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明細書 :色素増感太陽電池およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5537336号 (P5537336)
公開番号 特開2012-048835 (P2012-048835A)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年7月2日(2014.7.2)
公開日 平成24年3月8日(2012.3.8)
発明の名称または考案の名称 色素増感太陽電池およびその製造方法
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2014.01)
C09B  57/10        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
C09B 57/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2010-187045 (P2010-187045)
出願日 平成22年8月24日(2010.8.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 近畿大学、平成21年度(2009年度)近畿大学理工学部 理学科化学コース 卒業研究発表会要旨集、48頁、平成22年2月26日
特許法第30条第1項適用 社団法人日本化学会、Chemistry Letters、Vol.39、No.7、2010、p792-793、平成22年7月5日
特許法第30条第1項適用 American Chemical Society、Inorganic Chemistry、Vol.49、No.8、2010、p.3700-3702、平成22年3月22日
審査請求日 平成25年3月27日(2013.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】大久保 貴志
【氏名】金 敬鎬
【氏名】田中 直也
【氏名】前川 雅彦
【氏名】黒田 孝義
【氏名】三村 尚登
個別代理人の代理人 【識別番号】100157107、【弁理士】、【氏名又は名称】岡 健司
審査官 【審査官】前田 寛之
参考文献・文献 特開2001-059062(JP,A)
特開2000-323191(JP,A)
特開2009-252727(JP,A)
調査した分野 H01M 14/00
C09B 57/10
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属元素の中から選ばれる1種または2種以上の金属イオンと、
前記金属イオンに配位可能な1種または2種以上の含硫黄化合物または含窒素化合物からなる配位子を含有する配位高分子を用いることを特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記遷移金属元素が、
Fe, Co, Ni, Cu, Ru, Rh, Pd, Ag, Os, Ir, Pt, Auの中から選ばれる1種または2種以上の金属元素であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記配位子が、
下記の化1または化2で表わされるジチオカルバミン酸イオンの誘導体の中から選ばれる1種または2種以上の誘導体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色素増感太陽電池。
【化1】
JP0005537336B2_000014t.gif
(R1およびR2は、同一または異なる脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、複素環基および置換複素環基を示す。)
【化2】
JP0005537336B2_000015t.gif
(R3は、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環基または置換複素環基を示す。)
【請求項4】
前記配位高分子が、
さらに臭素イオンまたはヨウ素イオンを含むことによって構成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項5】
前記配位高分子が、
遷移金属元素に銅を用い、
前記配位子にヘキサメチレンジチオカルバミン酸を用い、
かつ臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いて構成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の色素増感太陽電池。
【請求項6】
