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明細書 :ちらつきの閾値の測定装置及び測定プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4524408号 (P4524408)
公開番号 特開2010-088862 (P2010-088862A)
登録日 平成22年6月11日(2010.6.11)
発行日 平成22年8月18日(2010.8.18)
公開日 平成22年4月22日(2010.4.22)
発明の名称または考案の名称 ちらつきの閾値の測定装置及び測定プログラム
国際特許分類 A61B   5/16        (2006.01)
FI A61B 5/16 300B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 21
出願番号 特願2009-043625 (P2009-043625)
出願日 平成21年2月26日(2009.2.26)
優先権出願番号 2008231630
優先日 平成20年9月10日(2008.9.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年8月21日(2009.8.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】原田 暢善
【氏名】岩木 直
審査官 【審査官】大▲瀬▼ 裕久
参考文献・文献 特開平11-113888(JP,A)
特開平10-192263(JP,A)
特開2001-212117(JP,A)
特開昭60-198131(JP,A)
特開2005-168856(JP,A)
調査した分野 A61B 5/16
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、1秒間における前記画像を表示しないOFF期間の数を単調に増加または減少させることによって、新たな前記タイミングが決定され、
前記OFF期間が、前記リフレッシュレートの逆数であり、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定し、
複数の新たな前記タイミングの少なくとも一つが、1秒間においてON/OFF表示の周期が一定でないタイミングであることを特徴とするちらつきの閾値の測定装置。
【請求項2】
演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、
所定数のON画素からなる画像からOFF画素の数を単調に増加させ、または、
所定数のON画素からなる画像になるまでON画素の数を単調に増加させ、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF画素の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定することを特徴とするちらつきの閾値の測定装置。
【請求項3】
演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、一定の値であるON画素の輝度値を基準として、OFF画素のコントラストを単調に増加または減少させ、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF画素のコントラストをちらつきの閾値に対応する情報として決定することを特徴とするちらつきの閾値の測定装置。
【請求項4】
前記演算処理部が、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像中のOFF画素の数、前記画像の大きさ、および前記OFF画素のコントラストから成る群の中の少なくとも何れか1つを単調に増加または減少させることを特徴とする請求項1に記載のちらつきの閾値の測定装置。
【請求項5】
前記演算処理部が、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像の色を変化させることを特徴とする請求項14の何れか1項に記載のちらつきの閾値の測定装置。
【請求項6】
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、1秒間における前記画像を表示しないOFF期間の数を単調に増加または減少させることによって、新たな前記タイミングを決定する第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能とを実現させ、
前記OFF期間が、前記リフレッシュレートの逆数であり、
複数の新たな前記タイミングの少なくとも一つが、1秒間においてON/OFF表示の周期が一定でないタイミングであることを特徴とするちらつきの閾値の測定プログラム。
【請求項7】
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、所定数のON画素からなる画像からOFF画素の数を単調に増加さる、または、所定数のON画素からなる画像になるまでON画素の数を単調に増加させる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF画素の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能を実現させることを特徴とするちらつきの閾値の測定プログラム。
【請求項8】
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、一定の値であるON画素の輝度値を基準として、OFF画素のコントラストを単調に増加または減少させる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF画素のコントラストをちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能を実現させることを特徴とするちらつきの閾値の測定プログラム。
【請求項9】
前記装置に、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像中のOFF画素の数、前記画像の大きさ、および前記OFF画素のコントラストから成る群の中の少なくとも何れか1つを単調に増加または減少させる第4の機能をさらに実現させることを特徴とする請求項6に記載のちらつきの閾値の測定プログラム。
【請求項10】
前記装置に、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像の色を変化させる第5の機能をさらに実現させることを特徴とする請求項69の何れか1項に記載のちらつきの閾値の測定プログラム。
【請求項11】
演算処理部、変更可能な点滅周期でON/OFF可能な点滅部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記点滅部の第1の点滅周期及び第2の点滅周期をミリ秒単位の自
然数で指定し、
前記第1の点滅周期に対応する第1周波数と、前記第2の点滅周期に対応する第2周波数との間に、1つの自然数又は連続する自然数として設定可能な第3周波数の最大数をnとして、前記演算処理部が、連続するn+1個のOFF期間のうち、ON期間に変更するOFF期間の数を、時間経過に伴って単調に増加または減少させて、前記点滅部をON/OFFさせ、
前記OFF期間が、前記第1の点滅周期または第2の点滅周期の1/2であり、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点でON期間に変更されているOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定することを特徴とするちらつきの閾値の測定装置。
【請求項12】
操作部と、変更可能な点滅周期でON/OFF可能な点滅部とを備える装置に、
前記点滅部の第1の点滅周期及び第2の点滅周期をミリ秒単位の自然数で指定する第1の機能と、
前記第1の点滅周期に対応する第1周波数と、前記第2の点滅周期に対応する第2周波数との間に、1つの自然数又は連続する自然数として設定可能な第3周波数の最大数をnとして、連続するn+1個のOFF期間のうち、ON期間に変更するOFF期間の数を、時間経過に伴って単調に増加または減少させて、前記点滅部をON/OFFさせる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点でON期間に変更されているOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能とを実現させ、
前記OFF期間が、前記第1の点滅周期または第2の点滅周期の1/2であることを特徴とするちらつきの閾値の測定プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人がちらつきを認識し始める値である閾値の測定に関し、特に、画面のリフレッシュレートが限定されている一般的な表示装置であるCRTや液晶表示装置を用いて、ちらつきの閾値を測定でき、人の精神的疲労(以下、単に「疲労」とも記す)の評価に利用可能な測定装置及び測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビなどを見る場合、健常なときには見えていた「ちらつき」が、疲労状態になると見えなくなるという現象が知られている。光のONとOFFとを交互に繰り返し、これを高速に行なった場合、ヒトは光りのON、OFF状況を認知することができず、光がつきっぱなしである(常に表示されている)と認知する。光をON、OFFする転換の周波数を次第に減少させて行くと、ある周波数で、光のちらつきが認知され始める点がある。この周波数は、フリッカー値(Critical flicker fusion rate: CFF)と呼ばれている。フリッカー値は、健常時には、比較的高い周波数を示すが、疲労、特に精神的疲労の進行とともに減少してゆくことが知られている。この現象、すなわち、フリッカー値の減少をもとに精神的疲労の程度を評価するというフリッカー値検査法は、Simon & Enzer (1941)らにより、約50年前に提唱され、以降、人間工学および労働衛生の分野で精神的疲労または覚醒水準を表す指標として用いられてきた。
【0003】
フリッカー値検査法は、第1に疲労負荷の継続によって計測値の(継続的な)変化が認められる、第2に計測値の変化と活動状態(作業効率など)の変化に一定の関連性が認められる、第3に測定毎の測定値の動揺がすくない、第4に大脳皮質の活動レベルとの密接な関連性があることが認められている等、すぐれた性質を持ち合わせているにも拘らず、その計測装置が巨大であるため、一般に広く普及されることはなかった。
【0004】
フリッカー値を測定する方法は、例えば下記特許文献1及び2に開示されている。下記特許文献1には、視標を点滅表示させるディスプレイを備えたフリッカー感度分布測定装置が開示されている。点滅周波数として、5Hz、10Hz、20Hz、30Hzの例が開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、点滅発光表示装置及びコンピュータ端末装置からなるシステムが開示されている。点滅発光表示装置が、通信ケーブルを介してコンピュータ端末装置によって制御されてフリッカー刺激の提示を行い、コンピュータ端末装置が、フリッカー認知反応に伴うボタン押しの記録を行い、事前に計測されたデータと比較して疲労の程度を測定する。
【0006】
また、フリッカー値は、光刺激のモジュレイト(変化)量に比例するということが報告されている。例えば、短い持続時間のフリッカー刺激よりも長い時間のフリッカー刺激の方が、フリッカー値は高くなること、また、輝度が低いフリッカー刺激より輝度が高いフリッカー刺激の方が、フリッカー値が高くなることが報告されている。さらには、刺激対象の大きさ、または、色によっても変化することが報告されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平11-113888号公報
【特許文献2】特開2003-70773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、フリッカー値検査法は、その計測装置が巨大であるため、一般に広く普及されることはなかった。また、現在でも、フリッカー検査では、光の点滅周期を少なくとも1Hz単位で制御することが必要であり、ON/OFFを厳密に制御できるLEDなどを用いた専用装置が使われており、費用が高く、操作が難しいなどの問題がある。このことが、疲労度を安定して計測できることが示されてきたフリッカー検査の幅広い普及を妨げてきた大きな要因の一つである。
【0009】
近年、電子技術およびコンピュータ技術の発展とともに、コンピュータ、携帯電話などの画像表示機能を有する装置が普及している。コンピュータ、携帯電話においては、視覚情報を表示する方式として、通常は、ある固定された比率(リフレッシュレート)で画面の更新を繰り返す方式が採用されている。リフレッシュレートとは、1秒間に画面を更新する回数(Hz)である。従って、これらの装置を用いて、光の点滅を提示することが考えられる。しかし、例えば、コンピュータの液晶画面の場合、リフレッシュレートは一般に60Hz前後の値であり、その制約で、従来のフリッカー値の測定と同様に、ON期間とOFF期間とを同じにして画面を点滅させる場合、ON/OFF周波数は30Hz、15Hz、7.5Hz、3.25Hz等、限られた値である。従って、その制約の中で、フリッカー値検査を行なうのは不可能である。
【0010】
上記特許文献1には、ディスプレイを用いて視標を点滅表示させること、および点滅周波数として5Hz、10Hz、20Hz、30Hzが開示されているが、ディスプレイのリフレッシュレートとの関係は何ら記載されておらず、固定されたリフレッシュレートでは、例示された周波数の全てを実現することはできない。従って、特許文献1では、ディスプレイのリフレッシュレートを変更すると考えられる。
【0011】
また、上記特許文献2では、コンピュータは、専用の点滅発光表示装置に点滅条件を指示するのに使用されるだけであり、コンピュータの表示部を点滅表示に利用するのではない。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決すべく、特定のリフレッシュレートで画面が更新される一般的な表示装置を用いて、広範囲の条件でちらつきの閾値を測定することができ、人の精神的疲労の評価にも利用することができる測定装置及び測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、ちらつきが見え始める閾値を、単に周波数として測定するのではなく、刺激対象のモジュレイト(変化)量として測定すれば、リフレッシュレートが固定されているために提示可能な点滅周波数が限られる表示装置を用いても、刺激対象のモジュレイト量の変化により、人の精神疲労を評価することができると考えて、本発明をするに至った。
【0014】
即ち、本発明に係る第1のちらつきの閾値の測定装置は、演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、1秒間における前記画像を表示しないOFF期間の数を単調に増加または減少させることによって、新たな前記タイミングが決定され、
前記OFF期間が、前記リフレッシュレートの逆数であり、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定し、
複数の新たな前記タイミングの少なくとも一つが、1秒間においてON/OFF表示の周期が一定でないタイミングである。

