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明細書 :ポルフィリン含有複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-136555 (P2013-136555A)
公開日 平成25年7月11日(2013.7.11)
発明の名称または考案の名称 ポルフィリン含有複合体
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
A61K  47/22        (2006.01)
A61K  31/409       (2006.01)
C07D 487/22        (2006.01)
FI A61K 49/00 A
A61K 47/22
A61K 31/409
C07D 487/22
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 52
出願番号 特願2012-054845 (P2012-054845)
出願日 平成24年3月12日(2012.3.12)
優先権出願番号 2011259223
優先日 平成23年11月28日(2011.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】林 幸壱朗
出願人 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C050
4C076
4C085
4C086
Fターム 4C050PA01
4C076DD60A
4C085HH01
4C085KB56
4C086AA10
4C086CB04
4C086MA02
4C086MA05
要約 【課題】安価で毒性がなく、細胞の自家蛍光の影響を受けない、近赤外蛍光プローブを提供すること。
【解決手段】ポルフィリン含有複合体であって、(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、(B)アニオン性ポルフィリン、及び(C)非カチオン性シランが結合してなり、当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長である、ポルフィリン含有複合体。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ポルフィリン含有複合体であって、少なくとも
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
が結合してなり、
当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長である、
ポルフィリン含有複合体。
【請求項2】
(B)アニオン性ポルフィリンの含有量が、当該(A)~(C)合計量を100重量部としたときに30重量部以上である、請求項1に記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項3】
700~800nmの蛍光ピーク波長を示す、請求項1又は2に記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項4】
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
が共有結合又は静電相互作用による結合により結合してなる、
請求項1~3のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項5】
(A)カチオン性オルガノアルコキシシランが、式(I):
-Si(R2a(OR1a(4-i—j) (I)
(式中、XはHNC2m-、HNC2n-HNC2m-、N(CH-C2m-、又はPh-C2m-〔ここでPhはフェニル基を示す〕で示される基を示し、
1a及びR2aは、同一又は異なって、炭素数1~6のアルキル基を示し、
iは1又は2、jは0又は1、〔但し(4-i-j)≧2〕を示し、
m及びnは、同一又は異なって、1~6の整数を示す)
で表される化合物である、請求項1~4のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項6】
(B)アニオン性ポルフィリンが、式(II):
【化1】
JP2013136555A_000088t.gif
(式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bは、同一又は異なって、カルボキシル基、スルホ基又は水素原子を示す(但し全て水素原子である場合は除く))で表される化合物、ビリルビン、ヘミン、及びプロトポルフィリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項7】
(C)非カチオン性シランが、式(III):
-Si(R2c(OR1c(4-p—q) (III)
(式中、YはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、OCNCHCH-で示される基、ClCα2α-で示される基、HSCβ2β-で示される基、CFγ2γ-Cδ2δ-で示される基、CH=C(CH)COOCε2ε-で示される基、CH=CHCOOCζ2ζ-で示される基、HN-CONH-Cη2η-で示される基、
下式:
【化2】
JP2013136555A_000089t.gif
で示される基、
下式:
【化3】
JP2013136555A_000090t.gif
で示される基、
炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基を示し、
1cは、炭素数1~6のアルキル基、又は-(CHτ-OCHを示し、
2cは、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を示し、
α、β、δ、ε、ζ、η、θ及びιは、それぞれ独立して1~6の整数を示し、γは0~8の整数を示し、τは1~4の整数を示し、
pは0、1又は2、qは0又は1、〔但し(4-p-q)≧2〕を示す)で表される化合物、
式(IV):
Z-SiCl (IV)
(式中、ZはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、ClCκ2κ-で示される基、CFλ2λ-Cξ2ξ-で示される基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基を示し、
κ及びξは、それぞれ独立して1~6の整数を示し、λは0~8の整数を示す)で表される化合物、及びN-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩
からなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1~6のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項8】
PEG化された、請求項1~7のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項9】
リング状である、請求項1~8のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
【請求項10】
請求項9に記載のポルフィリン含有複合体に造影剤が内包されてなる、造影剤内包ポルフィリン含有複合体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ又は光線力学療法用光増感剤。
【請求項12】
請求項10に記載の造影剤内包ポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ、光線力学療法用光増感剤又はデュアルモーダルイメージング用造影剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィリン含有複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光イメージングは他のイメージング(MRIやX-ray CTなど)に比べて安価且つ迅速に生体のイメージングを行うことが可能であるため、癌診断や細胞又は薬剤の体内分布を調べる有用な方法として注目されている。従来の蛍光イメージングでは、励起のためにUVまたは可視光といった光を用いているが、これらの光は、メラニン・ヘモグロビン・水等により吸収されたり、あるいは散乱されたりするため、光がほとんど生体内へ浸透せず、生体深部のイメージングができない(即ち、組織透過性が悪い)という問題があった。またさらに、紫外領域又は可視領域でのイメージングでは、細胞の自家蛍光が強く、蛍光プローブからの光の検出を妨げるため、SN比が悪いという問題があった。一方、近赤外領域(波長650 nm~900 nm)の光を用いることで、光の散乱及び吸収、並びに細胞の自家蛍光を弱めることができるため、より深く、明瞭なイメージングを行うことができる。特に、近赤外領域では波長が長くなるにつれて細胞の自家蛍光は弱くなり、蛍光波長740nm付近では自家蛍光の影響をほぼ無視できる。しかしながら、従来用いられている近赤外蛍光プローブは、有機色素分子やカドミウムを含むものが多く(例えば半導体量子ドット)、コストや毒性の問題があった。このため、安価で毒性のない近赤外蛍光プローブが求められている。
【0003】
ポルフィリンは近赤外領域に蛍光波長をもつ蛍光色素であり、比較的安価に入手可能である。また、ポルフィリンは、光照射により活性酸素(1O2)を生成するため、この1O2を利用した治療である光線力学療法への応用も期待されている。しかし、一般に、ポルフィリンの励起波長は近赤外領域よりも短く、また、蛍光波長も近赤外領域に有るとはいっても細胞の自家蛍光が無視できる領域にはない。また、ポルフィリンは、水に溶解しにくく、毒性を示す。また、ポルフィリンは、π-πスタッキングによりJ会合体を形成した場合、吸収波長が長波長側にシフトする(レッドシフトする)ことが知られているが、J会合体は塩濃度やpHの影響を受けやすく、また、J会合体の形成は様々な分子との相互作用に大きく依存するため、生理活性条件化では、J会合体は形成されにくい。以上のことから、ポルフィリンを単独で、近赤外蛍光プローブとして用いることは(特に生体観察のための近赤外蛍光プローブとして用いることは)困難であった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Materials Research Bulletin 45 (2010) 1150-1156
【非特許文献2】J Sol-Gel Sci Technol (2011) 59:276-282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安価で毒性がなく、細胞の自家蛍光の影響を受けない、近赤外蛍光プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、驚くべき事に、(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、(B)アニオン性ポルフィリン、及び(C)非カチオン性シランが結合してなるポルフィリン含有複合体であれば、当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長となる蓋然性が高いこと、並びに、当該複合体を細胞の自家蛍光の影響を受けない近赤外蛍光プローブとして好ましく用い得ること、を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の複合体等を包含する。
項1.
ポルフィリン含有複合体であって、少なくとも
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
が結合してなり、
当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長である、
ポルフィリン含有複合体。
項2.
(B)アニオン性ポルフィリンの含有量が、当該(A)~(C)合計量を100重量部としたときに30重量部以上である、項1に記載のポルフィリン含有複合体。
項3.
700~800nmの蛍光ピーク波長を示す、項1又は2に記載のポルフィリン含有複合体。
(蛍光ピーク波長は、励起波長に依存して変化するが、励起波長650~700nm間のいずれか1点の励起波長において、上記波長範囲(700~800nm、より好ましくは720~780nm)に含まれる蛍光ピーク波長を示す項1又は2に記載のポルフィリン含有複合体をいう。特に、励起波長670nmにおいて上記蛍光ピーク波長を示すものが好ましい。なお、蛍光測定は、水溶液中にポルフィリン含有複合体を溶解させて行う。)
項4.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
が共有結合又は静電相互作用による結合により結合してなる、
項1~3のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項5-1.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシランが、式(I):
-Si(R2a(OR1a(4-i—j) (I)
(式中、XはHNC2m-、HNC2n-HNC2m-、N(CH-C2m-、又はPh-C2m-〔ここでPhはフェニル基を示す〕で示される基を示し、
1a及びR2aは、同一又は異なって、炭素数1~6のアルキル基を示し、
iは1又は2、jは0又は1、〔但し(4-i-j)≧2〕を示し、
m及びnは、同一又は異なって、1~6の整数を示す)
で表される化合物である、請求項1~4のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項5-2.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシランが、トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びトリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シランからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、項5-1に記載のポルフィリン含有複合体。
項5-3.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシランが、トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(TMAPS)及び/又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)である、項5-2に記載のポルフィリン含有複合体。
項6-1.
(B)アニオン性ポルフィリンが、式(II):
【0008】
【化1】
JP2013136555A_000002t.gif

【0009】
(式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bは、同一又は異なって、カルボキシル基、スルホ基又は水素原子を示す(但し全て水素原子である場合は除く))で表される化合物、ビリルビン、ヘミン、及びプロトポルフィリンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~5-3のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項6-2.
(B)アニオン性ポルフィリンが、式(II):
【0010】
【化2】
JP2013136555A_000003t.gif

【0011】
(式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bが、全てカルボキシル基又は全てスルホ基を示す)で表される化合物である、項6-1に記載のポルフィリン含有複合体。
項7-1.
(C)非カチオン性シランが、式(III):
-Si(R2c(OR1c(4-p—q) (III)
(式中、YはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、OCNCHCH-で示される基、ClCα2α-で示される基、HSCβ2β-で示される基、CFγ2γ-Cδ2δ-で示される基、CH=C(CH)COOCε2ε-で示される基、CH=CHCOOCζ2ζ-で示される基、HN-CONH-Cη2η-で示される基、
下式:
【0012】
【化3】
JP2013136555A_000004t.gif

