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明細書 :水ポテンシャル測定方法及び水ポテンシャル測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5717066号 (P5717066)
公開番号 特開2012-225736 (P2012-225736A)
登録日 平成27年3月27日(2015.3.27)
発行日 平成27年5月13日(2015.5.13)
公開日 平成24年11月15日(2012.11.15)
発明の名称または考案の名称 水ポテンシャル測定方法及び水ポテンシャル測定装置
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
FI G01N 21/64 F
A01G 7/00 603
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2011-092874 (P2011-092874)
出願日 平成23年4月19日(2011.4.19)
審査請求日 平成26年4月18日(2014.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
発明者または考案者 【氏名】松嶋 卯月
【氏名】庄野 浩資
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開2009-109363(JP,A)
特開2012-137354(JP,A)
国際公開第2007/129648(WO,A1)
特開平09-178738(JP,A)
調査した分野 G01N 21/62-21/74
G01N 13/04
A01G 7/00- 7/06
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
浸透圧調整用の試薬を用いて、水の浸透圧を多段階に調整した複数の溶液を作り、前記溶液に蛍光試薬をそれぞれ溶解させて蛍光試薬溶液とし、複数の前記蛍光試薬溶液をサンプルの複数の測定点にそれぞれ供給し、前記測定点におけるそれぞれの前記蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得し、取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における平均輝度を算出し、それぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定することを特徴とする水ポテンシャル測定方法。
【請求項2】
浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプルのそれぞれの測定点に供給するステップと、
前記測定点におけるそれぞれの前記蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得するステップと、
取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における平均輝度を算出するステップと、それぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定するステップとを有することを特徴とする水ポテンシャル測定方法。
【請求項3】
前記サンプルが植物の葉であり、前記葉に傷を付けることで前記測定点とし、決定された前記水ポテンシャルから前記植物の水ストレスを判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水ポテンシャル測定方法。
【請求項4】
浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプルのそれぞれの測定点に供給し、それぞれの前記測定点における平均輝度と前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル測定装置であって、
それぞれの前記蛍光試薬溶液をそれぞれの内部に収容する複数の溶液供給容器と、
複数の前記溶液供給容器を動作させる駆動手段と、
励起フィルターを介して前記サンプルに光を照射する励起光源と、
蛍光フィルターを介して前記測定点における蛍光画像を取得する撮像手段と、
取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における前記平均輝度を算出する輝度算出手段と、
前記輝度算出手段で算出したそれぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル算出手段と
を備えたことを特徴とする水ポテンシャル測定装置。
【請求項5】
前記溶液供給容器を筒状部材で構成し、前記筒状部材の先端部に前記蛍光試薬溶液を流出させる溶液供給口を形成し、前記溶液供給口を前記サンプルに接触させることを特徴とする請求項4に記載の水ポテンシャル測定装置。
【請求項6】
前記サンプルが植物の葉であり、前記筒状部材の前記先端部で前記葉に傷を付けるとともに前記蛍光試薬溶液を前記傷に供給することを特徴とする請求項5に記載の水ポテンシャル測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特に植物の水分保持力を測定する水ポテンシャル測定方法及び水ポテンシャル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な食糧不足の懸念が高まるにつれ、農業用水不足の問題が改めてクローズアップされている。農業における水利用の効率化は食糧供給問題を解決する上で重要な課題である。水利用の効率化を実現するためには、植物に対していかに効率的に必要量の水だけを与えるかが重要になる。
