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明細書 :生体適合性材料、医療用具及び生体適合性材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6019524号 (P6019524)
公開番号 特開2013-121430 (P2013-121430A)
登録日 平成28年10月14日(2016.10.14)
発行日 平成28年11月2日(2016.11.2)
公開日 平成25年6月20日(2013.6.20)
発明の名称または考案の名称 生体適合性材料、医療用具及び生体適合性材料の製造方法
国際特許分類 A61L  29/00        (2006.01)
A61L  33/00        (2006.01)
A61L  31/00        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61M   1/16        (2006.01)
A61F   2/06        (2013.01)
FI A61L 29/00
A61L 33/00
A61L 31/00
A61L 27/00 P
A61L 27/00 Z
A61M 1/16
A61F 2/06
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2011-270727 (P2011-270727)
出願日 平成23年12月9日(2011.12.9)
審査請求日 平成26年11月14日(2014.11.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
発明者または考案者 【氏名】田中 敬二
【氏名】田中 賢
【氏名】松野 寿生
【氏名】平田 豊章
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100176289、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 裕
審査官 【審査官】天野 貴子
参考文献・文献 特開2004-161954(JP,A)
Toyoaki Hirata et al,Physical Chemistry Chemical Physics,2011年 3月21日,vol.13, no.11,p.4928-4934,[平成27年9月28日検索],インターネット,URL,http://tokkyo.shinsakijun.com/information/newtech.html
調査した分野 A61L 29/00
A61F 2/06
A61L 27/00
A61L 31/00
A61L 33/00
A61M 1/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
室温においてポリアクリル酸2‐メトキシエチルとガラス状態の混合相を維持しうるポリマーとポリアクリル酸2‐メトキシエチルとの混合物を含み、
前記混合物は、
前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水に暴露された表面である水界面側に偏析した傾斜構造を有する、
ことを特徴とする生体適合性材料。
【請求項2】
前記混合物における前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルに対する前記ポリマーの混合重量比である前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチル:前記ポリマーは、
1:99~90:10の範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体適合性材料。
【請求項3】
前記ポリマーは、
ポリメタクリル酸メチルである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体適合性材料。
【請求項4】
前記混合物は、
基体上に薄膜状に形成されており、
前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが前記基体と接していない水界面側に偏析している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生体適合性材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生体適合性材料を含む医療用具であって、
前記混合物の表面が水を介して生体成分又は生体組織に接触するように設けられている、
ことを特徴とする医療用具。
【請求項6】
生体成分又は生体組織に接触させる前に前記混合物の表面を水に暴露する手段を備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の医療用具。
【請求項7】
水に暴露する時間は、
少なくとも8時間である、
ことを特徴とする請求項6に記載の医療用具。
【請求項8】
室温においてポリアクリル酸2‐メトキシエチルとガラス状態の混合相を維持しうるポリマーとポリアクリル酸2‐メトキシエチルとの混合物を含み、
前記混合物は、前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水に暴露された表面である水界面側に偏析した傾斜構造を有する、生体適合性材料の製造方法であって、
前記混合物は、
前記混合物のガラス転移温度以上かつ曇点以下の温度に保持することで、前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水界面側に偏析して形成される、
ことを特徴とする生体適合性材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性材料、医療用具及び生体適合性材料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル、ステント、人工心肺装置用の膜及びチューブ、人工血管、血液保存パック等の医療用具は、血液と接触するため、血液の凝固及び血栓の形成が問題となる。一般に、血液の凝固は、ヘパリンやクエン酸ナトリウム等の抗血液凝固剤を用いることによって防ぐことができる。このため、上記医療用具には、特に、抗血栓性が求められる。
【0003】
抗血栓性を有する生体適合性材料として、例えば、ポリ(2‐メトキシエチルアクリレート)(ポリアクリル酸2‐メトキシエチルともいう。以下、単に「PMEA」とする)が挙げられる(特許文献1参照)。PMEAは、高分子鎖との相互作用により高分子鎖に弱く束縛された水であると考えられる、いわゆる中間水(-100℃からの昇温過程で水の低温結晶形成に由来する発熱ピークが-40℃付近に安定して観測される状態の水)を有することにより、抗血栓性等の生体適合性を示すことが知られている。
【0004】
一方、PMEAは、室温でゴム状態であるため、形態安定性に劣る。これを解決すべく、PMEAにポリメタクリル酸メチル(以下、単に「PMMA」とする)を混合したポリマーブレンドによる薄膜がある(非特許文献1参照)。非特許文献1には、該ポリマーブレンドによる薄膜に熱処理を加えることによって、PMEAが表面側に偏析する傾向があることが記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-161954号公報
【0006】

