TOP > 国内特許検索 > 人工網膜およびその製造方法 > 明細書

明細書 :人工網膜およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4784757号 (P4784757)
公開番号 特開2008-079799 (P2008-079799A)
登録日 平成23年7月22日(2011.7.22)
発行日 平成23年10月5日(2011.10.5)
公開日 平成20年4月10日(2008.4.10)
発明の名称または考案の名称 人工網膜およびその製造方法
国際特許分類 A61F   9/08        (2006.01)
A61F   2/14        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
FI A61F 9/08
A61F 2/14
A61L 27/00 D
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2006-262746 (P2006-262746)
出願日 平成18年9月27日(2006.9.27)
審査請求日 平成21年9月10日(2009.9.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】木村 睦
【氏名】島 武弘
【氏名】山下 毅彦
【氏名】浦岡 行治
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】宮部 愛子
参考文献・文献 特開2003-152191(JP,A)
特開平06-125084(JP,A)
特表2003-528702(JP,A)
特開2006-51164(JP,A)
特表2003-531697(JP,A)
特開2006-68404(JP,A)
特表2001-505448(JP,A)
特開2005-211424(JP,A)
国際公開第2005/000395(WO,A1)
特開2002-325851(JP,A)
調査した分野 A61F 9/08
A61F 2/14
H01L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の上方に第1非晶質層を形成する工程と、
(c)前記第1非晶質層の上方に絶縁層を形成する工程と、
(d)フォトダイオードを形成するため第1導電型および第2導電型の不純物をそれぞれ前記第1非晶質層の所定の領域に注入する工程と、
(e)前記絶縁層の上方に第2非晶質層を形成する工程と、
(f)前記第1非晶質層および前記第2非晶質層をレーザー照射により結晶化し、第1半導体層および第2半導体層を形成する工程と、
(g)前記第2半導体層にMISトランジスタを形成する工程と、を含み、
前記工程(f)において使用される前記レーザーは、前記第2半導体層を通過し、前記第1非晶質層を結晶化することができる波長のレーザーであることを特徴とする人工網膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)の前に、前記第1非晶質層をパターニングすること、を含むことを特徴とする請求項1に記載の人工網膜の製造方法。
【請求項3】
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の上方に第1非晶質層を形成する工程と、
(c)フォトダイオードを形成するため第1導電型および第2導電型の不純物をそれぞれ前記第1非晶質層の所定の領域に注入する工程と、
(d)前記第1非晶質層の上方に絶縁層を形成する工程と、
(e)前記絶縁層の上方に第2非晶質層を形成する工程と、
(f)前記第1非晶質層および前記第2非晶質層をレーザー照射により結晶化し、第1半導体層および第2半導体層を形成する工程と、
(g)前記第2半導体層にMISトランジスタを形成する工程と、を含み、
前記工程(f)において使用される前記レーザーは、前記第2半導体層を通過し、前記第1非晶質層を結晶化することができる波長のレーザーであることを特徴とする人工網膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)の前、または前記工程(d)の前に、前記第1非晶質層をパターニングすること、を含むことを特徴とする請求項3に記載の人工網膜の製造方法。
【請求項5】
前記レーザーの波長は、500nm~1600nmであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の人工網膜の製造方法。
【請求項6】
前記レーザーは、YAGレーザーの二倍波であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の人工網膜の製造方法。
【請求項7】
