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明細書 :銅ドープ酸化チタンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5835706号 (P5835706)
公開番号 特開2012-111683 (P2012-111683A)
登録日 平成27年11月13日(2015.11.13)
発行日 平成27年12月24日(2015.12.24)
公開日 平成24年6月14日(2012.6.14)
発明の名称または考案の名称 銅ドープ酸化チタンの製造方法
国際特許分類 C01G  23/053       (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/72        (2006.01)
B01J  37/10        (2006.01)
C01G  23/04        (2006.01)
FI C01G 23/053
B01J 35/02 J
B01J 23/72 M
B01J 37/10
C01G 23/04 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2011-238260 (P2011-238260)
出願日 平成23年10月31日(2011.10.31)
優先権出願番号 2010247269
優先日 平成22年11月4日(2010.11.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月28日(2014.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】錦織 広昌
【氏名】久保田 智志
【氏名】田中 伸明
【氏名】佐藤 隆史
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 特開平11-169659(JP,A)
特開2000-256014(JP,A)
米国特許出願公開第2006/0024228(US,A1)
特開平01-221340(JP,A)
特開平10-231123(JP,A)
LOPEZ, R. et al,Photophysical and photocatalytic properties of nanosized copper-doped titania sol-gel catalysts,Catalysis Today,2009年 5月 2日,Vol.148, No.1-2,p.103-108,DOI:10.1016/j.cattod.2009.04.001
調査した分野 C01G 23/053
C01G 23/04
B01J 21/00-38/74
C01B 13/14,13/32
特許請求の範囲 【請求項1】
チタンアルコキシド銅アルコキシドとの混合溶液を還流処理する工程と、
還流処理後の溶液に酸触媒を加えて、銅ドープ酸化チタンの前駆体となるゾル溶液を形成する工程と、
前記ゾル溶液を加熱し、アルコキシドの加水分解と重縮合反応を進行させて乾燥ゲルとした後、乾燥ゲルを粉砕して粉末とするゲル化工程と、
前記ゲル化工程で得られた乾燥ゲルの粉末を蒸留水に浸漬させて加熱し、有機物を除去する水熱処理工程と、
前記水熱処理を施したゲルを焼成し結晶化させて銅ドープ酸化チタンを形成する焼成工程と、
を備える銅ドープ酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
前記チタンアルコキシドとして、チタンテトライソプロポキシドを使用し、前記銅アルコキシドとして銅(II)イソプロポキシドを使用することを特徴とする請求項1記載の銅ドープ酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
チタンに対する銅の添加量を0.05mol%~0.10mol%とすることを特徴とする請求項1または2記載の銅ドープ酸化チタンの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、ゾルゲル法を用いる銅ドープ酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、優れた光触媒作用を有することで知られており、有害物質の分解、脱臭、防汚等に幅広く利用されてきた。近年は、光触媒デバイスや半導体デバイス等へ応用についても検討されている。
酸化チタンの光触媒作用は、紫外光領域の光吸収によって発現する。しかしながら、太陽光は紫外光領域の光が占める割合はわずかであることから、可視光領域での光を利用可能として効果的な光触媒作用が得られるようにすること、また、光誘起された電子と正孔との再結合速度が大きいことから、再結合速度を抑制して光触媒機能を向上させることが求められている。
【0003】
これらの問題を解決する方法として、酸化チタンに窒素や金属をドープし、酸化チタンのバンドギャップ中に不純物準位を組み込むことにより、可視光領域での光吸収を可能とし、また不純物準位に電子をトラップすることによって電子と正孔の再結合を抑制して光触媒作用を活性化する方法が研究されている(特許文献1~5等)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-160327号公報
【特許文献2】特開2004-181296号公報
【特許文献3】特開2009-78264号公報
【特許文献4】特開2009-274053号公報
