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明細書 :抗がん剤の作用増強剤及びその利用、並びにがん患者の予後推定用バイオマーカー及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5515071号 (P5515071)
登録日 平成26年4月11日(2014.4.11)
発行日 平成26年6月11日(2014.6.11)
発明の名称または考案の名称 抗がん剤の作用増強剤及びその利用、並びにがん患者の予後推定用バイオマーカー及びその利用
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  31/711       (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  38/43        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 45/00 ZNA
A61K 31/713
A61K 31/711
A61K 31/7105
A61K 37/48
A61P 35/00
A61P 43/00 121
請求項の数または発明の数 2
全頁数 28
出願番号 特願2010-526553 (P2010-526553)
出願日 平成21年8月27日(2009.8.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年7月10日 http://www3.interscience.wiley.com/journal/122508411/abstractを通じて発表
国際出願番号 PCT/JP2009/004162
国際公開番号 WO2010/023917
国際公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
優先権出願番号 2008223461
優先日 平成20年9月1日(2008.9.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月24日(2012.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】高橋 雅英
【氏名】加藤 琢哉
【氏名】吉川 史隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】平井 裕彰
参考文献・文献 Journal of Cellular Physiology,2007,Vol.211,p.513-521
Oncogene,2005,Vol.24,p.6729-6736
日本癌学会学術総会記事,2006,Vol.65th,p.160(P-254)
調査した分野 A61K45/00~45/08
31/00~31/80
38/00~38/58
48/00
39/00~39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サイクロフォスファミド、フルオロウラシル(5-FU)、エトポシド、ドキソルビシン、ブレオマイシン及びマイトマイシンからなる群より選択される抗がん剤の作用増強剤であって、前記抗がん剤と併用され、且つRFP(RET finger protein)遺伝子の発現を抑制する化合物を有効成分とする作用増強剤。
【請求項2】
前記化合物が以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、請求項1に記載の作用増強剤:
(a)RFP遺伝子を標的とするsiRNA;
(b)RFP遺伝子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)RFP遺伝子の転写産物を標的とするアンチセンス核酸;
(d)RFP遺伝子の転写産物を標的とするリボザイム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤の作用を増強させる薬剤及びその用途、並びにがん患者の予後推定用バイオマーカー及びその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)は細胞の増殖、分化、生存を制御することでがんの発生を制御している(非特許文献1、2)。過去の研究によって、HDACsの阻害剤(HDACi)が他の抗がん剤との併用時に著しい相乗効果を発揮することが分かっている(非特許文献2、3)。しかしながら、HDACiが相乗効果を発揮する際の分子メカニズムは完全には理解されていない。
【0003】
系統的なin vitroの研究によって、HDACiが細胞増殖の停止、分化、細胞死、および腫瘍血管新生の阻害などを腫瘍細胞特異的に誘導することが分かってきた(非特許文献2、3、4)。このin vitroでの研究をもとに、いくつかのHDACiが臨床治験を受けており、そのうちの一つであるsuberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)は米国食品医薬品局(FDA)による認可を受けて皮膚T細胞性リンパ腫の治療に用いられている(非特許文献4、5)。また、単独での作用に加えて、HDACiが幅広い作用の抗がん剤との併用で相乗効果を発揮することも報告されている(非特許文献2、4)。さらに、シスプラチンや5-FU、エトポシド、ドキソルビシン等を含めた化学療法剤は、細胞障害作用機構の一つとして活性酸素種(ROS)の産生を誘導することが知られている(非特許文献6~9)。抗酸化酵素あるいはその関連遺伝子の発現変化が、がん細胞の化学療法剤に対する抵抗性を調節していることが報告されているが(非特許文献10~13)、このことは、上記の化学療法剤によるROS産生誘導が細胞障害活性に重要であるという知見を支持する。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yang, XJ. and Seto, E. The Rpd3/Hda1 family of lysine deacetylases: from bacteria and yeast to mice and men. Nat Rev Mol Cell Biol. 9(3):206-18 (2008)
【非特許文献2】Bolden, JE., Peart, MJ. and Johnstone, RW. Anticancer activities of histone deacetylase inhibitors. Nat Rev Drug Discov. 5(9):769-84 (2006).
【非特許文献3】Minucci, S. and Pelicci, PG. Histone deacetylase inhibitors and the promise of epigenetic (and more) treatments for cancer. Nature Reviews Cancer. 6(1):38-51 (2006).
【非特許文献4】Xu, WS., Parmigiani, RB. and Marks, PA. Histone deacetylase inhibitors: molecular mechanisms of action. Oncogene. 26(37):5541-52 (2007).
【非特許文献5】Marks, PA. and Breslow, R. Dimethyl sulfoxide to vorinostat: development of this histone deacetylase inhibitor as an anticancer drug. Nature Biotechnology. 25(1):84-90 (2007).
【非特許文献6】Miyajima, A. et al. Role of reactive oxygen species in cis-dichlorodiammineplatinum-induced cytotoxicity on bladder cancer cells. Br J Cancer. 76(2):206-10 (1997).
【非特許文献7】Kurosu, T., Fukuda, T., Miki, T. and Miura, O. BCL6 overexpression prevents increase in reactive oxygen species and inhibits apoptosis induced by chemotherapeutic reagents in B-cell lymphoma cells. Oncogene. 22(29):4459-68 (2003).
【非特許文献8】Hwang, IT. et al. Drug resistance to 5-FU linked to reactive oxygen species modulator 1. Biochem Biophys Res Commun. 359(2):304-10 (2007).
【非特許文献9】Ravid, A. et al. 1,25-Dihydroxyvitamin D3 enhances the susceptibility of breast cancer cells to doxorubicin-induced oxidative damage. Cancer Res. 59(4):862-7 (1999).
【非特許文献10】Godwin, AK. et al. High resistance to cisplatin in human ovarian cancer cell lines is associated with marked increase of glutathione synthesis. Proc Natl Acad Sci U S A. 89(7):3070-4 (1992).
【非特許文献11】Yokomizo, A. et al. Cellular levels of thioredoxin associated with drug sensitivity to cisplatin, mitomycin C, doxorubicin and etoposide. Cancer Res. 55(19):4293-6 (1995).
【非特許文献12】Sasada, T. et al. Redox control of resistance to cis-diamminedichloroplatinum (II) (CDDP): protective effect of human thioredoxin against CDDP-induced cytotoxicity. J Clin Invest. 97(10):2268-76 (1996).
【非特許文献13】Powis, G. and Kirkpatrick, DL. Thioredoxin signaling as a target for cancer therapy. Curr Opin Pharmacol. 7(4):392-7 (2007).
【非特許文献14】Halkidou K, Gaughan L, Cook S, Leung HY, Neal DE, Robson CN. (2004). Upregulation and nuclear recruitment of HDAC1 in hormone refractory prostate cancer. Prostate 59: 177-189
【非特許文献15】Glozak MA, Seto E. (2007). Histone deacetylases and cancer. Oncogene 26: 5420-5432
【非特許文献16】Takahashi M, Inaguma Y, Hiai H, Hirose F. (1988). Developmentally regulated expression of a human "finger"-containing gene encoded by the 5' half of the ret transforming gene. Mol Cell Biol. 4:1853-6
【非特許文献17】Tezel, G. et al. M. (1999). Different nuclear/cytoplasmic distributions of RET finger protein in different cell types. Pathol. Int. 49: 881-886
【非特許文献18】Takahashi, M. and Cooper, G. M.: ret transforming gene encodes a fusion protein homologous to tyrosine kinases. Mol. Cell. Biol. 7, 1378-1385 (1987)
【非特許文献19】Shimono, Y., Murakami, H., Hasegawa, Y. and Takahashi, M.: RFP is a transcriptional repressor and interacts with enhancer of polycomb that has dual transcriptional functions. J. Biol Chem. 275: 39411-39419. (2000)
【非特許文献20】Shimono, Y., Murakami, H., Kawai, K., Wade, P.A., Shimokata, K. and Takahashi, M.: Mi-2 associates with BRG1 and RET finger protein at the distinct regions with transcriptional activating and repressing abilities. J. Biol. Chem. 278: 51638-51645 (2003)
【非特許文献21】Shimono, K., Shimono, Y., Shimokata, K., Ishiguro, N., and Takahashi, M.: Microspherule protein 1, Mi-2β, and RET finger protein associate in the nucleolus and up-regulate ribosomal gene transcription. J. Biol. Chem. 280: 39436-39447 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
がん治療においては、複数の抗がん剤を併用することが多い。抗がん剤の併用は、治療効果の向上を目的に行われるものの、時として重篤な副作用をもたらす。これは、現在使用されている抗がん剤の多くが増殖の早い細胞を標的としており、がん細胞以外の正常な細胞に対しても細胞傷害作用を発揮することに起因する。
【0006】
本発明は以上の背景の下、抗がん剤の作用を増強する手段を提供し、或いはがん患者の予後を把握するために有用なバイオマーカー及びその用途を提供し、がんの治療成績の向上に資することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これまでに、細胞内の酸化状態を制御するThioredoxinやTBP-2の発現をHDACiが変化させることが明らかになっている。この事実に鑑み本発明者らは、HDACiが細胞内の抗酸化機構を制御することによって、がん細胞を抗がん剤感受性にしているとの仮説を立てた。この仮説を検証するため、(1)ヒトの腫瘍で高発現がみとめられる、(2)細胞の増殖、分化、生存を制御するという特徴(Halkidou K, Gaughan L, Cook S, Leung HY, Neal DE, Robson CN. (2004). Upregulation and nuclear recruitment of HDAC1 in hormone refractory prostate cancer. Prostate 59: 177-189(非特許文献14);Glozak MA, Seto E. (2007). Histone deacetylases and cancer. Oncogene 26: 5420-5432(非特許文献15))をもつHDAC1と、(1)癌細胞株で高発現している、(2)生体内での発現が限局しているという特徴(Takahashi M, Inaguma Y, Hiai H, Hirose F. (1988). Developmentally regulated expression of a human "finger"-containing gene encoded by the 5' half of the ret transforming gene. Mol Cell Biol. 4:1853-6(非特許文献16);Tezel, G. et al. M. (1999). Different nuclear/cytoplasmic distributions of RET finger protein in different cell types. Pathol. Int. 49: 881-886(非特許文献17))に加え、(3)そのノックアウトマウスが重篤な表現型を示さないという特徴(未発表データ)を持つ(RET finger protein)に注目し、鋭意検討した。その結果、HDAC1がThioredoxin Binding Protein-2(TBP-2)の発現を負に制御することで、がん細胞の酸化ストレスに対する抵抗性を亢進させていることが判明した。また、HDAC1がRFP及び転写因子NF-Yで構成される蛋白複合体によってTBP-2遺伝子のプロモーター上に配置されることが見出された。また、RNAiを用いたRFPの発現抑制が、その蛋白複合体の崩壊を招き、結果としてがん細胞におけるシスプラチン(抗がん剤、酸化ストレスの誘導剤でもある)感受性を顕著に増大させることが明らかとなった。これらの事実は、RFPが、がん細胞に抗がん剤耐性を獲得させる重要な制御因子であることを意味するとともに、RFPの発現又は機能を抑制すれば、抗がん剤の作用の増強を介して、がんの治療成績向上がもたらされることを示唆する。
【0008】