前記工程(f)は、前記第1非晶質層に注入された不純物を活性化すること、を含むことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の人工網膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7の少なくとも何れか1項に記載の製造方法により製造されることを特徴とする人工網膜。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工網膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網膜色素変性症や黄斑変性症等の疾病によって損傷した網膜に替わって光の信号を検出し、視神経に情報を伝達する人工網膜(人工臓器の1種)の開発が検討されている。例えば、網膜は眼底部の非常に薄い部分の中に複数の機能を有する細胞(視細胞、水平細胞、双極細胞、神経節細胞)から構成されているため、これらの細胞の生理学的な研究等によって明らかにされたメカニズムを取り入れた新しい情報処理システムをLSIチップによって細胞と同様の機能別に実現し、これらLSIチップを3次元的に積層することで人工網膜を製造することが提案されている。
【0003】
しかし、LSIチップを3次元的に積層するには、シリコンウエハを貫通する埋め込み配線の形成、シリコンウエハの薄膜化のための研磨、積層基板間の接続のための微細なバンプ形成、LSIチップの張り合わせにおける精密な位置合わせ、製造工程に耐えられる接着技術の確立など種々の技術が要求される。
【0004】
さらに、眼球底部に人工網膜を埋め込むには、曲面状の可撓性材質に人工網膜を形成する技術が必要である。しかし、可撓性材質に通常の半導体プロセスを適用して人工網膜を形成することは困難である。そのため、特許文献1には、人工網膜を構成する複数の薄膜デバイスを曲面状の可撓性材質上に剥離転写しながら順次積層し、人工網膜を製造する製造方法が開示されている。

【特許文献1】特開2006-51164号公報(2006年2月23日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の製造方法は、非常に複雑なプロセスであり容易に実現することが困難である。具体的には、上下の層間での導通を確保することおよび大面積の転写が困難である。そのため、簡便に製造することができ、製造コストの低下を実現できるよう人工網膜の製造方法の改善が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性層となる半導体層が3次元に積層されてなる人工網膜を簡便な方法で製造することができる人工網膜およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る人工網膜の製造方法は、
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の上方に第1非晶質層を形成する工程と、
(c)前記第1非晶質層の上方に絶縁層を形成する工程と、
(d)フォトダイオードを形成するため第1導電型および第2導電型の不純物をそれぞれ前記第1非晶質層の所定の領域に注入する工程と、
(e)前記絶縁層の上方に第2非晶質層を形成する工程と、
(f)前記第1非晶質層および前記第2非晶質層をレーザー照射により結晶化し、第1半導体層および第2半導体層を形成する工程と、
(g)前記第2半導体層にMISトランジスタを形成する工程と、を含み、
前記工程(f)において使用される前記レーザーは、前記第2半導体層を通過し、前記第1非晶質層を結晶化することができる波長のレーザーであることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る人工網膜の製造方法では、複数層の非晶質層(非晶質半導体層)が絶縁層を介して積層された後に、一の結晶化処理で結晶化される。これにより、各種素子が形成される半導体層の積層構造が得られ3次元構造を有する人工網膜を簡便な方法で製造することができる。3次元構造を実現するためには、特許文献1に記載の剥離転写技術が開示されているが、この製造方法は、発明が解決しようとする課題の欄で述べたように実際に適用するには課題が多い。しかしながら、本発明に係る製造方法によれば、複数の非晶質層を積層した後に所望の特性を発揮できる波長のレーザーにより結晶化を行うことで、簡便に3次元構造を実現することができる。また、本発明に係る人工網膜の製造方法により形成される第2半導体層は、高品質な層であるため特性の良好なMIS(Metal Insulator Semiconductor)トランジスタを形成することができる。このMISトランジスタは、フォトダイオードが変換した電気信号を生体網膜でもおこなわれている画像処理をしながら視神経に伝達する役割を果たすため、特性が良好なMISトランジスタを形成できることで高性能な人工網膜を製造することができる。
【0009】
なお、本発明において、「Aの上方にBを形成する」とは、Aの上に直接Bを形成する場合と、Aの上に他の層を介してBを形成する場合とを含む。
【0010】
本発明に係る人工網膜の製造方法において、前記工程(c)の前に、前記第1非晶質層をパターニングすること、を含むことが好ましい。上記構成によれば、第1非晶質層のパターニングを行うことで、フォトダイオードのサイズを最適化することができる。
【0011】
本発明に係る人工網膜の製造方法は、
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の上方に第1非晶質層を形成する工程と、
(c)フォトダイオードを形成するため第1導電型および第2導電型の不純物をそれぞれ前記第1非晶質層の所定の領域に注入する工程と、
(d)前記第1非晶質層の上方に絶縁層を形成する工程と、
(e)前記絶縁層の上方に第2非晶質層を形成する工程と、
