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明細書 :レアメタル結合能を有する人工ペプチドおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5943463号 (P5943463)
公開番号 特開2013-181021 (P2013-181021A)
登録日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
公開日 平成25年9月12日(2013.9.12)
発明の名称または考案の名称 レアメタル結合能を有する人工ペプチドおよびその利用
国際特許分類 C07K  14/11        (2006.01)
G01N  30/00        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
B01J  20/26        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C22B   3/38        (2006.01)
C22B  11/00        (2006.01)
FI C07K 14/11 ZNA
G01N 30/00 E
G01N 30/88 H
G01N 30/88 101D
G01N 31/00 T
G01N 31/00 Y
G01N 31/22 124
B01J 20/26 E
C02F 1/28 B
C22B 3/38
C22B 11/00 101
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2012-047585 (P2012-047585)
出願日 平成24年3月5日(2012.3.5)
審査請求日 平成27年2月5日(2015.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】田村 厚夫
【氏名】飯田 禎弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100077012、【弁理士】、【氏名又は名称】岩谷 龍
審査官 【審査官】上村 直子
参考文献・文献 特表2008-521431(JP,A)
特表2005-503798(JP,A)
特開2003-284556(JP,A)
特開平10-338700(JP,A)
特開昭61-060699(JP,A)
Current Opinion in Biotechnology,2011年,Vol.22,p.427-433
Journal of Chromatography A,2010年,Vol.1217,p.5940-5949
International Biodeterioration & Biodegradation,2007年,Vol.60,p.96-102
調査した分野 C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
以下のアミノ酸配列(1)からなるペプチド、またはアミノ酸配列(1)を2~4回繰り返した配列からなるペプチド
(1)SDPLVXRASLIGLLXLLLWXRX(配列番号1)
(XNまたはR、XはHまたはA、XはRまたはK、XはMまたは、XはDまたはE、XKまたはLを表す。)
【請求項2】
アミノ酸配列(1)が、以下のアミノ酸配列(2)~(5)のいずれかである請求項に記載のペプチド。
(2)SDPLVNRASLIGLLHLLLWRMDRL(配列番号2)
(3)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKMDRK(配列番号3)
(4)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKLERK(配列番号4)
(5)SDPLVRRASLIGLLALLLWKMDRK(配列番号5)
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドを含有する金属吸着剤。
【請求項4】
金属がレアメタルである請求項に記載の金属吸着剤。
【請求項5】
レアメタルがパラジウムおよび/または白金である請求項に記載の金属吸着剤。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載の金属吸着材とレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させる工程を含むことを特徴とするレアメタル回収方法。
【請求項7】
レアメタルがパラジウムおよび/または白金である請求項に記載のレアメタル回収方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載のペプチドとレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させる工程、および、当該ペプチドの構造変化を検出する工程を含むことを特徴とするレアメタル検出方法。
【請求項9】
レアメタルがパラジウムおよび/または白金である請求項に記載のレアメタル検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レアメタル結合能を有する人工ペプチドおよびその利用に関するものであり、詳細には、レアメタル結合能を有する人工ペプチドを含有する金属吸着剤、それを用いるレアメタル回収方法、レアメタル検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端科学技術の発展に深く関わり、高性能化の材料となっているのがレアメタルとよばれる非鉄金属類であり、材料・触媒化学の分野において広く注目を浴びている。近年の技術革新や新興国の発展に伴い、貴金属をはじめとするレアメタルの使用量が急増しており、資源確保観点からも金属の回収法の効率化が急務の課題となっている。
【0003】
従来のレアメタル回収技術は、高温や強酸性など極端な条件で行われるため、環境負荷が大きく、エネルギー消費も大きい。また、特定のレアメタルのみを選択的に回収することは困難である。そこで、環境負荷の少ないレアメタル回収技術が求められており、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-127651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レアメタル結合能を有する人工ペプチドを提供し、環境負荷の少ないレアメタル回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]以下のアミノ酸配列(1)を有し、かつアミノ酸残基数が100以下であるペプチド。