【0013】
で示される基、
下式:
【0014】
【化4】
JP2013136555A_000005t.gif

【0015】
で示される基、
炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基を示し、
1cは、炭素数1~6のアルキル基、又は-(CHτ-OCHを示し、
2cは、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を示し、
α、β、δ、ε、ζ、η、θ及びιは、それぞれ独立して1~6の整数を示し、γは0~8の整数を示し、τは1~4の整数を示し、
pは0、1又は2、qは0又は1、〔但し(4-p-q)≧2〕を示す)で表される化合物、
式(IV):
Z-SiCl (IV)
(式中、ZはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、ClCκ2κ-で示される基、CFλ2λ-Cξ2ξ-で示される基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基を示し、
κ及びξは、それぞれ独立して1~6の整数を示し、λは0~8の整数を示す)で表される化合物、及びN-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩
からなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1~6-2のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項7-2.
(C)非カチオン性シランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、3-トリメトキシシリルプロピルクロリド、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、アリルトリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、3-クロロプロピルトリクロロシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n-オクチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリクロロ-2-シアノエチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロテトラデシルシラン、及びN-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、項7-1に記載のポルフィリン含有複合体。
項7-3.
(C)非カチオン性シランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、項7-2に記載のポルフィリン含有複合体。
項8.
PEG化(ポリエチレングリコールにより修飾)された、項1~7-3のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項9.
リング状である、項1~8のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体。
項10.
項9に記載のポルフィリン含有複合体に造影剤(好ましくはX線造影剤、より好ましくは金粒子)が内包されてなる、X線造影剤内包ポルフィリン含有複合体。
項11.
項1~9のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ又は光線力学療法用光増感剤。
項12.
項10に記載のX線造影剤内包ポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ、光線力学療法用光増感剤又はデュアルモーダルイメージング用造影剤。
【0016】
項A-1.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
を0℃~60℃にて反応させる工程を含む、(A)~(C)が結合してなるリング状ポルフィリン含有複合体の製造方法。
項A-2.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン
(B)アニオン性ポルフィリン、及び
(C)非カチオン性シラン
を0℃~60℃にて反応させる工程を含む、項9に記載のリング状ポルフィリン含有複合体の製造方法。
項A-3.
項A-1又はA-2に記載の製造方法で得られるリング状ポルフィリン含有複合体。
【0017】
項B-1.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン及び(B)アニオン性ポルフィリンが共有結合した(A)-(B)結合体、
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、及び
(C)非カチオン性シラン
を加水分解及び縮合する工程を含む、(A)~(C)が結合してなるポルフィリン含有複合体の製造方法。
項B-2.
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン及び(B)アニオン性ポルフィリンが共有結合した(A)-(B)結合体、
(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、及び
(C)非カチオン性シラン
を加水分解及び縮合する工程を含む、項1~9のいずれかに記載のポルフィリン含有複合体の製造方法。
項B-3.
項B-1又は項B-2に記載の製造方法で得られるポルフィリン含有複合体。
項B-4.
項B-3に記載のポルフィリン含有複合体にX線造影剤(好ましくは金粒子)が内包されてなる、X線造影剤内包ポルフィリン含有複合体。
項B-5.
項B-3に記載のポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ又は光線力学療法用光増感剤。
項B-6.
項B-4に記載のX線造影剤内包ポルフィリン含有複合体を含む、蛍光プローブ、光線力学療法用光増感剤又はデュアルモーダルイメージング用造影剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複合体は、特に、高感度かつ生体深部の蛍光イメージングを達成するためのプローブとして有用である。また、当該複合体は、細胞毒性が低い一方で、光照射により活性酸素を産生するため、光線力学療法用光増感剤としても有用である。さらに、当該複合体は、特に癌組織において長期間滞在する性質(長期滞在性)を示すため、蛍光プローブとしても光線力学療法用光増感剤としても、癌組織に対して適用する際に特に有用である。またさらに、当該複合体は、さらに化学修飾することも可能であり、例えばPEG修飾を行うことにより血中滞留時間を大きく延長することもできる。また、癌組織は血管壁のできが雑であり、正常組織の血管よりも1オーダー以上広い50nm~200nmの隙間が空いているため、この範囲の大きさのナノ粒子は癌組織特異的に進入することが知られている。これをEnhanced Permeation and Retention Effect(EPR効果)という。本発明の複合体は、当該効果も期待することができる。また、本発明の複合体のうち、特にリング状のものについては、内部に有用成分を内包することができる。よって、例えば、X線造影剤(好ましくは金粒子)を内包させることにより、蛍光イメージングとX線CTを組み合わせたデュアルモーダルイメージング用造影剤として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】trimethyl[3-(trimethoxysilyl)-propyl]ammonium chloride(TMAPS)、tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)及びtetraethyl orthosilicate(TEOS)を22℃で反応させて得た複合体(実施例1)を、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した結果をa)~c)に示す。また、TMAPS、TCPP及びTEOSを80℃で反応させて得た粒状物(比較例1)をTEMにより観察した結果をd)に示す。
【図2】TMAPSの代わりに3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様に操作して得た複合体(実施例2)のTEM撮影画像をa)に示す。また、80℃で反応させた以外は同様に操作して得た粒状物(比較例2)のTEM撮影画像をb)に示す。
【図3】実施例1で得たチューブ状複合体をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させた写真をa)に示し、これを動的光散乱測定装置により測定を行った結果をb)に示す。
【図4】実施例1で得たチューブ状複合体(粉末状)をフーリエ変換赤外分光光度計により測定した結果を示す。併せて、TEOS、TMAPS、及びTCPPを同様に測定した結果を示す。a)がTEOS、b)がTMAPS、c)がTCPP、d)がチューブ状複合体のスペクトルを示す。
【図5a】ポルフィリン(TCPP)を4頂点部分にそれぞれカルボン酸由来負電荷を有する正方形平板にたとえた図である。
【図5b】正方形平板(TCPP)がπ-πスタッキングにより重複したもの(J会合体)が、さらに負電荷によりカチオン性オルガノアルコキシシランの正電荷と相互作用しており、これらがチューブ状複合体の側面を構成しているであろうことを表した推定図である
【図6】実施例1で得たチューブ状複合体をPBSに溶解させて得た溶液(チューブ状複合体PBS溶液)について、紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。また、併せて、比較例2で得た生成物(球状粒子)、及びTCPPについて同様に測定を行った結果を示す。
【図7】チューブ状複合体PBS溶液について、蛍光スペクトル(励起波長670 nm)を測定した結果を示す。また、比較例2で得た生成物(球状粒子)、及びTCPPについて同様に測定を行った結果を併せて示す。
【図8】チューブ状複合体PBS溶液について波長660~690nmの光励起時の蛍光像を示す。
【図9】DPIBF(1,3-diphenylisobenzofuran)とチューブ状複合体を含む溶液に、波長635~675nm(光源;水銀ランプ)の光を照射した際の、DPIBFの吸収スペクトルの変化を測定した結果を示す。
【図10】チューブ状複合体の毒性をWST-1アッセイにより調べた結果を示す。
【図11】チューブ状複合体に光照射した際の細胞毒性を、WST-1アッセイにより調べた結果を示す。
【図12】チューブ状複合体によりマクロファージを蛍光染色した結果を示す。
【図13】マウスの自家蛍光を測定した結果を示す。
【図14】チューブ状複合体で標識されたマクロファージをマウスの皮下に投与し、蛍光を測定した結果を示す。
【図15】チューブ状複合体で標識されたマクロファージをマウスに静脈投与し、蛍光を測定した結果を示す。a~dはin vivoイメージング結果、e~hはex vivoイメージング結果である。
【図16a】担癌マウスに対して、チューブ状複合体又はTCPPを癌部に直接投与(intratumor投与)し、蛍光を観察した結果を示す。
【図16b】図16aに示す傾向イメージングのradiant efficiency (RE)の変化を示す。
【図17】TCPPに3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を共有結合させ、TCPP-APTES結合体を作製し、さらに当該結合体にさらにTEOS及びAPTESを共有結合させて、ポルフィリン含有複合体を製造したときの、概要を示す。
【図18】実施例3複合体及び比較例4集合物の透過型電子顕微鏡(TEM)観察画像を示す。
【図19】FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により得られた、TEOS、APTES、TCPP及び実施例3複合体のスペクトルを示す。
【図20】実施例3複合体の29Si NMR測定結果を示す。
【図21】実施例3複合体の13C NMR測定結果を示す。
【図22】実施例3複合体および比較例4集合物の熱重量分析結果を示す。
【図23】生理食塩水に分散させた実施例3複合体および比較例4集合物を示す。
【図24】生理食塩水に分散させた実施例3複合体および比較例4集合物の吸収スペクトルを示す。
【図25】生理食塩水に分散させた実施例3複合体および比較例4集合物の蛍光イメージ(励起波長675nm)を示す。
【図26】実施例3複合体および比較例4集合物の平均蛍光強度(左側)および最大蛍光強度(右側)の波長依存性を示す。
【図27】実施例3複合体のPEG化の概要を示す。
【図28】FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により得られた、PEG修飾された実施例3複合体のスペクトルを示す。
【図29】PEG化実施例3複合体を静脈投与し、IVIS Spectrumを用いて蛍光を観察した結果を示す。
【図30】金粒子内包実施例3複合体の調製の概要を示す。
【図31】金粒子内包実施例3複合体のTEM観察画像を示す。
【図32】動的光散乱(DLS)により、水溶液中での金粒子内包実施例3複合体の粒径を測定した結果を示す。
【図33】金粒子、TCPP、及び金粒子内包実施例3複合体の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。
【図34】左側に金粒子内包実施例3複合体の蛍光画像を、右側に蛍光波長と蛍光強度の関係を示したグラフを、それぞれ示す。
【図35】左側に、金粒子内包実施例3複合体200mM(Auとして)、イオパミロン200mM(Iとして)、及び水のX線CT画像を示す。右側に、金粒子内包実施例3複合体及びイオパミロンの濃度(それぞれAu濃度、I濃度)とCT値との関係を表すグラフを示す。
【図36】金粒子内包実施例3複合体をマウスに投与した際の蛍光観察結果を示す。
【図37】図36で観察された蛍光強度をグラフ化した図を示す。
【図38】金粒子内包実施例3複合体投与前と投与後24時間に取得した、マウスのX線CT画像(側面)を示す。
【図39】金粒子内包実施例3複合体投与前と投与後24時間に取得した、マウスのX線CT画像(正面)を示す。
【図40】図38及び図39で観察されたCT値をグラフ化した図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。

【0021】
本発明は、ポルフィリン含有複合体であって、少なくとも(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、(B)アニオン性ポルフィリン、及び(C)非カチオン性シランが結合してなり、当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長である、ポルフィリン含有複合体に係る。以下これら(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、(B)アニオン性ポルフィリン、(C)非カチオン性シランを、それぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分ということがある。

【0022】
なお、本明細書において、カチオン性とは、pH7以上の水溶液に溶解させた際に、陽イオンとなるという意味であり、アニオン性とは、pH7以上の水溶液に溶解させた際に、陰イオンとなるという意味である。pH7以上の水溶液に溶解させた際に、陽イオン又は陰イオンとなるか否かは、ゼータ電位を測定することで確認できる。pH7以上の水溶液に溶解させた際のゼータ電位が、マイナスであれば陰イオンであり、プラスであれば陽イオンである。また、本明細書におけるpHは25℃でpHメーターを用いて測定した値である。

【0023】
本発明のポルフィリン含有複合体は、少なくとも(A)、(B)及び(C)成分が結合してなる。特に(A)、(B)及び(C)成分が結合してなるものが好ましい。結合様式は特に制限されないが、共有結合又は静電相互作用による結合であることが好ましい。また、結合様式によっては、特に結合部分において化学構造が若干変化することにより、(A)、(B)及び(C)成分がそのまま複合体中に含まれない場合もあり得るが、そのような複合体も本発明における(A)、(B)及び(C)成分が「結合してなる」複合体に含まれる。例えば、各成分間で脱水縮合反応(分子間脱水反応)が起こった結果、各成分同士が共有結合により結合する場合がある。より具体的には、例えば各成分間で-COOH基と-NH基又は-OH基が反応して脱水縮合し、-CONH-又は-COO-により各成分が共有結合する場合が例示できる。このような結合様式により結合してなる複合体には、もはや(A)、(B)及び(C)成分がそのまま含まれるわけではないが、このような複合体も本発明における“(A)、(B)及び(C)成分が「結合してなる」複合体”に包含されるということである。

【0024】
なお、1の複合体において、(A)、(B)及び(C)成分は、全て同様の結合様式で結合される必要はなく、各成分間の結合様式は異なっていても同一であってもよい。また、これら3種の成分は、3種成分が全て結合しているのであれば、全ての成分が他の2種の成分の両方と結合している(すなわち(A)成分が(B)(C)成分と結合し、(B)成分が(A)(C)成分と結合し、(C)成分が(A)(B)成分と結合する)必要はなく、例えば3種成分のうち1種のみが残り2種と結合しているだけであってもよい。

