TOP > 国内特許検索 > マグネシウム合金およびその製造方法 > 明細書

明細書 :マグネシウム合金およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6089352号 (P6089352)
公開番号 特開2011-195928 (P2011-195928A)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
公開日 平成23年10月6日(2011.10.6)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム合金およびその製造方法
国際特許分類 C22C  23/06        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
C22F   1/06        (2006.01)
FI C22C 23/06
C22F 1/00 611
C22F 1/00 630A
C22F 1/00 630B
C22F 1/00 640A
C22F 1/00 651B
C22F 1/00 681
C22F 1/00 682
C22F 1/00 683
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 691C
C22F 1/00 692A
C22F 1/00 694A
C22F 1/00 694B
C22F 1/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2010-066476 (P2010-066476)
出願日 平成22年3月23日(2010.3.23)
審判番号 不服 2015-005501(P2015-005501/J1)
審査請求日 平成25年2月6日(2013.2.6)
審判請求日 平成27年3月24日(2015.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】山崎 倫昭
【氏名】河村 能人
個別代理人の代理人 【識別番号】100110858、【弁理士】、【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
参考文献・文献 国際公開第2006/036033(WO,A1)
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
C22F 1/00 - 3/02
特許請求の範囲 【請求項1】
Znを含有し、YをRE原子%含有し、Ce、Pr、Nd、SmおよびTbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(4)を満たすマグネシウム合金であり、
前記マグネシウム合金を大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水に浸漬させ、前記マグネシウム合金の腐食速度を測定した場合、前記マグネシウム合金はMg97Zn合金に比べて腐食速度が遅いことを特徴とする、長周期積層構造相およびhcp構造マグネシウム相を有するマグネシウム合金。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【請求項2】
Znを含有し、YをRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、Alを含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(5)を満たすマグネシウム合金であり、
前記マグネシウム合金を大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水に浸漬させ、前記マグネシウム合金の腐食速度を測定した場合、前記マグネシウム合金はMg97Zn合金に比べて腐食速度が遅いことを特徴とする、長周期積層構造相およびhcp構造マグネシウム相を有するマグネシウム合金。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
(5)0.05[RE(原子%)]≦[Al(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【請求項3】
請求項1または2において、
前記長周期積層構造相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とするマグネシウム合金。
【請求項4】
Znを含有し、YをRE原子%含有し、Ce、Pr、Nd、SmおよびTbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(4)を満たすマグネシウム合金を鋳造法により作製するマグネシウム合金の製造方法であり、
前記マグネシウム合金を大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水に浸漬させ、前記マグネシウム合金の腐食速度を測定した場合、前記マグネシウム合金はMg97Zn合金に比べて腐食速度が遅いことを特徴とする、長周期積層構造相およびhcp構造マグネシウム相を有するマグネシウム合金の製造方法。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【請求項5】
Znを含有し、YをRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、Alを含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(5)を満たすマグネシウム合金を鋳造法により作製するマグネシウム合金の製造方法であり、
前記マグネシウム合金を大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水に浸漬させ、前記マグネシウム合金の腐食速度を測定した場合、前記マグネシウム合金はMg97Zn合金に比べて腐食速度が遅いことを特徴とする、長周期積層構造相およびhcp構造マグネシウム相を有するマグネシウム合金の製造方法。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
(5)0.05[RE(原子%)]≦[Al(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【請求項6】
請求項4または5において、
前記鋳造法により作製したマグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることを特徴とするマグネシウム合金の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金およびその製造方法に関する。特には、機械的な強度が高く、優れた耐食性を有するマグネシウム合金およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金として、Mg-Al系、Mg-Al-Zn系、Mg-Th-Zn系、Mg-Th-Zn-Zr系、Mg-Zn-Zr系、Mg-Zn-Zr-RE(RE:希土類元素)系等の成分系が知られているが、これら合金は鋳造法で製造しても十分な強度が得られず、急速凝固粉末冶金法で製造しても強度は得られるものの、靭性や耐食性が不十分であるという欠点を有している。
【0003】
具体例として機械的強度および延性が良好なマグネシウム合金として、Mg-Al-Zn-Y合金が提案されているが、耐食性が不十分であった。(例えば特許文献1参照)
【0004】
高強度かつ高耐食性を有するマグネシウム合金を作製する従来の手法としては、単ロール法、急速凝固法により特定の形態の材料を製造することが行われている(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、非特許文献1,2参照)。
