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明細書 :精神的疲労の検出方法、装置及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4883580号 (P4883580)
公開番号 特開2008-301841 (P2008-301841A)
登録日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
公開日 平成20年12月18日(2008.12.18)
発明の名称または考案の名称 精神的疲労の検出方法、装置及びプログラム
国際特許分類 A61B   5/16        (2006.01)
A61B   3/11        (2006.01)
A61B   5/0484      (2006.01)
FI A61B 5/16 300B
A61B 3/10 A
A61B 5/04 320M
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2007-148747 (P2007-148747)
出願日 平成19年6月5日(2007.6.5)
審査請求日 平成21年3月19日(2009.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】原田 暢善
【氏名】岩木 直
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 国際公開第2005/096917(WO,A1)
特表2008-503244(JP,A)
特開平07-111989(JP,A)
特表平06-500938(JP,A)
調査した分野 A61B 5/16
A61B 3/11
A61B 5/0484
特許請求の範囲 【請求項1】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を、時系列データとして求める第2ステップと、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返す第3ステップと、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求める第4ステップと、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴とする精神的疲労の検出装置が行う検出方法。

【請求項2】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を求める第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求める第3ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求める第4ステップと、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求める第5ステップと

前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴とする精神的疲労の検出装置が行う検出方法。

【請求項3】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を求める第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求める第3ステップと、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求める第4ステップと、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴とする精神的疲労の検出装置が行う検出方法。

【請求項4】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の脳電位を測定する第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求める第3ステップと、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求める第4ステップと、
前記変化程度の最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定する第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステ
ップとを含むことを特徴とする精神的疲労の検出装置が行う検出方法。

【請求項5】
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する可視光が被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を、時系列データとして求め、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返し、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求め、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定し、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記フレーム画像を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とし、且つ、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴とする精神的疲労の検出装置。
【請求項6】
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を、時系列データとして求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求め、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求め、
前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周波数を求め、第1周波数とし、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴とする精神的疲労の検出装置。
【請求項7】
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求め、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求め、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定し、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記フレーム画像を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とし、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴とする精神的疲労の検出装置。
【請求項8】
点滅する可視光を放射する発光部と、脳電位測定部と、制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記脳電位測定部が、点滅する前記可視光が被験者に提示された状態で前記被験者の脳電位を測定し、
前記制御部が、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求め、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求め、
前記変化程度の最大値を決定し、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定し、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴とする精神的疲労の検出装置。

【請求項9】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示して得られた瞳孔径の時系列データを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返す第1の機能と、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求める第2の機能と、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第3の機能と、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴とする精神的疲労の検出プログラム。

【請求項10】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して得られた前記被験者の瞳孔径のデータを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求める第1の機能と、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求める第2の機能と、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求める第3の機能と、
前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周波数を求め、第1周波数とする第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴とする精神的疲労の検出プログラム。
【請求項11】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して得られた前記被験者の瞳孔径のデータを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求める第1の機能と、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第2の機能と、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第3の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第4の機能とを実現させることを特徴とする精神的疲労の検出プログラム。

【請求項12】
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して測定された、前記被験者の脳電位を用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求める第1の機能と、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求める第2の機能と、
前記変化程度の最大値を決定する第3の機能と、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定する第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴とする精神的疲労の検出プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人の精神的疲労の検出に関し、特に、点滅する光刺激に伴う瞳孔の変化を観察することによって精神的疲労を検出する方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、様々な労働環境中で労働者の身体的および精神的疲労を適正範囲にコントロールすることは、労働者自身の健康のみならず、労働者自身および他者、さらには社会全体を巻き込んだ事故の発生を未然に防止する上できわめて重要な課題である。これまで、身体的疲労は、筋力低下など比較的外的な指標で評価しやすいものであったが、これに対して精神的疲労は、質問紙などを用いる形式のみで評価され、恣意性を排除して評価するのが難しい対象であった。
【0003】
精神的疲労の主症状としての、大脳皮質活動全般の機能低下を反映し得る指標として、フリッカー光のちらつきを認知しうる周波数の閾値(フリッカー値とも記す)の変化が知られている。光の点滅のフリッカー光は、高速で点滅する際は、点滅に伴うちらつきは認知されず、光がただ単に点灯していると認知される。その、点滅周波数を高周波数から低周波数へとゆっくりと変化させた場合、ある周波数を境に、光の点滅が認知されてくる。その光の点滅が認知され始める周波数を、フリッカーの閾値周波数またはフリッカー値と呼ぶ。労働によって引き起こされる精神的疲労の蓄積に伴い、健常時(精神的疲労のない状態)においてフリッカー光のちらつきが認知されていた周波数において、ちらつきが認知されなくなる現象が知られている。すなわち、精神的疲労にともなう、フリッカー光のちらつきの認知の閾値の周波数の低下、フリッカー値の低下である。
【0004】
一部には、目の生理的反応を測定して、疲労度などの精神活動を評価する方法や、目に光刺激を提供して疲労回復を図る方法が知られている(下記特許文献1~3参照)。しかし、多くは、様々な労働による精神的疲労における大脳皮質活動の全般的な機能水準の変化は、フリッカー光の周波数を変化させる中で、ちらつき認知の閾値を主観的に判断させ、ボタン押しなどによって告知させる形で評価されてきた(例えば、下記特許文献4~6参照)。

