及びインジウム元素マップを示す写真である。図9の左側の写真は、TEMによるシワネラ アルゲの表面の状態を示す写真である。この写真から、シワネラ アルゲの細胞表面には、20nm程度の粒子が多数観察されることがわかった。また、図9の右上の写真は、図9の左側の写真において四角で囲んだ部分を拡大したTEM像であり、図9の右下の写真は、図9の左側の写真において四角で囲んだ部分を元素分析をして作製したインジウム元素マップの写真である。なお、図9の左側の写真と図9の右上の写真とは白黒が逆転している。すなわち、図9の左側の写真において黒色に見える粒子は、図2の右上の写真においては白色の粒子として示されている。これらから、図9の右上の写真において白色の粒子として確認される部分と、図9の右下の写真においてInの分布とが一致することがわかる。すなわち、シワネラ アルゲは細胞表面にインジウムを回収できることがわかった。特に、インジウムを含む金属含有物をpH4.0以上の金属酸性溶液として回収処理をすると、ナノオーダの水酸化インジウム微粒子が鉄還元菌の表面に観察されることがわかった。
【0060】
なお、上記バブリングに使用した水素ガスを用いずに溶液にスターラーを入れて撹拌しただけでも、同様にインジウムが回収できることがわかった。
【0061】
次に、インジウムを回収した後のシワネラ アルゲを乾燥したものをX線回折(X-ray diffraction;XRD)分析した。図10は、シワネラ アルゲを乾燥したものをXRD分析した結果を表すチャートである。図10のグラフ中、上側のグラフはIn(OH)試薬をXRD分析したものであり、下側のグラフは、シワネラ アルゲの乾燥細胞をXRD分析したものである。図10から、シワネラ アルゲには、2θが18.5,22,25,33.5,41,45.5,48.5,53-55付近に特徴的なピークが出現していることがわかった。このピークは、水酸化インジウム(In(OH))のピークと一致した。これから、細胞に生成した粒子は、水酸化インジウムであることがわかった。
【0062】
(塩化スズ水溶液からのスズ回収)
シワネラ アルゲの細胞濃度を1.7×1016cell/m、pH0.9の培養液中で、塩化スズ水溶液0.85(mol/m)からスズを回収した。結果を図11に示す。図11は、塩化スズ水溶液からのスズの回収率を示すグラフである。図11において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているスズ(IV)濃度(mM)を示す。また、□はシワネラ アルゲを添加しなかったものを、■はシワネラ アルゲを添加したものを、それぞれ示す。
【0063】
図11から、シワネラ アルゲ添加後約3分で液相中のスズイオン濃度が減少し、細胞におけるスズの回収率は100%に達した。上記の実施例からpH1におけるインジウムの回収率が低いことが予想されるので、インジウムとスズを一連の操作で相互分離できることがわかった。
【0064】
(塩化スズ・塩化インジウム混合溶液からのスズ回収)
シワネラ アルゲの細胞濃度を6.7×1015cell/m、pH1.4の培養液中で、塩化スズ0.07(mol/m)・塩化インジウム0.8(mol/m)混合溶液からスズを回収した。結果を図12に示す。図12は、塩化スズ水溶液からのスズの回収率を示すグラフである。図12において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているスズ(IV)濃度(mol/m)、インジウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、○は初期インジウム濃度が0.8mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、□は初期スズ濃度が0.07mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、●は初期インジウム濃度が0.8mMで、シワネラ アルゲを添加したものを、■は初期スズ濃度が0.07mMで、シワネラ アルゲを添加したものを、それぞれ示す。
【0065】
図12から、スズイオンのみが回収されることがわかった。
【0066】
(スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収-1)
シワネラ アルゲの細胞濃度を2.3×1016cell/m、1.1×1016cell/m、7.6×1015cell/mの培養液中で、工場から提供された実廃液A(エッチング液)を用いて、スズとインジウムを回収した。実廃液は、3倍希釈し、インジウム濃度:1.36mM、スズ濃度:0.15mM、pH1.1)のものを用いた。結果を図13に示す。図13は、スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収率を示すグラフである。図13において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)(図13(a))、またはスズ(IV)濃度(mM)(図13(b))を示す。また、×はシワネラ アルゲを添加しなかったものを、●はシワネラ アルゲの細胞濃度が2.3×1016cell/mを添加したものを、■はシワネラ アルゲの細胞濃度が1.1×1016cell/mを添加したものを、▲はシワネラ アルゲの細胞濃度が7.6×1015cell/mを添加したものを、それぞれ示す。
【0067】
図13から、インジウムを49%、スズを37%と迅速に回収できることがわかった。
【0068】
(スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収-2)
スズとインジウムを含む廃液(工場から提供された実廃液B)を、1.5倍希釈(インジウム:2.2mol/m、スズ:0.53mol/m、pH:0.54)、3倍希釈(インジウム:1.0mol/m、スズ:0.77mol/m、pH:0.88)、6倍希釈(インジウム:0.5mol/m、スズ:0.15mol/m、pH:1.17)のものを用いた。結果を図14に示す。図14は、スズとインジウムを含む廃液からのスズとインジウム回収率を示すグラフである。図14において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mol/m)(図14(a))、またはスズ(IV)濃度(mol/m)(図14(b))を示す。また、▽、□、○は実廃液Bの1.5倍希釈、3倍希釈、6倍希釈溶液のそれぞれにおいてシワネラ アルゲを添加しなかったものを、▼、■、●は実廃液Bの1.5倍希釈、3倍希釈、6倍希釈溶液のそれぞれにおいてシワネラ アルゲの細胞濃度が1.4×1016cell/mになるようにシワネラ アルゲ添加したものをそれぞれ示す。
