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明細書 :β-アミロイド前駆体タンパク質のマイクロ凝集体に特異的なモノクローナル抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-159596 (P2013-159596A)
公開日 平成25年8月19日(2013.8.19)
発明の名称または考案の名称 β-アミロイド前駆体タンパク質のマイクロ凝集体に特異的なモノクローナル抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C07K 16/18
C12N 15/00 C
C12N 5/00 102
G01N 33/53 D
C07K 14/47
C12P 21/08
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2012-025103 (P2012-025103)
出願日 平成24年2月8日(2012.2.8)
発明者または考案者 【氏名】神野 英毅
【氏名】吉宗 一晃
【氏名】小森谷 友絵
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
4H045
Fターム 4B024AA11
4B024HA15
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA10
4B064CA20
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
要約 【課題】大きなサイズの非晶質のAβ凝集体のみを特異的に検討するための材料を提供する。
【解決手段】粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体に特異的に結合し、アミロイドβタンパク及び繊維状アミロイドβタンパク凝集体に結合しない抗体。及び該非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体を免疫原とする細胞融合法により得られ抗体を産生するハイブリドーマ。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体に特異的に結合し、単量体のアミロイドβタンパク及び繊維状アミロイドβタンパク凝集体に結合しない抗体。
【請求項2】
粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体が、粒子径0.22μm~500μmである請求項1記載の抗原に対する抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体である請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
NITE AP-1229として寄託されたハイブリドーマが産生するものである請求項3記載の抗体。
【請求項5】
検体に請求項1~4のいずれか1項記載の抗体を反応させることを特徴とする、当該検体中の粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパク凝集体の検出法。
【請求項6】
粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体を免疫原とする細胞融合法により得られ、粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体に特異的に結合し、アミロイドβタンパク及び繊維状アミロイドβタンパク凝集体に結合しない抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項7】
NITE AP-1229として寄託されたものである請求項6記載のハイブリドーマ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβタンパク(Aβ)の凝集体のうち粒子径が大きなマイクロ凝集体に特異的に結合する抗体及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病の主要な病理変化には老人斑と神経原線維変化があるが、この老人斑は発症の早期から認められ、その主要構成成分がアミロイドβタンパク(Aβ)である。当該Aβは、アルツハイマー病の発症と進展に深く関与していることから注目され広く研究されている。
Aβは、β-アミロイド前駆体からβ-セクレターゼ及びγ-セクレターゼが作用したときに切り出されて産生される。40-42アミノ酸からなるペプチドであり、Aβ1-40及びAβ1-42との2種が同定されている(非特許文献1)。
【0003】
アルツハイマー病の発症は、Aβが凝集して脳組織に沈着することにより発症するとの説が有力であることから、その治療薬としてAβワクチン療法や抗Aβモノクローナル抗体療法が開発されている(特許文献1、2)。
【0004】
一方、脳内に沈着するのは、単量体のAβではなく、繊維状や非晶質のAβ凝集体であり、32量体以下の小さな非晶質のAβ凝集体については神経毒性が強いことなどから、研究が進められている(非特許文献2、3)。そしてこの小さな非晶質のAβ凝集体(非特許文献3)や繊維状のAβ凝集体(非特許文献4)に対する抗体も作製されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2008/156622号パンフレット
【特許文献2】特開2010-215651号公報
【0006】

