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明細書 :α-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5704295号 (P5704295)
公開番号 特開2010-207211 (P2010-207211A)
登録日 平成27年3月6日(2015.3.6)
発行日 平成27年4月22日(2015.4.22)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 α-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法
国際特許分類 C12P  17/04        (2006.01)
FI C12P 17/04
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2009-178453 (P2009-178453)
出願日 平成21年7月30日(2009.7.30)
優先権出願番号 2009030548
優先日 平成21年2月12日(2009.2.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年1月26日(2012.1.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
発明者または考案者 【氏名】加藤 康夫
【氏名】中島 範行
【氏名】荻田 信二郎
【氏名】佐藤 幸生
【氏名】荘司 和明
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】北田 祐介
参考文献・文献 第60回日本生物工学会大会講演要旨集, 2008年7月11日, 181ページ
Phytochemistry, 1999年, 第51巻, 969-974ページ
調査した分野 C12P 17/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式(1)及び(2)で示すチューリッポシド類を含有する植物組織を、水で破砕抽出した抽出液又は、メタノールで破砕抽出後に水に再溶解した抽出液に、
チューリッポシド変換酵素を用いて酵素反応させるステップと、
得られた酵素反応液から非極性溶媒を用いてα-メチレンーγ-ブチロラクトンを溶媒抽出するステップと、
前記溶媒抽出後の水層から極性溶媒を用いてα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを溶媒抽出するステップを有し、
前記非極性溶媒はトルエン又はキシレンであり、
前記極性溶媒はブタノール、ブタノールとアセトンとの1:1混合溶媒及び2-プロパノールのうち、いずれかであることを特徴とするα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法。
【化1】
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【化2】
JP0005704295B2_000024t.gif

【請求項2】
前記チューリッポシド類を含有する植物組織は、チューリップ(Tulipa spp.)、アルストロメリア(Alstromeria spp.)、セリバオウレン(Coptis japonica)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかの植物体からの植物組織であることを特徴とする請求項1記載のα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法。
【請求項3】
前記チューリッポシド変換酵素は、チューリップ(Tulipa spp.)カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかに由来する植物組織を破砕し、リン酸カリウム緩衝液を用いて抽出及びクロマトグラフィーにより精製したものであることを特徴とする請求項1記載のα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素反応を活用したα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレン-γ-ブチロラクトン類は、耐熱性透明樹脂の原材料,各種生理活性物質の中間体,害虫忌避剤及び抗変異原性剤等の多くの利用価値がある。
従来、α-メチレン-γ-ブチロラクトン類は、化学合成にて製造されていた(特許文献1)。
しかし、化学合成による製造方法は、専用設備が必要となるだけでなく、多大なエネルギーを消費するものであり、環境負荷が大きいものであった。
【0003】
本願発明者らは、これまでに植物中には下記化学式(1)に示すチューリッポシド-A(Tuliposide-A)及びその類縁体又は化学式(2)に示すチューリッポシド-B(Tuliposide-B)及びその類縁体等の多量のチューリッポシド類が存在し、これらのチューリッポシド類は抗菌性を有するが、チューリップ組織の中にはチューリッポシド類よりさらに抗菌性の強い化学式(3)及び化学式(4)に示すα-メチレン-γ-ブチロラクトン類に変換する酵素を見い出し、本発明に至った。
本明細書では、この酵素をチューリッポシド変換酵素と称し、その後の研究でチューリップ以外の植物組織にも存在することが明らかになった。
なお、化学式(3)に示すα-メチレン-γ-ブチロラクトンは、チューリッパリン-Aとも称され、化学式(4)に示すα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンは、チューリッパリン-Bとも称される。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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【化4】
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【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平10-298172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物中に多種の形態で存在するチューリッポシド類を植物組織に存在する酵素による酵素反応を用いてα-メチレン-γ-ブチロラクトン類を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る下記一般式(5)で示されるα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法は、植物組織内に存在するチューリッポシド類に植物組織から抽出したチューリッポシド変換酵素を用いて酵素反応をさせることを特徴とする。