【特許文献5】特開2010-149046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸化チタンに銅をドープした銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンの光吸収領域を可視光領域まで拡張し、電子-正孔の再結合を抑制して、光触媒作用の活性化を効果的に向上させるものとして知られている。
ゾルゲル法を利用して銅ドープ酸化チタンを製造する方法としては、銅元素源として塩化銅または硝酸銅溶液を加えて銅を添加する方法がある。しかしながら、従来の硝酸銅等を銅元素源とする方法は、酸化チタン中に銅イオンが均一に分散せず、局所的に銅イオン濃度が高くなり、酸化銅粒子が酸化チタンの表面に析出する等により、結果として、逆に、再結合中心となったり、酸素の吸着を阻害し、活性酸素の発生を抑制して活性を低下させるという問題があった。
【0006】
本発明は、酸化チタンに確実に銅をドープすることができ、優れた光触媒作用を備える銅ドープ酸化チタンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願に係る銅ドープ酸化チタンの製造方法は、チタンアルコキシド銅アルコキシドとの混合溶液を還流処理する工程と、還流処理後の溶液に酸触媒を加えて、銅ドープ酸化チタンの前駆体となるゾル溶液を形成する工程と、前記ゾル溶液を加熱し、アルコキシドの加水分解と重縮合反応を進行させて乾燥ゲルとした後、乾燥ゲルを粉砕して粉末とするゲル化工程と、前記ゲル化工程で得られた乾燥ゲルの粉末を蒸留水に浸漬させて加熱し、有機物を除去する水熱処理工程と、前記水熱処理を施したゲルを焼成し結晶化させて銅ドープ酸化チタンを形成する焼成工程とを備える。
本製造方法においては、銅元素源として銅アルコキシドを使用することと、チタンアルコキシドに銅アルコキシドを加えた溶液を還流処理することが特徴的である。とくに還流処理は銅ドープ酸化チタンの光触媒作用を向上させる上で有効である。
【0008】
記チタンアルコキシドとして、チタンテトライソプロポキシドを使用し、前記銅アルコキシドとして銅(II)イソプロポキシドを使用することが有効である。
また、チタンに対する銅の添加量を0.05mol%~0.10mol%とすることにより、銅ドープ酸化チタンの触媒活性を活性化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る銅ドープ酸化チタンの製造方法によれば、従来のゾルゲル法の製造方法によって得られる銅ドープ酸化チタンに比べて光触媒作用に優れた銅ドープ酸化チタンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1(Sol-R Cu-A)と実験例(Sol-N Cu-A)による銅ドープ酸化チタンについて、メチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【図2】比較例1(Sol-R Cu-N)と比較例2(Sol-N Cu-N)による銅ドープ酸化チタンについて、メチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【図3】酸化チタンについて還流処理を施したサンプル(Sol-R TiO2)と還流処理を施していないサンプル(Sol-N TiO2)についてのメチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【図4】実験例(Sol-N Cu-A)、比較例2(Sol-N Cu-N)の銅ドープ酸化チタンと、還流処理を施していない酸化チタン(Sol-N TiO2)と、光触媒を添加しない場合(UVのみ)についてのメチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【図5】実施例1(Sol-R Cu-A)、比較例1(Sol-R Cu-N)の銅ドープ酸化チタンと、還流処理を施した酸化チタン(Sol-R TiO2)についてのメチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【図6】メチレンブルーの光触媒への吸着量が平衡に到達した際の光触媒1.0g当たりのメチレンブルーの吸着量を示すグラフである。
【図7】実験例、比較例2の銅ドープ酸化チタン、還流処理を施していない酸化チタンをそれぞれ添加したテレフタル酸水溶液と、光触媒を添加していないテレフタル酸水溶液(Blank)の紫外光照射時間による蛍光強度の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図8】実施例1、比較例1の銅ドープ酸化チタンと還流処理を施した酸化チタンをそれぞれ添加したテレフタル酸水溶液と、光触媒を添加していないテレフタル酸水溶液(Blank)について、紫外光照射時間による蛍光強度の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図9】銅添加量を変えた場合の紫外光照射時間にともなうメチレンブルー濃度の減少率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1:還流処理あり)
以下では、ゾルゲル法により銅ドープ酸化チタンを調製する際に、還流処理を利用して調製する例について説明する。
[ゾルの調製工程]
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)15mlに、銅(II)イソプロポキシド([(CH3)2CHO]2Cu)を加え、マグネティックスターラーを用いて1時間撹拌した。
本実施形態においては、銅(II)イソプロポキシドの添加量をTi:Cu=1000:1(Tiに対するCuの混合比率0.10mol%)とした。
チタンテトライソプロポキシドは空気中の水分と反応しやすいため、窒素を充填させたグローブボックスの中で取り扱った。

