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明細書 :イオン風発生装置及びガスポンプ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5515099号 (P5515099)
公開番号 特開2013-045591 (P2013-045591A)
登録日 平成26年4月11日(2014.4.11)
発行日 平成26年6月11日(2014.6.11)
公開日 平成25年3月4日(2013.3.4)
発明の名称または考案の名称 イオン風発生装置及びガスポンプ
国際特許分類 H01T  23/00        (2006.01)
B03C   3/40        (2006.01)
B03C   3/41        (2006.01)
FI H01T 23/00
B03C 3/40 C
B03C 3/41 A
B03C 3/41 C
B03C 3/40 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 21
出願番号 特願2011-182001 (P2011-182001)
出願日 平成23年8月23日(2011.8.23)
審査請求日 平成25年9月24日(2013.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】坪根 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】加藤 啓
参考文献・文献 特開2011-54452(JP,A)
特表平2-502142(JP,A)
特開2007-188852(JP,A)
調査した分野 H01T 23/00
B03C 3/40
B03C 3/41
特許請求の範囲 【請求項1】
電極間に高電圧を印加することでコロナ放電により誘起されるイオン風を発生させるイオン風発生装置において、
グランドに接続され、対向して配設される一対の平板状のグランド電極と、
前記グランド電極が対向している対向空間領域内に前記各グランド電極に対して平行に配設され、高電圧が印加される線状の高電圧線電極と、
前記一対のグランド電極における対向面に、当該対向面の一部であって前記イオン風の出力方向の上流側の位置に配設される絶縁体と、
前記高電圧線電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備えることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン風発生装置において、
前記一対のグランド電極が平行に配設されていることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン風発生装置において、
前記高電圧線電極が、直線状の電極であり、前記一対のそれぞれのグランド電極との距離が同一となるように前記対向空間領域内に配設され、
前記絶縁体が、前記一対のグランド電極に垂直で且つ前記高電圧線電極と平行な断面の位置に前記絶縁体の端部が揃うように配設されていることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項4】
請求項2に記載のイオン風発生装置において、
前記高電圧線電極が、直線状の電極であり、前記一対のそれぞれのグランド電極との距離が同一となるように前記対向空間領域内に配設され、
前記絶縁体が、前記一対のグランド電極に垂直で且つ前記高電圧線電極を含む断面の位置に前記絶縁体の端部が揃うように配設されていることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のイオン風発生装置において、
前記グランド電極が対向している対向空間領域内に、前記高電圧線電極及び前記絶縁体を直列に複数設けることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項6】
請求項5に記載のイオン発生装置において、
前記絶縁体が、当該絶縁体がない場合に前記グランド電極に流れる電流分布にしたがって、前記電流が少なくとも所定の値以上である領域の一部に配設されていることを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン風発生装置を用いたガスポンプであって、
