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明細書 :高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5239022号 (P5239022)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
発明の名称または考案の名称 高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法
国際特許分類 C22C  23/00        (2006.01)
C22C  23/06        (2006.01)
C22F   1/06        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI C22C 23/00
C22C 23/06
C22F 1/06
C22F 1/00 604
C22F 1/00 611
C22F 1/00 612
C22F 1/00 621
C22F 1/00 623
C22F 1/00 625
C22F 1/00 630A
C22F 1/00 630B
C22F 1/00 630C
C22F 1/00 630K
C22F 1/00 631Z
C22F 1/00 640A
C22F 1/00 650A
C22F 1/00 682
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 691C
C22F 1/00 694A
C22F 1/00 694B
請求項の数または発明の数 38
全頁数 33
出願番号 特願2008-507511 (P2008-507511)
出願日 平成19年3月20日(2007.3.20)
国際出願番号 PCT/JP2007/056522
国際公開番号 WO2007/111342
国際公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
優先権出願番号 2006077736
優先日 平成18年3月20日(2006.3.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年3月3日(2010.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】河村 能人
【氏名】山崎 倫昭
【氏名】糸井 貴臣
【氏名】広橋 光治
個別代理人の代理人 【識別番号】100110858、【弁理士】、【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】鈴木 毅
参考文献・文献 特開平06-316740(JP,A)
特開平05-306424(JP,A)
特開平03-047941(JP,A)
特開平04-072043(JP,A)
特開平06-081054(JP,A)
調査した分野 C22C 23/00 - 23/06
C22F 1/06
特許請求の範囲 【請求項1】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たす高強度高靭性マグネシウム合金であって、
前記高強度高靭性マグネシウム合金は長周期積層構造相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
【請求項2】
請求項1において、前記高強度高靭性マグネシウム合金はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項3】
請求項1又はにおいて、前記高強度高靭性マグネシウム合金は化合物相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記高強度高靭性マグネシウム合金はマグネシウム合金鋳造物であり、前記マグネシウム合金鋳造物には熱処理が施されていることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項5】
請求項において、前記高強度高靭性マグネシウム合金は、前記マグネシウム合金鋳造物の塑性加工を行った塑性加工物であることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項6】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作り、前記マグネシウム合金鋳造物を切削することによってチップ形状の鋳造物を作り、前記鋳造物を塑性加工により固化した塑性加工物は長周期積層構造相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
【請求項7】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作り、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物は長周期積層構造相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
【請求項8】
請求項又はにおいて、前記マグネシウム合金鋳造物には熱処理が施されていることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項9】
請求項乃至のいずれか一項において、前記塑性加工物には熱処理が施されていることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項10】
請求項乃至のいずれか一項において、前記塑性加工物はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項11】
請求項乃至10のいずれか一項において、前記塑性加工物は化合物相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項12】
請求項乃至11のいずれか一項において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW加工及びこれらの繰り返し加工のうち少なくとも一つを行うものであることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項13】
請求項乃至12のいずれか一項において、前記塑性加工は、少なくとも一回の相当歪量が0超5以下であることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項14】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たす組成を有する液体を形成し、前記液体を急冷して凝固させた粉末、薄帯又は細線からなり、前記粉末、薄帯又は細線は長周期積層構造相の結晶組織を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
【請求項15】
請求項14において、前記粉末、薄帯又は細線はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項16】
請求項14又は15において、前記粉末、薄帯又は細線は化合物相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれか一項において、前記粉末、薄帯又は細線にせん断が付加されるように固化されたことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項18】
請求項乃至17のいずれか一項において、前記長周期積層構造相がキンキングしていることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項19】
請求項乃至18のいずれか一項において、前記MgにZnをc原子%含有し、前記aとcは下記式(4)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(4)0.2<a+c≦15
【請求項20】
請求項19において、前記aとcはさらに下記式(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(5)c/a≦1/2
【請求項21】
請求項乃至20のいずれか一項において、前記MgにLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、前記bとdは下記式(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(6)0.2<b+d≦15
【請求項22】
請求項21において、前記bとdはさらに下記式(7)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
(7)d/b≦1/2
【請求項23】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程と、