【0015】
また、本発明に係る第2のちらつきの閾値の測定装置は、演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、
所定数のON画素からなる画像からOFF画素の数を単調に増加させ、または、
所定数のON画素からなる画像になるまでON画素の数を単調に増加させ、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF画素の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する。

【0016】
また、本発明に係る第3のちらつきの閾値の測定装置は、演算処理部、特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示し、
前記演算処理部が、時間経過に伴って、一定の値であるON画素の輝度値を基準として、OFF画素のコントラストを単調に増加または減少させ、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点のOFF画素のコントラストをちらつきの閾値に対応する情報として決定する。

【0017】
また、本発明に係る第4のちらつきの閾値の測定装置は、上記第1のちらつきの閾値の測定装置において、前記演算処理部が、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像中のOFF画素の数、前記画像の大きさ、および前記OFF画素のコントラストから成る群の中の少なくとも何れか1つを単調に増加または減少させる。
【0018】
また、本発明に係る第5のちらつきの閾値の測定装置は、上記第1第4のちらつきの閾値の測定装置の何れかにおいて、前記演算処理部が、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像の色を変化させる。

【0019】
本発明に係る第1のちらつきの閾値の測定プログラムは、
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、1秒間における前記画像を表示しないOFF期間の数を単調に増加または減少させることによって、新たな前記タイミングを決定する第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能とを実現させ、
前記OFF期間が、前記リフレッシュレートの逆数であり、
複数の新たな前記タイミングの少なくとも一つが、1秒間においてON/OFF表示の周期が一定でないタイミングである。