植物の水要求度の指標である「水ポテンシャル」は、植物の水要求に即した水を効率よく供給するためのパラメータとして用いることができる。
しかし、現在のところ、その測定にはサイクロメータやプレッシャーチャンバーをはじめとする高価で大掛かりな装置が必要であり、簡易な水ポテンシャル測定法の確立が求められている。
サイクロメータは、熱平衡に達したとき植物葉の全ポテンシャルエネルギーと大気中の水蒸気のポテンシャルエネルギーが等しくなる原理を利用し、葉の水ポテンシャルを求める方法である。
プレッシャーチャンバー法は、外部より空気圧を加え、切り口から内部の液が噴出した時の圧力をもって、葉の水ポテンシャルとする方法である。
なお、プレッシャーチャンバー法による測定法は、緑葉裏面の気孔が閉じた深夜でなければ測定できず、現場でその水ストレスを算出して表示することができないことから、分光反射率特性による計測方法も提案されている(特許文献1、特許文献2)。
分光反射率特性による計測方法は、緑葉に光を照射し、その反射光・透過光を分光して500~800nmの連続波長に対して分光反射率を算出し、それが急激に立ち上る(一次微分が高い)波長域(レッドエッジ)を求め、そのレッドエッジ又はその中心波長の推移から水ストレスを判断するものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2005-308733号公報
【特許文献2】特開2009-109363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、サイクロメータ装置は、植物の熱平衡状態における温度を正確に測る必要があるため、精度の高い温度測定装置が必要となり高価である。また、熱平衡環境を作り出す必要があるため設置場所には空調が必要である。
また、プレッシャーチャンバー法は、10気圧付近の圧力を葉の表面にかける必要があるため、丈夫な構造を必要とし、かつ、ボンベなどを接続するため大掛かりな装置となる。
なお、分光反射率特性による計測方法についても、特許文献2に記載されているように、計測に分光器が必要となって計測装置が高価となり、又精度がまだ充分でない。
そこで、簡易かつ小型な装置として持ち運びが容易であり、温度依存性がなく、野外および圃場での利用が容易になる植物の水ポテンシャル測定方法が求められている。
本発明者らは、植物の葉切片が蛍光試薬を取り入れる速度等を測定することで水ポテンシャルの推定値が得られるのではないかとの仮定の下、蛍光試薬をマーカーとして用い、対象葉切片の水ポテンシャルを推定する計測法の開発に取り組んだ。
その結果として、葉切片の蛍光染色の程度は、その葉切片を浸した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルに依存すること、プレッシャーチャンバー法で測定した葉切片の水ポテンシャル値を閾値として、それより低い浸透ポテンシャルにおける蛍光試薬溶液では葉切片の染色程度が著しく低下することを見いだした。
生物や植物の細胞内のシグナル伝達に関与するタンパク質の細胞内局在を明らかにするためや遺伝子発現の状況を知るための実験には緑色蛍光タンパク質(GFP)が多用されている。植物の葉緑体に含まれる緑色色素であるクロロフィルの計測にはクロロフィル蛍光測定装置や2波長光学濃度差方式を用いた葉緑素計(SPAD計)が開発され販売されている。しかしながら、本発明のように、植物等の水ポテンシャル測定のために蛍光試薬を用いる方法及びその装置は知られていない。
【0005】
そこで本発明は、サイクロメータやプレッシャーチャンバーの方法とは異なり、蛍光試薬をマーカーとして用いた水ポテンシャル測定方法及び水ポテンシャル測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の水ポテンシャル測定方法は、浸透圧調整用の試薬を用いて、水の浸透圧を多段階に調整した複数の溶液を作り、前記溶液に蛍光試薬をそれぞれ溶解させて蛍光試薬溶液とし、複数の前記蛍光試薬溶液をサンプルの複数の測定点にそれぞれ供給し、前記測定点におけるそれぞれの前記蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得し、取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における平均輝度を算出し、それぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定することを特徴とする。
請求項2記載の本発明の水ポテンシャル測定方法は、浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプルのそれぞれの測定点に供給するステップと、前記測定点におけるそれぞれの前記蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得するステップと、取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における平均輝度を算出するステップと、それぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定するステップとを有することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の水ポテンシャル測定方法において、前記サンプルが植物の葉であり、前記葉に傷を付けることで前記測定点とし、決定された前記水ポテンシャルから前記植物の水ストレスを判断することを特徴とする。