前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行うことにより塑性加工物を作る工程と、
を具備することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
【請求項24】
請求項23において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金鋳造物を切削する工程をさらに具備することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金。
【請求項25】
請求項23又は24において、前記マグネシウム合金鋳造物は長周期積層構造相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項26】
請求項23乃至25のいずれか一項において、前記塑性加工物は長周期積層構造相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項27】
請求項25又は26において、前記塑性加工物はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項28】
請求項25乃至27のいずれか一項において、前記塑性加工物は化合物相を有することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項29】
請求項25乃至28のいずれか一項において、前記長周期積層構造相がキンキングしていることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項30】
請求項23乃至29のいずれか一項において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程の後に、前記マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す工程をさらに含むことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項31】
請求項23乃至30のいずれか一項において、前記塑性加工物を作る工程の後に、前記塑性加工物に熱処理を施す工程をさらに含むことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項32】
請求項23乃至31のいずれか一項において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW加工及びこれらの繰り返し加工のうち少なくとも一つを行うものであることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項33】
請求項23乃至32のいずれか一項において、前記塑性加工は、少なくとも一回の相当歪量が0超5以下であることを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項34】
請求項23乃至33のいずれか一項において、前記MgにZnをc原子%含有し、前記aとcは下記式(4)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(4)0.2<a+c≦15
【請求項35】
請求項34において、前記aとcはさらに下記式(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(5)c/a≦1/2
【請求項36】
請求項23乃至35のいずれか一項において、前記MgにLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、前記bとdは下記式(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(6)0.2<b+d≦15
【請求項37】
請求項36において、前記bとdはさらに下記式(7)を満たすことを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(7)d/b≦1/2
【請求項38】
Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たす組成を有する液体を形成し、
前記液体を急冷して凝固させることにより、長周期積層構造相の結晶組織を有する粉末、薄帯又は細線を形成し、
前記粉末、薄帯又は細線にせん断が付加されるように固化することを特徴とする高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法に関し、より詳細には特定の希土類元素を特定割合で含有することにより高強度高靭性を達成した高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は、そのリサイクル性とあいまって、携帯電話やノート型パソコンの筐体あるいは自動車用部品として急速に普及し始めている。
これらの用途に使用するためにはマグネシウム合金に高強度と高靭性が要求される。高強度高靭性マグネシウム合金の製造のために従来から材料面等から種々検討されている。
97原子%Mg-1原子%Zn-2原子%Yの組成を有するマグネシウム合金の鋳造材には長周期積層構造が生成され、この鋳造材に押出し加工を施すことにより室温において高強度及び高靭性が得られることが本発明者によって提案されている(例えば特許文献1)。

【特許文献1】WO2005/052203
【発明の開示】
【0003】
上述した従来の高強度及び高靭性のマグネシウム合金では、Znを含有することが必須の要件となっているが、本発明者らはZnを他の金属に置換したマグネシウム合金においても高強度及び高靭性が得られるものがあるか否かを検討した。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、マグネシウム合金の拡大した用途に対して強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすことを特徴とする。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすことである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は長周期積層構造相を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は化合物相を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金はマグネシウム合金鋳造物であり、前記マグネシウム合金鋳造物には熱処理が施されていることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記高強度高靭性マグネシウム合金は、前記マグネシウム合金鋳造物の塑性加工を行った塑性加工物であることも可能である。
本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作り、前記マグネシウム合金鋳造物を切削することによってチップ形状の鋳造物を作り、前記鋳造物を塑性加工により固化した塑性加工物は長周期積層構造相を有することを特徴とする。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作ることである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作り、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物は長周期積層構造相を有することを特徴とする。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作ることである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記マグネシウム合金鋳造物には熱処理が施されていることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記塑性加工物には熱処理が施されていることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記塑性加工物はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記塑性加工物は化合物相を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW加工及びこれらの繰り返し加工のうち少なくとも一つを行うものであることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記塑性加工は、少なくとも一回の相当歪量が0超5以下であることが好ましい。