【0020】
また、本発明に係る第2のちらつきの閾値の測定プログラムは、
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、所定数のON画素からなる画像からOFF画素の数を単調に増加さる、または、所定数のON画素からなる画像になるまでON画素の数を単調に増加させる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF画素の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能を実現させる。

【0021】
また、本発明に係る第3のちらつきの閾値の測定プログラムは、
操作部および特定のリフレッシュレートで画面を更新する表示部を備える装置に、
前記表示部に、所定のタイミングで画像をON/OFF表示する第1の機能と、
時間経過に伴って、一定の値であるON画素の輝度値を基準として、OFF画素のコントラストを単調に増加または減少させる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点のOFF画素のコントラストをちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能を実現させる。

【0022】
また、本発明に係る第4のちらつきの閾値の測定プログラムは、上記第1のちらつきの閾値の測定プログラムにおいて、前記装置に、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像中のOFF画素の数、前記画像の大きさ、および前記OFF画素のコントラストから成る群の中の少なくとも何れか1つを単調に増加または減少させる第4の機能をさらに実現させる。
【0023】
また、本発明に係る第5のちらつきの閾値の測定プログラムは、上記第1第4のちらつきの閾値の測定プログラムの何れかにおいて、前記装置に、前記タイミングが変更されない期間において、時間経過に伴って、前記画像の色を変化させる第5の機能をさらに実現させる。

【0024】
また、本発明に係る第6のちらつきの閾値の測定装置は、演算処理部、変更可能な点滅周期でON/OFF可能な点滅部、および操作部を備え、
前記演算処理部が、前記点滅部の第1の点滅周期及び第2の点滅周期をミリ秒単位の自然数で指定し、
前記第1の点滅周期に対応する第1周波数と、前記第2の点滅周期に対応する第2周波数との間に、1つの自然数又は連続する自然数として設定可能な第3周波数の最大数をnとして、前記演算処理部が、連続するn+1個のOFF期間のうち、ON期間に変更するOFF期間の数を、時間経過に伴って単調に増加または減少させて、前記点滅部をON/OFFさせ、
前記OFF期間が、前記第1の点滅周期または第2の点滅周期の1/2であり、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、前記演算処理部が、その時点でON期間に変更されているOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定することを特徴としている。

【0025】
また、本発明に係る第6のちらつきの閾値の測定プログラムは、
操作部と、変更可能な点滅周期でON/OFF可能な点滅部とを備える装置に、
前記点滅部の第1の点滅周期及び第2の点滅周期をミリ秒単位の自然数で指定する第1の機能と、
前記第1の点滅周期に対応する第1周波数と、前記第2の点滅周期に対応する第2周波数との間に、1つの自然数又は連続する自然数として設定可能な第3周波数の最大数をnとして、連続するn+1個のOFF期間のうち、ON期間に変更するOFF期間の数を、時間経過に伴って単調に増加または減少させて、前記点滅部をON/OFFさせる第2の機能と、
被験者がちらつきを認知し始めたとき、または、ちらつきを認知しなくなったときに、前記操作部が操作された場合、その時点でON期間に変更されているOFF期間の数をちらつきの閾値に対応する情報として決定する第3の機能とを実現させ、
前記OFF期間が、前記第1の点滅周期または第2の点滅周期の1/2であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、広く普及しているコンピュータや携帯端末装置などのリフレッシュレートが限定された表示装置を用いて、より広いダイナミックレンジの刺激を作成して被験者に提示できるので、従来の標準フリッカー値計測法に相当するちらつきの閾値の測定が
可能である。
【0027】
従って、本発明を用いて、被験者が疲労していない状態でちらつきの閾値を取得し、その後、同じ被験者について同様にちらつきの閾値を取得し、それらを比較することによって、その被験者が疲労しているか否かを判断することができる。
【0028】
さらに、ちらつきの閾値の測定および疲労の評価を、被験者自身が、例えば自分の所有するコンピュータや携帯電話を使用して行うことができるので、自己管理に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るちらつきの閾値の測定装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るちらつきの閾値の測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】時間コーディング条件の一例を示す図である。
【図4】空間コーディング条件の一例を示す図である。
【図5】実験結果の一例を示すグラフである。
【図6】コントラストの変化を説明する図である。
【図7】本発明と従来の方法との違いを概念的に示すグラフである。
【図8】別の実験結果の一例を示すグラフである。
【図9】被験者Aに関するちらつきの閾値の測定結果を示すグラフである。
【図10】被験者Bに関するちらつきの閾値の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
コンピュータや携帯電話などの表示装置であるCRTや液晶画面などは、その画面のリフレッシュレート(1秒間に画面を更新する回数)がほとんど固定されている。コンピュータではリフレッシュレートを限定的な範囲で変更することも可能ではあるが、一度リフレッシュレートが設定されると、変更されるまでその値が使用される。通常、例えば、リフレッシュレートが60Hzの画面の場合、単純な光のON/OFFで表されるフリッカー周波数は、その1/2の値である30Hzとなる。通常、輝度の高いLED光などで計測を行なった場合、30Hzのフリッカー刺激は、健常状態のヒトであれば、十分そのちらつきを認知できる。一方、表示装置にON/OFF表示される画像(以下、刺激対象とも記す)の画素のコントラスト、頻度および大きさなどを変化させるとちらつきを認知できない場合があることが分かった。また、フリッカー値の性質で、刺激対象のモジュレイトの量にフリッカー値が比例するという性質が知られている。

【0031】
従って、ちらつきの閾値を測定する方法として、刺激対象の時間的なモジュレイト量を時間コーディングとしてとらえ、単位時間内の光の変化の頻度(ON/OFFの頻度)を変化させる方法(時間コーディング法)と、刺激対象の空間的なモジュレイト量を空間コーディングとしてとらえ、刺激対象内の光の変化を行なわせる画素数の頻度、その画素のコントラスト、刺激対象の大きさ、または刺激対象の色を変化させる方法(空間コーディング法)と、これらを組み合わせた方法(時空間コーディング法)とを提案する。

【0032】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るちらつきの閾値の測定装置を示すブロック図である。