少なくとも一部に開口部を有する筐体内に、前記開口部の方向に前記イオン風が発生するように前記イオン風発生装置が備えられていることを特徴とするガスポンプ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に高電圧を印加してコロナ放電により誘起されるイオン風を発生させるイオン風発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温大気圧プラズマにおいて、図13に示すように、電極間に高電圧を作用するとコロナ放電により誘起されるイオン風(EHD:Electrohydrodynamics)が発生する。特に、空気中におけるイオン風の速度は、数十m/sに達すると言われている。現在、このEHD流れを利用した研究が、熱流体輸送や除塵等の様々な応用分野で行われている。
【0003】
近年、EHD現象を利用したEHDガスポンプの研究が行われている。その理由は、従来の羽根回転式のファンでは羽根による風切音や回転式であるための振動、ベアリングの寿命、小型化し難い、回転中心部に風を発生できないなどの問題点が挙げられる。それに対して、EHDガスポンプでは電気的直接駆動方式であるため、従来のファンと比較して(1)可動部が無い(2)シンプルな構造(3)低騒音,低振動(4)小型,軽量(5)応答性の高い電気的な流れの制御が可能(6)一様な速度分布の発生が可能(7)高効率なガスポンプを実現できると期待されている。
【0004】
これまでに、EHDガスポンプに関する研究が行われており(1)線-非平行平板型(2)線-線型(3)針-リング型(4)針-メッシュ型(5)リング-リング型等の様々なタイプのEHDガスポンプが提案されている。しかしながら、それらは十分な流速又は流量を発生し、広い範囲の印加電圧に対して安定した放電を保つことができるとはいい難く、また、これらはコンパクトな多段型や自由度の高い流路形状に設計し難い。そこで、十分な流速が得られ、安定なコロナ放電を保ち易く、形状が簡単で小型かつ単段型と同じサイズで複数の線電極を配置した多段型のEHDガスポンプが可能である線-平行平板型EHDガスポンプが提案されている。
【0005】
この線-平行平板型EHDガスポンプでは、線電極に部分的に絶縁被覆(線電極被覆方式)することで、線電極前後に非一様な放電を生じ、一方向への正味の流体移動を実現している(図14、非特許文献1、2を参照)。
【0006】
また、EHDを利用した技術として、特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、冷却システム、特に、強制対流のガスフローを生じさせる冷却システムに関し、一態様によれば、冷却システムは、コロナ風、若しくは、マイクロスケールのコロナ風、若しくは、一時的に制御されたイオンの発生技術のようなEHDポンピングメカニズムと組み合わされた熱シンクを使用し、チャネルアレイ構造体は、熱シンクを実施するのに使用されることができ、EHDポンプは、熱シンクのチャネルの入口若しくは出口のところに配設されるものである。
【0007】
特許文献2に示す技術は、金属テーパー管電極と金属棒電極を用い、金属テーパー管電極の小径側に内接して電気絶縁管を挿入し、その中心軸上に沿って金属棒電極を挿入し、その金属棒電極の金属テーパー管電極内側から前記電気絶縁管内に至る部分を露出させ、その金属棒電極の他端を絶縁被膜で被覆すると共に金属テーパー管電極で囲って流体送出流路を形成し、前記金属棒電極の露出部分を金属テーパー管電極の内面と対向させ、両金属電極間に電界が作用すると解離イオンが生成される流体を、金属テーパー管電極と金属棒電極の間に満たし、その金属テーパー管電極とその金属棒電極との間に直流高電圧を印加するものである。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2008-529284号公報
【特許文献2】特開2008-141870号公報
【0009】

【非特許文献1】坪根弘明,J.S.Chang,GD.Harvel、”線-非平行平板型直流電気流体ガスポンプの特性(第一報,線電極絶縁カバーの影響)”、日本機械学会2007年度年次大会講演論文集(2)、No07-1、2007.9.9-12
【非特許文献2】Jen-Shin Chang, Hiroaki Tsubone, Glenn D.Harvel and Kuniko Urashima, "Narrow-Flow-Channel-Driven EDH Gas Pump for an advanced Thermal Management of Microelectronics", IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS, VOL.46, NO.3, MAY/JUNE 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記非特許文献1、2に示す線電極被覆方式の技術には、いくつかの問題点があり、(1)線電極絶縁被覆の被覆角および上下・奥行方向の対称性が流速および流量に大きな影響を与えてしまうこと(2)線電極絶縁被覆の設置精度を上げることが非常に難しいこと(3)線電極絶縁被覆(直径約2mm)が流路(幅5mm)の40%を遮蔽することになり、圧力損失が大きくなってしまうこと、などが挙げられる。