本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たす組成を有する液体を形成し、前記液体を急冷して凝固させた粉末、薄帯又は細線からなることを特徴とする。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たす組成を有する液体を形成することである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記粉末、薄帯又は細線は長周期積層構造相の結晶組織を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記粉末、薄帯又は細線はαMg相を有し、前記αMg相がラメラ構造を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記粉末、薄帯又は細線は化合物相を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記粉末、薄帯又は細線にせん断が付加されるように固化されたことも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記長周期積層構造相がキンキングしていることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記MgにZnをc原子%含有し、前記aとcは下記式(4)を満たすことも可能である。より好ましくは、前記aとcが下記式(4’)を満たすことである。
(4)0.2<a+c≦15
(4’)0.2<a+c≦5
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記aとcはさらに下記式(5)を満たすことも可能である。
(5)c/a≦1/2
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記MgにLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、前記bとdは下記式(6)を満たすことも可能である。より好ましくは、前記bとdが下記式(6’)を満たすことである。
(6)0.2<b+d≦15
(6’)0.2<b+d≦5
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記bとdはさらに下記式(7)を満たすことも可能である。
(7)d/b≦1/2
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記MgにZr、Ti、Mn、Al、Ag、Sc、Sr、Ca、Si、Hf、Nb、B、C、Sn、Au、Ba、Ge、Bi、Ga、In、Ir、Li、Pd、Sb、V、Fe、Cr及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でe原子%含有し、eは下記式(8)を満たすことも可能である。
(8)0<e≦2.5
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金において、前記eとaとbとdはさらに下記式(9)を満たすことも可能である。
(9)e/(a+b+c+d)≦1/2
本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程と、
前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行うことにより塑性加工物を作る工程と、を具備することを特徴とする。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程を具備することである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金鋳造物を切削する工程をさらに具備することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程の後に、前記マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す工程をさらに含むことも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法において、前記塑性加工物を作る工程の後に、前記塑性加工物に熱処理を施す工程をさらに含むことも可能である。
本発明に係る高強度高靭性マグネシウム合金の製造方法は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)~(3)を満たす組成を有する液体を形成し、
前記液体を急冷して凝固させることにより粉末、薄帯又は細線を形成し、
前記粉末、薄帯又は細線にせん断が付加されるように固化することを特徴とする。
また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たす組成を有する液体を形成することである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
以上説明したように本発明によれば、マグネシウム合金の拡大した用途に対して強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1(A)はMg97Co合金の鋳造材のSEM写真であり、図1(B)はMg97Ni合金の鋳造材のSEM写真であり、(C)はMg97Cu合金の鋳造材のSEM写真である。
図2は、Mg97Cu合金の鋳造材の長周期積層構造相のTEM写真と[1120]からの電子線回折図形を示す図である。
図3は、実施例1及び比較例であるMg97(X=Fe、Co、Ni、Cu)合金の押出材の室温における引張試験結果を示す図である。
図4は、実施例1及び比較例であるMg97(X=Fe、Co、Ni、Cu)合金の押出材の473Kにおける引張試験結果を示す図である。
図5は、ガス・アトマイジング法による急速凝固粉末作製と押出ビレットの作製を行うシステムを示す図である。
図6は、ビレットを加熱押圧して、固化成形する過程を示す図である。
図7は、実施例2のMg85Cu合金の鋳造材のSEM写真である。
図8は、実施例2のMg85Ni合金の鋳造材のSEM写真である。
図9は、実施例2のMg85Co合金の鋳造材のSEM写真である。
図10は、実施例2のMg85Cu合金の鋳造材の長周期積層構造相のTEM写真である。
図11は、実施例2のMg85Cu合金の鋳造材に生成する18R型の長周期積層構造相のディフラクションパターンを示す図である。
図12は、実施例2のMg85Cu合金の鋳造材に生成する10H型の長周期積層構造相のディフラクションパターンを示す図である。
図13は、実施例3のMg91Cu合金熱処理材のTEM写真および電子回折パターンである。
【符号の説明】
【0005】
100…高圧ガス・アトマイザ
110…溶解室
112…ストッパ
114…誘導コイル
116…るつぼ
130…アトマイズ室
131…ヒータ
132…ノズル
140…サイクロン分級機
150…フィルタ
162,166…酸素分析器
164…真空ゲージ
200…真空グローブ・ボックス
210…アルゴンガス・リファイナ
220…ホッパ
230…ふるい
240…真空ホットプレス機
242…真空室
244…パンチ
246…型
248…ヒータ
252…キャップ
254…缶
256…溶接機
258…回転盤
260…ビレット
262…バルブ
270…酸化ボックス
280…エントランス・ボックス
292…真空ゲージ
294…湿度計
296…酸素分析器
340…スポット溶接機
400…押出プレス機
410…ヒータ
420…コンテナ
430…型(ダイ)
450…メイン・ステム
460…ダイ・バッカー
470…バック・ステム
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明者は、Mg-Zn-RE(希土類元素)合金のZnを他の金属に置換して強度及び靭性を検討した。その結果、Zn以外の金属に置換しても強度及び靭性とも高いレベルで有するマグネシウム合金が得られることを見出した。そのマグネシウム合金はMg-(置換金属)-RE(希土類元素)系であり、置換金属がCu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属であり、希土類元素がY、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素であるマグネシウム合金であり、更に置換金属の含有量が5原子%以下で希土類元素の含有量が5原子%以下という低含有量において従来にない高強度及び高靭性が得られることを見出した。
長周期積層構造相を有する金属を塑性加工することによって長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることができる。それにより高強度・高延性・高靭性の金属が得られることを見出した。
