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明細書 :虚血性障害抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5515078号 (P5515078)
登録日 平成26年4月11日(2014.4.11)
発行日 平成26年6月11日(2014.6.11)
発明の名称または考案の名称 虚血性障害抑制剤
国際特許分類 A61K  31/223       (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P   7/10        (2006.01)
C07C 229/12        (2006.01)
C07C 229/08        (2006.01)
FI A61K 31/223
A61P 9/10
A61P 7/10
C07C 229/12
C07C 229/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 25
出願番号 特願2009-530228 (P2009-530228)
出願日 平成20年9月1日(2008.9.1)
国際出願番号 PCT/JP2008/065680
国際公開番号 WO2009/028707
国際公開日 平成21年3月5日(2009.3.5)
優先権出願番号 2007225021
優先日 平成19年8月31日(2007.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年6月23日(2011.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】高田 二郎
【氏名】三島 健一
【氏名】中島 学
【氏名】岩崎 克典
【氏名】松永 和久
【氏名】加留部 善晴
【氏名】藤原 道弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100092901、【弁理士】、【氏名又は名称】岩橋 祐司
審査官 【審査官】小久保 敦規
参考文献・文献 特開昭63-230670(JP,A)
特開昭62-108863(JP,A)
米国特許第03429970(US,A)
Hanno WILD et al.,Kettenverlaengerung von Kohlenhydraten mit Hilfe von C-Phenylglycin,Liebigs Annalen der Chemie,1986年,No.9,P.1548-1567,1550頁、化合物13、1556頁、化合物13c
Journal of American Chemical Society,Vol.127, No.41,p.14383-14387 (2005).
Angewandte Chemie,Vol.89, No.6,p.408-410 (1977).
Angewandte Chemie,Vol.93, No.4,p.411-412 (1981).
The Journal of Biological Chemistry,Vol.269, No.31,p.19817-19826 (1994).
FEBS,Vol.473, No.2,p.259-264 (2000).
調査した分野 C07C 227/18
C07C 229/08
C07C 229/12
C07C 271/22
C07F 9/655
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(2):
JP0005515078B2_000022t.gif(式中、Rは水素または窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味する。Rの窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。)で表されるファルネソール又はファルネソール誘導体及びそれらの薬理学的に許容できる塩、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも一つの物質を有効成分とすることを特徴とする虚血再潅流障害抑制剤、もしくは脳梗塞、脳浮腫あるいは心筋梗塞の治療剤又は予防剤。
【請求項2】
がN-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択されたものであり、アルキルがメチルであることを特徴とする請求項記載の虚血再潅流障害抑制剤、もしくは脳梗塞、脳浮腫あるいは心筋梗塞の治療剤又は予防剤。

発明の詳細な説明
【関連出願】
【0001】
本出願は、2007年8月31日付け出願の日本国特許出願2007-225021号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生体内における虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療及び予防に有用な医薬の発明に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、虚血性脳血管障害(脳梗塞、脳浮腫、脳出血、脳挫傷、新生児低酸素性虚血性脳症)、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病)、肺疾患(肺酸素中毒、成人呼吸窮迫症候群)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、循環器疾患(動脈硬化)、消化器疾患(消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病)など、その発症や増悪に虚血やそれに伴う起炎性物質が関与していると考えられている病態や疾患は多岐に渡っており枚挙にいとまがない。これらのほとんどの疾患は進行的であり、その予防剤や治療剤の開発が強く望まれている。
【0004】
虚血性脳血管障害、特に脳梗塞は、脳血流量の低下によって種々の障害機序がドミノ式に生じ、脳損傷を虚血中心部から虚血周辺部に拡大していく進行性の疾患である。急性期障害の予防はもちろん重要ではあるが、重篤性やQOLを考慮すると発症後の亜急性期、慢性期の治療が極めて重要となる。脳梗塞発症後の治療剤は極めて少なく、特に発症後の亜急性期、慢性期の治療薬で実用化されているものはない。現時点では、脳血流低下による虚血中心部を改善する脳梗塞急性期の治療薬として、血栓溶解剤のtissue plasminogen activator(tPA)やハイドロオキシラジカル消去剤のエダラボンがあげられるが、これらは出血や腎不全などの重篤な副作用の問題がある。すなわち、脳梗塞発症後の治療開始までの時間に余裕がある優れた亜急性期・慢性期虚血性脳血管障害の治療薬の開発が望まれている。