【0033】
本測定装置は、全体を制御する演算処理部(以下、CPUと記す)1と、プログラムなどを記録した不揮発性の読出専用メモリ(以下、ROMと記す)2と、データを一時的に保持可能な揮発性の書換可能メモリ(以下、RAMと記す)3と、データを持続的に保持可能な不揮発性の書換可能な記録部4と、計時部5と、外部とのインタフェースを行うイ
ンタフェース部(以下、IF部と記す)6と、これら各部の間でデータ(制御情報を含む)を交換する内部バス7と、表示部8と、操作部9とを備えている。本測定装置として、例えば公知のコンピュータや携帯端末装置(携帯電話、PHS、PDAなど)を使用することができる。

【0034】
操作部9は、キーやパッドなどの操作手段を備えている。表示部8は、表示画面(液晶パネルなど)及びそれを駆動させる駆動部を備えている。計時部5は、タイマなどの、内部クロックを用いて現在時刻の情報を出力する手段である。

【0035】
本測定装置の動作を簡単に説明すると、CPU1が、予め指定された条件に従って、所定のタイミングで表示部8に表示させる画像データを生成し、IF部6を介して表示部8に伝送する。表示部8に入力される信号は、ディジタルデータ又はIF部で変換されたアナログビデオ信号である。表示部8は、所定のリフレッシュレートで、受信した画像データを被験者10に提示する。CPU1は、指定された条件に従って変化する画像を生成し、これによって表示部8に表示される画像の状態が変化する。被験者10は、表示部8に提示される画像を観察し、ちらつき始めた又はちらつきが無くなったと認知したときに、操作部9を操作する。この操作情報は、IF部6を介してCPU1に伝送され、RAM3や記録部4に記録される。

【0036】
このように、被験者に画像を提示する状態を変化させて、被験者がちらつきを認知するか否かを測定する。本発明では、従来技術のように周波数を細かく段階的に増加又は減少させて、被験者がちらつきを認知した時の周波数を記録するのではなく、限られた周波数において、提示する画像の大きさ、コントラストなどを変化させて、被験者がちらつきを認知し始めた時、又は認知しなくなった時の条件を、ちらつきの閾値として記録する。

【0037】
次に、本測定装置について具体的に説明する。図2は、本実施の形態の測定装置の動作を示すフローチャートである。以下では、特に断らない限りCPU1が行う処理として説明する。また、CPU1は、適宜ROM2および記録部4から必要なデータ(プログラムを含む)をRAM3に読み出し、RAM3の所定領域をワーク領域として使用して処理を行い、一時的結果や最終の処理結果を適宜記録部4に記録することとする。

【0038】
まず、表示部8に測定を行なうか否かのメニューを表示し、被験者10が操作部9を操作して測定を選択した場合、以下に説明する処理が開始される。

【0039】
ステップS1において、初期設定を行う。即ち、画像をON/OFF表示する周波数及びその変化に関する情報(以下、時間コーディング条件と記す)、画像の大きさ(形状)及びその変化に関する情報(以下、空間コーディング条件と記す)、並びに、1種類の時間コーディング条件及び空間コーディング条件で画像をON/OFF表示する時間Δを、記録部4から読み出す。また、時間コーディング数N、及び、表示する画像の最大画素数Pも、記録部4から読み出す。

【0040】
時間コーディング条件、空間コーディング条件の一例を図3及び図4に示す。
時間コーディング条件は、図3に示すように、画像全体をON/OFFするタイミングに関する情報である。図3では、表示部のリフレッシュレートを60Hz(従って、画像がONまたはOFFされる時間は約16.6ms)とし、横軸及び縦軸をそれぞれ時間及び輝度として画像のON/OFF状況を示している。(a)では、1秒間に30回OFFされている。即ち、ON/OFF周波数が、リフレッシュレートが60Hzの場合に可能な最大値である30Hzになっている。(b)は、(a)の次の状態を表しており、1秒間に29回OFFされている。(b)では左端のOFF期間がON期間に変更されているが、別のOFF期間がON期間に変更されてもよい。順次OFFの回数が減少し、最終的に
(d)に示された状態まで変化する。(d)では、1秒間に1回だけOFFされている。

【0041】
空間コーディング条件は、図4に示すように、画像を構成する画素に関する情報である。図4は、画像が13個の画素で構成される場合を示しており(外接円を破線で示す)、各画素を模式的に正方形で表し、ON状態の画素(以下、ON画素とも記す)に斜線を付し、OFF状態の画像(以下、OFF画素とも記す)を白で表している。ここで、ON画素の輝度は全て同じ値であり、OFF画素の輝度も全て同じ値(データは0)である。時間経過に従って、表示される画像は(a)から(d)へと変化する。(a)では12画素がOFF(1画素がON)である。(b)は(a)の次に表示される画像を表しており、11画素がOFF(2画素がON)である。(c)では10画素がOFF(3画素がON)である。同様に、OFF画素が1画素ずつ減少(ON画素が1画素ずつ増加し)、最終的に(d)のように13画素全てがON状態になる。

【0042】
このように、時間コーディング条件、空間コーディング条件とは、CPU1が表示部8に画像を、例えば図3及び図4に示すように変化させて表示するために必要な情報を意味する。

【0043】
ステップS2において、以下の繰り返し処理で使用されるカウンタI、Jに初期値として1をセットする。

【0044】
ステップS3において、I=1に対応する時間コーディング条件を決定し、ステップS4において、J=1に対応する空間コーディング条件を決定する。具体的には、予め記録部4に記録された時間および空間コーディング条件の中から、I、Jに対応するコーディング条件を読み出す。

【0045】
ステップS5において、ステップS3、S4で決定された条件に従って、画像を生成し、表示部8に表示する。例えば、I=1の時間コーディグ条件が、図3の(a)に対応し、J=1の空間コーディング条件が図4の(a)に対応すると仮定すると、I=1、J=1の場合には、図4の(a)の画像が生成され、表示部8に表示される。そして、画像が表示された状態が、図3の(a)のON期間維持される。OFF期間になると、画像全体が表示されない。このとき、画像のON/OFF表示を開始する直前に、計時部5から時刻を取得し、開始時刻Tとする。

