TOP > 国内特許検索 > 熱化学水素製造方法 > 明細書

明細書 :熱化学水素製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5610271号 (P5610271)
公開番号 特開2011-219331 (P2011-219331A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発明の名称または考案の名称 熱化学水素製造方法
国際特許分類 C01B   3/02        (2006.01)
FI C01B 3/02 D
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2010-092720 (P2010-092720)
出願日 平成22年4月14日(2010.4.14)
審査請求日 平成24年12月10日(2012.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】久保 真治
【氏名】笠原 清司
【氏名】田中 伸幸
【氏名】今井 良行
【氏名】小貫 薫
【氏名】ワン ライチン
個別代理人の代理人 【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】村岡 一磨
参考文献・文献 特開2007-290889(JP,A)
特開2008-137824(JP,A)
特開昭49-035295(JP,A)
特公昭37-002763(JP,B1)
特開平08-337406(JP,A)
調査した分野 C01B 3/00-3/58
特許請求の範囲 【請求項1】
原材料であるH2Oから、ブンゼン反応によってH2SO4相及びHIx相を形成する段階、形成されたH2SO4相及びHIx相を分離する段階、その後、それぞれの相を反応性ストリッピングガスを用いて、H2SO4相及びHIx相の各相に含まれる不純物を別個に精製する段階、最後に、精製されたHIxからHI分解反応によって水素を製造する段階からなる熱化学水素製造方法において、
前記精製段階で用いられる反応性ストリッピングガスが、酸素と不活性ガスから成る混合ガスであることを特徴とする熱化学水素製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱化学水素製造方法において、
酸素と不活性ガスから成る前記混合ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンを含有する1種又は数種の不活性ガスと、酸素の混合ガスであることを特徴とする熱化学水素製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造効率に優れた熱化学水素製造方法に係り、特にヨウ素-硫黄(IS)水素製造サイクルにおいてH2SO4及びHIx相を精製するための精製プロセスを改良した、熱化学水素製造方法に関する。この改良された水素製造方法では、上述の精製プロセスおいて用いるストリッピングガス(stripping gas)としては、これまで使用されてきた窒素に代わって、酸素と不活性ガスから成る混合ガスを使用する。
【背景技術】
【0002】
水素は、最良の二次エネルギーと考えられ、人類の次世代のエネルギーとしても知られている。しかし、これまでの水素製造方法は、CO2放出、低効率などの欠点により、水素エネルギーの開発に制限が与えられていた。そのため、これまで、クリーンで、効率的で、かつ持続可能な水素製造方法についての研究に、より多くの注意が払われてきた。多くの熱化学水素製造方法の中でも、とりわけ、ゼネラルアトミック社(General Atomic)によって最初に提案された、ヨウ素-硫黄(IS)サイクルは、クリーンで、経済的であり、高温の核熱エネルギーを使用する大規模水素製造の持続可能な方法であると思われる。しかし、ISプロセスを用いて工業的に水素製造を行うためには、今なお、解決されるべき技術的課題が幾つか存在する。そのような課題の一つに、H2SO4相及びHIx相から成るブンゼン反応生成物の精製がある。
【0003】
上述のISプロセスは、以下の3つの反応から構成される。
ブンゼン反応:SO2 + I2 + 2H2O = 2HI + H2SO4 (1)
H2SO4分解反応:H2SO4 = SO2 + 1/2O2 + H2O (2)
HI分解反応:2HI = H2 + I2 (3)
【0004】
過剰なヨウ素が存在すると、ブンゼン反応生成物は、軽いH2SO4相と重いHIx相の2相に分離される。配分平衡となることにより、H2SO4 相及びHIx相内に、それぞれ少量のHI及びH2SO4が生ずることは避けがたいことである。二つの相内の微少成分の存在は、以下に示されるような、硫黄形成(4)や硫化水素形成(5)などの幾つかの副反応を発生させる。
硫黄形成反応:H2SO4 + 6HI = S + 3I2 + 4H2O (4)
硫化水素形成反応: H2SO4 + 8HI = H2S + 4I2 + 4H2O (5)
【0005】
副反応は、プロセス原料バランスへの影響、全体効率の悪化、閉サイクルの連続運転を妨げる配管の詰まりなど、多くの重大な問題を引き起こす。したがって、副反応の発生を防止するためには、H2SO4相及びHIx相を精製し、微少成分を除去することが不可欠となる。
【0006】
現在世界的に知られている精製原理は、逆ブンゼン反応(6)である。
逆ブンゼン反応:2HI + H2SO4 = SO2 + I2 + 2H2O (6)
【0007】
日本、韓国、及び中国の研究者らは、それぞれ非特許文献1、2及び3において報告しているように、上述の精製反応(6)を採用し、ストリッピングガスとして窒素を使用するストリッピング塔によって、H2SO4相及びHIx相を精製するようにしている。
【0008】
上述のプロセスを用いて二つの相を精製する際中に幾つかの欠点がある。H2SO4相内の少量のHIは、逆ブンゼン反応によって取り除かれるが、同時に、ある量の硫酸が消費されざるを得ない。上述のプロセスを用いるHIx相の精製は、度々、精製効率を低下させる、硫黄あるいは硫化水素発生などの副反応を伴う。この課題を解決するための一つの手段が特許文献1に開示されている。
【0009】
上述の特許文献1では、精製プロセスにおける副反応(式(5)参照)の結果生成する硫化水素を除去する手段として、酸素ガスの添加が提案されている。酸素ガスの添加により、以下の反応が進行する。
【0010】
H2SO4 + H2S + O2 ⇒ 2SO2 + 2H2O (7-1)
また、この反応の生成物である二酸化硫黄及び水を、(1)ブンゼン反応を進行する容器に輸送し水素を製造することで、水素製造効率を向上できる。さらにまた、特許文献1では、精製プロセスにおける(4)副反応の結果生成する硫黄を除去する手段として、ろ過器の導入が提案されている。硫黄を蓄積したろ過器に酸素ガスを導入することで以下の反応が進行する。
【0011】
S + O2 ⇒ 2SO2 (7-2)
そして、上述の特許文献1には、この反応の生成物である二酸化硫黄を、(1)ブンゼン反応を進行する容器に輸送し水素を製造することで、水素製造効率を向上させることができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2008-137824号公報
【0013】