【非特許文献1】Human Molecular Genetics, 13, 159-170(2004)
【非特許文献2】Neurol Sci. 2009 December; 30(6): 471-477
【非特許文献3】J. Biol. Chem. (2011) Vol. 286, No.13, pp11555-11562
【非特許文献4】J. Biol. Chem. (2009) Vol. 284, No.47, pp32895-32905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Aβの凝集体のうち、大きなサイズの非晶質の凝集体については脳組織内にあることは確認されているが、その作用はほとんど解明されていない。また当該大きなサイズの凝集体は抗Aβ抗体等を使用して検出されているのが実状であり、その検出法及び機能解明については全く検討されていない。
従って、本発明の課題は、大きなサイズの非晶質のAβ凝集体のみを特異的に検出するための材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、今まで注目されていなかった、大きなサイズの非晶質のAβ凝集体に着目し、これに特異的な抗体を作製することとし、種々検討したところ、粒子径0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を抗原として用いることにより、大きなサイズの非晶質のAβ凝集体に特異的に結合する抗体を得ることに成功した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]に係るものである。
[1]粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体に特異的に結合し、単量体のアミロイドβタンパク及び繊維状アミロイドβタンパク凝集体に結合しない抗体。
[2]粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体が、粒子径0.22μm~500μmである[1]記載の抗体。
[3]モノクローナル抗体である[1]又は[2]記載の抗体。
[4]NITE AP-1229として寄託されたハイブリドーマが産生するものである[3]記載の抗体。
[5]検体に[1]~[4]のいずれか1項記載の抗体を反応させることを特徴とする、当該検体中の粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパク凝集体の検出法。
[6]粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパクの凝集体を免疫原とする細胞融合法により得られ、粒子径0.22μm以上のアミロイドβタンパクの凝集体に特異的に結合し、アミロイドβタンパク及び繊維状アミロイドβタンパク凝集体に結合しない抗体を産生するハイブリドーマ。
[7]NITE AP-1229として寄託されたものである[6]記載のハイブリドーマ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗体は、従来着目されず、その機能も知られていなかった0.22μm以上の大きなサイズの非晶質のAβ凝集体に特異的であり、単量体のAβ及び繊維状Aβ凝集体に反応しない。従って、本発明の抗体を用いれば、脳内に沈着していることは知られていたが、その機能が解明されていなかった大きなサイズの非晶質のAβ凝集体を特異的に検出できるので、本発明の抗体は大きなサイズの非晶質のAβ凝集体の機能解明、アルツハイマー病の進展原因究明、臨床検査薬等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明抗体を用いたELISAの結果を示す図である。
【図2】市販の抗Aβ1-42モノクローナル抗体を用いたELISAの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗体は、粒子径0.22μm以上の非晶質のAβの凝集体(マイクロ凝集体ともいう)に特異的に結合し、Aβ及び繊維状Aβ凝集体には結合しない。ここで粒子径0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体は、従来注目されているAβ、繊維状Aβ凝集体やナノサイズのAβ凝集体とも相違する。より好ましい大きなAβ凝集体としては、粒子径0.22μm~500μm程度の非晶質のAβ凝集体である。

【0013】
本発明の抗体は、前記の特性を有している限り、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、特異性の高いものが得られやすい点でモノクローナル抗体が好ましい。

【0014】
本発明のポリクローナル抗体は、粒子径0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を抗原として哺乳動物を免疫し、その抗血清を採取し、特異性を確認すればよい。

【0015】
本発明のモノクローナル抗体は、通常の細胞融合により得られるハイブリドーマを培養して作製することができる。ここでハイブリドーマは、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体で免疫した哺乳動物の免疫細胞と、ミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞から、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体と結合し、Aβ及び繊維状Aβ凝集体と結合しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより得られる。

【0016】
ハイブリドーマを作製するための抗原としては、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を用いる。特に0.22μm~500μmのサイズの非晶質のAβ凝集体を用いるのが好ましい。

【0017】
ハイブリドーマの作製に使用する動物としては、マウス、ウサギ等が挙げられるが、ハイブリドーマの作製のために最も広く使用されているマウスを用いるのが好ましい。マウスの免疫感作は、前記の0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を、必要に応じてFreundのアジュバントと共にマウスに注射することにより行う。次に免疫されたマウスから脾細胞を採取し、マウスミエローマセルライン例えば、P3U1との細胞融合を常法に従って行う。

【0018】
HAT培地に増殖したハイブリドーマの培養上清を常用のサンドイッチ法により0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体と結合するモノクローナル抗体の存在について試験する。この検定においては、抗原として用いた0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体、Aβ1-42、Aβ1-40、Aβ16-20、Aβ繊維状凝集体をサンドイッチ法の抗原として使用して、特異性を確認できる。

【0019】
この中に、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体と結合し、繊維状Aβ凝集体と結合しないモノクローナル抗体を産生する7個のクローンが見出された。このうち、1クローンをAnti-LOA 31-2と命名し、NITE AP-1229として独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物受託センターに寄託した。

【0020】
本発明のモノクローナル抗体を製造するには、例えば上記のハイブリドーマのいずれかを常用の培地中で培養し、培養上清から目的とするモノクローナル抗体を採取すればよい。あるいは、前記ハイブリドーマのいずれかをマウスの腹腔内に接種し、該マウスから腹水を採取し、そして該腹水から目的とするモノクローナル抗体を採取すればよい。培養上清又は腹水からのモノクローナル抗体の採取、すなわち単離・精製は、常法に従って行うことができる。例えば、硫酸アンモニウムにより塩析、0.22μm以上のAβ凝集体を固定した支持体を用いるアフィニティークロマトグラフィー等を組合せて用いることができる。

