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明細書 :地下水流向流速を測定する方法及びそのための装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5471624号 (P5471624)
公開番号 特開2011-185703 (P2011-185703A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明の名称または考案の名称 地下水流向流速を測定する方法及びそのための装置
国際特許分類 G01P   5/20        (2006.01)
G01P  13/00        (2006.01)
G01V   9/02        (2006.01)
E21B  49/08        (2006.01)
FI G01P 5/20 A
G01P 13/00 E
G01V 9/02
E21B 49/08
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2010-050441 (P2010-050441)
出願日 平成22年3月8日(2010.3.8)
審査請求日 平成25年1月31日(2013.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】山本 浩一
【氏名】野田 敏雄
審査官 【審査官】森 雅之
参考文献・文献 特許第4260798(JP,B2)
特許第3433320(JP,B2)
特許第3374351(JP,B2)
特許第3500571(JP,B2)
特許第4714833(JP,B2)
特許第4005056(JP,B2)
調査した分野 G01P 5/20
G01P 13/00
G01V 9/02
E21B 49/08
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶性のインクで多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートを両側から透水性スポンジで把持した状態で保持する測定装置本体について方位合わせ及び地下水観測井中への降下を行って地下水観測井中に所定時間保持することと、
所定時間経過後に前記測定装置本体から前記ペーパーシートを取り外し回収することと、
回収された前記ペーパーシートに印刷されていた点状パターンに付随して生じたテイリングの長さ、向きを求めることと、
求められた前記テイリングの長さ、向きから地下水流向流速を求めることと、
からなることを特徴とする地下水流向流速を測定する方法。
【請求項2】
前記所定形状のペーパーシートの多数の点状パターンが印刷された面を覆うように同形同大で多数の点状パターンを印刷していない他のペーパーシートを重ねた状態で両側から前記透水性スポンジで把持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の地下水流向流速を測定する方法。
【請求項3】
水溶性のインクで多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートの両面を透水性スポンジで把持したものを一対の保持板で両側から把持しその全体を一体的に保持してなる測定装置本体と、
前記測定装置本体を棒状部材の下方の端部側に取り付けて地下水観測井内に配置した状態で前記棒状部材の地表面より上方にある上方の端部側を保持して地表面に設置した台部に固定するとともに前記測定装置本体を取り付けた棒状部材が地下水観測井に対して回動調節可能であって前記測定装置本体の方位合わせを行えるようにした測定装置本体保持固定手段と、
を備えてなり、前記測定装置本体を地下水観測井中に所定時間保持した後に前記測定装置本体から取り外し回収されたペーパーシートに印刷されていた点状パターンに付随して生じたテイリングの長さ、向きから地下水流向流速を求めるようにしたことを特徴とする地下水流向流速測定装置。
【請求項4】
前記測定装置本体において、前記多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートと、それを両面から把持する透水性スポンジと、それらを両側から把持する一対の保持板とのそれぞれにわたって中心に同形同大の穴が形成されており、前記ペーパーシート、透水性スポンジ、保持板がそれらに設けられた穴に断面が同形同大の支持棒を貫通させ一体的に保持されるものであることを特徴とする請求項3に記載の地下水流向流速測定装置。
【請求項5】
前記測定装置本体において、前記所定形状のペーパーシートの点状パターンが印刷された面を覆うように同形同大で点状パターンを印刷していない他のペーパーシートを重ねた状態で両側から前記透水性スポンジで把持していることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の地下水流向流速測定装置。
【請求項6】
前記測定装置本体を取り付けた棒状部材の地表面より上方にある上方の端部側を保持し固定する、地下水観測井に対して回動調節可能に設置された台部の上面に方位磁石を付設するとともに方位合わせ用の標識を設け、前記測定装置本体を前記棒状部材の下方の端部側に取り付ける際に前記棒状部材の上端面に設けられた方位合わせ用の標識と前記ペーパーシートに設けられた方位合わせ用マークとの方向を合わせておき、前記棒状部材を保持し固定する台部を地面に垂直な軸中心に回動させてペーパーシートの方位合わせ用マークがN方向を向くように調整できるようにしたことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の地下水流向流速測定装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水流向流速を測定する方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土地利用、建設工事に関わる地盤、立地条件調査、地盤環境保全等の面から、地盤の透水係数のほかに地下水の流向流速を測定することが求められる。地下水の流向、流速を測定するためには、通常地面に垂直方向の孔を掘削し、流向流速測定装置を孔内に降下させて測定を行う手法が用いられ、単孔式の地下水流測定と称される。このような単孔式の地下水流測定方法として、以下の特許文献に記載されるようなものがある。
【0003】
特許文献1はトレーサ粒子法によるものであり、トレーサ粒子を計測空間内に流入させる手段、浮遊物の三次元位置の検出手段、伝送手段等を含む大がかりな構成を有するものである。特許文献2は地下水内での被撮像物の揺動状態を撮影するものであり、浮子体と傾斜測定体、係止部を含む被撮像物について微妙な調整が必要なことと、撮影装置等を含む構成として大がかりなものになる。
【0004】
特許文献3に記載される地下水の流向流速測定装置は円柱形プローブ内において円柱形発熱体の周囲に多孔質層を配置し、多孔質層における温度分布を検出する温度検出器を同心円状に配列するという構成のものであり、装置構成はかなり大がかりになる。また、特許文献4に記載されるものは、はボーリング孔内に視差光学系を備えたCCDカメラを用いて地下水流の流向、流速の三次元的な測定を行うものであり、特許文献5に記載されるものも耐圧容器内に収納されたCCDカメラにより得られた画像について画像処理を行い流向、流速を求めるものであって、撮像装置とその支持構造、画像処理装置を含めた構成は大がかりなものになる。