長周期積層構造相が形成される鋳造合金は、塑性加工後あるいは塑性加工後に熱処理を施すことによって、高強度・高延性・高靭性のマグネシウム合金が得られることが分かった。また、長周期積層構造が形成されて、塑性加工後あるいは塑性加工熱処理後に高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
また、鋳造した直後の状態では長周期積層構造相が形成されていない合金であっても、その合金に熱処理を施すことによって長周期積層構造相が形成されることを見出した。この合金を塑性加工又は塑性加工後に熱処理することによって高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
また、長周期積層構造が形成される鋳造合金を切削することによってチップ形状の鋳造物を作り、この鋳造物に塑性加工を行い、あるいは塑性加工後に熱処理を施すことによって、チップ形状に切削する工程を行わない場合に比べて、より高強度・高延性・高靭性のマグネシウム合金が得られることが分かった。また、長周期積層構造が形成されて、チップ形状に切削し、塑性加工後あるいは塑性加工熱処理後に高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるマグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属と、希土類元素を含む3元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は前記1種の金属の含有量を合計でa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とすると、aとbは下記式(1)~(3)を満たすものとなる。また、より好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすことである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
前記1種の金属の含有量が合計で10原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また希土類元素の含有量が合計で10原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また前記1種の金属の含有量が合計で0.2原子%未満、又は希土類元素の含有量が合計で0.2原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、前記1種の金属の合計含有量の下限を0.2原子%とし、希土類元素の合計含有量の下限を0.2原子%とする。
本実施の形態のマグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有する前記1種の金属と希土類元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2によるマグネシウム合金は、実施の形態1の組成にZnを含有するものである。
すなわち、本実施の形態によるマグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属と、Znと、希土類元素を含む4元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は前記1種の金属の含有量を合計でa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、Znの含有量をc原子%とすると、a、b、cは下記式(1)~(3)を満たすものとなる。また好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすことである。
(1)0.2≦a+c≦15
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2<a+c≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
また、より好ましくは、下記式(1)~(4)を満たすものとなり、さらに好ましくは、下記式(1’)~(4’)を満たすものとなる。
(1)0.2≦a+c≦15
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a-2/3<b
(4)c/a≦1/2
(1’)0.2<a+c≦5
(2’)0.2≦b≦5
(3’)2/3a-1/6<b
(4’)c/a≦1/2
前記1種の金属とZnの合計含有量が15原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また希土類元素の含有量が合計で10原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また前記1種の金属とZnの合計含有量が0.2原子%未満、又は希土類元素の含有量が合計で0.2原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、前記1種の金属とZnの合計含有量の下限を0.2原子%とし、希土類元素の合計含有量の下限を0.2原子%とする。
本実施の形態のマグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有する前記1種の金属と希土類元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3によるマグネシウム合金は、実施の形態1の組成にLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される1又は2以上の元素を含有するマグネシウム合金である。
すなわち、本実施の形態によるマグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属と、第1の希土類元素と、第2の希土類元素を含む4元以上の合金であり、第1の希土類元素は、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第2の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は前記1種の金属の含有量を合計でa原子%とし、1又は2以上の第1の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、1又は2以上の第2の希土類元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、dは下記式(1)~(3)を満たすものとなる。より好ましくは、a、b、dが下記式(1’)~(3’)を満たすことである。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2<b+d≦15
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2≦a≦5
(2’)0.2<b+d≦5
(3’)0.2<b+d≦5
第1の希土類元素と第2の希土類元素の含有量が合計で15原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また、第2の希土類元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、第1の希土類元素と第2の希土類元素の合計含有量が0.2原子%以下であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、第1の希土類元素と第2の希土類元素の合計含有量の下限を0.2原子%とする。
また、前記1種の金属の含有量を上記のようにした理由は実施の形態1と同様である。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4によるマグネシウム合金は、実施の形態2の組成にLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される1又は2以上の元素を含有するマグネシウム合金である。
すなわち、本実施の形態によるマグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属と、Znと、第1の希土類元素と、第2の希土類元素を含む5元以上の合金であり、第1の希土類元素は、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第2の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb及びLuからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は前記1種の金属の含有量を合計でa原子%とし、1又は2以上の第1の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、Znの含有量をc原子%とすし、1又は2以上の第2の希土類元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、c、dは下記式(1)~(3)を満たすものとなる。また好ましくは、aとbが下記式(1’)~(3’)を満たすことである。