【非特許文献1】Kubo S, Nakajima H, Kasahara S, Higashi S, Masaki T, Abe H, Onuki K著 熱化学水分解ヨウ素-硫黄プロセス 233:347-354 頁 Nucl Eng 2004年12月
【非特許文献2】Ki-Kwang Bac, Chu-Sik Park, Chang-Hee Kim, Kyung-Soo Kang, Sang-Ho Lee, Bab-Jin Hwang, Ho-Sang Choi著 熱化学水分解ISプロセス、WHEC 16/13~16 2006年6月 リヨン フランス
【非特許文献3】Guo HF, Zhang P, Bai Y, Wang LJ, Chen SZ, Xu JM著 ISプロセスにおける充填カラムによるH2SO4及びHI相の連続精製 Int.J 水素エネルギー、2009年 doi:10.1061/J.ijhydene. 2009.05.009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
課題について説明する前に、本願明細書において使用する用語の定義について解説する。すなわち、本願明細書では、例えばIFHI、CHIなど、様々な記号や式を用いているが、これらは、以下の表1及び表2の定義に基づいている。例えば、表2の最上段にあるCHI(HI変換率)の計算式において、OFtHI及びIFHIは、それぞれ、成分HIの合計流出量及び成分HIの流入量を示している。
【0015】
【表1】
JP0005610271B2_000002t.gif

