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明細書 :心筋梗塞の遺伝的要因を判定するための方法及びこれに使用されるオリゴヌクレオチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4111481号 (P4111481)
公開番号 特開2002-136291 (P2002-136291A)
登録日 平成20年4月18日(2008.4.18)
発行日 平成20年7月2日(2008.7.2)
公開日 平成14年5月14日(2002.5.14)
発明の名称または考案の名称 心筋梗塞の遺伝的要因を判定するための方法及びこれに使用されるオリゴヌクレオチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 F
C12M 1/00 A
C12Q 1/68 A
G01N 33/50 P
G01N 33/53 M
G01N 33/566
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2000-336676 (P2000-336676)
出願日 平成12年11月2日(2000.11.2)
審査請求日 平成14年10月31日(2002.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】中山智祥
個別代理人の代理人 【識別番号】100101591、【弁理士】、【氏名又は名称】川俣 静子
審査官 【審査官】田中 耕一郎
参考文献・文献 医学のあゆみ、191巻、5号、1999年、p.468-469,1999年
Circulation, Vol.100, 1999, p.2231-2236,1999年
調査した分野 C12N 1/00-C12N 15/90
PubMed
JSTPlus(JDream2)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料から核酸を抽出し、配列表の配列番号1に示されるヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン8(配列中、mはAまたはCを表す)の塩基番号182の部位を含む配列を増幅し、得られた増幅産物を分析することにより該塩基がAかCかを決定することを含む心筋梗塞の遺伝的要因を判定するための方法。
【請求項2】
試料から核酸を抽出し、配列表の配列番号1に示されるヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン8(配列中、mはAまたはCを表す)の塩基番号182の部位を含む配列を増幅し、得られた増幅産物を分析することにより該部位がAかCかを決定すること、及び配列表の配列番号2の開始コドンの上流側の配列を増幅し、増幅産物を分析してCCGCCAGCCを繰り返し単位とするvariable number of tandem repeat多型の繰り返し数を決定することを含む心筋梗塞の遺伝的要因を判定するための方法。
【請求項3】
配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも15塩基の配列またはこれに相補的な配列からなる、請求項1または記載の方法においてプローブとして使用されるオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも16塩基の配列を増幅するための、少なくとも15塩基の配列からなる請求項1または記載の方法においてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1または2記載の方法においてプライマーとして使用される配列番号3または4の配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも16塩基の配列を増幅するための、配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)またはその上流域の配列の連続する少なくとも15塩基の配列、または配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)またはその下流域の配列の連続する少なくとも15塩基の配列に相補的な配列からなる、請求項1または記載の方法においてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
請求項2記載の方法においてプライマーとして使用される配列番号5または6に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号2の配列または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の一部であってCCGCCAGCCの繰り返し単位のvariable number of tandem repeat多型部分を含んで連続する配列を増幅するための、配列番号2の配列もしくは配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列またはそれらの上流領域の配列の連続する少なくとも15塩基の配列、または配列番号2の配列もしくは配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列またはそれらの下流領域の配列の連続する少なくとも15塩基の配列に相補的な配列からなる請求項記載の方法においてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
少なくとも、請求項に記載のオリゴヌクレオチドの一またはそれ以上が基板に固定化されている請求項1またはに記載の方法に使用されるDNAチップ。
【請求項10】
少なくとも、請求項3~8のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの一またはそれ以上、及び/または請求項に記載のDNAチップを含む請求項1または2に記載の方法に使用されるキット。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は心筋梗塞の遺伝的要因を検出するための方法及びこれに使用されるオリゴヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