【特許文献1】特開平7-255669号公報
【特許文献2】特開2002-253509号公報
【特許文献3】特開2005-279053号公報
【特許文献4】特開2001-309887号公報
【特許文献5】特開2001-218756号公報
【特許文献6】特開2003-70773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したボタン押しなどによって、ちらつき認知の閾値を主観的に判断させる方法では、生理的指標に依拠する指標であっても、最終的には、主観的な判断のプロセスが入ってしまうため、それに伴う恣意性が介在することを避けることができない。
【0006】
フリッカー光のちらつきに伴う生理反応を非恣意的に検出することができれば、フリッカー認知の閾値の変化を用いて精神的疲労を評価する方法の精度を向上させることができるのみならず、労働者が自然状態あった場合における、非拘束、非接触、非恣意的な精神的疲労の計測方法を実現することができる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決すべく、フリッカー光を用いて精神的疲労状態を非恣意的に検出することができる精神的疲労の検出方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、鋭意研究した結果、点滅光のちらつきの非認知状態および認知状態における、瞳孔径の変化の違い、および瞳孔径の変化に関連する脳電位反応により、人の精神的疲労状態を非恣意的に評価できることを見出し、本発明をするに至った。
【0009】
また、本発明を、ボタン押しなどの被験者自信による告知手段と併用すれば、被験者の虚偽や、誤操作を見抜くことができ、被験者の精神的疲労をより正確に評価することができ、作業の安全性の向上に役立てることができる。
【0010】
即ち、本発明に係る第1の精神的疲労の検出方法は、精神的疲労の検出装置が行う検出方法であって、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を、時系列データとして求める第2ステップと、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返す第3ステップと、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求める第4ステップと、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴としている。

【0011】
また、本発明に係る第2の精神的疲労の検出方法は、精神的疲労の検出装置が行う検出方法であって、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の
間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を求める第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求める第3ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求める第4ステップと、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求める第5ステップと、
前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴としている。

【0012】
また、本発明に係る第3の精神的疲労の検出方法は、精神的疲労の検出装置が行う検出方法であって、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の瞳孔径を求める第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求める第3ステップと、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求める第4ステップと、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴としている。

【0013】
また、本発明に係る第4の精神的疲労の検出方法は、精神的疲労の検出装置が行う検出
方法であって、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示する第1ステップと、
点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の脳電位を測定する第2ステップと、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求める第3ステップと、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求める第4ステップと、
前記変化程度の最大値を決定する第5ステップと、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定する第6ステップと、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値所定のしきい値と比較する第7ステップとを含むことを特徴としている。

【0014】
また、本発明に係る第1の精神的疲労の検出装置は、
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する可視光が被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を、時系列データとして求め、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返し、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求め、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定し、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記フレーム画像を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とし、且つ、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る第2の精神的疲労の検出装置は、
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を、時系列データとして求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求め、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求め、
前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周波数を求め、第1周波数とし、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る第3の精神的疲労の検出装置は、
点滅する可視光を放射する発光部と、
赤外線映像を撮影する撮像部と、
制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記撮像部が、点滅する前記可視光が前記被験者に提示された状態で前記被験者の目を含む映像を撮影し、
前記制御部が、
撮影された前記映像を構成する複数のフレーム画像の各々に含まれた前記目の画像の瞳孔径を求め、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求め、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求め、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定し、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記フレーム画像を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とし、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴としている

【0017】
また、本発明に係る第4の精神的疲労の検出装置は、
点滅する可視光を放射する発光部と、脳電位測定部と、制御部とを備え、
前記発光部が、時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示し、
前記脳電位測定部が、点滅する前記可視光が被験者に提示された状態で前記被験者の脳電位を測定し、
前記制御部が、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求め、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求め、
前記変化程度の最大値を決定し、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定し、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断することを特徴としている。

【0018】
また、本発明に係る第1の精神的疲労の検出プログラムは、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、点滅する可視光を被験者に提示して得られた瞳孔径の時系列データを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記瞳孔径の時系列データに関して、所定期間の前半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第1標準偏差とし、該所定期間の後半期間内の前記瞳孔径の標準偏差を求めて第2標準偏差とする処理を、前記所定期間をシフトさせる毎に繰り返す第1の機能と、
前記第1標準偏差および前記第2標準偏差の差の絶対値を求める第2の機能と、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第3の機能と、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴としている。

【0019】
また、本発明に係る第2の精神的疲労の検出プログラムは、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して得られた瞳孔径のデータを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記瞳孔径の極大値Maxと、該極大値Maxの次に現れる前記瞳孔径の極小値Minを求める第1の機能と、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の開始前の第3期間における前記瞳孔径の平均値Baseを求める第2の機能と、
それぞれ対応する前記極大値Max、前記極小値Minおよび前記平均値Baseから、(Max-Base)/(Base-Min)によって変化率を求める第3の機能と、
前記変化率が、1以上の値から1より小さい値に変化するとき、または1以下の値から1より大きい値に変化するときのタイミングを求め、該タイミングに対応する前記点滅周
波数を求め、第1周波数とする第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る第3の精神的疲労の検出プログラムは、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化さ
せながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して得られた前記被験者の瞳孔径のデータを用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
時系列の複数の前記標準偏差に関して、隣接する2つの前記標準偏差の差の絶対値を求める第1の機能と、
複数の前記絶対値の中から最大値を決定する第2の機能と、
前記最大値として決定された絶対値の計算に使用された前記瞳孔径を取得したときの点滅周波数を求め、第1周波数とする第3の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第4の機能とを実現させることを特徴としている。

