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明細書 :カルシウム吸収促進剤及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4512716号 (P4512716)
公開番号 特開2001-163800 (P2001-163800A)
登録日 平成22年5月21日(2010.5.21)
発行日 平成22年7月28日(2010.7.28)
公開日 平成13年6月19日(2001.6.19)
発明の名称または考案の名称 カルシウム吸収促進剤及びその製造方法
国際特許分類 A61K  36/48        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P   3/14        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 35/78 J
A61K 37/02
A61P 19/10
A61P 3/14
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願平11-350283 (P1999-350283)
出願日 平成11年12月9日(1999.12.9)
審査請求日 平成18年11月15日(2006.11.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】熊谷 日登美
個別代理人の代理人 【識別番号】100101591、【弁理士】、【氏名又は名称】川俣 静子
審査官 【審査官】鶴見 秀紀
参考文献・文献 KUMAGAI HITOM et al,Influence of Phytate Removal and Structural Modification on the Calcium-binding Properties of Soybean Globulins. ,Biosci Biotechnol Biochem ,1998年,Vol.62,No.2,Page.341-346
SHIH F F et al,Deamidation of protein in a soy extract by ion exchange resin catalysis,J Food Sci ,1987年,Vol.52,No.6,Page.1529-1531
調査した分野 A61K 36/48
A61K 38/00
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ダイズタンパク質に、少なくともアニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理及び弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行うことにより製造されるカルシウム吸収促進剤。
【請求項2】
前記弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を、0~50℃の温度で行うことを特徴とする請求項記載のカルシウム吸収促進剤。
【請求項3】
前記弱酸性カチオン交換樹脂が、交換基としてカルボキシル基を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載のカルシウム吸収促進剤。
【請求項4】
ダイズから抽出したダイズタンパク質に、少なくともアニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理と、弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行うことを特徴とするカルシウム吸収促進剤の製造方法。
【請求項5】
弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を、0~50℃の温度で行うことを特徴とする請求項記載の製造方法。
【請求項6】
前記弱酸性カチオン交換樹脂が、交換基としてカルボキシル基を有するものであることを特徴とする請求項4または5記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルシウム吸収促進剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
国民栄養調査によると、日本人の1日当たりのカルシウム摂取量の平均値は、現在でもなお所要量を下回っている。また、骨粗鬆症等、カルシウムの欠乏に起因する疾病が深刻な成人病の一つとなりつつある。従って、カルシウム摂取量を増加することは、国民の健康を維持する上で重要な課題である。