【0069】
図14から、インジウム濃度が薄いほど、インジウムの回収率がよいことがわかる。また、スズは高濃度でも回収率がよかった。このことから、インジウムとスズの回収率の差を用いれば、両者が相互分離できることがわかった。
【0070】
(実廃液と模擬廃液とにおけるインジウムの回収率の比較)
上記実廃液の希釈液(インジウム濃度が、0.50mMと1.00mM)と模擬廃液(インジウム濃度が、0.50mMと1.00mM)のものを用いて、インジウムの回収実験をした。この実験から、単位細胞辺りのインジウム回収量を求めた。実験条件と結果を表1に示す。
【表1】
JP0005666835B2_000002t.gif

【0071】
表1から、単位細胞辺りのインジウム回収量は、実廃液では低下していることがわかる。これは、実廃液に含まれる異種金属または共存物質が影響していると考えられた。そこで、下記のようにインジウム濃度を低下させて、インジウムの回収率を調べた。
【0072】
(スズとインジウムを含む廃液からのインジウム回収)
シワネラ アルゲの細胞濃度を1.4×1016cell/mの培養液中で、工場から提供された実廃液Bを用いて、インジウムを回収した。実廃液は、6倍希釈(インジウム濃度:0.5(mol/m)、スズ濃度:0.15(mol/m)、pH1.17)、30倍希釈(インジウム濃度:0.1(mol/m)、スズ濃度:0.03(mol/m)、pH1.95)のものを用いた。結果を図15に示す。図15は、実廃液Bからのスズの回収率を示すグラフである。図15において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mM)を示す。また、△は6倍希釈液で、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、□は30倍希釈液で、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、▲は6倍希釈液で、シワネラ アルゲを添加したものを、■は30倍希釈液で、シワネラ アルゲを添加したものを、それぞれ示す。
【0073】
図15から、6倍希釈液からは、インジウムを42%回収し、30倍希釈液からは、インジウムを84%回収できることがわかる。これから、スズや他の金属や共存物質を含む廃液からでも、インジウムやスズや他の金属や共存物質を低濃度に希釈すれば、高い回収率でインジウムが回収できることがわかった。
【0074】
(他の鉄還元菌におけるインジウムの回収)
シワネラ オネイデンシスを用いて、以下のように、インジウムの回収を行った。シワネラ オネイデンシスの細胞濃度:9.66×1015cell/m、初期インジウム濃度:1.0mMの培養液中で、pH3.7-3.8においてインジウムを回収した。実験は、細胞を添加し、pH3.73、3.75、3.86に調整したインジウム含有酸性溶液を用いた。対照実験としてpH3.60、3.64、3.73、3.85に調整したインジウム含有酸性溶液を用い、シワネラ オネイデンシスを加えなかったものを用いた。結果を図16に示す。図16は、pHを変えた場合のインジウムの回収率を示すグラフである。図16において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているインジウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、○は、無菌で、pH3.85に調整したインジウム含有酸性溶液を、△は、無菌で、pH3.73に調整したインジウム含有酸性溶液を、□は、無菌で、pH3.64に調整したインジウム含有酸性溶液を、▽は、無菌で、pH3.60に調整したインジウム含有酸性溶液を、●は、細胞を添加した、pH3.73に調整したインジウム含有酸性溶液を、▲は、細胞を添加した、pH3.75に調整したインジウム含有酸性溶液を、■は、細胞を添加した、pH3.75に調整したインジウム含有酸性溶液を、▼は、細胞を添加したpH3.86に調整したインジウム含有酸性溶液を、それぞれ示す。
【0075】
図16から、pH3.7-3.8において、溶液中のインジウムは細菌細胞に効率よく捕集できることがわかる。
【0076】
(ガリウム回収におけるガリウム濃度の影響)
シワネラ アルゲの細胞濃度を1.88×1016cell/m、pH3.6-3.8の培養液中で、初期ガリウム濃度を変えてガリウムを回収した。実験は、初期ガリウム濃度を、0.1、0.5、0.2mMに調整したものを用いた。結果を図17に示す。図17は、初期ガリウム濃度を変えた場合のガリウムの回収率を示すグラフである。図17において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているガリウム(III)濃度(mol/m)を示す。また、△は初期ガリウム濃度が1.0mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、□は初期ガリウム濃度が0.5mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、○は初期ガリウム濃度が0.3mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、▲は初期ガリウム濃度が1.0mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、■は初期ガリウム濃度が0.5mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、●は初期ガリウム濃度が0.3mMで、シワネラ アルゲを添加しなかったものを、それぞれ示す。
【0077】
図17から、本発明の鉄還元菌を用いるとガリウムを回収できることがわかった。また、ガリウムの回収率は、それぞれ87、96、93%と高かった。
【0078】
さらに実験終了後のGa吸着細胞を焼成し、ガリウムの一次濃縮物を得た。ガリウムの一次濃縮物濃度は、75,000ppmであった。初期ガリウム濃度(35ppm)から濃縮倍率2142倍で、ガリウムを回収できることがわかった。


図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図10】
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【図11】
9
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図9】
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