【0005】
また、特許文献1~5等に見られる地下水流向流速の測定はいずれも、測定装置の動作のために電源を備えることが不可欠であり、例えば、山岳部、遠隔地、発展途上国等で電源を得難い箇所においては、測定装置を動作させて測定を行うことができないものである。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-256026号公報
【特許文献2】特開2005-345180号公報
【特許文献3】特開平11-326359号公報
【特許文献4】特開2002-257943号公報
【特許文献5】特開平9-196958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の地下水流向流速の測定において、ヒーターやビデオカメラを用いるものでは、これらの装置を駆動、動作させるために電源を必要とし、装置としても高価なものになる。トレーサ方式によるものは、地下水流の動向をかなりの精度で測定することができ、現在多く用いられているが、水流の動きが非常に遅く水が自由に動き得る状態の場合に、トレーサを水中に注入することによっても、水が不安定に移動するため、高精度の地下水流の測定になり難い問題があるとともに、この手法でも電源を必要とするものであった。このような現状から、測定装置として簡易であるとともに安価であり、基本的動作として電源を使用することを必要としない形態で地下水流向流速を測定することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明による地下水流向流速を測定する方法は、水溶性のインクで多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートを両側から透水性スポンジで把持した状態で保持する測定装置本体について方位合わせ及び地下水観測井中への降下を行って地下水観測井中に所定時間保持することと、所定時間経過後に前記測定装置本体から前記ペーパーシートを取り外し回収することと、回収された前記ペーパーシートに印刷されていた点状パターンに付随して生じたテイリングの長さ、向きを求めることと、求められた前記テイリングの長さ、向きから地下水流向流速を求めることと、からなるものである。
【0009】
前記所定形状のペーパーシートの多数の点状パターンが印刷された面を覆うように同形同大で多数の点状パターンを印刷していない他のペーパーシートを重ねた状態で両側から前記透水性スポンジで把持するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明による地下水流向流速測定装置は、水溶性のインクで多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートの両面を透水性スポンジで把持したものを一対の保持板で両側から把持しその全体を一体的に保持してなる測定装置本体と、前記測定装置本体を棒状部材の下方の端部側に取り付けて地下水観測井内に配置した状態で前記棒状部材の地表面より上方にある上方の端部側を保持して地表面に設置した台部に固定するとともに前記測定装置本体を取り付けた棒状部材が地下水観測井に対して回動調節可能であって前記測定装置本体の方位合わせを行えるようにした測定装置本体保持固定手段と、を備えてなり、前記測定装置本体を地下水観測井中に所定時間保持した後に前記測定装置本体から取り外し回収されたペーパーシートに印刷されていた点状パターンに付随して生じたテイリングの長さ、向きから地下水流向流速を求めるようにしたものである。
【0011】
前記測定装置本体において、前記多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートと、それを両面から把持する透水性スポンジと、それらを両側から把持する一対の保持板とのそれぞれにわたって中心に同形同大の穴が形成されており、前記ペーパーシート、透水性スポンジ、保持板がそれらに設けられた穴に断面が同形同大の支持棒を貫通させ一体的に保持されるようにしてもよい。
【0012】
前記測定装置本体において、前記所定形状のペーパーシートの点状パターンが印刷された面を覆うように同形同大で点状パターンを印刷していない他のペーパーシートを重ねた状態で両側から前記透水性スポンジで把持しているものとしてもよい。
【0013】
前記測定装置本体を取り付けた棒状部材の地表面より上方にある上方の端部側を保持し固定する、地下水観測井に対して回動調節可能に設置された台部の上面に方位磁石を付設するとともに方位合わせ用の標識を設け、前記測定装置本体を前記棒状部材の下方の端部側に取り付ける際に前記棒状部材の上端面に設けられた方位合わせ用の標識と前記ペーパーシートに設けられた方位合わせ用マークとの方向を合わせておき、前記棒状部材を保持し固定する台部を地面に垂直な軸中心に回動させてペーパーシートの方位合わせ用マークがN方向を向くように調整できるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による地下水流向流速の測定においては、基本的に水溶性インキ等で所定のパターンを印刷した所定形状のペーパーシートを支持体に挟持した状態で地面に垂直に掘削された地下水観測井内に配置し、地下水流による印刷されたパターン形状の変化を読み取ることにより地下水流向流速を測定するものであり、測定装置の構成としては簡易なものとなり、また、地下水観測井での測定においては電源を必要としないものである。このことから、山岳部、遠隔地、発展途上国等で電源を得難い箇所においても測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明による地下水流向流速を測定する状況を示す図であり、(b)は(a)のうち固定台の上部を斜視図で示した図であり、(c)は台部の部分を下方から見た状態を示す図であり、(d)はガイドを接着し付設した台部を中心軸を通る平面で切断した断面図である。
【図2】測定装置本体の外観を斜視図で示す図である。
【図3】図2のうちペーパーシートとこれを把持するスポンジの関係を示す図である。
【図4】ペーパーシートを上方から見た図である。
【図5】測定装置本体の方位合わせについて説明するため固定台の上方から見た状態を示す図であり、(a)は方位を合わせる前、(b)は方位を合わせた後の状態を示す図である。
【図6】地下水流向流速の測定操作を行った後のペーパーシートを上方から見た図である。
【図7】流速とテイリングの長さとの関係を求めるために行った室内実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明による地下水流向流速の測定は、基本的には染料インキまたは蛍光物質で所定のパターンを印刷した所定形状のペーパーシートを支持体に挟持した状態で地面に垂直に掘削された地下水観測井内に配置し、地下水流による印刷されたパターン形状の変化を読み取って地下水流向流速を測定するものである。