【化5】
JP0005704295B2_000006t.gif
(式中、R,Rは独立して水素、水酸基又は炭素数1~8のアルキル基を示し、R,Rは独立して水素又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
α-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法としては、植物組織内に存在するチューリッポシド-A[化学式(1)]及びその類縁体又はチューリッポシド-B[化学式(2)]及びその類縁体を植物組織から抽出したチューリッポシド変換酵素を用いてα-メチレン-γ-ブチロラクトン[化学式(3)]及びα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン[化学式(4)]を生成し、分別抽出してもよい。
原材料となる植物体は、組織内にチューリッポシド-A及びその類縁体が存在すると、α-メチレン-γ-ブチロラクトンが得られ、チューリッポシド-B及びその類縁体が存在するとα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンが得られる。
そのような植物体としては、チューリップ(Tulipa spp.)が好ましく、α-メチレン-γ-ブチロラクトンを製造するには、アルストロメリア(Alstromeria spp.)、セリバオウレン(Coptis japonica)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかの植物体にチューリッポシド変換酵素を用いた酵素反応により製造することができる。
また、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを製造するには、植物体は、チューリップ(Tulipa spp.)、シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかの植物体にチューリッポシド変換酵素を用いて酵素反応させるのがよい。
チューリッポシド変換酵素は、分子量約70,200、サブユニット分子量約34,900,至適温度25~30℃、至適pH6.5~7.0、エステラーゼやフォスファターゼの阻害剤である重金属、NaF、PMSFにより阻害され、チューリッポシド-A及びBに基質特異性を有することを特徴とする。
ここで、チューリッポシド変換酵素を抽出する植物組織が、チューリップ(Tulipa spp.)、アルストロメリア(Alstromeria spp.)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかに由来する植物組織であってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の製造方法においては、チューリップ等の植物体を原材料とし、酵素反応により製造するものであることから従来の化学合成に比較して、エネルギー消費が少なく、安全である。
これまでは、チューリップの花弁等が富山県内分推定で約100トン/年強も廃棄されている現状からすると、石油に依存しない優れた製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】チューリッポシド-Aの検量線を示す。
【図2】チューリッポシド-Bの検量線を示す。
【図3】α-メチレン-γ-ブチロラクトンの検量線を示す。
【図4】α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの検量線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、植物体に有するチューリッポシド-A又はB及びその類縁体から、α-メチレン-γ-ブチロラクトン又はα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを製造する点に特徴があり、類縁体には例えば化学式(6)(Phytochemistry 65(2004)731-739;Plant Growth Regulation(2005)46:125-131)、化学式(7)(Biosci.Biotechnol.Biochem.,63(1),152-154,1999)、、化学式(8)(Natural Medicines 51(3),244-248(1997))、化学式(9)及び(10)(Phytochemistry,Vol.40 No.1 49-51(1995))等が例として挙げられる。
【化6】
JP0005704295B2_000007t.gif
【化7】
JP0005704295B2_000008t.gif
【化8】
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【化9】
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【化10】
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【実施例1】
【0010】
(チューリップ球根粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ(Tulipa spp.):「紫水晶」の球根2g(生重量)をビーズショッカーにて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH 7.0)を20ml加えてボルテックスで撹拌後、低温室にて1時間静置した。
遠心分離(21,500×g,15min,4℃)後、上清を10mM KPBにて平衡化したDEAE-Toyopearlカラム(ゲル3ml)にかけ、10mM KPB及び100mM KPB(0.1MNaCl)で溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップにて濃縮(4,000×g,40min,4℃)した。
これにより、100U/mgの比活性を有する粗酵素500Uを得ることができた。
酵素活性の測定法は以下に示す手法にて行った。
0.5M KPB(pH6.5)を5μl、酵素液を10μl、HOを30μl、基質として6-Tuliposide A(10mg/ml)5μlを加え、全量を50μlとし、室温にて10分間静置、酵素反応を行った。
10分後、メタノール100μl、0.5M HPO 50μl、HO 300μlを加えて反応を停止し、25μlをHPLCにインジェクションして活性を測定した。
HPLC分析は、流速:0.65ml/min、検出:208nm、カラム:RP-18GP 250×4.6(関東化学製)、溶媒:20%メタノール(10mM HPO)の条件で行った。
タンパク量は、ブラッドフォード法(Bio Rad Protein Assay Kit)を用いて定量した。
タンパク溶液10μlにブラッドフォード試薬250μlを加え、30分後、595nmの吸光度を測定した。