請求項4記載の本発明の水ポテンシャル測定装置は、浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプルのそれぞれの測定点に供給し、それぞれの前記測定点における平均輝度と前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル測定装置であって、それぞれの前記蛍光試薬溶液をそれぞれの内部に収容する複数の溶液供給容器と、複数の前記溶液供給容器を動作させる駆動手段と、励起フィルターを介して前記サンプルに光を照射する励起光源と、蛍光フィルターを介して前記測定点における蛍光画像を取得する撮像手段と、取得した前記蛍光画像からそれぞれの前記測定点における前記平均輝度を算出する輝度算出手段と、前記輝度算出手段で算出したそれぞれの前記測定点における前記平均輝度とそれぞれの前記測定点に供給した前記蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとから前記サンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル算出手段とを備えたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の水ポテンシャル測定装置において、前記溶液供給容器を筒状部材で構成し、前記筒状部材の先端部に前記蛍光試薬溶液を流出させる溶液供給口を形成し、前記溶液供給口を前記サンプルに接触させることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の水ポテンシャル測定装置において、前記サンプルが植物の葉であり、前記筒状部材の前記先端部で前記葉に傷を付けるとともに前記蛍光試薬溶液を前記傷に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浸透圧の異なる蛍光色素染色でサンプルを染色することで植物などの水ポテンシャルを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例による水ポテンシャル測定装置の概略構成図
【図2】本実施例による水ポテンシャル測定方法によって取得したトマトの葉表面の蛍光画像の写真
【図3】図2における蛍光画像から算出した平均輝度と蛍光試薬の浸透ポテンシャルとの関係を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による水ポテンシャル測定方法は、浸透圧調整用の試薬を用いて、水の浸透圧を多段階に調整した複数の溶液を作り、溶液に蛍光試薬をそれぞれ溶解させて蛍光試薬溶液とし、複数の蛍光試薬溶液をサンプルの複数の測定点にそれぞれ供給し、測定点におけるそれぞれの蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得し、取得した蛍光画像からそれぞれの測定点における平均輝度を算出し、それぞれの測定点における平均輝度とそれぞれの測定点に供給した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとからサンプルの水ポテンシャルを決定するものである。本実施の形態によれば、浸透圧の異なる蛍光色素染色でサンプルを染色することで水ポテンシャルを測定することができる。すなわち、平均輝度が著しく低下することで生じる変曲点によってサンプルの水ポテンシャルを決定できる。
本発明の第2の実施の形態による水ポテンシャル測定方法は、浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプルのそれぞれの測定点に供給するステップと、測定点におけるそれぞれの蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得するステップと、取得した蛍光画像からそれぞれの測定点における平均輝度を算出するステップと、それぞれの測定点における平均輝度とそれぞれの測定点に供給した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとからサンプルの水ポテンシャルを決定するステップとを有するものである。本実施の形態によれば、浸透圧の異なる蛍光色素染色でサンプルを染色することで、サンプルの水ポテンシャルを決定でき、温度依存性がなく、野外および圃場での測定が容易になる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による水ポテンシャル測定方法において、サンプルが植物の葉であり、葉に傷を付けることで測定点とし、決定された水ポテンシャルから植物の水ストレスを判断するものである。本実施の形態によれば、浸透ポテンシャルが段階的に異なる複数の蛍光試薬溶液を用意し、それぞれに葉切片を浸漬する場合に比較して、葉から切片を切り出さず、葉に傷を付けることで測定点とし、この測定点に複数の蛍光試薬溶液をそれぞれ供給するために、野外および圃場での測定が容易になる。
