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明細書 :高張電解質溶液による生体組織の脱細胞化処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5610268号 (P5610268)
公開番号 特開2010-221012 (P2010-221012A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成22年10月7日(2010.10.7)
発明の名称または考案の名称 高張電解質溶液による生体組織の脱細胞化処理方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61K  35/30        (2006.01)
A61K  35/44        (2006.01)
A61K  35/36        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12N   5/077       (2010.01)
C12N   5/079       (2010.01)
FI A61L 27/00 V
A61K 35/30
A61K 35/44
A61K 35/36
A61P 43/00 107
C12N 5/00 202G
C12N 5/00 202R
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2010-030777 (P2010-030777)
出願日 平成22年2月16日(2010.2.16)
優先権出願番号 2009041827
優先日 平成21年2月25日(2009.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年2月6日(2013.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】榊原 俊介
【氏名】橋川 和信
【氏名】石田 泰久
【氏名】寺師 浩人
【氏名】田原 真也
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】原田 隆興
参考文献・文献 特許第3686068(JP,B2)
特開2009-095401(JP,A)
国際公開第2005/063316(WO,A1)
ELDER Benjamin D. et al,Extraction techniques for the decellularization of tissue engineered articular cartilage constructs,Biomaterials,2009年 8月,Vol.30, No.22,P.3749-3756
調査した分野 A61L 27/00
A61K 35/30
A61K 35/36
A61K 35/44
A61P 43/00
C12N 5/077
C12N 5/079
特許請求の範囲 【請求項1】
採取した生体組織を、凍結融解処理を行わないで、以下の工程を含む方法により処理することを特徴とする生体組織の脱細胞化方法:
1)採取した生体組織を、0.5~2Mの塩化ナトリウム溶液または0.5~2Mの塩化マグネシウム溶液高張電解質溶液で、14~42℃の温度条件で処理する工程;
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を等張電解質溶液で、14~42℃の温度条件で処理する工程。
【請求項2】
上記1)の工程において、0.5~2Mの塩化ナトリウム溶液または0.5~2Mの塩化マグネシウム溶液の高張電解質溶液での処理条件が、80~160回転/分の振盪条件で、12~48時間処理する、請求項1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
【請求項3】
上記2)の工程において、等張電解質溶液での処理条件が、80~160回転/分の振盪条件で、120~188時間処理する、請求項1または2に記載の生体組織の脱細胞化方法。
【請求項4】
採取した生体組織が、神経組織、血管組織または皮膚組織である、請求項1~3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法を用いる、脱細胞化生体組織スキャホールドの作製方法。
【請求項6】
生体組織再生材料の担体として、請求項に記載の方法で作製される脱細胞化生体組織スキャホールドを担体とし調製される生体組織再生材料の調製方法
【請求項7】