(1)SDPLVXRASLIGLLXLLLWXRX(配列番号1)
(Xは親水性アミノ酸、XはHまたはA、XはRまたはK、XはMまたは脂肪族アミノ酸、XはDまたはE、Xは任意のアミノ酸を表す。)
[2]XがNまたはR、XがMまたはL、XがKまたはLである前記[1]に記載のペプチド。
[3]アミノ酸配列(1)が、以下のアミノ酸配列(2)または(3)である前記[2]に記載のペプチド。
(2)SDPLVNRASLIGLLHLLLWRMDRL(配列番号2)
(3)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKMDRK(配列番号3)
[4]アミノ酸配列(1)が、以下のアミノ酸配列(4)または(5)である前記[2]に記載のペプチド。
(4)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKLERK(配列番号4)
(5)SDPLVRRASLIGLLALLLWKMDRK(配列番号5)
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載のペプチドを含有する金属吸着剤。
[6]金属がレアメタルである前記[5]に記載の金属吸着剤。
[7]レアメタルがパラジウムおよび/または白金である前記[6]に記載の金属吸着剤。
[8]前記[5]~[7]のいずれかに記載の金属吸着材とレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させる工程とを含むことを特徴とするレアメタル回収方法。
[9]レアメタルがパラジウムおよび/または白金である前記[8]に記載のレアメタル回収方法。
[10]前記[1]~[4]のいずれかに記載のペプチドとレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させる工程、および、当該ペプチドの構造変化を検出する工程を含むことを特徴とするレアメタル検出方法。
[11]レアメタルがパラジウムおよび/または白金である前記[10]に記載のレアメタル検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レアメタル結合能を有する人工ペプチドを提供することができる。当該人工ペプチドは、金属吸着材として好適に使用することができる。当該金属吸着材を用いることにより、レアメタルを効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のペプチド(M2SAP2)溶液に金属イオンを添加してCD(円二色性)測定した結果を示す図である。
【図2】本発明のペプチド(M2SAP2)溶液に(A)銅イオン溶液または(B)パラジウムイオン溶液を滴定してITC測定した結果を示す図である。
【図3】本発明のペプチド(M2SAP3)溶液に金属イオンを添加してCD測定した結果を示す図である。
【図4】本発明のペプチド(M2SAP3)溶液に(A)銅イオン溶液または(B)パラジウムイオン溶液を滴定してITC測定した結果を示す図である。
【図5】本発明のペプチド(M2SAP5)溶液に金属イオンを添加してCD測定した結果を示す図である。
【図6】本発明のペプチド(M2SAP5)溶液に(A)銅イオン溶液または(B)パラジウムイオン溶液を滴定してITC測定した結果を示す図である。
【図7】本発明のペプチド(M2SAP6)溶液に金属イオンを添加してCD測定した結果を示す図である。
【図8】本発明のペプチド(M2SAP6)溶液に(A)銅イオン溶液または(B)パラジウムイオン溶液を滴定してITC測定した結果を示す図である。
【図9】本発明のペプチド(M2SAP5)塗工した薄葉紙のパラジウムイオン吸着能を検討した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
M2タンパク質はA型インフルエンザウイルスのエンベロープ内に存在する膜タンパク質である。M2タンパク質は、97残基のアミノ酸(配列番号6)からなる1回膜貫通タンパク質であり、天然状態ではヘリックス構造をとっておりテトラマーを構成している。さらに、その4本膜貫通ヘリックスはpH依存性のプロトンチャネルを形成しており、その中に含むHis37はpHセンサーであり、Trp41はゲートの役割を担っている(Jasen R. Schnell et al., Nature 451 591-595 2008. 、Stouffer AL et al., Nature 451 596-599 2008.)。また、M2タンパク質は銅イオンと選択的に結合する能力を保有していることが知られている(Chris S. Gandhi et al., J Biol Chem 274(9) 5474-82 1999)。
そこで、本発明者らは、M2タンパク質の膜貫通ドメインを含むSer23からLeu46までのアミノ酸配列からなるペプチドは疎水性が高く水に不溶であったためアミノ酸配列を改変することで水溶性を獲得させ、さらに新たな金属結合能を付与するべくペプチド分子を設計し、種々の性質について検討を行った。その結果、レアメタル結合能を有する水溶性アナログを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0010】
〔ペプチド〕
本発明は、以下のアミノ酸配列(1)を有し、かつアミノ酸残基数が100以下であるペプチドを提供する。
(1)SDPLVXRASLIGLLXLLLWXRX(配列番号1)
(Xは親水性アミノ酸、XはHまたはA、XはRまたはK、XはMまたは脂肪族アミノ酸、XはDまたはE、Xは任意のアミノ酸を表す。)
本発明のペプチドは、水溶性かつレアメタル結合能を有しているペプチドであればよい。本発明のペプチドは、上記アミノ酸配列(1)を含むものであればよく、それ以外の部分のアミノ酸配列は、水溶性およびレアメタル結合能の少なくとも一方を損なわない限り特に限定されない。なお、本明細書において、「ペプチド」は2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合したものを意味し、結合するアミノ酸の数は問わない。すなわち、本発明における「ペプチド」にはポリペプチドが含まれる。