このため、種々のカルシウム製剤が開発されている。例えば、魚や動物の骨、卵殻、貝殻等を粉砕してなる粉末、カルシウム塩等を含むカルシウム製剤や、これらのカルシウム製剤を添加したカルシウム強化食品が開発され、市販されている。
しかしながら、カルシウムは腸管における吸収性が低いため、単にカルシウムを摂取するのみでは十分ではなく、カルシウムの吸収性を高めるためのカルシウム吸収促進剤の開発が望まれている。カルシウムの腸管での吸収を促進する物質としては、多量のカルシウムを弱く結合させることができ、これによりカルシウムが腸内で沈殿し、吸収されずに排泄されるのを防ぐことのできる物質が有効であるとされている。
【0003】
そのような物質として、カゼインホスホペプチドが知られている。CPPは牛乳中に存在するカゼインの消化過程で生成する物質であり、これをカルシウム吸収促進剤として添加した乳酸飲料が開発され、市販されている。
しかしながら、CPPは牛乳由来のペプチドであって、いわゆる牛乳臭を有し、また加工特性が低いため、乳酸飲料のような乳製品以外への適用が制限される。従って、牛乳や乳酸飲料が苦手な人は摂取できないという問題があり、さらに適用範囲の広いカルシウム吸収促進剤の開発が強く望まれている。
このような観点から、CPP以外のカルシウム吸収促進剤の可能性が研究されており、その一つとしてダイズタンパク質が提案されているが、ダイズタンパク質は、カルシウム結合性が高いが、生体内でのカルシウム吸収促進作用は低いことが報告されている(Br. J. Nutr., 43, 457-467, 1980; J. Nutr. Sci. Vitaminol., 32, 67-76,1986)。
その理由としては、ダイズタンパク質に結合しているフィチン酸が消化管内でカルシウムと結合し、水不溶性塩を形成し、腸管壁から吸収され得なくなることが考えられる。
【0004】
また、ダイズタンパク質に限らず、豆類、穀類等の植物タンパク質は、構成成分としてカルシウムを弱く結合し得る酸性アミノ酸を多く含むため、カルシウム吸収促進剤として望ましいと考えられるが、その酸性アミノ酸の多くが酸アミド型として存在し、そのままの状態ではカルシウムと結合することができないことも、生体内で高いカルシウム吸収促進作用を得られない理由の一つであると考えられる。
本発明の発明者らは、ダイズタンパク質等の植物タンパク質をカルシウム吸収促進剤の原料とする場合に、カルシウム吸収促進効果を高めるために、フィチン酸を予め除去し、且つ酸アミド基のアミノ基を予め除去しておくことが有利であることに着目し、アニオン交換樹脂によりフィチン酸を除去すると共に、酵素により脱アミド化したダイズタンパク質を開発した(H.Kumagai et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 341-346, 1998)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酵素によるダイズタンパク質の脱アミド化は、コストが高い上に、脱アミド量も80μmol/g程度であり、十分とは言えない。本発明者らはさらに鋭意研究を行った結果、弱酸性カチオン交換樹脂を用いて植物タンパク質の脱アミド化処理を行うと、非常に効率良く脱アミドを行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、下記のカルシウム吸収促進剤を提供する。
(1)植物タンパク質に、少なくともアニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理及び弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行うことにより製造されるカルシウム吸収促進剤。
(2)前記植物タンパク質がダイズタンパク質である(1)のカルシウム吸収促進剤。
(3)前記弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を、0~50℃の温度で行うことを特徴とする(1)または(2)のカルシウム吸収促進剤。
(4)前記弱酸性カチオン交換樹脂が、交換基としてカルボキシル基を有するものであることを特徴とする(1)、(2)または(3)のカルシウム吸収促進剤。
また、本発明は、植物から抽出した植物タンパク質に、少なくともアニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理と、弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行うことを特徴とするカルシウム吸収促進剤の製造方法に関する。
前記脱アミド化処理は、0~50℃の温度で行うのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「植物タンパク質」は、採油用の種実もしくはその脱脂物、豆類または穀類等の植物に加工処理を施してタンパク質含有量を高めたものを意味する。