【0025】
本発明のポルフィリン含有複合体は、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長の蛍光波長を有する。つまり、(B)アニオン性ポルフィリン含有複合体そのものが有する蛍光波長に比べ、(A)、(B)及び(C)成分が結合してなる本発明のポルフィリン含有複合体が有する蛍光波長の方が長い。上述のように、一般に、ポルフィリンの蛍光波長は近赤外領域に有るとはいっても、細胞の自家蛍光が無視できる領域にはないが、本発明のポルフィリン含有複合体の有する蛍光波長は、これよりも長波長であるため、細胞の自家蛍光がほぼ無視できる領域に存在する。本発明のポルフィリン含有複合体の蛍光ピーク波長は、好ましくは700~800nm、より好ましくは700~780nm、さらに好ましくは720~780nmである。なお、蛍光ピーク波長は、励起波長に依存して変化するが、励起波長650~700nm間のいずれか1点の励起波長において、上記波長範囲(好ましくは700~800nm、より好ましくは720~780nm)に含まれる蛍光ピーク波長を示せばよい。特に、励起波長670nmにおいて上記蛍光ピーク波長を示すものが好ましい。なお、蛍光測定は、水溶液中にポルフィリン含有複合体を溶解させて行う。当該水溶液としては、例えば生理食塩水やPBS(リン酸緩衝生理食塩水)が挙げられる。

【0026】
本発明のポルフィリン含有複合体においては、(B)アニオン性ポルフィリンの含有量が多いほど蛍光強度が強まるので好ましい。また特に、(A)、(B)及び(C)成分が結合してなるポルフィリン含有複合体でなければ、(B)アニオン性ポルフィリンを多く含有させることが難しいため、アニオン性ポルフィリンを多く含有できるという点でも本願発明のポルフィリン含有複合体は優れている。特に限定はされないが、(B)アニオン性ポルフィリンの含有量が、(A)~(C)成分合計量を100重量部としたときに30重量部以上であることが好ましく、35重量部以上であることがより好ましく、40重量部以上であることがさらに好ましい。なお、当該(B)成分の含有重量部比値は、ポルフィリン含有複合体を熱重量分析した際の有機物の重量減少割合(但し水の重量減少の影響は差し引く)から求めた値である。

【0027】
(A)カチオン性オルガノアルコキシシランとしては、カチオン性を示すオルガノアルコキシシランであれば、特に制限されない。例えば、式(I):
-Si(R2a(OR1a(4-i—j) (I)
で表される化合物が好適である。

【0028】
式(I)において、XはHNC2m-、HNC2n-HNC2m-、N(CH-C2m-、又はPh-C2m-〔ここでPhはフェニル基を示す〕で示される基を示し、中でもHNC2m-、HNC2n-HNC2m-、又はN(CH-C2m-で示される基が好適である。m及びnは、同一又は異なって、1~6の整数を示す。mは1、2、3又は4が好ましく、1、2、又は3がより好ましい。nは1、2、3又は4が好ましく、1、2、又は3がより好ましい。また、上記どの基におけるC2mも(CHが好適であり、C2nも(CHが好適である。つまり、上記のHNC2m-、HNC2n-HNC2m-、N(CH-C2m-、Ph-C2m-は、それぞれ、HN(CH-、HN(CH-HN(CH-、N(CH-(CH-、Ph-(CH-であることが好ましい。

【0029】
また、R1a及びR2aは、同一又は異なって、炭素数1~6のアルキル基を示す。当該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよく、直鎖状が好ましい。また、炭素数1、2、3又は4のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、イソヘキシル、3-メチルペンチル基等が例示される。中でも、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルが好ましい。

【0030】
また、iは1又は2、jは0又は1、〔但し(4-i-j)≧2〕を示す。すなわち、(i、j)は(1、0)、(1、1)、又は(2、0)を示す。

【0031】
式(I)で表される化合物としては、具体的には例えば以下に記載する化合物が例示される。なお、以下の例示では、化合物の英語表記及び日本語表記を挙げ、さらに構造式を示す。

【0032】
Trimethyl[3-(trimethoxysilyl)propyl]ammonium Chloride トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(TMAPS)

【0033】
【化5】
JP2013136555A_000006t.gif

【0034】
Trimethyl[3-(triethoxysilyl)propyl]ammonium Chloride トリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド

【0035】
【化6】
JP2013136555A_000007t.gif

【0036】
3-Aminopropyltriethoxysilane 3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)

【0037】
【化7】
JP2013136555A_000008t.gif

【0038】
3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン

【0039】
【化8】
JP2013136555A_000009t.gif

【0040】
3-(2-Aminoethylamino)propyltriethoxysilane 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン

【0041】
【化9】
JP2013136555A_000010t.gif

【0042】
3-(2-Aminoethylamino)propyltrimethoxysilane 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン

【0043】
【化10】
JP2013136555A_000011t.gif

【0044】
3-Aminopropyldiethoxymethylsilane 3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン

【0045】
【化11】
JP2013136555A_000012t.gif

【0046】
3-Aminopropyltrimethoxysilane 3-アミノプロピルトリメトキシシラン

【0047】
【化12】
JP2013136555A_000013t.gif

【0048】
Trimethoxy[3-(phenylamino)propyl]silane トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン

【0049】
【化13】
JP2013136555A_000014t.gif

【0050】
以上のような化合物が、式(I)で表される化合物として例示される。中でも、トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(TMAPS)又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)が好ましい。

【0051】
本発明に用いるカチオン性オルガノアルコキシシランは、公知の化合物であるか、又は公知の方法により容易に製造できる。例えば、上記例示のカチオン性オルガノアルコキシシランは、全て市販されており、例えば東京化成工業株式会社等から購入できる。また、カチオン性オルガノアルコキシシランは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0052】
(B)アニオン性ポルフィリンとしては、アニオン性を示すポルフィリンを用いることができる。なお、“ポルフィリン”は、4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した環状化合物とその誘導体の総称の意味で用いている。

【0053】
アニオン性ポルフィリンとしては、例えば、式(II):

【0054】
【化14】
JP2013136555A_000015t.gif

【0055】
で表される化合物を用いることができる。式(II)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bは、同一又は異なって、カルボキシル基(COOH)、スルホ基(SOH)又は水素原子(H)を示す(ただし、全て水素原子である場合は除く)。好ましくは、R1b、R2b、R3b、及びR4bの組み合わせは、全てカルボキシル基、全てスルホ基、R1bはカルボキシル基でR2b、R3b、及びR4bは水素原子、又はR1bはスルホ基でR2b、R3b、及びR4bは水素原子、であり、全てカルボキシル基であることが中でも好ましい。なお、R1b、R2b、R3b、及びR4bが全てカルボキシル基である化合物は、Tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)と呼ばれる。

【0056】
また、例えばビリルビン、ヘミン、プロトポルフィリン等も、アニオン性ポルフィリンとして用いることができる。なお、プロトポルフィリン含有複合体を製造する場合には、プロトポルフィリン二ナトリウムを用いるのが好適である。

【0057】
本発明に用いるアニオン性ポルフィリンは、公知の化合物であるか、又は公知の方法により容易に製造できる。例えば東京化成工業株式会社等から購入することができる。なお、アニオン性ポルフィリンは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0058】
(C)非カチオン性シランは、言い換えれば中性又はアニオン性シランであり、中性又はアニオン性を示すシランを用いることができる。例えば、シランカップリング剤として知られる中性又はアニオン性シランを用いることができる。具体的には、非カチオン性シランとしては、例えば式(III):
-Si(R2c(OR1c(4-p—q) (III)
で表される化合物を好適に用いることができる。

【0059】
式(III)において、YはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、OCNCHCH-で示される基、ClCα2α-で示される基、HSCβ2β-で示される基、CFγ2γ-Cδ2δ-で示される基、CH=C(CH)COOCε2ε-で示される基、CH=CHCOOCζ2ζ-で示される基、HN-CONH-Cη2η-で示される基、
下式:

【0060】
【化15】
JP2013136555A_000016t.gif

【0061】
で示される基、
下式:

【0062】
【化16】
JP2013136555A_000017t.gif

【0063】
で示される基、
炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基を示す。
ここで、α、β、δ、ε、ζ、η、θ及びιは、それぞれ独立して1~6(好ましくは1、2、3又は4)の整数を示し、γは0~8(好ましくは0、1、2、3、4、5、6又は7)の整数を示す。また、炭素数1~18のアルキル基は、炭素数1~12が好ましく、炭素数1、2、3、4、5、6、7又は8がより好ましい。また、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。また、上記のClCα2α-、HSCβ2β-、CFγ2γ-Cδ2δ-、CH=C(CH)COOCε2ε-、CH=CHCOOCζ2ζ-、HN-CONH-Cη2η-は、それぞれ、Cl(CHα-、HS(CHβ-、CF(CFγ-(CHδ-、CH=C(CH)COO(CHε-、CH=CHCOO(CHζ-、HN-CONH-(CHη-であることが好ましい。

【0064】
また、R1cは、炭素数1~6のアルキル基、又は-(CHτ-OCHを示し、R2cは、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を示す。R1c及びR2cは同一であっても異なってもよい。R1c及びR2cのいずれにおいても、炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であってよく、直鎖状が好ましい。また、炭素数1、2、3又は4のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、イソヘキシル、3-メチルペンチル基等が例示される。中でも、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルが好ましい。また、τは1~4の整数(好ましくは1、2又は3)を示す。

【0065】
また、pは0、1又は2、qは0又は1、〔但し(4-p-q)≧2〕を示す。すなわち、(p、q)は(0、0)、(0、1)、(1、0)、(1、1)、又は(2、0)を示す。なお、pが0を示すとき、式(III)は、Yが存在せず、Si原子に結合するのがR2c及びOR1c、又はOR1cのみ、という化合物を示す。

【0066】
また、非カチオン性シランとしては、例えば式(IV):
Z-SiCl (IV)
で表される化合物も好適に用いることができる。

【0067】
式(IV)において、ZはCH=CH-で示される基、CH=CHCH-で示される基、ClCκ2κ-で示される基、CFλ2λ-Cξ2ξ-で示される基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基を示す。κ及びξは、それぞれ独立して1~6(好ましくは1、2、3又は4)の整数を示し、λは0~8(好ましくは0、1、2、3、4、5、6又は7)の整数を示す。また、炭素数1~18のアルキル基は、炭素数1~12が好ましく、炭素数1、2、3、4、5、6、7又は8がより好ましい。また、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。また、上記のClCκ2κ-、CFλ2λ-Cξ2ξ-は、それぞれ、Cl(CHκ-、CF(CFλ-(CHξ-であることが好ましい。

【0068】
また、非カチオン性シランとして、N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩を用いてもよい。

【0069】
式(III)で表される化合物としては、具体的には例えば以下に記載する化合物が例示される。なお、以下の例示では、化合物の英語表記及び日本語表記を挙げ、さらに構造式を示す。

【0070】
Tetramethoxysilane テトラメトキシシラン

【0071】
【化17】
JP2013136555A_000018t.gif

【0072】
Tetraethoxysilane テトラエトキシシラン

【0073】
【化18】
JP2013136555A_000019t.gif

【0074】
Tetrapropoxysilane テトラプロポキシシラン

【0075】
【化19】
JP2013136555A_000020t.gif

【0076】
Tetrabutoxysilane テトラブトキシシラン

【0077】
【化20】
JP2013136555A_000021t.gif

【0078】
Tetraisopropoxysilane テトライソプロポキシシラン

【0079】
【化21】
JP2013136555A_000022t.gif

【0080】
Allyltriethoxysilane アリルトリエトキシシラン

【0081】
【化22】
JP2013136555A_000023t.gif

【0082】
Allyltrimethoxysilane アリルトリメトキシシラン

【0083】
【化23】
JP2013136555A_000024t.gif

【0084】
Diethoxymethylvinylsilane ジエトキシメチルビニルシラン

【0085】
【化24】
JP2013136555A_000025t.gif

【0086】
Dimethoxymethylvinylsilane ジメトキシメチルビニルシラン

【0087】
【化25】
JP2013136555A_000026t.gif

【0088】
Triethoxyvinylsilane トリエトキシビニルシラン

【0089】
【化26】
JP2013136555A_000027t.gif

【0090】
Vinyltrimethoxysilane ビニルトリメトキシシラン

【0091】
【化27】
JP2013136555A_000028t.gif

【0092】
Vinyltris(2-methoxyethoxy)silane ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン

【0093】
【化28】
JP2013136555A_000029t.gif

【0094】
(Chloromethyl)triethoxysilane (クロロメチル)トリエトキシシラン

【0095】
【化29】
JP2013136555A_000030t.gif

【0096】
3-Chloropropyldimethoxymethylsilane 3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン

【0097】
【化30】
JP2013136555A_000031t.gif

【0098】
3-Chloropropyltriethoxysilane 3-クロロプロピルトリエトキシシラン

【0099】
【化31】
JP2013136555A_000032t.gif

【0100】
2-(3,4-Epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン

【0101】
【化32】
JP2013136555A_000033t.gif

【0102】
3-Mercaptopropyl(dimethoxy)methylsilane 3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン

【0103】
【化33】
JP2013136555A_000034t.gif

【0104】
(3-Mercaptopropyl)triethoxysilane (3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン

【0105】
【化34】
JP2013136555A_000035t.gif

【0106】
(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane (3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン

【0107】
【化35】
JP2013136555A_000036t.gif

【0108】
3-(Triethoxysilyl)propyl Isocyanate イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル

【0109】
【化36】
JP2013136555A_000037t.gif

【0110】
3-(Trimethoxysilyl)propyl Methacrylate メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル

【0111】
【化37】
JP2013136555A_000038t.gif

【0112】
Triethoxy-1H,1H,2H,2H-tridecafluoro-n-octylsilane トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン

【0113】
【化38】
JP2013136555A_000039t.gif

【0114】
3-(Trimethoxysilyl)propyl Acrylate アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル

【0115】
【化39】
JP2013136555A_000040t.gif

【0116】
3-Trimethoxysilylpropyl Chloride 3-トリメトキシシリルプロピルクロリド

【0117】
【化40】
JP2013136555A_000041t.gif

【0118】
1-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]urea 1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素

【0119】
【化41】
JP2013136555A_000042t.gif

【0120】
Trimethoxy(3,3,3-trifluoropropyl)silane トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン

【0121】
【化42】
JP2013136555A_000043t.gif

【0122】
3-Ureidopropyltriethoxysilane 3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン

【0123】
【化43】
JP2013136555A_000044t.gif

【0124】
Diethoxy(3-glycidyloxypropyl)methylsilane ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン

【0125】
【化44】
JP2013136555A_000045t.gif

【0126】
3-Glycidyloxypropyl(dimethoxy)methylsilane 3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン

【0127】
【化45】
JP2013136555A_000046t.gif

【0128】
3-Glycidyloxypropyltrimethoxysilane 3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン

【0129】
【化46】
JP2013136555A_000047t.gif

【0130】
2-Cyanoethyltriethoxysilane 2-シアノエチルトリエトキシシラン

【0131】
【化47】
JP2013136555A_000048t.gif

【0132】
Diacetoxydimethylsilane ジアセトキシジメチルシラン

【0133】
【化48】
JP2013136555A_000049t.gif

【0134】
Diethoxydimethylsilane ジエトキシジメチルシラン

【0135】
【化49】
JP2013136555A_000050t.gif

【0136】
Dimethoxydimethylsilane ジメトキシジメチルシラン

【0137】
【化50】
JP2013136555A_000051t.gif

【0138】
Dimethoxydiphenylsilane ジメトキシジフェニルシラン

【0139】
【化51】
JP2013136555A_000052t.gif

【0140】
Dimethoxymethylphenylsilane ジメトキシメチルフェニルシラン

【0141】
【化52】
JP2013136555A_000053t.gif

【0142】
Dodecyltriethoxysilane ドデシルトリエトキシシラン

【0143】
【化53】
JP2013136555A_000054t.gif

【0144】
Hexyltrimethoxysilane ヘキシルトリメトキシシラン

【0145】
【化54】
JP2013136555A_000055t.gif

【0146】
Octadecyltriethoxysilane オクタデシルトリエトキシシラン

【0147】
【化55】
JP2013136555A_000056t.gif

【0148】
Octadecyltrimethoxysilane オクタデシルトリメトキシシラン

【0149】
【化56】
JP2013136555A_000057t.gif

【0150】
n-Octyltriethoxysilane n-オクチルトリエトキシシラン

【0151】
【化57】
JP2013136555A_000058t.gif

【0152】
Pentyltriethoxysilane ペンチルトリエトキシシラン

【0153】
【化58】
JP2013136555A_000059t.gif

【0154】
Triacetoxymethylsilane トリアセトキシメチルシラン

【0155】
【化59】
JP2013136555A_000060t.gif

【0156】
Triethoxyethylsilane トリエトキシエチルシラン

【0157】
【化60】
JP2013136555A_000061t.gif

【0158】
【化61】
JP2013136555A_000062t.gif

【0159】
Trimethoxy(methyl)silane トリメトキシ(メチル)シラン

【0160】
【化62】
JP2013136555A_000063t.gif

【0161】
Trimethoxyphenylsilane トリメトキシフェニルシラン

【0162】
【化63】
JP2013136555A_000064t.gif

【0163】
Trimethoxy(propyl)silane トリメトキシ(プロピル)シラン

【0164】
【化64】
JP2013136555A_000065t.gif

【0165】
以上のような化合物が、式(III)で表される化合物として例示される。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシランが好ましい。

【0166】
また、式(IV)で表される化合物としては、具体的には例えば以下に記載する化合物が例示される。なお、以下の例示でも、化合物の英語表記及び日本語表記を挙げ、さらに構造式を示す。
Allyltrichlorosilane アリルトリクロロシラン

【0167】
【化65】
JP2013136555A_000066t.gif

【0168】
Trichlorovinylsilane トリクロロビニルシラン

【0169】
【化66】
JP2013136555A_000067t.gif

【0170】
3-Chloropropyltrichlorosilane 3-クロロプロピルトリクロロシラン

【0171】
【化67】
JP2013136555A_000068t.gif

【0172】
Trichloro(1H,1H,2H,2H-heptadecafluorodecyl)silane トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン

【0173】
【化68】
JP2013136555A_000069t.gif

【0174】
Trichloro(1H,1H,2H,2H-tridecafluoro-n-octyl)silane トリクロロ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シラン

【0175】
【化69】
JP2013136555A_000070t.gif

【0176】
Butyltrichlorosilane ブチルトリクロロシラン

【0177】
【化70】
JP2013136555A_000071t.gif

【0178】
Cyclohexyltrichlorosilane シクロヘキシルトリクロロシラン

【0179】
【化71】
JP2013136555A_000072t.gif

【0180】
Decyltrichlorosilane デシルトリクロロシラン

【0181】
【化72】
JP2013136555A_000073t.gif

【0182】
Dodecyltrichlorosilane ドデシルトリクロロシラン

【0183】
【化73】
JP2013136555A_000074t.gif

【0184】
Ethyltrichlorosilane エチルトリクロロシラン

【0185】
【化74】
JP2013136555A_000075t.gif

【0186】
n-Octyltrichlorosilane n-オクチルトリクロロシラン

【0187】
【化75】
JP2013136555A_000076t.gif

【0188】
Phenyltrichlorosilane フェニルトリクロロシラン

【0189】
【化76】
JP2013136555A_000077t.gif

【0190】
Trichloro-2-cyanoethylsilane トリクロロ-2-シアノエチルシラン

【0191】
【化77】
JP2013136555A_000078t.gif

【0192】
Trichlorohexylsilane トリクロロヘキシルシラン

【0193】
【化78】
JP2013136555A_000079t.gif

【0194】
Trichloro(methyl)silane トリクロロ(メチル)シラン

【0195】
【化79】
JP2013136555A_000080t.gif

【0196】
Trichlorooctadecylsilane トリクロロオクタデシルシラン

【0197】
【化80】
JP2013136555A_000081t.gif

【0198】
Trichloro(propyl)silane トリクロロ(プロピル)シラン

【0199】
【化81】
JP2013136555A_000082t.gif

【0200】
Trichlorotetradecylsilane トリクロロテトラデシルシラン

【0201】
【化82】
JP2013136555A_000083t.gif

【0202】
以上のような化合物が、式(IV)で表される化合物として例示される。

【0203】
本発明に用いる非カチオン性シランは、公知の化合物であるか、又は公知の方法により容易に製造できる。例えば東京化成工業株式会社等から購入することができる。なお、非カチオン性シランは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0204】
本発明のポルフィリン含有複合体(特に、(A)~(C)成分が共有結合してなるポルフィリン含有複合体)は、(A)成分として、特に、上記式(I)において、XがHNC2m-、又はHNC2n-HNC2m-で示される基を示すものが好ましく、また、jが0であるものが好ましく、当該X及びjの条件をともに満たすものがさらに好ましい。また、(A)~(C)成分が共有結合してなるポルフィリン含有複合体においては、(B)成分として、特に、上記式(II)において、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも1つがカルボキシル基であるものが好ましく、少なくとも2つがカルボキシル基であるものがより好ましく、少なくとも3つがカルボキシル基であるものがさらに好ましく、全てがカルボキシル基であるものが最も好ましい。また、(A)~(C)成分が共有結合してなるポルフィリン含有複合体においては、(C)成分として、特に、上記式(III)において、pが0のものが好ましく、p及びqがともに0のものがより好ましい。

【0205】
本発明の複合体は、その形状がリング状であることが好ましい。リングが細長い形状を有するとチューブ状ということもできる。よって本明細書ではリング状はチューブ状を包含する概念として用いる。リング(チューブ)の直径や長さは特に限定はされないが、例えば、リング(チューブ)の直径50~200nm程度、長さ400~600nm程度が例示される。

【0206】
本発明のポルフィリン含有複合体は、(A)、(B)及び(C)成分が結合してなり、当該複合体の蛍光波長が、当該複合体化前のアニオン性ポルフィリンの蛍光波長より長波長であるものであれば、その製造方法は特に制限されない。以下に好ましい製造方法を例示する。

【0207】
本発明のポルフィリン含有複合体の製造方法例1として、(A)、(B)及び(C)成分を0℃~60℃で反応させて製造する方法が挙げられる。よって、本発明は、(A)、(B)及び(C)成分を0℃~60℃で反応させて得られる複合体を包含する。また、本発明は、(A)、(B)及び(C)成分を0℃~60℃にて反応させる工程を含む、(A)~(C)が結合してなるポルフィリン含有複合体(好ましくはリング状ポルフィリン含有複合体)の製造方法も包含する。反応温度は、好ましくは4℃~50℃であり、より好ましくは5℃~40℃であり、さらに好ましくは10℃~35℃である。特に、反応温度が高すぎると(特に80℃以上である場合は)、蛍光プローブとして有用な特性を備えた複合体は得られないおそれがある。(本発明の複合体は、蛍光ピーク波長が長波長へシフトするという有利な性質を示すが、反応温度が高すぎると、このような性質を有する複合体が得られないおそれがある。)
より具体的には、例えば、これら(A)~(C)の各成分を溶媒に溶解させ、同一容器内に入れ、0℃~60℃にて撹拌することで、これらの成分を反応させ、本発明の複合体を生成させることができる。撹拌時間(反応時間)は、例えば1~48時間程度、好ましくは2~36時間程度である。また、溶媒としては、アルコール(例えばエタノール)又は含水エタノールが例示される。

【0208】
好ましくは、まず溶媒に(A)成分及び(B)成分を溶解させ、さらにアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を加え、室温にて1時間程度撹拌した後、さらに(C)成分を加えて1~48時間(好ましくは2~36時間)程度撹拌することが好ましい。