【0012】
次いで、上述したチタンテトライソプロポキシドと銅(II)イソプロポキシドの混合溶液を還流処理した。還流処理は、加熱温度を80℃とし、24時間処理した。
還流処理を行った後、処理後の溶液にエタノールを15ml加え、室温で、マグネティックスターラーを使用し3時間撹拌した。
次いで、酸触媒として、塩酸(HCl 1.0×10-2mol/l)を0.08ml加え、ゾル溶液とした。

【0013】
[ゲル化工程]
次に、上記ゾル溶液を乾燥機に入れ、アルコキシドの加水分解と重縮合反応を進行させて乾燥ゲルとした。本実施形態では、乾燥機で約60℃に加熱し、10~15日かけて乾燥させてゲル化した。乾燥ゲルは、粉砕して粉末とする。粉末は茶色がかった白色の粉末として得られる。

【0014】
[水熱処理工程]
次いで、粉末化した乾燥ゲルに水熱処理を施した。具体的には、サンプルの乾燥ゲルの粉末を蒸発皿中で蒸留水に浸漬させ、ホットプレートを用いて、100℃で1時間煮沸した。水熱処理は、乾燥ゲル中に残留する有機物(アルコール等)を蒸発させて除去し、後工程の焼成工程中に有機物が炭化することを抑える目的で行う。

【0015】
[焼成工程]
水熱処理を施した粉末を乾燥機で100℃、3時間乾燥させた後、電気炉を用いてゲル粉末を焼成した。実施形態の焼成条件は、加熱温度500℃、焼成時間2時間である。この焼成処理により、銅がドープされた酸化チタン粉末(Cu-TiO2)を得た。焼成工程は、酸化チタンを結晶化させるための処理である。銅ドープ酸化チタン粉末は茶色がかった白色である。

【0016】
(比較例1:還流処理あり)
比較例1は、酸化チタンにドープする銅元素源として硝酸銅を使用してゾルゲル法により銅ドープ酸化チタンを調製する例である。
[ゾルの調製工程]
チタンテトライソプロポキシド15mlに、硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)を加えて1時間撹拌した。硝酸銅の添加量は、Ti:Cu=1000:1( Tiに対するCuの混合比率0.10mol%)である。
次いで、実施例1と同一の条件、加熱温度80℃、24時間、還流処理を施した。
還流処理後、エタノールを15ml加え、室温で3時間撹拌し、次いで、酸触媒として、塩酸(1.0×10-2mol/l)を0.08ml加え、ゾル溶液とした。

【0017】
[ゲル化工程]
次に、上記ゾル溶液を乾燥機に入れ、約60℃に加熱した状態で10~15日経過させ、乾燥ゲルを得た。
[水熱処理工程]
乾燥ゲルを粉砕して粉末とし、粉末を蒸留水に浸漬させ、ホットプレートを使用し、100℃で1時間煮沸する水熱処理を施した。
[焼成工程]
水熱処理を施した粉末を、乾燥機で100℃、3時間乾燥させた後、電気炉を用いて、加熱温度500℃、焼成時間2時間で焼成することにより、銅がドープされた酸化チタン粉末を得た。
この比較例1におけるゲル化工程、水熱処理工程、焼成工程は、実施例1における条件とまったく同一である。

【0018】
実験例:還流処理なし)
以下では、還流処理を行わずにゾルゲル法によって銅ドープ酸化チタンを調製する方法について説明する。実験例は、銅元素源として、銅(II)イソプロポキシドを使用する場合である。
[ゾルの調製工程]
エタノール15mlに銅(II)イソプロポキシドを加えマグネティックスターラーで6時間撹拌した。
次に、銅(II)イソプロポキシドが添加された溶液を撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)15mlを、数滴ずつゆっくりと加える。銅(II)イソプロポキシドは、Ti:Cu=1000:1となるように添加量を調節して加えた。
次に、酸触媒としてHCl(1.0×10-2mol/l)を0.08ml加えてゾル溶液とした。