【非特許文献1】Surface segregation of poly(2-methoxyethyl acrylate) in a mixture with poly(methyl methacrylate)、K. Tanaka et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 13, 4928-4934, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記非特許文献1に記載のPMEAを含む薄膜は、膜厚を薄く調製しうる点で形態安定性に優れるが、抗血栓性について評価されていなかった。一般に、ポリマーブレンドは、不均一な組織構造を有しており、ポリマーブレンドの各種特性がその組織構造等に大きく影響されることが知られている。このため、PMEAと他のポリマーとを含む膜が抗血栓性を有するか否かは不明であり、当該膜を生体適合性材料として利用することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より高い抗血栓性を有する生体適合性材料、当該生体適合性材料を用いた医療用具及び生体適合性材料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、室温でPMEAとの間に相溶性を有して、ガラス状態の混合相を形成しうるポリマーとPMEAとのポリマーブレンドについて詳細に検討したところ、熱処理を施して得られた当該ポリマーブレンドによる薄膜が抗血栓性等の生体適合性を有することを見出した。特に、ポリマーブレンド中のPMEAを所定の割合にすることによって、抗血栓性が純粋なPMEAよりも優れることを、本発明者は明らかにした。さらに、本発明者は、当該ポリマーブレンドによる薄膜を使用前に水に暴露することで、薄膜表面の抗血栓性がより向上することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の観点に係る生体適合性材料は、
室温においてポリアクリル酸2‐メトキシエチルとガラス状態の混合相を維持しうるポリマーとポリアクリル酸2‐メトキシエチルとの混合物を含み、
前記混合物は、
前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水に暴露された表面である水界面側に偏析した傾斜構造を有する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、前記混合物における前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルに対する前記ポリマーの混合重量比である前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチル:前記ポリマーは、
1:99~90:10の範囲である、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記ポリマーは、
ポリメタクリル酸メチルである、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記混合物は、
基体上に薄膜状に形成されており、
前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが前記基体と接していない水界面側に偏析している、
こととしてもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る医療用具は、
上記に記載の生体適合性材料を含む医療用具であって、
前記混合物の表面が水を介して生体成分又は生体組織に接触するように設けられている、
ことを特徴とする。
【0016】
記に記載の医療用具
生体成分又は生体組織に接触させる前に前記混合物の表面を水に暴露する手段を備える、
こととしてもよい
【0017】
この場合、水に暴露する時間は、
少なくとも8時間である、
こととしてもよい。
本発明の第3の観点に係る生体適合性材料の製造方法は、
室温においてポリアクリル酸2‐メトキシエチルとガラス状態の混合相を維持しうるポリマーとポリアクリル酸2‐メトキシエチルとの混合物を含み、
前記混合物は、前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水に暴露された表面である水界面側に偏析した傾斜構造を有する、生体適合性材料の製造方法であって、
前記混合物は、
前記混合物のガラス転移温度以上かつ曇点以下の温度に保持することで、前記ポリアクリル酸2‐メトキシエチルが水界面側に偏析して形成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る生体適合性材料及び医療用具は、より高い抗血栓性を有する。また、本発明に係る生体適合性材料製造方法は、当該生体適合性材料の抗血栓性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)は、PMEA/PMMAブレンド膜におけるPMEA体積分率(φPMEA)と表面からの深さとの関係を示す図である。図1(B)は、PMEA/PMMAブレンド膜におけるPMEA体積分率(φPMEA)のモデルプロファイルの図である。
【図2】PMMAのホモポリマー膜、PMEA/PMMAブレンド膜及びPMEAのホモポリマー膜の表面に粘着した血小板の数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るPMEAを含有する生体適合性材料について、特にPMEAに対してPMMAを混合する例について説明する。