【0005】
しかし、前記したマグネシウム合金材は、特定の製造方法においては、高い機械的性質と高い耐食性が得られるものの、急速凝固装置等の特殊な設備が必要であり生産性も低いという問題があり、更に適用できる部材が限られるという問題があった。
【0006】
そこで、前記特許文献1、特許文献2のような特殊な設備あるいはプロセスを用いずに、生産性の高い通常の溶解鋳造から塑性加工(例えば押出)を実施しても実用上有用な機械的性質が得られるものが提案されている。(例えば特許文献6,7参照)
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表平6-501056号公報(請求の範囲1)
【特許文献2】特開平06-041701号公報
【特許文献3】特開2002-256370号公報
【特許文献4】特開2008-69418号公報
【特許文献5】特表平6-501056号公報
【特許文献6】WO2005/052204
【特許文献7】WO2005/052203<nplcit num="1"> <text>Corrosion behavior of rapidly solidified Mg-Zn-rare earth element alloys in NaCl solution: M. Yamasaki, N. Hayashi, S. Izumi, Y. Kawamura: Corrosion Science, 49 (2007) 255-262.</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Relation between corrosion behavior and microstructure of Mg-Zn-Y alloys prepared by rapid solidification at various cooling rates: S. Izumi, M. Yamasaki, Y. Kawamura: Corrosion Science, 51 (2009) 395-402</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のマグネシウム合金材は、以下に示すような改良すべき余地があった。すなわち、従来のマグネシウム合金材は、軽量化の目的で自動車用等への応用を進めるためには、高い強度を保ちながら耐食性をさらに向上させることが要求されていた。
【0009】
本発明の一態様は、特殊な装置およびプロセスを使用する事なしに、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金およびその製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、Znを含有し、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(4)を満たすことを特徴とするマグネシウム合金である。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
この態様によれば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を上記の範囲内で含有させることにより、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金を得ることができる。
【0011】
また、本発明の一態様において、
前記マグネシウム合金は、Alを含有し、下記式(5)を満たすことも可能である。
(5)0.05[RE(原子%)]≦[Al(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
この態様によれば、Alを上記の範囲内で含有させることにより、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金を得ることができる。
【0012】
また、本発明の一態様において、
前記Y、Dy、HoおよびErの少なくとも二つの元素を合計でRE原子%含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様において、
前記マグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を具備することが好ましい。
なお、最密原子面積層欠陥は、最密原子面に沿って溶質原子であるZnと希土類元素が積層方向に連続した二原子層の濃化した溶質原子濃化二原子層を含み、前記溶質原子濃化二原子層が積層方向に周期性を有さないものである。
【0014】
また、本発明の一態様において、
前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることも可能である。
【0015】
本発明の一態様は、Znを含有し、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(4)を満たすマグネシウム合金を鋳造法により作製することを特徴とするマグネシウム合金の製造方法である。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【0016】
また、本発明の一態様において、
前記マグネシウム合金は、Alを含有し、下記式(5)を満たすことも可能である。
(5)0.05[RE(原子%)]≦[Al(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【0017】
また、本発明の一態様において、
前記マグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有することが好ましい。
【0018】
また、本発明の一態様において、
前記鋳造法により作製したマグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることも可能である。
【0019】
なお、本発明の一態様に係るマグネシウム合金は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット灯等に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様を適用することで、特殊な装置およびプロセスを使用する事なしに、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】サンプルに対して塩水浸漬試験を行った結果を示す図である。
【図2】サンプルに対して塩水浸漬試験を行った結果を示す図である。
【図3】Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金のX線回折図形を示す図である。
【図4】Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金のX線回折図形を示す図である。
【図5】Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金の室温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。
【図6】Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金の高温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。
【図7】Mg97-XZn1Y2NdX鋳造押出合金の室温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。