【0019】
次に、上記ゾル溶液を60℃の乾燥機に、15~20日程度収容して乾燥ゲルとし、水熱処理を施し、乾燥機で乾燥させた後、電気炉で加熱温度500℃、焼成時間2時間で焼成して、銅ドープ酸化チタン粉末を得た。
この実験例における、[ゲル化工程]、[水熱処理工程]、[焼成工程]は、実施例1、比較例1における各工程と同様である。

【0020】
(比較例2:還流処理なし)
比較例2は、銅元素源として硝酸銅を使用し、還流処理を行わずにゾルゲル法によって銅ドープ酸化チタンを製造する方法である。
[ゾルの調製工程]
エタノール15mlに硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)を加え、6時間撹拌し、この溶液に、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)15mlを加えた。硝酸銅はTi:Cu=1000:1となるように添加量を調節した。
この溶液に、酸触媒としてHCl(1.0×10-2mol/l)を0.08ml加えてゾル溶液とした。

【0021】
次いで、実施例1、比較例1、実験例と同様の[ゲル化工程]、[水熱処理工程]、[焼成工程]を経て、銅ドープ酸化チタン粉末を得た。

【0022】
(評価試験)
[メチレンブルーの濃度の減少率測定]
上述した各方法によって得られたサンプルについて、光触媒作用を評価するため、有機色素として代表的なメチレンブルーの濃度の紫外光照射による減少率を測定した。測定は以下のようにして行った。
(1)メチレンブルーを純水に溶かし、1.0×10-5mol/lに調製する。
(2)前述した方法によって調製した銅ドープ酸化チタン(粉末)5mgをビーカーに入れ、前記メチレンブルー水溶液を50ml注ぐ。
(3)ビーカーに撹拌子を入れ、ビーカーの開口部を透明プラスチックフィルムで覆い、マグネティックスターラーで15分間撹拌する。
(4)紫外光としてブラックライトを照射する。
(5)溶液をマイクロチューブに移し、遠心分離機で5分間遠心分離する。
(6)上澄み液をセルに移し、紫外可視分光光度計を用いて吸光度を測定し、メチレンブルーの濃度を求める。
(4)~(6)の操作を繰り返し、紫外光の照射時間によって、濃度がどのように変化するかを測定する。

【0023】
図1は、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用した実施例1(Sol-R Cu-A)と、実験例(Sol-N Cu-A)の方法によって調製した銅ドープ酸化チタンについて、メチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示す。横軸が紫外光の照射時間である。実施例1は還流処理あり、実験例は還流処理なしの場合である。図1から、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用した場合は、還流処理を施すことによって、メチレンブルーの濃度の減少率が大きく増大し、光触媒作用が活性化されることがわかる。

【0024】
図2は、銅元素源として硝酸銅を使用し、還流処理を施した比較例1(Sol-R Cu-N)と、銅元素源として硝酸銅を使用し、還流処理をしていない比較例2(Sol-N Cu-N)の方法によって得られた銅ドープ酸化チタンについて、メチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示す。
銅元素源として硝酸銅を使用した場合は、還流処理を施したサンプルの方が、メチレンブルーの濃度の減少率が低くなり、還流処理によって光触媒作用の活性化が抑制される結果が得られた。これは、銅(II)イソプロポキシドを使用した場合に還流処理によって光触媒作用が活性化された図1に示す測定結果とは逆の傾向を示す。

【0025】
図3は、参考例として、ゾルゲル法によって調製した銅をドープしていない酸化チタンについて、還流処理を施したもの(Sol-R TiO2)と、還流処理を施していないもの(Sol-N TiO2)について、同様にメチレンブルーの濃度の減少率を測定した結果を示す。
図3は、還流処理を施した場合にメチレンブルーの濃度の減少率が増大し、還流処理が光触媒作用の活性化に有効であることを示している。