【0021】
本発明の抗体は、その目的に応じてキメラ抗体、ヒト化抗体とすることができる。さらに、蛍光、発光、放射性同位元素、金属コロイド等の標識体とすることもできる。

【0022】
得られる本発明の抗体は、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体に結合し、単量体Aβ及び繊維状Aβ凝集体に結合しないので、0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を特異的に検出するのに有用である。

【0023】
本発明の抗体を用いて0.22μm以上の非晶質のAβ凝集体を検出するには、検体に本発明の抗体を反応させ、当該検体中の粒子径0.22μm以上の非晶質のアミロイドβタンパク凝集体を検出することができる。
検出手段としては、ELISA、免疫染色、ウエスタンブロッティング、免疫組織染色、蛍光免疫染色、免疫沈降等が挙げられる。
また検体としては、摘出組織、脳切片等の組織切片、培養細胞等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
実施例1
[モノクローナル抗体の作成方法]
(1)抗原の作製
(マイクロ凝集体)
リン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco's PBS)中に0.22mM Aβ1-42(AnyGen Co.Ltd, Korea)と繊維状凝集体の形成を抑制する2.2mM Aβ16-20(KLVFF)を加え37℃、3rpmで16時間攪拌した。この溶液を0.22μmのフィルターでろ過した残渣をマイクロ凝集体とした。
【実施例】
【0026】
(繊維状Aβ凝集体)
マイクロ凝集体の作成においてAβ16-20を加えずに調整し、繊維状Aβ凝集体を作製した。
【実施例】
【0027】
(モノマー)
Aβ1-42を50μMになるように1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに加え、超音波処理で懸濁後、30℃で16時間放置し完全に溶解させた。減圧乾燥により溶媒を除いたものをモノマーとして用いた。
【実施例】
【0028】
(2)抗体の作製
上記により作製したマイクロ凝集体(0.1mg)を完全もしくは非完全フロイントアジュバントと混合し、マウス(BALB/C、8週目、雌)に免疫した。免疫は、2週おきに3回行った。免疫したマウスの脾臓を摘出し、その細胞数の2割のマウスミエローマ細胞(P3U1)を混合後、この混合細胞にPEG(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)1mlを1分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。1分間攪拌後、無血清培地FCS3mlを3分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。続けて無血清培地10mlを3分間かけて攪拌しながらゆっくりと加えた。その後、5分間インキュベート(37℃、5%CO2)を行い、遠心分離(1000rpm、5min)により上清を捨てた。HAT培地で希釈することで細胞を解して培養した。
【実施例】
【0029】
この培養上清を用いてELISA法によりマイクロ凝集体に反応する抗体を生産する細胞のスクリーニングを行った。陽性が得られた細胞を限界希釈しハイブリドーマの単一化を行った。
【実施例】
【0030】
ELISA法はNuncイムノプレートマキシソープ(Thermo scientific Inc.)を用いて4℃、16時間インキュベートして各抗原を非共有結合で固定した。Dulbecco's PBSに0.05% Tween20を加えた溶液(PBS-T)により洗浄を行った後、ブロッキングバッファー(イムノブロック、DSファーマバイオメディカル株式会社)添加し、37℃、2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、2次抗体としてHRPを標識した抗マウスIgGヤギ由来(Sigma-Aldrich)を加え、37℃、2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、SIGMAFAST OPD(Sigma-Aldrich)の説明に従って発色させ、492nmで測定した。
【実施例】
【0031】
各濃度のマイクロ凝集体(黒丸)、繊維状Aβ1-42(白丸)、モノマーAβ1-42(白四角)及び、Aβ16-20(黒四角)を抗原として本発明抗体(図1)、もしくは市販の抗Aβ1-42モノクローナル抗体82E1(図2)を用いてELISAを行った。
図1及び図2に、ELISAの結果を示す。
【実施例】
【0032】
図1及び図2に示す様に本発明のモノクローナル抗体は繊維状及びモノマーAβ1-42及び、Aβ16-20とはほとんど反応せずマイクロ凝集体にのみ高い反応性を示した。一方、市販の抗Aβ1-42モノクローナル抗体82E1(Immuno-Biological Laboratories, Inc., Minneapolis, MN)は全ての状態のAβ1-42に反応した。なおどちらの抗体も繊維状態への形成を抑制するAβ16-20とはほとんど反応しなかった。
得られたハイブリドーマ7個のうち、1個をAnti-LOA 31-2と命名した。
図面
【図1】
0
【図2】
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