生体組織再生材料が、人工神経用、人工血管用または人工皮膚用の再生材料である請求項に記載の生体組織再生材料の調製方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した生体組織を脱細胞化する方法に関し、さらには脱細胞化後の脱細胞化生体組織スキャホールドおよび再生医療への応用を視野に入れた脱細胞化生体組織スキャホールドを担体として調製される生体組織再生材料に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療とは、疾病や損傷により機能低下や機能不全に陥った組織・臓器に対して、細胞の再生機能を有効に活用して組織・臓器の機能を再生させる医療をいい、例えば培養した細胞や人工的に構築された組織を用いて、失われた組織や臓器の機能・形態を修復・再現する医療をいう。
【0003】
移植では自己の組織を自己に移植する自家移植と自己以外の組織を移植する他家移植があり、他家移植には、例えばヒトの場合に、自己以外のヒトの組織を移植する同種移植と、ヒト以外の組織を移植する異種移植がある。自己以外の組織を移植する場合は、免疫反応などによる拒絶の問題がある。
【0004】
例えば外傷や腫瘍切除に伴って機能上重要な末梢神経を欠損することがあるが、そのような場合に、再生医療や組織移植などが施される。多くの場合は、自己の他の部位の神経を犠牲にする自家神経移植が行われるが、近年人工神経の開発も試みられている。また、動脈硬化、大動脈瘤、動脈閉塞症などの血管に係る疾患の治療のために、人工血管の移植によるバイパス術を行う場合がある。皮膚では、例えば重症熱傷に対する培養表皮の移植術が行われており、臨床応用が展開されつつある。
【0005】
神経損傷例では、末梢神経再建のために自家末梢神経が多く用いられるが、採取される神経の機能喪失が問題となる。この場合に、理想的な口径と長さの神経を採取することは困難であることが多い。これらの諸問題を克服するために人工神経の開発が行われてきた。組織的な互換性(biocompatibility)、吸収性、膜の透過性、細胞を保持できる細胞外マトリクス(Extracellular matrix: ECM)が、効率的な神経再生に必須と考えられ、様々な材質を用いた人工神経の開発が試みられている。しかしながら、化学合成によって作製された人工神経は生体が本来備えている基底膜などの三次元的構築を模することができても、再現することができない。一方、脱細胞化神経では細胞外マトリクスを残存させるために三次元構築を保存することができ、有用な人工代替神経となる。脱細胞化には大きく界面活性剤を用いる方法(非特許文献1,2,3)と凍結融解を繰り返す方法(非特許文献4)とがある。界面活性剤法では細胞に有害な化学物質を用い、また細胞外マトリクスの破壊を逃れることができない。凍結融解法では脱細胞化効率に乏しく、残存する細胞残骸が拒絶反応を引き起こすと考えられている。
【0006】
血管再建では、小口径血管を必要とする血行再建術の際に、伏在静脈をはじめとする自家血管が用いられることが多い。この場合に、適切な口径でないことや、採取した血管が病変を併発していることなどが多く、目的に適合した口径と長さの血管組織の採取が困難である。これらの諸問題を克服するために、様々な材質の人工血管の開発が試みられている。しかしながら、人工血管では直径6mm以上の口径を有する人工血管は実用化されているものの、それ以下の口径である小口径血管については、強度や血栓形成の問題に阻まれている。脱細胞化血管による代替人工血管に関する研究も行われてきたが(非特許文献5,6)、有用な小口径人工血管についてはまだ報告されていない。
【0007】
人工皮膚に関しては、1975年ごろより表皮細胞をシート状に培養する方法が開発されて以来、熱傷や創傷などの欠損した皮膚組織の再建手段として研究が進められてきた。しかし、当初の培養表皮シートは、真皮成分を含まないことから全層皮膚欠損創では滲出液や細菌の汚染により生着率が悪く、生着しても水疱や潰瘍を生じやすいことが問題であった。培養皮膚組織では真皮成分の重要性が認識され、今日まで様々な真皮材料を細胞の足場(担体)とした培養皮膚が開発されてきた。皮膚組織の脱細胞化方法としては、真皮層から表皮層を剥離したのちに真皮内の残存細胞を除去する方法が各種試みられてきた。真皮内の残存細胞の除去方法としては、界面活性剤であるSDSなどを用いる方法が良く知られている。米国で製品化されている同種脱細胞化真皮スキャホールド、AlloDerm(R)(Life Cell社)は、1M塩化ナトリウムとSDSで処理したものである(非特許文献7)。しかし、界面活性剤法では細胞に有害な物質を用い、また細胞外マトリクスの破壊を逃れることができない。凍結融解法では脱細胞化効率に乏しく、残存する細胞残骸が拒絶反応を引き起こすと考えられている。改善された方法として、採取した皮膚組織を凍結融解した後、高張食塩水で処理することで表皮と真皮とに分離した後、等張緩衝液を持続的に流しかけることにより真皮内細胞を除去する工程を含む皮膚組織の脱細胞化方法に関す技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、表皮と真皮を分離することなく、真皮内細胞を除去する脱細胞化処理方法については報告がない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第3686068号公報
【0009】