【0021】
ここで、本発明における生体適合性とは、長期間に渡って生体に悪い影響や強い刺激を与えず、本来の機能を果たしながら生体成分、生体組織及び生体由来の物質と共存できる属性を意味する。典型的には、生体適合性は、血栓の形成を抑制する性質である抗血栓性や血液の凝固を抑制する性質である抗血液凝固性等を意味する。

【0022】
PMMAは、形態安定性を有することで容易に各種形状や薄膜状に形成できる。また、PMEAと溶媒中で混合した後に溶媒を除去する等の方法で、PMEAと室温でガラス状態の混合物を形成することができる。ここで、室温とは、通常は25~45℃、より典型的には、生体適合性材料が晒される体温(35~40℃)程度を意味する。このようにして生成されたガラス状態の混合物は、その温度を、混合物のガラス転移点以上かつ曇点以下に保持する等の熱処理を行うことで、PMEAが混合物の表面側に偏析した傾斜構造となる。より具体的には、熱処理された混合物の傾斜構造では、内部から表面の方向に沿ってPMEA及びPMMAの組成が連続的に変化しており、内部よりも表面に近いほどPMEAが濃縮されている。なお、上記曇点とは、均一な非晶質の混合相中に結晶質、又は非晶質の異相が析出することにより、全体として失透を生じる温度をいう。具体的なガラス転移温度及び曇点は、PMEAに混合するポリマーによって決まり、例えば、混合物について求めた相図から得られる。

【0023】
一般にポリマー混合物の表面及び界面では、系の自由エネルギーを最小化させるために、表面エネルギーの小さいポリマーが選択的に濃縮される傾向があることが知られている。上記のように、熱処理によって混合物表面にPMEAが偏析する理由は、PMMA等のPMEAと混合されるポリマーの表面エネルギーがPMEAの表面エネルギーよりも大きいためである。表面エネルギーの小さいPMEAは、熱処理により上記混合物を熱力学的な準平衡状態に近づけることによって、表面側に偏析する。

【0024】
PMEAと混合されるポリマーは、PMMAに限らず、PMEAと混合されて室温でガラス状態の混合相を維持しうるポリマーであって、PMEAとの混合物の温度を、当該混合物のガラス転移温度以上かつ曇点以下に保持することで、PMEAが表面側に偏析した傾斜構造となるポリマーであればよい。PMEAと混合されるポリマーとしては、例えば、PMEAと混合された場合の相図がLCST型又はUCST型となるものが挙げられる。さらに、上記生体適合性材料の使用用途に応じて、PMEAと混合されるポリマーは、PMMA以外にも、PMEAより表面エネルギーが小さい他のポリマーから選択して用いることが可能であり、その分子設計や熱処理の条件を検討することによりPMEAを表面に偏析させることができる。

【0025】
特に、PMEAと混合されるポリマーとして、PMMA等の形態安定性に優れたポリマーを用いることで、PMEAの生体適合性を活かした生体適合性材料を形成できる。

【0026】
PMEAと混合されるポリマーは、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリレートが好ましく、例えば、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等であってもよい。ここで、(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は通常1~8程度である。また、上記ポリマーは、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリ乳酸等であってもよい。なお、PMEAと混合されるポリマーは、生体適合性材料の使用用途等に応じて、1種類でもよいし、複数種類でもよい。

【0027】
PMEAの数平均分子量(Mn)は、5,000~50,000、より好ましくは10,000~40,000、特に好ましくは15,000~30,000である。一方、PMEAと混合されるポリマーとしてPMMAを用いる場合、PMMAの数平均分子量(Mn)は、20,000~200,000、より好ましくは、35,000~150,000、特に好ましくは、50,000~120,000である。PMMAのガラス転移温度(Tg)は、300~450K、より好ましくは300~430K、特に好ましくは300~410Kである。

