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明細書 :ボロン酸エステル型高分子微粒子、及び貴金属ナノ粒子担持ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒並びにそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5907551号 (P5907551)
公開番号 特開2013-053181 (P2013-053181A)
登録日 平成28年4月1日(2016.4.1)
発行日 平成28年4月26日(2016.4.26)
公開日 平成25年3月21日(2013.3.21)
発明の名称または考案の名称 ボロン酸エステル型高分子微粒子、及び貴金属ナノ粒子担持ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒並びにそれらの製造方法
国際特許分類 C08G  79/08        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
B01J  31/06        (2006.01)
FI C08G 79/08
B01J 35/02 H
B01J 37/04 102
B01J 37/16
B01J 31/06 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2011-190242 (P2011-190242)
出願日 平成23年9月1日(2011.9.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本化学会第91春季年会(2011)講演予稿集IV、平成23年3月11日発行
審査請求日 平成26年8月8日(2014.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】久保 由治
【氏名】西藪 隆平
【氏名】春田 正毅
【氏名】石田 玉青
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】佐藤 のぞみ
参考文献・文献 特開2009-220017(JP,A)
特開2007-197591(JP,A)
特開2011-036748(JP,A)
特表2010-516869(JP,A)
Lavigne, John J.; Rambo, Brett M.; Niu, Weijun,Self-assembling poly(organo-borate) materials,PMSE Preprints,米国,American Chemical Society,2004年,90,816-817
調査した分野 C08G 79/00-79/14
B01J 31/00-31/40
B01J 35/00-37/36
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
繰り返し単位として下記構造:
【化1】
JP0005907551B2_000016t.gif
を有し、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子。
【請求項2】
ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【化2】
JP0005907551B2_000017t.gif
とペンタエリスリトール(式2):
【化3】
JP0005907551B2_000018t.gif
をテトラヒドロフラン存在下、常温常圧で混合することを特徴とする、請求項1に記載の粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を製造する方法
【請求項3】
請求項1に記載の花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子に、平均粒径5nm以下の貴金属ナノ粒子又はクラスターを固定化してなる、貴金属ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体。
【請求項4】
貴金属ナノ粒子又はクラスターは、金ナノ粒子又はクラスターである、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子に、平均粒径5nm以下の金ナノ粒子又はクラスターを固定化してなる、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒。
【請求項6】
前記金ナノ粒子又はクラスターを2~8wt%の含有量で固定化してなる、請求項5に記載の芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒。
【請求項7】
ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【化4】
JP0005907551B2_000019t.gif
とペンタエリスリトール(式2):
【化5】
JP0005907551B2_000020t.gif
をテトラヒドロフラン存在下、常温・常圧で混合して、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を形成し、
当該ボロン酸エステル型高分子微粒子を溶媒に分散させてボロン酸エステル型高分子微粒子分散液を調製し、
当該分散液にポリエチレンイミンを添加して、ポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液を調製し、
当該ポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液に、塩化金酸を添加して、金イオン/ボロン酸エステル分散液を調製し、
当該金イオン/ボロン酸エステル分散液に、水酸化ホウ素ナトリウムを添加して還元させる、
ことを含む金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体を得る方法。
【請求項8】
ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【化6】
JP0005907551B2_000021t.gif
とペンタエリスリトール(式2):
【化7】
JP0005907551B2_000022t.gif
をテトラヒドロフラン存在下、常温・常圧で混合して、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を形成し、
当該ボロン酸エステル型高分子微粒子に対して、金前駆体を添加し、乳鉢にて撹拌混合し、水素の存在下で還元反応を行う、
ことを含む、金ナノ粒子をボロン酸エステル型高分子微粒子に担持させてなる金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体を得る方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なボロン酸エステル型高分子微粒子、貴金属ナノ粒子担持ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボロン酸エステル結合は,温和な条件で共有結合形成が可能なことから,分子組織体構築の分子間相互作用手段として利用されている(非特許文献1)。
金は、卑金属酸化物との密着性に乏しく、融点(1063℃)が他の貴金属よりも低いために触媒調製の焼成段階で小さなナノ粒子の融解・凝集が起こり、30nm以上の大きな金ナノ粒子しか得られず、触媒活性が極めて乏しいと考えられていた。ところが、金を好ましくは直径10nm以下の超微粒子として種々の金属酸化物担体上に分散・固定することにより高い触媒活性を発現することが報告され(特許文献1、非特許文献2)、たとえば、TiOに金ナノ粒子を担持させて、常温CO酸化及びプロピレンオキシドの気相一段合成の触媒として利用すること、及びCeOに金ナノ粒子を担持させて、水性ガスシフト反応に利用することが提案されている(非特許文献3)。しかし、有機高分子担体に金属微粒子を分散・固定化させた触媒材料の開発はあまり進んでいない(特許文献2、特許文献3)。これは、有機高分子材料が、耐熱性に劣ること及び無機材料と比較して高価であることに起因する。一方、高分子材料は、無機材料にない成型加工性(繊維など)を有するため、ソフトな触媒材料としての応用が期待できる(非特許文献4)。
【0003】
金ナノ粒子や白金などを触媒として用いる例として、医薬・農薬の中間体、感光性高分子の原料、インクジェットインキの画質向上剤の原料、遺伝子導入剤の原料などへの利用が見込まれる有用な種々の誘導体を与える芳香族ニトロ化合物の水素化反応がある。芳香族ニトロ化合物の誘導体の例として、アミノスチレンが知られている。例えば、官能基としてニトロ基の他、炭素-炭素二重結合を有する芳香族ニトロ化合物は、いずれの基も比較的水素化されやすい。中でも、ニトロ基を選択的に還元する触媒の例として、白金担持炭素触媒を次亜リン酸およびバナジウムで修飾した触媒(非特許文献5)や、金ナノ粒子をチタニアに担持した触媒(非特許文献6)が知られている。芳香族ニトロ化合物の官能基の一部を選択的に水素化または水素化分解する触媒として、担体にシリカを使用し、活性種としての金属に比較的廉価な銀を使用する触媒(非特許文献7)や、アルミナに銀成分を担持せしめた触媒(特許文献4)も知られている。しかし、高分子担体を用いた芳香族ニトロ化合物の水素化触媒系は未開拓である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特公平5-49338号公報
【特許文献2】特開2008-239801号公報
【特許文献3】特開2009-220017号公報
【特許文献4】特開2011-36748号公報
【0005】