一方、RFPの高発現が、ヒトの大腸癌におけるTBP-2の発現低下や、大腸癌患者の予後不良と相関することが明らかとなった。このことは、抗がん剤を用いる際にRFPの発現又は機能を抑制するという治療戦略の有効性を裏付けるとともに、がん細胞におけるRFPの発現レベルを調べれば抗がん剤に対する耐性を判定でき、その判定結果は治療方針の決定(効果的な治療法の選択など)、予後改善、患者の生活の質(QOL)の向上等に貢献する有益な情報になることを意味する。更なる検討の結果、RFPの発現が子宮体がんの予後不良と相関することが明らかとなった。興味深いことに、RFPの高発現を認める場合、より積極的な術式による施術を採用することが予後の改善に繋がるとの知見が得られた。以上のように、がん患者の予後推定用のバイオマーカー(指標)としてRFPが有用であることが示された。特に子宮体がんでは、RFPの発現が術式を決定する際の有益な指標になることが示唆された。
【0009】
本発明は主として上記知見及び成果に基づくものであり、次の通りである。
[1]酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤の作用増強剤であって、RFP(RET finger protein)遺伝子の発現又はRFPの作用を抑制する化合物を有効成分とする作用増強剤。
[2]前記化合物が以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、[1]に記載の作用増強剤:
(a)RFP遺伝子を標的とするsiRNA;
(b)RFP遺伝子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)RFP遺伝子の転写産物を標的とするアンチセンス核酸;
(d)RFP遺伝子の転写産物を標的とするリボザイム。
[3]酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤と併用される、[1]又は[2]に記載の作用増強剤。
[4]酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤の作用を増強する方法であって、標的がん細胞内において、RFP遺伝子の発現又はRFPの作用を抑制するステップを含む方法。
[5][1]又は[2]に記載の作用増強剤を投与するステップと、酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤を投与するステップと、を含むがん治療法。
[6]生体から分離されたがん細胞内のRFP発現量を調べるステップと、
前記ステップの結果に基づき、酸化ストレス誘導能を有する抗癌剤に対する前記がん細胞の耐性を判定するステップと、を含む抗がん剤耐性検査法。
[7]RFPからなる、がん患者の予後推定用バイオマーカー。
[8]がんが大腸癌又は子宮体がんである、[7]に記載の予後推定用バイオマーカー。
[9]がん患者から分離されたがん細胞内のRFP発現量を指標とした、がん患者の予後推定法。
[10]がん細胞内のRFP発現量が多いことが、予後が不良であることを示す、[9]に記載の予後推定法。
[11]がんが大腸癌又は子宮体がんである、[9]又は[10]に記載の予後推定法。
[12]抗RFP抗体からなる、がん患者の予後推定用試薬。
[13]がんが大腸癌又は子宮体がんである、[12]に記載の予後推定用試薬。
[14][12]又[13]に記載の試薬を含む、がん患者の予後推定用キット。
[15]がんが大腸癌又は子宮体がんである、[14]に記載の予後推定用キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作用増強剤を併用すれば、シスプラチンをはじめとする、酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤の作用が高められる。これによって抗がん剤の使用量や抗がん剤の種類(2種類以上の抗がん剤を併用する場合)を低減することができる。また、治療成績の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】HDAC1とRFPの機能的な相互作用。(a)HDACi処理が細胞の酸化ストレスに与える影響。HeLa細胞をTSA(500nM)で3時間前処理する群としない群とに分け、それぞれの群で記述した濃度のH2O2で10時間処理を行った。細胞の生死判別はWST-1法で行った。H2O2無処理時の生存指数を1とした相対値を示した。(b) siRNAによる内因性HDAC1のノックダウン。コントロールもしくはHDAC1のsiRNAを導入したHeLa細胞から得た蛋白のサンプルを、抗HDAC1抗体を用いたウエスタンブロットで解析した。抗βアクチン抗体を蛋白量のコントロールとして用いた。siHDAC1を導入した細胞でHDAC1の発現抑制が観察された。(c). (d) コントロールもしくはHDAC1のsiRNAを導入したHeLa細胞を記述した濃度のc:H2O2(10時間)d:シスプラチン(24時間)で処理を行った。細胞の生死判定および計算はaと同様の方法で行った。HDAC1のノックダウン細胞ではコントロールよりも処理による細胞の生存指数の減少度が大きい。(e) siRNAによる内因性RFPのノックダウン。コントロールもしくはRFPのsiRNAを導入したHeLa細胞から得た蛋白のサンプルを、抗RFP抗体を用いたウエスタンブロットで解析した。抗βアクチン抗体を蛋白量のコントロールとして用いた。siRFPを導入した細胞でRFPの発現抑制が観察された。(f), (g) コントロールもしくはRFPのsiRNAを導入したHeLa細胞を記述した濃度のf:H2O2(10時間)g:シスプラチン(24時間)で処理を行った。細胞の生死判定および計算はaと同様の方法で行った。RFPのノックダウン細胞ではコントロールよりも処理による細胞の生存指数の減少度が大きい。
【図2】HDAC1とRFPの間の結合ドメインの同定。(a)HDAC1はRFPと相互作用する。HEK293細胞をHDAC1-V5及びFlag-RFPで一過性にコトランスフェクトした。細胞ライセートを抗V5抗体(上のパネル)又は抗Flag抗体で免疫沈降し、免疫沈降物をウエスタンブロットで解析した。抗HA抗体をモック(mock)とした。(b)内在性HDAC1及びRFPを抗HDAC1(上のパネル)及び抗RFP抗体(下のパネル)でそれぞれ免疫沈降した。免疫沈降物を抗HDAC1抗体及び抗RFP抗体を用いたウエスタンブロットで解析した。(c)HDAC1とRFPの相互作用に必要なRFPのドメイン。左のパネル:RFPの模式図。リングBボックス(Ring-B-box)ドメイン、コイルドコイル(Coild-coil)ドメイン及びRfpドメインを示した。各ドメインに対応するcDNAにFlagタグ配列を付加した。右のパネル:HEK293細胞をHDAC1-V5及びFlagタグRFP欠失コンストラクトで一過性にコトランスフェクトした後、抗V5抗体で免疫沈降し、抗Flag抗体又は抗V5抗体で免疫ブロットした。pFlagベクターをコントロールに用いた。(d)HDAC1とRFPの間の相互作用に必要なHDAC1の領域。左のパネル:HDAC1の模式図。HDAC1の各領域に対応するcDNA断片をV5タグで標識化した。HEK293細胞をFlag-RFP及びV5タグHDAC1欠失コンストラクトで一過性にコトランスフェクトした後、抗Flag抗体で免疫沈降し、抗V5抗体又は抗Flag抗体で免疫ブロットした。矢頭は共沈降断片を示す。pcDNAベクターをコントロールに用いた。
【図3】TBP-2はHDAC1およびRFPの共通の標的遺伝子であり、がん細胞のH2O2およびシスプラチンに対する感受性亢進の原因となる。(a), (b) HDAC1及びRFPのノックダウンによってTBP-2の発現が上昇する。コントロール、HDAC1もしくはRFPのsiRNAを導入したHeLa細胞から得たRNAまたは蛋白のサンプルを、RT-PCR(a)またはウェスタンブロット(b)で解析した。RT-PCR、ウエスタンブロットともにHDAC1またはRFPのノックダウンによってTBP-2の発現が上昇していることが観察された。(c) TBP-2の過剰発現。HeLa細胞にV5タグを付加したTBP-2の発現ベクターを導入し、ウエスタンブロットで発現を確認した。(d), (e) TBP-2の過剰発現ががん細胞のH2O2およびシスプラチンに対する感受性に与える影響。HeLa細胞にV5タグを付加したTBP-2の発現ベクターを導入し、記述した濃度のH2O2(10時間)(d)、シスプラチン(24時間)(e)で処理を行った。細胞の生死判別はWST-1法で行った。H2O2またはシスプラチン無処理時の生存指数を1とした相対値を示した。TBP-2を過剰発現させた細胞ではコントロールよりも処理による細胞の生存指数の減少度が大きい。(f) コントロール、HDAC1、RFPもしくはTBP-2のsiRNAを記述した組み合わせで導入したHeLa細胞から得た蛋白のサンプルをウエスタンブロットで解析した。HDAC1またはRFPのノックダウンで上昇したTBP-2の発現がsiTBP-2によって抑制されることを示した。(g), (h) fに示した組み合わせでsiRNAを導入したHeLa細胞を記述した濃度のH2O2(10時間)(g)、シスプラチン(24時間)(h)で処理を行った。細胞の生死判定および計算はd, eと同様の方法で行った。HDAC1もしくはRFPのノックダウンによって減少した薬剤投与時の生存指数がTBP-2のノックダウンによって部分的に解消されている。
【図4】HDAC1及びRFPは大腸癌及び乳がん細胞株におけるTBP-2の発現を制御し、細胞のH2O2またはシスプラチンに対する感受性に影響を与える。(a) 大腸癌細胞株(SW480, HT-29) および乳がん細胞株(MDA-MB-231)にコントロール、HDAC1、RFPのsiRNAを導入し、その細胞から得られた蛋白をウエスタンブロットで解析した。それぞれの細胞株で、HDAC1またはRFPをノックダウンするとTBP-2の発現が上昇することが分かった。(b), (c) 大腸癌細胞株(SW480, HT-29) および乳がん細胞株(MDA-MB-231)にコントロール、HDAC1、RFPのsiRNAを導入し、記述した濃度のH2O2(10時間)(c)、シスプラチン(24時間)(d)で処理を行った。細胞の生死判別はWST-1法で行った。H2O2またはシスプラチン無処理時の生存指数を1とした相対値を示した。HDAC1またはRFPのノックダウン細胞ではコントロールよりも処理による細胞の生存指数の減少度が大きい。
【図5】NF-YCとの相互作用を介してRFPはHDC1をTBP-2プロモーターに配置する。(a) 上の図はTBP-2プロモーターを模式的に示す。クロマチン免疫沈降法に用いた二つの領域を示した。下の図はHDAC1とRFPがTBP-2プロモーターに配置されることを示す。免疫沈降には、記述した各抗体を用いた。TBP-2プロモーター領域の検出にはPCRを利用した。図中の「投入」は総投入DNAのPCR増幅産物を表す。(b) RFPによって、ヒストンH3及びH4を脱アセチル化するHDAC1がTBP-2プロモーターに配置される。shNC1細胞及びshRFP30細胞から調製した架橋クロマチンを免疫沈降した。aに記載した方法でPCRを行った。(c) RFPはNF-YCと相互作用する。HEK293細胞をFlag-RFP及びNF-YC-V5で一過性にコトランスフェクトした。細胞ライセートを抗V5抗体(上)又は抗Flag抗体(下)で免疫沈降し、免疫沈降物をウエスタンブロットで解析した。矢印はV5-NF-YCを示す。矢頭はFlag-RFPを示す。抗HA抗体をモック(mock)とした。(d) 内在性RFPはNF-YCと相互作用する。抗RFP抗体又はコントロールIgGとの免疫沈降物を抗RFP抗体及び抗NF-YC抗体を用いてウエスタンブロットで解析した。(e) NF-YCによるHDAC1とRFPの共免疫沈降。HEK293細胞をFlag-HDAC1、Flag-RFP及びNF-YC-V5でコトランスフェクトした後、抗V5抗体で免疫沈降した。免疫沈降物をウエスタンブロット解析に供した。抗HA抗体をモック(mock)とした。(f) NF-YはTBP-2プロモーターの遺伝子近傍領域に結合する。抗NF-YB抗体を用いて免疫沈降分析した。aに記載した方法でPCRを行った。(g) HeLa細胞における、siRNAによる内在性NF-YCのノックダウン。NF-YC siRNAでトランスフェクトしたHeLa細胞の全細胞ライセートをNF-YC抗体を用いたウエスタブロット解析に供した。(h) NF-YCはHDAC1及びRFPをTBP-2プロモーターに配置する。コントロール又はNF-YC siRNAでトランスフェクトした細胞から調製した架橋クロマチンを抗HDAC1抗体又は抗RFP抗体で免疫沈降した。aに記載した方法でPCRを行った。(i) TBP-2プロモーター上に形成されるHDAC1/RFP/NF-YC複合体を模式的に示す。
【図6】RFPはHDAC1/RFP/NF-YC複合体の形成を介在する。(a)HDAC1、RFP及びNF-YCをゲル濾過カラムに共分画した。HeLa細胞抽出液をSuperose 6ゲル濾過クロマトグラフィーで分離し、各画分をSDS-PAGEに供した。続いて、抗HDAC1抗体、抗RFP抗体、及び抗NF-YC抗体を用い免疫ブロットを行った。分子量マーカーの溶出位置を上に示した。(b)RFPの発現が複合体の形成を促進する。HEK293細胞をNF-YC-V5、HDAC1-myc及びFlag-RFPでコトランスフェクトした後、抗V5抗体で免疫沈降した。免疫沈降物をウエスタンブロットで解析した。(c)RNAiでよるRFPを抑制すると複合体の形成が阻害される。NF-YC-V5をコントロール又はRFP siRNAとともにHeLa細胞にコトランスフェクトした。細胞ライセートを抗V5抗体で免疫沈降した後、ウエスタンブロットで解析した。抗HA抗体をモック(mock)とした。
【図7】RFPの多量体化。(a)RFPはホモオリゴマーを形成する。HEK293細胞をGFP-RFP及びFlag-RFPでコトランスフェクトした後、抗Flag抗体で免疫沈降した。続いて抗Flag抗体及び抗GFP抗体を用い免疫ブロットを行った。抗HA抗体をモック(mock)とした。WCLは全細胞ライセートを表す。(b)リングBボックス(Ring-B-box)及びコイルドコイル(Coiled-coil)が多量体化に必要である。HEK293細胞をGFP-RFP及びFlagタグを有するRFP欠失コンストラクトでコトランスフェクトした後、抗Flag抗体で免疫沈降した。pFagベクターをコントロールに用いた。矢頭はFlagタグを有するRFPコンストラクトを示す。
【図8】RFPは新規のがん治療の標的である。(a), (b), (c) RFPのノックダウンはin vivoにおける腫瘍の抗がん剤感受性を増強する。ヌードマウスの皮下にshNC1(コントロール)、shRFP23、shRFP26の3つの細胞株を移植した。腫瘍の体積が50mm3に達した時点で、マウスをシスプラチン治療群と無治療群に無作為に分けた。用量1mg/kgのシスプラチン(治療群)もしくは溶媒(生理食塩水:無治療群)を4日毎にマウスの腹腔内に投与した。(a) 代表的な腫瘍の写真。RFPノックダウン細胞株の治療群では無治療群に比べて顕著に腫瘍の体積が小さいことが見て取れる。(b) 腫瘍の成長曲線。4日毎に腫瘍径を測定し、体積を計算してグラフ化した。RFPノックダウン細胞株の治療群では無治療群に比べて顕著に腫瘍の成長が遅くなっている。(c) bの1日目と21日目の無治療群の体積を100%とした時の治療群の体積の割合をグラフ化した。shNC1では1日目に無治療群に対して約92%だったものが21日目には77%に減少したのに対し、shRFP23、shRFP26ではそれぞれ95%が38%、112%が42%まで減少した。RFPノックダウン細胞株を用いた群でシスプラチンの治療効果が大幅に増強された。(d) 大腸癌検体におけるRFPの発現の代表的な写真を載せた。茶色に染まっている部分がRFP陽性部分を示している。染色された細胞が<10%をRFP陰性、≧10%をRFP陽性と判定した。(e) RFPは大腸癌においてTBP-2の発現を抑制する。腫瘍組織を抗RFP抗体(赤)及び抗TBP-2抗体(緑)で染色した。細胞核をDAPI (4’,6-diamino-2-phenylindole: 青)でラベルした。RFPの発現が見られる細胞ではTBP-2の発現が低いことがわかる。(f) RFPの発現は大腸癌患者の予後不良と相関する。115例の大腸癌患者の全生存期間をRFPの発現の有無で階層化し、Kaplan-Meier法で解析した。log-rank test でRFPの発現が予後不良と有意に相関することが分かった。
【図9】RFPの発現と子宮体がんの予後不良との相関を示すグラフ。RFP陰性群とRFP陽性群の全生存期間を比較した。(a)患者群全体での比較。(b)ステージIの患者群での比較。(c)ステージII~IVの患者群での比較。
【図10】RFPの発現と子宮体がんの術式による予後の違いを示すグラフ。広範子宮全摘術(Radical hysterectomy)を経験した患者群と子宮全摘出術(Total hysterectomy)を経験した患者群の全生存期間を比較した。(a)患者群全体での比較。(b)RFP陰性群での比較。(c)RFP陽性群での比較。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(抗がん剤の作用増強剤及びその用途)
本発明の第1の局面は抗がん剤の作用増強剤(以下、「本発明の薬剤」と称する)に関する。本発明の薬剤は、酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤の作用を増強する。別の言い方をすれば、本発明の薬剤は、標的のがん細胞において酸化ストレス抵抗性が亢進すると効き目が弱くなる又は効かなくなる抗がん剤の作用を増強する。本発明において「抗がん剤の作用を増強する」又は「抗がん剤の作用増強」とは、抗がん剤の抗がん作用を高めることをいう。本発明の薬剤を抗がん剤と併用することによって、がんの治療成績が向上する。ここでの「治療成績の向上」には、(1)治療効果の増大、(2)奏功率ないし有効率の向上、(3)副作用の低減ないし回避が含まれる(本発明によれば、この中の少なくとも一つが達成される)。抗がん剤の例は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等のプラチナ製剤、サイクロフォスファミド、フルオロウラシル(5-FU)、エトポシド、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンである。