【0005】
発明者等は、マウス中大動脈(MCA)閉塞モデルにおいて、ビタミンE同族体を梗塞直前と梗塞途中の2回静脈内投与することすなわち予防的投与において、 2R-γ-トコフェロール (γ-Toc)と2R-α-トコトリエノール (α-T3)がビタミンE同族体の中でより優れた梗塞巣抑制効果を示し、脳梗塞急性期の障害に対して予防効果を有することをin vivoで開示した(非特許文献1)。
【0006】
ビタミンE同族体は、いずれも水に不溶であり急速なバイオアベイラビリティを確保できる静脈内投与は不可能であるため実験的にはジメチルスルフォキサイド(DMSO)などの有機溶媒を用いた可溶化、あるいは界面活性剤を用いる可溶化による方法によって静脈内投与が試みられているが、有機溶媒を用いた可溶化方法は臨床には不適であり、大量の非イオン性界面活性剤の使用はアナフィラキシーショック等の重篤な問題を生じる場合があり、反復して投与する場合には、その有害性を完全に払拭することはできない。
【0007】
発明者等は、特定のトコフェロール誘導体(非特許文献2)、トコトリエノール誘導体(特許文献1)は、静脈内投与可能な水溶性誘導体であることを開示した。また、トコフェロールリン酸エステルナトリウム塩はトコフェロールの水溶性誘導体として知られている。
しかし、これまでビタミンE同族体あるいはビタミンE同族体の誘導体が梗塞(虚血)再潅流後すなわち梗塞発症後投与すなわち治療的投与によって虚血再潅流障害に対して治療効果を示すか否かについては全く記載がない。
また、ビタミンE同族体の誘導体が梗塞直前と梗塞途中の2回静脈内投与することすなわち予防的投与において、脳梗塞急性期の障害に対して予防効果を示すか否かについても全く記載がない。
【0008】
一方、ファルネソールは3つのイソプレンを持つセスキテルペンの1種類であり、バラ、レモングラス、シトロネラの精油に含まれる無色の液体で、香料や皮膚保護剤として使われ、医薬としては高脂血症防止効果、真菌に対する抗菌効果、酸化的障害に対する防護効果など、優れた効果が期待されている。
しかしながら、ファルネソール及びその類縁体あるいはそれらの誘導体について、梗塞(虚血)再潅流後すなわち梗塞発症後投与すなわち治療的投与によって虚血再潅流障害に対して治療効果を発揮することはこれまで報告されていない。また、梗塞直前と梗塞途中の2回静脈内投与することすなわち予防的投与において、脳梗塞急性期の障害に対して予防効果を発揮することについても全く報告されていない。
【0009】
また、ファルネソールは水に全く溶解しない揮発性の化合物である。このため、ファルネソールの水溶性製剤または水性化粧品の調製には大量の非イオン性界面活性剤の添加による可溶化法が検討されるが、大量の界面活性剤はアナフィラキシーショック等の重篤な問題を生じる場合がある。
そこで、融点が高く室温で固形であり、同時に高い水溶性を有し、生体内でファルネソールの有用な作用を呈することができる誘導体も求められている。
【0010】

【特許文献1】特願2000-268885
【非特許文献1】Mishima K, Tanaka T, Pu F, Egashira N, Iwasaki K, Hidaka R, Matsunaga K, Takata J, Karube Y, Fujiwara M. Vitamin E isoforms α-tocotrienol and γ-tocopherol prevent cerebral infarction in mice. Neuroscience Let 2003; 337:56-60.
【非特許文献2】Takata J., Hidaka R., Yamasaki A., Hattori A., Fukushima T., Tanabe M., Matsunaga K., Karube Y., Imai K., Novel d-γ-tocopherol derivative as a prodrug for d-γ-tocopherol and a two-step prodrug for S-γ-CEHC. J. Lipid Res., 43, 2196-2204 (2002).
【発明の開示】
【0011】
本発明は従来技術に鑑みなされたものであり、その目的は、虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療及び予防に有効な医薬を提供することである。
【0012】
上記課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究を進めてきた結果、特定のファルネソールカルボン酸誘導体が、高い融点を持ち室温で固形であり優れた水溶性を持ち生体内でファルネソールの有用な作用を呈することができることを見いだした。そして、ファルネソールやこのファルネソール誘導体は、虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療剤及び予防剤として所期の目的を達成できることを見いだした。
さらに、特定のトコフェロール誘導体および特定のトコトリエノール誘導体についても、虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療剤及び予防剤として所期の目的を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
JP0005515078B2_000002t.gif(式中、Rは窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味する。Rの窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。)で表されるファルネソールカルボン酸エステル誘導体を提供する。
【0014】
また、本発明は、下記一般式(2):
JP0005515078B2_000003t.gif(式中、Rは水素または窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味する。Rの窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。)で表されるファルネソール、ファルネソール誘導体、及びその薬理学的に許容できる塩、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる物質を有効成分とすることを特徴とする虚血性障害抑制剤を提供する。