【0026】
図4、5は、サンプル相互の光触媒作用を比較するために、上述した試験結果を一つのグラフにまとめて表示したものである。
図4は、還流処理を施していない実験例(Sol-N Cu-A)、比較例2(Sol-N Cu-N)の銅ドープ酸化チタンと、参考例として、還流処理を施していない酸化チタン(Sol-N TiO2)の測定結果を示している。図中でUVのみとあるのは、光触媒を添加しない場合である。
図4に示すように、還流処理を施さない場合には、各サンプルの光触媒作用の差はさほど大きくないが、これらのうちでは銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用したサンプルの光触媒作用が最も大きくなっている。還流処理を施さない場合であっても、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用して銅ドープ酸化チタンを調製する方法は、酸化チタンの光触媒作用を活性化する上で有効であるということができる。

【0027】
図5は、還流処理を施した実施例1(Sol-R Cu-A)、及び比較例1(Sol-R Cu-N)の銅ドープ酸化チタンと、参考例として、還流処理を施した酸化チタン(Sol-R TiO2)について示している。
図5は、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用した銅ドープ酸化チタンの光触媒作用は酸化チタンと比較しても、硝酸銅を使用した銅ドープ酸化チタンと比較しても、顕著に優れていることを示す。すなわち、銅ドープ酸化チタンとして銅(II)イソプロポキシドを銅元素源としてゾルゲル法により調製する方法は、酸化チタンの光触媒作用を活性化させる方法として有効であり、とりわけ還流処理が酸化チタンの光触媒作用を活性化させる上で有効であるということができる。

【0028】
[光触媒の比表面積の測定]
前述した方法によって得られた光触媒について、比表面積を測定した。表1に、各サンプルの比表面積を示す。比表面積は、一般的な測定装置を用いてBET法によって求めた。表中のサンプルの表記は上述した実施例、比較例における表記と同じである(以下同様)。
【表1】
JP0005835706B2_000002t.gif

【0029】
表1に示す測定結果は、銅元素源として硝酸銅を使用したサンプル(Sol-R Cu-N、Sol-N Cu-N)は、銅(II)イソプロポキシドを使用したサンプル(Sol-R Cu-A、Sol-N Cu-A)と比較して比表面積が小さくなる傾向を示す。この傾向は、硝酸銅を使用したサンプルの光触媒作用の活性の低下につながっているものと考えられる。また、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用したものでは還流処理を施すことによって還流処理を施さないものと比較して比表面積が増大するのに対して、硝酸銅を使用したサンプルでは、還流処理を施したサンプルの方が比表面積が小さくなっている。硝酸銅を使用して還流処理を施した場合に光触媒作用が低下した理由の一つと考えられる。

【0030】
[メチレンブルー吸着量の測定]
図6は、メチレンブルーの光触媒への吸着が平衡に到達した際の、光触媒1.0g当たりのメチレンブルーの吸着量を示すグラフである。メチレンブルーの水溶液に前述した光触媒を各々添加し、光を照射しない状態に各サンプルを保持し、吸収スペクトルを時間経過とともに測定する。吸収スペクトルが変化しなくなった時点でメチレンブルーの吸着が平衡に到達したとし、そのときの吸着量を測定した。
図6から、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用し、還流処理を施したサンプル(Sol-R Cu-A)の吸着量が最も大きく、硝酸銅を使用して還流処理を施したサンプル(Sol-R Cu-N)の吸着量が小さいことがわかる。この結果は、銅(II)イソプロポキシドを使用して還流処理を施したサンプルについては光触媒作用が活性化され、硝酸銅を使用して還流処理を施したサンプルでは光触媒作用が減退した結果に関係しているものと考えられる。光触媒のメチレンブルー吸着量の相違は、親水性の違いによるものと考えられ、その結果が光触媒作用にも影響すると考えられる。

【0031】
[蛍光強度の測定]
光触媒による活性作用を調べるため、前述した方法によって調製した光触媒をテレフタル酸水溶液に添加し、紫外光の照射時間によって蛍光強度がどのように変化するかを測定した。光触媒を添加したテレフタル酸水溶液に紫外光を照射すると、光触媒が活性化され、OHラジカルが生成され、2-ヒドロキシテレフタル酸が生成されて2-ヒドロキシテレフタル酸による蛍光が観測される。
図7、8は、紫外光の照射時間によって蛍光強度がどのように変化したかを測定した結果を示す。横軸が紫外光の照射時間、縦軸が蛍光強度を示す。