【0209】
反応後、遠心分離(例えば15000 rpm)により生成物を回収することにより、複合体を得ることができる。

【0210】
当該製造方法例1に用いる(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の量比は、上記(A)~(C)合計量を100重量部としたときの好ましい(B)の重量部を満たすことが好ましい他、特に限定はされないが、例えば、モル比で、(A)/(B)は1/3~70/1が好ましく、1/1~10/1がより好ましく、1/1~5/1がさらに好ましく、2/1が最も好ましい。また、モル比で、(B)/(C)は1/140~3/4が好ましく、1/100~1/2がより好ましく、1/50~1/5がさらに好ましく、3/40が最も好ましい。また、モル比で、(A)/(C)は1/43~5/1が好ましく、1/30~1/1がより好ましく、1/20~1/2がさらに好ましく、3/20が最も好ましい。

【0211】
本発明のポルフィリン含有複合体の製造方法例2として、まず(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン及び(B)アニオン性ポルフィリンを共有結合させて(A)-(B)結合体を製造し、当該(A)-(B)結合体、(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、及び(C)非カチオン性シランを加水分解及び縮合させて、(A)~(C)が共有結合したポルフィリン含有複合体を製造する方法が挙げられる。よって、本発明は、(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン及び(B)アニオン性ポルフィリンが共有結合した(A)-(B)結合体、(A)カチオン性オルガノアルコキシシラン、及び(C)非カチオン性シランを加水分解及び縮合する工程を含む、(A)~(C)が結合してなるポルフィリン含有複合体の製造方法を包含する。また、本発明は、当該製造方法で得られる複合体も包含する。

【0212】
より具体的には、例えば、(i)(A)成分のアミノ基と(B)成分のカルボキシル基を縮合させ、アミド結合を形成させて(A)-(B)結合体を調製し、(ii)さらに当該(A)-(B)結合体、(A)成分、及び(C)成分を加水分解及び縮合させて、ポルフィリン含有複合体を調製する方法が例示できる。なお、当該(ii)において用いる(A)成分は、(A)-(B)結合体調製に用いた(A)成分と同じであっても異なってもよく、同じであることがより好ましい。

【0213】
本発明の複合体は、(A)、(B)及び(C)成分が「結合して」なるため、これらの成分が個々に含まれる組成物(換言すれば、これらの成分が寄せ集められただけの組成物)とは全く異なる物性を有している。この点から、本発明の複合体は、(A)~(C)成分がハイブリッド化された新素材ということができる。

【0214】
当該製造方法例1において、例えば、(B)成分としてTCPPを用いた場合は、当該TCPPは複合体中でアニオンとして存在することが好ましい。また、当該製造方法例2において、例えば、(B)成分としてTCPPを用いた場合は、TCPPのカルボキシル基はアミド結合を形成するなどして存在することが好ましい。このような複合体中の状態は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により確認できる。すなわち、TCPPが複合体中でアニオンとして存在する場合、TCPPそのもののFTIRスペクトルでは1710 cm-1あたりにカルボン酸(COOH)由来の吸収が見られるが、複合体のFTIRスペクトルではカルボン酸ではなくカルボン酸アニオン(COO-)による吸収として現れる(1600 cm-1あたり、及び1390 cm-1あたり)。また、TCPPが複合体中でアミド結合形成している場合、TCPPそのもののFTIRスペクトルでは1710 cm-1あたりにカルボン酸(COOH)由来の吸収が見られるが、複合体のFTIRスペクトルではカルボン酸ではなくアミド結合(CONH)による吸収として現れる(1650 cm-1あたり)。

【0215】
本発明の複合体の中には、細胞毒性は低い一方で、光照射(好ましくは波長635~675nm程度の光照射)により、活性酸素()を発生するものがある。従って、このような本発明の複合体は、光線力学療法用光増感剤として好ましく利用できる。また、本発明の複合体は、特に癌組織のイメージングや光線力学療法用光増感剤として好ましく利用することができる。

【0216】
さらに、本発明の複合体には、DDS(Drug Delivery System)に用いられる公知の各種化学修飾を施してもよい。例えば、PEG化(ポリエチレングリコール修飾)、デキストリン修飾、キトサン修飾、等が挙げられる。特に、PEG化は、被PEG化物の血中滞留時間を大きく延長できることが知られており、有利である。よって、本発明は化学修飾された(好ましくはPEG化)上記ポルフィリン含有複合体も包含する。ポルフィリン含有複合体のPEG化は、複合体中に残存する官能基を適宜選択して利用することで行うことができる。各種官能基に対してPEGを結合させる試薬は公知のものを利用できる。例えば、複合体中にアミノ基が残存している場合、当該アミノ基とNHS-PEG(構造は図27を参照)とを反応させて、PEG化を行うことができる。

【0217】
また、上述のように、本発明のポルフィリン含有複合体は、リング状(チューブ状)であることが好ましい。リング状であれば、その内部に物質を内包し得る。従って、本発明のポルフィリン含有複合体は、有用成分を内包させた上で生体に適用するという用い方もできる。例えば、ポルフィリン含有複合体で薬物を内包した薬物内包ポルフィリン含有複合体は、DDSとして用いることができる。特に薬物として造影剤(例えばX線造影剤やMRI造影剤)を用いた場合、生体に投与した際に蛍光だけでは得ることのできない生体内の情報を得ることができるので有利である。つまり、造影剤内包ポルフィリン含有複合体は、デュアルモーダルイメージング用造影剤として用いることができる。造影剤としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されず、公知の造影剤を用いることができる。なかでもX線造影剤を用いることが好ましく、X線造影剤の中でも金粒子を用いることがより好ましい。