【0011】
は親水性アミノ酸であればよい。Xの親水性アミノ酸としては、例えばアスパラギン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン等が挙げられる。好ましくは、アスパラギン、アルギニンまたはグルタミン酸である。
はメチオニンまたは脂肪族アミノ酸であればよい。Xの脂肪族アミノ酸としては、例えばロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン等が挙げられる。好ましくはロイシンである。
のアミノ酸は特に限定されず、いずれのアミノ酸でもよい。好ましくは、ロイシン、リジン、グリシンであり、より好ましくは、ロイシンまたはリジンである。

【0012】
上記アミノ酸配列(1)は、以下のアミノ酸配列(2)または(3)であることが好ましい。
(2)SDPLVNRASLIGLLHLLLWRMDRL(配列番号2)
(3)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKMDRK(配列番号3)
アミノ酸配列(2)または(3)からなるペプチドは水溶性であり、パラジウムおよび銅と選択的に結合することが確認されている。

【0013】
また、上記アミノ酸配列(1)は、以下のアミノ酸配列(4)または(5)であることが好ましい。
(4)SDPLVRRASLIGLLHLLLWKLERK(配列番号4)
(5)SDPLVRRASLIGLLALLLWKMDRK(配列番号5)
アミノ酸配列(4)または(5)からなるペプチドは水溶性であり、パラジウムと選択的に結合することが確認されている。

【0014】
本発明のペプチドのアミノ酸残基数は、24残基以上100残基以下であれば特に限定されない。取り扱いの簡便さ、製造効率等の観点から、アミノ酸残基数の上限は約80残基が好ましく、より好ましくは約50残基、さらに好ましくは約40残基、特に好ましくは約30残基である。

【0015】
本発明のペプチドの具体例としては、例えば、配列番号6のアミノ酸配列からなるM2タンパク質のSer23からLeu46を、上記アミノ酸配列(1)で置換したペプチドを含むペプチドを好適に用いることができる。また、上記アミノ酸配列(1)を2~4回繰り返した配列を含むペプチドを好適に用いることができる。上記アミノ酸配列(1)を2~4回繰り返した配列としては、具体的には、例えば、上記アミノ酸配列(2)~(5)のいずれか1種を2~4回繰り返した配列、上記アミノ酸配列(2)~(5)の2~4種を適宜組み合わせて結合した配列などが挙げられる。好ましくは上記アミノ酸配列(2)~(5)のいずれか1種からなるペプチドであり、より好ましくは上記アミノ酸配列(4)または(5)からなるペプチドである。