【0015】
なお、一般式(1)又は(2)で表されるファルネソール誘導体には、ファルネシル基(-[CHCH=CH(CH)CH-H)の2位の水素と3位のメチル基のトランス体とシス体、6位の水素と7位メチル基のトランス体とシス体が存在するが、本発明はこれらの異性体(すなわち、(2E,6E)体、(2E,6Z)体、(2Z,6E)体、(2Z,6Z)体、ならびにそれらの混合体)を包含するものである。
【0016】
また、本発明は、下記一般式(3):
JP0005515078B2_000004t.gif(式中、R,Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を意味し、Rは窒素置換基を有するカルボン酸残基、又はリン酸残基を意味する。
の窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。
のリン酸残基はPO(ORで表され、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素、メチル基、生理学的に許容されるアルカリ金属、アルカリ土類金属からなる群より選択される。
は、下記式(3a):
JP0005515078B2_000005t.gifまたは下記式(3b):
JP0005515078B2_000006t.gifで表される基である。)で表されるトコフェロール誘導体またはトコトリエノール誘導体及びその薬理学的に許容される塩、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも一つの物質を有効成分とすることを特徴とする虚血再潅流障害抑制剤を提供する。
【0017】
なお、一般式(3)で表されるトコフェロール/トコトリエノールエステル誘導体には、基(3b)のファルネシル基の2位の水素と3位のメチル基のトランス体とシス体、6位の水素と7位メチル基のトランス体とシス体が存在するが、本発明はこれらの異性体を包含するものである。
【0018】
また、本発明にかかる脳梗塞治療剤、脳梗塞予防剤、脳浮腫治療剤、脳浮腫予防剤、心筋梗塞治療剤もしくは心筋梗塞予防剤は、前記一般式(1)~(3)で表されるファルネソール、ファルネソール誘導体、トコフェロール誘導体、トコトリエノール誘導体、及びそれらの薬理学的に許容される塩、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも一つの物質を有効成分とすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明で提供されるファルネソールカルボン酸エステル誘導体の製造方法は、1級または2級アミノ基あるいは側鎖に水酸基またはチオール基を有するアミノ酸の前記アミノ基、水酸基及びチオール基を保護基で保護し、該保護基結合アミノ酸とファルネソールとをエステル化反応させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明で提供される別のファルネソールカルボン酸エステル誘導体の製造方法は、N,N-ジアルキルアミノ酸のハロゲン化水素酸塩を用いて活性エステル化試薬の存在下にファルネソールとエステル化反応させることを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる虚血性障害抑制剤によれば、ファルネソール、ファルネソール誘導体、トコフェロール誘導体、トコトリエノール誘導体、及びそれらの薬理学的に許容される塩ならびにそれらの溶媒和物から選ばれる物質を有効成分とすることにより、虚血急性期投与における予防効果だけでなく、虚血再潅流後の亜急性期・慢性期における治療的投与においても虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病に対して治療効果を発揮することができる。
また、本発明で提供されるファルネソール誘導体は、水溶性の固体として得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるファルネソール誘導体による虚血性脳障害の予防効果の説明図である。
【図2】本発明にかかるファルネソール誘導体による虚血性脳障害の予防効果の説明図である。
【図3】本発明にかかるファルネソール誘導体による虚血性脳障害の治療効果の説明図である。
【図4】本発明にかかるトコフェロール誘導体による虚血性脳障害の予防効果の説明図である。
【図5】本発明にかかるトコフェロール誘導体による虚血性脳障害の予防効果の説明図である。

【0023】
【図6】本発明にかかるトコフェロール誘導体による虚血性脳障害の治療効果の説明図である。
【図7】本発明にかかるトコトリエノール誘導体による虚血再潅流脳障害の予防効果の説明図である。
【図8】本発明にかかるトコトリエノール誘導体による虚血再潅流脳障害の治療効果の説明図である。
【図9】本発明にかかるトコフェロール誘導体による虚血再潅流脳障害の予防効果の説明図である。
【図10】本発明にかかるトコフェロール誘導体による虚血再潅流脳障害の治療効果の説明図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明は、下記一般式(1)であらわされるファルネソールカルボン酸エステル誘導体及びその製造方法に関する。
JP0005515078B2_000007t.gif(式中、Rは窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味する。Rの窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。)
【0025】
本発明において、「カルボン酸残基」とは、カルボン酸のカルボキシル基(COOH)からOH基が除去された残基を意味する。
【0026】
窒素置換基を有するカルボン酸残基において、アルキル置換アミノ基のアルキル基とは、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、1-エチルプロピル基、イソアミル基などを例示することが可能であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。アシル置換アミノ基のアシル基とは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を炭化水素鎖とするアシル基が好ましく、アルキル基部分の具体例については前述の通りである。