【0017】
〔測定装置の構成〕
図1(a)は、本発明による地下水流向流速を測定する状況を示す図であり、図1に示すように、地面Eにおいて地表面に垂直に掘削された地下水観測井内に筒体10が設置されている。地下水観測井の深さは3~10m程度である。筒体10は硬質プラスティック等により形成された円筒体であり、内径が70mm程度、観測対象深度付近の周面に一様に多数の小孔11が穿設されている。地下水はこの小孔11を通って筒体10内部を通過するように流れる。筒体10は断面が円形であり、長さは測定位置までに達し得るものとし、3~10m程度である。

【0018】
1はペーパーシートを挟持して地下水観測井内に配置された状態にある測定装置本体であり、棒状部材12の先端側に取り付けられたジョイント等の連結部材13により連結され地下水観測井内に降下された位置で不動状態に保持される。固定保持具14は棒状部材12の地表より上側に出た部分において固定保持するものであるが、この固定保持の前に棒状部材12を地面に垂直方向の軸中心に回動調節できるようにするものである。固定保持具14は棒状部材12を挿通させ、高さ位置を調節可能になっており、棒状部材12の高さ位置を調節した上でロック部材14aによりその位置でロックできるようにしてある。固定保持具14は円筒体上部を覆う板状の固定台15に取り付けられている。