【0021】
また、本発明に係る第4の精神的疲労の検出プログラムは、
時間経過に伴って開始周波数から終了周波数まで単調かつ階段状に点滅周波数を変化させながら、所定の第1期間の間点滅し、該第1期間に続く所定の第2期間の間発光を停止し、該第1期間および第2期間を繰り返して可視光を被験者に提示して測定された、前記被験者の脳電位を用いて、コンピュータに前記被験者の精神的疲労を検出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の前記第2期間毎に、前記第2期間の終了後に最初に現れる前記脳電位の最大振幅を求める第1の機能と、
時系列の複数の前記最大振幅の変化程度を求める第2の機能と、
前記変化程度の最大値を決定する第3の機能と、
前記最大値として決定された変化程度の計算に使用された前記脳電位を測定したときの複数の前記点滅周波数を求め、これらの複数の点滅周波数を用いて第1周波数を決定する第4の機能と、
前記第1周波数と、疲労していない状態における前記被験者のフリッカーの閾値周波数である第2周波数との差の絶対値を求め、該絶対値が所定値以上である場合に前記被験者が精神的疲労状態にあると判断する第5の機能とを実現させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボタン押しなどの主観的な手段に頼ることなく、被験者に負担を掛けることなく、且つ被験者の虚偽や恣意性を排除して、被験者のフリッカーの閾値周波数を決定することができ、それを用いて被験者の精神的疲労を評価することが可能となる。
【0023】
また同様に、点滅する光を提示して脳電位を観測することによっても、被験者の虚偽や恣意性を排除して、被験者のフリッカーの閾値周波数を決定することができ、それを用いて被験者の精神的疲労を評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。尚、以下におい
ては、特に断らない限り「疲労」とは精神的疲労を意味するものとする。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る精神的疲労の検出装置の構成を示すブロック図である。本検出装置は、可視光を点滅させて放射する発光部1と、赤外線を照射する照明部2と、映像(動画像)を撮影する、赤外線に感度を有する撮像部3と、撮像部3によって撮影された映像を解析して精神的疲労を検出する制御部4とを備えている。図1では、精神的疲労の検出対象である被験者5をも示している。また、図2は、本検出装置と被験者5との位置関係の概要を示す斜視図である。
【0026】
発光部1は、制御部4によって制御され、所定周波数、所定強度で点滅する可視光を放射する。発光部1は、例えばLED及びその駆動部で構成される。発光部1は、被験者5の視野内に配置され、発光部1から放射される点滅光は被験者5の目に入る。なお、後述する測定を、被験者5が作業中に行なう場合には、作業の邪魔にならないように、被験者5の視野中心から10度ほど周辺に位置するように発光部4を配置するのが好ましい。
【0027】
撮像部3は、制御部4によって制御され、被験者5の目を主として含む赤外線映像を取得し、デジタルデータとして制御部4に伝送する。撮像部3は、例えばCCDカメラである。照明部2は、撮像部3が良好な映像を取得できるように、撮像装置の感度範囲の周波数の赤外線を、被験者5の目に照射する。
【0028】
制御部4は、演算処理部(以下、CPUと記す)41と、プログラムなどを記録した不揮発性の読出専用メモリ(以下、ROMと記す)42と、データを一時的に保持可能な揮発性の書換可能メモリ(以下、RAMと記す)43と、データを持続的に保持可能な不揮発性の書換可能な記録部44と、計時部45と、インタフェース部(以下、IF部と記す)46と、操作部47を備えている。制御部4は、例えばコンピュータである。制御部4は、IF部46を介して発光部1および撮像部3を制御する。また、撮像部3から制御部4に伝送された映像データは、記録部44に記録される。計時部45は、タイマなどの、内部クロックを用いて現在時刻の情報を出力する手段である。
【0029】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、本検出装置を用いた精神疲労の検出方法に関して具体的に説明する。以下では、特に断らない限りCPU41が行う処理として説明する。また、CPU41は、適宜ROM42および記録部44から必要なデータをRAM43に読み出し、RAM43の所定領域をワーク領域として使用して処理を行い、一時的な処理結果や最終の処理結果を適宜記録部44に記録することとする。また、測定に必要な初期条件は予め記録部44に記録されているとする。
【0030】
(第1の精神的疲労の検出方法)
ステップS1において、被験者5に関する情報として、精神的疲労を感じていない状態でのフリッカーの閾値周波数f0(Hz)を、操作部47を介して受け付ける。また、周
波数変動幅fw(Hz)、周波数増分Δf(Hz)、および時間差ΔT(秒)を記録部4
4から読み出し、開始周波数fs(=f0+fw)、終了周波数fe(=f0-fw)を求め、開始周波数fsを点滅周波数fに設定する。さらに、後述するように、時間差ΔTが経過
する毎に点滅周波数fを周波数差Δfだけ変化させるために、現在時刻を計時部45から取得して時刻パラメータTに設定する。
【0031】
例えば、fw=10(Hz)、Δf=1(Hz)、ΔT=2(秒)とする。このとき、
被験者5の閾値周波数としてf0=34(Hz)が入力された場合、fs=44(Hz)、fe=24(Hz)となる。
【0032】
ステップS2において、照明部2から赤外線の照明が被験者5の目に照射された状態で
、撮像部3を制御して、被験者5の目を含む領域の撮像を開始する。取得された映像データは、制御部4に伝送され、デジタルデータとして記録部44に記録される。
【0033】
ステップS3において、ステップS1で決定された現在周波数f=fsを用いて、発光
部1を制御して、所定強度、点滅周波数fおよびデューティ50%の条件で点滅発光させる。発光部1としてLEDおよびその駆動装置を用いる場合には、CPU41は、LEDの駆動装置に所定のタイミングで点滅周波数fを伝送する。それに応じて駆動装置は、点滅周波数fで変化する所定の電圧をLEDに印加して、LEDを点滅させる。LEDに印加する電圧は、例えば、デューティが50%の矩形波や、サイン波(コサイン波)である。
【0034】
ステップS4において、計時部19から現在時刻tを取得して時刻パラメータTと比較し、その差(t-T)が時間差ΔTよりも小さい(t-T<ΔT)か否かを判断し、t-T≧ΔTであれば、ステップS5に移行する。
【0035】
ステップS5において、現在の点滅周波数fが終了周波数fe以下(ffe)か否かを判断し、f>feであればステップS6に移行し、現在の点滅周波数fから周波数差Δf
を減算して新たな点滅周波数fとし(f=f-Δf)、ステップS4で所得した現在時刻tを時刻パラメータTに設定した後、ステップS3に移行する。これによって、新たな点滅周波数fを用いて点滅が行なわれる。一方、ffeであると判断すれば、ステップS
7に移行し、発光部1の発光および撮像部2による撮像を停止させる。