【非特許文献1】R. Nishiyabu, Y. Kubo, et al., ”Boronic acid buiding blocks: tools for self assembly”, Chem. Commun., 2011, 47, p. 1124-1150
【非特許文献2】M. Haruta, Chem. Record., 2003, 3, 75
【非特許文献3】春田正毅、「金ナノ粒子の触媒作用」、表面化学、 vol.26, No.10, pp.578-584, 2005
【非特許文献4】石田玉青、春田正毅、「高分子を担体とする金クラスターの触媒作用」、高分子、60巻、6月号(2011年)、p. 374-377
【非特許文献5】H.-U.Blaser, U. Siegrist, H. Steiner, in Aromatic Nitro Compounds: Fine Chemicals through Heterogeneous Catalysis, R. A. Sheldon, H. van. Bekkum, Eds. (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2001), p.389
【非特許文献6】A. Corma, P. Serna, Science, 2006, 313, 332
【非特許文献7】Y. Chen, C. Wang, H. Liu, J. Qiu, X. Bao, Chem. Commun., 2005, 5298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貴金属ナノ粒子、特に金ナノ粒子又はクラスターの触媒活性を活用するための高分子担体、金ナノ粒子を高分子担体に担持させた芳香族ニトロ化合物の水素化触媒、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、温和な条件で共有結合形成が可能であることから、分子組織体構築の分子間相互作用手段として利用されているボロン酸エステル結合の研究を進める中で、多価ボロン酸と多価アルコールを用いて連続的なボロン酸エステル化反応を行ったところ、適切な自己組織化条件を満たすことで階層的な構造を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を形成することを知見した。また、当該ボロン酸エステル型高分子微粒子が、金ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子を分散・固定化できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、下記構造:
【0009】
【化1】
JP0005907551B2_000002t.gif

【0010】
を有し、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状(flowerlike)を有するボロン酸エステル型高分子粒子が提供される。
また、本発明によれば、ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【0011】
【化2】
JP0005907551B2_000003t.gif

【0012】
とペンタエリスリトール(式2):
【0013】
【化3】
JP0005907551B2_000004t.gif

【0014】
をテトラヒドロフラン存在下で混合することにより形成される粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子が提供される。
本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子担体は、常温・常圧の極めて温和な条件で調製される単分散性の粒子状高分子であり、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)写真を観察すると下記のような花型構造を有し、300℃までの耐熱性を有する。
【0015】
【化4】
JP0005907551B2_000005t.gif