【0013】
本発明者らの検討の結果、Thioredoxin結合タンパク質2(TBP-2)の発現を負に制御することで、がん細胞の酸化ストレスに対する抵抗性をHDAC1が亢進させていることが明らかとなった。HDAC1の当該作用を妨げ、がん細胞の抗がん剤感受性を高めるため、本発明の薬剤はTBP-2遺伝子プロモーター上へのHDAC1の配置に必要なことが判明したRFPを標的とする。詳しくは、本発明の薬剤はRFP遺伝子の発現又はRFPの作用を抑制する化合物を有効成分とする。尚、二つの用語「抑制」と「阻害」は、その意味するところが重複し、しばしば置換可能に用いられる。そこで本明細書では、前後の文脈から区別が特に必要な場合を除き、統一して用語「抑制」を使用する。

【0014】
RFPとは、リングフィンガー構造を有する核蛋白であり、RETと融合蛋白を形成することにより癌蛋白として活性化される(Takahashi, M. and Cooper, G. M.: ret transforming gene encodes a fusion protein homologous to tyrosine kinases. Mol. Cell. Biol. 7, 1378-1385 (1987)(非特許文献18); 非特許文献16)。RFPは強力な転写抑制活性を有し、種々の核蛋白と相互作用する(Shimono, Y., Murakami, H., Hasegawa, Y. and Takahashi, M.: RFP is a transcriptional repressor and interacts with enhancer of polycomb that has dual transcriptional functions. J. Biol Chem. 275: 39411-39419. (2000)(非特許文献19); Shimono, Y., Murakami, H., Kawai, K., Wade, P.A., Shimokata, K. and Takahashi, M.: Mi-2 associates with BRG1 and RET finger protein at the distinct regions with transcriptional activating and repressing abilities. J. Biol. Chem. 278: 51638-51645 (2003)(非特許文献20); Shimono, K., Shimono, Y., Shimokata, K., Ishiguro, N., and Takahashi, M.: Microspherule protein 1, Mi-2β, and RET finger protein associate in the nucleolus and up-regulate ribosomal gene transcription. J. Biol. Chem. 280: 39436-39447 (2005)(非特許文献21))。癌細胞株でRFPが高発現することが報告されている。但し、癌組織におけるRFPの発現状態は明らかとなっていない。RFP遺伝子の配列(配列番号1)、RFPのmRNAの配列(配列番号2)及びRFPのアミノ酸配列(配列番号3)を配列表に示す。上記の通り、RFPを標的としたノックアウトマウスは重篤な表現型を示さないことから、RFPを標的とすることは安全性の点からも好ましい。また、複数種のヒトの腫瘍または調査したほとんどの腫瘍由来培養細胞株において高発現が認められる(未発表データ及び非特許文献16)ことから、広範な腫瘍に対して作用を発揮することが期待できる。

