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明細書 :ラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-170175 (P2013-170175A)
公開日 平成25年9月2日(2013.9.2)
発明の名称または考案の名称 ラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法
国際特許分類 C08G  77/14        (2006.01)
FI C08G 77/14
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2012-032783 (P2012-032783)
出願日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発明者または考案者 【氏名】金子 芳郎
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4J246
Fターム 4J246AA03
4J246AB06
4J246BA12X
4J246BA120
4J246BB02X
4J246BB020
4J246BB022
4J246CA58M
4J246CA58X
4J246CA580
4J246CA78U
4J246CA78X
4J246CA780
4J246CB03
4J246FA081
4J246FA082
4J246FA421
4J246FA422
4J246FC061
4J246FC062
4J246FE27
4J246GA01
4J246HA17
要約 【課題】カチオン性化合物の吸着剤などに利用できるアニオン性のラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】モノマーとして2-シアノエチルトリエトキシシランを用いてアルカリ性の条件下で重合反応させると、規則的な配列であって主鎖がねじれた構造を形成し、複数のアニオン性ラダー型ポリシルセスキオキサンが重なってヘキサゴナル積層構造を形成する。また、側鎖にはアニオン性のカルボキシレート基が形成されており、アルカリ金属イオンとイオン対を形成する。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)により表される単位の構造を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサン。
【化1】
JP2013170175A_000008t.gif
(式中、X+は、アルカリ金属イオンを示す。)
【請求項2】
前記アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオンであることを特徴とする請求項1に記載のラダー型ポリシルセスキオキサン。
【請求項3】
前記式(I)に表される単位の構造は、主鎖がねじれて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラダー型ポリシルセスキオキサン。
【請求項4】
2-シアノエチルトリエトキシシランをアルカリ性水溶液に混合して下記式(II)に表される構造の化合物を中間体として得る工程と、
下記式(II)に表される構造の化合物を加熱して縮合重合させ、陽イオン交換樹脂により下記式(III)に表される単位の構造の化合物を得る工程と、
下記式(III)に表される単位の構造の化合物に、メタノールまたはエタノールを含むアルカリ性溶液を混合し、カルボキシレート基と前記アルカリ性溶液中のアルカリ金属イオンとのイオン対を形成した固形物を抽出する工程と、
を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法。
【化2】
JP2013170175A_000009t.gif
(式中、Z+は、アルカリ金属イオンを示す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性を示すアニオン性のラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機成分と無機成分とを混合することにより、両成分の特徴を相乗的に高める有機-無機ハイブリッド材料が様々な分野で注目されている。その中でも、三官能性有機シランモノマー(シランカップリング剤)を用いて合成されるラダー型ポリシルセスキオキサン(PSQ)は、有機-無機ハイブリッド材料の中で注目されている材料の1つである。
【0003】
このラダー型PSQは、シロキサン結合が一次元方向に規則的につながったポリマーであり、主鎖構造が結合エネルギーの大きいSi-O結合からなり、さらにラダー構造であるため、熱的、力学的及び化学的に安定した材料である。また、このPSQは可溶性であるため、透明な溶液として利用することができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-219570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラダー型PSQは、分子構造を制御することによって様々な用途に応用することができ、キラリティー誘起材料や化合物の吸着剤といった用途に用いることが期待されているが、カチオン性化合物の吸着剤として利用できるラダー型PSQについては報告されていない。
【0006】
本発明は前述の問題点に鑑み、カチオン性化合物の吸着剤などに利用できるアニオン性のラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラダー型ポリシルセスキオキサン及びその製造方法については、以下のとおりである。
(1)下記式(I)により表される単位の構造を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサン。
【0008】
【化1】
JP2013170175A_000003t.gif
(式中、X+は、アルカリ金属イオンを示す。)
【0009】
(2)前記アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオンであることを特徴とする前記(1)に記載のラダー型ポリシルセスキオキサン。
【0010】
(3)前記式(I)に表される単位の構造は、主鎖がねじれて形成されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のラダー型ポリシルセスキオキサン。
【0011】
(4)2-シアノエチルトリエトキシシランを水酸化ナトリウム水溶液に混合して下記式(II)に表される構造の化合物を中間体として得る工程と、
下記式(II)に表される構造の化合物を加熱して縮合重合させ、陽イオン交換樹脂により下記式(III)に表される単位の構造の化合物を得る工程と、
下記式(III)に表される単位の構造の化合物に、メタノールまたはエタノールを含むアルカリ性溶液を混合し、カルボキシレート基と前記アルカリ性溶液中のアルカリ金属イオンとのイオン対を形成した固形物を抽出する工程と、
を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法。
【0012】
【化2】
JP2013170175A_000004t.gif
(式中、Z+は、アルカリ金属イオンを示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アニオン性を有するラダー型PSQにより、カチオン性化合物の吸着剤など、様々な分野に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のラダー型PSQの立体的な構造を説明する図である。
【図2】本発明のラダー型PSQの積層構造を説明する図である。
【図3】本発明の実施例により作製したPSQ-COOHの赤外分光法による測定結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例により作製したPSQ-COOHのプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)分光法による測定結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例により作製したPSQ-COOHのカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)分光法による測定結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例により作製したPSQ-COOHのシリコン核磁気共鳴(29Si-NMR)分光法による測定結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例により作製したPSQ-COOH及びPSQ-COO-Na+の赤外分光法による測定結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例により作製したPSQ-COOH及びPSQ-COO-Na+のX線回折法による測定結果を示す図である。
【図9】X線回折による構造解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、アニオン性を有するラダー型ポリシルセスキオキサン(PSQ)を生成するため、鋭意に研究した結果、モノマーとして2-シアノエチルトリエトキシシランを用いてアルカリ性の条件下で重合反応させたところ、規則的な配列のラダー構造からなるアニオン性ラダー型PSQを得ることができることを見出した。