【0028】
PMEA及びPMMA等のPMEAと混合されるポリマーは、種々の方法により合成される。例えば、当該ポリマーは、フリーラジカル重合、イオン重合、配位重合、開環重合等の既知の方法で合成できる。また、PMEA及びPMMA等のPMEAと混合されるポリマーは、例えば、溶媒として水又は有機溶媒を用いた溶液重合法により、モノマーを重合させることによって調製することができる。より詳しくは、PMEA及びPMMA等のPMEAと混合されるポリマーは、所定量のモノマーを精製水又は有機溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら、該溶液に重合開始剤を添加し、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中でモノマーを重合させることによって得ることができる。

【0029】
また、上記モノマーの重合の際に用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0030】
溶液重合法に用いられるモノマー溶液におけるモノマーの濃度は、特に限定されないが、重合の操作性、効率等を考慮して、10~80重量%程度であることが好ましい。

【0031】
上記で使用する重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」とする)、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤等、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体等の光重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー100重量部に対して0.01~5重量部程度であることが好ましい。

【0032】
重合に用いる重合開始剤は、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロール等のメルカプタン基を有する化合物や次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩等が挙げられるが、連鎖移動剤は、これら例示のみに限定されるものではない。連鎖移動剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー100重量部に対して0.01~10重量部程度であることが好ましい。

【0033】
モノマーの重合反応の反応温度は、用いられる重合開始剤の種類によって異なるために特に限定されない。通常、重合開始剤の10時間半減期温度とすることが好ましい。重合反応の反応時間は、未反応モノマーが残存するのを回避するために、2時間以上、好ましくは2~24時間程度がよい。

【0034】
本実施形態に係る生体適合性材料は、その使用目的に応じて、PMEA及びPMMA等のPMEAと混合されるポリマーを、様々な混合重量比で含むように調製される。一般に、PMEAの重量混合比が高い場合、その抗血栓性や抗血液凝固性等の生体適合性が高い傾向がある、一方で、PMEAの重量混合比が高い場合、形態安定性や成形性が低下する傾向がある。また、PMEAと混合されるポリマーの重量混合比が高い場合、形態安定性や成形性が向上する傾向がある。一方で、PMEAと混合されるポリマーの重量混合比が高い場合、生体適合性が低くなる傾向がある。

【0035】
以下の実験例2に示すように、本実施形態に係る生体適合性材料は、純粋なPMEAと比較した際に、所定の重量混合比の範囲において高い抗血栓性を示す場合もあるため、その重量混合比は、生体適合性膜の使用用途等に応じて柔軟に設定されるべきである。典型的な例として、例えばPMEAと混合されるポリマーとしてPMMAを使用する場合には、PMEAとPMMAとの重量混合比であるPMEA:PMMAが1:99~90:10、好ましくは5:95~80:20、より好ましくは10:90~60:40、さらに好ましくは20:80~60:40が選択される。特に、40:60~60:40の重量混合比が選択された場合には、PMMAによる良好な形態安定性と純粋なPMEAよりも高い生体適合性とが得られる傾向がある点で好ましい。

【0036】
本実施形態に係る生体適合性材料は、下記実験例2に示すように、PMEAが偏析した表面において血小板の粘着を抑制する性質を有する。材料表面への血小板の粘着は、血栓形成の原因の1つであるため、本発明に係る生体適合性材料の用途として、抗血栓用部材として用いることが好適である。より具体的には、該抗血栓用部材は、例えば、血液透析膜、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工心肺装置用の膜及びチューブ、人工血管、血液保存パック、人工臓器、生体内埋め込み型装置等において血液と接触する部分の材料であり、特に、血液と接触する部分の一部、好ましくは全部に本発明に係る生体適合性材料が用いられることが好ましい。

【0037】
次に、本実施形態に係る生体適合性材料の製造方法について説明する。ここでは、製造方法の一例として、PMEAと混合されるポリマーとしてPMMAを使用し、基体の表面に生体適合性材料を形成する場合を説明する。