【0016】
本発明のペプチドは、公知の一般的なペプチド合成のプロトコールに従って、固相合成法(Fmoc法、Boc法)または液相合成法により製造することができる。また、本発明のペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターを導入した形質転換体を用いる方法や、in vitro転写・翻訳系を用いる方法により製造することができる。

【0017】
本発明のペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド(-CONH)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルもしくはn-ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基もしくはα-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが挙げられる。本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。

【0018】
本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、側鎖が任意の置換基で修飾されたものでもよい。置換基は特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などが挙げられる。 さらに、本発明のペプチドには、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているものも含まれる。

【0019】
本発明のペプチドは塩を形成していてもよく、その塩としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の、またはアルミニウムの水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどとの塩などが挙げられる。

【0020】
〔金属吸着剤およびレアメタル回収方法〕
本発明のペプチドは金属(金属イオン)と結合できる性質を有するため、金属吸着剤として好適に用いることができる。本発明の金属吸着剤の吸着対象金属は、本発明のペプチドに特異的(選択的)に結合可能な金属に限定されず、非特異的に結合可能な金属であってもよい。本発明の金属吸着剤の吸着対象金属としては、例えば、金、銀、銅、亜鉛、白金、パラジウム、コバルト、クロム、マンガン、ニッケルなどが挙げられる。

【0021】
本発明のペプチドは選択的レアメタル結合能を有しているので、レアメタル吸着剤として有用である。レアメタルとしては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、銀、コバルト、クロム、マンガン、ニッケルなどが挙げられる。好ましくはパラジウムおよび/または白金である。

【0022】
本発明の金属吸着剤は、本発明のペプチドのみからなるものでもよいが、本発明のペプチド以外のものを含んでもよい。好ましくは、本発明のペプチドが適当な担体に担持された形態の金属吸着剤である。担体は、本発明のペプチドを担持可能なものであれば特に限定されず、公知のペプチド担体から適宜選択して用いることができる。担体の材質は特に限定されず、例えば、紙、木材、プラスチック等が挙げられる。担体の形状は特に限定されず、平板状、球状、糸状等が挙げられる。

【0023】
本発明の金属吸着剤を、金属成分を含有する水溶液と接触させることにより、本発明のペプチドが水溶液中の金属イオンと結合し、結合した金属を回収することができる。したがって、本発明は、上記本発明の金属吸着剤と金属成分を含有する水溶液とを接触させる工程を含む金属回収方法を提供する。また、本発明のペプチドは、レアメタルと特異的(選択的)に結合することができるので、回収対象金属をレアメタルとすることが好ましい。レアメタルを回収する場合は、本発明の金属吸着剤とレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させればよい。回収対象のレアメタルとしては、上記に例示したものが好ましい。

【0024】
本発明のレアメタル回収方法では、本発明の金属吸着剤とレアメタルを含む金属成分を含有する水溶液とを接触させた後、例えば、遠心分離、ろ過、pHの変化などによりレアメタルが結合した本発明の金属吸着剤を回収し、酵素による加水分解や燃焼によって金属吸着剤を分解消滅させることなどにより本発明の金属吸着剤からレアメタルを分離すればよい。

【0025】
〔レアメタル検出方法〕
本発明者らは、後の実施例で示すように、本発明のペプチドが特定のレアメタルと結合することにより構造変化することを見出した。したがって、本発明は、本発明のペプチドを用いるレアメタル検出方法を提供することができる。すなわち、本発明のレアメタル検出方法は、本発明のペプチドと目的のレアメタルを含有する可能性のある水溶液とを接触させる工程、および、接触後の本発明のペプチドの構造変化を検出する工程を含むものであればよい。本発明のレアメタル検出方法において、本発明のペプチドは、上記本発明の金属吸着剤の形態で使用することが好ましい。ペプチドの構造変化を検出する手段としては、特に限定されないが、例えば、円二色性(CD)測定、赤外分光(IR)測定、核磁気共鳴(NMR)測定などが挙げられる。