【0016】
上記ボロン酸エステル型高分子微粒子は、上述の花型構造の複雑な表面形状を有する繊維状の特異なモルフォロジーゆえに、大きな比表面積を有し、平均粒径5nm以下の貴金属ナノ粒子又はクラスターを表面に均一に分散し、固定化することができる。分散・固定化できる貴金属ナノ粒子としては、金、銀などのナノ粒子を好ましく挙げることができる。よって、本発明によれば、上記ボロン酸エステル型高分子微粒子に平均粒径5nm以下の貴金属ナノ粒子又はクラスターを固定化してなる貴金属ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体が提供される。本明細書及び特許請求の範囲において、「クラスター」とは、2nm以下の粒径のナノ粒子の集合体を意味する。本明細書においては、説明を簡略にするため、ナノ粒子とクラスターとをまとめて「ナノ粒子」と表記することもある。
【0017】
【化5】
JP0005907551B2_000006t.gif

【0018】
本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子は、貴金属ナノ粒子、特に金ナノ粒子又はクラスターを固定化させることができる。金ナノ粒子は、サイズが小さくなるほど触媒活性が高くなることが知られており(非特許文献4)、本発明の金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体は、触媒活性の高い新規な金ナノ粒子触媒となる。金ナノ粒子触媒としての作用を検討したところ、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒として有用であることがわかった。よって、本発明によれば、ボロン酸エステル型高分子微粒子担体に、金ナノ粒子又はクラスターを固定化してなる芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒も提供される。本発明の芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒においては、金ナノ粒子又はクラスターは、2~8wt%の含有量で固定化されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明によれば、ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【0020】
【化6】
JP0005907551B2_000007t.gif

【0021】
とペンタエリスリトール(式2):
【0022】
【化7】
JP0005907551B2_000008t.gif

【0023】
をテトラヒドロフラン存在下、常温・常圧で混合して、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を形成し、当該ボロン酸エステル型高分子微粒子を溶媒に分散させてボロン酸エステル型高分子微粒子分散液を調製し、当該分散液にポリエチレンイミンを添加して、ポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液を調製し、当該ポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液に、塩化金酸を添加して、金イオン/ボロン酸エステル分散液を調製し、当該金イオン/ボロン酸エステル分散液に、水酸化ホウ素ナトリウムを添加して還元させる、ことを含む金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体を得る方法が提供される。
【0024】
さらに、本発明によれば、ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1):
【0025】
【化8】
JP0005907551B2_000009t.gif

【0026】
とペンタエリスリトール(式2):
【0027】
【化9】
JP0005907551B2_000010t.gif

【0028】
をテトラヒドロフラン存在下、常温・常圧で混合して、粒径2.0μm~2.6μmの花型形状を有するボロン酸エステル型高分子微粒子を形成し、当該ボロン酸エステル型高分子微粒子に対して、金前駆体を添加し、乳鉢にて撹拌混合し、水素の存在下で還元反応を行う、ことを含む金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体を得る方法が提供される。金前駆体としては、ボロン酸エステル型高分子微粒子と固相で混合する際の取り扱いの簡単な金錯体を好ましく用いることができ、例えば、ジメチル金アセトナート錯体、ジクロロ(2-ピリジンカルボキシラト)金錯体、トリクロロピリジン金錯体を好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子は、貴金属ナノ粒子、特に平均粒径5nm以下の金ナノ粒子又はクラスターの担体として有用である。
また、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子は、耐熱性に優れ、繊維や膜など種々の形状・形態に容易に加工できるので、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子に貴金属粒子を担持させた触媒材料はソフトな触媒材料として種々の用途に利用できる。
【0030】
本発明の貴金属ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体は、新規な貴金属ナノ粒子触媒として有用である。
本発明の芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒は、ニトロ基に対する選択性が極めて高いので、試薬使用量や廃棄物の低減、分離・精製プロセスにおけるエネルギーを節減できる有用な触媒である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子の粉末X線回折結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子の熱重量測定結果を示すグラフである。
【図4】図4は、比較例1で調製した球状粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、比較例2で調製した粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6(a)は、実施例2の吸着還元法で調製した本発明の金ナノ粒子2wt%/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、図6(b)は粒度分布を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、実施例2の吸着還元法で調製した本発明の金ナノ粒子4wt%/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図7(b)は粒度分布を示すグラフである。
【図8】図8(a)は、実施例2の吸着還元法で調製した本発明の金ナノ粒子8wt%/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図8(b)は粒度分布を示すグラフである。
【図9】図9(a)は、実施例2の吸着還元法で調製した本発明の金ナノ粒子8wt%/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体(PEI10倍)の透過型電子顕微鏡写真であり、図9(b)は粒度分布を示すグラフである。
【図10】図10(a)は、実施例2の固相混合法で調製した本発明の金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図10(b)は粒度分布を示すグラフである。