【0038】
まず、PMEA及びPMMAが目的の組成になるように、両者が共に溶解可能なトルエン等の有機溶媒に溶解させることで混合溶液を調製する。さらに、調製した混合溶液を、適宜の手段により適宜の基体上に略均一な厚みに塗布して広げることによって製膜する。混合溶液の塗布は、基体が平板状である場合にはスピンコーティング法等により行うことが好適であり、基体が凹凸等のある複雑な形状の場合にはスプレーにより混合溶液を吹き付ける等の手法が好適である。続いて、真空オーブン等を用いて、形成した膜中に含まれる有機溶媒を、室温で十分に除去して膜を乾燥させる。使用する有機溶媒にもよるが、典型的には、乾燥させる時間は、24時間程度で有機溶媒を十分に除去することができる。なお、当該乾燥後の膜の厚みは、上記生体適合性材料の用途に応じて決定されるが、数十~数百nm程度の厚みとすることができる。乾燥後の膜の厚みは、上記有機溶媒との混合溶液におけるPMEA等の濃度及び当該混合溶液の塗布時の厚さにより調整することができる。

【0039】
有機溶媒を乾燥することで形成した膜を、そのガラス転移温度以上かつ曇点未満の温度に加熱して、膜中において非晶質の状態を維持したままポリマーが容易に拡散可能な状態とし、PMEAを膜表面に偏析させるための熱処理を行う。PMEAと混合されるポリマーとしてPMMAを用いる場合には、当該熱処理の条件を、例えば、350~450K程度の温度で、3時間から12時間とすることで、膜表面におけるPMEAの割合を高めることができる。

【0040】
例えば、PMEA及びPMMAの表面エネルギーは、それぞれ36.7mN/m、42.2mN/mであって、PMEAの表面エネルギーのほうが小さい。このため、熱力学的にPMEAが表面に濃縮され、上記膜表面側にはPMEAが偏析する。なお、熱処理前であっても、上記膜表面側には、表面エネルギーがより小さいPMEAが偏析する。

【0041】
なお、上記においては、薄膜状の混合物を用いて生体適合性材料を製造する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、混合物を適宜の方法で立体形状に成型し、その後に熱処理をおこなうことで表面にPMEAを偏析させて生体適合性材料として使用することも可能である。

【0042】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る生体適合性材料は、表面にPMEAが偏析しており、優れた抗血栓性を有する。また、実験例2において示すように、この抗血栓性は、単体のPMEAと比較しても高いことが示された。これにより、PMEAが有する優れた生体適合性を様々な生体適合性材料に具体的に応用することを可能とした。つまり、機械的特性等を考慮して決定される任意の基体の表面に本実施形態に係る生体適合性材料を設けることで、全体としての物性や機械的特性を保持しつつ、表面に生体適合性を持たせることができる。

【0043】
なお、上記生体適合性材料は、基体とともに生体適合性材料として用いられてもよい。また、適宜の手段により薄膜状に形成した上記生体適合性材料を、医療用具等を構成する部材の表面に貼付して用いてもよい。

【0044】
また、上記説明においては、本発明に係る薄膜状の生体適合性材料の典型的な実施形態として、PMEAを含む混合物を基体に塗布して乾燥した後に熱処理を行うことで、膜表面側にPMEAを偏析させる例について説明した。本発明はこれに限定されず、主に混合物を構成するポリマーと基体との組合せにより、基体の側にPMEAを偏析させた薄膜とし、その後に当該薄膜を当該基体から剥がし、PMEAが偏析した表面が生体成分又は生体組織に接触するように貼付して用いてもよい。

【0045】
また、上記生体適合性材料の表面に、適宜の方法でPMEAポリマーを供給して固定することで、実質的なPMEAの厚さを増加させて使用することもできる。

【0046】
なお、本発明に係る生体適合性材料は、その特性を損なわない範囲において、その他の生体適合性等を有する追加のポリマー、ヘパリン及びクエン酸ナトリウム等の抗血液凝固剤を含んでもよい。

【0047】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、詳細に説明する。本実施形態に係る医療用具は、上記実施形態1に記載の生体適合性材料が生体成分又は生体組織に接触する箇所に設けられている。上記医療用具は、例えば、血液透析膜、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工心肺装置用の膜及びチューブ、人工血管、血液保存パック、人工臓器、生体内埋め込み型装置等である。ただし、上記医療用具は、この例示のみに限定されるものではない。

【0048】
特に、上記医療用具に用いられる生体適合性材料の厚みは、数十nm~数百nmであってもよく、またそれ以上の厚みを持っていてもよい。また、本実施形態に係る医療用具は、血液と接触する部分の一部又は全部が発明に係る生体適合性材料で直接覆われてもよいし、その他の物質からなる層又は膜を介して発明に係る生体適合性材料で被覆されてもよい。