【0036】
以上のステップS2~S6によって、開始周波数fsから終了周波数feまで、ΔTの時間が経過する毎に周波数差Δfだけ点滅周波数fを減少させ、点滅表示させながら、被験者5の目を含む領域を撮影することができ、その映像データが記録部44に記録される。
【0037】
ステップS8において、記録部44に記録された一連の動画像データをフレーム毎に画像処理し、瞳孔の大きさの変化を解析する。
【0038】
まず、各フレーム画像に対してエッジ検出処理などを行い、瞳孔部分を検知して瞳孔の直径(以下、瞳孔径と記す)を画素数単位で求める。得られた瞳孔径を、一連の動画像データに対応する時系列データとして記録部44に記録する。図4は、得られた瞳孔径を、変化させた点滅周波数と共に示したグラフである。図4では、縦方向と横方向の瞳孔径を区別して表示しているが、これらは略同じ変化をするので、以下の処理においては、それらの一方の瞳孔径(例えば縦方向の瞳孔径)を用いる。なお、瞳孔径を求める方法は、種々の画像処理を用いて行なうことができるので、説明を省略する。
【0039】
次に、上記で得られた瞳孔径の時系列データを用いて、所定の連続期間(例えば、t1
~t1+10の10秒間)毎に、前半の連続期間(t1≦t<t1+5)の瞳孔径の標準偏
差σ1と、後半の連続期間(t1+5≦t<t1+10)の瞳孔径の標準偏差σ2とを求め、これらの差の絶対値Δσ(=|σ1-σ2|)を求める。この処理を、連続期間(t1~t1+10)をシフトさせながら行う。シフトさせる時間は、例えば1秒である。
【0040】
最後に、得られた瞳孔径の標準偏差の差の絶対値Δσのうちの最大値を求め、最大値に対応する連続期間の中央に対応する時刻(t1+5)を求め、これに対応する点滅周波数
fを求める。上記したように、点滅周波数を制御する条件は予め決定されるので、時刻が分かれば、その時の点滅周波数を決定することができる。後述するように、ここで得られた点滅周波数f(f1とする)は、被験者5の測定時のフリッカーの閾値周波数に対応す
る。

【0041】
ステップS9において、ステップS8で求めた閾値周波数f1を、ステップ1で入力さ
れた閾値周波数f0(Hz)(被験者5が精神的疲労を感じていない状態での値)と比較
して、被験者5が精神的疲労状態にあるか否かを判断する。一般に、精神的疲労状態にあれば、閾値周波数が低くなることが知られている。即ち、人は精神的疲労状態にあれば、疲労していない状態と比べて閾値周波数が低下する。従って、f1とf0の差(例えば、絶対値|f1-f0|)が所定の値以上であれば、被験者5は精神的疲労状態にあると評価する。精神的疲労を判断するための所定値は、適宜設定すればよい。例えば、5Hzを使用することができる。
【0042】
以上によって、フリッカーを認識できるか否かを、ボタン押しなどによって被験者本人に申告させることなく、被験者の精神的疲労の判断に使用することができるフリッカーの閾値周波を自動的に求めることができる。
【0043】
(第2の精神的疲労の検出方法)
次に、第2の精神的疲労の検出方法について説明する。第2の精神的疲労の検出方法においても、上記した第1の検出方法と同様に、図1に示した検出装置を用い、同様の測定を行なう。第2の検出方法が第1の検出方法と異なる点は、発光部1の点滅方法および瞳孔径の変化を解析する方法である。従って、ここでは、第1の検出方法と異なる内容を主として説明する。
【0044】
まず、発光部1を点滅させる条件に関して説明する。図3に示したステップS1において、第1の検出方法と同様に、被験者5に関する情報として、精神的疲労を感じていない状態でのフリッカーの閾値周波数f0(Hz)を、操作部47を介して受け付ける。また
、周波数変動幅fw(Hz)、周波数増分Δf(Hz)、ON時間Δton、OFF時間Δ
toffおよび繰り返し回数Nを記録部14から読み出し、開始周波数fs(=f0+fw)、終了周波数fe(=f0-fw)を求め、開始周波数fsを点滅周波数fに設定する。ON時間Δtonは、後述するように、発光部1を点滅させる連続時間であり、OFF時間Δtoffは、発光部1を発光させない連続時間である。そして、時間差ΔTが経過する毎に点滅
周波数fを周波数差Δfだけ変化させるために、現在時刻を計時部45から取得して時刻パラメータTに設定する。時間差ΔTは、(Δton+Δtoff)×Nによって求める。
【0045】
例えば、fw=7.5(Hz)、Δf=2.5(Hz)、Δton=10(秒)、Δtoff=1.5(秒)、N=5とする。このとき、f0=34(Hz)が入力された場合、fs=41.5(Hz)、fe=26.5(Hz)、ΔT=(10+1.5)×5=57.5(
秒)となる。
【0046】
発光部1を点滅させる動作に関しては、ステップS3~S6と同様であるが、点滅周波数fを変化させるタイミング、変化させる値、処理を終了する条件には、上記で決定した値(ΔT、Δf、fe)を用いる。
【0047】
次に、ステップS8において、記録部44に記録された一連の動画像データをフレーム毎に画像処理し、瞳孔の大きさの変化を解析する処理について説明する。まず、第1の検出方法と同様に、各フレーム画像に対して画像処理を行い、瞳孔径の時系列データを求める。図5は、得られた瞳孔径を、変化させた点滅周波数と共に示したグラフである。図5は、図4と同様に縦方向と横方向の瞳孔径を区別して表示しているが、これらは略同じ変化をするので、以下の処理においては、それらの一方の瞳孔径(例えば縦方向の瞳孔径)を用いる。また、図5は、瞳孔径の時系列データから特定の点滅周波数fに関する部分を切り出したグラフであり、1回の点滅のONおよびOFFによって生じた瞳孔径の変化を示している。瞳孔径の変化の全データは、図5と同様のデータが、点滅周波数f毎にN回分連続したデータとして求められる。
【0048】
次に、瞳孔径の時系列データを用いて、発光部1がOFF状態(非発光状態)からON状態(点滅状態)に変化したときの瞳孔径の変化幅を求める。このOFF状態からON状態に変化させたことによって生じる瞳孔の変化を、光刺激オミッション反応と呼ぶ。後述するように、点滅周波数を減少させていくと、閾値周波数の前後で、光刺激オミッション反応による瞳孔径の変化が拡大傾向から縮小傾向に変化する。従ってこの変化を検出するために、次のように変化率rを求める。
【0049】
図5に示したように、発光部1がOFF状態からON状態に変化したとき、瞳孔径は極大(図5の符号Maxで示す部分)となり、その直後に極小(図5の符号Minで示す部分)となる。従って、時系列データのうち、特定のオミッション反応前2秒間(OFF状態が開始する前の2秒間)の瞳孔径の大きさの平均値を求め、これを基準値(以下ベースラインとも記す)Baseとし、同じオミッション反応による極大値Maxおよび極小値Minを求め、これらを用いて、変化率r=(Max-Base)/(Base-Min)を求める。一連の瞳孔径の時系列データを用いて、各オミッション反応に関して変化率rを求める。そして、点滅周波数f毎にN回測定しているので、N個の変化率rの平均値ravを求める。
【0050】
最後に、得られた瞳孔径の変化率ravの値が1より大きい値(瞳孔径の拡大幅の方が縮小幅より大きい状態、即ち「拡大傾向」を表す)から、1より小さい値(瞳孔径の拡大幅の方が縮小幅より小さい状態、即ち「縮小傾向」を表す)に変化する時刻を求め、これに対応する点滅周波数fを求める。上記したように、点滅周波数を制御する条件は予め決定されるので、オミッション反応の時刻が分かれば、対応する点滅周波数を決定することができる。得られた点滅周波数f(f2とする)は、被験者5の測定時のフリッカーの閾値
周波数に対応する。
【0051】
ステップS8で求めたフリッカー認知周波数f2を用いて、ステップS9において被験
者5が精神的疲労状態にあるか否かを判断する処理は、第1の検出方法と同じである。即ち、f2とf0の差(例えば、絶対値|f2-f0|)が所定の値以上であれば、被験者5は精神的疲労状態にあると評価する。
【0052】
以上によって、フリッカーを認識できるか否かを、ボタン押しなどによって被験者本人に申告させることなく、被験者の精神的疲労の判断に使用することができるフリッカーの閾値周波を自動的に求めることができる。