【0011】
また、特許文献1に示す技術は、第1の電極である線電極が熱シンクのチャネルの入り口に位置しているため、第2の電極のエッジによりスパークして放電してしまい、効率よくイオン風を発生させることができないという課題を有する。
さらに、特許文献2に示す技術は、液体を流動させることが前提となる技術であると共に、多段化する際には構造が複雑で手間が掛かってしまうという課題を有する。
【0012】
本発明は、グランド電極を部分的に被覆することで線電極前後で非一様な放電を発生し、正味の気体移動を実現するグランド電極被覆方式のイオン風発生装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るイオン風発生装置は、電極間に高電圧を印加することでコロナ放電により誘起されるイオン風を発生させるイオン風発生装置において、グランドに接続され、対向して配設される一対の平板状のグランド電極と、前記グランド電極が対向している対向空間領域内に前記各グランド電極に対して平行に配設され、高電圧が印加される線状の高電圧線電極と、前記一対のグランド電極における対向面に、当該対向面の一部であって前記イオン風の出力方向の上流側の位置に配設される絶縁体と、前記高電圧線電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備えるものである。
【0014】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、一対の平板状のグランド電極と、グランド電極が対向している対向空間領域内に各グランド電極に対して平行な線状の高電圧線電極とを備え、グランド電極における対向面に、イオン風の出力方向の上流側となる位置に絶縁体を配設しているため、高電圧線電極に対して、高度な技術を必要とする被膜等を行う必要がなく、任意の方向に容易にイオン風を発生させることができるという効果を奏する。
【0015】
また、イオン風の流路が絶縁被膜に遮蔽されることがないため、イオン風を効率よく流動させることが可能になるという効果を奏する。
【0016】
さらに、高電圧線電極がグランド電極が対向している対向空間領域内に配設されるため、エッジによるスパークが発生して放電してしまうことを防止し、効率よくイオン風を発生させることができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記一対のグランド電極が平行に配設されているものである。
【0018】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、グランド電極が平行に配設されているため、構造が簡素化されて加工を容易にすることができると共に、気体の流路や電圧の制御を簡素化することができるという効果を奏する。特に、高電圧線電極が複数配設されるような場合には、各高電圧線電極の電圧をまとめて制御することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記高電圧線電極が、直線状の電極であり、前記一対のそれぞれのグランド電極との距離が同一となるように前記対向空間領域内に配設され、前記絶縁体が、前記一対のグランド電極に垂直で且つ前記高電圧線電極と平行な断面の位置に前記絶縁体の端部が揃うように配設されているものである。
【0020】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、高電圧線電極が直線状の電極であり、それぞれのグランド電極との距離が同一となるように対向空間領域内に配設され、それぞれのグランド電極に垂直で且つ高電圧線電極と平行な断面の位置に絶縁体の端部が揃うように、当該絶縁体が配設されているため、高電圧線電極とグランド電極との距離関係、絶縁体が配設される位置関係が整然となり、イオン風の流路を効率よく確保し、イオン風により発生する渦等の複雑な流動を抑えて効率よくイオン風を流動させることができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記高電圧線電極が、直線状の電極であり、前記一対のそれぞれのグランド電極との距離が同一となるように前記対向空間領域内に配設され、前記絶縁体が、前記一対のグランド電極に垂直で且つ前記高電圧線電極を含む断面の位置に前記絶縁体の端部が揃うように配設されているものである。
