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明細書 :ビタミンKヒドロキノン誘導体を用いる癌治療剤および再発予防剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4040082号 (P4040082)
登録日 平成19年11月16日(2007.11.16)
発行日 平成20年1月30日(2008.1.30)
発明の名称または考案の名称 ビタミンKヒドロキノン誘導体を用いる癌治療剤および再発予防剤
国際特許分類 A61K  31/223       (2006.01)
A61K  31/225       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/223
A61K 31/225
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 28
出願番号 特願2007-500611 (P2007-500611)
出願日 平成18年1月27日(2006.1.27)
国際出願番号 PCT/JP2006/301363
国際公開番号 WO2006/080463
国際公開日 平成18年8月3日(2006.8.3)
優先権出願番号 2005022301
優先日 平成17年1月28日(2005.1.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年1月30日(2007.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】高田 二郎
【氏名】松永 和久
【氏名】加留部 善晴
【氏名】松原 美紗
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100092901、【弁理士】、【氏名又は名称】岩橋 祐司
審査官 【審査官】今村 玲英子
参考文献・文献 特開平05-004951(JP,A)
特開2004-107330(JP,A)
特開平06-305955(JP,A)
Takata, J. et al.,Biological & Pharmaceutical Bulletin,1999年,Vol.22,No.12,pp.1347-1354
Felicia, Y.H. et al.,Life Sciences,1993年,Vol.52,pp.1797-1804
調査した分野 A61K 31/223
A61K 31/225
A61P 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
JP0004040082B2_000021t.gif
(式中、RおよびR2はそれぞれ水素原子、またはグリシン、N-アシルグリシン、N-アルキルグリシン、N,N-ジアルキルグリシン、コハク酸及びその塩から選ばれる酸残基を表し、R, R2の少なくとも一方はグリシンのカルボン酸残基、またはコハク酸残基である。R3は水素原子または下記一般式(II)
【化2】
JP0004040082B2_000022t.gif
もしくは下記一般式(III)
【化3】
JP0004040082B2_000023t.gif
で示される基を表す。nは1~14の整数を意味する。)で表されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類またはその塩の少なくとも一種類を含有する癌治療剤。
【請求項2】
請求項1記載の一般式(I)で表されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類またはその塩の少なくとも一種類を含有する、キノン系抗癌剤の作用増強補助剤。
【請求項3】
請求項1記載の一般式(I)で表されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類またはその塩の少なくとも一種類を含有する、癌予防剤。
【請求項4】
請求項3記載の癌予防剤において、癌再発予防剤であることを特徴とする癌予防剤。
発明の詳細な説明
【関連出願】
【0001】
本出願は、2005年1月28日付け出願の日本国特許出願2005-22301号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は癌疾患に適用される薬剤、特にビタミンKヒドロキノン誘導体を用いる癌治療剤、癌予防剤及びキノン系抗癌剤の作用増強補助剤に関する。
【背景技術】
【0003】
天然型ビタミンKはフィロキノン(ビタミンK)とメナキノン-4(ビタミンK2(20))であるが、これらの天然型ビタミンK類はγ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla)を有するProthrombinや他のビタミンK依存性タンパク質類の生合成に必須であり、止血剤、骨粗鬆症治療剤として用いられている。ビタミンK依存性タンパク質の生合成において、ビタミンKは二電子還元体であるビタミンKヒドロキノンとなり、グルタミン酸残基(Glu)をγ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla)に変換する酵素(γ-グルタミルカルボキシラーゼ)の補因子として働くことが知られている。そしてビタミンK欠乏時やワルファリンなどのクマリン系薬物によるビタミンKサイクル阻害時には、Gla化が不完全になり脱γカルボキシル化されたビタミンK依存性タンパク質が生成される。
【0004】
一方、天然型ビタミンKであるフィロキノン(ビタミンK)とメナキノン-4(ビタミンK2(20))は癌細胞に対する抗腫瘍効果を有することが知られている(非特許文献1、2)。特に、メナキノン-4(ビタミンK2(20))は、ビタミンK欠乏時と同様にGluがGlaに変換されていない異常プロトロンビン(DCP、Des-γ-Carboxy Prothrombin)を放出するDCP陽性肝細胞癌に対して抗腫瘍効果と肝細胞癌の門脈浸潤抑制効果を有することが知られている(特開2004-107330、非特許文献3)。さらに、メナキノン-4には細胞分化誘導作用による抗腫瘍効果が知られている(特開平6-305955)。また、合成ビタミンKであるビタミンK3やその誘導体が肝細胞癌に対して抗腫瘍効果を有することが知られている。(非特許文献1、4参照)しかし、天然型ビタミンKの抗腫瘍効果はビタミンK3やその誘導体に比較して非常に低いことが報告されている(非特許文献1、2参照)。
【0005】