以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。
【0053】
例えば、発光部はLEDに限らず、可視光を所定周波数で点滅させて放射することができる装置であればよい。また、撮像部は、赤外線の撮像装置に限定されず、可視光の撮像装置であってもよい。また、照明部は無くてもよい。
【0054】
また、発光部、撮像部、照明部を配置する位置は、任意であり、精度良く測定ができる配置であればよい。例えば、撮像部は、被験者の近傍に配置してもよく、遠距離に配置し、望遠レンズを用いて撮像してもよい。
【0055】
また、上記では画像処理によって瞳孔径を求める場合を説明したが、画像処理を使用しない方法によって瞳孔径を求めてもよい。例えば、眼球からの反射光を測定し、瞳孔拡大による反射光の減少を用いて瞳孔径を求めることができる。従って、点滅光を照射しながら、眼球に照射した光の反射光を測定し、これから瞳孔径の変動を求め、これを上記と同様に処理することによって、フリッカーの閾値周波を自動的に求めることができる。
【0056】
また、本願発明を携帯型の検出装置として実現することも可能である。例えば、図1に示した構成を携帯電話などに組み込むことも可能である。その場合、人は、フリッカー光を見てボタン押しをする必要はなく、フリッカー光をただ見るだけで、その間の瞳孔径の変化を計測して、精神的疲労の程度を推定することができる。点滅光は液晶画面またはLEDから発生させ、そのフリッカー光を見ている間の、瞳孔の映像を携帯電話のカメラで撮影し、実際の瞳孔径または瞳孔径を反映する明度の変化を用いて、瞳孔径の変化を求めればよい。
【0057】
また、上記では、点滅周波数を線形に減少させる場合を説明したが、これに限定されない。例えば、点滅周波数を低周波数から線形に増加させてもよい。また、単調な変化であればよく、非線形に単調増加または単調減少させてもよい。点滅周波数を増加させる場合には、上記した第2の検出方法では、変化率ravが、1より小さい値(縮小傾向を表す)から1より大きい値(拡大傾向を表す)に変化する時を検出すればよい。
【0058】
また、第1の検出方法において、fw=10(Hz)、Δf=1(Hz)、ΔT=2(
秒)としたが、これらの値を適宜変更することができる。
【0059】
また、第2の検出方法において、fw=10(Hz)、Δf=2.5(Hz)、Δton
=10(秒)、Δtoff=1.5(秒)、N=5としたが、これらの値を適宜変更するこ
とができる。
【0060】
また、上記では、点滅周波数を変化させる開始周波数および停止周波数を、被験者のフリッカーの閾値周波数を基準に設定したが、閾値周波数の個人差はそれほど大きくないので、決まった開始周波数fsおよび停止周波数feを用いてもよい。例えば、上限周波数として50Hz、下限周波数として20Hzを使用することができる。
【0061】
また、上記では、撮像部によって取得した映像データの全てを一旦記録し、その後に解析して瞳孔径を求める場合を説明したが、1フレームまたは数フレームの画像データを取り込む毎に、瞳孔径を求めて時刻順に記録してもよい。
【0062】
また、第2の検出方法において、上記とは別の方法で、瞳孔径の変化の全データから、被験者の測定時のフリッカーの閾値周波数を求めてもよい。具体的には、各々の光刺激OFFの直前2秒間における瞳孔径の標準偏差を求め、求めた時系列の標準偏差に関して、隣接する標準偏差の差の絶対値を求め、それらのうちの最大値を決定し、これに対応する光刺激OFFの時刻を決定し、その時の点滅周波数を閾値周波数とする。これは、後述するように、閾値周波数の前後において、光刺激をOFFする前の2秒間の瞳孔径の標準偏差が大きく変化することに基づいている。
【0063】
また、第2の検出方法で用いたのと同じ光刺激のON/OFFシーケンスで被験者に点滅光を提示し、瞳孔径の変動に関連する脳電位反応(以下、視覚誘発脳電位反応と記す)を観察して、被験者の測定時のフリッカーの閾値周波数を求めてもよい。この場合、検出装置の構成は、図1とは異なり、照明部2及び撮像部3の代わりに、脳電位測定装置を備えており、被験者の頭部に脳電位測定装置の電極を装着して脳電位反応によって生じる電位を測定する。被験者が点滅する光刺激を受けると、脳内の磁場が変化する脳磁図反応を生じる。後述するように、連続フリッカー光刺激オミッション反応の視覚誘発脳磁図反応は、フリッカーの点滅周波数が閾値よりも低く、ちらつきが認知される場合、オミッション反応のOFF反応は小さく、点滅周波数が閾値よりも高く、ちらつきが認知されない場合、OFF反応が大きくなることが明らかになった。一方、脳磁図反応と脳電位反応は、その活動の発生源は同じであり、よって活動強度は相互によく相関することが知られてい
る。従って、視覚誘発脳電位反応においても、視覚誘発脳磁図反応と同様の結果が得られると考えられる。即ち、フリッカー光刺激に対し、光のONに対する脳電位のON反応および光のOFFに対する脳電位のOFF反応が検出される。ON反応は、暗闇の状態から光の提示による光環境の変化に対する反応、OFF反応は、光環境に対する順応状態から光のない暗闇への光環境の変化に対する反応である。ON反応の場合、最初の状態である暗闇は、条件によって変わらないので、反応に差は生じない。一方、OFF反応は、光環境に対する順応状態、即ち順応の程度に応じて反応が変化する。従って、より明るく、より安定して、より長い時間順応していた場合、より大きなOFF反応が検出される。
【0064】
この脳電位反応を用いた精神的疲労の検出方法では、光の明るさと、光を提示する時間は各条件とも同じにし、光環境の安定性、すなわち光の点滅周波数を変化させる。点滅周波数がフリッカーの閾値よりも高い周波数であるほど、被験者はちらつきを認識しにくく、光環境はより安定しており、光に対する被験者の順応は亢進されているので、結果としてより大きなOFF反応が得られ、逆に、点滅周波数がフリッカーの閾値よりも低い周波数であるほど、被験者はちらつきを認識し易く、光環境は安定しておらず、光に対する被験者の順応は阻害されているので、結果としてOFF反応は小さくなってしまうと考えられる。OFF反応の大きさは、光環境に対する被験者の順応の度合いを表すと考えられ、被験者がフリッカーを認識し始めるということは、被験者にとって光環境が不安定になり始めるということ、すなわち被験者の順応が阻害され始め、その結果OFF反応が小さくなり始めることになる。
【0065】
この方法の一例を示すと、次の通りである。例えば、5Hzのステップで、35、40、45、50、55及び60Hzの6条件の光の点滅周波数を設定する。設定した点滅周波数のフリッカー光刺激を、点滅周波数が減少する順に、又は点滅周波数が増加する順に、周波数毎に複数回提示し、脳電位の時系列データを測定する。得られた波形データのうち、同じ周波数のフリッカー光刺激を提示して得られた波形部分に関して、ON/OFFシーケンスにおける同じタイミングの脳電位データを平均して、脳電位の加算平均波形を求める。この処理を、設定した点滅周波数毎に行なう。次に、加算平均波形において、点滅周波数によるOFF反応の振幅の変化を評価して、フリッカーの閾値周波数を求める。即ち、OFF反応の振幅は、閾値より低い周波数では小さく、閾値より高い周波数では大きくなるので、OFF反応の振幅が、比較的大きい状態から小さい状態に変化する(点滅周波数を減少するように変化させた場合)とき、または比較的小さい状態から大きい状態に変化する(点滅周波数を増加するように変化させた場合)ときを求めることによって、フリッカーの閾値周波数を求めることができる。例えば、点滅周波数を減少させながら測定して得られたOFF反応の振幅に関して、隣接する点滅周波数間で差の絶対値を求め、それらの絶対値の最大値を求めることによって、フリッカーの閾値周波数を求めることができる。例えば、最大の絶対値を求めるのに使用した2つのデータを得たときの2つの点滅周波数の平均値をフリッカーの閾値周波数とすればよい。この他にも種々の方法を用いて、OFF反応の振幅の変化からフリッカーの閾値周波数を求めることが可能である。
【0066】
なお、予め被験者の健常時の閾値が既知である場合、その閾値の値を中心に、より低周波数の領域により細かいステップで周波数を設定することによって、より精密に閾値を検出することができる。また、被験者のノイズ特性などのデータがある場合、より少ない加算回数で加算平均の波形を求めることができるので、さらに多くの設定周波数の条件で閾値の検出が可能となる。
【0067】
場合によっては、加算平均を行なわなくてもよい。例えば、外部刺激に伴う脳電位または脳磁場の誘発反応の波形は、通常加算平均を行なって求めるが、誘発反応の波形の性質および背景のノイズなどの情報を用いてノイズ減衰フィルターを適切に設計し、これを測定データに適用すると、加算平均を行なうことなしに、単一の刺激に対する単一の反応を
検出することが可能である。フィルターとして作用し得る時間-周波数解析の一手法であるウエーブレット変数を用いる手法は、単一の刺激に対する単一の反応を検出するために適用しうる手法であると考えられる。ノイズ減衰フィルターを、フリッカー刺激OFF反応の評価に適応した場合、単一の刺激に対する単一の反応を検出しうるため、周波数を連続的に変化させた際のOFF反応の変化から、フリッカー反応の検出が可能となる。