【0016】
本発明に係るアニオン性ラダー型PSQは、主鎖がねじれた構造を形成し、複数のアニオン性ラダー型PSQが重なってヘキサゴナル積層構造を形成する。また、側鎖にはアニオン性のカルボキシレート基が形成されており、アルカリ金属イオンとイオン対を形成する。

【0017】
ここで、アルカリ金属イオンとは、ナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、ルビジウムイオン(Rb+)、及びセシウムイオン(Cs+)のことを指し、この中でも、水酸化ナトリウムは入手が容易であることから、ナトリウムイオンであることが好ましい。

【0018】
次に、アニオン性ラダー型PSQの製造方法について説明する。
まず、水酸化ナトリウム水溶液に2-シアノエチルトリエトキシシランを混合比(重量比)が0.9:1~3:1となるように混合して6時間~24時間攪拌することにより加水分解が起こり、次式(IV)に表される構造の化合物が得られる。

【0019】
【化3】
JP2013170175A_000005t.gif

【0020】
なお、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、他のアルカリ性水溶液を用いてもよい。水酸化ナトリウム水溶液の代わりに水酸化リチウム水溶液を用いる場合には、ナトリウムイオンの代わりにリチウムイオンの塩が得られる。また、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに水酸化カリウム水溶液を用いる場合には、ナトリウムイオンの代わりにカリウムイオンの塩が得られる。また、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに水酸化ルビジウム水溶液を用いる場合には、ナトリウムイオンの代わりにルビジウムイオンの塩が得られる。また、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに水酸化セシウム水溶液を用いる場合には、ナトリウムイオンの代わりにセシウムイオンの塩が得られる。

【0021】
次に、式(IV)に表される構造の化合物を開放系で50~70℃で加熱することで溶媒を蒸発させて縮合重合させる。一般的にモノマーから縮合重合によりPSQを得る場合、不規則な3次元ネットワーク構造を形成し、不溶性の材料となりやすい。これに対して本実施形態では、式(IV)に表される構造の化合物が酸とアルカリとからなる塩を形成しているため、この構造により3次元的な重合を抑制し、可溶性の規則的な配列のラダー構造が得られる。

【0022】
次に、陽イオン交換樹脂を用いてナトリウムイオンと水素イオンとを交換させると、次式(V)に表される構造のポリマーが得られる。ここで陽イオン交換樹脂としては、交換基としてスルホン酸基を有するもの、カルボキシル基を有するものなどが挙げられる。具体的には、生成した粉末状の粗生成物を陽イオン交換樹脂が入っている水に加えて室温で1~3時間撹拌することによって、式(V)に表される構造のポリマーが得られる。

【0023】
【化4】
JP2013170175A_000006t.gif

【0024】
次に、式(V)に表されるポリマーに水酸化ナトリウムのメタノール溶液を混合すると、イオン化して次式(VI)に表されるカルボキシレート基を有するラダー構造のPSQが得られる。なお、メタノール溶液の代わりにエタノール溶液を用いてもよい。また、式(V)に表されるポリマーと、水酸化ナトリウムとの混合比(モル比)が1:1となるように混合し、水酸化ナトリウム溶液の濃度は、0.1~1重量%とする。