【0015】
本発明の有効成分となる、RFP遺伝子の発現を抑制する化合物とは、RFP遺伝子の発現過程(転写、転写後調節、翻訳、翻訳後調節を含む)を抑制する化合物である。当該化合物の例は次の通りである。尚、本発明における「発現の抑制」は一過的抑制及び恒常的抑制のいずれでもよい。
(a)RFP遺伝子を標的とするsiRNA
(b)RFP遺伝子を標的とするsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト
(c)RFP遺伝子の転写産物を標的とするアンチセンス核酸
(d)RFP遺伝子の転写産物を標的とするリボザイム

【0016】
上記(a)及び(b)は、いわゆるRNAi(RNA interference;RNA干渉)による発現抑制に利用される化合物である。換言すれば、上記(a)又は(b)の化合物を有効成分とする本発明の薬剤によればRNAiによりRFPの発現を抑制することができる。RNAiは真核細胞内で引き起こすことが可能な、配列特異的な転写後遺伝子抑制のプロセスである。哺乳動物細胞に対するRNAiでは、標的mRNAの配列に対応する配列の短い二本鎖RNA(siRNA)が使用される。通常、siRNAは21~23塩基対である。哺乳動物細胞は二本鎖RNA(dsRNA)の影響を受ける2つの経路(配列特異的経路及び配列非特異的経路)を有することが知られている。配列特異的経路においては、比較的長いdsRNAが短い干渉性のRNA(即ちsiRNA)に分割される。他方、配列非特異的経路は、所定の長さ以上であれば配列に関係なく、任意のdsRNAによって惹起されると考えられている。この経路ではdsRNAが二つの酵素、即ち活性型となり翻訳開始因子eIF2をリン酸化することでタンパク質合成のすべてを停止させるPKRと、RNAase L活性化分子の合成に関与する2',5'オリゴアデニル酸シンターゼが活性化される。この非特異的経路の進行を最小限に留めるためには約30塩基対より短い二本鎖RNA(siRNA)を使用することが好ましい(Hunter et al. (1975) J Biol Chem 250: 409-17; Manche et al. (1992) Mol Cell Biol 12: 5239-48; Minks et al. (1979) J Biol Chem 254: 10180-3; 及び Elbashir et al. (2001) Nature 411: 494-8を参照されたい)。

【0017】
標的特異的なRNAiを生じさせるためには標的遺伝子のmRNA配列の一部と相同なセンスRNA及びこれに相補的なアンチセンスRNAからなるsiRNAを細胞内に導入するか、又は細胞内で発現させればよい。上記(a)は前者の方法に対応する化合物であり、同様に上記(b)は後者の方法に対応する化合物である。

【0018】
標的遺伝子(本発明の場合はRFP遺伝子)を標的とするsiRNAは、通常、当該遺伝子のmRNAの配列における連続する領域と相同な配列からなるセンスRNAとその相補配列からなるアンチセンスRNAがハイブリダイズした二本鎖RNAである。ここでの「連続する領域」の長さは通常15~30塩基、好ましくは18~23塩基、より好ましくは19~21塩基である。

【0019】
末端に数塩基のオーバーハングを有する二本鎖RNAが高いRNAi効果を発揮することが知られている。そこで本発明においても、そのような構造のsiRNAを採用することが好ましい。オーバーハングを形成する塩基の長さは特に限定されないが、好ましくは2塩基(例えばTT、UU)である。

【0020】
修飾したRNAからなるsiRNAを用いることにしてもよい。ここでの修飾の例としてホスホロチオエート化、修飾塩基(例えば蛍光標識塩基)の使用が挙げられる。

【0021】
siRNAの設計及び調製は常法で行うことができる。siRNAの設計には通常、標的配列に固有の配列(連続配列)が利用される。尚、適当な標的配列を選択するためのプログラム及びアルゴリズムが開発されている。

【0022】
RFP遺伝子を標的としたsiRNAの配列の例を以下に列挙する。
5'-GAGTTACTCGGGAGGGAAA-3'(配列番号4。後述の実施例で使用した配列)
5'-AACTCTTAGGCCTAACCCAGA-3'(配列番号5。Krutzfeldt M, Ellis M, Weekes DB, Bull JJ, Eilers M, Vivanco MD, Sellers WR, Mittnacht S. (2005). Selective ablation of retinoblastoma protein function by the RET finger protein. Mol Cell. 18(2):213-24.を参照)
5'-AAGAGAGGCUCAGUUAUACUC-3'(配列番号6。Krutzfeldt M, Ellis M, Weekes DB, Bull JJ, Eilers M, Vivanco MD, Sellers WR, Mittnacht S. (2005). Selective ablation of retinoblastoma protein function by the RET finger protein. Mol Cell. 18(2):213-24.を参照)
5'-CCCUAUGAGUGGGAUUGAU-3'(配列番号7。Fukushige S, Kondo E, Gu Z, Suzuki H, Horii A.(2006).RET finger protein enhances MBD2- and MBD4-dependent transcriptional repression. Biochem Biophys Res Commun. 351(1):85-92. Epub 2006 Oct 10.を参照)
5'-GACTCAGTGTGCAGAAAAG-3'(配列番号8。Zha J, Han KJ, Xu LG, He W, Zhou Q, Chen D, Zhai Z, Shu HB.(2006). The Ret finger protein inhibits signaling mediated by the noncanonical and canonical IkappaB kinase family members. J Immunol. Jan 15;176(2):1072-80.を参照)
5'-AGAACCAGCTCGACCATT-3'(配列番号9。Townson SM, Kang K, Lee AV, Oesterreich S.(2006). Novel role of the RET finger protein in estrogen receptor-mediated transcription in MCF-7 cells. Biochem Biophys Res Commun. Oct 20;349(2):540-8. Epub 2006 Aug 22.を参照)

【0023】
上記(b)の「siRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト」とは、それを細胞に導入すると細胞内でのプロセスによって所望のsiRNA(標的遺伝子に対するRNAiを引き起こすsiRNA)が生ずる核酸性分子をいう。当該核酸コンストラクトの一つの例はshRNA(short hairpin RNA)である。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAがループ構造部を介して連結された構造(ヘアピン構造)を有し、細胞内でループ構造部が切断されて二本鎖siRNAとなり、RNAi効果をもたらす。ループ構造部の長さは特に限定されないが、通常は3~23塩基である。

【0024】
核酸コンストラクトの別の例は、所望のsiRNAを発現し得るベクターである。このようなベクターとしては、後のプロセスによってsiRNAに変換されるshRNAを発現する(shRNAをコードする配列がインサートされた)ベクター(ステムループタイプ又はショートヘアピンタイプと呼ばれる)、センスRNAとアンチセンスRNAを別々に発現するベクター(タンデムタイプと呼ばれる)が挙げられる。これらのベクターは当業者であれば常法に従い作製することができる(Brummelkamp TR et al.(2002) Science 296:550-553; Lee NS et al.(2001) Nature Biotechnology 19:500-505; Miyagishi M & Taira K (2002) Nature Biotechnology 19:497-500; Paddison PJ et al.(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-1448; Paul CP et al.(2002) Nature Biotechnology 19 :505-508; Sui G et al.(2002) Proc Natl Acad Sci USA 99(8):5515-5520; Paddison PJ et al.(2002) Genes Dev. 16:948-958等が参考になる)。現在、種々のRNAi用ベクターが利用可能である。このような公知のベクターを利用して本発明のベクターを構築することにしてもよい。この場合、所望のRNA(例えばshRNA)をコードするインサートDNAを用意した後、ベクターのクローニングサイトに挿入し、RNAi発現ベクターとする。shRNAの具体例を配列表の配列番号110に示す。配列番号10は、RFPを標的とするshRNAをコードする一本鎖オリゴヌクレオチド(センス鎖)の配列である。

【0025】
尚、標的遺伝子に対するRNAi作用を発揮するsiRNAを細胞内で生じさせるという機能を有する限り、ベクターの由来や構造は限定されるものではない。従って、各種ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクター等)、非ウイルスベクター(リポソーム、正電荷型リポソーム等)等を用いることができる。ベクターに利用可能なプロモーターの例を示すと、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーターである。これらのプロモーターはRNAポリメラーゼIII系のプロモーターであり、高い発現効率を期待できる。

【0026】
上記(c)はアンチセンス法による発現抑制に利用される化合物である。換言すれば、上記(c)の化合物を有効成分とする本発明の薬剤によれば、アンチセンス法によりRFPの発現を抑制することができる。アンチセンス法による発現阻害を行う場合には例えば、標的細胞内で転写されたときに、RFPをコードするmRNAの固有の部分に相補的なRNAを生成するアンチセンス・コンストラクトが使用される。このようなアンチセンス・コンストラクトは例えば、発現プラスミドの形態で標的細胞に導入される。一方、アンチセンス・コンストラクトとして、標的細胞内に導入されたときに、RFPをコードするmRNA/又はゲノムDNA配列とハイブリダイズしてその発現を阻害するオリゴヌクレオチド・プローブを採用することもできる。このようなオリゴヌクレオチド・プローブとしては、好ましくは、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対して抵抗性であるものが用いられる。

【0027】
アンチセンス核酸としてDNA分子を使用する場合、RFPをコードするmRNAの翻訳開始部位(例えば-10~+10の領域)を含む領域に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。

【0028】
アンチセンス核酸と、標的核酸との間の相補性は厳密であることが好ましいが、多少のミスマッチが存在していてもよい。標的核酸に対するアンチセンス核酸のハイブリダイズ能は一般に両核酸の相補性の程度及び長さの両方に依存する。通常、使用するアンチセンス核酸が長いほど、ミスマッチの数が多くても、標的核酸との間に安定な二重鎖(又は三重鎖)を形成することができる。当業者であれば、標準的な手法を用いて、許容可能なミスマッチの程度を確認することができる。