(1)0.2<a+c≦15
(2)0.2<b+d≦15
(3)2/3a-2/3<b
(1’)0.2<a+c≦5
(2’)0.2<b+d≦5
(3’)2/3a-2/3<b
また、より好ましくは、下記式(1)~(4)を満たすものとなり、さらに好ましくは、下記式(1’)~(4’)を満たすものとなる。
(1)0.2<a+c≦15
(2)0.2<b+d≦15
(3)2/3a-2/3<b
(4)c/a≦1/2
(1’)0.2<a+c≦5
(2’)0.2<b+d≦5
(3’)2/3a-2/3<b
(4)c/a≦1/2
第1の希土類元素と第2の希土類元素の含有量が合計で15原子%超であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また、第2の希土類元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また第1の希土類元素と第2の希土類元素の含有量が合計で0.2原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、第1の希土類元素と第2の希土類元素の合計含有量の下限を0.2原子%とする。
また、前記1種の金属とZnの合計含有量を上記の範囲とした理由は実施の形態2と同様である。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5によるマグネシウム合金としては、実施の形態1~4のいずれかの組成にMeを加えたマグネシウム合金が挙げられる。但し、MeはZr、Ti、Mn、Al、Ag、Sc、Sr、Ca、Si、Hf、Nb、B、C、Sn、Au、Ba、Ge、Bi、Ga、In、Ir、Li、Pd、Sb、V、Fe、Cr及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。このMeの含有量を合計でe原子%とすると、eは下記式(5)を満たすものとなる。より好ましくは、eと前記aと前記bと前記dはさらに下記式(6)を満たすものとなる。
(5)0<e≦2.5
(6)e/(a+b+c+d)≦1/2
Meを添加すると、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
尚、上記実施の形態1~5それぞれのマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用することも可能である。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
実施の形態1~5のいずれかの組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は0.05K/秒以上1000(10)K/秒以下であり、より好ましくは0.5K/秒以上1000(10)K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が200℃~550℃、処理時間が1分~3600分(又は60時間)とすることが好ましい。
前記マグネシウム合金鋳造物は長周期積層構造相の結晶組織を有する。また、マグネシウム合金鋳造物はαMg相を有し、このαMg相がラメラ構造を有する。また、長周期積層構造相はキンキングしている。ここでいうキンキングとは、強加工された長周期構造相が特に方位関係を持たず、相内で折れ曲がり(bent)を生じ、長周期構造相が微細化される事である。
また、前記マグネシウム合金鋳造物は長周期積層構造相とαMg相以外にその他の化合物相が含まれていることがある。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW加工などを用いる。尚、前記塑性加工は、少なくとも一回の相当歪量が0超5以下であることが好ましい。ここで、多軸応力状態にある応力成分を、それに相当する単軸応力に換算した応力のことを相当応力といいい、相当歪量とはこの相当応力をうけたときの歪み量である。
押出しによる塑性加工を行う場合は、押出し温度を200℃以上500℃以下とし、押出しによる断面減少率を5%以上とすることが好ましい。
ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90°ずつ回転させる方法である。具体的には、断面形状がL字状の成形孔を形成した成形用ダイの前記成形孔に、成形用材料であるマグネシウム合金鋳造物を強制的に進入させて、特にL状成形孔の90°に曲げられた部分で前記マグネシウム合金鋳造物に応力を加えて強度及び靭性が優れた成形体を得る方法である。ECAEのパス回数としては1~8パスが好ましい。より好ましくは3~5パスである。ECAEの加工時の温度は200℃以上500℃以下が好ましい。
圧延による塑性加工を行う場合は、圧延温度を200℃以上500℃以下とし、圧下率を5%以上とすることが好ましい。
引抜加工による塑性加工を行う場合は、引抜加工を行う際の温度が200℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることが好ましい。
鍛造による塑性加工を行う場合は、鍛造加工を行う際の温度が200℃以上500℃以下、前記鍛造加工の加工率が5%以上であることが好ましい。
上記のようにマグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った塑性加工物は、常温において長周期積層構造の結晶組織を有する。また、塑性加工物はαMg相を有し、このαMg相がラメラ構造を有する。また、長周期積層構造相はキンキングしている。前記長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。また、前記塑性加工物は、長周期積層構造相とαMg相以外にその他の化合物相が含まれていることがある。例えば、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、Mgと前記1種の金属の化合物、前記1種の金属と希土類元素の化合物及びMgと前記1種の金属と希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。また、前記塑性加工物はhcp-Mgを有する。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物に熱処理を施しても良い。この熱処理条件は、温度が200℃~550℃、熱処理時間が1分~3600分(又は60時間)とすることが好ましい。この熱処理を行った後の塑性加工物については、熱処理を行う前の塑性加工物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。また、熱処理後の塑性加工物にも熱処理前と同様に、常温において長周期積層構造の結晶組織を有し、αMg相を有し、このαMg相がラメラ構造を有する。また、長周期積層構造相はキンキングしている。前記長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、Mgと前記一の金属の化合物、前記一の金属と希土類元素の化合物及びMgと前記一の金属と希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。また、前記塑性加工物はhcp-Mgを有する。
上記実施の形態1~6によれば、マグネシウム合金の拡大した用途、例えば強度及び靭性共に高性能が要求されるハイテク用合金としての用途に対して、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法を提供することができる。
また、実施の形態1~4の組成に0原子%超2.5原子%以下のZrを添加したマグネシウム合金を溶解して鋳造した場合、このマグネシウム合金鋳造物には化合物の析出が抑制され、長周期積層構造相の形成が促進され、結晶組織が微細化される。従って、このマグネシウム合金鋳造物は押出しなどの塑性加工が容易になり、塑性加工を行った塑性加工物はZrを添加しないマグネシウム合金の塑性加工物に比べて多量の長周期積層構造相を有すると共に微細化された結晶組織を有することになる。このように多量の長周期積層構造相を有することにより、強度及び靭性を向上させることができる。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
実施の形態6と同様の方法で、実施の形態1~5のいずれかの組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。次いで、マグネシウム合金鋳造物に均質化熱処理を施しても良い。
