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明細書 :tetrakis-トリアルキルまたはフェニルシリルエチニル置換フタロシアニンおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-193956 (P2013-193956A)
公開日 平成25年9月30日(2013.9.30)
発明の名称または考案の名称 tetrakis-トリアルキルまたはフェニルシリルエチニル置換フタロシアニンおよびその製造方法
国際特許分類 C07F  19/00        (2006.01)
C07F   7/10        (2006.01)
C07F  15/04        (2006.01)
FI C07F 19/00
C07F 7/10 V
C07F 15/04
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2012-059068 (P2012-059068)
出願日 平成24年3月15日(2012.3.15)
発明者または考案者 【氏名】石丸 雄大
出願人 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 4H049
4H050
Fターム 4H049VN01
4H049VP04
4H049VQ73
4H049VR24
4H049VS43
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA02
要約 【課題】新規なフタロシアニンとその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物とその製造方法。
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(一般式(1)中、Mは、Ni、Cu、Co、Znまたは2つのHであり、R1、R2、R3は、独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である。)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
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(一般式(1)中、Mは、Ni、Cu、Co、Znまたは2つのHであり、R1、R2、R3は、独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項2】
一般式(2)で表される4-トリアルキルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリル(R1、R2、R3は、独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である)を金属塩(但し、金属はNi、Cu、CoまたはZnである)またはアンモニアの存在下、有機溶媒中で加熱して反応させることを含む、請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化2】
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発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性フタロシアニンであるtetrakis-トリアルキルまたはフェニルシリルエチニル置換フタロシアニンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアンニンは、古くから顔料として利用されてきたが、近年は情報記録用色素としての重要性が極めて高い化合物である。無置換のフタロシアニンは有機溶媒等への可溶性が極めて低いため、昇華法で薄膜等の作成が行われている。そこで近年塗布法等で利用可能にすることを目的にして、有機溶媒に可溶なフタロシアニンの合成が盛んに研究されている。また、金属フタロシアニンは分子磁性体や分子発光材料として盛んに研究されている。
【0003】
特に、4-tert-ブチルフタロニトリルから合成されたtetrakis-(tert-ブチル)フタロシアニンの金属錯体は、フタロシアニン環のπ-πスタッキングによる相互作用が小さくなることで各種有機溶媒に可溶であることが明らかになり、色素増感太陽電池用色素、光学フィルター、光記録用色素としての利用法が盛んに検討されている。これに関連して本発明者らは、アミノ基を有する新規な可溶性一置換フタロシアニンの効率的な製造方法について先に特許出願を行っている(特許文献1)。
【0004】
ところで、分子一つ一つにトランジスタやワイヤなどの素子の役割を持たせ、利用しようとする分子エレクトロニクスの研究が近年大きな注目を集めている。一個の分子の優れた電子的、光学的性質を利用できれば、それらを組み合わせることで分子集合体を使ったダイオード、ドランジスタ、レーザーなどの極限素子が実現できると期待されている。
【0005】
これまでトップダウンの手法で微細化に微細化を重ねてきた半導体産業であるが、微細加工を行う装置は非常に高価であり、大量生産には向いていない。しかし一方で、原子や分子といった物質の最小単位から組み立てるというボトムアップの手法も考えられるようになってきた。ボトムアップの手法において、大量生産を考えたときに最も効率の良い方法は自己組織化によるものである。有機超分子の自己集合は、静電気的相互作用、水素結合、van der Waals力、スタッキング効果やドナー・アクセプター効果などによる相互作用によって生じる。これらは従来のトップダウン手法に比べ極めて小さなエネルギーでナノサイズのデバイスを構築できる有用な手段である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-162575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大きなπ電子を持つ大環状錯体である金属フタロシアニンは、錯体が積層され金属—金属間の距離が十分に短くなると、π電子が面間で重なり柱状構造を形成する。しかしπ共役のためにこのような構造を持つフタロシアニンは可溶性をもたない。
【0008】
そこで本発明は、有機溶媒に対して可溶性であり、かつπスタッキングを利用した自発的自己集合による分子ナノワイヤの創製が可能な新規なフタロシアニンとその製造方法を提供するとともに、新しい発光原理に基づく新規発光分子が構築できることを明らかにすることを目的とする。