【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態によるマグネシウム合金は、Znを含有し、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(4)を満たすものである。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]

【0024】
Zn含有量およびRE含有量を上記の範囲とする理由は、マグネシウム合金に長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を形成可能とするためである。

【0025】
X元素の含有量を上記の範囲とした理由は次のとおりである。
X含有量が0.05×[RE(原子%)]未満であると、充分な耐食性の向上が得られないからである。
X含有量が0.75×[RE(原子%)]以上であると、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相以外のMgとXからなる化合物が形成され,耐食性を低下させる恐れがあるからである。

【0026】
また、上記のマグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を具備することが好ましい。
なお、最密原子面積層欠陥は、最密原子面に沿って溶質原子であるZnと希土類元素が積層方向に連続した二原子層の濃化した溶質原子濃化二原子層を含み、前記溶質原子濃化二原子層が積層方向に周期性を有さないものである。

【0027】
本実施の形態のマグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有するREとX元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物や他の元素を含有しても良い。

【0028】
本実施の形態によれば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を上記の範囲内で含有させることにより、高い強度と高い延性を保持しながら耐食性を向上させたマグネシウム合金を得ることができる。例えば、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有する合金は二相合金であるため、ガルバニック腐食が起こり易いことが解決すべき点として指摘されていたが、上記のX元素を上記の範囲内で微量添加することで高強度および高靭性を有しつつ耐食性を著しく向上させることができる。

【0029】
また、上記のマグネシウム合金は、Y、Dy、HoおよびErのいずれか一つの元素をRE原子%含有するものを含むが、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも二つの元素を合計でRE原子%含有することが好ましい。具体的には、Yを主要添加元素とした合金(即ちYを他の元素より多く含む合金)については、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を微量添加することが好ましく、Dyを主要添加元素とした合金(即ちDyを他の元素より多く含む合金)については、Y、HoおよびErの少なくとも一つの元素を微量添加することが好ましく、Hoを主要添加元素とした合金(即ちHoを他の元素より多く含む合金)については、Y、DyおよびErの少なくとも一つの元素を微量添加することが好ましく、Erを主要添加元素とした合金(即ちErを他の元素より多く含む合金)については、Y、DyおよびHoの少なくとも一つの元素を微量添加することが好ましい。これにより、極めて高い耐食性を有する合金を実現することができる。

【0030】
また、上記のマグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることが好ましい。これにより、より高強度のマグネシウム合金を得ることができる。

【0031】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1と同一部分の説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。

【0032】
本実施の形態によるマグネシウム合金は、Znを含有し、Y、Dy、HoおよびErの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を合計でX原子%含有し、Alを含有し、残部がMgからなり、下記式(1)~(5)を満たすものである。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]-3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
(5)0.05[RE(原子%)]≦[Al(原子%)]<0.75[RE(原子%)]

【0033】
本実施の形態によれば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、TbおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素とAlを上記の範囲内で含有させることにより、高い強度と高い延性を保持しながら耐食性を向上させたマグネシウム合金を得ることができる。

【0034】
Mg-Zn-RE-Xの四元系合金にAlを添加することは、合金の耐食皮膜形成に有効であるが、Al-RE系化合物、例えばAlY化合物を形成し、YなどのRE(希土類元素)を消費してしまうため、長周期積層構造相の形成を阻害する。そこで、Alの添加量を、長周期積層構造相を保持することができ、且つ耐食性を付与できる量とすることによって機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金を実現することができる。

【0035】
(実施の形態3)
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
実施の形態1又は2の組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。鋳造プロセスとしては、種々のプロセスを用いることが可能であり、例えば、高圧鋳造、ロールキャスト、傾斜板鋳造、連続鋳造、チクソモールディング、ダイカストなどを用いることが可能である。また、マグネシウム合金鋳造物を所定形状に切り出したものを用いてもよい。