規定濃度溶液(1.44mg/ml)のBSAを用いて各々の濃度と吸光度の検量線を作成した。
これを元に、球根無細胞抽出液中のタンパク含量を定量した。
【実施例2】
【0011】
(チューリップ花弁組織からのα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の抽出)
チューリップ:「紫水晶」の花弁100mg(生重量)に1mlの冷水を加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(3100U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、各溶媒(トルエン、酢酸ブチル、酢酸プロピル、ヘキサン、キシレン)200μlで2回、100μlで1回の計3回で溶媒抽出してHPLC分析にて抽出効率を求めた。
なお、HPLC分析については、流速:0.35ml/min、検出:208nm、カラム:TSKgel ODS-100V 5mm 4.6mm×15cm(東ソー株式会社製)、溶媒:10%メタノール(10mM HPO)、イソクラティックの条件で行った。
ここで抽出効率は、図1~4にそれぞれ示すような既知の濃度に基づいて検量線を作成し、チューリッポシド-A又はBがα-メチレン-γ-ブチロラクトン又はα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンに変換後、酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表1】
JP0005704295B2_000012t.gif
抽出溶媒として非極性溶媒を用いたので、ヒドロキシ基を有するα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの抽出効率が低かった。
【実施例3】
【0012】
(チューリップ花弁組織からのα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の分別抽出)
チューリップ:「紫水晶」花弁100mg(生重量)に1mlの冷水を加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(580U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
残りの水層より、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを各溶媒(ブタノール、酢酸エチル、2-プロパノール、酢酸プロピル、イソアミルアルコール)にて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出、HPLC分析にて抽出効率を算出した。
【表2】
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α-メチレン-γ-ブチロラクトンを非極性溶媒で抽出した後に極性溶媒を用いてα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを抽出したので抽出効率が向上した。
【実施例4】
【0013】
(チューリップ根粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の根1.3g(乾燥重量)を乳鉢にて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH7.0)を150ml加えて低温室にて1時間攪拌した。
ガーゼにて組織を濾別後、遠心分離(21,500×g,15min,4℃)した上清に10mM KPBにて平衡化したDEAE-Toyopearl 4gを加え、低温室にて1.5時間攪拌した。懸濁液を25mlの注射筒に流し入れゲルを回収した。
このゲルより各20mlの10mM KPB、100mM KPB、100mM KPB(0.1M NaCl)にて順次酵素を溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップ(4,000×g,40min,4℃)及びセントリコン(10,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、18.7U/mgの比活性を有する粗酵素約17Uを得ることができた。
【実施例5】
【0014】
(チューリップ茎粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の茎2.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、11.1U/mgの比活性を有する粗酵素約12Uを得ることができた。
【実施例6】
【0015】
(チューリップ葉粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の葉2.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、15.4U/mgの比活性を有する粗酵素約63Uを得ることができた。
【実施例7】
【0016】
(チューリップ花弁粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の花弁1.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、68.0U/mgの比活性を有する粗酵素約60Uを得ることができた。
【実施例8】
【0017】
(チューリップ葯粗酵素液の調製)
凍結乾燥した「紫水晶」の葯2.0g(乾燥重量)から実施例B-1と同様の手法で精製を行い、42.1U/mgの比活性を有する粗酵素約72Uを得ることができた。
【実施例9】
【0018】
(チューリップ雌しべ粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の雌しべ1.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、11.4U/mgの比活性を有する粗酵素約17Uを得ることができた。
【実施例10】
【0019】
(チューリップ各組織由来粗酵素を用いたα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の調製)
チューリップ:「紫水晶」の花弁(乾重量1g)を乳鉢で破砕し、冷メタノール50mlを加え低温室(4℃)にて30分間撹拌抽出した。
ろ過後、ろ液をシロップ状になるまで減圧濃縮し、メタノールと同量の冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