心筋梗塞の発病には、いくつかの遺伝的因子と生活習慣等の非遺伝的因子とが関わっていると考えられるが、その発病のメカニズムは解明されていない。
従って、心筋梗塞を発病する可能性の高い遺伝的因子が明らかになれば、発病のメカニズムの解明に大きな役割を果たすと共に、その遺伝的因子の判定により心筋梗塞に罹患する可能性の高い患者に対し、生活習慣等の非遺伝的因子を最小限とする指導を行い、発病の危険性を著しく低下させ得ると考えられる。
本発明の発明者は、10個のエキソンを有するヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のゲノムDNA構造(Gene Bank D84115)を解明しているが(T.Nakayama et al., BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS 221, 803-806 (1996))、さらにその機能を研究する過程で、プロスタサイクリン遺伝子における多型が、心筋梗塞の発症に関連することを見出し、本発明を完成させた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の多型の分析により心筋梗塞の遺伝的要因を判定する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
第1に、本発明は、下記の方法に関する。
(1) ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子における多型を分析することからなる心筋梗塞の遺伝的要因を判定するための方法。
(2) 試料から核酸を抽出し、配列表の配列番号1に示されるヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン8(配列中、mはAまたはCを表す)の塩基番号182の部位を含む配列を増幅し、得られた増幅産物を分析することにより該塩基がAかCかを決定することを含む(1)の方法。
(3) 試料から核酸を抽出し、配列表の配列番号2の開始コドン(塩基番号501~503)の上流側の配列(塩基番号1~600、好ましくは塩基番号300~500)を増幅し、増幅産物を分析してCCGCCAGCCを繰り返し単位とするVNTR多型の繰り返し数を決定することを含む(1)の方法。
(4) 試料から核酸を抽出し、配列表の配列番号1に示されるヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン8(配列中、mはAまたはCを表す)の塩基番号182の部位を含む配列を増幅し、得られた増幅産物を分析することにより該部位がAかCかを決定すること、及び配列表の配列番号2の塩基番号501~503の開始コドンの上流側の配列(塩基番号1~600、好ましくは塩基番号300~500)を増幅し、増幅産物を分析してCCGCCAGCCを繰り返し単位とするVNTR多型の繰り返し数を決定することを含む(1)の方法。
【0005】
第二に、本発明は下記のプローブ及びプライマーに関する。
(5) 配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基の配列にハイブリダイズし得る(1)、(2)または(4)の方法においてプローブとして使用されるオリゴヌクレオチド。
(6) 配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基の配列を増幅するためのフォワードプライマーまたはリバースプライマーとして機能し得る(1)、(2)または(4)の方法に使用されるオリゴヌクレオチド。
(7) 配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基の配列を、1塩基または数塩基の置換、欠失、付加を導入することにより、182の部位の塩基がAまたはCのいずれか一方である場合にのみ特定の制限酵素による認識配列が生じるように増幅するためのフォワードプライマーまたはリバースプライマーとして機能し得る(1)、(2)または(4)の方法に使用されるオリゴヌクレオチド。
(8) (1)~(4)の方法に使用されるフォワードプライマーとリバースプライマーとして機能する一組のオリゴヌクレオチドであって、フォワードプライマーまたはリバースプライマーの一方が配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する配列にハイブリダイズすることができ、他方が配列番号1の配列の他の部分にハイブリダイズすることができる一組のオリゴヌクレオチド。
(9) 配列番号2の配列または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の一部であって、CCGCCAGCCの繰り返し単位のVNTR多型部分を含んで連続する配列を増幅するためのフォワードプライマーまたはリバースプライマーとして機能し得る(1)、(3)または(4)の方法に使用されるオリゴヌクレオチド。
さらに、本発明は、少なくとも、(5)のオリゴヌクレオチドの一またはそれ以上が基板に固定化されている(1)~(4)の方法に使用されるDNAチップに関する。
また、本発明は、少なくとも、(5)~(9)のオリゴヌクレオチドの一またはそれ以上、及び/または(10)のDNAチップを含む(1)~(4)の方法に使用されるキットに関する。
なお、上記において、オリゴヌクレオチドは適宜標識されたものであってもよい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、「心筋梗塞の遺伝的要因を判定する」とは、被験者が心筋梗塞の発症の危険性が高いことを示す対立遺伝子型を有するか否かを判定することを意味する。
上記、本発明の判定方法において、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子(以下、場合よりPGIS遺伝子と記す)における多型を分析するとは、PGIS遺伝子のゲノムDNAのエキソンまたはイントロン、PGIS遺伝子の上流側(例えば、塩基番号1~500)等における多型を分析するこという。
多型の分析は、例えば多型を含む部分の配列を増幅し、対立遺伝子型を分析することからなる。また、ゲノムDNAの分析であっても、cDNAまたはmRNAの分析であってもよい。
本発明において使用される試料は、任意の生物学的試料、例えば血液、毛髪、組織片、尿等であり得る。