【実施例】
【0032】
[実施例1]ボロン酸エステル型高分子粒子の調製
ベンゼン-1,4-ジボロン酸(式1)415mg(2.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF)125mLに加えたものとペンタエリスリトール(式2)340mg(2.5mmol)をTHF125mLに加えたものを混合し、室温で48時間静置したところ、溶液が懸濁した(最終濃度は10mMになる)。生成した析出物をろ別し、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察したところ、粒径2.3±0.3μmの花型粒子であることが確認された(図1)。この粒子を赤外吸収スペクトル測定したところ、ボロン酸エステル構造を有することが示唆された。また、粉末X線回折(PXRD)測定したところ、ジオキサボロール一次元鎖の積層構造:
【0033】
【化10】
JP0005907551B2_000011t.gif

【0034】
を有することが示唆された(図2)。また、固体の熱重量測定(昇温速度5℃/分、目標温度900℃、保持時間30分、窒素雰囲気下、アルミナセル)の結果、当該粒子は300℃付近まで安定であることがわかった(図3)。
【0035】
以上のことから、ルイス酸性ホウ素とベンゼン環の相互作用が自己集合の主要な因子として作用し、図1に示す特異な花型構造のモルフォロジーを有する新規なボロン酸エステル型高分子粒子が形成されたと考えられる。
【0036】
[比較例1]
ペンタエリスリトール(式2)に代えて、1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼンを用いて実施例1と同じ手順を行ったところ、単分散のサブミクロン球状粒子が得られ(図4)、花型形状にはならなかった。
【0037】
[比較例2]
テトラヒドロフランに代えて、メタノールを用いて、実施例1と同じ手順を行ったところ、花型形状にはならなかった(図6)。また、水を溶媒として用いた場合には構造体の生成は認めらなかった。
【0038】
[実施例2]ボロン酸エステル型高分子粒子への金ナノ粒子の固定化
<吸着還元法>
【0039】
【化11】
JP0005907551B2_000012t.gif

【0040】
実施例1で調製したボロン酸エステル粒子(285mg)をメタノール(157mL)に添加して5分間超音波照射して均一に分散させ、ボロン酸エステル粒子分散液を得た。このボロン酸エステル粒子分散液に、ポリエチレンイミン(90mg)を添加してポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液を得た。ポリエチレンイミン/ボロン酸エステル分散液に、5分間超音波照射し、25分間静置させた後、固体をろ別した。固体を減圧下でよく乾燥させた後、メタノール(149mL)に再度分散し、ボロン酸エステル粒子に対して金が2wt%となるように、塩化金酸四水和物(11.6mg)のメタノール溶液(4mL)を添加した。5分間超音波照射し、25分間静置させた後、固体をろ別した。ろ別により得られた淡黄色固体を、再びメタノール(100mL)に分散し、過剰量の水素化ホウ素ナトリウム(113mg)のメタノール溶液(50mL)を加えて還元反応を行い、淡紫色の固体を得た。この淡紫色の固体を透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、ボロン酸エステル粒子に金ナノ粒子が担持されていることを確認した(図6(a))。TEM観察結果から1000個の金ナノ粒子について粒径分布を測定したところ、粒径2.0±0.7nmの金ナノ粒子が担持されていることが確認された(図6(b))。
【0041】
金ナノ粒子の担持量が4wt%及び8wt%となるように、塩化金酸四水和物の添加量をそれぞれ23.2mgおよび46.4mgに変えて、上記と同様に金ナノ粒子/ボロン酸エステル粒子複合体を調製し、TEM観察を行い、担持された金ナノ粒子の粒径分布を測定した(図7~図8)。金ナノ粒子の担持量が2wt%では平均粒径が2.0nm±0.7nmであり、4wt%では2.7nm±1.0nm(775個の金ナノ粒子に対する平均値である)、8wt%では3.3nm±1.5nmであった。金ナノ粒子の担持量が少ないほど、担持される金ナノ粒子の粒径が小さいことがわかった。
【0042】
また、ポリエチレンイミン(PEI)を通常の10倍にあたる900mgを添加して、金ナノ粒子の担持量8wt%を調製した(図9)。平均粒径としてはあまり差が認められなかったが、粒径分布(図8(b)と図9(b))を比較すると、ポリエチレンイミンの添加量が多いほど、担持される金ナノ粒子の粒径分布は小さい方にシフトし、2nmの比率が増加していることがわかる。
【0043】
[比較例3]
実施例1で調製した本発明のボロン酸エステル粒子(18.5mg)のメタノール分散液(9.4mL)に塩化金酸四水和物(0.77mg)のメタノール溶液(0.6mL)を加え、ろ別したボロン酸エステル粒子をメタノール(5mL)に分散し、水素化ホウ素ナトリウム(7.7mg)のメタノール溶液(3.3mL)を添加して還元反応を行ったところ、ボロン酸エステル粒子に金ナノ粒子を担持できなかった。
【0044】
[実施例3]ボロン酸エステル型高分子粒子への金ナノ粒子の固定化
<固相混合法>
【0045】
【化12】
JP0005907551B2_000013t.gif