本発明の第4の実施の形態による水ポテンシャル測定装置は、それぞれの蛍光試薬溶液をそれぞれの内部に収容する複数の溶液供給容器と、複数の溶液供給容器を動作させる駆動手段と、励起フィルターを介してサンプルに光を照射する励起光源と、蛍光フィルターを介して測定点における蛍光画像を取得する撮像手段と、取得した蛍光画像からそれぞれの測定点における平均輝度を算出する輝度算出手段と、輝度算出手段で算出したそれぞれの測定点における平均輝度とそれぞれの測定点に供給した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとからサンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル算出手段とを備えたものである。本実施の形態によれば、簡易かつ小型な装置として持ち運びが容易な装置を提供することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による水ポテンシャル測定装置において、溶液供給容器を筒状部材で構成し、筒状部材の先端部に蛍光試薬溶液を流出させる溶液供給口を形成し、溶液供給口をサンプルに接触させるものである。本実施の形態によれば、溶液供給容器の溶液供給口をサンプルに接触させることで蛍光試薬溶液を供給するため、浸透ポテンシャルが段階的に異なる複数の蛍光試薬溶液を用意し、それぞれにサンプルを浸漬する場合に比較して、簡易かつ小型な装置として持ち運びが容易な装置を提供することができる。
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による水ポテンシャル測定装置において、サンプルが植物の葉であり、筒状部材の先端部で葉に傷を付けるとともに蛍光試薬溶液を傷に供給するものである。本実施の形態によれば、傷を付けることで蛍光試薬溶液を葉に導入するため、簡易および安価な方法で植物の水ストレスが推定でき、作物生産現場で生産者が容易に水ストレスの程度を判断することが可能になり、効果的な潅水の実現や根ぐされの回避に用いることができる。
【実施例】
【0010】
以下本発明の一実施例による水ポテンシャル測定装置について説明する。
図1は本実施例による水ポテンシャル測定装置の概略構成図である。
本実施例による水ポテンシャル測定装置は、複数の溶液供給容器11と、溶液供給容器11を動作させる駆動手段12と、励起フィルター13を介してサンプル20に光を照射する励起光源14と、蛍光フィルター15を介して測定点21における蛍光画像を取得する撮像手段16とを備えている。
サンプル20は、少なくとも暗箱10内にセットされる。
【実施例】
【0011】
溶液供給容器11は、筒状部材で構成し、筒状部材の内部には蛍光試薬溶液を収容し、筒状部材の先端部には蛍光試薬溶液を流出させる溶液供給口を形成している。筒状部材の先端部は、葉表面に傷を付けることができるように、円錐状に狭まっている。あるいは、先端部に葉をディスク状に打ち抜くための刃を備えていてもよい。
本実施例では、サンプル20としてトマトの葉を用いた場合を示しており、溶液供給容器11の先端部によって葉に付けられた傷が測定点21となる。
測定点21は、それぞれの溶液供給容器11によって付けられる。
【実施例】
【0012】
また、それぞれの溶液供給容器11には、浸透ポテンシャルの異なる蛍光試薬溶液が収容されている。
蛍光試薬溶液は、水の浸透圧を多段階に調整した溶液に、蛍光試薬を溶解させて制作され、浸透圧調整用の試薬としては、例えば、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール6000、マンニトールを用いることができ、蛍光試薬としては例えばフルオレセインを用いることができる。水ポテンシャル測定の分解能は、供給する蛍光色素染色における浸透圧の量子化の程度による。従って、高分解能が必要な場合は、多くの段階数で濃度調整された蛍光色素を用いることで濃度勾配を細分化する。
【実施例】
【0013】
駆動手段12は、溶液供給容器11の溶液供給口をサンプルに接触させる動作や、蛍光試薬溶液を供給した後で、撮像手段16で測定点21の蛍光画像を取得する時に溶液供給容器11の溶液供給口をサンプルから離間させる動作を行う。
励起フィルター13は、蛍光物質の励起に必要な波長の光を励起光源14から抽出するための光学素子で、特定の波長の光のみを透過する。
励起光源14には、一般には、高圧水銀ランプやキセノンランプのようなメタルハライドランプ、レーザー光、LEDブラックライト、LED照明等を用いることができるが、デジタルカメラのフラッシュを用いることもできる。励起光源は、蛍光試薬の蛍光を発光させるための波長帯域を含んでいるものであればこれら光源に限定されるものではない。
蛍光フィルター15は、目的とする励起光を透過するフィルターであり、蛍光試薬の蛍光色素に合わせたフィルターを選択する。
【実施例】
【0014】
本実施例による水ポテンシャル測定装置は、更に撮像手段16で取得した蛍光画像からそれぞれの測定点21における平均輝度を算出する輝度算出手段17と、輝度算出手段17で算出したそれぞれの測定点21における平均輝度とそれぞれの測定点21に供給した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとからサンプルの水ポテンシャルを決定する水ポテンシャル算出手段18と、水ポテンシャル算出手段18で決定したサンプルの水ポテンシャルの結果を出力する出力手段19とを備えている。
【実施例】
【0015】
次に本実施例による水ポテンシャル測定方法について説明する。
まず、浸透圧調整用の試薬として、ポリエチレングリコール6000で純水の浸透圧を調製し、その後フルオレセインを溶解させたものを用いた。このポリエチレングリコール6000による浸透圧調整は、Money(1989)Plant physiolgy,91,766-789. の768ページ,Table II.B.に従って-0.1MPaから-0.8MPaまでの溶液を調製した。また、このフルオレセインは、それぞれの浸透圧の溶液に1(10-3kg/L)の濃度で溶解させた。
この浸透圧調整用の試薬を用いて、水の浸透圧を多段階に調整した複数の溶液を作り、この溶液に蛍光試薬をそれぞれ溶解させて蛍光試薬溶液とする。