酸化チタンのペーストと前記配位高分子とを混合する工程を備えることを特徴とした請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池に係り、さらに詳しくは配位高分子を用いた色素増感太陽電池およびその色素増感太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、グリーンエネルギーとして太陽光が注目されるようになっており、太陽光を使用する太陽電池の開発が盛んになっている。太陽電池には、シリコン太陽電池、無機化合物を用いた太陽電池、有機化合物を用いた色素増感太陽電池などがある。
【0003】
そしてその中でも色素増感太陽電池は、多孔性酸化チタンと太陽光を吸収するための色素を用いた太陽電池であり、シリコン太陽電池に比べて製造コストが低いことから、新しいタイプの太陽電池として実用化への期待が近年急速に高くなっている。
【0004】
ここで、従来の色素増感太陽電池は、ガラスなどの基板上に酸化チタンを焼結して被膜を形成した後、太陽光が酸化チタンに照射された際に励起される電荷を電解液などに伝達するための色素を酸化チタン表面に吸着することによって陽極を形成する。
【0005】
従前においては、これらに使用される色素には非特許文献1または非特許文献2に示すようにグレッツェルによって発明されたルテニウム錯体が広く用いられている。また、このルテニウム錯体については光電変換効率が高いという点から、例えば特許文献1または特許文献2に示すような各種の技術開発が行われている。
【0006】
また、ルテニウム錯体以外の化合物を色素に用いた色素増感太陽電池も開発されており、例えば特許文献3に示すようなベンゾインドール系染料を用いた色素増感太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-120042号公報
【特許文献2】特開2006-298882号公報
【特許文献3】特開2009-173928号公報
【0008】

【非特許文献1】B.O‘Regan,M.Gratzel,Nature 1991,353,737
【非特許文献2】M.Gratzel,Nature 2001,414,338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に代表される、色素にルテニウム錯体を用いる色素増感太陽電池は、酸化チタンに吸着させるために色素分子内にカルボキシル基などの反応基を有している必要があり、色素として使用できる分子に制限があるという課題がある。また、希少金属であるルテニウムを使用することから、製造コストが高くなるという課題もある。
【0010】
一方、特許文献3に記載のベンゾインドール系染料を用いた色素増感太陽電池は、ルテニウムを用いるよりは安価に製造できるものの、ルテニウム錯体と同様に色素分子内には酸化チタンに吸着させるためのカルボキシル基などの反応基が必要であることから、色素として使用できる分子に制限があるという課題は依然として存在する。
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、安価な原料を使用しながら、色素分子内に反応基を有することなく酸化チタン表面に吸着することができる色素増感太陽電池およびその色素増感太陽電池の製造方法の提供を目的とする。
【0012】
また、太陽光が色素に照射された際に励起される電荷を効率よく酸化チタンなどに伝達することができる色素増感太陽電池およびその色素増感太陽電池の製造方法の提供を目的とする。
【0013】
さらに、可視光領域においても高い吸収を示し、照射された太陽光をより効率よく電気に変換することができる色素増感太陽電池およびその色素増感太陽電池の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る色素増感太陽電池は、遷移金属元素の中から選ばれる1種または2種以上の金属イオンと、金属イオンに配位可能な1種または2種以上の含硫黄化合物または含窒素化合物からなる配位子を含有する配位高分子を用いることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る色素増感太陽電池は、遷移金属元素が、Fe, Co, Ni, Cu, Ru, Rh, Pd, Ag, Os, Ir, Pt, Auの中から選ばれる1種または2種以上の金属元素であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る色素増感太陽電池は、配位子が、下記の化1または化2で表わされるジチオカルバミン酸イオンの誘導体の中から選ばれる1種または2種以上の誘導体であることを特徴とする。
【化1】
JP0005537336B2_000002t.gif
(R1およびR2は、同一または異なる脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、複素環基および置換複素環基を示す。)
【化2】
JP0005537336B2_000003t.gif
(R3は、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環基または置換複素環基を示す。)