前記植物タンパク質は、粉末状、粒状、ペースト状、繊維状等のいかなる形態であってもよい。
採油用の種実としては、例えば、ヒマワリ、ナタネ、ゴマ、ピーナッツ、アーモンド、クルミ等の種実が挙げられる。
豆類としては、ダイズ、アズキ、ササゲ、ソラマメ、インゲンマメ、ヒヨコマメ、リョクトウ、ライママメ等が挙げられる。
穀類としては、コムギ、トウモロコシ、コメ、エンバク、オオムギ、ソバ、キビ、ハトムギ、ヒエ、アワ、ライムギ等が挙げられる。
前記植物タンパク質としては、特にダイズタンパク質が好ましい。本明細書において、「ダイズタンパク質」は、ダイズから抽出されるタンパク質を意味し、ほぼ純粋な状態まで精製されたものだけでなく、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白等、脱脂や水抽出等の処理により一定の程度までタンパク質含有量を高めたものをも含む。
前記植物タンパク質のタンパク質含有量は、20~100%とするのが好ましい。
【0008】
本発明に使用する植物タンパク質を得るための加工処理は、例えば、脱皮、粉砕、脱脂、水抽出、酸沈殿、洗浄、遠心分離、透析、乾燥等の工程を適宜組み合わせたものであり、用いる原料植物によって異なる。各工程は、各々植物について慣用の方法により行い得る。
ダイズの場合、例えば、脱皮、粉砕、脱脂、水または緩衝液による抽出、酸沈殿、遠心分離、透析、凍結乾燥の各工程を順次行うことにより、ダイズタンパク質の抽出が行われる。
【0009】
本明細書において、「アニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理」とは、植物タンパク質をアニオン交換樹脂と接触させることにより、植物タンパク質に結合しているフィチン酸またはその塩を除去することを意味する。
アニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理は、例えば、植物タンパク質を、水または適当な緩衝液、例えばTris-HCl緩衝液、リン酸緩衝液等の緩衝液中でアニオン交換樹脂と一定時間、適当なpH及び温度で混合することにより行われる。その後、該イオン交換樹脂を濾去し、処理されたタンパク質を透析、蒸発、乾燥等の処理により濾液から抽出することができる。
アニオン交換樹脂としては、交換基として例えば-N(CHまたは-N(COH)(CHを有し、イオン交換容量が、例えば0.7~1.5g当量/ml湿潤樹脂であるものを使用し得る。
処理時間は、5分間から10時間、好ましくは5分間~5時間、特に5分間~3時間であり得る。
処理温度は、好ましくは0~70℃、より好ましくは0~50℃である。処理温度が高いと、タンパク質の加水分解が進行し、味、加工特性が低下するためである。
pHは、特に限定されないが、例えばpH6~8で処理し得る。
アニオン交換樹脂の使用量は、特に限定されないが、例えば0.1~5%のタンパク質溶液100mlに対して0.1~50g、好ましくは1~10gの量で使用し得る。
【0010】
本明細書において、「弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理」とは、植物タンパク質を弱酸性カチオン交換樹脂と接触させることにより、植物タンパク質を構成するアミノ酸の酸アミド基から、アミノ基を除去して、遊離のカルボキシル基とすることを意味する。
弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理は、例えば、植物タンパク質を、水または適当な緩衝液、例えばTris-HCl緩衝液、リン酸緩衝液等の緩衝液中で弱酸性カチオン交換樹脂と一定時間、適当なpH及び温度で混合することにより行われる。その後、該イオン交換樹脂を濾去し、処理されたタンパク質を透析、乾燥等の処理により濾液から抽出することができる。
弱酸性カチオン交換樹脂としては、交換基として例えば-COOH、-N(CHCOOH)を有し、イオン交換容量が、例えば0.5~5g当量/l湿潤樹脂であるものを使用し得る。
処理時間は、30分間~15時間、好ましくは1~10時間、特に3~6時間であり得る。
処理温度は、好ましくは0~70℃、より好ましくは0~50℃である。処理温度が高すぎると、タンパク質の加水分解が進行し、味、加工特性が低下するためである。
pHは、特に限定されないが、例えばpH6~8で処理し得る。
弱酸性カチオン交換樹脂の使用量は、特に限定されないが、例えば0.1~5%のタンパク質溶液100mlに対して1~100g、好ましくは10~50gの量で使用し得る。