【0016】
【表2】
JP0005610271B2_000003t.gif

【0017】
さて、特許文献1に記載の酸素添加では、以下の問題があることがわかった。すなわち、H2SO4相の模擬溶液に酸素ガスを0.5mol/h加えた系に対する反応温度影響を調べた結果、後述されるように、硫酸の収率YSAがいずれの温度においても100%近くに保たれるものの、ヨウ素の選択率SI2を100%近く得るためには、140℃以上の反応温度が必要となる。この系においては、下記の反応が進行したことが予想される。
【0018】
4HI + O2 = 2I2+2H2O (8)
2HI + 3O2 = 2HIO3 (9)
硫酸相における不純物であるヨウ化水素が反応性ガスである酸素と反応した結果、ヨウ素やHIO3に変化し、逆ブンゼン反応(6)の進行が阻害されたために硫酸の収率が改善したものと考えられる。また、高温ではHIO3の安定性が損なわれ、ヨウ素の選択率SI2が向上したものと考えられる。また、反応温度を120℃に保ったHIx相の模擬溶液に加えた酸素ガスの流量の影響を調べた結果、流量が増加するに従って、二酸化硫黄の選択率SSO2が向上するものの、硫酸の変換率CSAとヨウ化水素の収率YHIの減少がみられた。
【0019】
したがって、二つの相の精製方法をさらに改善し、H2SO4相の精製では反応温度を140℃から低減させ、HIx相の精製においては硫酸の変換率とSO2の選択率を同時に100%近く増大させることが求められている。そこで、本発明の主たる目的は、ヨウ素-硫黄サイクルにおいてH2SO4相及びHIx相を精製するための改良された精製プロセスを与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ストリッピングガスとして、これまでの酸素や不活性ガスに代えて酸素と不活性ガスから成る混合ガスを用いて、H2SO4相及びHIx相を精製するプロセスを採用することによって、上述の要求は満たされ、問題点が解決される。
【0021】
本発明は、ヨウ素-硫黄水素製造サイクルおいてH2SO4相を精製するための一つのプロセスを提供する。そのプロセスの特徴は以下の通りである。なお、以下の説明では特徴を分かり易く説明するため、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
最初に、ストリッピング塔の温度が90℃から200℃に制御される。次に、H2SO4相溶液が、ストリッピング塔の上部からストリッピング塔内に汲み上げられる。同時に、反応性ストリッピングガスがそのストリッピング塔の下部から流される。最後に、精製液がストリッピング塔から放出される。蒸気は、ストリッピング塔の上部にある出口から放出する。ここで、反応性ストリッピングガスは、酸素と不活性ガスから成る混合ガスである。上述の、酸素と不活性ガスから成る混合ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンを含有する1種又は数種の不活性ガスと、酸素の混合ガスである。
【0023】
本発明はまた、ヨウ素-硫黄水素製造サイクルおいてHIx相を精製するための一つのプロセスを提供する。そのプロセスの特徴は以下の通りである。なお、以下の説明では特徴を分かり易く説明するため、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
最初に、ストリッピング塔の温度が90℃から200℃に制御される。次に、HIx相溶液が、ストリッピング塔の上部からストリッピング塔内に汲み上げられる。同時に、反応性ストリッピングガスがそのストリッピング塔の下部から流される。最後に、精製液がストリッピング塔から放出される。蒸気は、ストリッピング塔の上部にある出口から放出する。ここで、反応性ストリッピングガスは、酸素と不活性ガスから成る混合ガスである。上述の酸素と不活性ガスから成る混合ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンを含有する1種又は数種の不活性ガスと、酸素の混合ガスである。
【0025】
反応性ストリッピングガスを用いることによって、H2SO4相精製のこれまでの精製反応、すなわち逆ブンゼン反応:2HI + H2SO4 = SO2 + I2 + 2H2Oは、HI酸化反応:4HI + O2 = 2I2 + 2H2Oに置き換えられる。反応性ストリッピングガスを用いることによって、HIx相の精製から生成される副生成物H2S及びS2は、次の反応によって酸化され、SO2になる。
S + O2 = SO2 及びH2S + O2 = SO2
【発明の効果】
【0026】
現在の技術と比較して、本発明は、次の利点及び顕著な技術的効果を有する。すなわち、本発明のプロセスは、これまでの精製機構、すなわち逆ブンゼン反応:2HI + H2SO4 = SO2 + I2 + 2H2Oとは異なる、HI酸化:4HI + O2 = 2I2 + 2H2Oによって、H2SO4を消費することなく、H2SO4相の完全な精製が実現できる。ストリッピングガスとして反応性酸素又は酸素含有混合ガスを用いるHIx相の精製では、酸素が副生成物SあるいはH2Sと反応し、SO2を形成するので、SO2の選択率を増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の熱化学水素製造方法のプロセスを示す概略図である。
【図2】ヨウ素-硫黄水素製造サイクルにおける、H2SO4相及びHIx相を精製するためのプロセスの一実施例を示す概略図である。
【図3】本発明の比較例1を説明するための図であって、比較例1の効果を示すグラフである。
【図4】本発明の比較例2を説明するための図であって、比較例2の効果を示すグラフである。
【図5】本発明の比較例3を説明するための図であって、比較例3の効果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1を説明するための図であって、実施例1の効果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2を説明するための図であって、実施例2の効果を示すグラフである。
【図8】本発明を説明するための図である。
【図9】本発明の比較例4を説明するための図であって、比較例4の効果を示すグラフである。
【図10】本発明の比較例5を説明するための図であって、比較例5の効果を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例3を説明するための図であって、実施例3の効果を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例4を説明するための図であって、実施例4の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1及び図2を参照して、本発明の熱化学水素製造方法について説明する。図1は本発明の熱化学水素製造方法の全プロセスを示し、図2は、図1に示された、H2SO4相及びHIx相の精製プロセスの詳細を示している。図1において、初めに原材料である水H2Oから、ブンゼン反応によって二層分離器によりH2SO4相及びHIx相を得る。その後、それぞれH2SO4相及びHIx相が独立に取り出され、精製器にかけられる。図1では、上層のH2SO4相が紙面に向かって左側の閉ループの精製器に、下層のHIx相が同じく右側の閉ループにある精製器にかけられる。これらの精製器において、それぞれの相を反応性ストリッピングガスを用いて精製する。右側の閉ループにおいて、最後に精製されたHIx(精製液)からHI分解反応によって H2 が製造され、製品として外部に取り出される。また、それぞれ、左側の閉ループにおいて製造されたSO2、右側の閉ループで製造されたI2は、水素製造に循環利用される。次に、本発明の特徴であるH2SO4相及びHIx相の各相を精製するためのプロセスについて、図2を参照して詳細に説明する。