【0029】
アンチセンス核酸はDNA、RNA、若しくはこれらのキメラ混合物、又はこれらの誘導体や改変型であってもよい。また、一本鎖でも二本鎖でもよい。塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格部分を修飾することで、アンチセンス核酸の安定性、ハイブリダイゼーション能等を向上させることなどができる。また、アンチセンス核酸に、細胞膜輸送を促す物質(例えば Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556; Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652; PCT Publication No. W088/09810, published December 15, 1988を参照されたい)や、特定の細胞に対する親和性を高める物質などを付加してもよい。
アンチセンス核酸は例えば市販の自動DNA合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ社等)を使用するなど、常法で合成することができる。核酸修飾体や誘導体の作製には例えば、Stein et al.(1988), Nucl. Acids Res. 16:3209やSarin et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451等を参照することができる。

【0030】
標的細胞内におけるアンチセンス核酸の作用を高めるために、pol IIやpol IIIといった強力なプロモーターを利用することができる。即ち、このようなプロモーターの制御下に配置されたアンチセンス核酸を含むコンストラクトを標的細胞に導入すれば、当該プロモーターの作用によって十分な量のアンチセンス核酸の転写を確保できる。
アンチセンス核酸の発現は、哺乳動物細胞(好ましくはヒト細胞)で機能することが知られている任意のプロモーター(誘導性プロモーター又は構成的プロモーター)によって行うことができる。例えば、SV40初期プロモーター領域 (Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウィルスの3'末端領域由来のプロモーター(Yamamoto et al., 1980, Cell 22:787-797)、疱疹チミジン・キナーゼ・プロモーター(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)等のプロモーターを使用することができる。

【0031】
本発明の一態様では、リボザイムによる発現抑制を利用する(上記(d)の化合物の場合)。部位特異的認識配列でmRNAを開裂させるリボザイムを用いて標的mRNAを破壊することもできるが、好ましくはハンマーヘッド・リボザイムを使用する。ハンマーヘッド・リボザイムの構築方法については例えばHaseloff and Gerlach, 1988, Nature, 334:585-591を参考にすることができる。
アンチセンス法を利用する場合と同様に、例えば安定性やターゲット能を向上させることを目的として、修飾されたオリゴヌクレオチドを用いてリボザイムを構築してもよい。効果的な量のリボザイムを標的細胞内で生成させるために、例えば、強力なプロモーター(例えばpol IIやpol III)の制御下に、当該リボザイムをコードするDNAを配置した核酸コンストラクトを使用することが好ましい。

【0032】
本発明の一態様では、RFPの作用を抑制する化合物を有効成分とする。本発明者らの検討の結果(後述の実施例を参照)、RFPがHDAC1との間の物理的かつ機能的な相互作用を介して、HDAC1による酸化ストレス感受性の制御に関与することが判明した。当該知見に基づき、この態様の薬剤はRFPとHDAC1の相互作用を抑制し、抗がん剤の作用の増強を図る。RFPとHDAC1の相互作用を抑制できる限り、化合物の種類は問わない。本発明者らの検討の結果、HFAC1のN末端側がRFPのコイルドコイルドメイン及びRfpドメインに結合すること判明した。従って、当該結合を阻害できる化合物を有効成分として用いるとよい。例えば、RFPのコイルドコイルドメイン又はRfpドメインに特異的に結合する抗体を採用することができる。抗体の種類や形態は特に問わない。ポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれでもよい。また、キメラ抗体(例えばヒトとマウスのキメラ)、ヒト化抗体、ヒト抗体等を用いることもできる。更には、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFvなどの抗体断片を用いることもできる。
有効成分としての抗体は、HDAC1若しくはRFP又はこれらの一部(好ましくは相互作用に関与する部位)を抗原として利用した免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などによって調製することができる。

【0033】
HDAC1のN末端側に対してRFPと競合的に結合する化合物を有効成分としてもよい。このような化合物の例を挙げると、RFPのコイルドコイルドメイン様ポリペプチド、Rfpドメイン様ポリペプチドである。
尚、抗体自体を有効成分とするのではなく、細胞内で所望の抗体を発現可能なベクターを有効成分としてもよい。抗体以外の化合物についても同様である。

【0034】
本発明の薬剤の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0035】
製剤化する場合の剤型も特に限定されない。剤型の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤である。
本発明の薬剤には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の薬剤中の有効成分量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%~約95重量%の範囲内で設定する。
本発明の薬剤はその剤型に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。
核酸コンストラクトを有効成分とした場合(例えばRNAiを利用する態様)、in vivo投与に限らず、ex vivo投与を採用することもできる。

【0036】
本発明の薬剤を投与する「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では本発明の医薬はヒトに対して適用される。
投与量は患者の症状、年齢、性別、及び体重などによって異なるが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールの設定においては、患者の症状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。

【0037】
本発明の薬剤は抗がん剤と併用される。即ち、本発明の薬剤と抗がん剤を併用投与することになる。典型的には、本発明の薬剤と所定の抗がん剤を用意し、両者を対象に投与する。この場合、対象に対して同時又は所定の時間的間隔を置いて両剤が投与(適用)されることになる。ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。従って、両剤を混合した後に対象へ投与する等、両者の投与が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、片方の投与後、速やかに他方を投与する等、両剤の投与が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。好ましくは、本発明の薬剤の作用が発揮されるまでに要する時間を考慮し、本発明の薬剤を投与した後、所定の時間をおいて抗がん剤を投与する。ここでの所定の時間は例えば1時間~72時間(具体例は48時間)である。このように本発明の薬剤の投与を先行させると、本発明による作用が発揮されやすくなり、良好な治療結果がもたらされる。
尚、本発明の薬剤と抗がん剤を混合した配合剤を用意し、これを対象に投与することにしてもよい。

【0038】
本発明の薬剤と抗がん剤を併用投与すると、標的がん細胞内においてRFP遺伝子の発現又はRFPの作用が抑制される。これによって、HDAC1によるTBP-2の発現抑制が抑制ないし解除され、その結果、標的がん細胞の酸化ストレス感受性が上昇する。このようにして抗がん剤が効きやすい状態、即ち抗がん剤への耐性が低下した状態が形成されることから、抗がん剤による治療効果が向上する。

【0039】
本発明の薬剤には様々な癌への適用が期待される。本発明の薬剤の標的となり得るがんとして、食道癌、口腔癌、上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、肝細胞癌、胆管細胞癌、肺癌、前立腺癌、腎癌、膀胱乳頭癌、前立腺癌、尿道扁平上皮癌、骨肉腫、軟骨肉腫、滑液膜肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、乳癌、乳房肉腫、子宮上皮内癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮腺癌、子宮肉腫、卵巣癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、甲状乳頭腺癌、甲状腺濾胞癌、急性骨髄性白血病、急性前髄性白血病、急性骨髄性単球白血病、急性単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性未分化性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病を例示できる。

【0040】
併用する抗がん剤は、酸化ストレス誘導能を有する限り、特に限定されない。抗がん剤を例示するとシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等のプラチナ製剤、サイクロフォスファミド、フルオロウラシル(5-FU)、エトポシド、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンである。抗がん剤を2種以上併用することも可能である。抗がん剤の投与量は、それを単独で使用する場合の使用量(即ち、通常の使用量)に準ずる。但し、本発明の薬剤との併用によって抗がん剤の作用の増強が期待できることから、通常の投与量よりも低い投与量に設定してもよい。尚、当業者であれば患者の病状や年齢、性別、体重などを考慮して「通常の使用量」を設定することができる。

【0041】
(抗がん剤耐性検査法)
本発明者らの検討の結果、RFPの高発現が、ヒトの大腸癌におけるTBP-2の発現低下や、大腸癌患者の予後不良と相関することが判明した(後述の実施例を参照)。この知見に基づき本発明の第2の局面は、RFP遺伝子の発現量を利用した抗がん剤耐性検査法(以下、「本発明の検査法」と称する)を提供する。本発明の検査法を行うと、がん細胞の抗がん剤耐性を判定することができる。判定結果は例えば治療方針の決定(効果的な治療法の選択など)に利用される。判定結果を利用することによって治療成績の向上、予後改善、患者の生活の質(QOL)の向上などがもたらされる。このように本発明の検査法は、がん治療に極めて有用な情報を提供する。

【0042】
本発明の検査法では次のステップが行われる。即ち、生体から分離されたがん細胞内のRFP発現量を調べるステップ(検出ステップ)と、前記ステップの結果に基づき、酸化ストレス誘導能を有する抗癌剤に対する前記がん細胞の耐性を判定するステップ(判定ステップ)である。

【0043】
検出ステップではまず、生体から分離されたがん細胞を用意する。「生体より分離された」とは、被検癌細胞が存在する生体組織の一部を摘出することによって、被検癌細胞がその由来の生体と完全に隔離されている状態をいう。この条件を満たす限り、周囲の細胞とともに組織を形成した状態のがん細胞(即ち組織片の状態)であっても、周囲の細胞から分離された状態のがん細胞であってもよい。前者については例えば生検組織診(バイオプシー)を行う際の要領で細胞を調製すればよく、後者については例えば細胞診を行う際の要領で細胞を調製すればよい。

【0044】
続いて、用意したがん細胞内のRFP発現量を調べる。RFP発現量は通常、コントロール(比較対照)との比較に基づいて算出される。コントロールには、予めRFP発現量が判明している各種がん細胞や、被検がん細胞を生体より採取する際、被検がん細胞に混在して採取される正常細胞を用いることができる。RFP発現量を厳密に定量することは必須でなく、コントロールとの比較を通して被検がん細胞の抗がん剤に対する耐性を評価可能となる程度にRFP発現量を検出できればよい。尚、通例に従い、被検がん細胞にRFPの発現が認められることをRFP陽性又はRFPポジティブとも表現し、被検がん細胞にRFPの発現が認められないことをRFP陰性又はRFPネガティブとも表現する。免疫組織化学によって被検がん細胞のRFP発現量を検出する場合(詳細は後述の通り)、例えば10%以上の被検がん細胞に染色性が認められたとき(即ち、染色された細胞の割合が10%以上のとき)をRFP陽性(又はRFPポジティブ)とする。陽性と陰性を分ける境界値(染色された細胞の割合で表される)は検出法や検出条件などに応じて適宜設定すればよい。例えば5%~30%の間に境界値を設定することができる。