なお、弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行った後にアニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理を行っても、アニオン交換樹脂によるフィチン酸塩除去処理を行った後に弱酸性カチオン交換樹脂による脱アミド化処理を行ってもよい。
【0011】
本発明により、上記カルシウム吸収促進剤を、好ましくはカルシウム剤と共に含有するカルシウム強化食品、飼料、カルシウム強化用栄養組成物及び医薬品製剤が提供される。
使用し得るカルシウム剤としては、魚や動物の骨、卵殻、貝殻等を粉砕してなる粉末、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。
上記カルシウム強化食品は、固形、ゲル状、液状等、いかなる形態の食品であってもよい。畜肉加工品;水産練製品;惣菜;冷凍食品;豆腐等のダイズ加工食品;豆乳、発酵乳、清涼飲料水等の飲料;ゼリー、プリン、ビスケット、ウェハース、煎餅、飴等の菓子類;味噌、醤油等の調味料であり得る。
これらのカルシウム強化食品の製造において、カルシウム吸収促進剤は各食品の製造の適当な工程において添加することができる。
ダイズタンパク質の場合、ゲル化剤としても機能するため、ゲル化工程において添加することができる。
上記カルシウム強化用栄養組成物及び医薬品製剤は、さらに、他の栄養素、例えば、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類を含んでいてもよい。また、乳タンパク質等、他の原料由来のタンパク質を含んでいてもよい。
また、上記カルシウム強化用栄養組成物及び医薬品製剤は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、ドリンク剤、シロップ剤等、任意の形態であってよく、その形態に応じて、適宜、増量剤、希釈剤、溶剤、充填剤等の賦形剤、溶解補助剤、可溶化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、徐放化剤等のような補助剤、抗酸化剤、保存剤、光沢剤、甘味剤、着色剤、着香剤等を含有し得る。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
(1)ダイズタンパク質の抽出
原料としてのダイズを脱皮し、ミキサーを用いて磨砕し、5倍重量のヘキサンで脱脂した。脱脂したダイズを、0.01Mの2-メルカプトエタノールを含有する0.03MのTris-HCl緩衝液(pH8.0)20倍重量と共に1時間撹拌し、18,000×g,20℃で20分間の遠心分離を行い、上清液を2NのHClでpH6.4に調整し、18,000×g,4℃で20分間の遠心分離を行った。沈殿を蒸留水に分散させ、硫酸アンモニウムを飽和濃度になるように添加した後、11,000×g,4℃で20分間の遠心分離を行った。沈殿を蒸留水で透析し、凍結乾燥して、ダイズタンパク質を得た。
(2)フィチン酸塩の除去
前処理として、下記の表1に記載のアニオン交換樹脂(Amberlite IRA-410,株式会社オルガノ製)を1NのHCl、1NのNaOH及び0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)に溶解したダイズタンパク質試料(0.2w/v%溶液)を、上記前処理したアニオン交換樹脂と混合し、4℃で3時間撹拌した。綿布で濾過した後、濾液を蒸留水で透析し、凍結乾燥した。
アニオン交換樹脂は、0.2w/v%ダイズタンパク質溶液100ml当たり5gの量で使用した。
【0013】
【表1】
JP0004512716B2_000002t.gif【0014】
(3)脱アミド化処理
前処理として、下記の表2に示すカチオン交換樹脂(Amberlite IRC-50,株式会社オルガノ製)を、1NのHCl、1NのNaOH及び0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。
【0015】
【表2】
JP0004512716B2_000003t.gif【0016】
上記のようにフィチン酸塩の除去を行ったダイズタンパク質試料を、0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)に溶解し(0.2w/v%溶液)、上記前処理したカチオン交換樹脂と混合し、4℃で6時間撹拌した。
綿布で濾過した後、濾液を蒸留水で透析し、凍結乾燥した。
カチオン交換樹脂は、0.2w/v%ダイズタンパク質溶液100ml当たり5gの量で使用した。
これにより、本発明のカルシウム吸収促進剤を得た。
【0017】
実施例2~4