【0049】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る医療用具は、本発明に係る生体適合性材料を含む被覆を備えるため、表面における血栓の形成を抑制できる。また、本発明に係る生体適合性材料は、室温での形態安定性等の特性を付加できるため、医療用具等の素材として加工しやすい。

【0050】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について、詳細に説明する。本実施形態3では、本発明に係る生体適合性材料を医療用具等に適応して使用する際の使用方法について説明する。

【0051】
本実施形態に係る生体適合性材料の使用方法は、その表面を水に暴露してから生体成分又は生体組織に接触させる。下記実験例2に示すように、生体適合性材料の表面を血液と接触させる前に水に暴露することによって、血液と接触させた際のその表面における血小板の粘着数が減少し、抗血栓性が向上することが明らかとなった。特許文献1にも記載されるとおり、PMEAは高分子鎖との相互作用により弱く束縛された中間水を多く保持することにより抗血栓性等の生体適合性を示すことが知られている。本発明に係る生体適合性材料の表面においても、血液と接触させる前に水に暴露することによって表面に存在するPMEAが保持する中間水の量が増加し、この結果として抗血栓性等の生体適合性が高まるものと考えられる。

【0052】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る生体適合性材料の使用方法は、当該生体適合性材料の抗血栓性等の生体適合性をさらに向上させる。