多型は、例えばSingle nucleotide polymorphism(SNP)多型、variable number of tandem repeat(VNTR)多型等であり得る。
【0007】
(増幅)
多型を含む部分の増幅は、例えばPCRによって行われるが、他の公知の増幅方法、例えばNASBA、LCR、RCR等で行ってもよい。
プライマーの選択は、例えば、多型部分を含む10塩基以上の配列を増幅するように行い得る。増幅される配列は、SNPの場合には10~100塩基、好ましくは10~50塩基であり得る。VNTR多型の場合には、繰り返し単位を構成するヌクレオチドの数及び最大繰り返し数によるが、例えば20~300塩基であり得る。
また、プライマーは、試料が一の対立遺伝子型の場合にのみ増幅されるように、フォワードプライマー(以下、Fプライマーと記す)またはリバースプライマー(以下、Rプライマーと記す)の一方が多型部位にハイブリダイズするように選択してもよい。
プライマーは必要に応じて蛍光,RI等の適当な手段により標識され得る。
【0008】
(多型の分析)
多型の分析は、公知の方法を適宜選択して行い得る。分析方法の例を下記に示す。
a.ハイブリダイゼーション
多型の分析は、一の対立遺伝子型に特異的なプローブとのハイブリダイゼーションにより行うことができる。
プローブは、必要に応じて、蛍光,RI等の適当な手段により標識され得る。
プローブは、例えば多型部分を含む10塩基以上、好ましくは10~100塩基の配列にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドである。SNPの分析の場合には、10~50塩基の配列を有するのが好ましい。また、SNPの分析の場合、多型部位がプローブのほぼ中心部に存在するようにプローブを選択するのが好ましい。
本発明において、ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子型を区別するのに十分な条件である。例えば、試料が一の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズしないような条件、例えばストリンジェントな条件である。
プローブの一端を基板上に固定化してなるDNAチップを用いてもよい。
【0009】
b.制限酵素断片長多型を利用する方法
多型の分析は、制限断片長多型を利用して行うこともできる。この方法は、多型部位がいずれの遺伝子型をとるかによって、制限酵素により切断されるか否かが異なってくる制限酵素で試料核酸を消化し、消化物の断片の大きさを調べることにより、該制限酵素で試料核酸が切断されたか否かを調べ、それによって試料の多型を分析する方法である。
c.配列決定
多型の分析を、増幅産物の配列決定により行ってもよい。
配列決定は、例えばジデオキシ法、Maxam-Gilbert法等の公知の方法により行い得る。
d.変性勾配ゲル電気泳動
試料DNAまたはRNAの増幅産物を変性勾配ゲル電気泳動にかけることにより分析することもできる。
e.その他
SSCP(single-strand conformation polymorphism)法、Allele Specific PCR法等を多型の分析に使用することもできる。
【0010】
本発明は、上記多型の分析方法により分析した結果を、所望により他の多型分析、及び/または他の検査結果と合わせて、心筋梗塞に罹患する可能性を判断することを含む心筋梗塞の診断方法にも関する。該方法において、いくつかのヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の多型分析を組み合わせて利用することも有効である。
また、本発明は上記診断方法による診断の結果、さらに精密な検査を行うこと、心筋梗塞の治療を行うこと、及び/または食餌内容等の生活習慣の改善を指導することを含む心筋梗塞の予防または治療方法にも関する。
【0011】
上記本発明の方法の実施態様の一つとして、上記方法において、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン8におけるSNP、具体的には配列番号1の配列の塩基番号182の部位におけるSNPを検出することを含む方法が挙げられる。なお、配列番号1の配列において、エキソン8は塩基番号90~271の部分である。
該方法においては、プライマーとして、配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基、好ましくは10~50塩基、例えば15~30塩基の配列を増幅するためのFプライマーまたはRプライマーとして機能し得るオリゴヌクレオチド、またはFプライマーとRプライマーからなる一組のプライマーであって、FプライマーまたはRプライマーの一方が配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基、好ましくは10~50塩基、例えば15~30塩基の配列にハイブリダイズし、他方が配列番号1の配列の他の部分の少なくとも10塩基、好ましくは10~50塩基、例えば20~25塩基の配列にハイブリダイズする一組のプライマーを使用することができる。
この場合、PCR条件は、例えば下記のものであり得る。
プライマー濃度:0.1~1.0μM
MgCl濃度:0.7~1.5μM
dNTP濃度:各100~200μM
至適酵素量:0.5~2.5U/50μl
鋳型ゲノムDNA量:50~500ng
サイクル数:25~35サイクル
denature温度:約94℃
denature時間:20~30秒
annealing温度:55~65℃
annealing時間:20~60秒間
extension温度:72~75℃
extension時間:20~180秒間
アガロースゲル濃度:0.4~2.0%
【0012】
上記プライマーとしてのオリゴヌクレオチドは、配列番号1の配列の一部に相補的な配列を有していてもよく、また、上記プライマーとして機能し得る限り、該配列において1またはそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。
上記方法においては、プローブとして配列番号1の配列(配列中、mはAまたはCを表す)の一部であって、配列番号1の塩基番号182の部位を含んで連続する少なくとも10塩基、好ましくは10~50塩基、例えば15~30塩基の配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを使用することができる。