以下に実験例を示し、本願発明の有効性を示す。
【実施例1】
【0068】
まず、第1の検出方法に従って実験を行なった。即ち、fw=10(Hz)、Δf=1
(Hz)、ΔT=2(秒)として、光ON(50%)および光OFF(50%)のフリッカー刺激条件におけるフリッカー光点滅周波数低下に伴うちらつきの認知と瞳孔径変動について観察した。本実験の前に、この実験条件における被験者の閾値周波数f0をあらか
じめ調べた結果、34Hzであった。この結果をもとに、閾値周波数34Hz+10Hz(44Hz:フリッカー非認知条件)から閾値周波数34Hz-10Hz(24Hz:フリッカー認知条件)まで、2秒に1Hzづつ約40秒かけて、点滅周波数を連続的に減少させた。そして、この過程における被験者の瞳孔を撮影した。得られたデータを用いて、瞳孔径の縦方向および横方向のピクセル数の変化を求めた。また、それと並行して、被験者にちらつきを認知し始めたらボタンを押すように指示した。
【0069】
本実験では、竹井機器工業株式会社製のフリービューDTS:眼球運動追尾装置および眼球運動統計プログラムIIを使用した。撮影した画像から瞳孔を検出し、瞳孔径を算出する処理には、このプログラムの画像処理を用いた。例えば、瞳孔の抽出には、正規化相関法によるパターンマッチング、判別分析法による自動しきい値設定などの画像処理方法を用いた。
【0070】
結果を図4に示す。図4において、最上段の波形は瞳孔径の変動を示している。中の階段波形は、点滅周波数の変化を示す。また、最下段の階段波形は、被験者がフリッカーを認識してボタンを押したタイミングを示す。被験者は、本実験の前にあらかじめ求めておいた閾値周波数である34Hzで、フリッカーの認知を示すボタンを押した。34Hz
以上の周波数では、瞳孔径に変化はあるが、その変化は小さかった。一方、34Hzより低い周波数になると、瞳孔径の値は大きく変化することが観察された。