一方、ビタミンK類は水に全く溶解しない化合物である。経口投与においては、溶解性がバイオアベイラビリティの律速過程となるため、ビタミンK類の水溶性製剤の調製には、大量の非イオン性界面活性剤の添加による可溶化の方法が用いられている。しかし大量の非イオン性界面活性剤の添加はアナフィラキシーショック等の重篤な問題を生じる場合がある。したがって反復して投与する場合には、その有害性を完全に払拭することはできない。
天然型ビタミンK類が抗腫瘍効果を有することは前述の通りであるが、確認されている顕著な抗癌効果が肝細胞癌に限定されること、抗癌効果が比較的低いこと、水溶解性に起因する低いバイオアベイラビリティなどの現状が抗癌作用を効果的に発揮させるための障害となっている。したがって、抗癌効果を各種癌に対して有し、抗癌効果が高く、バイオアベイラビリティが高くあることで、抗癌作用を効率良く発揮できる医薬品の開発が強く望まれている。
【0006】
本発明者等は、特定の構造を有するビタミンKヒドロキノン誘導体が投与後に還元過程を経ないで活性型ビタミンKであるビタミンKヒドロキノンを生成し、高いバイオアベイラビリティを発揮してビタミンKの水不溶性問題を克服すること、および低プロトロンビン血症に対してすぐれた効果を呈することを既に開示した(特許第3088137号、非特許文献5、6)。しかし、ビタミンKヒドロキノン誘導体が抗癌効果を示すか否かについては明らかにはされていない。

【特許文献1】特開2004-107330
【特許文献2】特許第3088137号
【非特許文献1】Wu et al., Life Sci., 52, 1797-1804(1993).
【非特許文献2】Wang et al., Hepatology, 22, 876-882(1995).
【非特許文献3】Otsuka et al., Hepatology, 40, 243-251(2004).
【非特許文献4】Nishikawa et al., J. Biol. Chem., 270, 28304-28310 (1995).
【非特許文献5】Takata et al., Pharm Res., 12, 18-23(1995).
【非特許文献6】Takata et al., Pharm. Res., 12, 1973-1979(1995).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、水溶性が高く、投与後、還元過程を経ないで活性型ビタミンKであるビタミンKヒドロキノンへと変換し、高いバイオアベイラビリティを発揮できる特定の構造を有する化合物を用いた抗癌剤、癌再発予防剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述のとおり、本発明者等はビタミンKヒドロキノン誘導体が、投与後に還元過程を経ないで活性型ビタミンKであるビタミンKヒドロキノンへと変換し、高いバイオアベイラビリティを発揮してビタミンKの水不溶性問題を克服すること、および低プロトロンビン血症に対してすぐれた効果を呈することを既に報告している(特許第3088137号、非特許文献5、6)。引き続き他の疾患への有効性を検討した結果、ビタミンKヒドロキノン誘導体が各種癌に対する治療剤、再発予防剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。前記ビタミンKヒドロキノン誘導体は下記一般式(I)で表される。
一般式(I)
【化1】
JP0004040082B2_000002t.gif
(式中、RおよびR2はそれぞれ水素原子、またはアミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸及びそれらのハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩または糖酸塩の残基から選ばれる窒素置換基を有するカルボン酸残基、またはジカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の残基から選ばれるジカルボン酸残基を表し、R,
R2の少なくとも一方は窒素置換基を有するカルボン酸残基、またはジカルボン酸残基である。R3は水素原子または下記一般式(II)
【化2】
JP0004040082B2_000003t.gif
もしくは下記一般式(III)
【化3】
JP0004040082B2_000004t.gif
で示される基を表す。nは1~14の整数を意味する。)で表されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類またはその塩。
【0009】
即ち、本発明は、前記一般式(I)で表されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類またはその塩の少なくとも一種類を含有する抗癌剤、癌予防剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明にかかる癌疾患用薬剤によれば、ビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステルまたはその塩を適用することにより、各種の癌に対し優れた治療、予防効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体による肝細胞癌(PLC/PRF/5)に対する増殖抑制効果を示す説明図である。
【図2】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体による肺癌細胞(A549)に対する増殖抑制効果を示す説明図である。
【図3】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体による白血病細胞(HL60)のカスパーゼ-3/7活性に対する影響を示す説明図である。
【図4】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体による胃癌細胞(SDT4)に対する増殖抑制効果を示す説明図である。
【図5】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体によるマイトマイシンC耐性胃癌細胞(ST4)に対する増殖抑制効果を示す説明図である。
【図6】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体による大腸癌細胞(HT29)に対する増殖抑制効果を示す説明図である。
【図7】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体によるキノン系抗癌剤の抗癌作用に対する作用増強効果を示す説明図である。