【0053】
なお、生体適合性材料を暴露するための水は、表面に保持される中間水を増加しうるものであればよく、例えば、超純水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液等を用いることができる。また、水に暴露する時間は、表面に保持される中間水の量が平衡に達する時間以上であることが好ましく、例えば、少なくとも8時間が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例
PMEAと混合され薄膜を形成するポリマーとしてPMMAを使用して、PMEA/PMMAブレンド膜を調製するため、まず、PMEAのトルエン溶液及びPMMAのトルエン溶液を調製した。
PMEAはフリーラジカル重合により合成した。アクリル酸2‐メトキシエチルが15gに対して、重合反応の開始剤として、15mgのAIBNを用いた。重合反応の溶媒には、1,4-ジオキサンを用いた。反応温度は75℃で、反応時間は8時間とした。合成したPMEAは、n‐ヘプタンに再沈殿させた。
PMMAは、Polymer Source Inc.より購入した単分散のものを、メタノールに再沈殿させて用いた。PMEA及びPMMAの数平均分子量(Mn)は、それぞれ26,000及び85,000であった。PMEA及びPMMAの分子量分布指標(Mw/Mn)はそれぞれ3.23及び1.09であった。PMEA及びPMMAのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析(DSC)により評価したところ、それぞれ240K及び401Kであった。
次に2つのトルエン溶液を混合させることでPMEA/PMMAブレンド溶液を調製した。ここで、PMEA/PMMAブレンド溶液は、2つの混合重量比、すなわち、PMEA/PMMAが10/90及び50/50となるようにそれぞれ調製した。得られたPMEA/PMMAブレンド溶液は、ポリマーの分離等を生じることなく均一に混合された。
PMEA/PMMAブレンド溶液の塗膜は、PMEA/PMMAブレンド溶液をシリコン基板上にスピンコーティングすることで調製した。調製したPMEA/PMMAブレンド溶液の塗膜は、室温で24時間真空乾燥させ、PMEA/PMMAブレンド膜とした。乾燥後、PMEA/PMMAブレンド膜に熱処理を施し、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜とした。熱処理の条件は、PMEA/PMMAが10/90のPMEA/PMMAブレンド溶液から調製したPMEA/PMMAブレンド膜の場合、真空下、410Kで6時間とした。一方、PMEA/PMMAが50/50のPMEA/PMMAブレンド溶液から調製したPMEA/PMMAブレンド膜の場合、真空下、353Kで6時間、又は異なる条件として12時間とした。なお、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜の膜厚は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価したところ、400nm程度であった。
以下、PMEA/PMMAが10/90のPMEA/PMMAブレンド溶液から調製したPMEA/PMMAブレンド熱処理膜を、単に「PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(10/90)」とし、PMEA/PMMAが50/50のPMEA/PMMAブレンド溶液から調製したPMEA/PMMAブレンド熱処理膜を、単に「PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)」とする。
【実施例】
【0055】
比較例1
対照としてPMEAのホモポリマー膜を調製した。PMEAは、上記実施例と同じものを用いた。PMMAは、Polymer Source Inc.より購入した単分散のものを、メタノールに再沈殿させて用いた。PMMAの数平均分子量(Mn)は、85,000であった。PMMAの分子量分布指標(Mw/Mn)は、1.09であった。
まず、PMMAのトルエン溶液をシリコン基板上にスピンコーティングすることで、PMMAのホモポリマーの塗膜を調製した。調製したPMMAのホモポリマーの塗膜に対して、真空下で433K、6時間の熱処理を施し、PMMAのホモポリマー熱処理膜とした。PMMAのホモポリマー膜の膜厚は、偏光解析測定を用いて評価したところ、55nm程度であった。
次に、PMEAのメタノール溶液を調製し、上記PMMAのホモポリマー膜上にスピンコーティングすることで、PMEAのホモポリマーの塗膜を調製した。調製したPMEAのホモポリマーの塗膜に対して、真空下で410K、6時間の熱処理を施し、PMEAのホモポリマー熱処理膜とした。PMEAのホモポリマー熱処理膜の膜厚は、偏光解析測定を用いて評価したところ、70nm程度であった。
【実施例】
【0056】
比較例2
対照としてPMMAのホモポリマー膜を調製した。PMMAは、Polymer Source Inc.より購入した単分散のものを、メタノールに再沈殿させて用いた。PMMAの数平均分子量(Mn)は、85,000であった。PMMAの分子量分布指標(Mw/Mn)は、1.09であった。PMMAのガラス転移温度(Tg)は、DSCにより評価したところ、401Kであった。
PMMAのトルエン溶液をシリコン基板上にスピンコーティングすることで、PMMAのホモポリマーの塗膜を調製した。調製したPMMAのホモポリマーの塗膜は、室温で24時間真空乾燥させ、PMMAのホモポリマーの膜とした。乾燥後、PMMAのホモポリマー膜に熱処理を施し、PMMAのホモポリマーの熱処理膜とした。熱処理の条件は、PMMAのホモポリマー膜に対して、真空下で433K、6時間とした。PMMAのホモポリマー熱処理膜の膜厚は、偏光解析測定及び原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価したところ、70nm程度であった。
【実施例】
【0057】
実験例1
(PMEA/PMMAブレンド熱処理膜のz軸方向に対する化学組成評価)
PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)の表面近傍における化学組成を角度依存型X線光電子分光(ADXPS)測定に基づいて評価した。ADXPS測定にはX線光電子分光装置(PHI 5800 ESCA system, Physical Electronics Co., Ltd.)を用いた。X線源は単色Al K線とした。印可電圧は14.0kVで、電力は50W、真空度は1.33×10-7Pa(1×10-9Torr)とした。ADXPS測定は、室温で行った。また、光電子の取り出し角度(θ)は15°、30°、45°、60°及び90°とした。