【0218】
薬物を内包させる方法としては、例えば複合体製造時に原料と緒に薬物も混ぜておく方法が挙げられる。特に、上記製造方法例2の製造方法を用いる場合は、(A)-(B)結合体、(A)成分、及び(C)成分を加水分解及び縮合させる際に、一緒に薬物(例えばX線造影剤である金粒子)を混ぜておくことで、複合体に薬物を内包させ得る。
【実施例】
【0219】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<複合体の調製>
実施例1
カチオン性オルガノアルコキシシランとして、trimethyl[3-(trimethoxysilyl)-propyl]ammonium chloride(TMAPS)を、アニオン性ポルフィリンとして、tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)を用いた。また、非カチオン性シランとして、tetraethyl orthosilicate(TEOS)を用いた。また、TMAPS、TCPP、及びTEOSはいずれも東京化成工業株式会社から購入して用いた。以下に、TMAPS、TCPP、及びTEOSの構造式を示す。
【実施例】
【0220】
【化83】
JP2013136555A_000084t.gif
【実施例】
【0221】
【化84】
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【実施例】
【0222】
【化85】
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【実施例】
【0223】
TMAPS 18mg及びTCPP 23.7mgを、エタノール/水(29/1)混合溶媒27mLに溶解させ、これにさらに水酸化ナトリウム水溶液0.375mLを加えた。1時間22℃で攪拌した後、TEOSを89μL加えて、24時間室温で攪拌した。なお、このとき、TMAPS:TCPP:TEOS(モル比)は、約2:1:13である。生成物は遠心分離(15000 rpm)により、回収した。また、生成物はエタノールおよび水への再分散、遠心分離を繰り返すことで、洗浄した。さらに、100℃で12時間乾燥させて、粉末状の生成物を得た。
【実施例】
【0224】
得られた生成物(すなわち、TMAPS、TCPP及びTEOSの複合体)を、走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL, JSM-6700F)及び透過型電子顕微鏡(TEM)(H-7650, Hitachi, Tokyo, Japan)により観察した。結果を図1a)~c)に示す。図1a)はSEM観察画像を示し、図1b)及びc)はTEM観察画像を示す。これらの観察画像から、得られた複合体はチューブ状の形状を有することがわかった。図1中のスケールバーからわかるように、当該チューブ状の複合体は、チューブ長さ約250~650nm、チューブ直径約100nm、チューブ膜厚約10nm程度であった。
【実施例】
【0225】
比較例1
反応温度を室温ではなく80℃とした以外は、実施例1と同様に操作して、生成物を得、当該生成物をTEMにより観察した。結果(観察画像)を図1d)に示す。図1d)右上に、観察された粒子1粒の拡大画像を示す。スケールバーは、2μm(右上拡大画像のスケールバーは100nm)を示す。当該観察画像から、得られた複合体は粒状(球状)の形状を有することがわかった。なお、当該粒状の複合体の直径は約200~300nmであった。
【実施例】
【0226】
実施例2
カチオン性オルガノアルコキシシランとして3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様に操作して(カチオン性オルガノアルコキシシラン使用量は、実施例1のモル比と同様になるようにした)、生成物を得、当該生成物をTEMにより観察したところ、チューブ状複合体が得られていることが確認できた(図2a)。なお、図2a右上にチューブ状複合体1個の拡大画像を示す。
【実施例】
【0227】
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の構造式を以下に示す。
【実施例】
【0228】
【化86】
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【実施例】
【0229】
比較例2
反応温度を室温ではなく80℃とした以外は、実施例2と同様に操作して、生成物を得、当該生成物をTEMにより観察した。結果(観察画像)を図2b)に示す。当該観察画像から、得られた複合体は粒状(球状)の形状を有することがわかった。
【実施例】
【0230】
比較例3
TEOSを加えない以外は実施例1と同様に操作したところ、生成物は得られなかった。すなわち、複合体は形性されなかった
【実施例】
【0231】
次に、得られたチューブ状複合体の性質の検討を行った。なお、以下の検討において用いたチューブ状複合体は、特に断らない限り、全て、実施例1で得たチューブ状複合体である。
<複合体の蛍光プローブとしての応用可能性の検討>
DLS(動的光散乱法)による検討
実施例1で得たチューブ状複合体をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させ、動的光散乱測定装置(NICOMP 380 ZLS, Showa Denko, Tokyo, Japan)により測定を行った。結果を図3に示す。図3a)に当該複合体を溶解したPBSを示す。チューブ状複合体は凝集無く溶解しており、高い溶解性を示すことがわかった。図3b)にDLS測定結果を示す。図3b)に示される2つピークは、左側のピークが当該チューブ状複合体の直径を表し(約100nm)、右側のピークが当該チューブ状複合体の長さを表す(約400弱~600強nm)と考えられた。これらのDLS測定から得られた数値は、上記TEM観察結果から求められた直径及び長さとよく合致していた。
【実施例】
【0232】
なお、当該溶液のゼータ電位は-3.1mVであった。
【実施例】
【0233】
FTIR(フーリエ変換赤外分光法)による検討
実施例1で得たチューブ状複合体(粉末状)をフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR-6200, JASCO, Tokyo, Japan)により測定した。また、TEOS、TMAPS、及びTCPPも同様に測定を行った。結果を図4に示す。図4のa)がTEOS、b)がTMAPS、c)がTCPP、d)が当該チューブ状複合体のスペクトルを示す。
【実施例】
【0234】
当該チューブ状複合体が示すスペクトルでは、シロキサン骨格(Si-O-Si)(1070cm-1)、ポルフィリン環(1550~1490cm-1及び970cm-1)による吸収が観察された。
【実施例】
【0235】
また、TCPPのスペクトルには1710 cm-1にカルボン酸(COOH)由来の吸収が見られたが、チューブ状複合体のスペクトルではカルボン酸ではなくカルボン酸アニオン(COO-)による吸収として現れていた(1600 cm-1及び1390 cm-1)。この結果は、チューブ状複合体中では、TCPPがアニオンとして存在していることを示している。
【実施例】
【0236】
また、TMAPSの4級アンモニウム塩によるC-N結合(1170cm-1)とTCPPのポルフィリン環(1185cm-1)が重なり、チューブ状複合体のスペクトルにはブロードな吸収(1250cm-1~1120cm-1)が観察された。
【実施例】
【0237】
以上の結果は、実施例1において、ポルフィリンとシリカが個々に含まれる組成物を得たのではなく、ポルフィリンとシリカから新素材を製造することに成功したことを示している。すなわち、当該チューブ状複合体は、ポルフィリンとシリカを含んでなる新素材ということができる。ポルフィリンとシリカのハイブリッド化に成功したとも換言できる。
【実施例】
【0238】
当該ハイブリッド化は、カルボン酸アニオン及びアンモニウム塩の静電的相互作用、並びにポルフィリン環のπ-πスタッキング、の寄与により、成されたものと推定される。当該推定の概念図を図5に示す。図5aは、ポルフィリン(TCPP)を4頂点部分にそれぞれカルボン酸由来負電荷を有する正方形平板にたとえた図であり、図5bは、当該正方形平板(TPCC)がπ-πスタッキングにより重複したもの(J会合体)が、さらに負電荷によりカチオン性オルガノアルコキシシランの正電荷と相互作用しており、これらがチューブの側面を構成しているであろうことを表した推定図である。
【実施例】
【0239】
なお、上記比較例1において、生成物がチューブ状ではなく球状になったのは、80℃で加熱したために、静電相互作用およびπ-πスタッキングが弱くなったことが原因であると考えられる。
【実施例】
【0240】
吸収波長の検討
実施例1で得たチューブ状複合体をPBSに溶解させて得た溶液(以下、チューブ状複合体PBS溶液ともいう)について、紫外可視吸収スペクトルを測定した。また、比較例2で得た生成物(球状粒子)、及びTCPPについても同様に測定を行った。結果を図6に示す。チューブ状複合体のピークはTCPPに比べて約35 nm長波長側にシフト(レッドシフト)していることが分かる(約635nm→約670nm)。このレッドシフトはTCPPのJ会合体が形成されていることを証明している。つまり、(i)π-πスタッキング及び(ii)静電相互作用を利用したシリカとのハイブリッド化により、TCPPはJ会合体状態を保ちながらシリカマトリックス中に存在することを示している。さらに、非カチオン性シラン(シリカマトリックス)により、生理活性条件化でもTCPPの会合状態を維持するよう保護されるものと考えられた。一方、80℃で加熱して合成したTCPP含有球状粒子(比較例2)において、吸収スペクトルのシフトは確認されなかった。これは、加熱により、π-πスタッキングと静電相互作用が弱くなり、TCPPのJ会合体状態が維持されなかったことを示していると考えられ、TEMによる観察結果とも一致していると考えられる。
【実施例】
【0241】
蛍光波長の検討
チューブ状複合体PBS溶液について、蛍光スペクトル(励起波長670 nm)を測定した。また、比較例2で得た生成物(球状粒子)、及びTCPPについても同様に測定を行った。結果を図7に示す。チューブ状複合体は、PBS中で、670 nmの光励起により、近赤外領域全般にわたって蛍光を発することが分かった。蛍光ピーク波長は730 nmであり、これはTCPPや比較例2で得た球状粒子に比べてかなり長い波長である。このため、当該チューブ状複合体を生体イメージング用蛍光プローブとして用いれば、従来の生体イメージング用蛍光プローブに比べて、細胞の自家蛍光の影響を弱め、SN比を向上させ得ることがわかった。また、図8にチューブ状複合体PBS溶液について波長660~690nmの光励起時の蛍光像を示す。図8の各画像(I~V)において、エミッション(λem)は、Iが710~730nm、IIが730~750 nm、IIIが750~770 nm、IVが770~790 nm、Vが790~810 nmである。チューブ状複合体は、710~810nmという幅広い波長領域の蛍光を発することがわかった。
【実施例】
【0242】
<複合体の光線力学療法用光増感剤としての応用可能性の検討>
光線力学療法とは、細胞毒性を持たないが光照射下では毒性を示す光感受性化合物を利用して癌などの患部を選択的に治療する方法である。ポルフィリンは光が照射されるとを発生させる特性を有しており、は腫瘍細胞を死滅させ得る。このため、ポルフィリンは光線力学療法用光増感剤として用いられている。
【実施例】
【0243】
実施例1で得られたチューブ状複合体はポルフィリンを含むことから、光線力学療法用光増感剤としての応用可能性が考えられたため、その可能性を検討した。
【実施例】
【0244】
光照射による発生の検討
当該チューブ状複合体に光を照射した時に発生する活性酸素()量を測定した。当該測定においては、1,3-diphenylisobenzofuran(DPIBF)を補足剤として用いた。DPIBFは、により分解される性質を有する。分解したDPIBFの量を吸光度計により測定することで、発生した量を見積もることができる。具体的には、DPIBFと当該チューブ状複合体を含む溶液(溶媒;PBS)に、波長635~675nm(光源;水銀ランプ)の光を照射した際の、DPIBFの吸収スペクトルの変化を測定した。結果を図9に示す。図9a)は、チューブ状複合体の濃度を変えて(0、10又は100μg/mL)、60分間光を照射したときの、DPIBFの吸収スペクトルの変化を示す。図9b)は、光照射時間経過につれ、DPIBF分解がどの程度起こるかを示す(吸光波長415nmでの測定結果)。これらの結果から、チューブ状複合体の濃度が高いほど、また光照射時間が長いほど、DPIBFの分解が進行することがわかった。
【実施例】
【0245】
以上のことから、チューブ状複合体は、光照射によりを発生することが確認できた。
【実施例】
【0246】
細胞毒性検討1(光照射無し)
マウス(C57BL/6 Alb Hr)の腹腔からマクロファージを取り出し、10%ウシ胎仔血清含有RPMI培地中で5% CO2, 37℃で培養した。1ウェルあたり2×105個のマクロファージを96ウェルプレートに播き、チューブ状複合体PBS溶液(0~0.5 mg/mL)を加え、24時間培養した。そして、細胞生存率をWST-1アッセイにより調べた。結果を図10に示す。チューブ状複合体濃度が0.5 mg/mLまでは、細胞死は確認されなかった。通常、医療用途では、0.1 mg/mL以下の濃度で使用するが、チューブ状複合体は0.5 mg/mLという高濃度まで毒性を示さないため、医療・バイオ用途に応用可能(特に光線力学療法用光増感剤として応用可能)であると考えられた。
【実施例】
【0247】
なお、WST-1アッセイは周知の細胞毒性検討アッセイであり、次のような原理に基づく。WST-1(4-[3-(4-ヨードフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-2H-5-テトラゾリオ]-1,3-ベンゼン、ジスルフォネート)は安定なテトラゾリウム塩であり、ミトコンドリア内脱水素酵素によりイエローオレンジの水溶性フォルマザンへ分解するという特徴を有しているので、細胞培養液中にWST-1を添加し、吸光度を測定してフォルマザンの生成量を測定することにより、細胞の生存率を求めることができる。
【実施例】
【0248】
細胞毒性検討2(光照射有り)
細胞培養時に波長635~675nm(光源;水銀ランプ)の光を照射した点、及びチューブ状複合体PBS溶液の濃度を0、10又は100μg/mLとした点、以外は、上記「細胞毒性検討1」と同様にして、光照射により細胞生存率が変化するかを検討した。結果を図11に示す。チューブ状複合体の濃度が高いほど、また光照射時間が長いほど、細胞生存率が低下することがわかった。この結果は、上記「光照射による発生の検討」において確認された発生量の結果と合致する。