【0046】
ステップS6において、被験者10によって操作部9が操作されたか否か(例えば、何れかのキーが押されたか否か)を判断する。例えば、ステップS5において、「ちらつき始めたらキーを押してください」と表示部8に表示し、その後画像のON/OFF表示を開始する。被験者10が、表示部8に表示された画像がちらつき始めたと認知してキーを押下した場合、ステップS10に移行する。ステップS10では、キーが押されたときのIおよびJの値を記録部4に記録する。被験者10が依然としてキーを押下していなければ、ステップS7に移行する。

【0047】
ステップS7において、計時部5から現在時刻tを取得して開始時刻Tと比較し、その差(t-T)が、時間Δよりも小さければ(t-T<Δ)ステップS6に戻り、時間Δ以上であれば(t-T≧Δ)ステップS8に移行する。これによって、被験者10がキーを押さなければ、時間Δの間、ON/OFF表示が行われる。

【0048】
ステップS8において、画像を構成する全画素がON状態、即ちOFF画素が無い状態になったか否かを判断する。OFF画素があれば、ステップS9に移行し、Jに1を加算した後、ステップS4に移行する。判断方法としては、例えば、ステップS1で読み出した最大画素数Pから現在のJを減算し、その値(P-J)が0か否かを判断すればよい。

【0049】
J=2の条件でステップS4~S6が実行されるときには、ステップS4において、J=2に対応する空間コーディング条件(例えば、図4の(b))が決定され、ステップS5において、I=1に対応する時間コーディング条件(図3の(a)に対応)、及びJ=2に対応する空間コーディング条件(図4の(b)に対応)で、I=1、J=1の場合と同様に画像のON/OFF表示を行う。そして、画像のON/OFF表示は、上記したように、被験者10が操作部9を操作するか、または時間Δが経過するまで、継続される。

【0050】
J≧3の条件でステップS4~S6が実行されるときにも同様に、ステップS4において、Jに対応する空間コーディング条件(J=3の場合、例えば図4の(c))が決定され、ステップS5において、I=1に対応する時間コーディング条件(図3の(a)に対応)、及びJに対応する空間コーディング条件(J=3の場合、図4の(b)に対応)で、画像のON/OFF表示を行う。

【0051】
以上のように、被験者10が操作部9を操作するまで、ステップS4~S9が繰り返されて、OFF画素の頻度(画像中のOFF画素の数)を減少させながら、1つのI(I=1)に対応する時間コーディング条件で、画像をON/OFF表示することができる。

【0052】
ステップS10では、上記したようにキーが押されたときのIおよびJの値を対応させて記録部4に記録する。

【0053】
次に、ステップS11において、終了するか否か、即ち未使用の時間コーディング条件が残っているか否かを判断する。判断方法としては、例えば、ステップS1で読み出した時間コーディング数Nから現在のIを減算し、その値(N-I)が0か否かを判断すればよい。終了しない場合には、ステップS11に移行し、Iに1を加算した後、ステップS3に移行する。

【0054】
I=2の条件でステップS3~S10が実行されるときには、ステップS3において、I=2に対応する時間コーディング条件(例えば、図3の(b))が決定され、ステップS4~S10において、Jに対応する空間コーディング条件(図4の(a)~(d)に対応)で、I=1の場合と同様に画像のON/OFF表示を行う。即ち、図4の(a)~(d)の画像が順次生成され、I=2に対応する空間コーディング条件(例えば、図3の(b))で、表示部に表示される。

【0055】
I≧3の条件でステップS3~S10が実行されるときにも同様である。I=3の場合には、例えば図3の(c)に対応する時間コーディング条件で、図4の(a)~(d)の画像が順次生成され、画像のON/OFF表示が行われる。

【0056】
以上説明したように、ステップS1~S11によって、空間コーディング条件を変更しながら、即ち提示する画像を変更しながら、所定の時間コーディング条件でその画像をON/OFFさせて、被験者に提示することができる。従って、被験者が、ちらつきを認知し始めたときに操作部を操作すれば、ちらつきの閾値を表す情報として、そのときの時間コーディング条件及び空間コーディング条件に対応するI及びJを決定して記録することができる。

【0057】
従って、予め、被験者が疲労していない状態で、上記したようにちらつきの閾値を測定して記録し、その後、同じ被験者について同様に測定して得られたちらつきの閾値を、疲労していない状態のちらつきの閾値と比較することにより、被験者が疲労しているか否かを判断することができる。即ち、人が疲労すればちらつきの閾値が変化するので、疲労していない状態でのちらつきの閾値を基準として、ちらつきの閾値の変化程度を評価すれば
、疲労状態にあるか否かを判断できる。例えば、ちらつきの閾値が所定値以上変化していれば、疲労していると判断することができる。このとき、ちらつきの閾値は、時間コーディング条件及び空間コーディング条件で特定されるので、一般に多次元データである。従って、対応する時間コーディング条件毎に、空間コーディング条件の差を求め、それらの平均値、最大値、中央値などを用いてもよい。また、多次元のちらつきの閾値をグラフ化し、その変化程度を判断してもよい。ちらつきの閾値の変化の程度の評価には、その他の公知の方法を用いることができる。

【0058】
なお、時間コーディング条件、空間コーディング条件をそれぞれ単独で用いても、ちらつきの閾値の計測は可能である。しかし、時間コーディングおよび空間コーディング条件の一方のみを変更する場合、限られたダイナミックレンジおよびステップ数しか表現できない制約が存在する。一方、上記したように同時に双方を変更することにより、こうした制限をなくし、従来の標準フリッカー値計測法(広い周波数帯での刺激の提示が可能)に相当する、より広いダイナミックレンジの刺激を作成して提示することが可能となる。即ち、標準フリッカー値計測法との対応を考慮した場合、時間コーディング条件および空間コーディング条件を同時に変更して、ちらつきの閾値を求めることが望ましい。

【0059】
本発明は上記の実施形態に限定されず、例えば、以下に説明するように装置の構成および処理を種々変更して実施することができる。

【0060】
上記では、リフレッシュレートが60Hz、表示する最大画素数が13画素の場合を説明したが、これに限定されない。ON期間およびOFF期間は、リフレッシュレートf(Hz)によって決まる等しい値(1/f(秒))であり、1秒間のOFF期間の最大数はf/2(回)である。従って、OFF期間の数はf/2(回)から減少させればよい。