【非特許文献1】World Journal of Urology 2008 Aug; 26(4): 333-9
【非特許文献2】Brain Research 1998 Jun 8; 795(1-2): 44-54
【非特許文献3】Experimental Neurology 2007 Apr; 204(2): 658-66
【非特許文献4】Experimental Neurology 2007 Sep; 207(1): 163-70
【非特許文献5】Biomaterials 2000 Nov; 21(22): 2215-31
【非特許文献6】Journal of Vascular Surgery 2004 Jul; 40(1): 146-53
【非特許文献7】Burns 1995; 21: 243-248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、細胞毒性のある化学物質を使用することなく、採取した生体組織からより効果的に脱細胞化処理する方法を提供することを課題とし、脱細胞化された脱細胞化生体組織スキャホールドを提供することを課題とする。さらには、得られた脱細胞化生体組織スキャホールドを担体として調製される生体組織再生材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、採取した生体組織を、凍結融解処理することなく高張電解質溶液で処理し、その後等張電解質溶液で処理することで、効果的に脱細胞化処理できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、すなわち以下よりなる。
1.採取した生体組織を、凍結融解処理を行わないで、以下の工程を含む方法により処理することを特徴とする生体組織の脱細胞化方法:
1)採取した生体組織を高張電解質溶液で処理する工程;
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を等張電解質溶液で処理する工程。
2.高張電解質溶液が、高張塩化ナトリウム溶液または高張塩化マグネシウム溶液である前項1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
3.高張電解質溶液が、0.5~2.5Mである前項1または2に記載の生体組織の脱細胞化方法。
4.採取した生体組織が、神経組織、血管組織または皮膚組織である、前項1~3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
5.採取した生体組織が、神経組織または血管組織である、前項1~3のいずれか1に記載の生体組織の脱細胞化方法。
6.前項1~5のいずれか1に記載の脱細胞化方法により脱細胞化された、脱細胞化生体組織スキャホールド。
7.前項6に記載の脱細胞化生体組織スキャホールドを担体として調製される生体組織再生材料。
8.生体組織再生材料が、人工神経用、人工血管用または人工皮膚用の再生材料である前項7に記載の生体組織再生材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の脱細胞化方法により、細胞毒性のある化学物質を使用することなく、また凍結融解処理を行うことなく、効果的に脱細胞化することができる。これにより、脱細胞化処理の際の生体組織に与える化学的、物理的損傷を最小限に抑えながら、効果的に脱細胞化処理を行うことができる。また、組織学的な互換性、吸収性、膜の透過性、細胞を保持できる等の優れた脱細胞化生体組織スキャホールドを得ることができ、脱細胞化神経組織、脱細胞化血管組織や脱細胞化皮膚組織などのスキャホールドを得ることができる。また、得られた脱細胞化生体組織スキャホールドを用いることで、バイオマテリアルでは再現が困難であった三次元構造からなる人工組織を得ることができる。自家移植では、例えば神経や血管など好ましい口径および長さの組織を得るのが困難であったのに対し、より好ましい大きさの人工組織を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】神経組織の脱細胞化および移植された脱細胞化組織内への再生軸索の進展の概念図である。
【図2】各濃度の高張NaCl溶液による神経組織の脱細胞効果をHE染色した組織標本により示す写真図である。(実施例1)
【図3】各濃度の高張MgCl溶液による神経組織の脱細胞効果を、HE染色した組織標本により示す写真図である。(実施例2)
【図4】1MのNaCl溶液による神経組織の脱細胞化および脱細胞化神経組織の移植後2ヶ月の組織を、HE染色した組織標本により示す写真図である。(実施例3)
【図5】1MのNaCl溶液による脱細胞化神経組織の移植後の再生神経を、免疫染色した組織標本により示す写真図である。(実施例4)
【図6】1MのNaCl溶液による脱細胞化神経組織の移植後に、蛍光神経トレーサー法により再生軸索を標識し、移植人工神経内を再生軸索が通過し、神経再生を確認した写真図である。(実施例5)
【図7】1MのNaCl溶液による血管組織の脱細胞化効果を、HE染色した組織標本により示す写真図である。(実施例6)
【図8】1MのNaCl溶液による脱細胞化血管組織の移植後約1週目の再生血管を、血管内皮細胞マーカーを用いた蛍光抗体法により示す写真図である。尚、Evans Blue(エバンスブルー)により対比染色を、DAPI〔4',6-diamino-2-phenylindole〕により核染色を行った。(実施例7)
【図9】1MのNaCl溶液により脱細胞化した血管組織を移植した後の約5週目再生血管を採取し、HE染色・血管内皮細胞マーカー(vWF)および血管平滑筋細胞マーカー(SMA)に対する蛍光抗体法を用いて組織学的検討を行った写真図である。尚、Evans Blueにより対比染色を、DAPIにより核染色を行った。(実施例8)
【図10】1Mおよび1.5MのNaCl溶液による皮膚組織の脱細胞化効果を、HE染色した組織標本により示す写真図である。(実施例9)
【図11】1MのNaCl溶液による血管組織の脱細胞化効果を、走査型電子顕微鏡写真(250倍)により示す写真図である。(実施例10)
【図12】1MのNaCl溶液による血管組織の脱細胞化効果を、走査型電子顕微鏡写真(3000倍)により示す写真図である。(実施例10)
【図13】1MのNaCl溶液による神経組織の脱細胞化効果を、走査型電子顕微鏡写真(1000倍)により示す写真図である。(実施例11)
【図14】1MのNaCl溶液による神経組織の脱細胞化効果を、走査型電子顕微鏡写真(3000倍)により示す写真図である。(実施例11)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、採取した生体組織を、凍結融解処理を行わないで、以下の工程を含む方法により処理することを特徴とする生体組織の脱細胞化方法に関する。
1)採取した生体組織を高張電解質溶液で処理する工程。
2)上記高張電解質溶液処理後の生体組織を等張電解質溶液で処理する工程。