次いで、このマグネシウム合金鋳造物を切削することによって複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物を作製する。
次いで、チップ形状鋳造物を圧縮又は塑性加工法的手段を用いて予備成形し、熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が200℃~550℃、処理時間が1分~3600分(又は60時間)とすることが好ましい。
チップ形状の鋳造物は例えばチクソーモールドの原料に一般的に用いられている。
尚、チップ形状鋳造物とセラミック粒子とを混合したものを圧縮又は塑性加工法的手段を用いて予備成形し、熱処理を施しても良い。また、チップ形状鋳造物を予備成形する前に、付加的に強歪加工を施しても良い。
次に、前記チップ形状鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、実施の形態6の場合と同様に種々の方法を用いることができる。
このように塑性加工を行った塑性加工物は、実施の形態6と同様に、常温において長周期積層構造の結晶組織を有する。この長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
前記チップ形状鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物に熱処理を施しても良い。この熱処理条件は、温度が200℃~550℃、熱処理時間が1分~3600分(又は60時間)とすることが好ましい。この熱処理を行った後の塑性加工物については、熱処理を行う前の塑性加工物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。また、熱処理後の塑性加工物にも熱処理前と同様に、常温において長周期積層構造の結晶組織を有する。この長周期積層構造相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲している。
上記実施の形態7では、鋳造物を切削することによってチップ形状鋳造物を作製することにより、組織が微細化するので、実施の形態6に比べてよりより高強度・高延性・高靭性の塑性加工物などを作製することが可能となる。また、本実施の形態によるマグネシウム合金は実施の形態6によるマグネシウム合金に比べて亜鉛及び希土類元素がより低濃度であっても高強度及び高靭性の特性を得ることができる。
上記実施の形態7によれば、マグネシウム合金の拡大した用途、例えば強度及び靭性共に高性能が要求されるハイテク用合金としての用途に対して、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性マグネシウム合金及びその製造方法を提供することができる。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
急速凝固粉末の作製とその固化成形には、クローズドP/Mプロセッシング・システムを使用する。作製に使用するシステムを図5及び図6に示す。図5は、ガス・アトマイズ法による急速凝固粉末の作製と、作製された粉末から、ビレットを押出成形してビレットを作製する工程を示している。図6は、作製したビレットを押出成形するまでを示している。図5及び図6を用いて、急速凝固粉末の作製と固化成形について、詳しく説明する。
図5において、高圧ガス・アトマイザ100を用いて目的とする成分比のマグネシウム合金の粉末を作製する。これは、まず、溶解室110中のるつぼ116中で、目的の成分比を有する合金を誘導コイル114により溶解する。この際に用いる合金の材料は、実施の形態1~5のいずれかの組成のマグネシウム合金である。
前記の溶解した合金を、ストッパ112を上げて噴出させ、それにノズル132から高圧の不活性ガス(例えば、ヘリウムガスやアルゴンガス)を吹きつけて噴霧することで、合金の粉末を作製する。この際の冷却速度は1000(10)K/秒以上10000000(10)K/秒以下であり、より好ましくは10000(10)K/秒以上10000000(10)K/秒以下である。ノズル等はヒータ131で加熱されている。また、アトマイズ室130は、酸素分析器162や真空ゲージ164で監視されている。
作成したマグネシウム合金の粉末は長周期積層構造相の結晶組織を有する。また、前記粉末はαMg相を有し、このαMg相がラメラ構造を有する。また、長周期積層構造相はキンキングしている。また、前記粉末は長周期積層構造相とαMg相以外にその他の化合物相が含まれていることがある。
作製した合金粉末は、サイクロン分級機140を介して、真空グローブ・ボックス200中のホッパ220中に収集される。以後の処理は、この真空グローブ・ボックス200の中で行われる。次に、真空グローブ・ボックス200中で徐々に細かいふるい230にかけることにより、目的とする細かさの粉末を得る。本発明では、粒径32μm以下の粉末を得ている。尚、粉末に代えて薄帯又は細線を得ることも可能である。
この合金の粉末から、ビレットを作製するために、まず、予備圧縮を真空ホットプレス機240を用いて行う。この場合の真空ホットプレス機は、30トンのプレスを行うことができるものを用いた。
まず、合金粉末をホットプレス機240を用いて銅の缶254に充填し、上からキャップ252をかぶせる。キャップ252と缶254とを、回転盤258で回転しながら、溶接機256で溶接してビレット260を作製する。このビレット260の漏れチェックのため、バルブ262を介して真空ポンプに接続することで、ビレット260の漏れをチェックする。漏れが無かった場合、バルブ262を閉じて、バルブ262を付けたまま容器ごと、真空グローブ・ボックス200のエントランス・ボックス280から合金のビレット260を取り出す。
取り出したビレット260は、図6に示すように、加熱炉に入れて予備加熱を行いながら、真空ポンプに接続してガス抜きを行う(図6(a)参照)。次にビレット260のキャップを圧搾してから、スポット溶接機340でスポット溶接して、ビレット260と外部との接続を遮断する(図6(b)参照)。そして、容器ごと、合金のビレットを押出プレス機400にかけて、最終形状に成形する(図6(c)参照)。押出プレス機は、メイン・プレス(メイン・ステム450側)は100トン、バック・プレス(バック・ステム470側)は20トンの性能を有し、ヒータ410でコンテナ420を加熱することで、押出温度を設定することができる。
本実施の形態の急速凝固粉末は、上述のように、高圧Heガスアトマイズ法により作製する。そして、作製した粒径32μm以下の粉末を銅製の缶に充填し、それを真空封入することでビレットを作製し、押出温度623~723K、押出し比10:1の押出成形により固化成形を行った。この押出成形により、粉末に圧力とせん断が加わり、緻密化と粉末間の結合が達成される。なお、圧延法や鍛造法による成形でもせん断が生じる。
前記固化成形によって得られたマグネシウム合金は長周期積層構造相の結晶組織を有する。また、前記粉末はαMg相を有し、このαMg相がラメラ構造を有する。また、長周期積層構造相はキンキングしている。また、前記粉末は長周期積層構造相とαMg相以外にその他の化合物相が含まれていることがある。
上記実施の形態8によれば、高強度高靭性のマグネシウム合金を提供することができる。このマグネシウム合金は、平均結晶粒径が1μm以下の微細な結晶組織を有する。
【実施例】
【0007】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
まず、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解によって、実施例1としてMg97Co合金、Mg97Ni合金、Mg97Cu合金、比較例としてMg97Fe合金それぞれのインゴット(鋳造材)作製し、これらのインゴットからφ29×65mmの形状に切り出した押出ビレットを準備する。
次いで、押出ビレットに押出加工を行う。押出加工は、623K、20分間の予備加熱を行った後、押出比10、押出温度623K、押出速度2.5mm/秒で行った。
(鋳造材の組織観察)
鋳造材の組織観察をSEM、TEMによって行った。これらの結晶組織の写真を図1(A)~(C)及び図2に示す。図1(A)は、Mg97Co合金の鋳造材のSEM写真であり、図1(B)は、Mg97Ni合金の鋳造材のSEM写真であり、図1(C)は、Mg97Cu合金の鋳造材のSEM写真である。図2は、Mg97Cu合金の鋳造材の長周期積層構造相のTEM写真と[1120]からの電子線回折図形を示す図である。
比較例のMg97Fe合金の鋳造材には長周期積層構造相が観察されなかった。これに対し、図1(A)に示すように実施例1のMg97Co合金の鋳造材には化合物相の他に長周期積層構造相の形成を示すラメラ組織が観察された。また、図1(B)、(C)に示すように、Mg97Ni合金及びMg97Cu合金それぞれの鋳造材には長周期積層構造相の形成を示すラメラ組織が顕著に観察され、Mg97Cu合金において最も高い体積分率で長周期積層構造相が観察された。