【0036】
次いで、マグネシウム合金鋳造物に均質化熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が400℃~550℃、処理時間が1分~1500分(又は24時間)とすることが好ましい。

【0037】
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜加工、鍛造、プレス、転造、曲げ、FSW(friction stir welding;摩擦撹拌溶接)加工、これらの繰り返し加工などを用いる。
押出しによる塑性加工を行う場合は、押出し温度を250℃以上500℃以下とし、押出しによる断面減少率を5%以上とすることが好ましい。

【0038】
ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90°ずつ回転させる方法である。具体的には、断面形状がL字状の成形孔を形成した成形用ダイの前記成形孔に、成形用材料であるマグネシウム合金鋳造物を強制的に進入させて、特にL状成形孔の90°に曲げられた部分で前記マグネシウム合金鋳造物に応力を加えて強度及び靭性が優れた成形体を得る方法である。ECAEのパス回数としては1~8パスが好ましい。より好ましくは3~5パスである。ECAEの加工時の温度は250℃以上500℃以下が好ましい。

【0039】
圧延による塑性加工を行う場合は、圧延温度を250℃以上500℃以下とし、圧下率を5%以上とすることが好ましい。

【0040】
引抜加工による塑性加工を行う場合は、引抜加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることが好ましい。
鍛造による塑性加工を行う場合は、鍛造加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記鍛造加工の加工率が5%以上であることが好ましい。

【0041】
前記マグネシウム合金鋳造物に行う塑性加工は、1回あたりの歪量が0.002以上4.6以下であって総歪量が15以下であることが好ましい。また、前記塑性加工は、1回あたりの歪量が0.002以上4.6以下であって総歪量が10以下であることがより好ましい。好ましい総歪量を15以下、より好ましい総歪量を10以下にする理由は、総歪量を多くしてもそれに従ってマグネシウム合金の強度が増加するわけではないからであり、また、総歪量を多くすればするほど製造コストが高くなってしまうからである。

【0042】
尚、ECAE加工の歪量は0.95~1.15/回であり、例えばECAE加工を16回行った場合の総歪量は0.95×16=15.2となり、ECAE加工を8回行った場合の総歪量は0.95×8=7.6となる。
また、押出し加工の歪量は、押出し比が2.5の場合が0.92/回であり、押出し比が4の場合が1.39/回であり、押出し比が10の場合が2.30/回であり、押出し比が20の場合が2.995/回であり、押出し比が50の場合が3.91/回であり、押出し比が100の場合が4.61/回であり、押出し比が1000の場合が6.90/回である。

【0043】
上記のようにマグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った塑性加工物は、常温において長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を備え、この長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を持つ結晶粒の体積分率は5%以上(より好ましくは10%以上)となり、前記hcp構造マグネシウム相の平均粒径は2μm以上であり、前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の平均粒径は0.2μm以上である。この相の結晶粒内には複数のランダム粒界が存在し、このランダム粒界で規定される結晶粒の平均粒径は0.05μm以上である。ランダム粒界においては転移密度が大きいが、前記の相におけるランダム粒界以外の部分の転位密度は小さい。従って、hcp構造マグネシウム相の転移密度は、前記の相におけるランダム粒界以外の部分の転位密度に比べて1桁以上大きい。

【0044】
前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。この湾曲又または屈曲は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相がキンキングしていることであっても良い。キンキングとは、強加工された長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相が特に方位関係を持たず、相内で折れ曲がり(bent)を生じ、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相が微細化されることである。

【0045】
また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。前記析出物の合計体積分率は0%超40%以下であることが好ましい。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。

【0046】
前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物に熱処理を施しても良い。この熱処理条件は、温度が200℃以上500℃未満、熱処理時間が10分~1500分(又は24時間)とすることが好ましい。熱処理温度を500℃未満とするのは、500℃以上とすると、塑性加工によって加えられた歪量がキャンセルされてしまうからである。