このものを均等に分け、酵素反応に供した。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各組織由来粗酵素液(球根1000U/ml、葉630U/ml、茎123U/ml、根171U/ml、葯719U/ml、花弁601U/ml、雌しべ167U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα-メチレン-γ-ブチロラクトン及びα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表3に示す。
ここで変換率は、チューリッポシド-A又はBがα-メチレン-γ-ブチロラクトン又はα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンに変換した割合を示し、抽出効率は酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表3】
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【実施例10】
【0020】
(比較例1)
(市販リパーゼを用いたα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の調製)
実施例10同様の抽出液を用い、このものを均等に分け、酵素反応に供した。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各種リパーゼ10mgを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα-メチレン-γ-ブチロラクトン及びα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表4に示す。
【表4】
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この結果、チューリップ組織から抽出したチューリッポシド変換酵素の方が市販のリパーゼよりも優れていることが明らかになった。
【実施例11】
【0021】
(チューリップ各組織中からのα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の調製)
チューリップ:「紫水晶」の各組織(球根250mg、葉100mg、茎100mg、根100mg、葯50mg、花弁100mgいずれも生重量)に冷水1mlを加え、ビーズショッカー(2500 rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、粗酵素液(1000U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200 μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα-メチレン-γ-ブチロラクトン及びα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表5に示す。
【表5】
JP0005704295B2_000016t.gif
【実施例12】
【0022】
(アルストロメリア抽出液の調製)
アルストロメリア(Alstromeria spp.)植物体60mg(乾燥重量)より冷メタノール3mlにて、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕することで抽出物を得た。
綿ろ過後、ろ液を集め減圧濃縮し、ろ液と同量の冷水に再溶解して抽出液とした。
このものを均等に分け、酵素反応に供した。
なお、抽出にはラピッドスター、マリレーン、エラの3栽培品種を用いた。
【実施例12】
【0023】
(セリバオウレン抽出液の調製)
セリバオウレン(Coptis japonica)植物体600mg(乾燥重量)を乳鉢で破砕後冷メタノール30mlを加え、室温にて30分間撹拌した。
ろ過後、ろ液をシロップ状になるまで減圧濃縮し、冷水3mlに再溶解して抽出液とした。このものを均等に分け、酵素反応に供した。
【実施例12】
【0024】
(各植物体からのα-メチレン-γ-ブチロラクトン類の生成及び抽出)
上記で調製した抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5ml、球根粗酵素液(1,063U/ml)5mlまたはHOを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)にて抽出し、HPLCにてα-メチレン-γ-ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素変換により生成したα-メチレン-γ-ブチロラクトンの濃度及び抽出効率を表6に示す。
【表6】
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【実施例13】
【0025】
紫水晶の各組織(球根、葉、茎、根、葯、花弁、雌しべ)100mg(生重量、但し球根は250mg、葯は50mg)に1mlのメタノールを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、1mLの冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、球根粗酵素液(1,063U/ml)5μlを添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
残りの水層より、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンをブタノール:アセトン= 1:1にて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
4つの段階(抽出直後、2時間反応後、トルエン抽出後の水層、混合溶媒抽出後の水層)に分け、HPLC分析を行った。
なお、HPLC分析条件は実施例2と同条件である。
分析結果を表7に示す。
ここで濃度は、酵素反応液における両化合物の濃度を、変換率は、チューリッポシド-A又はBがα-メチレン-γ-ブチロラクトン又はα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンに変換した割合を示し、抽出効率は酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表7】
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【実施例13】
【0026】
これにより、植物体の各組織からの破砕抽出にメタノールを用いてもα-メチレン-γ-ブチロラクトン類を効率よく得られることが明らかになった。
【実施例14】
【0027】