【0071】
被験者がボタン押しを行なった時点から5秒以前の時間帯および、その時点から5秒以降の時間帯において、瞳孔径の平均値に対する変動量を二乗平均した値、すなわち振幅の標準偏差を求めた。6例について、ボタン押しの前後の各5秒間における、瞳孔径の標準偏差を比較した。縦方向と横方向の瞳孔径の変化は、ほぼ同じであり、同様に変化するため、縦方向の瞳孔径(ピクセル数)で評価を行った。その結果、瞳孔変動の標準偏差の平均値は、ボタン押し前5秒間で2.48±0.29ピクセル、後5秒間で4.06±0.34ピクセルであり、t検定の結果p=0.0012の危険率で、前5秒間より後5秒間の振幅の標準偏差が大きいことが明らかになった。即ち、フリッカーの閾値周波数の前後の周波数で、瞳孔径の変動幅が大きく変化するので、瞳孔径の変動の標準偏差の変化を観測することによって、フリッカーの閾値周波数を決定することができる。

【実施例2】
【0072】
第2の検出方法に関連する実験を行なった。即ち、点滅周波数fとして、ちらつき認知の閾値周波数より7.5Hz高い場合(フリッカー非認知条件)と、7.5Hz低い場合(フリッカー認知条件)の2種類を用い、10秒間の光刺激ON時間(Δton)の後に1.5秒間の光刺激OFF時間(Δtoff)を設け、この1.5秒間の前後の光刺激のOF
F及びONによって引き起こされる瞳孔径の変化について観察した。なお、実施例1と同様に、本実験の前に測定した被験者のフリッカーの閾値周波数は34Hzであったので、フリッカー非認知条件の点滅周波数は41.5Hz、フリッカー認知条件の点滅周波数は26.5Hzとした。なお、瞳孔の撮像および瞳孔径の算出には、実施例1と同じ装置およびプログラムを使用した。
【0073】
得られた結果を、図5及び6に示す。図5及び6はそれぞれ、点滅周波数が26.5Hz、41.5Hzの場合である。
【0074】
(結果1)光刺激のオミッション反応から定常的光刺激状態に対する瞳孔変動の安定化プロセス
光刺激OFFおよび光刺激ONにわたって、光量OFFによる瞳孔の急激な増大と光量ONによる瞳孔の急激な収縮が観察された。約5秒以降、フリッカー非認知条件(41.5Hz)においては、瞳孔が安定化に向かうが、一方、フリッカー認知条件(26.5Hz)においては、ある程度安定化に向かうが、変動が持続することが観察された。そこで、光刺激ON時間の後半であり、光刺激をOFFする前の2秒間において、フリッカー非認知条件およびフリッカー認知条件において、瞳孔変動の振幅の平均値に対する差の二乗平均値、すなわち標準偏差を比較した。縦方向および横方向の瞳孔径の変化は、ほぼ同じであったので縦方向の瞳孔径で評価した。5例について比較を行なった。その結果、フリッカー非認知条件で、振幅の二乗平均値は、1.98±0.36ピクセル、フリッカー認知条件で、3.09±0.36ピクセルであり、t検定を行なった結果、p=0.003の危険率で、フリッカー非認知条件よりフリッカー認知条件の方が、有意に振幅が増大したことが明らかになった。
【0075】
以上から、光刺激のOFFとONに伴う、光オミッション刺激にともなう瞳孔反応の光定常状態に対する安定化の過程において、フリッカー認知条件の方がフリッカー非認知条件より安定化しにくい、すなわち、不安定状態が持続すると考えられる。従って、持続するフリッカー光刺激とオミッションとを組み合わせた光刺激を用い、点滅周波数を段階的に変化させて、瞳孔の変動の安定化の過程を観察することによって、被験者が、実際にフリッカー光を認知しているか否かを判断できる。
【0076】
(結果2)フリッカー閾値からの高・低周波数光刺激列のオミッション反応における瞳孔変動
1.5秒間に光刺激をONからOFF、OFFからONへと変化させるときに、光刺激OFFによる瞳孔の急激な増大と光刺激ONによる瞳孔の急激な収縮が観察された。図5、6で明らかなように、フリッカー認知条件(26.5Hz)とフリッカー非認知条件(41.5Hz)では、光刺激オミッションに対する瞳孔の反応は異なっている。このことを明らかにするために、6例のデータを用いて、光刺激オミッション以前の1.5秒間のデータを用いてゼロベースの瞳孔径を規定し、オミッションにより、瞳孔径がゼロベースからどれだけ、拡大または縮小したかをもとめた。
【0077】
まず、ゼロベースの瞳孔径よりオミッションにより瞳孔がどの程度拡大したかを、フリッカー認知条件とフリッカー非認知条件に関して求めた。その結果、フリッカー認知条件では、13.83±0.91ピクセル、フリッカー非認知条件では、19.83±1.25であった。t検定を行なった結果、p=0.0015の危険率で、ゼロベースに対する瞳孔拡大で、フリッカー認知条件よりフリッカー非認知条件の方が統計的に有意に大きな振幅を示した。
【0078】
次に、光刺激のOFFに伴う瞳孔の拡大の後に続く光刺激のONで引き起こされる瞳孔縮小反応を、ゼロベースに対する減少量として、フリッカー認知条件とフリッカー非認知条件に関して求めた。その結果、フリッカー認知条件では、16.67±1.15ピクセル、フリッカー非認知条件では、10.17±1.30であった。t検定を行なった結果、p=0.0018の危険率で、ベースに対する瞳孔縮小で、フリッカー認知条件よりフリッカー非認知条件の方が統計的に有意に小さな振幅を示した。