(f)前記第1非晶質層および前記第2非晶質層をレーザー照射により結晶化し、第1半導体層および第2半導体層を形成する工程と、
(g)前記第2半導体層にMISトランジスタを形成する工程と、を含み、
前記工程(f)において使用される前記レーザーは、前記第2半導体層を通過し、前記第1非晶質層を結晶化することができる波長のレーザーであることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る人工網膜の製造方法において、
前記工程(c)の前または前記工程(d)の前に、前記第1非晶質層をパターニングすること、を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る人工網膜の製造方法によれば、上記製造方法と同様の作用効果を有し、高性能である人工網膜を製造することができる。
【0014】
本発明に係る人工網膜の製造方法において、前記レーザーの波長は、500nm~1600nmであることが好ましい。この構成によれば、2層の非晶質層の結晶化を良好に行うことができる。
【0015】
本発明に係る人工網膜の製造方法において、前記レーザーは、YAGレーザーの二倍波であることが好ましい。この構成によれば、絶縁層を介して積層した複数の半導体層の結晶化をより確実に行うことができる。
【0016】
本発明に係る人工網膜の製造方法において、前記工程(f)は、前記第1非晶質層に注入された不純物を活性化すること、を含むことが好ましい。この構成によれば、結晶化工程が、不純物の活性化工程を含むため、活性化工程を別に設ける必要がなく、製造に要する時間およびコストの削減を図ることができる。
【0017】
本発明に係る人工網膜は、上述した本発明の人工網膜の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る人工網膜によれば、簡便な製造方法により製造されるため、コストの削減が図られた人工網膜を提供することができる。また、上記の製造方法により形成される第2半導体層は、高品質な層であるため、特性の良好なMISトランジスタ(薄膜トランジスタ)を形成することができる。その結果、高性能な人工網膜を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る人工網膜の製造方法によれば、複数の非晶質層を積層した後に所望の特性を発揮できる波長のレーザーにより結晶化を行うことで、3次元構造が実現された人工網膜を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
1.人工網膜
まず、本発明の実施形態に係る人工網膜の製造方法により製造される人工網膜について図1および図2を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の製造方法により製造される人工網膜を示す分解斜視図である。図2は、本実施形態に係る人工網膜を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の人工網膜100は、フォトダイオードが形成された第1層100Aと、薄膜トランジスタが形成された第2層100Bとを含む。第2層100Bは、第1層100Aの上に形成され、3次元構造が実現されている。第1層100Aは、受けた光を電気信号に変換する役割を果たす。第2層100Bは、MISトランジスタ(以下、「薄膜トランジスタ」と称する)で構成された各種素子および回路を含み、第1層100Aで変換された電気信号を視神経に伝達する役割を果たす。具体的には、第1層100Aに形成されたフォトダイオードを駆動するための画素回路(図示せず)、前記フォトダイオードにより光電変換された電気信号をパルス変調して人体の視神経にパルス信号を供給するためのパルス変調回路(図示せず)を構成している。さらに、フォトダイオードにより光電変換された電気信号を増幅するための増幅素子(回路)を含んでいてもよい。
【0023】
次に、図2を参照しつつ、本実施形態に係る人工網膜100についてより詳細に説明する。図2に示すように、人工網膜100は、基板10と、基板10の上に設けられた第1半導体層12と、第1半導体層12の上に設けられた絶縁層14と、絶縁層14の上に設けられた薄膜トランジスタ50とを、含む。第1半導体層12は、例えば多結晶シリコン膜であり、絶縁層14は、酸化シリコンであることができる。第1半導体層12には、PIN型のフォトダイオード40が形成されている。具体的には、第1導電型領域(P型領域)42、第2導電型領域(N型領域)44および真性領域(I層)46とからなる。真性領域46は、第1導電型領域42と第2導電型領域44とを分離するように、これらの間に設けられ、図1に参照されるように、第1半導体層12の面内においてくし型のパターンを有している。
【0024】
薄膜トランジスタ50は、絶縁層14の上に形成された第2半導体層52と、第2半導体層52の上に形成されたゲート絶縁層54と、ゲート絶縁層54の上に形成されたゲート電極56と、第2半導体層52中に形成されたソース領域またはドレイン領域となる不純物領域58と、を含む。
【0025】
薄膜トランジスタ50およびフォトダイオード40を覆うように、基板10の上方には、層間絶縁層16が設けられている。本実施形態では、層間絶縁層16として、複数の層が積層されている場合を示す。具体的には、第1絶縁層16aと、第2絶縁層16bとが積層されている。第1絶縁層16aおよび第2絶縁層としては、酸化シリコン、窒化シリコン、各種の有機絶縁材料を用いることができる。