図2に示す電子線回折図形からMg97Cu合金で観察される長周期積層構造相はMg-Zn-Y系合金と同じ18Rタイプであることが確認された。
(ビッカース硬度試験)
Mg97Cu合金の押出材のビッカース硬度は87HV0.5であった。また、Mg97Ni合金の押出材のビッカース硬度は90.1HV0.5であった。また、Mg97Co合金の押出材のビッカース硬度は81HV0.5であった。また、Mg97Fe合金の押出材のビッカース硬度は77.6HV0.5であった。
図3は、実施例1及び比較例であるMg97(X=Fe、Co、Ni、Cu)合金の押出材の室温における引張試験結果を示す図である。また、実施例1の押出材の室温における引張試験結果(YS:降伏強度、UTS:引張強さ、伸び(%))、硬さHvを表1に示す。
【表1】
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図3及び表1に示すように、長周期積層構造相を形成しないMg97Fe合金は比較的に低い強度しか有していない。一方、長周期積層構造相を形成するMg97Co合金、Mg97Ni合金及びMg97Cu合金は、降伏強度(YS)がそれぞれ315MPa、293MPa、276MPaと高い強度を有している。長周期積層構造相の形成量が多いMg97Ni合金及びMg97Cu合金は12%以上と良好な延性を有しているが、Mg97Co合金は化合物が存在するために比較的低い延性しか有していない。
図4は、実施例1及び比較例であるMg97(X=Fe、Co、Ni、Cu)合金の押出材の473Kにおける引張試験結果を示す図である。また、実施例1の押出材の473Kにおける引張試験結果(YS:降伏強度、UTS:引張強さ、伸び(%))を表2に示す。
【表2】
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表2に示すように、Mg97Co合金は、降伏強度269MPaと高い高温強度を有しているが、室温強度に比べるとその高温強度はやや低い。一方、Mg97Ni合金及びMg97Cu合金は、室温強度と高温強度の差が比較的少なく、高温域においても高い強度を維持している。これらのことから、長周期積層構造相が高温域での機械的性質の向上、即ち高強度・高延性化に大きく寄与することが確認された。
(実施例2)
まず、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解によって、実施例2としてMg85Cu合金、Mg85Ni合金、Mg85Co合金それぞれの鋳造材を作製する。
次いで、前記鋳造材に熱間圧延を行う。熱間圧延は、200℃、30分間の予備加熱を行った後、圧延率50~70%、圧延温度250~400℃で行った。
(鋳造材の組織観察)
鋳造材の組織観察をSEM、TEMによって行った。これらの結晶組織の写真を図7~図12に示す。図7は、Mg85Cu合金の鋳造材のSEM写真である。図8は、Mg85Ni合金の鋳造材のSEM写真である。図9は、Mg85Co合金の鋳造材のSEM写真である。図10は、Mg85Cu合金の鋳造材の長周期積層構造相のTEM写真である。図11は、Mg85Cu合金の鋳造材に生成する18R型の長周期積層構造相のディフラクションパターンを示す図である。図12は、Mg85Cu合金の鋳造材に生成する10H型の長周期積層構造相のディフラクションパターンを示す図である。
図7~図9に示すように実施例2のMg85Cu合金、Mg85Ni合金、Mg85Co合金それぞれの鋳造材には10~30μm程度の板状の組織が観察された。この板状組織が10Hもしくは18R型の長周期積層構造相である。図7~図9中の縮尺バーは100μmを示している。
図10及び図11に示すTEM写真及び電子線回折図形からは、Mg85Cu合金において18R型の長周期積層構造相が確認された。また、図12に示す電子線回折図形からは、Mg85Cu合金において10H型の長周期積層構造相が確認された。
また、Mg85Ni合金、Mg85Co合金それぞれの鋳造材においても18R型と10H型の2種類の長周期積層構造相が確認されている。
(ビッカース硬度試験)
鋳造材及び熱間圧延材それぞれのビッカース硬度試験を行った。
Mg85Cu合金の鋳造材のビッカース硬度は108HV0.5であり、Mg85Cu合金の熱間圧延材のビッカース硬度は150HV0.5であった。また、Mg85Ni合金の鋳造材のビッカース硬度は110HV0.5であり、Mg85Ni合金の熱間圧延材のビッカース硬度は147HV0.5であった。また、Mg85Co合金の鋳造材のビッカース硬度は105HV0.5であり、Mg85Co合金の熱間圧延材のビッカース硬度は138HV0.5であった。
上記のように、実施例2の鋳造材及び熱間圧延材が高い硬度を有しているため、実施例2のマグネシウム合金においても高強度を有するものと考えられる。
(実施例3)
〈試料の作製〉
(鋳造材の作製)
電気炉を用い、COガスを鉄製るつぼに流入させながらMg合金を溶解し、鉄製の鋳型に注湯して鋳造材試料作製を行った。詳細には、各種材料の秤量を行い、秤量後にまずMgを鉄製のるつぼに入れ溶解する。Mgが溶解した後に、添加元素を入れ、1123Kまで加熱し10分保持する。その後、鉄の棒で撹拌して鋳型に注湯する作業を行った。
(急冷材の作製)
電気炉を用い、COガスを鉄製るつぼに流入させながらMg合金を溶解し、銅製の鋳型に注湯して急冷材試料作製を行った。詳細には、鋳造材を鉄製るつぼに入れ、Mg97(X=Cu,Ni)合金は1123Kまで、Mg94(X=Cu,Ni)合金は1098Kまで、Mg100-A-B(X=Cu,Ni、A=3~3.5、B=6~7)合金は1073Kまで加熱し10分間保持する。その後水冷式の銅鋳型に注湯し急冷する作業を行った。
(圧延材の作製)
Mg91(X=Cu,Ni)合金急冷材について623Kにて、圧下率70%まで、熱間圧延を行い圧延材試料作製を行った。圧延ロールをガスバーナーで熱しながら8.6rpmで回転させ、電気炉にて623Kに保持したMg91(X=Cu,Ni)合金急冷材を圧延した。
(引張試験片の作製)
放電ワイヤー加工機(三菱電機(株)製FA20)を用いて、JIS規格に基づき14B号の板状試験片を作製した。引張試験片の寸法は標点間距離9.45mm、平行部長さ12.8mm、肩部半径15.0mmとした。加工後は耐水研磨紙およびバフ研磨器によって研磨した。
(熱処理材の作製)
作製したMg91(X=Cu,Ni)合金圧延材の引張試験片についてひずみとり焼きなましを行った。圧延材を電気炉を用い大気中において673Kにて6h保持した後すぐに水に浸して急冷した。
(Mg100-A-BCu(A=1~3.5、B=2~7)合金急冷材の機械的特性)
Mg100-A-BCu(A=1~3.5、B=2~7)合金急冷材について室温にて引張試験を行った。Mg97Cu合金急冷材は、室温にて耐力(以下、σ0.2と略)=121MPa、引張強さ(以下、σと略)=215MPa、伸び(以下、δと略)=14%を示した。また、Mg94Cu合金急冷材はσ0.2=191MPa、σ=257MPa、δ=8%となり、Mg97Cu合金に比べて伸びは小さくなるものの強度が上昇していることがわかる。さらに、Mg91Cu合金急冷材ではσ0.2=257MPa、σ=312MPa、δ=6%、Mg90.5Cu3.256.25合金急冷材ではσ0.2=277MPa、σ=328MPa、δ=5%となり、いずれも添加元素量の増加とともに伸びは小さくなるものの強度が上昇する傾向であった。しかし、Mg89.5Cu3.5合金急冷材ではδ=1%となり、弾性域で脆性的に破断したために強度もσ=221MPaと減少した。以上の結果から、CuおよびYの添加元素量が増加すると長周期相が増加し、強度は増加していくが、Mg89.5Cu3.5合金まで添加元素量を増やすと脆性的に破断することがわかった。したがって、長周期相に適切な量のMg相を分散させて複相化させることによって延性を向上させることができることがわかった。
(Mg91Cu合金の圧延加工と機械的特性)
急冷材の引張試験の結果においてMg91Cu合金は降伏強度が257MPa、伸びが6%と高い強度と適度な延性を持つ合金であることから、Mg91Cu合金急冷材とその圧延材、さらに圧延後の熱処理材について室温から623Kにおいて引張試験を行い、圧延による機械的特性を調べた。
(Mg91Cu合金急冷材の機械的特性)
Mg91Cu合金急冷材は、室温にて耐力(以下、σ0.2と略)=257MPa、引張強さ(以下、σと略)=312MPa、伸び(以下、δと略)=6%を示した。また、523Kではσ0.2=203MPa、σ=250MPa、δ=7%、573Kではσ0.2=152MPa、σ=192MPa、δ=11%、さらに、598Kではσ0.2=109MPa、σ=125MPa、δ=34%、623Kではσ0.2=61MPa、σ=74MPa、δ=100%を示した。これより、高温になるにつれて強度が低下し伸びが増加する傾向が見られた。また、523Kという高温域においても降伏強度が150MPa以上という高い値を維持しており、Mg91Cu合金急冷材は高温においても高強度を有する合金であることがわかった。