【0022】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、高電圧線電極が直線状の電極であり、それぞれのグランド電極との最短距離が同一となるように対向空間領域内に配設され、それぞれのグランド電極に垂直で且つ高電圧線電極を含む断面の位置に絶縁体の端部が揃うように、当該絶縁体が配設されているため、高電圧線電極とグランド電極との距離関係、絶縁体が配設される位置関係が整然となり、イオン風の流路を効率よく確保し、イオン風により発生する渦等の流動により効率よくイオン風を流動させることができると共に、高い流速及び流量による高い流動効率を実現することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記グランド電極が対向している対向空間領域内に、前記高電圧線電極及び前記絶縁体を直列に複数設けるものである。
【0024】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、グランド電極が対向している対向空間領域内に、高電圧線電極及び絶縁体を直列に複数設けるため、簡単な加工で多段化を実現することができ、イオン風を効率よく発生させることができるという効果を奏する。
【0025】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記絶縁体が、当該絶縁体がない場合に前記グランド電極に流れる電流分布にしたがって、前記電流が少なくとも所定の値以上である領域の一部に配設されているものである。
【0026】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、絶縁体がない場合にグランド電極に流れる電流分布にしたがって、電流が少なくとも所定の値以上である領域の一部に絶縁体を配設するため、イオン風の発生効率を維持しつつ、絶縁体が配設される領域を最小限に抑えて装置を小型化することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明に係るイオン風発生装置は、前記イオン風発生装置を用いたガスポンプであって、少なくとも一部に開口部を有する筐体内に、前記開口部の方向に前記イオン風が発生するように前記イオン風発生装置が備えられているものである。
【0028】
このように、本発明に係るイオン風発生装置においては、イオン風発生装置を用いたガスポンプであって、少なくとも一部に開口部を有する筐体内に、開口部の方向にイオン風が発生するようにイオン風発生装置が備えられているため、イオン風を利用した高効率なガスポンプを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態に係るイオン風発生装置の概略図である。
【図2】第1の実施形態に係るイオン風発生装置の側面図である。
【図3】第1の実施形態に係るイオン風発生装置の上面図である。
【図4】第1の実施形態に係るイオン風発生装置の様々な態様を示す第1の図である。
【図5】第1の実施形態に係るイオン風発生装置の様々な態様を示す第2の図である。
【図6】第2の実施形態に係るイオン風発生装置の概略図である。
【図7】第2の実施形態に係るイオン風発生装置の側面図である。
【図8】第3の実施形態に係るガスポンプの側面図である。
【図9】実験装置の構成を示す図である。
【図10】実験結果を示す第1の図である。
【図11】実験結果を示す第2の図である。
【図12】実験結果を示す第3の図である。
【図13】イオン風の発生メカニズムを示す図である。
【図14】線電極被覆方式の線-平行平板型EHDガスポンプの構成を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0031】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るイオン風発生装置について、図1ないし図5を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るイオン風発生装置の概略図、図2は、本実施形態に係るイオン風発生装置の側面図、図3は、本実施形態に係るイオン風発生装置の上面図、図4は、本実施形態に係るイオン風発生装置の様々な態様を示す第1の図、図5は、本実施形態に係るイオン風発生装置の様々な態様を示す第2の図である。
【0032】
図1ないし図3において、本実施形態に係るイオン風発生装置1は、グランドに接続され、対向して配設される1対のグランド電極11a,11bと、グランド電極11a,11bが対向している対向空間領域12内に、グランド電極11a,11bと平行に配設される線電極13と、線電極13に高電圧を印加する電圧印加部14と、グランド電極11a,11bの対向面側の表面の一部であって、イオン風を出力させる方向の上流側となる位置に絶縁性を有する絶縁カバー15とを備える。