【図8】本発明にかかるビタミンKヒドロキノン誘導体によるマウス移植ヒト肝細胞癌に対する抗癌作用を示す説明図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細な説明を行う。
本発明は、前記一般式(I)で表される化合物またはその塩を含有する抗癌剤、癌再発予防剤に関する。前記一般式(I)で表される化合物は、単独で製剤に含有させることもできるし、その塩として製剤に配合することもできる。本発明において、窒素置換基を有するカルボン酸残基R,
R2としては次のものが例示される。
窒素原子に対し水素原子;
窒素原子に対し1または2のアルキル基;
窒素原子に対しアシル基。
前記アルキル基としては、炭素数1~6の直鎖、もしくは分枝のアルキル基であり次のものが例示される。
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、1-エチルプロピル基、イソアミル基。
上記アルキル基としてはメチル基、エチル基が特に好ましい。また、アシル基を有する場合の炭化水素鎖も同様に定義可能である。
【0013】
アミノ基とカルボニル基の間は、好ましくは炭素数1~7の直鎖、分枝または環状のアルキレン基で結合される。前記分枝状のアルキレン基としては、次のものが例示される。
イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、1-エチルプロピルなどのアルキル基から誘導されたもの。
前記環状アルキレン基としては、次のものが例示される。
シクロペンタン環、シクロヘキサン環、あるいはメチルシクロヘキサン環などを構造中に含むもの。
上記アルキレン基としては、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0014】
ハロゲン化水素酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩などが好ましい。本発明において、ハロゲン化水素酸塩は結晶化ないし固形化する場合が多く、製剤化にあたっての取り扱いが容易になるという利点がある。
その他の塩としては次のものが例示される。
アルキルスルホン酸塩としてはメタンスルホン酸塩等、糖酸塩としてはグルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオン酸塩等。
【0015】
本発明において、ジカルボン酸残基R,
R2はジカルボン酸及びそのアルカリ金属塩の残基から選ばれる。ジカルボン酸残基のカルボニル基間は炭素数2~4の直鎖のアルキレン基で結合される。アルキレン基として特に好ましいのは、エチレン基である。アルカリ金属塩としてナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0016】
本発明において、前記一般式(I)で表される化合物の式中、R, R2としてはそれぞれ水素原子、または前記窒素置換基を有するカルボン酸残基、または前記ジカルボン酸残基から選ばれる基である。R,
R2の少なくとも一方は前記窒素置換基を有するカルボン酸残基または前記ジカルボン酸残基であるが、より好ましくは窒素置換基を有するカルボン酸残基である。
【0017】
また、本発明において、一般式(I)で表される化合物の製造方法は種々考えられるが,代表的な方法を述べれば以下の通りである.
【化4】
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【0018】
一般式(IV)で表されるビタミンK類を還元剤で還元し、一般式(V)で表されるビタミンKヒドロキノンとし、このビタミンKヒドロキノンと、窒素置換基を有するカルボン酸、若しくはその反応性酸誘導体またはこれらのハロゲン化水素酸塩とを常法によりエステル化反応を行なうことにより、本発明の目的物質(I)を得ることができる。ここで用いられる還元剤はビタミンK類のナフトキノン骨格をナフトヒドロキノン骨格に還元するものであり、次のものが例示される。
水素化ホウ素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、トリ-n-ブチルホスフィン、塩化亜鉛、塩化第一スズ。
【0019】
ビタミンKヒドロキノンのエステル化反応は常法に従うが、1級、2級アミノ基あるいは側鎖に水酸基、チオール基を有するアミノ酸のエステル化を行なう際は、tert-ブトキシカルボニル基(以下t-BOC基と略記)、ベンジルオキシカルボニル基(以下Z基と略記)、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(以下FMOC基と略記)などの適切な保護基で保護して用い、N,N-ジアルキルアミノ酸はハロゲン化水素酸塩を用いて、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCと略記)、N,N-ジサクシニミドオキザレート(以下DSOと略記)などの活性エステル化試薬の存在下に反応を行なうことが好ましい結果を与える。前記反応の際の反応溶媒としては無水ピリジンが好ましい。また、反応性酸誘導体を用いる方法では、酸ハロゲナイト、中でも酸クロリドを用いる方法が特に好ましい。この場合の反応溶媒としては無水ベンゼン-無水ピリジン混合物が好ましい。ハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、糖酸塩は常法により遊離のビタミンKヒドロキノン窒素含有カルボン酸エステルとハロゲン化水素酸、アルキルスルホン酸、酸性糖のラクトン体を反応させて製造する。また、N-アシルアミノ酸エステルを製造した後、常法によりハロゲン化水素酸で脱保護基化することによってハロゲン化水素酸塩を製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明のより具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1~28
下記の製造方法A~Gに示す方法により表1~5に示すビタミンKヒドロキノン誘導体を製造した。また、得られた物質の質量スペクトル(イオン化方法;FD法およびFAB法)およびH-NMRスペクトルの値を表6~8に示す。
【0021】
[製造方法A]