(Mg91Cu合金の硬さ)
Mg91Cu合金圧延材の硬さは119HV0.5であり、Mg91Cu合金急冷材の100HV0.5に比べて硬さが上昇していた。またMg91Cu合金熱処理材についても硬さ試験を行ったところ、硬さは108HV0.5であり、熱処理によって硬さが減少した事から、Mgおよび長周期相のひずみが緩和したと考えられる。
(Mg91Cu合金熱処理材の機械的特性)
圧延加工のままでは材料内にひずみが蓄積され、ほぼ弾性域で破断する事がわかっている。そのため、Mg91Cu合金圧延材について673Kで6hのひずみとり焼きなましを行ったMg91Cu合金熱処理材について引張試験により機械的特性を調べた。Mg91Cu合金熱処理材は、室温にて耐力(以下、σ0.2と略)=412MPa、引張強さ(以下、σと略)=477MPa、伸び(以下、δと略)=6%を示した。また、523Kではσ0.2=254MPa、σ=284MPa、δ=24%、573Kではσ0.2=199MPa、σ=223MPa、δ=46%、598Kではσ0.2=105MPa、σ=134MPa、δ=69%、さらに623Kではσ0.2=66MPa、σ=81MPaを示し、δ=63%においても破断しなかった。これより、急冷材の場合と同様に高温になるにつれて強度が低下し伸びが増加する傾向が観察された。熱処理材では室温において降伏強度が400MPa以上という非常に高いσ0.2を示した。また、高温域では急冷材よりも強度は高く、伸びが大きくなっている。これは圧延加工によって急冷材において存在していたと考えられる試料内の鋳造欠陥(空洞)等の材料欠陥が潰された事によるものと考えられる。そして特に強度面においては、長周期相の底面(0018)が圧延板面と平行に集合組織を形成したためだと考えられる。六方晶の場合、変形させる際の外力の方向が底面に対して平行または垂直であった場合、底面に働くせん断力が0になるため、すべり変形が生じず、塑性変形をしないが降伏強度が向上する。したがって、Mg91Cu合金に熱間圧延加工を施すことにより大きく強度が向上し、適度な延性も兼ね備えたMg合金を作製できた。
(Mg90.5Cu3.256.25合金の圧延加工と機械的特性)
Mg91Cu合金について、圧延加工を行い引張試験を行ったところ、室温にて降伏強度が400MPaを超える高い強度を示し、伸びも6%という非常に優れた特性を持つことがわかった。さらなる高強度の合金を創製するには、Mg91Cu合金よりも強度が高く伸びも4.6%と、ある程度の延性を持っているMg90.5Cu3.256.25合金に圧延加工を施すことが考えられる。そこで、Mg90.5Cu3.256.25合金急冷材を作製し、圧延加工を施した試料について引張試験を行って機械的特性を調べた。
(Mg90.5Cu3.256.25合金熱処理材の機械的特性)
作製したMg90.5Cu3.256.25合金熱処理材について室温から623Kにて引張試験を行い、機械的特性を調べた。表3に結果を示す。室温において耐力(以下、σ0.2と略)=448MPa、引張強さ(以下、σと略)=512MPa、伸び(以下、δと略)=6%を示した。また、523Kではσ0.2=342MPa、σ=375MPa、δ=25%、573Kではσ0.2=228MPa、σ=245MPa、δ=44%、598Kではσ0.2=177MPa、σ=189MPa、δ=47%、さらに623Kではσ0.2=54MPa、σ=61MPa、δ=143%となった。この値はMg91Cu合金熱処理材と比べて強度が大きく、延性は同程度かやや下回る値であった。これは長周期相の面積率の増加と、圧延による加工率の増加に起因するものと考えられる。
また、Mg91Cu合金熱処理材と同様に高温になるにつれて強度が低下し伸びが増加する傾向が観察された。熱処理材では室温においてσ0.2が448MPaという値を示し、σが500MPaを超える事から、Mg90.5Cu3.256.25合金熱処理材はMg91Cu合金熱処理材を超える非常に高い強度を持ちながら適度な延性を兼ね備えた材料であるといえる。
図13にMg91Cu合金熱処理材のTEM写真および電子回折パターンを示す。図13によると組織はMg粒と長周期相の2相状態である。また長周期に組織的なベント(曲げ)が生じていることが分かり、これも高強度化に寄与していると考えられる。図13の組織はMg91Cu合金熱処理材のものであるがMg90.5Cu3.256.25合金熱処理材でも同様であると考えられる。
【表3】
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表3に本実施例において作製した合金の機械的特性を示す。室温においてはMg90.5Cu3.256.25合金熱処理材、Mg90.5Ni3.256.25合金熱処理材は比強度においてA7075-T6(A7075:Al-1.2%Cu-6%Zn-2%Mg-0.25%Cr-0.25%Mn,T6:溶体化処理後、人工時効効果処理した状態)を超え、Ti-6Al-4Vに僅かに至らないが、非常に高いことが分かる。またMg90.5Zn3.256.25合金熱処理材の比強度も商用化されている既存のマグネシウム合金を上回っている。523Kでの比強度についてはMg90.5Cu3.256.25合金熱処理材、Mg90.5Zn3.256.25合金熱処理材、Mg90.5Ni3.256.25合金熱処理材のいずれの合金も耐熱マグネシウム合金WE54A-T6(WE54A:Mg-5%Y-4%RE,T6:溶体化処理後、人工時効効果処理した状態)、耐熱アルミニウム合金A2219-T81(A2219:Al-6%Cu-0.3%Mn-0.5%Zr,T81:溶体化後1%の冷間圧延を施し、人工時効効果処理した状態)の強度を上回っており、さらに598Kにおいても耐力が100MPa以上であり高強度を保っている。623KにおいてMg90.5Ni3.256.25合金熱処理材は耐力が100MPa以上の高強度を維持しており、Mg90.5Cu3.256.25合金熱処理材は143%の高い延性を示した。
以上の結果から、本実施例で作製したMg-TM(TM=遷移金属)-Y合金は室温~高温度域まで高い比強度を有するMg合金であると言える。
上記実施例3の合金”板材”の高強度の理由は、熱間圧延によって、Mgおよび長周期相の(001)および(0018)面が板面に平行に配向(集合組織化)するために、引張方向に対して変形しにくくなるためと考えられる。配向していない急冷まま材の引張試験結果も引張強度が300MPa以上と高強度を示している。これは長周期そのものが、やはり強度が高いことを示した結果である。銅鋳型を使った急冷効果も幾分高強度化に寄与している。これに加えて熱間で圧延する事により集合組織化し、さらに強くなると考えられる。高温でも強い理由は、長周期相そのものが高温に強いことと、400℃で6時間熱処理をしても、集合組織が残っているために室温と同じ様に高強度化が達成されるためである。圧延後の熱処理は非常に重要で、この熱処理をしないと室温での延びが向上しない。室温での延びは熱処理する事によりMgが回復・再結晶化して生じる現象である。Mgは回復するが、長周期相そのものは上記のように400℃での熱処理後にも集合組織化して残っているために、これが高強度化に大きく寄与する。
(実施例4)
まず、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解によって、表4、表5及び表6それぞれに示す組成を有するインゴット(鋳造材)作製し、これらのインゴットからφ29×65mmの形状に切り出した押出ビレットを準備する。
次いで、押出ビレットに押出加工を行う。押出加工は、623K、20分間の予備加熱を行った後、表4~表6に示す押出比、押出温度、押出速度で行った。次に、この押出加工を行った押出材に表4~表6に示す温度で引張試験を行い、その結果を表4~表6に示している。
表4~表6に示すように、長周期積層構造相を形成するマグネシウム合金は、高い降伏強度を有している。
尚、本発明は上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【表4】
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【表5】
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【表6】
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図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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