【0019】
図1(b)は固定台15の上部を斜視図で示したものであり、固定台15の上端面に方位磁石16が取り付けられており、また、矢印による方位合わせ用の標識17が記入等により設けられている。図1(c)は固定台15の部分を下方から見た図であるが,棒状部材12を地面に垂直方向の軸中心に回動調節できるようにするために固定台15の縦及び横の方向の幅は円筒体10の外周よりも大きな幅とする。かつ固定台15の下部に筒体10に対して中心軸を固定するための円盤状のガイド18を固定台15に接着させる。ガイドは多様な径の筒体に整合させることができるように,直径が大きなプラスティック円盤から直径が次第に小さくなるように複数の円盤を重ねて接着してあり、それぞれの円盤の直径が用いる筒体10の内径に一致させることができるようになっている。

【0020】
図1(c)は3枚の円盤18a~cを固定台15の下面に順次接着し付設した場合であり、図1(d)はこのガイドを接着し付設した固定台について中心軸を通る平面での断面図で示すものである。
それぞれの円盤の厚みは5mmから1cmであるのが望ましい。固定台15、ガイド18(図1(c),(d)では円盤18a~c)中心部は棒状部材12が貫通できるように方形にくりぬいておく。

【0021】
図2は測定装置本体の外観を示す図である。図2に示される測定装置本体1は円形のペーパーシートP1及びP2を把持するための構成になっており、上側及び下側の保持板2a、2bは外形がペーパーシートPと同形・同大の円形であり、やはりペーパーシートP1及びP2と同形・同大の上側及び下側の透水性のスポンジ3a,3bの間にペーパーシートP1及びP2を挟み保持するとともに、保持板2a、2b、スポンジ3a,3b、ペーパーシートPの中心部には方形で同形・同大の通孔がそれぞれ形成され、この通孔に支持棒4を貫通させて保持する形態になっている。図3において、上側及び下側のスポンジ3a,3bとその間に挿入保持されるペーパーシートP1及びP2の関係を示してある。

【0022】
支持棒4の外形寸法は保持板2a、2b、スポンジ3a,3b、ペーパーシートP1、P2の中心部における方形の通孔に挿通可能で、かつ挿通した時に実質的に隙間が生じない状態になるものとする。すなわち、横方向からの地下水流の作用を受けてもペーパーシートP1、P2と、これを挟持するスポンジ3a,3bが水平方向に移動しないように保持されるものとする。支持棒4はその上方及び下方の端部が保持板2a,2bから突出する長さとする。

【0023】
図2のように保持板2a、2b、スポンジ3a,3b、ペーパーシートP1及びP2を配置し、中心部の通孔の位置を合わせた上で、支持棒4を挿入し、図示しない固定手段により、上側及び下側の保持板2a,2bを支持棒4に固定する。この固定手段としては、支持棒4を周回するゴム輪を保持板2a、2bの上下にそれぞれ取り付ける形態、あるいは保持板2aの直上側及び保持板2bの直下側の位置において支持棒4に横方向に貫通する細孔を形成しておき、それらの細孔にピンを挿通して固定するというような形態とし、あるいは他の適当な形態としてもよい。