【0026】
層間絶縁層16には、薄膜トランジスタ50の不純物領域58の上に形成されたコンタクトホール60と、フォトダイオードの40上に形成されたコンタクトホール48とを有する。コンタクトホール60と、コンタクトホール48とを接続するために、導電層20が形成されている。また、隣接する薄膜トランジスタ50同士のコンタクトホール60同士を接続するように、導電層22が形成されている。
【0027】
本実施形態に係る人工網膜100によれば、簡便な製造方法により製造されるため、コストの削減が図られた人工網膜100を提供することができる。また、後述するが本実施形態に係る製造方法により形成される第2半導体層52は、高品質な層であるため、特性が良好な薄膜トランジスタ50を形成することができる。その結果、高性能な人工網膜100を提供することができる。
【0028】
2.人工網膜の製造方法
以下、本発明に係る人工網膜の製造方法の実施形態について、図3を参照しつつ説明する。図3(a)~図3(d)は、本実施形態に係る人工網膜の製造工程を示す図である。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、基板10を準備する。基板10としては、石英ガラス、無アルカリガラス、通常のガラス、プラスチックフィルムや樹脂膜、たとえば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)、ポリエ-テルサルフォン(PES)などを用いることができる。
【0030】
次に、基板10の全面に、第1非晶質層12aを形成する。具体的には、アモルファスシリコンを形成することができる。この第1非晶質層12aは、後述する結晶化処理で結晶化され、第1半導体層12となる。ついで、第1非晶質層12aの上に絶縁層14を形成する。絶縁層14としては、例えば酸化シリコンを公知のCVD法により形成することができる。また、絶縁層14を形成する前に、必要に応じて第1非晶質層12aをパターニングしてもよい。
【0031】
次に、フォトダイオード40を形成するために不純物を注入する。具体的には、図3(a)に示すように、絶縁層14の上に所定のパターンの開口を有するマスクM1を形成する。このとき、マスクM1は、真性領域46および第2導電型領域44が形成されるパターンを覆っている。その後、第1導電型(P型またはN型)の不純物を第1非晶質層12aに注入する。これにより、第1非晶質層12aの所定領域に第1導電型注入領域13aが形成される。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、マスクM1を除去し、所定パターンの開口を有するマスクM2を形成する。このとき、マスクM2は真性領域46および第1導電型領域42となる領域を覆っている。その後、第2導電型(N型またはP型)の不純物を第1非晶質12aに注入する。これにより、第1非晶質層12aの所定領域に第2導電型注入領域13bが形成される。後述の工程で不純物の活性化工程を経ることで、PIN型のフォトダイオード40が形成される。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、絶縁層14の上に、第2非晶質層52aが形成される。第2非晶質層52aは、後述する結晶化処理で結晶化され、第2半導体層52となる層である。第2非晶質層52aとしては、例えば、アモルファスシリコンを形成することができる。
【0034】
次に、第1非晶質層12aおよび第2非晶質層52aの結晶化を行う。結晶化処理は、レーザー照射により行われる。以下に、第1非晶質層12aおよび第2非晶質層52aがアモルファスシリコンである場合を例として使用するレーザーの特徴点について説明する。レーザーの波長としては、500nm~1600nmであることが好ましい。つまり、照射するレーザーのエネルギーが、上層の第2非晶質層52aの結晶化において全て吸収されるのではなく、下層の第1非晶質層12aにも吸収されるエネルギーの大きさであることが好ましい。より具体的には、レーザーは、Nd:YAGレーザー(基本波長:1064nm)の二倍波(波長532nm)である緑色レーザーを用いることがよい。
【0035】
緑色レーザーは、エキシマレーザーに比べて多結晶シリコンに対する光吸収係数が小さいため、レーザーエネルギーの一部が透過する。このため、第1非晶質層12aに対してレーザーのエネルギーを到達させることが可能となり、2層ないしは多層構造化したシリコン薄膜基板を用いた結晶化を行うことができるのである。
【0036】
このように、複数層の非晶質層を積層した状態で、結晶化を行うことにより、特に上層の半導体層として高品質な半導体層が得られるという利点がある。その作用を以下に説明する。結晶化の際には、上層の第2半導体層52を透過したレーザーエネルギーが下層の第1非晶質層12aに吸収されることによって熱が生じる。そのため、下層が熱浴として働き、上層の第2半導体層52(多結晶シリコン)に対して緩やかなアニール効果が生じることとなる。これにより、第2半導体層52の結晶粒内欠陥の低減や結晶粒界の高品質化が図られるのである。このことは、第2半導体層52に形成される薄膜トランジスタの特性の向上にも寄与することとなる。