フィチン酸塩の除去処理において、Amberlite IRA-410の代わりに、株式会社オルガノ製の、Amberlite IRA-400(実施例2)、Amberlite IRA-411S(実施例3)、Amberlite IRA-458(実施例4)を用いた以外は、上記と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
各アニオン交換樹脂のイオン交換容量及び交換基は上記表1に示した。
【0018】
実施例5~8
フィチン酸塩除去処理の処理時間を1時間(実施例5)、6時間(実施例6)、12時間(実施例7)、24時間(実施例8)に変える以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
【0019】
実施例9,10
フィチン酸塩除去処理の処理時間を1時間とし、使用するアニオン交換樹脂の量を10g(実施例9)、25g(実施例10)とする以外は実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
【0020】
実施例11
脱アミド化処理において、Amberlite IRC-50の代わりに、株式会社オルガノ製のAmberlite IRC718を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
Amberlite IRC718のイオン交換容量及び交換基は上記表2に示した。
【0021】
比較例1、2
脱アミド化処理において、Amberlite IRC-50の代わりに、株式会社オルガノ製の、Amberlite IR120B(比較例1)、Amberlite XT1006(比較例2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
各カチオン交換樹脂のイオン交換容量及び交換基は上記表2に示した。
【0022】
実施例12~15
脱アミド化処理の処理時間を1時間(実施例12)、3時間(実施例13)、12時間(実施例14)、24時間(実施例15)に変える以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
【0023】
実施例16~18
脱アミド化処理に使用する弱酸性カチオン交換樹脂の量を10g(実施例16)、50g(実施例17)、100g(実施例18)とする以外は実施例1と同様の方法により、カルシウム吸収促進剤を製造した。
【0024】
試験例1:フィチン酸塩除去量の測定
ダイズにおいては殆どのリンがフィチン酸塩の形態で存在するため、リンの量をフィチン酸塩の量の指標として用いた。上記実施例1~10で製造されたカルシウム吸収促進剤を減圧下、110℃、24時間、6NのHClで加水分解した。加水分解物をガラスフィルターに通した。濾液を減圧下で乾燥し、乾燥試料(実施例1~10)の10mgを0.2MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)10mlに溶解した。各試料溶液中のカルシウム及びリンの含有量を誘導結合プラズマ原子発光分光計(モデルM,SPECTRO Analytical Instruments, Kleve, Germany)で測定した。比較のために、フィチン酸塩除去処理及びアミド化処理を行わないダイズタンパク質(未処理ダイズタンパク質)についても同様にリンの含有量を測定した。
上記実施例1~4のカルシウム吸収促進剤及び未処理ダイズタンパク質について測定した結果を図1に示す。
上記実施例1,5~8のカルシウム吸収促進剤及び未処理ダイズタンパク質について測定した結果を図2に示す。
上記実施例1,9,10のカルシウム吸収促進剤及び未処理ダイズタンパク質について測定した結果を図3に示す。
【0025】
試験例2:脱アミド量の測定
実施例1,11~18及び比較例1及び2のカルシウム吸収促進剤について、脱アミド化量を下記のように測定した。
脱アミド化処理をしていない上記ダイズタンパク質をHClで完全に脱アミド化し、発生したアンモニア量を測定することにより、該タンパク質の全酸アミド量を算出した(全酸アミド量)。
次に、カチオン交換樹脂で脱アミド化処理したタンパク質をHClで完全に脱アミド化し、残留した酸アミド量を算出した(残留酸アミド量)。
脱アミド量を下記式により算出した。
脱アミド量=全酸アミド量-残留酸アミド量
発生したアンモニア量の測定は、下記のようにコンウェーの微量拡散法とインドフェノール法を組み合わせることにより調べた。密閉容器中で、強アルカリ溶液(KCO)により試料溶液から放出したアンモニアを0.5mlの1/100NのHSOに吸収させた。37℃で2時間インキュベートした後、得られた硫酸アンモニウム溶液0.5mlを氷冷水中で冷却した試験管に入れ、0.003MのMnSO0.05ml、アルカリ性フェノール溶液1ml及びNaClO0.5mlを添加した。試験管を直ちに密閉し、浸透し、沸騰水中に5分間放置した。その後、溶液を10mlの蒸留水で希釈し、反応により生じたインドフェノールの625nmにおける吸光度を分光光度計(島津製作所製のモデルUV-240)で測定した。既知量の硫酸アンモニウム溶液を用いて検量線を作成した。