【0024】
また、下側の保持板2bを支持棒4に接着剤等により一体的に固定しておき、下側のスポンジ3b、ペーパーシートP、上側のスポンジ3a、上側の保持板2aの順で重なるように支持棒4に通していき、その上で固定手段により上側の保持板2aを固定するようにしてもよい。いずれの場合にも、スポンジ3a,3bは屈撓性を有するものであり、スポンジ3a,3bの間にペーパーシートP1及びP2を挟んだ自然の状態の間隔より狭めるように、すなわちスポンジ3a,3bを軽く圧縮した状態、すなわちペーパーシートPを軽く押さえつける状態になるように、上側及び下側の保持板2a,2bの間隔を設定して固定するのが好ましい。それにより、ペーパーシートP1及びP2が上下に浮動せず測定装置本体1に対して確実に固定された位置関係になって保持されるようになる。

【0025】
上側及び下側の保持板2a,2b、支持棒4の材質としては、塩化ビニル樹脂のような硬質プラスティック等が用いられる。スポンジ3a,3bはメラミン・フォーム等の透水性のスポンジを用いるのがよい。

【0026】
図4はペーパーシートP1及びP2を上方から見た図である。ペーパーシートP1及びP2は典型的には円形形状であり、材質としては画用紙のように適度の厚さ(400~500μm程度)、緻密さ、腰の強さを有し、インクでの印刷の乗りのよいものが適している。中心部に支持棒4の外形に適合する方形の穴が形成され、また、P2については中心から周辺までの中間程度の位置の円周上に均一の間隔で多数の点状パターンdを印刷する。印刷手法としては水溶性の黒インクによるインクジェットプリンタを用いて行うのがよい。また、ペーパーシート周辺部の一点においてマークMを予め付設しておく。このマークMは計測装置の設定の際に方向を合わせておくためのものである。

【0027】
ペーパーシートP1及びP2の代表的な寸法は直径が69mm程度のものであり、支持棒4の外形と一致する中心の方形の穴の一辺が19mm程度であるのがよい。これらは代表的な価であるが、適宜他の寸法を採用してもよい。また、ペーパーシートP1、P2の外形は円形としたが、多角形等他の形状とすることもできる。その場合にも点状パターンdは測定の面から円周上に印刷することになる。さらに、スポンジ3a,3b、上側及び下側の保持板2a,2bの外形もペーパーシートP1、P2の外形に同形、同大の形状とする。

【0028】
〔測定の準備〕
本発明による地下水流流向流速の測定装置は前述のように構成されるものであり、次に測定装置を用いた地下水流向流速の測定のための準備について説明する。まず、ペーパーシートP1、P2として、同質、同形のものを必要枚数形成し、P2については黒インクで同一径の円周上に同数の等間隔に配置印刷された点状パターンをインクジェットプリンタにより施しておく。

【0029】
各1枚のペーパーシートP1とP2を、P2の印刷面がP1で覆われるようにして、図3に示されるようにスポンジ3a,3bの間に挟んだものを上側及び下側の保持板2a,2bの間に保持し支持棒4に支持固定された状態で図2に示す測定装置本体となる。この時前述したように、スポンジ3a,3bが軽く圧縮されてペーパーシートP1、P2が保持されるようにするのが好ましい。また、ペーパーシートP2を測定装置本体に取り付けるに際し、ペーパーシートP2に設けられた方位合わせ用マークMの位置を確認できるように、例えば上側の保持板の周辺の位置に同様のマーク(図示せず)を付設しておき、あるいは、スポンジ3a,3bの周面に上下方向にサインペンで引いた線を付設しておき、これらのマークあるいは線等にペーパーシートP2におけるマークMの位置を合わせた上で測定装置本体として取り付けるというような形態とするのがよい。

【0030】
このようにした測定装置本体の上側に突出した支持棒4の部分を棒状部材12の先端側に取り付けられた連結部材13で連結する。その際に測定装置本体において外方から確認するために設けた方位合わせのための目印(前述の上側の保持板2aにおけるマーク、スポンジ3a,3bの側方の線等)と、固定台15の上面における矢印等の標識17との位置(方向)が合うことを確認する。