【0016】
本発明において生体組織とは移植可能な組織をいい、特に限定されないが、例えば神経、血管、皮膚、消化管、肝臓、網膜、硬膜、角膜などを例示することができ、好ましくは神経組織、血管組織、皮膚組織が挙げられる。生体組織由来の種は、特に限定されないが、例えばヒトを含む哺乳動物が挙げられ、ブタなどヒト由来以外であっても良い。神経組織、血管組織や皮膚組織などの移植の場合は、自己の組織を移植する自家移植が、移植に伴う拒絶反応などの副作用を回避するために最も望ましいが、例えば血管組織の場合は所望の口径と長さの組織を得ることが困難であった。しかし、本発明の生体組織の脱細胞化方法により、移植される個体にとって抗原性を有する細胞成分を除去できることとなり、移植された脱細胞化生体スキャホールドを足場として、自己組織化することができる。図1は、神経組織を脱細胞化処理し、移植後に再生軸索を進展させる場合の概念図である。

【0017】
生体組織の採取方法は、自体公知の方法によることができ、特に限定されない。
神経組織の場合は、例えばヒト由来の場合は、同意を得た個体の各部位、例えば伏在神経・外側前腕皮神経・横隔神経などより採取した神経組織を、高張電解質溶液で処理するまでの間、例えば生理食塩水中で保存することができる。また、異種動物由来の場合は、例えばブタの各部位より採取した神経組織を高張電解質溶液で処理するまでの間、生理食塩水中で保存することができる。いずれも採取する神経組織の長さは、必要に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。生理食塩水中に保存した神経組織は、高張電解質溶液で処理するまでの間は冷蔵保存とする。

【0018】
血管組織の場合は、例えばヒト由来の場合は、同意を得た個体の各部位、例えば橈骨動脈・胸背動脈・浅側頭動脈・腸間膜動脈などより採取することができる。血管分岐部は5mm程度を残して結紮する。採取した血管組織を、高張電解質溶液で処理するまでの間、例えば生理食塩水中で保存することができる。また、異種動物由来の場合は、例えばブタの各部位より採取した血管組織を高張電解質溶液で処理するまでの間、生理食塩水中で保存することができる。いずれも採取する血管組織の長さは、必要に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。生理食塩水中に保存した血管組織は、高張電解質溶液で処理するまでの間は冷蔵保存とする。

【0019】
皮膚組織の場合は、例えばヒト由来の場合は、同意を得た個体の各部位、例えば頭皮・顔面・鎖骨上・大腿部・手掌部・足底部などより採取した皮膚組織を、高張電解質溶液で処理するまでの間、例えば生理食塩水中で保存することができる。異種動物由来の場合は、例えばブタの各部位より採取した皮膚組織を高張電解質溶液で処理するまでの間、例えば生理食塩水中で保存することができる。いずれも採取する皮膚組織の大きさは、必要に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。生理食塩水中に保存した皮膚組織は、高張電解質溶液で処理するまでの間は冷蔵保存とする。

【0020】
本発明において用いる高張電解質溶液は、生体組織に対して実質的に毒性を示さないものであればよく、特に限定されないが、例えば高張の塩化ナトリウム(NaCl)溶液、塩化マグネシウム(MgCl)溶液、硫酸マグネシウム(MgSO)溶液、硫酸アンモニウム((NHSO)溶液や塩化カルシウム(CaCl)溶液などが挙げられ、好ましくは高張のNaCl溶液またはMgCl溶液が挙げられる。

【0021】
用いられる高張電解質溶液は、0.5~2.5Mであり、用いる電解質により好適な濃度を選択することができる。例えばNaCl溶液の場合は、好ましくは1.0~2.0Mであり、より好ましくは1.0~1.5Mである。MgCl溶液の場合は、好ましくは0.5~1.5Mであり、より好ましくは0.5~1.0Mである。高張電解質溶液には、任意に添加の成分を含んでいても良い。

【0022】
本発明において、高張電解質溶液で処理するとは、当該高張電解質溶液に採取した生体組織を浸漬させて当該高張電解質溶液中で震盪することを含む。生体組織を滅菌試験管などの容器にとり、十分量の高張電解質溶液を加えることで浸漬処理することができる。この際、高濃度の電解質溶液に浸漬する際に組織と電解質溶液の比重の関係により沈降せずに浮遊することがあるが、振盪処理を加えるため特に問題としない。振盪処理は、市販の旋回式または波動型ないしはシーソー型振盪器などにより行うことができる。