調整したこれらの蛍光試薬溶液は、それぞれの溶液供給容器11に収容される。
そして、サンプル20を暗箱10内に設置して、以下のステップで測定が行われる。
第1のステップでは、駆動手段12によって溶液供給容器11を動作させ、溶液供給容器11の溶液供給口をサンプル20に接触させることで、浸透ポテンシャルが異なる複数の蛍光試薬溶液をサンプル20のそれぞれの測定点21に供給する。
第2のステップでは、駆動手段12によって溶液供給容器11をサンプル20から離間させ、励起光源14(機種名:Megalight 100,会社名:ショット日本株式会社)にからの光線が励起フィルター13(波長帯:励起バンド457nm~487nm(GFP用)、商品コード:67003-L、企業名:エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社)を通過しサンプル20に光を照射し、蛍光フィルター15(波長帯:中心波長520nm、半値全幅10nm、型番:F10-520.0-4-50.0M、企業名:Melles Griot社)を介した撮像手段16としてのCCDカメラ(型番:GRAS-14S5M-C、会社名:Point Grey社)によって測定点21におけるそれぞれの蛍光試薬溶液の浸透状態を蛍光画像として取得する。
第3のステップでは、画像データ処理プログラム(プログラム名:ImageJ、アメリカ国立衛生研究所(NIH))を搭載した輝度算出手段17によって、取得した蛍光画像からそれぞれの測定点21における平均輝度を算出する。
第4のステップでは、水ポテンシャル算出手段18によって、それぞれの測定点21における平均輝度と、それぞれの測定点21に供給した蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルとからサンプルの水ポテンシャルを決定する。
そして、水ポテンシャル算出手段18によって決定されたサンプルの水ポテンシャルが出力手段19から出力され、植物の水ストレスを推定することができる。
【実施例】
【0016】
次に本実施例による水ポテンシャル測定方法によって得られた実験結果ついて説明する。
図2は撮像手段によって取得したトマトの葉表面を直径5mmのディスク状に打ち抜いた箇所の蛍光画像の写真であり、図3は図2における蛍光画像から算出した平均輝度と蛍光試薬の浸透ポテンシャルとの関係を示す特性図である。従来方法との比較のため、参考として、同一葉(トマトの葉は複数枚の小葉からなる)から採取した別の小葉の水ポテンシャルをプレッシャーチャンバー法で測定した際の値を一点鎖線で示す。
本実験は、サンプル20として植物の葉を用い、この葉の8箇所に傷を付けることで測定点21として測定した。水の浸透圧をあらかじめ8段階に調整した蛍光試薬溶液を用い、それぞれの測定点における蛍光試薬溶液の浸透ポテンシャルを、-0.1Mpa、-0.2Mpa、-0.3Mpa、-0.4Mpa、-0.5Mpa、-0.6Mpa、-0.7Mpa、-0.8Mpaとしている。
従来方法であるプレッシャーチャンバー法(型番:DIK-7002、メーカー名:大起理化工業、名称:植物体内水分張力測定器)で測定した同じサンプルの小葉(トマトの葉は複数の小葉から構成されている)切片の水ポテンシャル値は-0.5Mpaであり、図3に示すように、-0.5Mpaを閾値としてそれより低い浸透ポテンシャルにおける蛍光試薬溶液では葉切片の染色程度が著しく低下している。
従って、本発明による蛍光試薬をプローブとして用いた水ポテンシャル測定方法によれば、植物の水ポテンシャル推定が可能である。
【実施例】
【0017】
以上のように本発明によれば、浸透圧の異なる蛍光色素染色でサンプル20を染色することで水ポテンシャルを測定することができる。すなわち、平均輝度が著しく低下することで生じる変曲点によってサンプル20の水ポテンシャルを決定できる。
また、本発明によれば、浸透圧の異なる蛍光色素染色でサンプル20を染色することで、サンプル20の水ポテンシャルを決定でき、温度依存性がなく、野外および圃場での測定が容易になる。
また、本発明によれば、浸透ポテンシャルが段階的に異なる複数の蛍光試薬溶液を用意し、それぞれに葉切片を浸漬する場合に比較して、葉から切片を切り出さず、葉に傷を付けることで測定点21とし、この測定点21に複数の蛍光試薬溶液をそれぞれ供給するために、野外および圃場での測定が容易になる。
また、本発明によれば、簡易かつ小型な装置として持ち運びが容易な装置を提供することができる。
また、本発明によれば、溶液供給容器11の溶液供給口をサンプル20に接触させることで蛍光試薬溶液を供給するため、簡易かつ小型な装置として持ち運びが容易な装置を提供することができる。
また、本発明によれば、傷を付けることで蛍光試薬溶液を葉に導入するため、簡易および安価な方法で植物の水ストレスが推定でき、作物生産現場で生産者が容易に水ストレスの程度を判断することが可能になり、効果的な潅水の実現や根ぐされの回避に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、植物の水ポテンシャル測定に利用することができる他、食肉や土壌などの水ポテンシャル測定にも用いることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 暗箱
11 溶液供給容器
12 駆動手段
13 励起フィルター
14 励起光源
15 蛍光フィルター
16 撮像手段
17 輝度算出手段
18 水ポテンシャル算出手段
20 サンプル
21 測定点
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2