アミノ酸0.1molを蒸留水-ジオキサン(1:1 v/v)100mlに溶解し、トリエチルアミン30mlを加え、ジ-tert-ブチルジカルボネートを徐々に加え30分間室温で撹拌する。減圧下ジオキサンを留去し、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5M)50mlを加え酢酸エチル100mlで洗う。酢酸エチル層を50mlの炭酸水素ナトリウム液で洗い、水層を合わせて氷冷下でクエン酸水溶液(0.5M)を加えて酸性(pH3)とし、塩化ナトリウムを飽和させた後、酢酸エチルで抽出する(100ml×3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、油状残渣にイソプロピルエーテルを加えるか、または冷却にて結晶化させて、N-t-BOC-アミノ酸を得る。ビタミンK6.75mmolをイソプロピルエーテル40mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム47mmolをメタノール15mlに溶解して加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にイソプロピルエーテル60mlと蒸留水100mlを加え、イソプロピルエーテル層を分離し、更に水層にイソプロピルエーテル100mlを加えて可溶画分を抽出し、イソプロピルエーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下濃縮する。残渣にn-ヘキサンを加えて白色沈殿を析出させてビタミンKヒドロキノンを得る。
【0022】
ビタミンKヒドロキノン、N-t-BOC-アミノ酸13.55mmol、DCC13.55mmolを無水ピリジン50mlに加え室温で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸エチルを加えて可溶画分を抽出する(100ml×2回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン-イソプロピルエーテル)で分離精製し、ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N-t-BOC-アミノ酸を得る。ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N-t-BOC-アミノ酸を少量のアセトンに溶解し、塩酸-ジオキサン(2.5~4.0N)をエステル量の約20倍モル量の塩酸量に相当する量加え1時間撹拌後、減圧下溶媒を留去する。残渣をアセトン-メタノール系で再結晶してビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-アミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0023】
[製造方法B]
ビタミンK6.75mmolをイソプロピルエーテル40mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム47mmolをメタノール15mlに溶解して加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にイソプロピルエーテル60mlと蒸留水100mlを加え、イソプロピルエーテル層を分離し、更に水層にイソプロピルエーテル100mlを加えて可溶画分を抽出、イソプロピルエーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下濃縮する。残渣にn-ヘキサンを加えて白色沈殿を析出させてビタミンKヒドロキノンを得る。ビタミンKヒドロキノン、塩酸N,N-ジアルキルアミノ酸13.55mmol、DCC13.55mmolを無水ピリジン50mlに加え室温で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を、蒸留水に懸濁させ炭酸水素ナトリウムを加えて溶液のpHを7~8に調整した後に酢酸エチルで抽出する(100ml×3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;イソプロピルエーテル-酢酸エチル)で分離精製し、ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N,N-ジアルキルアミノ酸エステルを得る。
【0024】
[製造方法C]
ビタミンK6.75mmolをイソプロピルエーテル40mlに溶解し、ハイドロサルファイトナトリウム50mmolを蒸留水50mlに溶解して加え、イソプロピルエーテルが褐色を呈し、さらに無色になるまで室温で撹拌する。イソプロピルエーテル層を分離し、更に水層にイソプロピルエーテル100mlを加えて可溶画分を抽出、イソプロピルエーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下濃縮する。残渣にn-ヘキサンを加えて白色沈殿を析出させてビタミンKヒドロキノンを得る。ビタミンKヒドロキノンに塩酸N,N-ジアルキルアミノ酸6.75mmol、DCC6.75mmolを加え無水ピリジン50ml中で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を、蒸留水に懸濁させ炭酸水素ナトリウムを加えて溶液のpHを7~8にした後酢酸エチルで抽出する(100ml×3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;イソプロピルエーテル-酢酸エチル、3:2)で分離精製し、ビタミンKヒドロキノン-1-N,N-ジアルキルアミノ酸エステルおよびビタミンKヒドロキノン-4-N,N-ジアルキルアミノ酸エステルを得る。
【0025】
[製造方法D]
ビタミンK6.75mmolをイソプロピルエーテル40mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム47mmolをメタノール15mlに溶解して加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にイソプロピルエーテル60mlと蒸留水100mlを加え、イソプロピルエーテル層を分離し、更に水層にイソプロピルエーテル100mlを加えて可溶画分を抽出、イソプロピルエーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下濃縮する。残渣にn-ヘキサンを加えて白色沈殿を析出させてビタミンKヒドロキノンを得る。ビタミンKヒドロキノンを無水ベンゼン-無水ピリジン(1:1、v/v)30mlに溶解し、塩酸ピリジンカルボン酸クロリドを加え室温で3時間撹拌する。不溶物を濾過で取り除き、濾液を減圧下濃縮する。残渣を蒸留水100mlに懸濁させ、炭酸水素ナトリウムを加え(pH7~8)、酢酸エチルに可溶分画を抽出する(100ml×3回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;イソプロピルエーテル-酢酸エチル、9:1)で分離精製し、ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-ピリジンカルボン酸エステルを得る。