【0025】
【化5】
JP2013170175A_000007t.gif

【0026】
なお、アルカリ金属イオンを他のイオンにする場合は、水酸化ナトリウムの代わりにそのイオンを有するアルカリ性物質を用いる。具体的には、リチウムイオンのラダー型PSQを得る場合には、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化リチウムを用いる。また、カリウムイオンのラダー型PSQを得る場合には、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを用いる。また、ルビジウムイオンのラダー型PSQを得る場合には、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化ルビジウムを用いる。また、セシウムイオンのラダー型PSQを得る場合には、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化セシウムを用いる。

【0027】
以上のような製造手順により得られるアニオン性のラダー型PSQは、図1に示すように、主鎖が右または左回りにねじれて形成されており、その結果、図2に示すようなヘキサゴナル積層構造を形成する。このとき、ラダー型PSQの主鎖部分の両端は、Si-OH結合が形成されている。また、分子量は、以上のような条件下で縮合重合させると、8000~16000の範囲内であると考えられる。

【0028】
このように本発明のラダー型PSQは、官能基としてアニオン性のカルボキシレート基を有し、さらに可溶性であることから、カチオン性化合物の吸着剤として利用することができる。例えば、セシウムイオンなどの陽イオンを含む化合物から選択的に陽イオンを除去することも可能である。また、陽性の発光性物質を吸着し、円偏光発光材料などへ応用することも可能である。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、この実験における条件等は、本発明の実施可能性等を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
まず、0.217gの2-シアノエチルトリエトキシシランを濃度が8%の水酸化ナトリウム水溶液5mLに混合して13時間攪拌し、式(IV)に表される化合物を生成した。この化合物は単離することが困難であるため、そのまま次の反応に用い、水溶液を開放系で50~60℃で加熱し、溶媒を蒸発させて重縮合を進行させた。その後、生成した粉末状の粗生成物を約100cm3のH+タイプの陽イオン交換樹脂が入っている100mLの水に加えて室温で3時間撹拌し、陽イオン交換樹脂をろ別した後、得られた水溶液をロータリーエバポレーターで20mLまで濃縮し、その後凍結乾燥することで1.765gの式(V)に表される構造の化合物(以下、PSQ-COOH)を得た。そして、PSQ-COOHの一部を採取し、Shimadzu製のFTIR-8400 spectrometerによる赤外分光測定、及びJEOL製のECX-400 spectrometerによる核磁気共鳴(NMR)分光測定を行った。
【実施例】
【0031】
図3は、本実施例により作製したPSQ-COOHの赤外分光法による測定結果を示す図である。図3に示すように、カルボキシル基については1713cm-1付近に吸収ピークが確認され、Si-O結合については、1034cm-1、1126cm-1付近に吸収ピークが確認された。
【実施例】
【0032】
図4~図6は、本実施例により作製したPSQ-COOHの核磁気共鳴(NMR)分光法による測定結果を示す図である。図4~図6に示すように、a,bの位置における(-CH2-)の存在が確認され、さらに、カルボキシル基を構成するC、及び主鎖部分のSiの存在も確認された。また、T2ピークが存在することから、PSQ-COOHの主鎖部分の両端はSi-OH結合が存在していることも確認された。
【実施例】
【0033】
次に、0.0228gの本実施例により作製したPSQ-COOHに、0.0072gの水酸化ナトリウムとメタノール溶液1.8mLとを加えて1時間撹拌し、この懸濁液をガラス基板上に塗布して室温で放置して乾燥することで式(VI)に表される単位の構造の化合物(以下、PSQ-COO-Na+)を得た。そして、PSQ-COO-Na+の一部を採取し、Shimadzu製のFTIR-8400 spectrometerによる赤外分光測定、及びX'Pert Pro diffractometer (PANalytical製)によるX線回折測定を行った。
【実施例】
【0034】
図7は、本実施例により作製したPSQ-COOH及びPSQ-COO-Na+の赤外分光法による測定結果を示す図である。図7に示すように、1412cm-1、1566cm-1付近に吸収ピークが確認され、カルボキシル基からカルボキシレート基に置換されていることが確認された。また、Si-O結合もPSQ-COOHの場合とほぼ同じ位置に吸収ピークが確認され、そのままSi-O結合が存在していることが確認された。
【実施例】
【0035】
図8は、本実施例により作製したPSQ-COOH及びPSQ-COO-Na+のX線回折法による測定結果を示す図である。図8に示すように、(100)面、(110)面及び(200)面のピークが検出され、図9に示すように複数のPSQ-COO-Na+がヘキサゴナル状に積層された構造であることが確認された。また、分子量は、29Si-NMR測定による末端定量法により約10×103と算出された。
【実施例】
【0036】
以上のように本実施例によれば、アニオン性のカルボキシレート基を有するラダー型PSQを作製することができる。これにより、カチオン性化合物の吸着剤や、円偏光発光材料などへ応用することも可能であるといえる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8