【0023】
高張電解質溶液による処理温度は、処理される生体組織が実質的に変性しない温度であればよく、特に限定されない。一般的には14~42℃、好ましくは20~40℃とすることができる。処理時間についても、12時間以上であれば、生体組織が実質的に変性しない時間、浸漬・振盪することができ、好ましくは12~48時間、より好ましくは18~36時間処理することができる。処理時間は、生体組織、処理温度や振盪の強さに応じて、適宜増減することができる。本工程により、細胞を脱水し、細胞を収縮させ、細胞外マトリクスと細胞膜を静電気的な作用も加えて乖離させることができるものと考えられる。振盪は、80~160回転/分とすることができ、より好ましくは100~140回転/分である。

【0024】
本発明において、上記高張電解質溶液処理後に用いる等張電解質溶液は、特に限定されないが、等張緩衝溶液や生理食塩水が挙げられる。等張緩衝溶液の例として、例えばリン酸緩衝液(PBS)、トリス塩酸緩衝液、HEPES( 4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid) 緩衝液などが挙げられ、より好ましくは、PBSまたはHEPES緩衝液が挙げられる。

【0025】
本発明において、生体組織を等張電解質溶液で処理するとは、当該生体組織を当該等張電解質溶液で洗浄し、当該等張電解質溶液に浸漬させ、さらに当該等張電解質溶液中で震盪することを含む。等張電解質溶液処理では、特に脂肪成分を多く含む組織などの場合、組織と等張電解質溶液との間の比重の関係により組織が沈降せず浮遊する場合があるが、振盪処理を加えるため、特に問題としない。本工程により、細胞、細胞内成分を生体組織から除去洗浄し、細胞外マトリクスのみ残存させることができる。

【0026】
本発明において、等張電解質溶液による処理温度は、処理される生体組織が実質的に変性しない温度であればよく、一般的には14~42℃、好ましくは20~40℃とすることができる。等張電解質溶液の振盪は、上記の高張電解質溶液と同様の条件にて行うことができる。また、処理時間については、120時間以上であれば十分であるが、生体組織が実質的に変性しない時間処理することができ、好ましくは144~188時間、より好ましくは156~176時間処理することができる。

【0027】
生体組織が神経組織の場合には、神経組織を試験管にとり、高張電解質溶液で上述の方法により処理し、その後等張電解質溶液で処理することができる。前記処理する場合に、神経組織が絡まらないように、一本の神経組織を一本の試験管で処理するのが好ましい。

【0028】
生体組織が、血管組織のように筒状に組織が形成されている場合には、血管内腔に灌流針などを固定し、高張電解質で血管内腔を処理し、および等張電解質溶液で血管内腔部を積極的に洗浄することが好ましい。血管組織では、弾性板などの硬い組織で形成されるため、血管外膜側からの洗浄処理では、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞のような細胞を除去洗浄するには不十分であり、血管内腔部を積極的に洗浄して細胞を除去することで、十分に脱細胞化された優れた血管細胞外マトリクスを形成することができる。

【0029】
生体組織が皮膚組織の場合には、皮膚組織を試験管にとり、高張電解質溶液で上述の方法により処理し、その後等張電解質溶液で処理することができる。前記処理する場合は、皮膚組織は、例えばステリクロンTM液(グルコン酸クロルヘキシジン液)などの一般に用いられる皮膚消毒液で消毒した後に行うのが好ましい。

【0030】
本発明の特徴は、生体組織を凍結融解処理することなく、生体に有害な化学物質を用いることなく、採取した生体組織を高張電解質溶液で処理し、その後生体組織を等張電解質溶液で処理することにより、脱細胞化できることである。上記の工程のほか、適宜付加的な処理を行っても良い。