【0061】
また、OFF期間の数を、いくつから減少させ始めるか、いくつずつ減少させるかは任意である。つまり、f/2(上記では30Hz)から開始せず、それよりも若干小さい値(自然数)から開始してもよい。また、減少値は1に限らず、2でも3でもそれより大きい値(自然数)であってもよい。さらには、予め定めた値(例えば、30、15、4、1回など)に直接変化させてもよい。

【0062】
また、提示する画像の形状、大きさ(画素数)は任意である。例えば、OFF画素数が同じ画像であっても、OFF画素の位置は任意である。

【0063】
また、上記では、ON画素、OFF画素の輝度値はそれぞれにおいて全て等しい場合を説明したが、時間経過に伴ってOFF画素の輝度値(コントラスト)を変化させ、上記と同様にちらつきの閾値を測定してもよい。また、提示する画像の色を変化させてもよい。これらも空間コーディング条件に含まれる。具体的には、実施例として後述する(実施例では、OFF画素の輝度値の変化を、コントラストの変化で表している)。処理順序としては、例えば、図2に示したフローチャートにおいて更にコントラストを変化させる場合、新たに繰り返しカウントKを準備し、カウンタJのループ(ステップS4~S9)の中にカウンタKのループ(コントラストを変更する処理)を組み込めばよい。また、画像の大きさを変化させずに、ステップS4においてコントラストを変更する処理を行ってもよい。色を変化させる場合も同様である。

【0064】
また、上記では、時間経過に伴って画像のOFF期間の数が単調に減少するように、時間コーディング条件を変更する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、時間経過に伴って、画像のOFF期間の数が単調に増大するように、時間コーディング条件を変更してもよい。また、時間経過に伴って、OFF画素数が減少するように、空間コーディング条件を変更する場合を説明したが、これに限定されない。OFF画素数が1から増加
するように、空間コーディング条件を変更してもよい。これらの場合、被験者がちらつきを認知した状態から測定を開始することになるときには、ちらつきを認知しなくなったときの時間および空間コーディング条件を得ることができる。

【0065】
また、時間コーディング条件毎に、空間コーディング条件を変更する場合を説明したが、これに限定されない。空間コーディング条件毎に時間コーディング条件を変更して、画像を表示してもよい。

【0066】
また、ちらつきの閾値に対応する情報として、繰り返し処理のカウンタI、Jを記録する場合を説明したが、被験者がちらつきを認知したときの時間コーディング条件及び空間コーディング条件そのもの、又はそれらを特定できる情報であればよい。

【0067】
また、CPU1がリアルタイムに画像を生成する代わりに、予め生成されて記録部に記録された画像データを適宜読み出してもよい。

【0068】
また、携帯電話などの液晶ディスプレイ用のバックライトを用いて刺激を変化させて提示して、ちらつきの閾値を測定することも可能である。通常、バックライトの点滅周期は、ミリ秒(ms)単位で指定することができる。従って、最大約1kHzの周波数で点滅させることができる。バックライトをちらつきの閾値の測定に使用する場合、数Hz~数十Hzの周波数帯域で使用することが必要になるが、この周波数帯域では、バックライトの点滅を1Hz間隔で変化させることができず、周波数に飛びが生じる。従って、バックライトを用いてちらつきの閾値を測定するには、本発明の時間コーディング法を適用することが望ましい。即ち、携帯電話の演算処理部に、メモリなどを使用して、後述する時間コーディング条件でバックライトを点滅させることが望ましい。このとき、液晶ディスプレイの表示パターンは、時間的に変化させずに固定しておけばよい。表示パターンは任意形状でもよく、例えば、液晶ディスプレイ全体を白色(最大の輝度値でなくてもよい)にしてもよく、ディスプレイの中央付近の所定領域を白色にしてもよい。

【0069】
表1に、点滅周波数の飛びと、それを補うための時間コーディング条件が示されている。

【0070】
【表1】
JP0004524408B2_000002t.gif

【0071】
「指定周期」は、指定され得るバックライトの点滅周期であり、ここでは2ms間隔で指定される場合を示す。「ON期間」は、指定周期によって自動的に決まるバックライトをON(点灯)する時間であり、指定周期の1/2の値である。従って、バックライトをOFF(非点灯)するOFF期間は、ON期間と同じ値である。「実際の周波数」は、指定周期によって決まるバックライトの点滅周波数である。「目標周波数」は、実際の周波数に近似する整数値であり、従来の方法における1Hz間隔で設定される値に対応する。

【0072】
このように、通常、指定周期は整数値で指定されるので、利用可能なバックライトの点滅周波数(実際の周波数)を1Hz間隔で変化させることはできない。例えば、表1の1行目は、指定周期として16msが指定された場合、実際の周波数が62.50Hzになり、62Hzの目標周波数として利用できることを表しており、2行目は、指定周期として18msが指定された場合、実際の周波数が55.55Hzになり、55Hzの目標周波数として利用できることを表している。従って、実際の周波数62.50Hzと55.55Hzとの間(目標周波数62Hzと55Hzとの間)には、約7Hzの差があり、それらの間の目標周波数61、60、59、58、57、56Hzの6つの周波数を実現することはできない。

【0073】
そこで、本発明の時間コーディング法を適用すれば、これらの周波数を実質的に補うことができる。即ち、表1の「中間の表示方法」の列には、これらの実現できない周波数に対応する時間コーディング条件を示している。例えば、1行目の右端のセルには、1行目の目標周波数(62Hz)と2行目の目標周波数(55Hz)との間に必要な6つの周波数(61、60、59、58、57、56Hz)に対応する時間コーディング条件を示している。即ち、16msの指定周期(ON期間は8ms)を用いて、1/7、2/7、3/7、4/7、5/7、6/7の時間コーディング条件で測定することを示している。2行目以降の右端のセルも同様である。なお、最下行の右端のセルには、目標周波数27Hzと、次の目標周波数である25Hz(省略)との間の周波数(具体的には26Hz)に対応する時間コーディング条件を示している。