任意の角度θにおける分析深さ(d)は、d=3λsinθに基づき算出した。ここで、λは非弾性平均自由行程である。Ashley式より算出したC1s由来の光電子のλは3.1nmであった(J. C. Ashley, IEEE Trans. Nucl. NS-2731, 1454-1458, 1980)。各θに対するPMEA/PMMAブレンド膜中における炭素の1s電子の分析深さ(d)は、それぞれ2、5、7、8、10nm程度である。測定の際、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜をチャージアップしたため、束縛エネルギーがシフトしたが、それは中和銃を用いることで補正した。
【実施例】
【0058】
(結果)
(1)図1(A)は、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)における表面のPMEA体積分率(φPMEA)を、sinθに対してプロットしたものである。sinθは、分析深さ(d)に比例するため、sinθが小さいほど、表面に近いことを意味する。図1(A)によれば、sinθが減少するにつれて、φPMEAが増加したため、PMEAが表面側により多く偏析していることが示された。
(2)図1(B)は、図1(A)におけるφPMEAとsinθの関係を、平均場近似(I. Schmit and K. Binder, J. Phys. (Paris) 46, 1631-1644, 1985、及び非特許文献1参照)に基づいて、分析深さ(d)に対してモデルプロファイルした図である。このモデルプロファイルによれば、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)の表面は、PMEAでほとんど覆われていることが示唆された。
【実施例】
【0059】
実験例2
(PMEA/PMMAブレンド膜に対する血小板の粘着実験)
膜表面の血液に対する抗血栓性を調べるために、上記実施例のPMEA/PMMAブレンド熱処理膜(PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)は6時間の熱処理を施したものを使用)、比較例1のPMEAのホモポリマー熱処理膜及び比較例2のPMMAのホモポリマー熱処理膜(8mm×8mm)について、表面への血小板の粘着実験を行った。各膜は、超純水(Milli-Q水、以下同じ)に暴露しないもの、超純水に8時間、16時間、24時間暴露したものを用いた。
実験に用いた血液は、ヒト肘静脈より採血した血液をクエン酸ナトリウムで抗凝固化処理した多血小板血漿として調製した。調製した多血小板血漿200μlを各膜の表面に60分間接触させた。リン酸緩衝溶液でリンス後、グルタルアルデヒドで固定し、電子顕微鏡で観察して、各膜の表面1×10μmあたりに粘着した血小板の数を計数した。
【実施例】
【0060】
(結果)
(1)図2に示すように、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜においては、超純水に暴露しない場合にも、比較例1のPMEAのホモポリマー熱処理膜と同等の血小板の数が観察された。すなわち、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜は、PMEAのホモポリマー膜と同程度の抗血栓性を有することが示された。特に、複数成分が混合された場合には、それぞれの成分の特徴がその割合の減少と共に低下する傾向を示すことが一般的であるところ、PMEAを僅かしか含まないPMEA/PMMAブレンド熱処理膜(10/90)においてもPMEAのホモポリマー膜と同程度の抗血栓性を有することは、本発明により示された顕著な効果である。
(2)実施例、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、超純水に8~24時間暴露したことで、超純水への暴露のない膜(図2中の「0時間」)と比較して、表面に粘着した血小板の数が減少した。特に、実施例で作成したPMEA/PMMAブレンド熱処理膜(10/90及び50/50)では、超純水に暴露したことによって、表面に粘着した血小板の数の減少の程度が、比較例1、2としたホモポリマー膜よりも大きいことが示された。
(3)PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(10/90)では、超純水に暴露した時間に依存して、表面に粘着した血小板の数が減少した。一方、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜(50/50)では、超純水に暴露したことで、表面に粘着した血小板の数が減少したが、特に8時間の超純水への暴露によって、表面に粘着した血小板の数が大きく減少した。特に、この血小板の数が、比較例1のPMEAのホモポリマー膜よりも少ないことは、PMEAにPMMAをブレンドしてPMEA/PMMAブレンド熱処理膜とすることで、さらに生体適合性が向上することを示すものであり、本発明により示された顕著な効果である。超純水に暴露することによって、PMEA/PMMAブレンド熱処理膜における血小板粘着抑制能が向上することの詳細は不明であるが、PMEAの表面特性によるものであると考えられる。
PMEAは、いわゆる中間水を表面に有していることが示唆されている(M. Tanaka et al., Polym. Int. 49, 1709-1713, 2000)。中間水は、高分子鎖との相互作用により、高分子鎖に弱く束縛された水であると考えられている。PMEAとPMMAとが所定範囲で混合されたPMEA/PMMAブレンド熱処理膜において、超純水に暴露したことによって血小板粘着抑制能が向上したのは、膜表面における中間水等の状態が変化したことによるとも推定される。
【実施例】
【0061】
また、水への暴露によって、上記PMEA/PMMAブレンド熱処理膜が生体適合性を向上することは、生体適合性材料としての付加価値を与える。なぜなら、水への暴露が生体適合性を向上すれば、例えば、本発明をコンタクトレンズ用途に用いた場合、使用によって体液に暴露されることで違和感がより緩和され装用感が増すからである。
【実施例】
【0062】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、医療用具等に使用される材料に好適である。
図面
【図1】
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【図2】
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