【0027】
また、アミノ基とカルボニル基の間は、好ましくは炭素数1~6の直鎖、分岐または環状のアルキレン基で結合される。分岐状のアルキレン基とは、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、1-エチルプロピル基などのアルキル基から誘導されたアルキレン基を意味する。環状アルキレン基とは、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、あるいはメチルシクロヘキサン環などを構造中に含むアルキレン基を意味する。アルキレン基として特に好ましいのはメチレン基あるいはエチレン基である。
【0028】
窒素置換基を有するカルボン酸残基中の窒素置換基は塩を形成してもよく、例えば、ハロゲン化水素酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩などが好ましい。本発明において、ハロゲン化水素酸塩は融点が原体のファルネソールよりも高く、製剤化にあたっての取扱が容易になる利点がある。また、アルキルスルホン酸塩としてはメタンスルホン酸塩などが例示される。糖酸塩としてはグルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオン酸塩などが例示される。
【0029】
次に、本発明にかかるファルネソールカルボン酸エステル誘導体の製造方法としては、以下のような方法が例示される。
下記一般式(4)で表されるファルネソールと窒素置換基を有するカルボン酸、もしくはその反応性酸誘導体、またはこれらのハロゲン化水素酸塩とを、常法によりエステル化反応を行うことにより、本発明のファルネソールカルボン酸エステル(1)を得ることができる。一般式(4)におけるファルネシル基の立体異性は、前記一般式(1)における説明の通りである。
【0030】
JP0005515078B2_000008t.gif
【0031】
ファルネソールのエステル化反応は常法に従うが、1級又は2級アミノ基、あるいは側鎖に水酸基又はチオール基を有するアミノ酸を用いてエステル化を行う際は、tert-ブトキシカルボニル基(以下t-BOC基と略記)、ベンジルオキシカルボニル基(以下Z基と略記)などの適切な保護基でこれら1級又は2級アミノ基、水酸基、チオール基を保護して用いることが好ましい。
【0032】
また、N,N-ジアルキルアミノ酸はハロゲン化水素酸塩を用いて、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCと略記)、N,N-ジサクシニミドオキザレート(以下DSOと略記)などの活性エステル化試薬の存在下に反応を行うことが好ましい。この際溶媒としては無水ピリジンが好ましい。
また、反応性酸誘導体を用いる方法では、酸ハロゲナイト、特に酸クロリドを用いる方法が好ましい。この際溶媒としては無水ベンゼン-無水ピリジン混合物が好ましい。
【0033】
ハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩は常法により遊離のアミノ酸エステルとハロゲン化水素酸、アルキルスルホン酸、酸性糖のラクトン体を反応させて製造する。また、N-アシルアミノ酸エステルを製造した後、常法によりハロゲン化水素酸で脱保護基化することによってハロゲン化水素酸塩を製造することができる。
本発明のファルネソールカルボン酸エステル(1)のハロゲン化水素酸塩は、高融点の結晶性の粉末であり、製剤技術上、取扱が容易かつ簡便であり、高い水溶性を有する。従って、静脈内投与可能な製剤、点眼剤、経口製剤、水性塗布剤、スプレー剤などに有用である。
【0034】
また、本発明は下記一般式(2)であらわされるファルネソールまたはファルネソール誘導体、及びそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物を含有する、虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療剤又は予防剤に関する。一般式(2)で表される化合物は、単独で製剤に含有させることもできるし、その薬理学的に許容される塩や溶媒和物として製剤に配合することもできる。
【0035】
JP0005515078B2_000009t.gif(式中、Rは水素または窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味する。Rの窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。)
【0036】
の窒素置換基を有するカルボン酸残基とは、前記Rにおける説明の通りである。
【0037】
また、本発明は、下記一般式(3)であらわされるトコフェロールエステル誘導体およびトコトリエノールエステル誘導体、及びそれらの塩、ならびにそれらの溶媒和物を含有する、虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質が発症や憎悪に関与している疾病の治療剤又は予防剤に関する。一般式(3)で表される化合物は、単独で製剤に含有させることもできるし、その薬理学的に許容される塩や溶媒和物として製剤に配合することもできる。
【0038】
JP0005515078B2_000010t.gif(式中、R,Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を意味し、Rは窒素置換基を有するカルボン酸残基、又はリン酸残基を意味する。
【0039】
の窒素置換基を有するカルボン酸残基は、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、N,N-ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらの生理学的に許容されるハロゲン化水素酸塩、アルキルスルホン酸塩、酸性糖塩の残基からなる群より選択される。
のリン酸残基はPO(ORで表され、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素、メチル基、生理学的に許容されるアルカリ金属、アルカリ土類金属からなる群より選択される。
【0040】
は、下記式(3a):