【0009】
本発明者らは、金属フタロシアニンに新たに嵩高いトリアルキルシリル基またはトリフェニルシリル基による有機溶媒への可溶性とエチニル基によるπ共役系の構築のためにトリアルキルシリルアセチレンまたはトリフェニルシリルアセチレンを導入し、可溶性を持たせるとともに、新たに生じたπスタッキングを利用した自発的自己集合による分子ナノワイヤの創製が可能であることを見出すと共に、新しい発光素子として利用可能であることを見出して本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の以下のとおりある。
[1]
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
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一般式(1)中、Mは、Ni、Cu、Co、Znまたは2つのHであり、R1、R2、R3は、独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である。炭素数1~6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基であることができる。R1、R2、R3は、同一または異なる基であることができるが、製法上、好ましくは同一である。
【0011】
[2]
一般式(2)で表される4-トリアルキルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリル(R1、R2、R3は、独立に、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である)を金属塩(但し、金属はNi、Cu、CoまたはZnである) またはアンモニアの存在下、有機溶媒中で加熱して反応させることを含む、[1]に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化2】
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【発明の効果】
【0012】
一般式(1)で示される本発明の化合物は、有機溶媒に対して可溶性可溶性であり、かつπスタッキングを利用した自発的自己集合による分子ナノワイヤの創製が可能な新規なフタロシアニンであると共に、近紫外域で螢光発光する新規な物性を有することを見出した。一般に金属フタロシアニンは、中心金属により螢光発光する化合物としない化合物があることが知られている。中心金属がニッケルのフタロシアニンは、一般には蛍光発光しない分子として、知られている。しかし、本発明においては、トリアルキルエチニル基を導入することで、一般では報告のない400 nm付近で発光することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】化合物6の1HNMRスペクトル(in CDCl3)を示す。
【図2】化合物7のTOF-MSスペクトルを示す。
【図3】化合物7の電子顕微鏡写真を示す。
【図4】化合物7の電子顕微鏡写真(拡大画像)を示す。
【図5】化合物7のAFM像を示す。
【図6】化合物7のUV-vis スペクトルを示す。
【図7】化合物7の螢光スペクトルを示す。

【0014】
<一般式(1)で表される化合物の製造方法>
一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)で表される4-トリアルキルまたはフェニルシリルエチニルフタロニトリルを反応させることで製造することができる。
【0015】
【化3】
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【0016】
一般式(2)で表される4-トリアルキルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリルは、フタルイミドを原料として合成することができる。4-トリメチルシリルエチニルフタロニトリルの合成例を以下にスキームとして示す。
【0017】
【化4】
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【0018】
出発原料である化合物6を合成するために、まずフタルイミドをニトロ化し、4-ニトロフタルイミド(1)を得る。これをアミド化して、4-ニトロフタルアミド(2)を得る。化合物(2)を脱水し、4-ニトロフタロニトリル(3)を合成し、さらにニトロ基を還元することで4-アミノフタロニトリル(4)を得る。さらに、化合物(4)のアミノ基をヨウ素化することで、4-ヨードフタロニトリル(5)を合成し、これに薗頭クロスカップリング用い、トリメチルシリルアセチレンを導入することで、4-トリメチルシリルエチニルフタロニトリル(6)を得る。化合物6までの合成法は既知である。(例えば、文献(1)S. M. Marcuccio., et al., Can. J. Chem., 36, 3057-3069,1985)トリメチルシリルアセチレンの代わりに、他のトリアルキルシリルアセチレンまたはトリフェニルシリルアセチレンを用いることで、一般式(2)で示される4-トリアルキルシリルエチニルフタロニトリルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリルを上記と同様に合成できる。
【0019】
一般式(1)で表される化合物の合成経路を、トリアルキル基がトリメチル基である場合を例に以下に示す。
【化5】
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【0020】
上記反応は、式(6)で示される4-トリメチルシリルエチニルフタロニトリルを金属塩の存在下、有機溶媒中で加熱して行うことができる。加熱温度は、有機溶媒及び金属塩の種類を考慮して適宜決定できるが、例えば、80~130℃の範囲とすることができる。反応時間は、有機溶媒、加熱温度及び金属塩の種類を考慮して適宜決定できるが、例えば、3~48時間の範囲とすることができる。有機溶媒は、反応温度を考慮して適宜決定でき、例えば、ジメチルアミノエタノール、キノリン、n-ペンタン-1-オール等を用いることができる。金属塩の金属は、一般式(1)で表される化合物のMに応じて、ニッケル、銅、コバルトおよび亜鉛から適宜選択することができる。金属塩は、例えば、有機酸塩、無機酸塩等であることができ、有機酸塩を形成する有機酸としては、例えば、酢酸等を挙げることができ、無機酸塩を形成する無機酸としては塩酸および硫酸を挙げることができる。金属塩の反応への使用量は、4-トリメチルシリルエチニルフタロニトリルに対して当量以上とすることが適当であり、例えば、1~50当量の範囲とすることができる。4-トリメチル以外の4-トリアルキルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリルも上記と同様に合成できる。