【0026】
[製造方法E]
ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N,N-ジアルキルアミノ酸エステル又はビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-ピリジンカルボン酸2mmolをアセトン20mlに溶解し、塩酸-ジオキサン(2.5~4.0N)を塩酸量がエステルの10倍モル量に相当する量加え、溶媒を減圧下留去し、残渣をアセトン-メタノールで再結晶してビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N,N-ジアルキルアミノ酸又はビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-ピリジンカルボン酸の塩酸塩を得る。
【0027】
[製造方法F]
ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N,N-ジアルキルアミノ酸又はビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-ピリジンカルボン酸2mmolをジクロロメタン20mlに溶解し、アルキルスルホン酸2mmolを加え撹拌する。析出する結晶を濾取してビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-N,N-ジアルキルアミノ酸エステル又はビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-ピリジンカルボン酸エステルのアルキルスルホン酸塩を得る。
【0028】
[製造方法G]
ビタミンK4.55mmolをイソプロピルエーテル40mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム31.5mmolをメタノール15
mlに溶解して加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にイソプロピルエーテル60mlと精製水100mlを加え、イソプロピルエーテル層を分離し、更に水層にイソプロピルエーテル100mlを加えて可溶画分を抽出、イソプロピルエーテル層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去する。残渣にジメチルアミノピリジン8.97mmol、無水コハク酸18.0mmolを加え、イソプロピルエーテル-ジオキサン(6:4,
v/v)100mlに溶解して、室温で3時間撹拌後、50~60℃に加熱しながら2時間反応させ、さらに室温で放冷しながら10時間反応させる。反応液に精製水100mlを加え、イソプロピルエーテル層を分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去する。残渣をイソプロピルエーテルに懸濁し、遠心して得た沈殿物に酢酸エチル100mlと精製水100mlを加え酢酸エチル可溶画分を抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去する。残渣をイソプロピルエーテルに懸濁し不溶物を酢酸エチルで再結晶して、ビタミンKヒドロキノン-1,4-ビス-コハク酸エステルを得る。
【0029】
【表1】
JP0004040082B2_000006t.gif

【0030】
【表2】
JP0004040082B2_000007t.gif

【0031】
【表3】
JP0004040082B2_000008t.gif

【0032】
【表4】
JP0004040082B2_000009t.gif

【0033】
【表5】
JP0004040082B2_000010t.gif

【0034】
【表6】
JP0004040082B2_000011t.gif

【0035】
【表7】
JP0004040082B2_000012t.gif

【0036】
【表8】
JP0004040082B2_000013t.gif

【0037】
次に本発明を具体的に説明するために以下に適用例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明化合物の抗癌剤、癌再発予防剤としての有用性を示すため、各種ヒト培養細胞系による増殖抑制実験例およびin vivoにおけるマウス移植ヒト癌に対する抑制効果の実験例をあげる。
実験に用いたヒト培養癌細胞はPLC/PRF/5(肝細胞癌)、HepG2細胞(肝細胞癌)、Hep3B細胞(肝細胞癌)、A549(肺癌)、HL60(白血病)、SDT4細胞(胃癌)、ST4細胞(胃癌、マイトマイシンC耐性株)、HT29細胞(大腸癌)、HT29/MMC細胞(大腸癌、マイトマイシンC耐性株)である。
【0039】
ヒト肝細胞癌であるPLC/RPF/5細胞、Hep3B細胞とHepG2細胞は10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むDulbecco’s
modified Eagle’s medium (DMEM)培地を用い、SDT4細胞、ST4細胞、HT29細胞、HT29/MMC細胞は10%ウシ胎児血清、カナマイシンを含むRPMI1640培地を用い、HL60細胞は10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用い継代培養して用いた。
【0040】
評価方法1:WST-8を用いる細胞数評価による増殖抑制効果評価
PLC/RPF/5細胞、Hep3B細胞、HepG2細胞、A549細胞の各細胞を96well plateに0.5x104cells/well播種し、24時間培養後、培地をメナテトレノン、メナジオン、化合物No.
10、11、12、24、25、29を添加した培地に交換し、37℃、5%CO2条件で24時間、48時間、72時間培養後に薬物を含む培地を取り除き、薬物を含まない培地に交換し、WST-8試薬を加え2時間培養した後、450nm,
655nmの吸光度測定により細胞数を測定し、細胞増殖抑制効果を評価した。
【0041】
評価方法2:3H-thymidineの取り込みの阻害による増殖抑制効果評価
Hep3B細胞、HepG2細胞の各細胞を24well-plateに2x104 cells/well播種し、24時間培養後、培地をメナテトレノン、メナジオン、化合物No.