【0031】
この位置合わせに関して、測定装置本体1に予め方向確認のマーク等を設けたものでは、棒状部材12の先端における連結部材13で測定装置本体1を把持した段階で位置合わせがなされない場合に、棒状部材12と測定装置本体1とが相互に回動調節可能であるようにしておく必要がある。これは、例えば連結部材13を棒状部材12に回動調節可能な形で取り付けておくことによりなされる。

【0032】
このような調節手段を備えていない場合には、前述の測定装置本体1においては予め方向確認のマーク等を付さずにおき、棒状部材12の先端における連結部材13で測定装置本体1を連結した状態で、固定台15の上面における標識17と方向が合うように測定装置本体1の上側の保持板2a等に方向合わせ用のマーク等を付設する。その後に、測定装置本体1を一旦取り外し、この保持板2a等に付設されたマーク等にペーパーシートP2のマークMを合わせるようにして測定装置本体1の部分を構成した上で、棒状部材12の先端の連結部材13により連結する。この測定装置本体1に付されたマーク等と固定台15の上面における標識17とが合致するように方向を合わせる作業は、測定装置本体を地面に掘削された地下水観測井内に設置された筒体10内に挿入降下させる前に行う。

【0033】
図5は測定装置本体の方位合わせについて説明するため固定台の上方から見た状態を示す図であり、(a)は方位を合わせる前、(b)は方位を合わせた後の状態を示している。測定装置本体1に付されたマーク等と固定台15の上面における標識17とが合致するように方向を合わせた上で、棒状部材12をロック部材14aによりロックして挿入前の位置に保つ。この時、(a)に示すように、一般的には標識17と方位磁石のNとは合致していない。固定台15の上面における標識17と方位磁石のNとを合わせるように固定台15を地面に垂直な軸中心に回動させ、(b)のように合致したところで固定保持具14のロック部材14aを解放し、図1のように測定装置本体1を地面に掘削された地下水観測井内に設置された筒体10内の測定目標位置まで降下させる。棒状部材をその位置に保った上で、14aをロックする。これで地下水流向流速の測定の準備がなされたことになる。

【0034】
〔地下水流向流速の測定〕
測定装置本体1にペーパーシートP1、P2を取り付け方位合わせを行って図1のように設置した時点で測定が開始される。測定装置本体1の部分が地下水流を受け、ペーパーシートP1、P2は透水性のスポンジ2a,2bに保持された状態で地下水流の作用を受ける。ペーパーシートP1及びP2を地下水流中に置く時間を所定に設定しておき、各ペーパーシートP1及びP2について所定の時間が経過した後に、測定装置本体の固定を解除し、ペーパーシートP2を取り外し、放置して乾燥させる。

【0035】
乾燥後にペーパーシートP2は一般的に図6のようになる。ペーパーシートPに印刷により付与されていた各点状パターンdは図6のようにインクのテイリングd′が形成されている。このテイリングd′の方向、長さは概略一様な傾向を有し、地下水流の方向、速度に対応したものになると考えられる。そこで、地下水流に浸した後に乾燥して得られたペーパーシートPについてテイリングd′の方向、長さから地下水流の流向、流速を特定する。具体的には、ペーパーシートPの乾燥後にこれをスキャンし画像データとしてコンピュータに取り込み、画像解析により下流側の最も長いテイリングについて長さを特定するというような手法を用いるのがよい。

【0036】
測定装置本体から取り外したペーパーシートP2についての画像データを取得するに際し、デジタルカメラを用いて行うようにしてもよい。この場合にはペーパーシートP2を十分に乾燥させることは必ずしも必要ではなく、湿った状態でも可能である。また、流向、流速の測定に際し、1つの地下水観測井について、1つの深さ位置で同じ条件の複数のペーパーシートP1及びP2を交換し複数回の測定を行い、それらの結果を集計して、平均をとり流向、流速を求めるようにするのがよい。