【0017】
本発明の請求項4に係る色素増感太陽電池は、配位高分子が、さらに臭素イオンまたはヨウ素イオンを含むことによって構成されたものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5に係る色素増感太陽電池は、配位高分子が、遷移金属元素に銅を用い、配位子にヘキサメチレンジチオカルバミン酸を用い、かつ臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いて構成されたものであることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6に係る色素増感太陽電池の製造方法は、酸化チタンのペーストと配位高分子とを混合する工程を備えることを特徴とする。
【0020】
まず、本発明の色素増感太陽電池について以下に説明する。
【0021】
本発明に係る色素増感太陽電池は、酸化チタンの表面に吸着する色素に配位高分子を用いることを特徴とし、さらに配位高分子として遷移金属元素の中から選ばれる1種または2種以上の金属イオンと、金属イオンに配位可能な1種または2種以上の含硫黄化合物または含窒素化合物からなる配位子を必須成分として用いることを特徴とする。
【0022】
ここで、本発明における「配位高分子」とは、金属イオンを中心にその周囲に有機化合物の配位子が結合している金属錯体が繋がっている構造を取っているものをいう。具体的には、図8に示す一次元構造を取るものや、図9に示す二次元構造を取るものや、図10に示す三次元構造を取るものなどがあげられる。
なお、かかる配位高分子は、各金属錯体の中心に位置する金属イオン同士が配位子によって架橋された繰り返し構造を取っているものだけでなく、必要に応じて金属錯体の各ユニットを架橋するために、後記するような臭素イオンやヨウ素イオンなど、配位子とは別の架橋剤成分を含有し、当該架橋剤成分によっても架橋された繰り返し構造を取っているものも含まれる。
また、配位高分子骨格が正電荷もしくは負電荷を帯びている場合は、その電荷を打ち消すためにフェロセニウムイオンやアンモニウムイオンなどのカチオンやアニオンが図8、図9、図10に代表される配位高分子骨格の間に入り込む場合があり、その様な化合物も配位高分子に含まれる。
【0023】
次に、配位高分子を構成する各成分について説明する。
【0024】
本発明に用いられる金属イオンは、遷移金属元素の中から選ばれる1種または2種以上の元素の金属イオンが用いられる。そして、遷移金属元素の中でもFe, Co, Ni, Cu, Ru, Rh, Pd, Ag, Os, Ir, Pt, Auという、いわゆる8族および1B族の元素の金属イオンを用いることが好ましく、さらに、その中でも下記する配位子を配位することによって配位高分子全体に電子を非局在化させることができ、安価であるという点から銅イオンを用いることが好ましい。
なお、これらの金属イオンについては、1種だけではなく異なる金属イオンを併用することによって、それぞれの金属イオンが有する特性を発現させることができる。例えば、銅イオンとともにプラチナイオンやイリジウムイオンなどの重原子効果を有する金属イオンを用いることによって、銅イオンが有する電子の非局在化効果だけでなく、プラチナイオンやイリジウムイオンなどが有する励起寿命延長効果を発現させることができる。
【0025】
本発明に用いられる配位子は、上記した金属イオンに配位可能な1種または2種以上の含硫黄化合物または含窒素化合物が用いられる。含硫黄化合物の例としては、ジチオオキサレート、テトラチオオキサレート、ジチオカルボン酸置換基を有する配位子などがあげられ、含窒素化合物の例としては、ピラジン、ビピリジン、イミダゾール骨格を有する配位子などがあげられる。
そして、含硫黄化合物または含窒素化合物の中でも、下記の化1または化2で表わされるジチオカルバミン酸イオンの誘導体を用いることが好ましく、さらに、上記した金属イオンと電子を非局在化させることができるという点から、ヘキサメチレンジチオカルバミン酸を用いることが好ましい。
【0026】
【化1】
JP0005537336B2_000004t.gif
(R1およびR2は、同一または異なる脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、複素環基および置換複素環基を示す。)
【0027】
【化2】
JP0005537336B2_000005t.gif
(R3は、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環基または置換複素環基を示す。)
【0028】
なお、R3の具体例としては、以下の化3で表わされる複素環基または置換複素環基があげられる。またR3には、化3で表わされる複素環基または置換複素環基に、さらに同一または異なる脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、複素環基および置換複素環基が結合しているものを用いることもできる。