JP0005515078B2_000011t.gifまたは下記式(3b):
JP0005515078B2_000012t.gifで表される基である。)
【0041】
が窒素置換基を有するカルボン酸残基であるトコトリエノール/トコフェロールカルボン酸エステルは、下記一般式(3-1)で表すことができる。
JP0005515078B2_000013t.gif(式中、R、R、Rはそれぞれ前記一般式(3)における定義の通りであり、Rは窒素置換基を有するカルボン酸残基である。)
【0042】
窒素置換基を有するカルボン酸残基において、アルキル置換アミノ基のアルキル基とは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、1-エチルプロピル基、イソアミル基などを例示することが可能であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。アシル置換アミノ基のアシル基とは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を炭化水素鎖とするアシル基が好ましく、アルキル基部分の具体例については前述の通りである。
【0043】
また、アミノ基とカルボニル基の間は、好ましくは炭素数1~6の直鎖、分岐または環状のアルキレン基で結合される。分岐状のアルキレン基とは、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、1-エチルプロピル基などのアルキル基から誘導されたアルキレン基を意味する。環状アルキレン基とは、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、あるいはメチルシクロヘキサン環などを構造中に含むアルキレン基を意味する。アルキレン基として特に好ましいのはメチレン基あるいはエチレン基である。
【0044】
前記窒素置換基を有するカルボン酸残基中の窒素置換基は塩を形成してもよく、例えば、ハロゲン化水素酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩などが好ましい。本発明において、ハロゲン化水素酸塩は融点が原体のトコフェロール類やトコトリエノール類よりも高く、製剤化にあたっての取扱が容易になる利点がある。また、アルキルスルホン酸塩としてはメタンスルホン酸塩などが例示される。糖酸塩としてはグルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオン酸塩などが例示される。
【0045】
また、Rがリン酸残基であるトコトリエノール/トコフェロールリン酸エステルは、下記一般式(3-2)で表すことができる。
【0046】
JP0005515078B2_000014t.gif(式中、R、R、Rはそれぞれ前記一般式(3)における定義の通りであり、Rは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、メチル基、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される。
【0047】
本発明の虚血再潅流障害抑制剤には、有効成分である前記一般式(1)~(3)の化合物の1種以上に加え、その効果を阻害しない範囲で、他の成分を含有させることができる。例えば、薬学的に許容される担体として、賦形剤,滑沢剤,結合剤,崩壊剤,安定剤,矯味矯臭剤,希釈剤,界面活性剤,乳化剤,可溶化剤,吸収促進剤,保湿剤,吸着剤,充填剤,増量剤,付湿剤,防腐剤等の添加剤を用いて周知の方法で製剤化することができる。また、従来知られている虚血性疾患の予防剤又は治療剤を併用することも可能である。
【0048】
本発明の虚血再潅流障害抑制剤の剤形としては、例えば錠剤,カプセル剤,顆粒剤,散剤,丸剤,トローチ,もしくはシロップ剤,注射剤等の液剤,等の形態が挙げられる。液剤製品等は、必要に応じて、メンブランフィルター等による濾過滅菌後に密封充填する方法や、その後更に高圧蒸気滅菌,熱水滅菌を施す等の、汎用されている滅菌処理を施しても良い。
【0049】
本発明の虚血再潅流障害抑制剤の投与経路としては、経口投与,静注等の静脈投与,動注等の動脈投与(冠動脈内投与等),筋注等の筋肉内投与,経皮投与,経鼻投与,皮内投与,皮下投与,腹腔内投与,直腸内投与,粘膜投与,吸入等が挙げられるが、少なくとも急性期、亜急性期においては注射剤などの非経口的な投与方法が好ましい。
【0050】
注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤などが挙げられる。このような注射剤においては、1つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも1つの不活性な水性の希釈剤や不活性な非水性の希釈剤と混合して用いられ、必要に応じて、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤のような補助剤を含有することもできる。これらは通常、濾過(バクテリア保留フィルター等)、殺菌剤の配合又はガンマー線照射によって無菌化されるか、又はこれらの処理をした後、凍結乾燥等の方法により固体組成物とし、使用直前に無菌水又は無菌の注射用希釈剤を加えて使用される。
【0051】
本発明の虚血再潅流障害抑制剤は、生体内における虚血あるいは虚血に伴う起炎性物質がその発症や憎悪に関与している疾病(代表的には、脳梗塞や脳浮腫などの虚血性脳血管障害、心筋梗塞などの虚血性心疾患が挙げられる)の治療剤又は予防剤として有用であり、このような治療又は予防を必要とする患者に対して投与することができる。
本発明の有効成分である一般式(1)~(3)の化合物の投与量は、投与経路、症状、年齢、体重などにより異なるが、通常は0.01~1,000μmol/kg、好ましくは0.1~100μmol/kgを1日1回~数回に分けて投与することができる。
【実施例1】
【0052】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されることがないことは言うまでもない。
一般式(1)で表される化合物は下記の製造方法A~Cに示す方法により合成するのが好ましい。
【0053】
製造方法A