【0033】
なお、対向空間領域12は、グランド電極11a,11bが対向している空間領域であり、各グランド電極11a,11bを俯瞰で見た場合に、それぞれのグランド電極11a,11bが重なっている領域に対応する空間領域である。このような対向空間領域12内に、線電極13を配設することで、エッジによりスパークが発生することを防止することができる。
【0034】
ここでは、1対のグランド電極11a,11bは、長方形の同一形状で平行に配設されている。線電極13は、グランド電極11a,11bに平行で、それぞれの電極から同一の距離となる位置に配設される。この線電極13は、直流の高電圧電源である電圧印加部14に接続されており、正極電圧が印加される。
【0035】
グランド電極11a,11bの対向面側の表面に配設されている絶縁カバー15は、その端部が、グランド電極11a,11bに垂直で且つ線電極13を含む断面F(図2を参照)の位置Pに揃うように配設されており、図中の矢印で示すイオン風の出力方向の上流側におけるグランド電極11a,11bの領域Aを被覆して配設されている。
【0036】
なお、絶縁カバー15は、図1ないし図3に示すように、線電極13の位置を基準としてイオン風を出力させる方向の上流側に備えるのが望ましいが、少なくともイオン風を出力させる方向の下流側の一部にグランド電極11a,11bが露出している構成であれば、イオン風を意図する方向に(ここでは、紙面に対して右側方向に)発生させることができる。
【0037】
線電極13に正極又は負極の高電圧が印加されることで、グランド電極11a,11bと線電極13で構成される不平等な電界で局所的に電界が強い場所が集中して生じ、火花放電が発生する前に電界が集中している部分で局所的なコロナ放電が生じる。このコロナ放電によるイオンの泳動に励起されて、流体(大気中の場合は空気)の流れが生じる。この空気の流れであるイオン風は線電極13から1対のグランド電極11a,11bの方向に対して発生する。図1ないし図3に示すように、本実施形態に係るイオン風発生装置においては、グランド電極11a,11bの一部の領域に絶縁カバー15が配設されているため、線電極13から絶縁カバー15が配設されている方向へのコロナ放電が生じず、その結果線電極13から絶縁カバー15の方向へのイオン風が発生しない。すなわち、図中の矢印の方向にイオン風が発生する。
【0038】
なお、本実施形態に係るイオン風発生装置1は、図4(A)、(B)に示すように、絶縁カバー15の端部の位置が、グランド電極11a,11bに垂直で且つ線電極13を含む断面Fの位置Pに揃うように配設される必要はなく、グランド電極11a,11bに垂直で且つ線電極13に平行な断面Fの位置Pに揃うように配設されるようにしてもよい。
【0039】
また、図4(C)に示すように、線電極13は、それぞれのグランド電極11a,11bから同一の距離となる位置に配設される必要はなく、異なる距離となる位置(グランド電極11aと線電極13との距離、及びグランド電極11bと線電極13との距離が同一ではない位置)に配設されるようにしてもよい。図4(C)においては、グランド電極11aと線電極13との距離が、グランド電極11bと線電極13との距離に比べて短くなっている。さらに、図4(D)に示すように、グランド電極11a,11bは平行に配設されなくてもよい。
【0040】
さらにまた、図4(E)に示すように、グランド電極11a~11d、線電極13及び絶縁カバー15を並列に複数配設するようにしてもよい。すなわち、グランド電極11a,11cの間、グランド電極11c,11dの間、グランド電極11d,11bの間の対向空間領域内に、それぞれ線電極13と絶縁カバー15を有する。こうすることで、イオン風の出力を増加させることができる。さらにまた、図4(F)(上図が断面図であり、下図は側断面図である)に示すように、グランド電極11をダクト状(断面が矩形、円形、楕円形等であってもよい)に形成し、その内側にグランド電極11の周方向に沿って線電極13を配設し、イオン風を出力させる方向の上流側にグランド電極11の内側を被覆するように絶縁カバー15を備えるようにしてもよい。こうすることで、イオン風の出力を増加させることができる。
【0041】
さらにまた、図5(A)、(B)に示すように、上面から見た場合に、絶縁カバー15の端部と線電極13との位置は一致しても一致しなくてもよく、また平行であっても平行でなくてもよい。
【0042】