【0074】
表1に示した時間コーディング条件の意味は、図3を用いて上記で説明した内容と同様である。即ち、分母は、連続するOFF期間のうち、1つの組として扱われるOFF期間の数を表し、分子は、1つの組として扱われるOFF期間のうち、ON期間に変更される数を表す。例えば、時間コーディング条件1/7は、連続する7つのOFF期間のうち、1つをON期間に変更して、バックライトを点滅させることを表す。このことは、1秒間に含まれる複数のOFF期間のうち、1/7をON期間に変更することと同じである。同様に、時間コーディング条件4/5は、連続する5つのOFF期間のうち、4つをON期間に変更して点滅させることを表す。

【0075】
このように、バックライトが点滅可能な周波数のうち、隣接する周波数の間隔が1.5Hz以上である場合、本発明の時間コーディング法を適用することによって、実現できない点滅周波数に実質的に相当するちらつきの閾値を測定することができる。なお、2ms以外の間隔で「指定周期」を設定する場合にも、例えば1ms間隔で設定する場合にも、本発明の時間コーディング法を適用可能であることは明らかである。

【0076】
また、バックライトに限らず、LEDなどの点滅刺激の提示手段においても、点滅周期をmsオーダーよりも短い時間で指定できない場合には、同様に実現できない点滅周波数が生じるので、本発明の時間コーディング法を適用することが有効である。

【0077】
また、ON期間に変更するOFF期間の数は、単調に増加または減少させればよい。例えば、1/7、2/7、3/7、4/7、5/7、6/7の時間コーディング条件の場合
、時間経過に伴って、1/7、2/7、3/7、4/7、5/7、6/7の順で、又は、6/7、5/7、4/7、3/7、2/7、1/7の順で実行する。

【0078】
また、上記では、間を補うべき2つの周波数のうち、小さい方の指定周期(例えば16ms)によって決まる周波数を用いて、時間コーディングを行う場合を説明したが、大きい方の指定周期(例えば18ms)によって決まる周波数を用いてもよい。例えば、表1の1行目に示した中間の表示方法において、18msの指定周期(ON期間は9ms)を用いて、点滅させてもよい。