N,N-ジアルキルアミノ酸塩酸塩3.1mmol、DCC 3.1mmol、無水ピリジン30mlを加え30分間撹拌後、ファルネソール 3.1mmolを加え、室温で16時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を蒸留水に懸濁させ、酢酸エチルで可溶性画分を抽出する。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン:酢酸エチル)で分離精製し、N,N-ジアルキルアミノ酸ファルネソールエステルを得る。
【0054】
製造方法B
N,N-ジアルキルアミノ酸ファルネソールエステルを少量のアセトンに溶解し、2倍モル量の塩酸-ジオキサンを加え溶媒を減圧下留去し、残渣をアセトンで再結晶してN,N-ジアルキルアミノ酸ファルネソールエステルの塩酸塩を得る。
【0055】
製造方法C
アミノ酸0.1 molを蒸留水-ジオキサン(1:1, v/v)100 mlに溶解し、トリエチルアミン30 mlを加え、ジ-tert-ブチルジカルボネートを徐々に加え30分間室温で撹拌する。減圧下ジオキサンを留去し、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5 M)50 mlを加え酢酸エチル100 mlで洗う。酢酸エチル層を50 mlの炭酸水素ナトリウム液で洗い、水層を合わせて氷冷下でクエン酸水溶液(0.5 M)を加えて酸性(pH 3)とし、塩化ナトリウムを飽和させた後、酢酸エチルで抽出する(100 ml x 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、油状残渣にイソプロピルエーテルを加えるか、または冷却にて結晶化させてN-t-BOCアミノ酸を得る。
【0056】
ファルネソール5 mmol、N-t-BOCアミノ酸5 mmol、DCC 5 mmolを無水ピリジン30 mlに加え室温で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸エチルを加えて可溶性画分を抽出する(100 ml x 2回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン-酢酸エチル)で分離精製し、ファルネソールN-t-BOC-アミノ酸エステルを得る。
【0057】
ファルネソールN-t-BOC-アミノ酸エステルを少量のアセトンに溶解し、塩酸-ジオキサン(2.5~4.0 N)を塩酸量がエステルの20倍モル量に相当する量加え1時間撹拌後、減圧下溶媒を留去する。残渣をアセトン-メタノール系または酢酸エチル-メタノール系で再結晶して、ファルネソールアミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0058】
ファルネソールアミノ酸エステルの塩酸塩3 mmolを水150 mlに加え、炭酸水素ナトリウムを加えて溶液のpHを7~8にした後に酢酸エチルで抽出する(100 ml x 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、油状のファルネソールアミノ酸エステルを得る。
【0059】
一般式(3-1)で表される化合物は下記の製造方法D~Gに示す方法により合成するのが好ましい。
【0060】
製造方法D
アミノ酸0.1 molを蒸留水-ジオキサン(1:1, v/v)100 mlに溶解し、トリエチルアミン30 mlを加え、ジ-tert-ブチルジカルボネートを徐々に加え30分間室温で撹拌する。減圧下ジオキサンを留去し、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5 M)50 mlを加え酢酸エチル100 mlで洗う。酢酸エチル層を50 mlの炭酸水素ナトリウム液で洗い、水層を合わせて氷冷下でクエン酸水溶液(0.5 M)を加えて酸性(pH 3)とし、塩化ナトリウムを飽和させた後、酢酸エチルで抽出する(100 ml x 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、油状残渣にイソプロピルエーテルを加えるか、または冷却にて結晶化させてN-t-BOCアミノ酸を得る。
【0061】
アルゴンガス雰囲気下で、トコフェロールまたはトコトリエノール5 mmol、N-t-BOCアミノ酸5 mmol、DCC 5 mmolを無水ピリジン30 mlに加え室温で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸エチルを加えて可溶性画分を抽出する(100 ml x 2回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン-酢酸エチル)で分離精製し、ファルネソールN-t-BOC-アミノ酸エステルまたはトコフェロールN-t-BOC-アミノ酸エステルまたはトコトリエノールN-t-BOC-アミノ酸エステルを得る。
【0062】
トコフェロールN-t-BOC-アミノ酸エステルまたはトコトリエノールN-t-BOC-アミノ酸エステルを少量のアセトンに溶解し、塩酸-ジオキサン(2.5~4.0 N)を塩酸量がエステルの20倍モル量に相当する量加え1時間撹拌後、減圧下溶媒を留去する。残渣をアセトン-メタノール系または酢酸エチル-メタノール系で再結晶して、トコフェロールアミノ酸エステルあるいはトコトリエノールアミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0063】
製造方法E
トコフェロールアミノ酸エステルまたはトコトリエノールアミノ酸エステルの塩酸塩3 mmolを水150 mlに加え、炭酸水素ナトリウムを加えて溶液のpHを7~8にした後に酢酸エチルで抽出する(100 ml x 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、油状のトコフェロールアミノ酸エステルまたはトコトリエノールアミノ酸エステルを得る。
【0064】
製造方法F
アルゴンガス雰囲気下で、トコフェロールまたはトコトリエノール5 mmol、N,N-ジアルキルアミノ酸塩酸塩5 mmol、DCC 5 mmolを無水ピリジン30 mlに加え室温で20時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を蒸留水に懸濁させ炭酸水素ナトリウムを加えて溶液のpHを7~8にした後に酢酸エチルで抽出する(100 ml x 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン-酢酸エチル、8:2)で分離精製し、トコフェロールN,N-ジアルキルアミノ酸エステルまたはトコトリエノールN,N-ジアルキルアミノ酸エステルを得る。