さらにまた、図5(C)に示すように、線電極13が直線状でなくてもよい。さらにまた、図5(D)、(E)等に示すように、グランド電極11aとグランド電極11bは対向する対向空間領域12を有するように配設されればよく、大きさや形状は限定されない。
【0043】
このように、本実施形態に係るイオン風発生装置によれば、イオン風の流動方向を制御するのに、絶縁カバー15をグランド電極11a,11bに被覆させるだけでよいため、加工や設置が極めて簡単で且つ高精度に製造することができる。また、流路の中央付近の遮蔽を削減することができ、圧力損失を減少させて高効率に流体を流動させることができる。さらに、エッジ等の存在によりスパーク等が発生して放電してしまうことを防止し、効率よくイオン風を発生させることができる。
【0044】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るイオン風発生装置について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るイオン風発生装置の概略図、図7は、本実施形態に係るイオン風発生装置の側面図である。
なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0045】
本実施形態に係るイオン風発生装置1は、グランド電極11a,11bが対向している対向空間領域12内に、前記第1の実施形態における線電極13及び絶縁カバー15を直列に複数設けるものである。また、その際の絶縁カバー15が、グランド電極11a,11bに流れる電流の分布に従い、電流値が少なくとも所定の値以上である領域の一部に配設される。
【0046】
図6に示すように、イオン風発生装置1は、対向して配設される1対のグランド電極11a,11bの対向空間領域12内に、複数の線電極13(ここでは、13aと13bの2つを示しているが、いくつ配設されてもよい)と複数の絶縁カバー15(ここでは、15aと15bの2つを示しているが、線電極13と対となる数で配設されてもよい)が配設されている。各線電極13と絶縁カバー15との位置関係は、前記第1の実施形態で示した場合と同じであり、それらが直列に連続して複数設けられている。各線電極13には、共通の電圧印加部14から正極電圧が印加され、各線電極13ごとにコロナ放電が生じる。すなわち、各線電極13ごとに生じるコロナ放電により励起される流体の流動が、加算的に増加されて高出力、高効率にイオン風を発生させることが可能となる。
【0047】
このとき、線電極13aが絶縁カバー15aと15bに挟まれた領域(領域Z)の方向にコロナ放電を生じる可能性がある。つまり、イオン風を発生させようとする方向とは反対の方向に、イオン風が発生してしまい、効率が悪くなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態においては、このようなことを防止するために、グランド電極11a,11bの電流分布に従って、必要な領域にのみ絶縁カバー15を配設する。
【0048】
図7に示すように、絶縁カバー15がない場合に、例えば図7(A)に示すような分布でグランド電極11a,11bに電流が流れるとする。この場合、線電極13aと領域Bとの間のコロナ放電により発生するイオン風の影響を最小限に抑えるために、図に示すような値で閾値を設定し、閾値以上の値の領域の一部に絶縁カバー15を被覆して配設する。つまり、図7(B)に示すように、絶縁カバー15の一方の端部は、第1の実施形態において示したように、グランド電極11a,11bに垂直で且つ線電極13を含む断面の位置に揃うように配設され、他方の端部は、閾値以上の電流が流れる領域を被覆するように配設される。こうすることで、正味の気体の移動を阻害する方向に発生するイオン風をなくすことができる。
【0049】
このように、本実施形態に係るイオン風発生装置によれば、複数の線電極13と対になる絶縁カバー15を複数配設することで、イオン風の出力を容易に上げることができると共に、絶縁カバー15で被覆する領域を最小限に抑えつつ高効率を維持して小型化したイオン風発生装置を実現することができる。
【0050】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係るガスポンプについて、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係るガスポンプの側面図である。
なお、本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0051】