【0031】
本発明は、上記の脱細胞化処理により脱細胞化された生体組織、すなわち脱細胞化生体組織スキャホールドにも及ぶ。脱細胞化生体組織スキャホールドは、細胞の定着や幹細胞の分化を誘導するための足場となり、組織再生に重要な役割を果たす。本発明は、上記脱細胞化生体組織スキャホールドを担体として調製される生体組織再生材料にも及ぶ。さらには、例えば試験管内において脱細胞化生体組織スキャホールドを足場とし、培養細胞等の導入により形成される人工再生生体組織にも及ぶ。
【実施例】
【0032】
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)各濃度の高張NaCl溶液による神経組織の脱細胞効果
Wistar系ラットから採取した坐骨神経を、各濃度のNaCl溶液で処理したときの神経組織での脱細胞化効果を確認した。ラットを腹臥位とし、大腿部背面より切開を行い、坐骨神経を同定した。その後、中枢側に神経根のレベルまで坐骨神経を求め切断し、約5cmの坐骨神経を得た。
【実施例】
【0034】
得られた神経組織を試験管にとり、0.5M、1.0M、1.5Mおよび2.0Mの各濃度のNaCl溶液中で20(または室温)℃で24時間振盪し、高張電解質溶液処理した。その後、各神経組織をPBS溶液(等張電解質溶液)で洗浄し、さらにPBS溶液に浸漬して20℃で168時間振盪し、等張電解質溶液処理した。
【実施例】
【0035】
上記高張電解質溶液処理後、等張電解質溶液処理した神経組織を、通常の方法に従って凍結包埋処理し、凍結組織切片を調製し、通常の方法に従って、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色し、組織標本を作製した。ヘマトキシリンは青紫色の色素であり、好塩基性の組織、例えば細胞核、骨組織、軟骨組織の一部、漿液成分などが染色される。また、エオシンは赤~ピンクの色素であり、好酸性の組織、例えば細胞質、軟部組織の結合組織、赤血球、線維素、内分泌顆粒などが染色される。上記の結果、1.0M、1.5Mおよび2.0Mの各濃度のNaCl溶液で処理した場合に、細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されていることが確認された(図2)。
【実施例】
【0036】
(実施例2)各濃度の高張MgCl溶液による神経組織の脱細胞効果
実施例1と同手法により採取した神経組織を、各濃度のMgCl溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。0.5M、1.0M、1.5Mおよび2.0Mの各濃度のMgCl溶液を用いたほかは、実施例1と同様に高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行った。
【実施例】
【0037】
上記処理後、実施例1と同手法によりHE染色した組織標本を作製した。上記の結果、0.5M、1.0Mおよび1.5MのNaCl溶液で処理した場合に、細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されていることが確認された(図3)。
【実施例】
【0038】
(実施例3)脱細胞化神経組織および神経組織の再生
実施例1と同手法により採取した神経組織を、実施例1と同手法にて1.0MのNaCl溶液を用いて高張電解質溶液処理した後、等張電解質溶液処理を行った。
【実施例】
【0039】
上記処理後、脱細胞化神経組織すなわち脱細胞化神経組織スキャホールドを、実施例1と同手法により神経組織をHE染色し、組織標本を作製した(図4A)。さらに、別個体のWistar系ラットの坐骨神経に1cmの欠損を作製し、この部位に処理後の脱細胞化神経組織(脱細胞化神経組織スキャホールド)を顕微鏡下で縫合し、移植した。2ヶ月の生存期間をおいた後、移植後の神経組織を採取し、実施例1と同手法によりHE染色を行った組織標本を作製した(図4B)。なお、移植に用いるまでの脱細胞化神経組織スキャホールドは、防腐剤(0.05%NaN)存在下PBS中で4℃で保存した。
その結果、正常神経組織に類似する組織形態が確認された。また、炎症細胞の浸潤は縫合糸を中心に認められ、その他の移植神経内には殆ど認められなかった。
【実施例】
【0040】
(実施例4)神経組織の再生の確認
実施例3と同手法により高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行って得た脱細胞化神経組織スキャホールドを、別個体のラットに移植した。移植2ヶ月後の神経組織を採取し、神経組織再生の確認を行った。実施例1と同手法により組織切片を作製し、マウス抗S-100抗体またはマウス抗神経細繊維(Neurofilament)抗体(Chemicon社製)を一次抗体として用い、二次抗体にはビオチン化抗マウスIgG抗体を用いた。Vector社製ABC(Avidin-Biotin Complex)キットを用いて反応を行った後、DABを基質としてペルオキシダーゼによる酵素免疫組織法により染色を行った。免疫染色した組織標本を作製した(図5AB)。