10、11、12、24、25を添加した培地に交換し3日間培養した。培地を3H-thymidineを0.5mμCi/mL含む培地に交換し、4時間培養した後、培地を除去し、細胞を等張リン酸緩衝液で2回洗浄後、Lysis
Buffer 400μLで細胞を溶解した。細胞溶解液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカクテルを加え、液体シンチレーションカウンターにより放射能を測定し、3H-thymidineのDNA取り込みの阻害から細胞増殖抑制効果を評価した。
【0042】
評価方法3:CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay試薬を用いる細胞数評価による増殖抑制効果評価
HL60細胞を96 well plateに1x104 cells /well播種し、さらに薬物を添加後、37℃、5%
CO2条件で培養し、薬物添加から3、6、12、24時間後にCelltiter-Glo Luminescent Cell
Viability Assay試薬(プロメガ)を100μL各ウェルに添加し、96ウェルプレートルミノメーターで発光量を測定して細胞増殖抑制効果を評価した。
【0043】
(適用例1)
[肝細胞癌に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
肝細胞癌であるPLC/RPF/5細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)の添加によって用量依存的に抑制された。しかし、増殖抑制効果の発現時間は薬物によって大きく異なり、添加8時間ではメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)で僅かに増殖抑制効果が観察されたが、添加24時間では化合物10、12に顕著な増殖抑制効果が観られ、添加48時間で化合物11の顕著な増殖抑制効果が発現した。メナキノン-4は添加48時間まで増殖抑制効果は観られず72時間で増殖抑制効果が発現した。典型例として図1に評価方法1によるPLC/RPF/5細胞の細胞増殖に及ぼす増殖抑制効果を示した。表9にPLC/RPF/5細胞に対する50%生育阻止濃度(IC50)を示した。図1と表9から明らかなように、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)はメナキノン-4に比較して素早く細胞増殖抑制効果を発現することが明らかになった。また、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)の添加72時間におけるIC50は何れもメナキノン-4に比較して低用量ですぐれた癌細胞増殖抑制効果を示した。
【0044】
HepG2細胞とHep3B細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、29)、メナジオン(ビタミンK3)の添加によって用量依存的に抑制された。増殖抑制効果の発現時間は薬物によって大きく異なり、添加24時間では化合物10、11、12、29およびメナジオンに顕著な増殖抑制効果が観られたが、メナキノン-4は添加72時間でわずかな増殖抑制効果が観られた。表10と表11にそれぞれ評価方法1によるHepG2細胞とHep3B細胞に対する50%生育阻止濃度(IC50)を示した。さらに、表12に評価方法2によるHepG2細胞とHep3B細胞に対するメナキノン-4、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)、フィロキノン、フィロヒドロキノン誘導体(化合物24、25)、メナジオン(ビタミンK3)の50%生育阻止濃度(IC50)を示した。HepG2細胞とHep3B細胞に対するメナジオンとメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、29)はメナキノン-4に比較して素早く細胞増殖抑制効果を発現することが明らかになり、添加72時間におけるIC50は何れもメナキノン-4に比較して低用量ですぐれた癌細胞増殖抑制効果を示した。DCP陽性のHepG2細胞とDCP陰性のHep3B細胞のどちらの肝細胞癌に対しても低濃度で効果を示すことが明らかになった。表12から、Hep3B細胞に対してフィロヒドロキノン誘導体(化合物24)はフィロキノンよりも優れた増殖抑制効果を示していることが明らかである。しかし、メナヒドロキノン-4誘導体の効果に比較してフィロヒドロキノン誘導体の効果は低かった。
【0045】
肝細胞癌に対してビタミンKヒドロキノン誘導体はメナキノン-4に比較して速く増殖抑制効果を発現し、その速度は化合物10>化合物12>化合物11であった。また、高田等は肝臓ミクロソーム中の酵素によって化合物10~12からメナヒドロキノン-4が生成される速度は化合物10<化合物12<化合物11であることを既に報告している(Takata et al., Pharm Res., 12, 18-23(1995))。すなわち、ビタミンKヒドロキノン誘導体からメナヒドロキノン-4(化合物V)への変換が遅い化合物ほど、増殖抑制効果を速やかに発揮することになり、ビタミンKヒドロキノン誘導体(化合物10~12)はメナヒドロキノン-4(化合物V)に変換されずに、誘導体の構造の状態で癌細胞増殖抑制効果を発揮できることを示唆している。
したがって、ビタミンKヒドロキノン誘導体自身、およびその二次代謝産物であるビタミンKヒドロキノンにも特定の肝臓癌において癌細胞増殖抑制効果があることとなり、より効率の良い、安全な癌治療剤の提供が可能になることが明らかである。
【0046】
[ビタミンKヒドロキノン誘導体投与後の標的臓器への送達性]
肝細胞癌に対してビタミンKヒドロキノン誘導体がすぐれた効果を持つことを適用例1で示したが、このすぐれた効果がさらに効率良く発揮されるためには、ビタミンKヒドロキノン誘導体が標的臓器である肝臓に送達されることが好ましい結果をあたえる。高田等は、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)はラットにおいて静脈内投与後15分でほぼ肝臓に移行することを明らかにしている(Takata et al., Pharm. Res., 12, 1973-1979(1995))。すなわち、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)はメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)の肝臓への選択的送達法であることから、メナヒドロキノン-4誘導体は肝細胞癌の効率的な治療法を提供できることを示している。また、高田等はメナヒドロキノン-4誘導体は肝臓中でメナヒドロキノン-4およびメナキノン-4に変換されることを明らかにしており(Takata et al., Pharm. Res., 12, 1973-1979(1995))、メナキノン-4は肝細胞癌に対して抗癌効果を有することが明らかにされていることからメナキノン-4としても抗癌剤として機能できる。さらに、メナヒドロキノン-4誘導体はメナキノン-4に代謝されること、メナキノン-4は骨粗鬆症治療において重篤な副作用が報告されていない安全な化合物であることから、メナヒドロキノン-4誘導体は肝細胞癌に対して優れた効果を発揮でき、さらに安全性が高い肝細胞癌の効率的な治療法を提供できることを示している。