【0026】
〔レアメタルセンサー〕
本発明のペプチドは特定のレアメタルと結合することにより構造変化するので、特定のレアメタルに対するセンシング素子として用いることができる。本発明のペプチドを用いるセンシング素子と、特定のレアメタルの結合に伴うペプチドの構造変化を他の信号に変換する手段とを組み合わせることにより、特定のレアメタルに対するセンサー(検出器)を提供することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
〔実施例1:人工ペプチドの金属イオン結合能の検討〕
(1)ペプチドの合成
以下の4種類のペプチドを、ペプチド合成機(Pioneer, Peptide synthesis System; Applied Biosystems社製)を用いて、F-moc固相法により合成した。
M2SAP2:SDPLVNRASLIGLLHLLLWRMDRL(配列番号2)
M2SAP3:SDPLVRRASLIGLLHLLLWKMDRK(配列番号3)
M2SAP5:SDPLVRRASLIGLLHLLLWKLERK(配列番号4)
M2SAP6:SDPLVRRASLIGLLALLLWKMDRK(配列番号5)
【実施例】
【0029】
(2)実験方法
(2-1)CD(円二色性)測定
合成した各ペプチドを酢酸バッファー(pH5.5)にそれぞれ溶解して、300μMのペプチド溶液を調製した。このペプチド溶液にコバルト、銅またはパラジウムを含む溶液を添加した。ペプチド溶液のみ(金属非添加)、コバルト添加ペプチド溶液、銅添加ペプチド溶液およびパラジウム添加ペプチド溶液について、それぞれCDを測定した。測定には、Jasco J-720 spectro-polarrimeter(日本分光社製)を使用し、光路長0.1mmのタイコセルを用いて200μLのペプチド溶液について測定した。測定条件は、温度25℃、走査波長250nm~190nm、データ間隔0.2nm、走査速度100nm/min、レスポンス2sec、 バンド幅1nm、 感度10mdeg、積算回数8回とした。
【実施例】
【0030】
(2-2)ITC測定(等温滴定熱測定)
合成した各ペプチドを酢酸バッファー(pH5.5)にそれぞれ溶解して、300μMのペプチド溶液を調製した。測定には、VP-ITC Micro Calorimeter(MicroCal社製)を使用した。セルに1.5mLのペプチド溶液を入れ、撹拌しながら銅イオン溶液またはパラジウムイオン溶液を滴定した。得られた発熱量の変化を解析して結合定数を算出した。
【実施例】
【0031】
(3)結果
(3-1)M2SAP2
M2SAP2のCD測定の結果を図1に、ITC測定の結果を図2(A)および(B)に示した。図1から、M2SAP2は、銅イオンまたはパラジウムイオンを添加することによりこれらの金属と結合してα-へリックスに構造変化することが示された。一方、コバルトイオンを添加した場合は構造変化が生じないことが示された。示していないが、他の金属(鉄イオン、ニッケルイオン等)を添加した場合も構造変化が生じなかった。この結果から、M2SAP2は、銅およびパラジウムと選択的に結合することが明らかとなった。図2(A)および(B)に示した発熱量の変化に基づいて得られた結合常数(表1参照)から、M2SAP2の銅およびパラジウムに対する結合能は同程度であった。
【実施例】
【0032】
(3-2)M2SAP3
M2SAP3のCD測定の結果を図3に、ITC測定の結果を図4(A)および(B)に示した。図3から、M2SAP3は、銅イオンまたはパラジウムイオンを添加することによりこれらの金属と結合してα-へリックスに構造変化することが示された。一方、コバルトイオンを添加した場合は構造変化が生じないことが示された。示していないが、他の金属(鉄イオン、ニッケルイオン等)を添加した場合も構造変化が生じなかった。この結果から、M2SAP3は、銅およびパラジウムと選択的に結合することが明らかとなった。図4(A)および(B)に示した発熱量の変化に基づいて得られた結合常数(表1参照)から、M2SAP3の銅およびパラジウムに対する結合能は同程度であった。