チューリップの各品種(アーリーグローリー、ありさ、アルビノ、ウエディングベールエンパイヤステート、カーニバルデリオ、黄小町、クインオブナイト、グリーンランド、ゲリットファンデルボルク、ゴールデンエンパイヤステート、ゴールデンメロディー、コンプリメント、白雪姫、紫雲、ジュディレスター、スターファイター、デザインインプレッション、初桜、ハミルトン、春乙女、春万葉、バレリーナ、ピンクダイヤモンド、ピンクレディパーロット、ファンシーフリル、フライアウェイ、フランソワーゼ、紫水晶、フレーミングパーロット、メセアポゼラン、ラリベラ、ランバダ、レーンファンデルマーク、レッドウィング、レッドファボリット、ワシントン)の花弁100mg(生重量)に1mLのメタノールを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、1mLの冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
上記、抽出液490μlを量りとり、実施例13と同様に反応を行い、抽出、定量を行った結果を表8に示す。
なお、濃度、変換率、抽出効率の定義は、実施例13と同様である。
【表8】
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【実施例14】
【0028】
これにより、チューリップの品種によらずにα-メチレン-γ-ブチロラクトン類が得られることが明らかになった。
【実施例15】
【0029】
シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)植物体50mg(乾燥重量)に冷メタノール1mlを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を集め減圧濃縮し、ろ液と同量の冷水に再溶解して抽出液とした。
植物抽出液490μlを量りとり、実施例13と同様に反応を行い、抽出、定量を行った結果を表9に示す。
なお、濃度、抽出効率の定義は、実施例13と同様である。
【表9】
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【実施例15】
【0030】
これにより、植物組織中にチューリッポシド-β及びその類縁体が存在すると、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを得ることができることも明らかになった。
【実施例16】
【0031】
実施例10で調製した紫水晶花弁抽出液490μlに、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(580U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加、無添加下で、各種溶媒にて200μlで各回数抽出することで、α-メチレン-γ-ブチロラクトン類を溶媒抽出した。
HPLC分析にて抽出効率を算出した結果を表10に示す。
【表10】
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【実施例17】
【0032】
実施例13と同様の酵素反応後、ベンゾトリフルオリドにてα-メチレン-γ-ブチロラクトンを抽出(NaCl無添加、200μl×5回抽出)した残りの水層にNaClを飽和量添加し、2,2,2-トリフルオロエタノールまたは2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールにて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出したところ、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンを94.7及び95.8%の効率で抽出できた。
【実施例18】
【0033】
アルストロメリア(Alstromeria spp.)植物体200mg(乾燥重量)を乳鉢にて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH7.0)を15ml加えて低温室にて1時間攪拌した。
ガーゼにて組織を濾別後、遠心分離(21,500×g,15min,4℃)した上清に10mM KPBにて平衡化したDEAE-Toyopearl 1gを加え、低温室にて1.5時間攪拌した。
懸濁液を10mlの注射筒に流し入れゲルを回収した。
このゲルより各5mlの10mM KPB、100mM KPB、100mM KPB(0.1M NaCl)にて順次酵素を溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップ(4,000×g,40min,4℃)及びセントリコン(10,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、8.9U/mgの比活性を有する「エラ」粗酵素約5.6U、7.5U/mgの比活性を有する「マリレーン」粗酵素約 2.3U、3.5U/mgの比活性を有する「ラピッドスター」粗酵素約1.2Uを得ることができた。
【実施例19】
【0034】
カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)植物体50mg(乾燥重量)に1mlの10mM KPBを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、得られた酵素液をマイクロコン(8,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、85.3U/mgの比活性を有するカタクリ粗酵素約4.9U、126U/mgの比活性を有するキバナカタクリ粗酵素約 7.7Uを得ることができた。
【実施例20】
【0035】
実施例10に用いた抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各植物由来粗酵素液(アルストロメリア「エラ」112U/ml、アルストロメリア「マリレーン」47U/ml、アルストロメリア「ラピッドスター」24U/ml、カタクリ92U/ml、キバナカタクリ153U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α-メチレン-γ-ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα-メチレン-γ-ブチロラクトン及びα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表11に示す。
【表11】
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【実施例20】
【0036】
これにより、チューリッポシド変換酵素はチューリップのみならず、アルストロメリア、カタクリ、キバナカタクリ等の植物組織にも存在することが明らかになった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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