【0029】
【化3】
JP0005537336B2_000006t.gif

【0030】
本発明の配位高分子には、金属イオンと配位子以外に、金属イオン同士を架橋するための架橋剤成分としてハロゲン元素を用いることができる。なお、その中でも電子の非局在化効果を向上させるという点から、臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いることが好ましい。
かかる架橋剤成分を用いることによって、さらに配位高分子全体への電子の非局在化効果を向上させることができる。
例えば、化4に示すように、金属イオンに銅イオンを用い、配位子にヘキサメチレンジチオカルバミン酸を用いて配位した単核錯体同士を、臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いて架橋することで銅イオンの禁制遷移状態を破ることができ、よって配位高分子全体への電子の非局在化効果をさらに向上させることができる。
【0031】
【化4】
JP0005537336B2_000007t.gif
(XはBrまたはI)
【0032】
なお、本発明の配位高分子の製造方法としては、原料となる化合物を有機溶媒中で混合するなど、公知の方法で製造することができる。また、架橋剤成分として臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いる場合には、まず、単核錯体を作製した後、当該単核錯体と臭素イオン化合物またはヨウ素イオン化合物とを混合することによって製造することができる。具体的には、例えば、銅イオンとヘキサメチレンジチオカルバミン酸を用いて配位した単核錯体を作製しておき、その後作製した単核錯体と臭化銅を有機溶媒中で混合することなどによって製造する。
【0033】
本発明の配位高分子の分子量や繰り返し単位(n)数としては、特に限定されるものではないが、分子量としては1000以上であることが好ましく、繰り返し単位数としては100以上であることが好ましい。なお、分子量と繰り返し単位(n)数の上限については、使用に支障がない範囲において適宜設定することができる。
【0034】
次に、本発明の色素増感太陽電池の製造方法について説明する。
【0035】
本発明に係る色素増感太陽電池の製造方法は、酸化チタンのペーストと配位高分子とを混合する工程を備えることを特徴とするものである。
すなわち、酸化チタンのペーストと上記した配位高分子とを混合することによって、色素としての配位高分子を酸化チタン表面に吸着させ、その後色素が吸着した酸化チタンをガラスなどの基板上に塗布し焼結して陽極を形成するのである。
かかる方法によって、従来のような色素分子内にカルボキシル基などの反応基を有していなくても、色素を酸化チタン表面に吸着させることができ、色素として使用できる分子の選択肢を拡げることができる。
なお、混合の方法としては、必要に応じた配合量の酸化チタンのペーストと配位高分子とを乳鉢などで直接混ぜ合わせる方法などがあげられる。また、酸化チタンのペーストとしてはペクセル・テクノロジー社製のものなど市販のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の請求項1に係る色素増感太陽電池によれば、単核錯体として用いた場合よりも変換効率の高い色素増感太陽電池を得ることができる。また、安価に色素増感太陽電池を作製することができる。
【0037】
本発明の請求項2に係る色素増感太陽電池によれば、遷移元素の中でも特定の元素を用いることによって、配位高分子における可視領域の吸収の増加、電気伝導性の増大、もしくは励起寿命の増大による高い変換効率の色素増感太陽電池を得ることができる。
【0038】
本発明の請求項3に係る色素増感太陽電池によれば、配位子の中でもジチオカルバミン酸イオンの誘導体を用いることによって、効率よく可視光を吸収する配位高分子を得ることができる。
これは遷移元素のイオン化エネルギーとジチオカルバミン酸イオンの誘導体のイオン化エネルギーが近接しているために、本来は禁制遷移である遷移元素の光励起が金属イオンと配位子の軌道の混成によって許容になるためである。また同時に軌道の混成によって、光励起によって生じた電子が配位高分子全体に非局在化するために電気伝導性が増大する。
以上の理由により、ジチオカルバミン酸イオンの誘導体を含む配位高分子全体として光を吸収することができ、可視光域の波長でも高い吸収を有する色素増感太陽電池を得ることができる。
【0039】
本発明の請求項4に係る色素増感太陽電池によれば、 遷移元素と、含硫黄化合物からなる配位子に加えて、さらに臭素イオンまたはヨウ素イオンによって構成された配位高分子を用いることによって、より電気伝導性が高く、変換効率の高い色素増感太陽電池を得ることができる。
【0040】