その結果、組織切片上、神経細繊維(Neurofilament)およびそれを取り巻くシュワン細胞を認め、神経組織の再生が確認された。
【実施例】
【0041】
(実施例5)脱細胞化神経組織および神経組織の再生
実施例3と同手法により高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行って得た脱細胞化神経組織スキャホールドを、別個体のラットに移植し、約2ヶ月の生存期間をおいた。その後、移植神経よりも中枢側に神経トレーサー物質であるFluoro-Rubyを微量注入した。1週間の生存期間をおいた後、移植神経と正常神経とを一塊にして採取し、蛍光顕微鏡下で観察を行った。図6Aは、移植した脱細胞化神経組織スキャホールド内を蛍光標識された再生軸索が通過していることを示し(矢頭)、図6Bは、移植した脱細胞化神経組織スキャホールドと正常神経の境界部分を示した。図6Bでは、正常神経部分より伸展した再生軸索が脱細胞化神経組織スキャホールドを通過していることが確認された(矢頭)。このことから、脱細胞化神経組織スキャホールドは、生体組織再生材料となりうることが、確認された。
【実施例】
【0042】
(実施例6)高張NaCl溶液による血管組織の脱細胞効果
Wistar系ラットを腹臥位にし、腹部正中切開により腹部大動脈に到達させ、顕微鏡下に血管周囲の剥離を進め、遠位は両側総腸骨動脈を含め、近位は腎動脈分岐部付近までとし、切断を行い血管組織を採取した。採取したラットの腹部大動脈を、試験管にとり、1.0MのNaCl溶液で実施例1と同手法にて高張電解質溶液処理し、さらに血管内腔に灌流針を固定し、1.0MのNaCl溶液を血管内腔にも注入した。次に、PBS溶液にて実施例1と同手法にて等張電解質溶液処理を行い、さらに血管内腔に灌流針を固定し、血管内腔部を積極的に洗浄した。
【実施例】
【0043】
上記高張電解質溶液処理後、等張電解質溶液処理した血管組織を、通常の方法に従ってOCTコンパウンド(SAKURA TECH社製)に包埋し凍結させた後、4μmの凍結組織切片を調製し、通常の方法に従って、HE染色し、組織標本を作製した。上記の結果、血管組織に、細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されていることが確認された(図7)。
【実施例】
【0044】
(実施例7)脱細胞化血管組織および血管組織の再生
実施例6と同手法により作製した脱細胞化血管組織すなわち脱細胞化血管組織スキャホールドを、Wistar系ラットの腹部大動脈に約1cmの欠損を作製した後に顕微鏡下で10-0黒ナイロン糸を用いて吻合・移植した。移植後約1週に再開創し、移植された脱細胞化血管の拍動を確認した。移植された脱細胞化血管組織を採取し、実施例6と同手法にて凍結切片を作製した。血管内皮細胞のマーカーであるvWFに対する抗体(Sigma社製)を一次抗体とし、二次抗体にはAlexa488により標識された抗ラビットIgG抗体を用いた。DAPIにより核染色を行い、また、Evans Blueにより対比染色を行った血管組織の再生を確認した(図8)。図8Aは、移植直後正常の血管組織を示し、図8Bは移植約1週後の血管組織を示す。図8CおよびDは、各々A,Bの部分拡大図である。このことから、移植1週後には、移植された脱細胞化血管組織スキャホールドに、血管内皮細胞が既に定着していることが確認された。
【実施例】
【0045】
(実施例8)脱細胞化血管組織後の血管組織の再生確認
実施例6と同手法により作製した脱細胞化血管組織スキャホールドを、実施例7と同手法によりWistar系ラットの腹部大動脈に移植した。移植直後および移植約5週後に再開創し、拍動を確認後に取り出した血管組織を、Evans BlueやDAPIによる染色を行い、血管組織の再生を確認した(図9)。図9Aは、正常および移植約5週後の血管組織のHE染色組織を示し、図9Bは、抗vWF抗体によりラベルされた血管内皮細胞を示し、図9Cは抗α-SMA抗体によりラベルされた血管平滑筋細胞を示す。図9において、vFW陽性細胞は血管内皮細胞を示し、SMA陽性細胞は血管平滑筋細胞を示す。DAPIにより核染色を行い、Evans Blueにより対比染色を行った。このことから、移植5週後には、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞が正常構造を模した三次元構造を示す層構築を再形成しており、いわゆる組織再生が行われていることが確認された。
【実施例】
【0046】
(実施例9)高張NaCl溶液による皮膚組織の脱細胞効果
ヒト頭皮から採取した皮膚組織を、高張のNaCl溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。採取した皮膚組織を滅菌試験管にとり、実施例1と同手法にて1.0Mおよび1.5Mの各濃度のNaCl溶液を用いて処理し、PBS溶液にて等張電解質溶液処理を行った。
【実施例】