【0047】
【表9】
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【0048】
【表10】
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【0049】
【表11】
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【0050】
【表12】
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【0051】
(適用例2)
[肺癌細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
肺癌細胞であるA549細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)の添加によって用量依存的に抑制された。フィロキノンの添加によって増殖抑制は観られなかった。増殖抑制効果の発現時間は薬物によって大きく異なり、添加24時間ではメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、12、14)で顕著な増殖抑制効果が観られ、添加48時間で化合物11の顕著な増殖抑制効果が発現した。メナキノン-4は添加48時間まで増殖抑制効果は観られず72時間で増殖抑制効果が発現した。典型例として図2に評価方法1によるA549細胞の細胞増殖に及ぼす増殖抑制効果を示した。表13に評価方法1によるA549細胞に対する50%生育阻止濃度(IC50)を示した。表13から明らかなように、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)はメナキノン-4に比較して素早く細胞増殖抑制効果を発現することが明らかになった。また、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)の添加72時間におけるIC50は何れもメナキノン-4に比較して低用量ですぐれた肺癌細胞増殖抑制効果を示した。
【0052】
【表13】
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【0053】
(適用例3)
[白血病細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
白血病細胞であるHL60細胞の細胞増殖は、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)の添加によって用量依存的に抑制された。増殖抑制効果の発現時間は薬物によって大きく異なり、添加3時間ではメナヒドロキノン-4誘導体(化合物14)で顕著な増殖抑制効果が観察され、添加12時間でメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、12)に顕著な増殖抑制効果が観られ、添加24時間で化合物11の顕著な増殖抑制効果が発現した。メナキノン-4とフィロキノンは添加24時間まで増殖抑制効果は観られなかった。表14に評価方法3によるA549細胞に対する50%生育阻止濃度(IC50)を示した。表14から明らかなように、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)はメナキノン-4に比較して素早く細胞増殖抑制効果を発現することが明らかになった。また、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12、14)の添加24時間におけるIC50は何れもメナキノン-4に比較して低用量で優れた癌細胞増殖抑制効果を示した。
【0054】
[HL60細胞中のカスパーゼ-3/7活性に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の効果]
HL60細胞を96 well plateに1x104 cells /well播種し、さらに薬物を添加後、37℃、5%
CO2条件で培養し、薬物添加から4、12時間後にCaspase-Glo 3/7 Assay試薬(プロメガ)を100μL各ウェルに添加し、96ウェルプレートルミノメーターで発光量を測定してカスパーゼ-3/7活性を評価した。カスパーゼ3の阻害剤としてZ-VAD-FMKを用いた。
HL60細胞のカスパーゼ-3/7は、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、14)の添加により活性化され、化合物14の40μM添加後4時間で約6倍、化合物10の80μM添加後12時間で約7倍に上昇した(図3)。また、誘導体によるカスパーゼ-3/7活性の上昇は、カスパーゼ阻害剤、Z-VAD-FMKの添加により完全に抑制された。メナヒドロキノン-4誘導体のHL60細胞の増殖抑制には、カスパーゼ3の活性化を伴うアポトーシスの誘導が関与することが示された。
【0055】
【表14】
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【0056】
(適用例4)
[胃癌細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
胃癌細胞であるSDT4細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナジオン、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)の添加によって何れも用量依存的に抑制された。典型例として図4に評価方法2によるSDT4細胞に対する増殖抑制効果を示した。表15に50%生育阻止濃度(IC50)を示した。SDT4細胞に対するメナキノン-4のIC50は5000μM以上であったが、これに比してメナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)のIC50は何れも低濃度であり、特に化合物10は約百分の1以下の濃度であり、すぐれた胃癌増殖抑制効果を示した。IC50はメナジオン(ビタミンK3)と同程度であった。