本発明の請求項5に係る色素増感太陽電池によれば、遷移元素に銅を、配位子にヘキサメチレンジチオカルバミン酸イオンの誘導体を、さらに臭素イオンまたはヨウ素イオンを用いて配位高分子を構成することによって、上記した全ての効果を発現する色素増感太陽電池を得ることができる。
【0041】
本発明の請求項6に係る色素増感太陽電池の製造方法によれば、陽極に使用する酸化チタンをペースト状にして配位高分子と混合することによって、配位高分子の末端にカルボキシル基などの反応基を導入することなく、どのような配位高分子でも酸化チタンの表面に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1、実施例2、比較例の電流密度ー電圧特性を示すグラフである。
【図2】実施例1~4の電流密度ー電圧特性を示すグラフである。
【図3】実施例5、実施例6の電流密度ー電圧特性を示すグラフである。
【図4】実施例7の電流密度ー電圧特性を示すグラフである。
【図5】実施例1、実施例2、比較例の拡散反射スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例1、実施例2、比較例の光電子分光測定の結果を示すグラフである。
【図7】実施例1、実施例2、比較例のコールコールプロットを示すグラフである。
【図8】一次元構造を取る配位高分子を示す模式図である。
【図9】二次元構造を取る配位高分子を示す模式図である。
【図10】三次元構造を取る配位高分子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、実施例および比較例ならびに図面に基づいて、本発明の色素増感太陽電池およびその製造方法を詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【実施例1】
【0044】
(単核錯体の作製)
まず、10mmolの水酸化ナトリウムを溶かしたメタノール溶液100mlに10mmolのヘキサメチレンイミンを加え、更に10mmolの二硫化炭素を反応させた。
次に、この溶液に5mmolの塩化銅二水和物を100mlのメタノールに溶かした溶液を加え、5分間撹拌し反応させた。
得られた沈殿物をろ過して集めた後、クロロホルム200mlに溶かし、その溶解液に200mlのメタノールを加え、約100mlに減圧濃縮した。更にメタノール200mlを加え、約50mlに減圧濃縮した後、得られた微結晶を吸引ろ過によって集め、少量のエーテルで洗浄し乾燥することで化5に示す、単核錯体Cu(Hm-dtc)2を得た。
【化5】
JP0005537336B2_000008t.gif
【実施例1】
【0045】
(配位高分子の作製)
化5に示す単核錯体0.1molをクロロホルム20mlに溶解し、臭化銅を0.2molをアセトニトリル3mlとアセトン17mlの混合溶媒に溶解した後、それぞれの溶解液を混合し、1日室温で放置することによって、化6に示す実施例1に使用する配位高分子([CuI2CuIIBr2(Hm-dtc)2(CH3CN)2n (CuBrHm1D)の黒色単結晶)を作製した。
【化6】
JP0005537336B2_000009t.gif
(XはBr)
【実施例1】
【0046】
(色素増感太陽電池の作製)
低温焼結用酸化チタンペースト(品番:PECC-k01、ペクセル・テクノロジー社製)0.1molと、上記で作製した配位高分子0.3molを乳鉢の中で混合し、ガラス基板上に形成した透明電極(ITO)に50μmの厚さで塗布した。そして、この電極を50℃で30分乾燥させることによって陽極を作製した。
次に、ガラス基板上に形成した透明電極(ITO)にPEDOT-TMA(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)テトラメタクリレート)を同重量のメタノールで溶解したものをスピンコートを行うことによって0.5mg塗布し、50℃で30分乾燥させることによって陰極を作製した。
次に、ポリエチレングリコール200に、ヨウ化リチウムを0.5mol/Lの濃度で、さらにヨウ素を0.005mol/Lの濃度で溶解することによって電解液を作製した。
最後に、ポリイミドフィルムをスペーサに用いて、作製した陽極と陰極を50μmのすき間を介在させるようにして貼り合わせ、電極の間に電解液を注入することで実施例1の色素増感太陽電池を得た。
【実施例2】
【0047】
実施例1に使用した臭化銅の代わりにヨウ化銅を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の色素増感太陽電池を得た。
【実施例3】
【0048】
(単核錯体の作製)
まず、10mmolの水酸化ナトリウムを溶かしたメタノール溶液100mlに10mmolのピぺリジンを加え、更に10mmolの二硫化炭素を反応させた。
次に、この溶液に5mmolの塩化銅二水和物を100mlのメタノールに溶かした溶液を加え、5分間撹拌し反応させた。