【実施例】
【0033】
(3-3)M2SAP5
M2SAP5のCD測定の結果を図5に、ITC測定の結果を図6(A)および(B)に示した。図5から、M2SAP3は、パラジウムイオンを添加することによりこれと結合してα-へリックスに構造変化することが示された。一方、銅イオンまたはコバルトイオンを添加した場合は構造変化が生じないことが示された。示していないが、他の金属(鉄イオン、ニッケルイオン等)を添加した場合も構造変化が生じなかった。この結果から、M2SAP5は、パラジウムと選択的に結合することが明らかとなった。図6(A)および(B)に示した発熱量の変化に基づいて得られた結合常数(表1参照)から、M2SAP5のパラジウムに対する結合能は、銅に対する結合能の約4倍であった。なお、パラジウムに対する結合能がM2SAP3と比して約2倍向上している点で、より有用性が高い。
【実施例】
【0034】
(3-4)M2SAP6
M2SAP6のCD測定の結果を図7に、ITC測定の結果を図8(A)および(B)に示した。図7から、M2SAP6は、パラジウムイオンを添加することによりこれと結合してα-へリックスに構造変化することが示された。一方、銅イオンまたはコバルトイオンを添加した場合は構造変化が生じないことが示された。示していないが、他の金属(鉄イオン、ニッケルイオン等)を添加した場合も構造変化が生じなかった。この結果から、M2SAP6は、パラジウムと選択的に結合することが明らかとなった。図8(A)および(B)に示した発熱量の変化に基づいて得られた結合常数(表1参照)から、M2SAP6のパラジウムに対する結合能は、銅に対する結合能の約4倍であった。なお、パラジウムに対する結合能がM2SAP3と比して約4倍向上している点で、より有用性が高い。
【実施例】
【0035】
【表1】
JP0005943463B2_000002t.gif
【実施例】
【0036】
〔実施例2:ペプチド塗工紙のPdイオン吸着能の検討〕
(1)ペプチド塗工紙の作製
原紙として、薄葉紙14g/m(50mm×50mm)を用いた。ペプチド塗工液(原液)として、バインダー樹脂(25%品)40mgにM2SAP5を10mg添加して攪拌混合したもの(バインダー樹脂(固形量):ペプチド(固形量)=1:1)を用いた。ペプチド塗工液の入ったシャーレの中に薄葉紙を入れて含浸させ、その後オーブン乾燥機にて100℃で10分間乾燥を行った。ペプチド塗工液(原液)を水で希釈して濃度を調整することにより、塗工量が2g/m(ペプチド1g/m)の塗工紙および1g/m(ペプチド0.5g/m)の塗工紙の2種類を作製した。
【実施例】
【0037】
(2)Pdイオン吸着試験
パラジウム標準液(1000ppm)が5ml入ったシャーレに、25mm×25mm角の塗工紙を4時間含浸させ、パラジウムイオンを吸着させた。その後、残液のパラジウムイオン濃度を原子吸光分光光度計を用いて測定し、初期濃度との差を吸着量とした(n=2)。
結果を図9および表2に示した。図9は、4時間含浸後の薄葉紙の写真であり、(A)が薄葉紙14g/m、(B)が薄葉紙14g/m+ペプチド塗工液2g/m、(C)が薄葉紙14g/m+ペプチド塗工液1g/mの写真である。図9からわかるように、薄葉紙の着色の程度は(B)>(C)>(A)であった。また、表2に示したように、薄葉紙に本発明のペプチドを塗工することでパラジウムイオンの吸着量が用量依存的に増加した。また、ペプチド塗工紙作製における原料ペプチドの歩留まりを100%と仮定した場合、ペプチド1gあたりのパラジウムイオン吸着量は約90~約135mg/gと推定された。
【実施例】
【0038】
【表2】
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【実施例】
【0039】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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