【0029】
なお、図2では、説明の都合上、精製プロセスをバッチ処理として取り扱っているが、各種弁機構や配管等を使用して、この装置を図1の閉ループに設置することは極めて容易であるので、ここでは説明を省略する。また、図1においては、熱源として、高温ガス炉の廃熱を利用しているが、図1に示された所望の温度が得られれば良く、製鉄所の廃熱、太陽熱などを熱源と使用しても良い。

【0030】
図2を参照する。H2SO4相及び HIx相の精製プロセスは、H2SO4相又はHIx相用の材料タンク201、ポンプ202、ストリッピング塔203、温度制御器204、生成物タンク205、ストリッピングガスタンク206、流量計207、及び弁機構208などから成る装置によって行なわれる。ストリッピング塔203は、精製プロセスの実行に先だってあらかじめ所望の温度に加熱される。精製プロセス中、H2SO4相又は HIx相が、加熱されたストリッピング塔203内にその上部入口から汲み入れられると共に、流量計207によってその流量が制御される反応性ストリッピングガスが、ストリッピング塔203の下部から流入させられる。最後に、ストリッピング塔203からの流出物が、精製液として得られる。蒸気はストリッピング塔203の上部にある出口から放出する。

【0031】
次に、上述の精製装置を使用して行った本発明の各比較例及び実施例について、図2乃至図12を参照して説明する。図3から図7は、硫酸(H2SO4)相の精製に関する実験結果を示す説明図であり、図8から図12は、ポリヨウ化水素酸(HIx)相の精製に関する実験結果を示す説明図である。以下に述べる各比較例及び実施例を通して、硫酸相の模擬溶液の量及びポリヨウ化水素酸相の模擬溶液の量は、それぞれ段落[0033]及び段落[0039]に示したものが使用された。