【0037】
図7は流速とテイリングの長さとの関係を求めるために行った室内実験の結果を示す図である。ペーパーシートは画用紙にインクジェットプリンタPixus950i(キヤノン株式会社製)を用いて印刷したものを用いている。図7において、縦軸は軌跡長(テイリング長さ)を測定時間で除した値としており、横軸のダルシー速度との関係を示す実測値の分布から、これらの量の間に検定直線で表される対応関係が見られる。検定直線の決定係数は0.9396であり、高いものとなっている。また、図でy切片は無流速状態での拡散速度を示している。

【0038】
前述した地下水流向流速測定装置の測定装置本体においては、図2に示すように、P1とP2からなる1対のペーパーシートのセットPを1対のスポンジ3a,3bで挟持する形態について示したが、例えば同等の形状の3つのスポンジ3a,3b,3cを用い、スポンジ3a,3bの間に2枚1対のペーパーシートのセットを挟持し、スポンジ3bと3cとの間に別の2枚1対のペーパーシートのセットを挟持したものを保持板2a,2b及び支持棒4で一体的に保持する形態としてもよい。このような形態では2枚のペーパーシートを用いて、一度に2回分の測定を行うことができる。
以上においては、多数の点状パターンを印刷したペーパーシートと印刷していないペーパーシートとの2枚1対をセットとして用いる場合について説明したが、ペーパーシートを挟持する透水性スポンジの表面の材質を適切化したものを用いることにより点状パターンを印刷した1枚のペーパーシートを透水性スポンジで挟持する形態として流向流速の測定を行うようにしてもよい。

【0039】
また、前述した地下水流向流速測定装置の測定装置本体は、多数の点状パターンを分布配置した状態に印刷するとともに方位合わせ用マークを設けた所定形状のペーパーシートと、それを両面から把持する透水性スポンジと、それらを両側から把持する一対の保持板とのそれぞれにわたって中心に同形同大の穴が形成されており、前記ペーパーシート、透水性スポンジ、保持板がそれらに設けられた穴に断面が同形同大の支持棒を貫通させ一体的に保持される形態のものについて示したが、同形同大のペーパーシート、透水性スポンジ、保持板を一体的に保持し棒状部材下部に取り付けるものであれば、他の形態とすることができ、例えば、同形同大のペーパーシート、透水性スポンジ、保持板のそれぞれの中心部に穴を設けずに、これらを全体的に密接して包囲するかご状部材に収納し、棒状部材の下部に取り付けるような形態としてもよい。

【0040】
測定装置本体について方位合わせを行うに際して、測定装置本体1を地下水観測井中に降下させる前に方位合わせを行い、その後に測定装置本体1を地下水観測井内の測定目標位置まで降下させるという形態について説明したが、本発明においては、測定装置本体1が方位合わせのために地下水観測井に対して回動調節可能になっていればよいのであり、他の形態も可能である。

【0041】
例えば、棒状部材12を地下水観測井に対して回動調節できるようにするために、測定装置本体1を取り付けた棒状部材12を保持する固定保持具14として、棒状部材12を挿通させる孔を形成した内側部材の外周面を円柱形状とし、これを外側部材の円柱形状の孔内で回動可能にするという二重構造にするというような構成とする。それにより、測定装置本体を取り付けた棒状部材12は地下水観測井に固定して設置された固定台に対して回動調節可能になる。この構成の場合に、方位合わせは測定装置本体を地下水観測井内に降下させた後に行うことになる。

【0042】
本発明による地下水流向流速の測定では、測定装置の構成が簡易であり、経費を節減することができるとともに、測定時の測定装置の動作にために電源を必要としないので、電源を得難い箇所においても測定を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 測定装置本体
2a,2b 保持板
3a,3b スポンジ
4 支持棒
10 筒体
11 小孔
12 棒状部材
13 連結部材
14 固定保持具
14a ロック部材
15 固定台
16 方位磁石
17 標識
18(a~c)ガイド
E 地面
M 方位合わせ用マーク
P1 ペーパーシート(白紙)
P2 ペーパーシート(印刷)
P P1とP2からなるペーパーシートのセット
d 点状パターン
d′ インクのテイリング
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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