【0021】
また、中心金属がないフタロシアニンは上記反応条件で金属塩の代わりにアンモニアを用いることで得られる。アンモニアは、例えば、ガスとして、式(6)で示される4-トリメチルシリルエチニルフタロニトリルを含有する有機溶媒中に加熱下でバブリングすることにより供給できる。加熱温度は、有機溶媒の種類を考慮して適宜決定できるが、例えば、80~130℃の範囲とすることができる。反応時間は、有機溶媒及び加熱温度を考慮して適宜決定できるが、例えば、3~48時間の範囲とすることができる。有機溶媒は、反応温度を考慮して適宜決定でき、例えば、ジメチルエタノール、ジメチルアミノメタノール、キノリン、n-ペンタン-1-オール等を用いることができる。アンモニアを用いる反応については、以下の文献を参照できる(P. J. Brach, S. J. Grammatica, O. A. Ossanna, L. Weinberger, J. Heterocycl. Chem., 7, 1403, 1970)。4-トリメチル以外の4-トリアルキルまたは4-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリルも上記と同様に合成できる。
【0022】
反応終了後、反応溶液は、例えば、水に添加する。一般式(1)で示されるtetrakis-トリメチルシリルエチニル置換フタロシアニンは、トリメチルシリルエチニルを有するために水に不溶である。そのため、一般式(1)で示されるtetrakis-トリメチルシリルエチニル置換フタロシアニンは沈殿するので、これを常法により固液分離して、固体として回収することができる。回収した一般式(1)で示されるtetrakis-トリメチルシリルエチニル置換フタロシアニンは、さらに常法により精製することもできる。tetrakis-トリメチル以外のtetrakis-トリアルキルまたはtetrakis-トリフェニルシリルエチニルフタロニトリルも上記と同様に回収及び精製できる。
【0023】
一般式(1)で示されるtetrakis-トリアルキルまたはtetrakis-トリフェニルシリルエチニル置換フタロシアニンは、4つのトリアルキルまたはトリフェニルシリルエチニル基を有することから、πスタッキングを利用した自発的自己集合による分子ナノワイヤの創製が可能である。特に中心金属Mが亜鉛である化合物や中心金属がない化合物(M=2H)は一般的な金属フタロシアニン特有の700 nm付近に蛍光発光特性を示すが、中心金属Mがニッケルである化合物では、一般の金属フタロシアニンでは通常現れない400 nm付近に蛍光発光特性を示すという新しい特性が明らかになった。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0025】
4-(2-trimethylsilylethynyl)phthalonitrile(6)の合成
【化6】
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【0026】
セプタムを取り付けた30 ml二口フラスコに化合物5(0.508 g, 20 mmol)、ヨウ化銅(I)(3.8 mg, 0.02 mmol)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド
(14 mg, 0.02 mmol)を入れてアルゴン置換する。さらに、セプタムを取り付けた30 ml二口フラスコをアルゴン置換した後に、シリンジを用いてトリメチルシリルアセチレン(0.31 ml)、ジエチルアミン(8.0 ml)を加え、凍結脱気を三回行う。脱気終了後、両針を用いて先に用意した30 ml二口フラスコに溶液を移動させ、室温で3時間反応する。反応終了後、溶液を吸引濾過して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 = ヘキサン:塩化メチレン = 70:30)で精製することで化合物6を得た。
化合物6の構造決定は、図1に示す化合物6の1HNMRスペクトル(in CDCl3)により行った。
【0027】
Ni(II) tetrakis-(trimethylsilylethynyl)phthalocyanine(7)の合成
【化7】
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【0028】
30 mlの二口フラスコにセプタムを取り付け、撹拌子、化合物6(30 mg, 0.13 mmol)、塩化ニッケル六水和物(31 mg)を入れ、アルゴン置換する。その後シリンジを用いてジメチルアミノエタノール(2.0 ml)を加え、100℃で6時間加熱撹拌する。反応終了後、水に入れて固体を析出させる。析出固体を吸引濾過し、アルミナカラムクロマトグラフィー(溶出液 = クロロホルム)で精製し、化合物7を得る。収量 3.53 mg、収率 11 %
化合物7の確認は、図2に示す化合物7のTOF-MSスペクトルにより行った。
【0029】
合成した化合物7のクロロホルム溶液をプレート上に自然乾燥することで、自己集合体を形成する。そのときできた自己集合体の電子顕微鏡写真を図3及び4に示す。
フタロシアニン環が自己集合していることを明らかにした原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った(図5)。その結果フタロシアニン環に由来する約13から16Åで中心金属間が約8Åの化合物の観察に成功した。さらに、化合物7のUV-vis スペクトルを図6に、螢光スペクトルを図7に示す。図7に示すように、化合物7は、一般では報告のない400 nm付近で発光する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、有機薄膜太陽電池用ドナー分子や有機半導体素子として利用可能であるとともに、分子導電性材料としても利用可能である。また、近紫外域での蛍光特性を利用することで紙幣の偽造防止用蛍光色素やラベリング用色素に関連する分野に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6