本実施形態に係るガスポンプ20は、前記各実施形態に係るイオン風発生装置1を利用したものである。すなわち、図8に示すように、少なくとも一部に開口部21を有する筐体22内に、開口部21の方向にイオン風が発生するようにイオン風発生装置1が備えられている。このような構成とすることで、開口部21からイオン風を排出させるガスポンプを実現することができる。
【0052】
このように、本実施形態に係るガスポンプによれば、前記各実施形態におけるイオン風発生装置を利用した高性能なガスポンプを実現することができる。
【実施例】
【0053】
前記ガスポンプを試作し、その性能実験を行った。
図9に、本実施例に係る実験装置の構成を示す。作動流体には室温の空気を用い、大気圧下で実験を行った。直流高電圧電源を用いて、線電極に正極電圧を印加した。印加電圧と放電電流の測定には高電圧プローブ、オシロスコープ、直流電流計、空気流速の測定には熱線流速計、圧力差の測定には差圧計をそれぞれ用いた。
【0054】
空気流速については、出口、入口ともにポンプから5mm離れた位置の流れ方向垂直断面において、断面中心の水平、垂直線上を2mm間隔で測定し、その平均値を代表速度とした。空気流量については流路断面と平均流速(Q=A×V)から算出した。
【0055】
流路にはアクリル樹脂製で断面長方形の流路(高さ5mm×幅10mm)を用いた。線電極には直径0.24mmのステンレス線、グランド電極には1対の黄銅製の平板を用い、線電極の上下対称となる位置に設置した。絶縁被膜は線電極との距離に応じて設置した。本実施例では、絶縁被膜と線電極との距離をLとして、L=-6mmから2mmの間で6通りの設置位置で実験を行った。
【0056】
図10に放電特性の実験結果を示す。図中の矢印で示すプロットは、従来知られている非特許文献1、2に示すような、線電極に絶縁被膜した場合(線電極被膜方式とし、被膜角は180°である)のガスポンプによる実験結果を示している。絶縁被膜の位置Lに依らず、5.5kV以上の印加電圧で放電が生じ、電圧の増加と共に放電電流Iは2次関数的に増加し、およそ8kV又は8.5kV程度でスパークした。また、Lの増加と共に放電電流は減少する傾向であった。これは、線電極付近で電離しプラス電荷を帯びた気体分子を引き寄せるグランド電極面積が減少したためである。
【0057】
図11にポンプ出口での空気の流速及び流量の実験結果を示す。図中の矢印で示すプロットは、線電極被膜方式のガスポンプによる実験結果を示している。基本的にどの絶縁被覆位置Lの場合でも、印加電圧の増加とともに流速Uおよび流量Qは増加した。また、最大流速及び流量はL=0mm,V=8kVのときに、U=3.4m/s、Q=0.17l/sに達した。線電極被覆方式の場合と比較すると、最大で2.2倍に増加した。
【0058】
ここで、定性的にはLが-6~-2mmの場合と、0~2mmの場合の2通りに分類できる。L≦-2mmのとき、線電極被覆方式と同じようなV-U関係を示し、ある任意の印加電圧でほぼ流速及び流量が頭打ち又はピークに達して、その後減少するような傾向を示した。しかし、L≧0mmのとき、印加電圧の増加とともに流速及び流量は増加する傾向を示した。この違いは、L=0を境に、Lが負の場合は印加電圧の増加に伴って、逆方向の放電によるイオン風の影響が無視できなくなったためであると考えられる。つまり、Lが負の場合は、印加電圧の増加に伴って、逆方向の放電によるイオン風が高出力となり、順方向に流れる正味の気体の流れを妨げていると考えられる。
【0059】
図12にポンプ効率の実験結果を示す。L≦-2mmの場合とは異なり、L≧0mmでは、印加電圧の増加とともにポンプ効率は増加する傾向を示し、L=0mmのとき最大効率はη=0.18%であった。また、線電極被覆方式と比較すると、L≦-2mmの場合、線電極被覆方式よりもポンプ効率が低下しているが、L≧0mmでは印加電圧が約7.5kV以上において、本発明に係るガスポンプのほうが線電極被覆方式よりも最大効率は54%程度増加することが分かった。また、L≦-2mmであっても、印加電圧が6.0kV以下の場合は、線電極被覆方式よりも効率がいい結果が出ていることがわかる。
【0060】
以上の実験結果から、本発明に係るガスポンプを用いることで、流速及び流量を増加できること、及びポンプ効率についても大幅に向上できることが明らかとなった。これにより、本発明に係るガスポンプの実現性とその優位性が明確に示された。
【符号の説明】
【0061】
1 イオン風発生装置
11a,11b グランド電極
12 対向空間領域
13 線電極
14 電圧印加部
15 絶縁カバー
20 ガスポンプ
21 開口部
22 筐体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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