【0037】
また、このレーザー照射は、第1非晶質層12aに注入された不純物の活性化処理を兼ねることができる。そのため、不純物の活性化のために別の工程を設ける必要がなく、製造時間および製造コストの削減を図ることができる。
【0038】
この工程により、図3(d)に示すように、第1半導体層12および第2半導体層52を形成することができる。第1非晶質層12aおよび第2非晶質層52aがアモルファスシリコンであるとき、第2半導体層52は、多結晶シリコンとなり、第1半導体層12は、微結晶シリコンとなる。また、同時に、第1導電型注入領域13aおよび第2導電型注入領域13bでは、不純物が活性化(半導体層の格子中に入り込む)され、第1導電型領域42、第2導電型領域44が形成される。
【0039】
次に、第2半導体層52をパターニングし、図2に参照されるように所望のパターンの第2半導体層52を形成する。パターニングは、公知の技術により行うことができる。この第2半導体層52に薄膜トランジスタ50を形成する。薄膜トランジスタ50は、公知の形成方法に従って形成することができる。以下に、薄膜トランジスタ50の形成方法の一例を説明する。
【0040】
まず、第2半導体層52の上に、酸化シリコンなどからなる絶縁層(図示せず)を形成する。ついで、絶縁層の上に、ゲート電極となる導電層(図示せず)を形成し、この導電層および絶縁層をパターニングする。これにより、図2に参照されるように、第2半導体層52の上に、ゲート絶縁層54およびゲート電極56を形成することができる。ゲート絶縁層54およびゲート電極56としては、公知の材質を適宜用いることができる。
【0041】
ついで、ソース領域またはドレイン領域となる不純物領域58を形成する。この工程では、不純物領域58を形成したい領域以外を覆うマスク(図示せず)を形成し、所定の導電型の不純物を注入し、必要に応じて活性化のための熱処理を施すことで形成される。以上の工程により、薄膜トランジスタ50を形成することができる。
【0042】
次に、図2に参照されるように、薄膜トランジスタ50を覆い、第1半導体層12の上方に層間絶縁層16を形成する。本実施形態では、層間絶縁層16として、第1絶縁層16aおよび第2絶縁層16bを積層する場合を図示する。ついで、コンタクトホール48およびコンタクトホール60を形成する。コンタクトホール48およびコンタクトホール60は、公知のリソグラフィおよびエッチング技術により形成されることができる。その後、コンタクトホール48、60に導電層20、22を形成する。以上の工程により、本実施形態に係る人工網膜100を形成することができる。
【0043】
本実施形態に係る人工網膜100の製造方法によれば、第1非晶質層12a、第2非晶質層52aを絶縁層14を介して積層した後に、所望の特性を発揮できる波長のレーザーにより結晶化が行われる。これにより、素子が形成される第1半導体層12および第2半導体層52の積層構造からなる3次元構造を有する人工網膜100を簡便な方法で製造することができる。また、本実施形態に係る人工網膜100の製造方法により形成された第2半導体層52は、高品質な層であり特性の良好な薄膜トランジスタ50を形成することができる。薄膜トランジスタ50は、フォトダイオード40が変換した電気信号を視神経に伝達する役割を果たすため、特性の良好な薄膜トランジスタ50を形成できることで高性能な人工網膜100を製造することができる。
【0044】
本実施形態に係る人工網膜100の製造方法によれば、3次元構造を実現できるため、フォトダイオード40を広い面積に形成することができる。そのため、薄膜トランジスタとフォトダイオードとを同一平面内に形成する場合に比べて、広い面積にフォトダイオードを形成することができる。その結果、光の吸収効率が向上し、より多くの情報を視神経に伝達することができる人工網膜100を製造することができる。
【0045】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、種々の疾病によって損傷した網膜の代替となる人工網膜に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態に係る製造方法により製造される人工網膜を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係る製造方法により製造される人工網膜を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る人工網膜の製造方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 基板
12 第1半導体層
12a 第1非晶質層
13a 第1導電型注入領域
13b 第2導電型注入領域
14 絶縁層
16 層間絶縁層
40 フォトダイオード
42 第1導電型領域
44 第2導電型領域
46 真性領域
50 MISトランジスタ(薄膜トランジスタ)
52 第2半導体層
52a 第2非晶質層
54 ゲート絶縁層
56 ゲート電極
58 不純物領域
48、60 コンタクトホール
100 人工網膜
100A 第1層
100B 第2層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2