【実施例】
【0249】
以上のことから、チューブ状複合体は、それ単独では細胞毒性が低く、かつ光照射時にはを発生して細胞を死滅させることができることがわかった。従って、当該チューブ複合体は、光線力学療法用光増感剤として好ましく利用できると考えられた。
【実施例】
【0250】
<複合体の蛍光プローブとしての応用>
細胞のラベリング
マウス腹部を消毒後、皮膚を切開して腹膜を露出させ、下腹部からPBSを5~10mL注射筒で勢いよく注入し、腹部を指で揉み、注入に用いた注射筒でPBSを回収することで、マウスのマクロファージを採取した。
【実施例】
【0251】
マクロファージ(5×105 cells)をディッシュに播き、このディッシュに0.1 mg/mLのチューブ状複合体PBS溶液を加え、1時間培養した。1時間後、細胞外のチューブ状複合体をPBSで洗浄し、除去した。チューブ状複合体の細胞内への取り込みは蛍光顕微鏡で確認した。マクロファージの核は紫外励起で青色蛍光を発する4',6-diamino-2-phenylindole (DAPI)で染色した。チューブ状複合体由来の蛍光は635-675 nm励起、696-736 nm蛍光フィルターを用いて観察した。なお、観察には蛍光顕微鏡(TE2000 fluorescent microscope Nikon, Kanagawa, Japan)を用いた。
【実施例】
【0252】
結果を図12に示す。図12a)~d)は、無処理のマクロファージの明視野像(a)および蛍光像(b~d)であり、e)~h)はチューブ状複合体でラベリングしたマクロファージの明視野像(e)および蛍光像(f~h)である。明視野像において、無処理のマクロファージは透明であるが(a)、チューブ状複合体でラベリングされたマクロファージは色づいていた(e)。(b)及び(f)は紫外励起の蛍光像であり、これらの像から、DAPI染色により、マクロファージの核が青色蛍光を発していることがわかった。(c)及び(g)は、635-675 nm励起、696-736 nm蛍光フィルターを用いて観察した像であり、チューブ状複合体で処理したマクロファージから赤色蛍光が発せられることが確認できた。(d)及び(h)は、紫外励起の蛍光像と635-675 nm励起の蛍光像を重ね合わせた(マージ(merge)させた)像である。(h)において、赤色蛍光の位置と核による青色蛍光の位置が一致していることから、チューブ状複合体はマクロファージ内に取り込まれており、マクロファージのラベリングに成功したことが確認できた。
【実施例】
【0253】
生体イメージング用蛍光プローブとしての使用
〔自家蛍光の影響の検討〕
発光・蛍光 in vivo イメージングシステムIVIS Spectrum (Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)を用いて、何ら蛍光プローブ処理を行っていないマウスを観察し、自家蛍光の影響を検討した。結果を図13(a~h)に示す。なお、観察対象マウスは、自家蛍光を弱めるために、観察前の2週間はアルファルファフリーの飼料を用いて飼育した。
【実施例】
【0254】
腹側(Ventral side)、背側(Dorsal side)ともに、蛍光波長660~690 nmでは強い自家蛍光が検出されたが(a、c)、蛍光波長730~750 nmでは自家蛍光の影響をほとんど無視できることが分かった(b、d)。なお、腹側、背側の最小radiant efficiency (RE)値はそれぞれ5.0×107 (p/sec/cm2/sr)/(iW/cm2)、4.0×107(p/sec/cm2/sr)/(μW/cm2)に設定している。また、g及びhは、a~dの青色で囲んだ領域の、波長と自家蛍光の強度(REの合計値と平均値)の関係を示している。
【実施例】
【0255】
蛍光波長660~690 nmにおいて自家蛍光の悪影響を打ち消すためには、最小RE値を1.0×108 (p/sec/cm2/sr)/(μW/cm2)程度にする必要があるため(e、f)、蛍光プローブからの微弱な蛍光は検出することができず、高感度検出は困難であった。また、波長が長くなるにつれて、合計RE値、平均RE値ともに劇的に減少することが分かる(g、h)。つまり、波長が長いほど、自家蛍光が弱くなり、蛍光プローブからの蛍光をより明瞭に検出できることがわかった。
【実施例】
【0256】
〔複合体の生体イメージング用蛍光プローブとしての性能検討〕
〈検討1〉
チューブ状複合体で標識したマクロファージを、細胞剥離溶液(Sigma-Aldrich)を用いてディッシュから剥がし、遠心分離で回収した。この回収したマクロファージをPBSで希釈し、2×105個, 2×104個, 2×103個, 2×102個の細胞を含む懸濁液をそれぞれ調製した。これらの懸濁液をマウスの皮下に投与し、IVIS Spectrumにより、細胞を検出した(励起波長660-690 nm、蛍光波長730-750 nm)。結果を図14に示す。チューブ状複合体で標識されたマクロファージをマウスの皮下に投与した場合、2×102個という低濃度であっても検出できることがわかった。
〈検討2〉
チューブ状複合体で標識したマクロファージ(1×106個)を含むPBS懸濁液を、当該マクロファージを取り出した元のマウスに静脈投与した。このマクロファージの体内分布を、IVIS Spectrumを用いて、in vivoおよびex vivo蛍光イメージングにより観察した(励起波長660-690 nm、蛍光波長730-750 nm)。結果を図15(a~d:in vivoイメージング、e~h:ex vivoイメージング)に示す。a及びeは投与前、b及びcは投与後6時間、c及びgは投与後24時間、d及びhは投与後48時間で観察した像である。なお、ex vivoイメージングは、生体内から摘出した各種臓器の蛍光観察することで行った。図15eにおいて、Hは心臓、Luは肺、Liは肝臓、Kは腎臓、Sは脾臓、Fは脂肪、UBは膀胱、Tは精巣を、それぞれ示す。
【実施例】
【0257】
チューブ状複合体で標識したマクロファージを元のマウスに静脈注射をして、蛍光イメージングにより追跡することにより、マクロファージの体内分布を調べた(励起波長660~690 nm, 蛍光波長730~750 nm)。投与してから6時間後、 チューブ状複合体で標識したマクロファージは肝臓に蓄積し、他の臓器には存在しないことがex vivoイメージングから明らかになった(f)。さらに、肝臓に集積した、チューブ状複合体で標識されたマクロファージからの蛍光は、in vivoイメージングにより体外でも検出することができた (b)。チューブ状複合体で標識されたマクロファージは48時間後も肝臓に存在しており、ex vivo(h)だけではなくin vivo(d)においても、明瞭に検出された。これらの結果から、チューブ状複合体が高感度かつ生体深部の蛍光イメージングを達成するためのプローブとして有用であることがわかった。
〈検討3〉
担癌マウスに対して、チューブ状複合体又はTCPPを癌部に直接投与(intratumor投与)し、IVIS Spectrumを用いて蛍光を観察した。結果を図16aに示す。投与前のマウスの写真において黄色円で囲った部分に癌が存在している。図16a上側は、チューブ状複合体を投与したマウスの観察結果であり、図16a下側に、TCPPを投与したマウスの観察結果である。チューブ状複合体は投与して 6時間までは癌組織に濃縮されていき、その後も癌組織に留まることがわかった。一方、TCPPは投与後すぐに癌組織から漏れ出し、16時間後には蛍光が検出できなくなった。このことから、チューブ状複合体は、ポルフィリン(TCPP)を用いるよりも、癌組織滞在性が高められていることがわかった。チューブ状複合体の癌組織での長期滞在性は光線力学療法による治療効果を高めるために有効であると考えられた。
【実施例】
【0258】
なお、図16aに示す傾向イメージングのradiant efficiency (RE)の変化を図16bに示す。図16b左は合計REを、同中は平均REを、同右は最大REを、それぞれ示す。チューブ状複合体(赤四角)は合計RE、平均RE、 最大REの、全てが6時間までは増加したが、TCPP(黒四角)は投与後直後からRE値が減少し、16時間では投与前とほぼ同じ値になった。これらの結果からも、チューブ状複合体の癌組織における長期滞在性を確認することができた。
【実施例】
【0259】
実施例3
TCPPに3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を共有結合させ、TCPP-APTES結合体を作製し、さらに当該結合体にさらにTEOS及びAPTESを共有結合させて、ポルフィリン含有複合体を製造した。当該製造工程の概要を図17に示す。
【実施例】
【0260】
具体的には、次のようにして製造した。3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES) (120μmol)とTCPP(30μmol)をN,N-dimethylformamide(DMF)(8mL)に溶解し、1-(3-dimethyl aminopropyl)-3-ethylcarbodiimide hydrochloride(120μmol)とN-hydroxy succinimide(120μmol)を加え、室温で一晩攪拌することにより、APTESのアミノ基とTCPPのカルボキシル基を縮合させ、アミド結合を形成させて、TCPP-APTES結合体を製造した(図17A)。次に、当該TCPP-APTES結合体の溶液にオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(200μmol)とAPTES(200μmol)を加え、攪拌し、さらにアンモニア水(28%)を加え、攪拌し、40℃で2時間放置することにより(すなわち加水分解して脱水縮合することにより)、ポルフィリン含有複合体を合成した(図17B)。生成物は遠心分離(15000 rpm)により、回収した。また、生成物はエタノールおよび水への再分散、遠心分離を繰り返すことで、洗浄した。さらに、100℃で12時間乾燥させて、粉末状の生成物を得た。以下、このようにして得たポルフィリン含有複合体を実施例3複合体と標記する。
【実施例】
【0261】
比較例4
実施例3複合体との比較のため、実施例3で用いたのと同様の原料から、TCPPが結合していない集合物を製造した。具体的には、次のようにして製造した。TCPP(30μmol)、TEOS(200μmol)、APTES(320μmol)をDMF (8mL)に溶解し、アンモニア水(28%)を2mL加え、攪拌し、40℃で2時間放置することにより、これらの集合物を得た。当該集合物では、TEOS及びAPTESは共有結合してTEOS-APTES結合物となっているが、TCPPはこれらとは結合しておらず、TCPPはTEOS-APTES結合物に物理的に補足されているだけと考えられる(限定的な解釈を望むものではないが、TEOS-APTES結合物のシリカネットワークが“網”のような役割をし、TCPPを物理的に補足しているものと考えられる)。以下、このようにして得た集合物を比較例4集合物と標記する。
【実施例】
【0262】
電子顕微鏡観察
次に、実施例3複合体と比較例4集合物の性質の検討を行った。まず、透過型電子顕微鏡(TEM)(H-7650, Hitachi, Tokyo, Japan)により観察した。結果を図18A~Dに示す。図18A及びBが実施例3複合体の観察結果を、図18C及びDが比較例4集合物の観察結果を、それぞれ示す。当該結果から、実施例3複合体がリング状である一方、比較例4集合物は球状であることがわかった。また、実施例3複合体の直径は56±9nmであり、EPR効果が利用できるサイズであった。比較例4集合物は直径訳243mmであり、EPR効果が期待できるサイズではなかった。
【実施例】
【0263】
FTIR(フーリエ変換赤外分光法)による検討2
実施例1で得たチューブ状複合体を検討したのと同様にして、実施例3複合体をFTIRにより測定した。結果を図19に示す。図19では、上からTEOS、APTES、TCPP及び実施例3複合体のスペクトルが示される。
【実施例】
【0264】
当該スペクトルから、次のことが読み取れた。すなわち、TEOSとAPTESのスペクトルの1160~1050cm-の吸収はνSi-ORによるものである。APTESのスペクトルの1584cm-の吸収はアミンのδN-Hによるものである。TCPPのスペクトルの1410cm-の吸収はνCαN、νCαβによるものであり、1780~1650cm-の吸収はカルボン酸のνC=Oによるものである。HNRsのスペクトルの1069cm-、806cm-及び473cm-の吸収はそれぞれνasSi-O-Si、νSi-O-Si、ρSi-O-Siによるものである。1650cm-の吸収はアミドのνC=Oによるものである(カルボン酸のνC=Oは見られなかった)。1554cm-の吸収はアミドとアミンのδN-Hに由来するものである。1395cm-の吸収はTCPPのνCαNとνCαβによるものである。
【実施例】
【0265】
以上のことから、実施例3複合体では、シロキサンネットワークが形成されていること、そして、アミド結合を介して、TCPPがシロキサンネットワーク中に組み込まれていること、が明らかになった。
【実施例】
【0266】
29Si NMR測定による検討
Solid state 29Si NMR測定により、実施例3複合体のシリカネットワークに関するより詳細な情報を得た。図20に結果を示す。実施例3複合体のシリカネットワークはQ、Q、T、Tからなることが分かった(-108.0ppm、-100.4ppm、-66.7ppmのピークがそれぞれQ、Q、Tであり、-66.7ppmのピークの肩がTである。なお、Q、Q、T、Tは図20中に示す各シロキサン結合である。)。つまり、TEOSのシラノール基のうち3つ又は4つが加水分解及び縮合を受け、TCPP-APTES結合体及びAPTESのシラノール基のうち2つ又は3つが加水分解及び縮合を受けていることがわかった。
【実施例】
【0267】
13C NMR測定による検討
Solid state 13C NMR測定により、実施例3複合体の構造解析を行った。結果を図21に示す。図21中の炭素についている1~11の番号が、ピークについている番号と対応しており、ピーク12はTCPPのカルボン酸に起因するものである(peak1:10.4ppm、peak2:22.3ppm、peak3:35.4ppm、peak4:163.4ppm、peak5:150.1ppm、peak6及び7:132.4ppm、peak8:142.7ppm、peak9:126.6ppm、peak10:118.2ppm、peak11:42.7ppm、peak12:171.9ppm)。以上の結果から、実施例3複合体において、TCPPはアミド結合を介してシロキサンネットワーク中に組み込まれていることがわかった。さらに、実施例3複合体にはAPTES由来のアミノ基が残存していることもわかった。当該アミノ基は、実施例3複合体にさらに化学修飾を行う場合に有用である。