上記実施例1、実施例11、比較例1及び2のカルシウム吸収促進剤について測定した結果を図4に示す。
上記実施例1及び12~15のカルシウム吸収促進剤について測定した結果を図5に示す。
上記実施例1及び16~18のカルシウム吸収促進剤について測定した結果を図6に示す。
【0026】
試験例3:カルシウム結合性の評価
原料ダイズから抽出したダイズタンパク質中のカルシウムを下記の方法により予め除去しておく以外は、上記実施例1と同じ方法により得られたカルシウム吸収促進剤(実施例19)のカルシウム結合性を調べた。
(カルシウムの除去)
カチオン交換樹脂(Amberlite XT1006,株式会社オルガノ製)を、1NのHCl、1NのNaOH及び0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。実施例1で抽出したダイズタンパク質を、0.2w/v%となるように0.05MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)(100ml)に溶解し、前記前処理を行ったカチオン交換樹脂(5g)と混合し、4℃で15分間撹拌した。綿布で濾過し、濾液を蒸留水で透析し、凍結乾燥した。
試料溶液中の遊離のカルシウムの量を電位差法を用いて測定した。下記式に示すように、起電力(E)は、遊離カルシウムイオンの濃度(C)に比例する。
【0027】
E=E0*+(RT/2F)lna=E0*+(RT/2F)(lnγ+ln[C])
【0028】
0*は標準電位であり、Rは気体定数であり、Tは絶対温度であり、Fはファラデー定数であり、aはカルシウムイオン活量であり、γは活量係数である。
遊離カルシウムイオン濃度は、25.0±0.5℃で、カルシウムイオン選択電極(CA-135B,TOAエレクトロニクス製)及び二重ジャンクション比較電極(HS-305DS,TOAエレクトロニクス製)に接続したイオンメーター(IM-40S,TOAエレクトロニクス製)により測定した。イオンメーターは、0~5×10-4M塩化カルシウム溶液を用いて補正した。遊離カルシウムイオン濃度として、標準塩化カルシウムの濃度を用いた。全ての溶液は、0.2MのTris-HCl緩衝液(pH7.4)で調製した。このpHは殆どのカルシウムが吸収される小腸の下部のpHである。
カルシウム結合量(AC)は、全カルシウム濃度(Ct)から遊離カルシウム濃度(C)を差し引いて計算した。
比較のために、カルシウムを上記の方法により予め除去しておくこと及びフィチン酸塩除去処理及び脱アミド化処理を行わないこと以外は実施例1と同様の方法により製造したカルシウム吸収促進剤(比較例3)、及びカルシウムを上記の方法により予め除去しておくこと及び脱アミド化処理を行わないこと以外は実施例1と同様の方法により製造したカルシウム吸収促進剤(比較例4)についても同じ試験を行った。結果を図7に示す。
【0029】
【発明の効果】
本発明のカルシウム吸収促進剤は、植物タンパク質からフィチン酸またはその塩を除去すると共に、その構成アミノ酸の酸アミド基を弱酸性カチオン交換樹脂により脱アミド化しているため、高効率のカルシウム吸収促進剤を低コストで得ることができる。製造に使用したイオン交換樹脂は、再生可能であるため、さらにコストを低減でき、また省資源の観点からも好ましい。
また、本発明により得られるカルシウム吸収促進剤は、高いカルシウム吸収促進効果を有すると共に、食品加工性に優れ、広範囲の食品に適用することができる。これにより、摂取する者の嗜好に拘わらず、カルシウム摂取量の増加を図ることができ、国民の健康状態の改善に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例のカルシウム吸収促進剤におけるフィチン酸塩除去量の結果を示すグラフ。
【図2】 本発明の実施例のカルシウム吸収促進剤におけるフィチン酸塩除去量の結果を示すグラフ。
【図3】 本発明の実施例のカルシウム吸収促進剤におけるフィチン酸塩除去量の結果を示すグラフ。
【図4】 本発明の実施例及び比較例のカルシウム吸収促進剤における脱アミド量の結果を示すグラフ。
【図5】 本発明の実施例のカルシウム吸収促進剤における脱アミド量の結果を示すグラフ。
【図6】 本発明の実施例のカルシウム吸収促進剤における脱アミド量の結果を示すグラフ。
【図7】 本発明の実施例及び比較例のカルシウム吸収促進剤におけるカルシウム結合性の結果を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6