【0032】
図7は、還流処理を施していない実験例、比較例2による銅ドープ酸化チタン、及び銅をドープしていない酸化チタンと、光触媒を添加していないもの(Blank)についての測定結果を示す。図8は、還流処理を施した実施例1、比較例1による銅ドープ酸化チタン、及び銅をドープしていない酸化チタンと、光触媒を添加していないもの(Blank)についての測定結果を示す。
図7、8から、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用して還流処理を施したサンプルについては、銅(II)イソプロポキシドを使用して還流処理を施さないサンプルと比較して、蛍光強度が増大しており、また、銅(II)イソプロポキシドを使用しない他のサンプルと比較しても蛍光強度の差は顕著である。すなわち、銅元素源として銅(II)イソプロポキシドを使用して還流処理を施したサンプルは、他のサンプルと比較してその光触媒作用が顕著に活性化されているということができる。本実験における蛍光強度は、OHラジカルの発生量に関わり、OHラジカルの発生量は前述した光触媒へのメチレンブルーの吸着量とは無関係で、光触媒作用の活性を反映しているものである。


【0033】
[銅添加量とメチレンブルー濃度の減少率測定]
チタンアルコキシドと銅アルコキシドをTiに対してCuを0、0.05、0.10、0.50mol%それぞれ混合した4種類の銅ドープ酸化チタンのサンプルを調製し、紫外光の照射時間にともなうメチレンブルーの濃度変化を測定した。これらのサンプルは、還流処理を利用してゾルゲル法によって調製したものである。チタンアルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシド(TTIP)を使用し、銅アルコキシドとして銅(II)イソプロポキシドを使用した。なお、Cuを0mol%混合したサンプルとは、銅を添加していない酸化チタンのみからなるサンプルである。
還流処理は80℃で3時間処理し、エタノールを加えて撹拌した後、酸触媒として塩酸(HCl 1.0mol/l)を加えゾル溶液とし、ゾル溶液を60℃で反応させてゲル化した。次いで、水熱処理し、500℃で3時間焼成して銅ドープ酸化チタンの結晶粉末からなるサンプルを得た。

【0034】
図9に測定結果を示す。紫外光の照射時間にともなうメチレンブルー濃度の減少率を測定する方法は前述した方法と同様である。図9においてcontrolとあるのは、銅ドープ酸化酸化チタンも酸化チタンも添加しない条件で、紫外線光照射にともなうメチレンブルー濃度の減少率を測定した結果を示す。
図9に示す測定結果は、銅添加量を0.50mol%とした銅ドープ酸化チタンに比べて、銅添加量を0.05mol%あるいは0.10mol%とした銅ドープ酸化チタンの方が触媒活性が高いことを示している。すなわち、銅ドープ酸化チタンの触媒活性は、銅添加量を増やすことにより、酸化チタン中の銅イオンの密度が高くなり、再結合中心の数が増大して電子トラップされやすくなると考えられるが、実際は、銅ドープ酸化チタンの銅添加量をある程度以下に抑える方が、触媒活性を高める上で有効であることを示している。本測定結果から、銅添加量の好適範囲はおよそ0.05mol%~0.10mol%である。このように、銅添加量をある程度抑える方が銅ドープ酸化チタンの触媒活性が活性化される理由は、銅添加量を抑えることにより酸化チタン中に銅が均一に分布し、これによって効率的な電子トラップと電子-正孔再結合抑制を可能にするものと考えられる。

【0035】
なお、上述した各実施形態においては、銅元素源として、銅アルコキシド材料の一つである銅(II)イソプロポキシドを使用した。銅(II)イソプロポキシド以外の銅アルコキシド材料も銅(II)イソプロポキシドと同様の作用を備えるから、銅元素源として銅(II)イソプロポキシド以外の銅アルコキシドを使用して、上記実施形態と同様の作用を有する銅ドープ酸化チタンを製造することが可能である。
同様に、上記実験においては、チタン源としてチタンテトライソプロポキシドを使用したが、チタンテトライソプロポキシド以外のチタンアルコキシド材料をチタン源として使用することも可能である。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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