【0079】
なお、被験者によって、携帯電話の操作部が操作されたときに、ちらつきの閾値に対応する情報を記録することは、上記と同様である。

【0080】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴をさらに明らかにする。
【実施例1】
【0081】
60Hzで画面のリフレッシュが行なわれる液晶画面を用いて、刺激対象(画像)の刺激頻度(上記した時間コーディング条件に対応)、コントラスト、および大きさを変化させ、どの時点でちらつきが認知されるかについて実験した。刺激頻度を1/60、4/60、15/60、30/60の4段階で変化させ、刺激対象(図4で示すパターン参照)の円形の大きさを±7ピクセル(視野角0.4度)、±20ピクセル(視野角1.1度)、±50ピクセル(視野角2.9度)、の3段階で変化させ、4×3=12条件において、刺激対象のONとOFFとのコントラストを、100対100から、OFF条件(OFF状態の輝度)を1秒ごとに0.5%減少させ、ちらつきが見え始めるときのコントラストを求めた。2人の被験者で、各条件あたり3回の計測を行なった結果を図5に示す。
【実施例1】
【0082】
ここで、刺激頻度n/60(n=1、4、15、30)は、1秒間にn回OFFすることを意味する。また、刺激対象の大きさは、画像の中心画素を1画素と数え、最外周の画素までの直線上の画素数で表している。
【実施例1】
【0083】
また、コントラストとは、図6に示したように、ON画素の輝度値LONに対する、OFF画素の輝度値LOFFの比率(%)、即ち、100LOFF/LONである。従って、コントラストを減少させるとは、図6に示したように、ON画素の輝度値を一定値LONとし、OFF画素の輝度値LOFFを最初LONと同じ値にし、1秒経過する毎に、OFF画素の輝度値LOFFを、0になるまで、n1、n2、n3のように、LONの0.5%だけ減少させる(毎回減少させる値は一定)ことを意味する。ON画素の輝度値を一定値LONとしているので、OFF画素の輝度値を減少させることはコントラストを減少させることに等しい。
【実施例1】
【0084】
図5の(a)~(c)、(d)~(f)は、それぞれの被験者A、Bに関するデータを表す。図5から次のことが分かる。
1:刺激頻度(1秒間のON/OFF回数)が増加するに従って、3つの刺激対象の大きさの条件において、ちらつきが見え始めるOFF反応のコントラスト(100LOFF/LON(%))の減少、即ち、ちらつきが見え始める点のコントラスト比(LON/LOFF)の増大が確認された。具体的には、被験者A、Bの何れについても、図5の(b)、(e)に示すように、刺激頻度30/60のときのコントラストが、刺激頻度15/60、4/60、1/60のときのコントラストよりも明らかに減少している。即ち、刺激頻度が増大するに従って、ちらつきが見えにくくなる。
2:刺激対象の大きさが増大するに従って、ちらつきが見え始めるOFF反応のコントラストの増加、即ち、ちちらつきが見え始める点のコントラスト比の減少が確認された。具体的には、被験者A、Bの何れについても、図5の(c)、(f)に示すように、刺激対
象の大きさが±50ピクセルから、±20ピクセル、±7ピクセルと減少するに伴って、コントラストが減少している。即ち、刺激対象の大きさが増大するに従って、ちらつきが見えやすくなる。
【実施例1】
【0085】
従って、ちらつきが見え始めるコントラストを測定することによって、疲労度を評価することができる。本発明(コントラストを変化させる方法)と、従来の測定方法との違いを説明すれば、次の通りである。
【実施例1】
【0086】
図7は、被験者に提示される輝度とフリッカー値との関係が、被験者の疲労によってどのように変化するかを示すグラフである。横軸は提示される輝度(cd/m2)、縦軸はフリ
ッカー値CFF(Hz)である。例えば、実線の曲線は、疲労していない状態における測定結果を表し、破線の曲線は、疲労している状態における測定結果を表す。このように、フリッカー値CFFの測定結果は、疲労によって実線の曲線から破線の曲線のように変化することが知られている(例えば、橋本邦衛,他:視標および背景の明るさと見え方,鉄道労働科学 4;65-72,1953参照)。従来方法では、特定の輝度においてフリッカー値CFFを
測定し、疲労していない状態におけるフリッカー値CFFからの変化を求めて、疲労度を評価する。即ち、従来方法では、実線の曲線が破線の曲線まで、縦軸方向に変化する程度によって疲労度を評価する。これに対して、本願発明者は、従来の発想を転換して、実線の曲線が破線の曲線まで、横軸方向に変化する程度を求めて、疲労度を評価することが可能であることを見出した。
【実施例2】
【0087】
60Hzで画面のリフレッシュが行なわれる液晶画面を用いて、刺激頻度を10/60、刺激対象の大きさを±15ピクセル(視野角0.9度)とし、刺激のONとOFFにおけるOFFのコントラストを2秒間に1%減少させる条件において、刺激対象の色を、白、緑、赤と変化させて、ちらつきが見え始めるときのコントラストを求めた。2人の被験者A、Bにおいて、各条件5回の計測を行なった結果を図8に示す。
【実施例2】
【0088】
上記の刺激条件で、刺激対象の色を白、緑、赤と変化させた時、刺激対象のちらつきが見え始めるOFFのコントラストの減少値は、被験者Aで、白:76.6%、緑:82.4%、赤:82.8%、被験者Bで、白:68.8%、77.8%、81.8%であった。従って、色が白、緑、赤と変化するにしたがって、見えやすくなることが明らかになった。
【実施例3】
【0089】
本発明の信頼性を評価するために、従来のフリッカー測定装置による測定結果との比較を行った。本発明の時空間コーディング法によって刺激のコントラストを変化させ、ちらつきの閾値(フリッカー値に対応する)が、疲労負荷に伴いどのように変化するかに関して検討した。即ち、日中から翌日の朝まで徹夜で労働を行うという疲労負荷状態で、パーソナルコンピューター(以下PCと記す)および携帯電話を用いて、ディスプレイに提示する刺激(画像)のコントラストを変化させて、ちらつきの閾値を測定した。同様に、Windows(登録商標)モバイル端末(以下、モバイル端末と記す)のLEDおよびフリッカ
ー標準機(市販のフリッカー値測定装置)を用いて、提示する刺激の周波数を変化させて、ちらつきの閾値(この場合はフリッカー値を意味する)を測定した。
【実施例3】
【0090】
以下に、具体的に説明する。被験者として、健常成人2名(被験者A、B)を選んだ。被験者には、前日十分な睡眠と休息をとってもらい、疲労のない状態で実験に参加してもらった。最初の計測を午後2時30分に行い、以降、2時間ごとに、上記の4方式でちらつきの閾値の計測を行った。被験者は、計測と計測の間には、それぞれに与えられた労働を行い、必要に応じて食事を取ることも許可された。最終の計測を、翌日の午前8時30
分に行った。その後、各々、仮眠を取り、再度、4方式でちらつきの閾値の計測を行った。ちらつきの閾値の計測は、フリッカー標準機、PC、携帯電話、モバイル端末の順序で行い、それぞれ、合計5回の計測を行った。
【実施例3】
【0091】
提示した刺激は、次の通りである。PCには、Apple社のMac Book Proを用いた。ディ
スプレイ上に、黒色の背景に直径約4mmの白色の丸型イメージ(刺激)を提示し、刺激のコントラストを、256階調をパーセントで評価し、1秒当たり0.5%の比率で変化させた。即ち、刺激(輝度)の最大値を100%で表し、0~100%の間を線形に256階調で変化させると仮定した場合、階調間が約0.39%(=100/255)になるので、ある値の刺激を0.5%の比率で変化させるには、0.5%変化させた後の目標とする刺激(%)に最も近い階調を決定すれば良い。刺激を提示する速さは、30回/秒であった。
【実施例3】
【0092】
携帯電話には、Docomo社のSH906i(SHARP社製)を用い、PCの場合と同様に刺激を提
示した。但し、刺激のコントラストを256階調で表し、1秒当たり1階調の速度で変化させた。また、刺激を提示する速さは、15回/秒であった。
【実施例3】
【0093】
モバイル端末には、WILLCOM社のWSO11SH(SHARP社製)を用い、ディスプレイの左上部
に位置する約1mm四方の3つのLEDのうち、電源に関する右端の緑色のLEDを点滅させた。LEDの点滅状態を1秒間維持し、その後0.5秒間LEDをOFF(消灯状態)する処理を、繰り返した。点滅状態およびこれに続く消灯状態を1周期(1.5秒)として、LEDの周波数を、60Hzから、1周期ごとに0.5Hz減少させた。
【実施例3】
【0094】
フリッカー標準機には、SHIBATA社のROKEN DIGITAL FLICKER, MODEL RDF-1を用いた。
刺激は、赤色で、55Hzから毎秒1Hzの速さで、周波数を減少させた。
【実施例3】
【0095】
図9及び図10は、それぞれ被験者A及びBに関する測定結果を示すグラフである。これらの図において、縦軸は、午後2時30分における測定値で規格化されたちらつきの閾値である。即ち、午後2時30分における測定値を1として、これに対する比率でその後の測定値を表現している。
【実施例3】
【0096】
これらの図から、被験者A及びBの何れに関しても、時間の経過に伴って、4方式で計測したちらつきの閾値が、漸進的に減少してゆくことが確認できる。そして、翌日の午前6時30分または午前8時30分の計測において、ちらつきの閾値は最低値を示している。そして、各々が仮眠をとった後は、4方式で計測したちらつきの閾値すべてが、ほぼ前日の午後4時30分および午後6時30分のレベルに回復していることが確認できる。また、4方式で計測した値を変化幅で規格化すれば、即ち最大値と最小値の幅を同じにすれば、略同じ変化傾向を示す。即ち、PC、携帯電話、モバイル端末の何れで測定した値の変化も、フリッカー標準機で測定した値の変化をほぼ再現できていると言える。
【実施例3】
【0097】
以上のように、4方式で計測したちらつきの閾値が、徹夜労働という疲労負荷に伴い減少すること、また、仮眠により回復することが確認された。さらに、本発明の方法で測定されたちらつきの閾値は、従来法で測定されたフリッカー値と同様に、疲労の状況を反映しうるものであることが明らかになった。
【符号の説明】
【0098】
1 演算処理部(CPU)
2 読出専用メモリ(ROM)
3 書換可能メモリ(RAM)
4 記録部
5 計時部
6 インタフェース部(IF部)
7 内部バス
8 表示部
9 操作部
10 被験者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
9