【0047】
この熱処理を行った後の塑性加工物については、熱処理を行う前の塑性加工物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。また、熱処理後の塑性加工物にも熱処理前と同様に、常温において長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を備え、この長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を持つ結晶粒の体積分率は5%以上(より好ましくは10%以上)となり、前記hcp構造マグネシウム相の平均粒径は2μm以上であり、前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の平均粒径は0.2μm以上である。この相の結晶粒内には複数のランダム粒界が存在し、このランダム粒界で規定される結晶粒の平均粒径は0.05μm以上である。ランダム粒界においては転移密度が大きいが、前記の相におけるランダム粒界以外の部分の転位密度は小さい。従って、hcp構造マグネシウム相の転移密度は、前記の相におけるランダム粒界以外の部分の転位密度に比べて1桁以上大きい。

【0048】
前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。前記析出物の合計体積分率は0%超40%以下であることが好ましい。

【0049】
本実施の形態によれば、マグネシウム合金に長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有する結晶組織を形成するため、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性なマグネシウム合金を得ることができる。そして、実施の形態1又は2の組成範囲を有することで高い強度および高い延性を有しつつ耐食性を著しく向上させることができる。

【0050】
(実施の形態4)
本実施の形態によるマグネシウム合金は、実施の形態3と同様の方法によりマグネシウム合金鋳造物を用意し、このマグネシウム合金鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状の切削物を作製し、この切削物に塑性加工による固化を行ったものである。

【0051】
本実施の形態においても実施の形態3と同様の効果を得ることができる。

【0052】
なお、上記の実施の形態1~4に係るマグネシウム合金は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット灯等に使用することができる。
【実施例】
【0053】
Arガス雰囲気中で高周波溶解によってMg97Zn1Y1.9RE0.1 (at%)のインゴット、Mg97Zn1Y2 (at%)のインゴットおよびMg96.8Zn1Y1.9La0.1Al0.2 (at%)のインゴットを作製し、これらのインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。この切り出した鋳造材を、温度が623K、押出比が10の条件で押出し加工することによりサンプルを作製した。RE元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbのいずれかである。
【実施例】
【0054】
これらのサンプルに塩水浸漬試験を行った。塩水浸漬試験は、大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水にサンプルを浸漬させ、そのサンプルの腐食速度を測定する試験である。その試験結果を図1および図2に示す。図1の横軸は、Mg97Zn1Y1.9RE0.1 (at%)における添加したRE元素であり、縦軸は腐食速度である。図2の横軸はサンプルの組成であり、縦軸は腐食速度である。
【実施例】
【0055】
図1によれば、Mg97Zn1Y2合金に比べて希土類元素REを微量添加した合金の方が耐食性が向上していることがわかる。
また、図2によれば、Mg97Zn1Y2合金、Mg97Zn1Y1.9La0.1合金、Mg96.8Zn1Y1.9La0.1Al0.2 合金の順に腐食速度が低くなることがわかる。LaとAlの同時微量添加により耐食性がより高まることが明らかとなった。
【実施例】
【0056】
図3および図4には、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金のXRD結果を示す。
図3および図4によれば、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金には長周期積層構造相(LPSO相)が形成されていることが確認された。
【実施例】
【0057】
図5は、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金の室温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。図5の左側の縦軸は引張強度であり、右側の縦軸は伸びである。
図5によれば、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金は室温で優れた機械的性質を有することが確認された。
【実施例】
【0058】
図6は、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金の高温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。図6の左側の縦軸は引張強度であり、右側の縦軸は伸びである。
図6によれば、Mg97Zn1Y1.9RE0.1鋳造押出合金は523Kの高温で優れた機械的性質を有することが確認された。
【実施例】
【0059】
図7は、Mg97-XZn1Y2NdX鋳造押出合金の室温強度(耐力(YS)、引張強度(UTS)、伸び(El))を示す図である。図7の横軸はNdの添加量Xを示している。
図7によれば、Ndの添加は耐力、引張強度を高い値に保つが、2原子%以上の添加は延性を極端に低下させることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6