【0079】
上記のように、フリッカー認知条件に対しフリッカー非認知条件の方が、瞳孔拡大で大きく、瞳孔縮小で小さく、変動していることが明らかになった。別の表現を用いれば、両条件で、瞳孔径の変動幅が、フリッカー認知条件では、より瞳孔縮小傾向に、フリッカー非認知条件では、より瞳孔拡大傾向にシフトしていると言える。
【0080】
従って、第2の検出方法として上記で説明したように、フリッカー光刺激列およびオミッションの光刺激列を被験者に提示し、刺激列の周波数をステップワイズに減少させ、オミッションに伴う瞳孔の拡大と縮小の変動幅を観察することによって、被験者が、どの点滅周波数からフリッカー光を認知しているかを判断できる。

【実施例3】
【0081】
以下に視覚誘発脳磁図反応に関する実験結果を示す。下記に示すように、視覚誘発脳電位反応においても同様の結果を得ることができると考えられる。
【0082】
先ず、光の点滅を提示するタイミングとして、フリッカー信号ONを1500ms間持続した後、光のオミッションが1500ms間続き、その後、別の周波数でフリッカー信号ONを1500ms持続するシーケンスを採用した。予め被験者に、1500msの間隔でON/OFFする点滅信号を、点滅周波数を変化せて提示し、被験者のフリッカーの閾値周波数を求めた。それをもとに提示する点滅信号の周波数を決定した。即ち、光の点滅周波数として、その被験者が光のちらつきを認識しにくい、閾値周波数より2.5Hzおよび7.5Hz高い周波数、さらに、被験者が光のちらつきを認識し易い、閾値周波数より2.5Hzおよび7.5Hz低い周波数を決定した。光刺激オミッション時間1500msを挟んで、4条件の周波数のフリッカー刺激をランダムに合計100回、提示した。
【0083】
後頭一次視覚野に対応するチャンネルにおいて、上記の4種類の周波数条件において、光刺激列のONおよびOFF反応に対応する、視覚誘発脳磁図反応が観察された。得られた波形データを図7に示す。図7において、縦軸の磁場強度の単位はfT(femto Tesla)
である。また、グラフの右下部分の4つの矢印で、各周波数に関するOFF反応の最大振幅の位置を示している。
【0084】
フリッカー光刺激に対し、光のONに対する脳磁図のON反応および光のOFFに対する脳磁図のOFF反応が検出された。ON反応は、1500msの暗闇の状態から光の提示による光環境の変化に対する反応、OFF反応は、1500msの光環境に対する順応状態から光のない暗闇への光環境の変化に対する反応である。ON反応に関しては、上記の4種類の周波数条件で大きな違いは観察されなかった。しかし、OFF反応に関しては、閾値周波数より7.5Hzおよび2.5Hz高い周波数において、大きなOFF反応が観察され、閾値周波数より2.5Hzおよび7.5Hz低い周波数では、小さなOFF反応が観察された。図7に示したように、OFF反応の変動幅の大きさは、閾値周波数に対し、+7.5Hz、+2.5Hz、-2.5Hz、-7.5Hzの順に大きかった。
【0085】
このように、閾値周波数より高い周波数において、低い周波数よりも大きなOFF反応が観察された。閾値周波数より高い周波数においては、光定常状態に対する順応がより進行しているため、OFFになった場合に大きなOFF反応が検出されたと考えられた。また、閾値周波数よりい周波数においては、光定常状態に対する順応が十分でないため、あまり大きなOFF反応は得られなかった。以上の結果から、フリッカー光刺激列の視覚誘発脳磁図のOFF反応において、ちらつきの認知に対応する光定常状態に対する順応傾向の阻害が、OFF反応の振幅の減少という形で検出された。

【0086】
この結果より、フリッカー光のちらつきの認知という反応が、大脳皮質一次視覚野の活動に直接反映されるということ、言い換えれば、フリッカー光のちらつきの認知という反応自体が、大脳皮質の活動を反映しているという事実が示された。従って、瞳孔径の変動の観察に限らず、フリッカー光刺激列による視覚誘発脳磁図または脳電位図におけるOFF反応を観察することによって、被験者のフリッカー光のちらつきの認知の状態をモニターすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態に係る精神的疲労の検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した検出装置と被験者との位置関係を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る精神的疲労の検出方法を示すフローチャートである。
【図4】点滅周波数を減少させて瞳孔径の変化を観察した結果を示すグラフである。
【図5】フリッカーを認知できる周波数で点滅する光をON/OFFして瞳孔径の変化を観察した結果を示すグラフである。
【図6】フリッカーを認知できない周波数で点滅する光をON/OFFして瞳孔径の変化を観察した結果を示すグラフである。
【図7】点滅する光をON/OFFして被験者に提示して測定した脳磁図を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
1 発光部
2 照明部
3 撮像部
4 制御部
5 被験者
41 演算処理部(CPU)
42 不揮発性読出専用メモリ(ROM)
43 揮発性書換可能メモリ(RAM)
44 記録部
45 計時部
46 インタフェース部(IF部)
47 操作部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6