得られた沈殿物をろ過して集めた後、クロロホルム200mlに溶かし、その溶解液に200mlのメタノールを加え、約100mlに減圧濃縮した。更にメタノール200mlを加え、約50mlに減圧濃縮した後、得られた微結晶を吸引ろ過によって集め、少量のエーテルで洗浄し乾燥することで化7に示す、単核錯体Cu(Pip-dtc)2を得た。
【化7】
JP0005537336B2_000010t.gif
【実施例3】
【0049】
(配位高分子の作製)
化7に示す単核錯体0.1molをクロロホルム20mlに溶解し、臭化銅を0.2molをアセトニトリル3mlとアセトン17mlの混合溶媒に溶解した後、それぞれの溶解液を混合し、1日室温で放置することによって、実施例3に使用する配位高分子([CuI2CuIIBr2(Pip-dtc)2(CH3CN)2n (CuBrPip1D)の黒色単結晶)を作製した。
【実施例3】
【0050】
(色素増感太陽電池の作製)
実施例1と同様の手法にて実施例3の色素増感太陽電池を得た。
【実施例4】
【0051】
実施例3に使用した臭化銅の代わりにヨウ化銅を用いた以外は実施例3と同様にして実施例4の色素増感太陽電池を得た。
【実施例5】
【0052】
(単核錯体の作製)
まず、10mmolの水酸化ナトリウムを溶かしたメタノール溶液100mlに10mmolのジプロピルアミンを加え、更に10mmolの二硫化炭素を反応させた。
次に、この溶液に5mmolの塩化銅二水和物を100mlのメタノールに溶かした溶液を加え、5分間撹拌し反応させた。
得られた沈殿物をろ過して集めた後、クロロホルム200mlに溶かし、その溶解液に200mlのメタノールを加え、約100mlに減圧濃縮した。更にメタノール200mlを加え、約50mlに減圧濃縮した後、得られた微結晶を吸引ろ過によって集め、少量のエーテルで洗浄し乾燥することで化8に示す、単核錯体Cu(nPr2-dtc)2を得た。
【化8】
JP0005537336B2_000011t.gif
【実施例5】
【0053】
(配位高分子の作製)
化8に示す単核錯体0.1molをクロロホルム20mlに溶解し、塩化銅二水和物0.4molをアセトン20mlに溶解した後、それぞれの溶解液を混合し、1日室温で放置することによって、実施例5に使用する配位高分子([CuI6CuIIICl7 (nPr2-dtc)2n (CuClnPr2D)の黒色単結晶)を作製した。
【実施例5】
【0054】
(色素増感太陽電池の作製)
実施例1と同様の手法にて実施例5の色素増感太陽電池を得た。
【実施例6】
【0055】
まず、10mmolの水酸化ナトリウムを溶かしたメタノール溶液100mlに10mmolのジブチルアミンを加え、更に10mmolの二硫化炭素を反応させた。
次に、この溶液に5mmolの塩化銅二水和物を100mlのメタノールに溶かした溶液を加え、5分間撹拌し反応させた。
得られた沈殿物をろ過して集めた後、クロロホルム200mlに溶かし、その溶解液に200mlのメタノールを加え、約100mlに減圧濃縮した。更にメタノール200mlを加え、約50mlに減圧濃縮した後、得られた微結晶を吸引ろ過によって集め、少量のエーテルで洗浄し乾燥することで化9に示す、単核錯体Cu(nBu2-dtc)2を得た。
【化9】
JP0005537336B2_000012t.gif
【実施例6】
【0056】
(配位高分子の作製)
化9に示す単核錯体0.1molをクロロホルム20mlに溶解し、臭化銅0.2molを数滴の水になじませてからアセトン20mlに溶解した後、それぞれの溶解液を混合し、1日室温で放置することによって、実施例6に使用する配位高分子([CuI7CuIIBr7(nBu2-dtc)2n (CuBrnBu2D)の黒色単結晶)を作製した。
【実施例6】
【0057】
(色素増感太陽電池の作製)
実施例1と同様の手法にて実施例6の色素増感太陽電池を得た。
【実施例7】
【0058】
(単核錯体の作製)
まず、10mmolの水酸化ナトリウムを溶かしたメタノール溶液100mlに10mmolのピロリジンを加え、更に10mmolの二硫化炭素を反応させた。
次に、この溶液に5mmolの塩化銅二水和物を100mlのメタノールに溶かした溶液を加え、5分間撹拌し反応させた。
得られた沈殿物をろ過して集めた後、クロロホルム200mlに溶かし、その溶解液に200mlのメタノールを加え、約100mlに減圧濃縮した。更にメタノール200mlを加え、約50mlに減圧濃縮した後、得られた微結晶を吸引ろ過によって集め、少量のエーテルで洗浄し乾燥することで化10に示す、単核錯体Cu(Pyr-dtc)2を得た。
【化10】
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【実施例7】
【0059】
(配位高分子の作製)
化10に示す単核錯体0.1molをクロロホルム20mlに溶解し、CuBrS(CH320.4molをアセトニトリル10mlに溶解してから10mlのアセトンで希釈した後、それぞれの溶解液を混合し、1日室温で放置することによって、実施例7に使用する配位高分子({[CuI4CuII2Br4(Pyr-dtc)4]CHCl3n(CuBrPyr3D)の黒色単結晶)を作製した。