【0065】
製造方法G
トコフェロールアミノ酸エステル、トコトリエノールアミノ酸エステル、トコフェロールN,N-ジアルキルアミノ酸エステルまたはトコトリエノールN,N-ジアルキルアミノ酸エステル2 mmolをアセトン20 mlに溶解し、塩酸-ジオキサン(2.5~4.0 N)を塩酸量がエステルの10倍モル量に相当する量またはアルキルスルホン酸2 mmolを加え、減圧下溶媒を留去する。残渣をアセトン-メタノール系または酢酸エチル-メタノール系で再結晶して、トコフェロールアミノ酸エステル、トコトリエノールアミノ酸エステル、トコフェロールN,N-ジアルキルアミノ酸エステルまたはトコトリエノールN,N-ジアルキルアミノ酸エステルの塩酸塩またはアルキルスルホン酸塩を得る。
【0066】
一般式(3-2)で表される化合物は下記の製造方法H~Iに示す方法により合成するのが好ましい。
【0067】
製造方法H
t-ブチルメチルエーテル 50 mLと無水ピリジン 5 mLの混液にトコフェロール又はトコトリエノール5 gを溶解し、撹拌しながらフォスフォリルクロリド (POCl3)3.68 gを徐々に加える。氷冷下15%硫酸水溶液20 mLを加え分液する。t-ブチルメチルエーテル層に35%硫酸水溶液20 mLを加え、撹拌しながら70℃で7時間還流する。t-ブチルメチルエーテル層と水層を分液し、t-ブチルメチルエーテル層を蒸留水100 mLで3回洗う。t-ブチルメチルエーテル層にt-ブチルメチルエーテルを加え200 mLとする。pHを測定しながらt-ブチルメチルエーテル層に5%水酸化ナトリウムのメタノール溶液を加え、pH8.9にする。減圧下濃縮し、アセトンを加えて沈殿を生じさせる。沈殿を乾燥後、メタノールで洗浄してトコフェロールリン酸エステルナトリウム塩またはトコトリエノールリン酸エステルナトリウム塩を得る。
【0068】
製造方法I
t-ブチルメチルエーテル 50 mLと無水ピリジン 5 mLの混液にトコフェロール又はトコトリエノール5 gを溶解し、撹拌しながらフォスフォリルクロリド (POCl3)3.68 gを徐々に加える。氷冷下メタノール20 mLを加え、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒;n-ヘキサン-酢酸エチル、8:2)で分離精製し、トコフェロールメチルリン酸エステルまたはトコトリエノールメチルリン酸エステルを得る。
【0069】
【表1】
JP0005515078B2_000015t.gif

【0070】
【表2】
JP0005515078B2_000016t.gif

【0071】
【表3】
JP0005515078B2_000017t.gif

【0072】
【表4】
JP0005515078B2_000018t.gif

【0073】
【表5】
JP0005515078B2_000019t.gif

【0074】
【表6】
JP0005515078B2_000020t.gif

【0075】
【表7】
JP0005515078B2_000021t.gif

【実施例2】
【0076】
虚血再潅流脳障害の抑制効果の検討
脳梗塞は、脳血流量の低下によって種々の傷害機序がドミノ式に生じ、脳損傷を虚血中心部から虚血周辺部に拡大していく進行性の疾患であり、特に発症後の酸化ストレスや炎症反応の関与が強く、重篤性やQOLを考慮すると発症後の亜急性期、慢性期の治療が極めて重要である。臨床的には、脳梗塞後、投与開始が遅くても虚血再還流障害に対して抑制可能な薬剤が望まれる。
このことから、MCA閉塞モデルにおいて再潅流後に薬物投与することで、再潅流による活性酸素種(ROIs)の直接的障害とROIsによる2次的な酸化ストレスや炎症反応に至る過程を反映した虚血再潅流脳障害の治療効果評価モデルを構築し、被験化合物の治療薬としての効果を検討した。
また、MCA閉塞モデルにおいて梗塞直前及び梗塞中に薬物投与し、予防薬としての効果も検討した。
【0077】
(1)虚血再潅流脳障害の予防効果評価法
ddY雄性マウス25-30 g(6-7週令)を用いKoizumi等の方法(脳卒中、第8巻、1-8頁、1986年)に従って中大脳動脈(MCA)閉塞モデルマウスを作成し、MCA閉塞を4時間とし、梗塞開始直前と梗塞3時間の2回試験薬物溶液を静脈内投与した。梗塞開始24時間後の脳切片標本を作製しトリフェニルテトラゾリウムクロリド染色(TTC steining)後、脳切片標本から画像処理によって脳梗塞巣体積を測定した。
【0078】
(2)虚血再潅流脳障害の治療効果評価法
ddY雄性マウス25-30 g(6-7週令)を用いKoizumi等の方法(脳卒中、第8巻、1-8頁、1986年)に従って中大脳動脈(MCA)閉塞モデルマウスを作成し、MCA閉塞を4時間とし、虚血開始後6時間または10時間(再潅流後2時間または4時間)に薬物溶液を静脈内単回投与した。閉塞開始24時間後の脳切片標本を作製しトリフェニルテトラゾリウムクロリド染色(TTC steining)後、脳切片標本から画像処理によって脳梗塞巣体積を測定した。
【実施例3】
【0079】
ファルネソール(FO)およびファルネソールN,N-ジメチルグリシンエステル塩酸塩(FODMG)の虚血再潅流脳障害の予防効果
上記虚血再潅流脳障害の予防評価法に従って,(2E,6E) ファルネソール(FO)と(2E,6E) ファルネソールN,N-ジメチルグリシネート塩酸塩(FODMG)および市販製剤であるエダラボン(edaravone)の血再潅流脳障害に対する効果を評価した。
図1にMCA閉塞マウスの閉塞24時間後脳切片標本を、図2にMCA閉塞マウスの閉塞24時間後脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。FOはDMSOに溶解して静脈内投与し、FODMGは水に溶解して静脈内投与した。
【0080】
FOは2μmol/kg x 2投与では有意な梗塞巣体積の抑制は見られず、20μmol/kg x 2の投与量において梗塞巣体積を有意に抑制した。
FODMGは2μmol/kg x 2と20μmol/kg x 2のどちらの投与量においても梗塞巣体積を有意に抑制し、その効果は投与量に依存した。FODMGはFOに比較して優れた血再潅流脳障害の予防効果を示した。
一方、エダラボンは2μmol/kg x 2投与では有意に抑制したが、20μmol/kg x 2の投与量では有意な効果が見られず、投与量が高くなると有効な効果が見られず、有効投与量の範囲が狭いことが示された。