【0032】
これらの実験結果は、米国のOLI Systems,Inc. 社製の物性推算ソフトウエアであるESP(The Environmental Simulation Program, 環境プロセスシミュレータ)を用いて算出したものである。本ソフトウェアの特徴として、MSEモデル(混合溶媒系電解質熱力学モデル)に基づく熱力学データベースの適用性が挙げられる。計算に際しては、[I1]以下の条件設定で算出した。
パラメータ:温度、ストリッピングガス流量
温度範囲:60 ~ 160℃
ストリッピングガス:窒素(不活性ガスとして)、酸素(反応性ガスとして)
H2SO4相ストリッピングガス流量範囲:N2, 0 ~ 16mol%, O2, 0 ~ 9mol%
HI相ストリッピングガス流量範囲:N2, 0 ~ 4.7mol%, O2, 0 ~ 2.4mol%
圧力:1atm
平衡組成計算:反応速度を考慮せず
ブンゼン反応生成物組成:ゼネラルアトミック社(General Atomic)測定結果相当
H2SO4相不純物含有量:HI = 2mol%
HIx相不純物含有量:H2SO4 = 1mol%
本発明の硫酸(H2SO4)相への適用性

【0033】
図3(従来技術)に、100℃におけるH2SO4: 1mol/h, H2O: 4mol/h, HI: 0.1mol/hの硫酸相の模擬溶液に対して添加する窒素ガスの流量の効果を示す。図1から、流量が増加するに従って、ヨウ素、二酸化硫黄の選択率SI2, SSO2が100%近くに向上するものの、硫酸の収率YSAの減少がみられることがわかる。

【0034】
図4(従来技術)に、硫酸相の模擬溶液に窒素ガスを0.5mol/h加えた系に対する反応温度影響を示す。図4から、90℃以上において、SI2, SSO2が100%近くに向上するものの、YSAの減少がみられ、逆ブンゼン反応による硫酸収率の低下が予想されることがわかる。

【0035】
次に、酸素ガスのみを硫酸相の模擬溶液に添加した効果について述べる。図5(従来技術)に、模擬溶液に、酸素ガスを0.5mol/h加えた系に対する反応温度影響を示す。図5から、硫酸の収率YSAがいずれの温度においても100%近くに保たれるものの、ヨウ素の選択率SI2を100%近く得るためには、140℃以上の反応温度が必要となることがわかる。この理由は、先に特許文献1に関連して説明した通りである。
【実施例1】
【0036】
次に、本発明に従って、窒素と酸素の混合ガスを硫酸相の模擬溶液に添加した効果について述べる。図6に、100℃において模擬溶液と0.5mol/hの窒素の混合系に添加した酸素ガスの流量の効果を示す。ヨウ素の選択率SI2を100%近くに保ちつつ、二酸化硫黄の選択率SI2を0%近くに維持できる酸素流量として、0.025mol/hが得られた。
【実施例2】
【0037】
図7に、硫酸相の模擬溶液に0.5mol/hの窒素と0.025mol/hの酸素の混合ガスを加えた場合の反応温度の効果を示した。110℃以上では、硫酸の収率YSAおよびヨウ素の選択率SI2を100%近くに保つことができることが示唆される。
【実施例2】
【0038】
これらの結果から、硫酸相に窒素と酸素の混合ガスを添加して精製プロセスを行うことで、以下の二つの効果を示すことが予想される。
(A)窒素ガス単体の添加に比べて100%近い硫酸の収率
(B)酸素ガス単体の添加に比べて140℃から110℃への反応温度低下
上述の(A)の結果、ISプロセス内での硫酸循環量が低減し、水素製造熱効率の向上につながることが期待される。
上述の(B)の結果、硫酸相精製プロセスの操作温度が低減し、ISプロセスの水素製造熱効率の向上につながることが期待される。
本発明のポリヨウ化水素酸酸(HIx)相への適用性
【実施例2】
【0039】
まず、ポリヨウ化水素酸酸相における温度の効果について述べる。
図8に、HI: 2mol/h, H2O: 10mol/h, I2: 8mol/h, H2SO4: 0.2mol/hのポリヨウ化水素酸相の模擬溶液の反応温度を変化させた効果を示す。反応温度が増加するにしたがって、硫酸の変換率CSAが向上するものの、ヨウ化水素の収率YHIが減少し、二酸化硫黄の選択率SSO2が120℃にピークを持つ。そこで、反応温度120℃におけるCSA とSSO2の向上を狙って各種ガスの効果について以下のように実験を行なった。