【実施例7】
【0060】
(色素増感太陽電池の作製)
実施例1と同様の手法にて実施例7の色素増感太陽電池を得た。

【0061】
実施例1に使用した配位高分子の代わりに、化5に示す単核錯体を用いた以外は実施例1と同様にして比較例の色素増感太陽電池を得た。

【0062】
次に、上記によって得た実施例1~7および比較例の色素増感太陽電池について、各特性の測定を行った。

【0063】
(電流密度ー電圧特性の測定)
電流密度ー電圧特性はソーラーシミュレータ(AM1.5、100mW/cm2)を用いて測定した。測定結果を図1~4に示す。
そして、図1から得られる、電圧がゼロの時の電流密度を短絡電流密度(Jsc)、負荷電圧をかけて電流密度がゼロになった時の電圧を開放電圧(Voc)、電流密度—電圧曲線から得られる最大出力を短絡電流密度と開放電圧の積で除したものをフィルファクタ(FF)、最大出力を入射光強度で除したものを変換効率ηとした。
その結果、実施例1の色素増感太陽電池は、Jsc=0.41mA/cm2、Voc=0.50V、FF=0.53、η=0.11%であった。実施例2の色素増感太陽電池は、Jsc=0.39mA/cm2、Voc=0.56V、FF=0.53、η=0.11%であった。一方、比較例の色素増感太陽電池は、Jsc=0.20mA/cm2、Voc=0.55V、FF=0.58、η=0.06%であった。
以上のことから、色素に配位高分子を用いることによって、単核錯体を色素に用いた場合よりも短絡電流密度(Jsc)が増大し、その結果変換効率ηも約2倍になることがわかる。
また、図2~4は実施例1~7の色素増感太陽電池における、電流密度ー電圧特性の測定結果である。

【0064】
(拡散反射スペクトルの測定)
拡散反射スペクトルは、実施例1、実施例2、比較例の色素増感太陽電池0.01molを80mgの酸化マグネシウム(MgO)に混合したものについて測定を行った。測定結果を図5に示す。
その結果、配位高分子を色素に用いた実施例1と実施例2の色素増感太陽電池は、単核錯体を色素に用いた比較例の色素増感太陽電池に比べ、600~800nmのいわゆる可視光域において高い吸収を示すことがわかる。なおこのことは、本発明の色素増感太陽電池の変換効率ηが高い理由の1つであると考えられる。

【0065】
(最高被占軌道:HOMOと最低空軌道:LUMOの測定)
図5に示す拡散反射スペクトルの結果から最低空軌道(LUMO)を、図6に示す光電子分光測定の結果から最高被占軌道(HOMO)を算出した。
その結果、実施例1の色素増感太陽電池はHOMOが-5.20eV、LUMOが-3.72eVであり、実施例2の色素増感太陽電池はHOMOが-5.10eV、LUMOが-3.62eVであり、比較例の色素増感太陽電池はHOMOが-4.95eV、LUMOが-3.50eVであった。
ここで、酸化チタンの伝導帯は-3.80eVであることから、実施例1、実施例2の色素増感太陽電池のLUMOレベルよりも低いエネルギー準位にあることがわかる。従って、実施例1、実施例2の色素増感太陽電池に太陽光が照射されて励起した電子はスムースに酸化チタンへと送られることがわかる。
また、実施例1、実施例2に使用した電解液(ヨウ化リチウム/ヨウ素溶液)の酸化還元電位は-4.80eVであることから、実施例1、実施例2の色素増感太陽電池のHOMOレベルよりも高いエネルギー準位にあることがわかる。従って、太陽光が照射されて励起した電子が酸化チタンに送られることによって欠損した配位高分子の空軌道に、電解液から電子がスムースに送られることがわかる。

【0066】
(インピーダンス特性の測定:Cole-Cole Plot)
6440B Series Precision Component Analyzer(Wayne Kerr Electronics社製)によって実施例1、実施例2、比較例のインピーダンス特性を測定し、図7に示すようにインピーダンスの実部及び虚部の測定値について、コールコールプロットを行った。ここで、コールコールプロットにおいては、グラフ内においてプロットされた半円の直径が色素-酸化チタン界面での抵抗に相当する。
従って、図7に示す通り、実施例1、実施例2の色素増感太陽電池は、比較例の色素増感太陽電池に比べて半円の半径が小さいことから、色素-酸化チタン界面における抵抗を減少させることができ、スムースな電子移動を行うことができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は色素増感太陽電池に用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 金属イオン
2 配位子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9