【0045】
RFP発現量はタンパク質レベル又はmRNAレベルで検出される。高い精度を求めるのであれば前者の方がよい。RFP発現量をタンパク質レベルで検出する場合、即ちRFP発現量としてRFPタンパク質量を調べる場合、これに限定されるものではないが、ウエスタンブロット法や免疫組織化学(免疫染色)を利用するとよい。免疫組織化学によれば、被検がん細胞の形態や分布状態なども同時に調べることができ、付加的な情報も同時に得られる。
免疫組織化学ではRFPを特異的に認識する抗体(抗RFP抗体)を使用し、当該抗体の結合性(結合量)を指標としてRFPタンパク質量を調べる。抗RFP抗体を使用した免疫組織化学は例えばABC(Avidin-Biotin Complex)法、PAP(Peroxydase-anti-Peroxydase Complex)法、LAB(Linked Avidin-Biotin)法、LSAB(Linked Streptavidin-Biotin)法等で行うことができる。これらの各方法についての標準的なプロコールは周知である(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画を参照)。

【0046】
免疫組織化学に使用する抗RFP抗体の種類や由来などは特に限定されない。好ましくはモノクローナル抗体を使用するが、十分な特異性でRFPを検出可能である限り、オリゴクローナル抗体(数種~数十種の抗体の混合物)又はポリクローナル抗体を使用することもできる。Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv抗体などの抗体断片を使用することにしてもよい。抗RFP抗体は免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。尚、文献「Shimono, Y. et al. RET finger protein is a transcriptional repressor and interacts with enhancer of polycomb that has dual transcriptional functions. J Biol Chem. 275(50):39411-9 (2000)」には抗RFP抗体(ウサギポリクローナル)の調製法及びその使用例の記述があり参考となる。

【0047】
以下、免疫組織化学の方法・手順の一例を示す。
(1)固定・パラフィン包埋
生体(剖検症例の場合は死体)より採取した組織をホルマリンやパラフォルムアルデヒド等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコールで脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィンで包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3~5μm)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えて凍結標本を用いる場合もある。
(2)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する。
(3)前処理(抗原賦活)
必要に応じて抗原賦活のために酵素処理、加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。
(4)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(5)非特異的反応阻害
切片をウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミンを含有させた抗体溶液を使用して次の一次抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(6)一次抗体反応
適当な濃度に希釈した抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分~数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(7)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼが頻用される。ペルオキシダーゼを結合させた2次抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分~数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(8)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(9)核染色
マイヤーのヘマトキシリンを数秒~数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(10)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂やグリセリン、ゴムシロップなどで封入する。

【0048】
RFP発現量をmRNAレベルで調べる場合のmRNAの検出/測定にはRT-PCR(Molecular Cloning, Third Edition,8.46,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、ノザンブロット法(Molecular Cloning, Third Edition,7.42,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、ドットブロット法(Molecular Cloning, Third Edition,7.46,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、DNAチップ(DNAアレイ)を用いた方法、in situハイブリダイゼーションなどを利用できる。
当業者であればRFPの配列(NCBIのデータベース、Accession: RFPNM_006510、DEFINITION: Homo sapiens tripartite motif-containing 27 (TRIM27), mRNA.(配列番号2))を基に各方法に適した核酸プライマー又は核酸プローブを常法で設計することができる。

【0049】
判定ステップでは、検出ステップの結果、即ちRFP発現量に基づいて、酸化ストレス誘導能を有する抗癌剤に対するがん細胞の耐性を判定する。以下、RFP発現量に基づく評価の具体例を示す。

【0050】
RFP発現量と抗がん剤耐性とが関連付けられた複数の評価区分を予め設定しておく。そして、検出ステップで得られたRFP発現量に基づき、被検がん細胞が該当する評価区分を決定する。評価区分の設定に関する具体例として、RFPの発現の有無に注目した例(例1)と、RFPの発現量の程度に注目した例(例2)を以下に示す。尚、区分名:当該区分に関連付けられるRFP発現量:当該区分に関連付けられる評価結果の順で記載する。
<例1>
区分1:RFP陽性である:抗がん剤耐性である
区分2:RFP陰性である:抗がん剤感受性である
<例2>
区分1:RFPの発現を認めず:抗がん剤感受性である
区分2:RFPの弱い発現を認める:抗がん剤に対する耐性は低い
区分3:RFPの中程度の発現を認める:抗がん剤に対する耐性は中程度である
区分4:RFPの強い発現を認める:抗がん剤に対する耐性は高い

【0051】
評価区分の数、及び各評価区分に関連付けられるRFP発現量及び評価結果はいずれも上記の例に何らとらわれることなく、予備実験等を通して任意に設定することができる。尚、本発明における判定・評価は、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。

【0052】
上記の通り、本発明の検査法による判定結果の結果を利用して治療方針を決定することができる。一例を示せば、「抗がん剤耐性である」との判定結果や「抗がん剤に対する耐性は高い」との判定結果が得られた場合、抗がん剤単独では所望の治療効果を発揮できないと予測できる。このようなときには本発明の薬剤を抗がん剤と併用投与し、抗がん剤の作用を増強することが有効な治療方針となる。一方で、「抗がん剤感受性である」との判定結果や「抗がん剤に対する耐性は低い」との判定結果が得られた場合、抗がん剤だけでも期待される治療効果を発揮できるとの予測が可能である。このようなときには、抗がん剤を単独投与することが治療方針の選択肢の一つとなる。但し、このような場合においても、抗がん剤の作用を増強することで治療効果を更に向上させるべく、本発明の作用増強剤を併用投与することにしてもよい。

【0053】
(予後推定用バイオマーカー及びその用途)
本発明者らの検討の結果、RFPの高発現が大腸癌患者や子宮体がん患者の予後不良と相関することが判明した(後述の実施例を参照)。この知見に基づき本発明の第3の局面は、RFPからなる、がん患者の予後推定用マーカーを提供する。当該バイオマーカーはがん患者の予後を把握する上で有用である。また、術式を決定する際の指針にもなる。例えば、子宮体がんの患者から採取した検体(がん細胞)においてRFPの発現を認めた場合(例えば免疫染色で陽性と判断した場合)、より積極的な術式を採用することが好ましいと判定することが可能である。より積極的な術式としては広範子宮全摘術、リンパ説郭清を挙げることができる。

【0054】
この局面では、上記バイオマーカーの用途として、がん患者の予後推定法も提供される。本発明の予後推定法によれば、がん患者の予後推定に有益な情報が得られる。当該情報は例えば治療方針の決定(効果的な治療法の選択など)に利用される。判定結果を利用することによって治療成績の向上、予後改善、患者の生活の質(QOL)の向上などがもたらされる。

【0055】
以下、この局面の発明の詳細を説明するが、第1の局面又は第2の局面と共通する事項については、第1の局面又は第2の局面での説明を援用することにする。本明細書において「がん患者の予後推定用バイオマーカー」とは、がん患者の予後推定の指標となる生体分子のことをいう。「がん」の種類は特に限定されるものではない。但し、大腸癌又は子宮体がんを罹患した患者の予後推定において本発明のバイオマーカーは特に有用である。

【0056】
本発明の予後推定法では本発明のバイオマーカーを判定指標に用いる。具体的にはがん患者から分離されたがん細胞内のRFP発現量を指標として、がん患者の予後を推定する。より具体的には、がん患者から分離されたがん細胞内のRFP発現量を検出するステップ(検出ステップ)及び、検出結果に基づき予後を推定するステップ(予後推定ステップ)を実施する。ここでの検出ステップは、上記第2の局面の検出ステップと同様に実施すればよい。尚、がん患者の例は大腸癌又は子宮体がんを罹患した患者である。

【0057】
予後推定ステップでは、がん細胞内のRFP発現量を指標として予後を推定する。基本的には、RFP発現量が多いと予後が不良であるとの判断基準が採用される。以下、RFP発現量に基づく評価の具体例を示す。

【0058】
RFP発現量と予後とが関連付けられた複数の評価区分を予め設定しておく。そして、検出ステップで得られたRFP発現量に基づき、被検がん細胞が該当する評価区分を決定する。評価区分の設定に関する具体例として、RFPの発現の有無に注目した例(例1)と、RFPの発現量の程度に注目した例(例2)を以下に示す。尚、区分名:当該区分に関連付けられるRFP発現量:当該区分に関連付けられる評価結果の順で記載する。
<例1>
区分1:RFP陽性である:予後が悪い
区分2:RFP陰性である:予後が良い
<例2>
区分1:RFPの発現を認めず:予後が良い
区分2:RFPの弱い発現を認める:予後が比較的良い
区分3:RFPの中程度の発現を認める:予後が比較的悪い
区分4:RFPの強い発現を認める:予後が悪い

【0059】
評価区分の数、及び各評価区分に関連付けられるRFP発現量及び評価結果はいずれも上記の例に何らとらわれることなく、予備実験等を通して任意に設定することができる。尚、本発明における判定・評価は、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。

【0060】
本発明は更に、がん患者の予後推定用試薬及びがん患者の予後推定用キットも提供する。本発明の試薬は抗RFP抗体からなる。抗RFP抗体の種類や由来については、第2の局面における対応する説明を援用する。抗RFP抗体として標識化抗体を使用すれば、標識量を指標に結合抗体量を直接検出することが可能である。従って、より簡便な検査法を構築できる。その反面、標識物質を結合させた抗RFP抗体を用意する必要があることに加えて、検出感度が一般に低くなるという問題点がある。そこで、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法、二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法など、間接的検出方法を利用することが好ましい。ここでの二次抗体とは、抗RFP抗体に特異的結合性を有する抗体であって例えばウサギ抗体として抗RFP抗体を調製した場合には抗ウサギIgG抗体を使用できる。ウサギやヤギ、マウスなど様々な種の抗体に対して使用可能な標識二次抗体が市販されており(例えばフナコシ株式会社やコスモ・バイオ株式会社など)、本発明の試薬に応じて適切なものを適宜選択して使用することができる。

【0061】
標識物質の例は、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素などの酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)及びユーロピウムなどの蛍光物質、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウム誘導体などの化学発光物質、NADなどの補酵素、ビオチン、並びに131I及び125Iなどの放射性物質である。

【0062】
一態様では、本発明の試薬はその用途に合わせて固相化されている。固相化に用いる不溶性支持体は特に限定されない。例えばポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂や、ガラス等の水に不溶性の物質からなる不溶性支持体を用いることができる。不溶性支持体への抗体の担持は物理吸着又は化学吸着によって行うことができる。