【0047】
上記処理後、実施例1と同手法によりパラフィン包埋組織標本を作製し、HE染色を行った。上記の結果、1.0Mおよび1.5Mのいずれの濃度においてもNaCl溶液で処理した場合に、皮膚組織から細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されていることが確認された(図10)。また、1MのNaClとSDSで処理した同種脱細胞化真皮スキャホールド、AlloDerm(R)(Life Cell社)を参考例に示した。これにより、本発明の方法により得られた脱細胞化皮膚組織スキャホールドは、凍結融解処理や界面活性剤処理を行わなくても、市販の脱細胞化真皮スキャホールドと同等の形態学的特徴を示すことが確認された。
【実施例】
【0048】
(実施例10)高張NaCl溶液による血管組織の脱細胞効果
Wistar系ラットを腹臥位にし、腹部正中切開により腹部大動脈に到達させ、顕微鏡下に血管周囲の剥離を進め、遠位は両側総腸骨動脈を含め、近位は腎動脈分岐部付近までとし、切断を行い血管組織を採取した。採取したラットの腹部大動脈を、試験管にとり、1MのNaCl溶液で実施例1と同手法にて高張電解質溶液処理し、さらに血管内腔に灌流針を固定し、1MのNaCl溶液を血管内腔にも注入した。次に、PBS溶液にて実施例1と同手法にて等張電解質溶液処理を行い、さらに血管内腔に灌流針を固定し、血管内腔部を積極的に洗浄した。
【実施例】
【0049】
上記高張電解質溶液処理後、等張電解質溶液処理した血管組織を、走査型電子顕微鏡写真にて観察した。250倍及び3000倍の大きさで撮影した組織写真図を図11及び12に示した。電子顕微鏡写真用の組織標本試料は、グルタールアルデヒド溶液で固定したうえ、金属蒸着により作製した。上記の結果、血管組織において、細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されているが、細胞外マトリクスが温存されていることが確認された(図11、12)。
【実施例】
【0050】
(実施例11)高張NaCl溶液による神経組織の脱細胞効果
実施例1と同手法により採取した神経組織を、1MのNaCl溶液で処理したときの脱細胞化効果を確認した。実施例1と同様に高張電解質溶液処理および等張電解質溶液処理を行った。
【実施例】
【0051】
上記高張電解質溶液処理後、等張電解質溶液処理した神経組織を、走査型電子顕微鏡写真にて観察した。1000倍及び3000倍の大きさで撮影した組織写真図を図13及び14に示した。電子顕微鏡写真用の組織標本試料の作製は、実施例10の方法に従った。上記の結果、神経組織において、細胞核や細胞質が除去され、効果的に脱細胞化処理されているが、細胞外マトリクスが温存されていることが確認された(図13、14)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上、詳述したように、本発明の脱細胞化方法により、細胞毒性のある化学物質を使用することなく、また凍結融解処理を行うことなく、取得した生体組織について効果的に脱細胞化することができる。これにより、脱細胞化処理の際の生体組織に与える化学的、物理的損傷を最小限に抑えながら、効果的に脱細胞化処理を行うことができる。また、組織学的な互換性、吸収性、膜の透過性、細胞を保持できる等の優れた脱細胞化生体組織スキャホールドを得ることができ、具体的には、脱細胞化神経組織、脱細胞化血管組織や脱細胞化皮膚組織などのスキャホールドを得ることができる。また、本発明の脱細胞化方法により得た生体組織スキャホールドを生体内に移植して生体組織を再生させる場合に、細胞毒性のある化学物質を使用せず脱細胞化処理を行ったので、本発明の脱細胞化生体組織スキャホールドは、生体に対しても毒性の低い、優れた生体組織再生材料であるといえる。また、得られた脱細胞化生体組織スキャホールドにより、バイオマテリアルでは再現が困難であった三次元構造からなる人工組織を得ることができる。
【0053】
本発明により、自家移植では、例えば神経や血管などについて好ましい口径および長さの組織を再生するのが困難であったのに対し、より好ましい大きさの再生組織を得ることが可能となる。また、従来小口径血管について、口径6mmより小さい人工血管についても開発が望まれていたが、化学合成されたものや生体由来の脱細胞化されたものを含め、強度や血栓形成などの問題があった。一方、本発明の方法によると、口径3mmでも既存の血管と同様の強度・抗血栓性を有する血管の提供が可能となる。
【0054】
これにより、疾病、外傷などによる損傷、加齢などにより機能低下や機能不全に陥った組織、例えば神経組織、血管組織や皮膚組織などに対して、簡便な方法で安全性が高く、かつより効果的に再生組織を形成させることが可能となり、臨床での応用拡大が期待できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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