FODMGの効果は投与量に依存することからは有効投与量範囲が広く、エダラボンに比して優れていることが明らかである。
【実施例4】
【0081】
ファルネソールN,N-ジメチルグリシンエステル塩酸塩(FODMG)の虚血再潅流脳障害の治療効果
上記虚血再潅流脳障害の治療効果評価法に従って、エダラボンでは効果が見られない投与量(20μmol/kg)におけるFODMGの虚血再潅流脳障害の治療効果を虚血開始6時間後または10時間後の単回投与で評価した。FOはDMSOに溶解して静脈内投与し、FODMGは水に溶解して静脈内投与した。
FODMGは虚血開始6時間後と10時間後の単回投与の何れにおいても梗塞巣体積を有意に抑制した(図3)。FODMGは静脈内投与が可能であり、脳梗塞発症後の治療開始時間を極めて長く延長できることが明らかである。
【実施例5】
【0082】
2R-γ-トコフェロールN,N-ジメチルグリシン塩酸塩(γ-TDMG)の虚血再潅流脳障害の予防効果
上記虚血再潅流障害の予防効果評価法に従って、γ-TDMGと2R-α-トコフェロール(α-Toc)およびγ-トコフェロール(γ-Toc)の虚血再潅流障害の予防効果を評価した。γ-TDMGは15%プロピレングリコール含有水溶液に溶解して投与し、α-Tocとγ-TocはDMSOに溶解して投与した。
図4にMCA閉塞マウスの閉塞開始24時間後脳切片標本を、図5に脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。
α-TocのDMSO溶液投与では投与量20μmol/kg x 2では梗塞巣体積は有意に抑制されたが、投与量2μmol/kg x 2では有意な梗塞巣体積の抑制は観察されなかった。
γ-TocのDMSO溶液投与では2μmol/kg x 2と20μmol/kg x 2のどちら投与量においても梗塞巣体積が有意に抑制され、α-Tocの1/10投与量で有意に抑制した。
γ-TDMGの水溶液静脈内投与では2μmol/kg x 2と20μmol/kg x 2のどちら投与量においても梗塞巣体積の有意な抑制が観察され、α-Tocの1/10の低投与量で虚血再潅流障害の予防効果を示し、γ-TDMGは優れた虚血再潅流障害の予防効果を有することが明らかになった。
【実施例6】
【0083】
2R-γ-トコフェロールN,N-ジメチルグリシン塩酸塩(γ-TDMG)の虚血再潅流脳障害の治療効果
図6にMCA閉塞マウスの閉塞開始24時間後脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞24時間後の梗塞巣の体積を示した。γ-TDMGは15%プロピレングリコール含有水溶液に溶解して投与し、α-Tocとγ-TocはDMSOに溶解して投与した。
γ-TDMG水溶液の静脈内投与とγ-TocのDMSO溶液の静脈内投与は、どちらも虚血開始6時間後2μmol/kg と20μmol/kgの単回投与において梗塞巣体積を有意に抑制した。
脳梗塞治療においては梗塞後の治療開始までの時間が長いことが望まれており、γ-TDMGは静脈内投与が可能であり、脳梗塞発症後投与において治療効果を有することが明らかである。
【実施例7】
【0084】
2R-α-トコトリエノールN,N-ジメチルグリシン塩酸塩(α-T3DMG)の虚血再潅流脳障害の予防効果
上記虚血再潅流障害の予防効果評価法に従ってα-T3DMGの虚血再潅流障害の予防効果を評価した。α-T3DMGは15%プロピレングリコール含有水溶液に溶解して投与し、α-Tocと2R-α-トコトリエノール(α-T3)はDMSOに溶解して投与した。
図7に脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。
α-T3DMGの水溶液静脈内投与では2μmol/kg x 2と20μmol/kg x 2のどちらの投与量においても梗塞巣体積の有意な抑制が観察され、α-T3のDMSO溶液投与と同じ投与量で効果があり、α-Tocの1/10の低投与量で抑制効果を示すことが明らかとなった。α-T3DMGは静脈内投与可能な虚血再潅流脳障害の優れた予防剤として有用である。
【実施例8】
【0085】
2R-α-トコトリエノールN,N-ジメチルグリシン塩酸塩(α-T3DMG)の虚血再潅流脳障害の治療効果
上記虚血再潅流脳障害の治療効果評価法に従って、α-T3DMGの治療薬としての効果を検討した。α-T3DMGは15%プロピレングリコール含有水溶液に溶解して投与し、α-Tocと2R-α-トコトリエノール(α-T3)はDMSOに溶解して投与した。
図8にMCA閉塞マウスの閉塞開始24時間後脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。
α-T3DMG水溶液の静脈内投与は、虚血開始6時間後2μmol/kg と20μmol/kgの単回投与のどちらにおいても梗塞巣体積を有意に抑制し、α-T3DMGは静脈内投与が可能であり脳梗塞発症後投与において治療効果を有することが明らかである。
【実施例9】
【0086】
2R-γ-トコフェロールリン酸エステル2ナトリウム塩(γ-TPS)の虚血再潅流脳障害の予防効果
上記虚血再潅流障害の予防効果評価法に従ってγ-TPSの虚血再潅流障害の予防効果を評価した。γ-TPSは水に溶解して投与した。図9に脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。
γ-TPSの水溶液静脈内投与では2μmol/kg x 2では有意な効果は見られず、20μmol/kg x 2の投与量において梗塞巣体積の有意な抑制が観察され、γ-Tocに比べて低いもののα-Tocと同程度の抑制効果を示した。γ-TPSは静脈内投与可能な虚血再潅流脳障害の予防剤として効果を有する。
【実施例10】
【0087】
2R-γ-トコフェロールリン酸エステル2ナトリウム塩(γ-TPS)の虚血再潅流脳障害の治療効果
上記虚血再潅流脳障害の治療効果評価法に従って、γ-TPSの治療薬としての効果を検討した。γ-TPSは水に溶解して投与した。図10にMCA閉塞マウスの閉塞開始24時間後脳切片標本から画像処理によって求めた閉塞開始24時間後の梗塞巣の体積を示した。
γ-TPSの水溶液静脈内投与では、虚血開始6時間後の20μmol/kg の単回投与において梗塞巣体積の有意な抑制が観察された。γ-TPSは静脈内投与可能な虚血再潅流脳障害の治療剤として効果を有する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9