【0040】
従来技術の窒素ガスのみをポリヨウ化水素相に添加した効果について調べた。
図9に、120℃におけるHI: 2mol/h, H2O: 10mol/h, I2: 8mol/h, H2SO4: 0.2mol/hのポリヨウ化水素酸相の模擬溶液に対して添加する窒素ガスの流量の効果を示す。流量が増加するに従って、硫酸の変換率CSAが向上するものの、二酸化硫黄の選択率SSO2とヨウ化水素の収率YHIの減少がみられる。

【0041】
次に、やはり従来技術である酸素ガスのみをポリヨウ化水素酸相に添加した効果について調べた。
図10に、120℃における模擬溶液に対して添加する酸素ガスの流量の効果を示す。流量が増加するに従って、二酸化硫黄の選択率SSO2が向上するものの、硫酸の変換率CSAとヨウ化水素の収率YHIの減少がみられる。この系においては、硫酸相の場合と同様に前述の式(8)及び式(9)に従った反応が進行したことが予想される。

【0042】
ポリヨウ化水素酸相における製品であるヨウ化水素が反応性ガスである酸素と反応した結果、ヨウ素やHIO3に変化し、ヨウ化水素の収率が減少したものと考えられる。このヨウ化水素の酸化反応は、競合する副反応(4), (5)を抑制する結果、逆ブンゼン反応の進行度が高まり、SO2の選択率が向上したと考えられる。酸素ガスの流量0.1mol/h程度においてCSAとSSO2が最大化される。
【実施例3】
【0043】
次に、窒素と酸素の混合ガスをポリヨウ化水素酸相に添加した効果について調べた。
図11に、120℃において模擬溶液と純酸素ガス添加の解析で得られた最適流量である0.1mol/hの酸素の混合系に添加した窒素ガスの流量の効果を示す。純窒素ガスを模擬溶液に添加した場合と同様に、流量が増加するに従って、硫酸の変換率CSAが向上するものの、二酸化硫黄の選択率SSO2とヨウ化水素の収率YHIの減少がみられた。しかし、CSAの向上率に対して、SSO2の減少率は小さく、純酸素ガスを0.1mol/h添加した場合に比べて、精製プロセスとしての最適化が可能となった。窒素ガスの流量0.4mol/h程度において、CSAとSSO2が最大化された。
【実施例4】
【0044】
図12に、模擬溶液に0.4mol/hの窒素と0.1mol/hの酸素の混合ガスを加えた場合の反応温度の効果を示す。反応温度が増加するにしたがって、硫酸の変換率CSAが向上するものの、ヨウ化水素の収率YHIが減少し、二酸化硫黄の選択率SSO2は110℃でピークを示した。CSAとSSO2が最大化する反応温度として、120℃が得られた。
【実施例4】
【0045】
これらの結果から、ポリヨウ化水素酸相に窒素と酸素の混合ガスを添加して精製プロセスを行うことで、以下の二つの効果を示すことが予想される。
(C)窒素ガス単体の添加に比べて同等の硫酸の変換率と100%近い二酸化硫黄の選択率
(D)酸素ガス単体の添加に比べて同等の二酸化硫黄の選択率と100%近い硫酸の変換率
上述の(C)の結果、精製プロセスにおける副反応の進行を抑制し、単体硫黄や硫化水素の発生を防止できる。
上述の(D)の結果、後段のプロセスへの不純物の流入を防ぎ、精製プロセスの本来の機能を達成できる。
【実施例4】
【0046】
以上の事実から、窒素ガス単体、酸素ガス単体の添加では、ポリヨウ化水素ガスの精製プロセスとして不完全であり、窒素と酸素の混合ガスを用いて初めてヨウ化水素収率が高く副反応を抑制した精製プロセスが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
201…(H2SO4相又はHIx相用)材料タンク、
201…ポンプ、
203…ストリッピング塔、
204…温度制御器、
205…生成物タンク、
206…ストリッピングガスタンク、
207…流量計、
208…弁機構
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11