【0063】
本発明のキットは主要構成要素として本発明の試薬を含む。検査法を実施する際に使用するその他の試薬(緩衝液、ブロッキング用試薬、酵素の基質、発色試薬など)及び/又は装置ないし器具(容器、反応装置、蛍光リーダーなど)をキットに含めてもよい。また、標準試料としてRFPをキットに含めることが好ましい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
【実施例】
【0064】
HDACiが細胞内の抗酸化機構を制御することによってがん細胞を抗がん剤感受性にしているとの仮説の下、以下の実験を施行した。
1.材料及び方法
(1)プラスミド
pcDNA3-HDAC1-Flagは川口博士(愛知県心身障害者コロニー)より供与された。全長NF-YA、NF-YB、NF-YC、HDAC1、HDAC1欠失断片、及びTBP-2 cDNAをpcDNA3.1/V5-His-TOPOベクターにクローニングした。操作は取り扱い説明書に従った。pcDNA3.1/V5-His-HDAC1から切り出したHDAC1 cDNAをpcDNA3.1/myc-Hisベクターに挿入した。pFlag-RFPコンストラクトについては記述の通りである(参考文献20)。RFP cDNAをpEGFP-C1ベクターに挿入した。
【実施例】
【0065】
(2)RNAi
HDAC1 siRNAはDhamacon社から、siRFP, siTBP-2, siNF-YCはQIAGEN社から購入した。siRNAはLipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いて細胞内に導入した。shRNAを利用したノックダウンのためにRFPを標的とするshRNAをコードする一本鎖オリゴヌクレオチドおよびその相補配列を合成した(以下にセンス鎖を示す)。
shRFP: 5’- GATCGAGTTACTCGGGAGGGAAATTCAAGAGATTTCCCTCCCGAGTAACTCTTTTTTGGAAA -3’(配列番号10)
この相補的なオリゴヌクレオチド対をpSilencer3.1-H1 neo vector (Ambion)に挿入し、shRNA発現ベクターとして用いた。
【実施例】
【0066】
(3)shRNA安定発現株の作製
HeLa細胞に上記のshRNA発現ベクターをLipofectamine 2000を用いて導入し、ネオマイシンで2週間選択を行った。
【実施例】
【0067】
(4)細胞生存率の計測
8 x 103の細胞を96穴プレートにまき、24時間後にH2O2(10時間)またはシスプラチン(24時間)を記述した濃度で処理を行った。生存率の計測はWST-1法(Roche)を用いて行った。グラフは未処理の細胞の値を1とした相対値で示している。
【実施例】
【0068】
(5)RT-PCR
siRNAでトランスフェクトしたHeLa細胞からRNeasy Mini Kit (キアゲン)を用いて全RNAを調製した。Superscript II (インビトロジェン)を用いてcDNA転写物を調製した。RT-PCRにはHDAC1特異的プライマー(センス:5’- CTCCTGTTTTTTTCAGGCTCC-3’(配列番号11)、アンチセンス:5’- AGGAGAAGACAGACAGAGGGC-3’(配列番号12))、RFP特異的プライマー(センス:5’-TGCTCGACTGCGGCCATAAC-3’(配列番号13)、アンチセンス:5’-TCGGTGCGCAGCTGCTTTAC-3’(配列番号14))、TBP-2特異的プライマー(センス:5’- TGAGATGGTGATCATGAGACC -3’(配列番号15)、アンチセンス:5’- GTATTGACATCCACCAGATCC -3’(配列番号16))GAPDH特異的プライマー(センス:5’-GAAGGTGAAGGTCGGAGTCAA-3’(配列番号17)、アンチセンス:5’-GAGATGATGACCCTTTTGGCTC-3’(配列番号18))を用いた。
【実施例】
【0069】
(6)免疫沈降及びウエスタンブロット
細胞を氷冷PBSで2回洗浄した後、プロテアーゼインヒビターを含有する溶解バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.4, 120 mM NaCl, 5 mM MgCl2, 0.8% Nonidet P-40, 10% glycerol, 1mM DTT and 1 mM PMSF)で溶解した。ライセートを超音波処理した後、各抗体で免疫沈降した。精製した正常ウサギ抗体又は抗HAタグ抗体をコントロールに用いた。電気泳動による分離及びウエスタンブロットは既述の方法(参考文献20)に従った。ウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットにはRelia Blot(Bethyl Laboratories)を使用した。
(7)クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ
既述の方法に従ってクロマチン免疫沈降アッセイを行った(参考文献28)。簡単に説明すると、ホルムアルデヒドで架橋したクロマチンを超音波処理し、得られたクロマチン断片を抗HDAC1抗体、抗アセチル化H3抗体、抗アセチル化H4抗体、抗RFP抗体又は抗NFYB抗体で免疫沈降した。精製した正常ウサギ又はマウスIgGをコントロールに用いた。5M NaClを終濃度で0.2Mとなるように添加した後、65℃で8時間インキュベートして脱架橋した。精製DNA及び全細胞DNAをPCR(32~37サイクル)で増幅した。
【実施例】
【0070】
(8)In vivoにおける抗がん剤治療モデル
コントロールもしくはRFPのshRNAの安定発現株を、7週齢のメスのヌードマウスの背部に移植した。腫瘍の体積が50mm3に達した時点でマウスをシスプラチン治療群と無治療群に無作為に分けた。用量1mg/kgのシスプラチンもしくは溶媒(生理食塩水:コントロール)を4日毎にマウスの腹腔内に投与した。腫瘍の体積は、ノギスを用いて腫瘍径を測定し、以下の式で計算した。
体積=(長径 x 短径 x 短径)/2
【実施例】
【0071】
(9)免疫組織化学
今回の実験では、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した大腸癌の組織切片を用いた。標本をキシレン中で脱パラフィン処理し、段階的に希釈したエタノールに順次浸けることで親水化させた。Protein Blocking Agent(UltraTech HRP Streptavidin-Biotin Detection System, Beckman Coulter)を用いて非特異的なシグナルの抑制処理を行った。さらに、3%過酸化水素水で内因性ペルオキシダーゼの不活性化処理を行った。0.5%NP-40を含むクエン酸緩衝液(pH7.0)中に浸け、121℃、10分間オートクレーブをかけて抗原の賦活化を行った。サンプルを抗RFPウサギポリクローナル抗体と反応させた後に、ビオチン化したヤギの二次抗体を反応させた。さらに、ペルオキシダーゼを付加したストレプトアビジンを反応させ、3, 3′-diaminobenzidine tetrahydrochloride(DAB)を用いて発色させた。茶色の染色が10%以上の細胞で見られる標本をRFP陽性と判定した。
統計解析ソフトStat Viewを用いて、Kaplan-Meier法によってRFPの発現と大腸癌患者の予後との関連性を検討した。
【実施例】
【0072】
(10)免疫蛍光染色
上述の大腸癌組織標本をキシレン中で脱パラフィン処理をし、段階的に希釈したエタノールに順次浸けることで親水化させた。クエン酸緩衝液(pH6.0)中で10分間マイクロウェーブ処理をして抗原を賦活化させた。サンプルを1%BSAで処理することで非特異的なシグナルの検出を抑制した。サンプルに抗RFPウサギポリクローナル抗体および抗TBP-2マウスモノクローナル抗体を反応させた後、Alexa Fluor 594を付加した抗ウサギIgG抗体およびAlexa Fluor 488を付加した抗マウスIgG抗体を反応させた。細胞核を、DAPIを用いて染色した。スライドにマウント剤を乗せて標本とし、共焦点顕微鏡を用いて観察及び撮影を行った。
【実施例】
【0073】
(11)子宮体がんの患者
1992~2007年の間に名古屋大学病院で治療を受けた子宮体がん患者から採取した試料(119検体)をインフォームドコンセントの下、実験に用いた。患者の年齢は28~86歳である(平均年齢57歳)。ネオアジュバンド化学療法を受けた患者は含まれていない。全ての患者は、子宮全摘出術又は広範子宮全摘術と両側卵管卵巣摘出術のいずれかを経験している。また、72名の患者にはリンパ節郭清が行われている。ステージ1998年のFigO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)基準に従って各患者のステージを決定した。ステージIが72名、ステージIIが16名は、ステージIIIが24名、ステージIVが7名であった。組織学的グレードについては世界保健機構の基準に従った。G1が50名、G2が51名、G3が18名であった。
【実施例】
【0074】
2.結果・考察
初めに、HDACiがHeLa細胞の酸化ストレスに対する感受性に影響を与えるかどうかを検討した。代表的なHDACiであるTrichostatin A (TSA)によって処理したHeLa細胞では、酸化ストレスの誘導剤であるH2O2に対する感受性が亢進していることを見出した(図1a)。このHDACiによる感受性の亢進に関わる分子機構を解明するため、HDAC1に着目して研究を進めた。HDAC1をsiRNAでノックダウンすると、H2O2およびシスプラチンの細胞障害作用が著しく亢進した(図1b~d)。このことから、HDACiが、HDAC1の機能阻害を介して酸化ストレス感受性を亢進させている可能性が示唆された。HDAC1によるストレス感受性の制御の分子機構に関しては、p53との相互作用を介したものが推測されるが(参考文献16~19)、今回用いたHeLa細胞ではパピローマウイルスのE6タンパク質によってp53の発現が抑制されているため、他の機構を介して制御されている可能性が高い。
【実施例】
【0075】
以前に本発明者らの研究グループは腫瘍の細胞株で高発現が認められるRFPがHDAC1と相互作用し、細胞内で共局在を示すことを発見している(参考文献20)。このことから、RFPがHDAC1による酸化ストレス感受性の制御に関与するのではないかと考えた。最初にRFPとHDAC1の相互作用ドメインを検討したところ、HDAC1のN末端側がRFPのコイルドコイル(coiled-coil)ドメインおよびRfpドメインに結合することを見出した(図2)。さらに、RFPのノックダウンがHDAC1同様、HeLa細胞のH2O2およびシスプラチンに対する感受性を高めることが判明した(図1b~g)。このことから、RFPとHDAC1が物理的かつ機能的に相互作用していることが示唆された。
【実施例】
【0076】