【0046】
実施例1で調製したボロン酸エステル粒子268mgに対して金が2wt%となるようにジメチル金アセトナート錯体8.9mgを加え、20分間、乳鉢を用いて撹拌混合した後、10vol%の水素と90vol%窒素との混合ガスを50ml/minで供給しながら、120℃で2時間、還元反応を行った。得られた赤紫色固体の透過型電子顕微鏡(TEM)観察したところ、ボロン酸エステル粒子表面に、粒径4.9±1.8nmの金ナノ粒子が固定化されていることが観察された(図10)。
【0047】
以上から、吸着還元法を用いることで、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子に対して、より微細な粒径の金ナノ粒子を固定化できることがわかる。
[実施例4]4-ニトロスチレンの還元反応
実施例2及び3で調製した金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体を4-ニトロスチレンの還元反応に用いて、触媒活性を確認した。
【0048】
【化13】
JP0005907551B2_000014t.gif

【0049】
実施例2で調製した金ナノ粒子/ボロン酸エステル型高分子微粒子複合体と4-ニトロスチレンとを脱水トルエンに添加し、水素雰囲気下(0.5MPa)、100℃で22時間撹拌を行った。金ナノ粒子の担持量は、2wt%、4wt%、8wt%とした。
【0050】
評価方法として、アニソールを内部標準物質としてガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、いずれの金ナノ粒子を担持したボロン酸エステル粒子も4-アミノスチレンを主生成物として与え、いずれの触媒系においてもニトロ基が選択的に還元されることがわかった。表1に、触媒調製条件を変化させた時のニトロスチレン水素化反応に対する触媒活性をまとめた。
【0051】
【表1】
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【0052】
表1より、固相混合法により金ナノ粒子を担持させた触媒(2wt%)(転化率33%、4アミノスチレン収率24%)よりも、吸着還元法により担持させた触媒(2wt%)(転化率60%、4アミノスチレン収率52%)のほうが高い触媒活性を示すことがわかる。
【0053】
また、Au(0)/ボロン酸エステル調製時において、吸着還元法において担体であるボロン酸エステルに対する塩化金酸の添加量を増やしたが(4wt%、8wt%)、結果的には2wt%の系が最も高い触媒活性を示した。図5~7に示すように、2wt%の系は担持されている金ナノ粒子の平均粒径が最も小さいことから、活性の高い触媒系ほど小さな金ナノ粒子が担持されていることがわかった。
【0054】
さらに、金ナノ粒子の担持量8wt%の場合について、ポリエチレンイミンの添加量の相違による触媒活性の相違を確認したところ、ポリエチレンイミンを900mg添加した場合(図9)では、転化率37%、アミノスチレンの収率(合計)28%と、ポリエチレンイミンを90mg添加した場合(表1)と比較して顕著に高い触媒活性を示した。ポリエチレンイミンの添加量が多い方が、担持される金ナノ粒子の粒径分布はより小さい方にシフトしており、触媒活性が向上したと考えられる。よって、塩化金酸四水和物の添加量が同じ場合には、ポリエチレンイミンの添加量が多いほど、触媒活性が向上することが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子は、繊維や膜など種々の形状・形態に容易に加工できるので、本発明のボロン酸エステル型高分子微粒子に貴金属粒子を担持させた触媒材料はソフトな触媒材料として種々の用途に利用できる。
【0056】
本発明の芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒は、ニトロ基に対する選択性が極めて高いので、試薬使用量や廃棄物の低減、分離・精製プロセスにおけるエネルギーを節減できる有用な触媒である。
図面
【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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