【0057】
【表15】
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【0058】
(適用例5)
[マイトマイシンC(MMC)耐性胃癌細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
マイトマイシンC(MMC)耐性胃癌細胞であるST4細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナジオン、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)の添加によって何れも用量依存的に抑制された。典型例として図5にST4細胞に対する増殖抑制効果を示した。表15に50%生育阻止濃度(IC50)を示した。メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、11、12)はマイトマイシンC(MMC)耐性胃癌細胞であるST4細胞に対してもSDT4細胞に対する効果と同様の増殖抑制効果を示し、マイトマイシンC(MMC)耐性株に対しても有効であることが示された。
【0059】
(適用例6)
[大腸癌細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
大腸癌細胞であるHT29細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナジオン、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、12)の添加によって何れも用量依存的に抑制された。典型例として図6にHT29細胞に対する増殖抑制効果を示した。表15に50%生育阻止濃度(IC50)を示した。HT29細胞に対するメナキノン-4のIC50は7000μM以上であったが、これに比してメナヒドロキノン誘導体(化合物10、12)のIC50は何れも低濃度であり、すぐれた大腸癌増殖抑制効果を示した。特に化合物10のIC50は30μMでありメナジオン(ビタミンK3)の20μMと同程度であった。
【0060】
(適用例7)
[マイトマイシンC(MMC)耐性大腸癌細胞に対するビタミンKヒドロキノン誘導体の増殖抑制効果]
マイトマイシンC(MMC)耐性大腸癌細胞であるHT29/MMC細胞の細胞増殖は、メナキノン-4、メナジオン、メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、12)の添加によって何れも用量依存的に抑制された。表15に50%生育阻止濃度(IC50)を示した。メナヒドロキノン-4誘導体(化合物10、12)はマイトマイシンC(MMC)耐性大腸癌細胞であるHT29/MMC細胞に対してもHT29細胞に対する効果と同様の増殖抑制効果を示し、マイトマイシンC(MMC)耐性株に対しても有効であることが示された。
【0061】
(適用例8)
[キノン系抗癌剤の抗癌作用に対する作用増強効果]
胃癌細胞であるSDT4細胞に対するキノン系抗癌剤マイトマイシンC(MMC)の細胞増殖抑制効果に対するビタミンKヒドロキノン誘導体(化合物11)の効果を、上記実験方法に従って評価した。結果を図7に示す。MMCのIC50(0.25μM)はメナヒドロキノン-4誘導体の添加によって0.8μMまで約1/3に低下し、ビタミンKヒドロキノン誘導体はMMCの細胞増殖抑制効果を増強することが示された。
【0062】
(適用例9)
[in vivoにおけるビタミンKヒドロキノン誘導体のマウス移植ヒト肝細胞癌に対する抗腫瘍効果]
PLC/PRF/5細胞をBDマトリゲルに懸濁し1x106
cellsを8週齡の雄性BALB-c nu/nuマウス(日本SLC)の側腹部皮下に移植した。移植9日後に、PLC/PRF/5移植マウスを6匹/群とし、メナヒドロキノン-1,4-ビス-ジメチルグリシネート(化合物10)を4%エタノールに溶解して400μMとし飲水投与した。コントロール群は4%エタノールを飲水投与した。飲水の平均値は4mL/匹/日であり、化合物10の投与量は0.7mg/匹/日である。同一実験者が、デジタル表示ノギスを用いて、腫瘍の長径及び短径を測定し、長径×(短径)×0.52を腫瘍体積とした。腫瘍体積の増加抑制から抗癌効果を評価した。図8にPLC/PRF/5細胞移植後の腫瘍体積の変化を示した。化合物10の投与群の腫瘍体積の増加はコントロール群に比較して有意に低く、化合物10はin
vivoにおいて肝細胞癌に対して抗腫瘍効果を発揮できることが明らかになった。また、薬物投与による体重減少は観察されなかった。
【0063】
以上説明したように、本発明による上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類を含有する癌治療剤、癌再発予防剤は、肝癌の中でメナキノン-4が有効とされているDCP(des-g-carboxy prothrombin)陽性肝癌とメナキノン-4の効果が極めて低いDCP陰性肝癌のどちらに対しても優れた効果を持つ。また、本発明による上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類を含有する癌治療剤、癌再発予防剤はメナキノン-4の効果が低い肺癌、胃癌、大腸癌など上皮性の癌に対して優れた効果を持つ。上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類を含有する癌治療剤、癌再発予防剤は、キノン系抗癌剤耐性の胃癌や大腸癌など上皮性の癌に対しても優れた効果を持つ。さらに、本発明による上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類を含有する癌治療剤、癌再発予防剤は、キノン系抗癌剤の作用を増強する。上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類を含有する癌治療剤、癌再発予防剤は、白血病に対しても優れた効果を持つ。
さらに、本発明にかかる化合物の体内における代謝産物は主としてビタミンK類であり、その安全性はきわめて高い。
また上記一般式(I)で示されるビタミンKヒドロキノンのカルボン酸エステル類それ自身が抗癌作用ないし癌再発予防作用を発揮することが明らかとなり、その二次代謝産物であるビタミンK類にも抗癌作用ないし癌再発予防作用があるので、本発明により、さらに効率の良い安全な癌治療剤、癌再発予防剤の提供が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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