HDAC1とRFPはどちらも転写抑制活性をもつことが報告されていることから(参考文献1、20、21)、両者がストレス感受性に関与する共通の標的遺伝子の発現を協調的に抑制しているのではないかという仮説を立てた。そのような標的遺伝子を同定するために、コントロールおよびRFPのshort hairpin RNA(shRNA:プラスミドベクターをベースに細胞内で目的のsiRNAを産生)を恒常的に発現するHeLa細胞株を作製し、その両者の遺伝子発現プロファイルを、DNAマイクロアレイを用いて比較した。コントロールshRNAを発現している細胞と比較して、RFP をノックダウンした細胞で発現の上昇している遺伝子のうち、TBP-2に着目した。TBP-2はHDACiの一種であるSAHAで細胞を処理することで発現が上昇することが報告されている(参考文献15)。また、TBP-2はROSを除去する機能を持つThioredoxinと結合してその機能を阻害すること(参考文献22、23)、過剰発現させることで酸化ストレスやシスプラチンに対する感受性を高めること(参考文献4、24)が知られている。RT-PCRやウエスタンブロットの結果から、TBP-2の発現はHDAC1およびRFPによって転写レベルで制御されていることを確認した(図3a,b)。ここで、TBP-2の発現が実際にHeLa細胞においてH2O2およびシスプラチンに対する感受性に影響を与えるかどうかを検討した。HeLa細胞にTBP-2を過剰発現させたところ、著しい感受性の増大が見られた(図3d,e)。このことは、HDAC1やRFPのノックダウンによって引き起こされる感受性の亢進がTBP-2の発現上昇によるものである可能性が示唆している。さらに、siHDAC1もしくはsiRFPによって誘導されるTBP-2の発現が感受性の亢進に寄与しているかどうかを検討した。HDAC1もしくはRFPをノックダウンした細胞において、さらにTBP-2をノックダウンすると、亢進していた感受性が有意に低下した(図3f~h)。これらの結果は、HDAC1やRFPのノックダウンによって起こる感受性の亢進の一部が、TBP-2の発現上昇によって担われていることを示している。
さらに、同様の結果が大腸癌および乳がんの細胞株を用いた際にも観察されることを確認した(図4)。
【実施例】
【0077】
HDAC1とRFPがTBP-2の発現を直接制御しているかどうかをクロマチン免疫沈降法で検討した。その結果、HDAC1およびRFPがTBP-2プロモーターの遺伝子近傍領域に配置されていることを確認した。また、ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、HDAC1とRFPが協調的にTBP-2プロモーターの活性を抑制すること、RFPによる転写抑制がHDACiによって阻害されることを見出した(結果を図示せず)。RFPのノックダウンによってTBP-2の発現が上昇することから、TBP-2プロモーター領域のヒストンのアセチル化が亢進していることが考えられた。RFPノックダウン細胞を用いてクロマチン免疫沈降を行った結果、TBP-2プロモーター領域のヒストンH3およびH4のアセチル化の亢進を確認した(図5b)。また、HDAC1のTBP-2プロモーター領域への配置がRFPの発現抑制により減弱したことから、RFPノックダウンによるヒストンのアセチル化が、HDAC1が配置されなくなったことに起因していると考えた。これらの結果から、RFPがHDAC1をTBP-2プロモーター上に配置し、その脱アセチル化酵素活性を介してTBP-2の発現を抑制していることが強く示唆された。
【実施例】
【0078】
現在までのところ、HDAC1とRFPに関して直接DNAに結合するという報告がないため、HDAC1とRFPは、転写因子などのDNA結合蛋白との相互作用を介してTBP-2プロモーターに配置されるのではないかと考えた。TBP-2プロモーターはその配列中に転写因子であるNF-Y(Nuclear Factor Y)の結合配列を含み、HDACiによってTBP-2の発現が誘導される際にNF-Yが必要となることが報告されている(参考文献15)。このことから、HDAC1およびRFPがTBP-2プロモーターに配置される際に、NF-Yが必要となるのではないかと推測した。NF-YはNF-YA, NF-YB, NF-YCの3つのタンパクで構成される3量体転写因子であることが知られている。今回の実験では、RFPがNF-YCと特異的に結合することを示した(図5c,d)。このことは、HDAC1, RFP, NF-Yが蛋白複合体を形成している可能性を示唆している。この蛋白複合体形成について検討するために、V5タグを付加したNF-YC、Flagタグを付加したHDAC1およびRFPを共にHEK293細胞にトランスフェクションし、V5タグに対する抗体で免疫沈降を行った。結果、HDAC1およびRFPの双方がNF-YCと共沈降した(図5e)。
【実施例】
【0079】
クロマチン免疫沈降法で、実際にNF-YがHDAC1やRFP同様にTBP-2プロモーターに結合していることを確かめた(図5f)。さらに、NF-YCをノックダウンした細胞を用いたクロマチン免疫沈降では、HDAC1とRFPがTBP-2プロモーター上に配置されなくなることがわかった(図5g~h)。これらの結果は、HDAC1, RFP, NF-YがTBP-2プロモーター上で蛋白複合体を形成していることを示している。さらに、ゲル濾過クロマトグラフィーの結果から、HDAC1, RFP, NF-YCが同じフラクション(400kDa前後)に含まれることが明らかになった。このことはこれらの蛋白が複合体を形成しているという考えを支持するものである。
【実施例】
【0080】
図5で示した結果から、RFPがHDAC1-NF-YC間の相互作用を仲介することで複合体形成されている可能性が考えられた。図6b,cでは外因性にRFPを発現させた細胞ではHDAC1-NF-YC間の相互作用が増強し、逆にRFPをノックダウンした細胞では減弱するという、上記の考えと一致した結果が得られた。さらに、この複合体内でのRFPの状態を検討した。RFPは多量体化することが報告されており(参考文献25、26)、今回の実験結果から、その多量体化にRing-B-boxドメイン(RB)およびコイルドコイル(Coiled-coil)ドメイン(CC)が必要であることがわかった(図7b)。ここまでの実験でRFPがHDAC1およびNF-YCと結合するためにRfpドメインが必要となることが分かっていたので、RFPはN末側のRBおよびCCで多量体化し、C末側のRfpドメインでそれぞれHDAC1およびNF-YCと結合してHDAC1-RFP-NF-Y蛋白複合体を形成しているものと考えた(図5i)。
【実施例】
【0081】
さらに、in vivoでの抗がん剤治療のモデルにおけるRFPの発現の影響について検討した。ヌードマウスの皮下にコントロール(shNC1)およびRFP(shRFP23, shRFP26)のshRNAを発現させた細胞株を移植し、体積が50mm3以上になったものに対して、4日毎にシスプラチンを投与して経過を観察した。シスプラチンによる治療は、コントロール群よりもRFPノックダウンの群において強い抗腫瘍効果を発揮した(図8a~c)。
【実施例】
【0082】
最後に、がん患者の検体におけるRFPの発現と予後との関係について検討した。115例の大腸癌の検体を用いてRFPの抗体で免疫染色を行い、RFPの陽性検体の割合を調べた(10%以上の細胞が染色されているものをRFP陽性とした)。その結果、115例中68例(59%)においてRFPの陽性像が観察された(図8d)。さらにRFPとTBP-2の発現を免疫蛍光染色で確認したところ、互いに排他的に発現しており、大腸癌の検体ではRFPの発現している細胞では明らかにTBP-2の発現が減少していることがわかった(図8e)。大腸癌症例についてRFP陽性群と陰性群にわけ、Kaplan-Meier法でそれぞれ群の予後について検討したところ、RFPの発現と低生存率との間に有意な相関がみられた(図8f)。これらの結果から、大腸癌におけるRFPの発現レベルが抗がん剤の効果に影響を与え、さらに予後についても影響を及ぼしているのではないかと考えた。
【実施例】
【0083】
HDACiと抗がん剤の併用による相乗的な抗腫瘍効果は、がん治療の研究領域において注目を集めているが、その分子基盤については完全には明らかになっていない。いくつかの研究で、HDAC1がp53との相互作用を介して様々なストレスによって誘導されるアポトーシスを制御する可能性を示している(参考文献16~19)。今回、HDAC1がRFPおよびNF-Yと蛋白複合体を形成し、TBP-2の発現を抑制することでがん細胞の酸化ストレス感受性を制御していることを直接的に示した。以前の報告から考えて、TBP-2の発現上昇がThioredoxinのROS除去作用を減弱させ、がん細胞を抗がん剤によって誘導される酸化ストレスに感受性にさせていることが推測できる。これらの結果から、HDAC1は抗酸化機構を制御することでがん細胞に対して抗がん剤耐性を賦与していると考えられる。
【実施例】
【0084】
さらに、RFPのノックダウンがin vitro及びin vivoで、がん細胞を抗がん剤に対して感受性にすることを明らかにした。このことは、RFPが他の抗がん剤との併用治療において、新しい治療標的になりえることを示している。HDACiは毒性の低い用量で抗腫瘍効果を発揮することが分かっているが、用量規定毒性を示したという報告もされている(参考文献28)。RFPが限局された組織に発現していること(参考文献29)、また、RFPノックアウトマウスが明らかな障害を示さないことなどから、RFPを標的とした治療戦略は副作用の点からも優れたものであるといえる。
今回の発見は、HDACiと抗がん剤の相乗効果における分子機構に新たな知見をもたらすものである。
【実施例】
【0085】
更なる検討として、子宮体がんにおけるRFPの発現と予後との関係を調べた。その結果、患者群全体における検討において(図9(a))RFPの発現を認めた患者群で予後が有意に悪いことが示された。また、患者群をステージIとステージII~IVに分けて同様の検討を行ったところ、RFPの発現はステージに関係なく予後不良と相関することが分かった(図9(b)(c))。続いて、RFPの発現と予後との関係を、異なる術式を採用した患者群間で比較した。ここでは広範子宮全摘術(Radical hysterectomy)と子宮全摘出術(Total hysterectomy)による違いを検討した。その結果、RFP陰性群では術式の違いによる、有意な予後の差が見られないが(図10(b))、RFP陽性群では広範子宮全摘術の群が子宮全摘出術の群と比較して有意に予後が改善していることが分かった(図10(c))。一方、リンパ節郭清(Lymphadenectomy)の有無による違いを検討した。RFP陰性群では両群(リンパ節郭清を受けた患者群(+)と受けていない患者群(-))の間で有意な予後の差は見られないが、RFP陽性群ではリンパ節郭清を受けた群が受けていない群と比較して有意に予後が改善していることが分かった。図10結果を併せて考えると、RFPが発現している患者ではより積極的な術式を採用することが予後の改善につながるものと考えられる。子宮体がんの診断のための生検の際にRFPの発現状態を確認する(例えば免疫染色を行う)ことによって術式選択に有用な情報を得られるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の作用増強剤は、副作用の少ないがん治療法をもたらす。本発明の作用増強剤は、酸化ストレス誘導能を有する抗がん剤による治療の際に併用される。2種類以上の抗がん剤を併用する場合にも本発明の作用増強剤を適用可能である。
【0087】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【0088】
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図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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