【実施例】
【0268】
熱重量分析(TG)による検討
TGによる解析では、実施例3複合体は58%の重量減少が見られ、比較例4集合物は13%の重量減少が見られた(図22)。この内、水による重量減少は実施例3複合体で約13%、比較例4集合物で約8%であった(図22)。つまり、TCPP含有量は実施例3複合体が約45重量%、比較例4集合物が約5重量%であり、実施例3複合体は比較例4集合物に比べ、TCPPを非常に多く含有していることがわかった。
【実施例】
【0269】
なお、水の重量減少は200℃において、実施例3複合体及び比較例4集合物の重量減少は800℃において、それぞれ読み取った(図22)。これは、200℃で脱水が完全に行われ、また、800℃で有機物が完全に燃焼していると考えられるためである。
【実施例】
【0270】
肉眼観察
実施例3複合体および比較例4集合物を生理食塩水に分散させ、肉眼観察した。それぞれの写真を図23に示す。図23Aが実施例3複合体を、Bが比較例4集合物を示す。実施例3複合体はTCPPを多く含有しているため赤褐色に見えるが、比較例4集合物はほとんどTCPPを含有できていないため白く見える(シリカの色)。
【実施例】
【0271】
吸収波長の検討2
図23に示した、生理食塩水に分散させた実施例3複合体および比較例4集合物について、紫外可視吸収スペクトルを測定した(図24)。実施例3複合体はTCPPに比べて吸収波長が長波長側にシフトしており、最大吸収波長(656nm)が近赤外領域に入っていた。つまり、生体のイメージング(特に医療用途)に適した波長領域に励起波長を有していた。一方、比較例4集合物はTCPPの含有量が少ないため、吸収バンドが確認できなかった。
【実施例】
【0272】
蛍光イメージ及び蛍光強度の検討
図23に示した、生理食塩水に分散させた実施例3複合体および比較例4集合物の蛍光イメージ(励起波長675nm)を、図25(上側が実施例3複合体、下側が比較例4集合物)を示す。また、図26に、実施例3複合体および比較例4集合物の平均蛍光強度(図26左側)および最大蛍光強度(図26右側)の波長依存性をそれぞれ示す。実施例3複合体は波長740nmで最も強く蛍光を発することが分かった。実施例3複合体は励起波長、蛍光波長ともに近赤外領域に入っているので、生体のイメージング(特に医療用途)に適していると考えられた。一方、比較例4集合物は全く蛍光を発しなかった。これは、TCPP含有量が少ないためと考えられた。
【実施例】
【0273】
実施例3複合体の化学修飾(PEG化)の検討
上述のように、実施例3複合体にはAPTES由来のアミノ基が残存しているので、これを利用して化学修飾を施すことを検討した。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)による修飾(PEG化)の検討を行った。
【実施例】
【0274】
PEG化の概要を図27に示す。具体的には、実施例3複合体を水に分散させ(4mg/mL)、NHS-PEG(10μmol)を加え、攪拌し、25℃で24時間静置することにより、実施例3複合体をPEG修飾した(以下、PEG修飾された実施例3複合体を「PEG化実施例3複合体」と標記する)。
【実施例】
【0275】
さらに、PEG化実施例3複合体及びNHS-PEGを、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により解析してスペクトルを得た。結果を図28に示す。当該結果から次のことが読み取れる。すなわち、NHS-PEGにはNHS活性エステル由来のνC=Oによる吸収が1743cm-1に見られるが、PEG化実施例3複合体には見られず、アミド由来のνC=Oによる吸収が1670cm-1に見られる。また、1556cm-1にもアミドのδN-Hによる吸収が見られる。PEG由来の吸収が967cm-1と558cm-1に見られる。TCPPに由来する吸収が1390cm-1に見られる。1077cm-1、802cm-1、455cm-1にそれぞれνasSi-O-Si、νSi-O-Si、ρSi-O-Siによる吸収が見られる。以上のことから、NHS-PEGのNHSエステルと実施例3複合体のアミンが反応し、アミド結合を介して実施例3複合体がPEGにより修飾されたことが明らかになった。
【実施例】
【0276】
なお、PEG化には、タンパク質や細胞の非特異的吸着を抑制できる、細網内皮系による貧食を回避できる、腎臓からの排泄を遅延させることができる、等の効果があることが知られており、従ってPEG化によって血中滞留時間を大きく延長させることができると考えられる。
【実施例】
【0277】
担癌マウスへのPEG化実施例3複合体の投与
担癌マウスに対して、PEG化実施例3複合体を静脈投与し、IVIS Spectrumを用いて蛍光を観察した。静脈投与は、PEG化実施例3複合体1mgを生理食塩水1mLに溶解させて投与液とし、これを100μl投与することで行った。結果を図29に示す。投与前のマウスの写真(図29左側)においてオレンジ色円で囲った部分に癌が存在している。静脈投与したにもかかわらず、PEG化実施例3複合体は癌部分に特異的に集積したことがわかった(図29右側)。これは、PEG化により血中滞留時間を大きく延長された結果、EPR効果が高められた結果であると考えられた。
【実施例】
【0278】
ポルフィリン含有複合体への金粒子の内包の検討
上述のように、本発明のポルフィリン含有複合体は、リング状(チューブ状)であることが好ましい。また、リング状であれば、その内部に物質を内包できる可能性が考えられる。そこで、本発明のリング状ポルフィリン含有複合体に有用成分を内包させ、さらに優れた効果を奏する複合体を製造できないか検討を行った。
【実施例】
【0279】
蛍光イメージングは特殊な設備や環境が不要で、測定時間が短く高スループットで手軽に観察することが出来るが、空間分解能は劣っている。そこで、蛍光イメージングとX線CTを組み合わせることにより蛍光イメージングの欠点を補うことを目的とし、蛍光イメージング及びX線CTの両方の造影剤として働く粒子の創製を試みた。
【実施例】
【0280】
そこで、本発明のポルフィリン含有複合体に、X線造影剤として金粒子を内包させた複合体の製造を試みた。金はヨウ素に比べX線吸収率が高いうえ、ナノ粒子でありポルフィリン含有複合体に内包させやすいと考えられたためである。
【実施例】
【0281】
具体的には、次のようにして金粒子を内包した実施例3複合体(以下「金粒子内包実施例3複合体」と標記する)を調製した。
【実施例】
【0282】
すなわち、まずHAuClとtrisodium citrateを水に溶かした(それぞれ250μMになるようにした)。これに、氷で冷やしたNaBHを3mMになるように加え、25℃で3時間攪拌した。このようにして、金粒子を得た。以下、検討には当該金粒子を用いた。
【実施例】
【0283】
さらに、TCPP-APTES結合体、金粒子、TEOS、APTES、及び28%NH(aq)を混合した(それぞれ、560μM、185μM、370μM、370μM、3.3M)。この溶液を室温で一晩攪拌した。
【実施例】
【0284】
以上の工程により、金粒子内包実施例3複合体を得た。当該調製の概要を図30に示す。なお、図30に示す工程のうち、PEG化工程は上記の調製では行っていないが、上記実施例3複合体のPEG化と同様に操作することで、金粒子内包実施例3複合体も容易にPEG化することができる。現在使用されているX線造影剤(例えばイオパミロンなどのヨウ素化合物)は低分子であり、体内に投与した瞬間に拡散するため、血管や尿路などの造影にしか使用できなかった。一方、上記の通り本発明のポルフィリン含有複合体はPEG化により血中滞留時間を大きく延長できることが確認できているため、PEG化ポルフィリン含有複合体にX線造影剤を内包できれば、これまで難しかった、X線造影剤の血中滞留時間の延長も可能になると考えられる。
【実施例】
【0285】
金粒子内包実施例3複合体のTEM観察画像を図31に示す。金粒子のクラスターがコアになっており、この周りをシリカシェルが覆っている(すなわち、実施例3複合体に金粒子が内包されている)ことが分かった。TEMから見積もった金粒子内包実施例3複合体の平均サイズは148±22nmであった。また、動的光散乱(DLS)により、水溶液中での金粒子内包実施例3複合体の粒径を測定したところ、平均サイズは155nm±15nmであった(図32)。これは、TEMから見積もった粒径とほぼ一致していた。
【実施例】
【0286】
また、金粒子、TCPP、及び金粒子内包実施例3複合体の紫外可視吸収スペクトルを測定した(図33)。金粒子内包実施例3複合体は金粒子とTCPPが混合したスペクトルパターンを示しており、TCPPに比べ約10nmレッドシフトしていた。このことから、金粒子内包実施例3複合体の吸収最大波長ピークは約650nmとなり、近赤外領域内となっていることがわかった。
【実施例】
【0287】
図34左に金粒子内包実施例3複合体の蛍光画像を示す。画像上の数字は蛍光波長を示しており、励起波長は全て675nmである。蛍光波長720nm~820nmという近赤外領域内でブロードな蛍光を発し、特に740nmで強い蛍光を発することが分かった。図34右には蛍光波長と蛍光強度の関係を示したグラフを示す。当該グラフからも、金粒子内包実施例3複合体が720nmで最も強い蛍光を発することが分かった。
【実施例】
【0288】
図35左に、金粒子内包実施例3複合体200mM(Auとして)、イオパミロン200mM(Iとして)、及び水のX線CT画像を示す。金粒子内包実施例3複合体は市販のヨウ素系X線CT用造影剤イオパミロンよりもコントラストを増強させており、造影効果が強いことが分かった。図35右に、金粒子内包実施例3複合体及びイオパミロンの濃度(それぞれAu濃度、I濃度)とCT値との関係を示す。金粒子内包実施例3複合体、イオパミロンともに、CT値は濃度に対して線形に増加した。また、金粒子内包実施例3複合体の方がイオパミロンよりもCT値が大きく、これらのCT値の差は濃度が高くなるにつれて大きくなることがわかった。以上より、金粒子を内包させたリング状のポルフィリン含有複合体(金粒子内包実施例3複合体)は、蛍光イメージングとX線CTを組み合わせたデュアルモーダルイメージング用造影剤として使用できることが明らかになった。
【実施例】
【0289】
金粒子内包実施例3複合体を用いたデュアルモーダルイメージング
健常マウスに対して、金粒子内包実施例3複合体を左手から皮内投与し、IVIS Spectrumを用いて蛍光を観察するとともに、CTスキャナ(Aloka Latheta LCT-200)によりX線CT画像を取得した。なお、皮内投与は、金粒子内包実施例3複合体1mgを生理食塩水1mLに溶解させ、投与液とし、これを50μl投与することで行った。
【実施例】
【0290】
蛍光観察結果を図36に示す。投与前のマウスの写真(図36:Pre)では蛍光は観察されないが、投与後1時間で頸リンパ節(緑矢印)と左腋窩リンパ節(青矢印)が造影された(図36:1h)。時間が経つにつれて、頸リンパ節と左腋窩リンパ節の蛍光強度は強くなった(図36:5h)。24時間後、右腋窩リンパ節(紫矢印)も造影された(図36:24h)。48時間後、左右腋窩リンパ節からの蛍光は消滅し、頸リンパ節の蛍光も弱くなった(図36:48h)。また、同様に金粒子内包実施例3複合体を左手から皮内投与した別のマウスを、投与24時間後に解剖して、蛍光観察(Ex vivoイメージング)を行った。Ex vivoイメージングにより、左右腋窩リンパ節と頸リンパ節の位置をより明確に把握できた(解剖したため頸リンパ節は左右に分かれている)(図36:Ex vivo)。挿入図は摘出した頸リンパ節である(図36:Ex vivoの挿入図)。肉眼ではリンパ節を特定することは困難であったが、蛍光イメージングにより容易に特定できるようになったため、摘出することに成功した。
【実施例】
【0291】
また、図36の結果(in vivo蛍光イメージング結果)から、各リンパ節の蛍光強度の変化をグラフにしたものを図37に示す。具体的には、頸リンパ節(■)、左腋窩リンパ節(●)、右腋窩リンパ節(◆)の蛍光強度を示す。どのリンパ節でも、投与後24時間までは蛍光強度が増大し、48時間では減少していることがわかる。
【実施例】
【0292】
なお、リンパ節にはマクロファージが多く存在しており、このマクロファージの貧食作用によってナノ粒子が集積し易くなっているため、投与した金粒子内包実施例3複合体はリンパ節に集積する。48時間後に蛍光強度が弱まるのは、投与した金粒子内包実施例3複合体が拡散したためと考えられる。
【実施例】
【0293】
取得したX線CT画像を図38及び図39に示す。金粒子内包実施例3複合体投与前と投与後24時間に取得したCT画像である。図38で点線の円で囲った部分が頸リンパ節部分であり、投与後24時間後の画像において頸リンパ節が造影されていることが確認できた。また、図39で緑点線の円で囲った部分が左腋窩リンパ節部分であり、黄点線の円で囲った部分が右腋窩リンパ節部分である。投与後24時間後の画像において左右腋窩リンパ節が造影されていることが確認できた。なお、図38及び39の「MIP image」は、「Maximum Intensity Projections image」のことである。
【実施例】
【0294】
頸リンパ節、左右腋窩リンパ節(図38および図39で点線で囲んだ部分)のCT値をグラフ化したものを図40に示す。金粒子内包実施例3複合体の投与により、リンパ節のCT値が著しく向上していることが分かった。なお、*はp<0.0005を、**はp<0.0001を、***はp<0.00005を、それぞれ示す。
【実施例】
【0295】
以上の結果から、金粒子内包実施例3複合体を、蛍光イメージングとX線CTを組み合わせたデュアルモーダルイメージング用造影剤として用い得ることが確認できた。
【実施例】
【0296】
リンパ節は肉眼で確認することが難しい部位であるとともに、癌が初めに転移する場所であり、また肺癌や結核の診断に重要であることから、リンパ節造影は非常に注目される研究分野である。この観点から、本発明のポルフィリン含有複合体は非常に有用であると考えられる。またさらに、癌を標的とする分子を本発明のポルフィリン含有複合体に修飾させると、この修飾粒子が修飾されていない粒子よりも長くリンパ節に滞在する(蛍光が発せられる)ということであればリンパ節に癌の転移があると解釈でき、逆に修飾なしの粒子と同様の時間で蛍光が見られなくなればリンパ節に癌の転移は無いと解釈できることから、癌転移の診断に好ましく用い得る可能性も考えられる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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