該オリゴヌクレオチドは、配列番号1の配列の目的とする部位と相補的な配列を有していてもよく、またプローブとして機能し得る限り、即ち、目的の対立遺伝子型の配列とハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の配列とはハイブリダイズしない条件下でハイブリダイズする限り、該配列において1またはそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。このプローブは、一端を各々基板に固定してなるDNAチップとして用いることもできる。この場合、DNAチップには、一の対立遺伝子型(即ちmがAまたはC)に対応するプローブのみが固定されていても、両方の対立遺伝子型に対応するプローブが固定されていてもよい。DNAチップには、本発明で検出できる多型と異なる多型を分析するためのプローブも共に固定され得る。
【0013】
上記本発明の方法の他の実施態様としては、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の開始コドンから1~約100塩基上流の範囲に存在するCCGCCAGCCを繰り返し単位とするVNTR多型を分析することを含む方法が挙げられる。ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の上流側の配列は、配列番号2に示される。配列番号2において、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の開始コドンは塩基番号501~503である。
該方法に使用されるプライマーとしては、配列番号2の配列または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の一部であって、該配列に示されるヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の上流のCCGCCAGCCの繰り返し単位のVNTR多型部分を含んで連続する配列を増幅するためのフォワードプライマーまたはリバースプライマーとして機能し得る上記方法に使用されるオリゴヌクレオチドを使用することができる。
該プライマーは配列番号2の配列または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の一部に相補的な配列を有していてもよく、また、上記プライマーとして機能し得る限り、該配列において1またはそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。
上記方法においては、プローブとして配列番号2または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の多型部分を含んで連続する50塩基以上、好ましくは50~200塩基の配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを使用することができる。
これらのオリゴヌクレオチドは、配列番号2または配列番号2の配列においてCCGCCAGCCの繰り返し単位が4単位ではなく2,3,5,6または7単位含まれる配列の多型を含む部分の配列に相補的な配列を有していてもよく、また、プローブとして機能し得る限り、該配列において1またはそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。
各繰り返し数の配列に対応する全てまたは一部のオリゴヌクレオチドからなる一組のプローブセットを使用することもできる。また、該プローブセットを構成する各プローブの一端が基板に固定されているDNAチップとして用いることもできる。DNAチップには、上記のエキソン8のSNPを検出するためのプローブが共に固定されていてもよい。また、本発明で検出できる多型と異なる多型を分析するためのプローブが共に固定されていてもよい。
【0014】
本発明は、上記で説明したプライマーと、上記プローブとしてのオリゴヌクレオチド及び/または上記DNAチップを含む心筋梗塞診断用キットにも関する。
キットは、さらに制限断片長多型法に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、標識のための手段、緩衝液等、本発明の方法を実施するのに必要な他の要素を含んでいてもよい。
なお、本発明に使用されるプライマー及びプローブは市販のDNA合成機等により合成することができる。また、本発明において、ハイブリダイゼーションは、Sambrook,J.Fritsch,E.F.,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning.A laboratory manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkの記載を参考に行うことができる。また、PCR法は、下記の文献を参考に行うことができる:PCR Technology,J.A.Ehrlich編,Stockholm Press,New York(1989); Molecular Methods for Virus Detection,D.L.Wiedbrauk及びD.H.Farkas編,Academic Press,New York(1995).Nucleic Acid Hybridisation,B.D.Hames及びS.J.Higgins編,IRL Press,Oxford,Washington DC(1985))。
本明細書において、塩基番号は添付の配列表に基づく。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかしながら、これらは本発明を限定するものではない。
実施例1
エキソン8の多型と心筋梗塞との関連について、心筋梗塞と診断された患者122名(MI群)及び年齢を一致させた健常人155名(non-MI群)を年齢を一致させて選択した。
各被験者の末梢血を採取し、標準方法(例えばSambrook,J.Fritsch,E.F.,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning.A laboratory manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkに記載)により、ゲノムDNAを抽出し、下記に示す方法によりプロスタサイクリン遺伝子のエキソン8の多型部位を増幅した。
200ngの上記ゲノムDNA、下記の配列を有する濃度19pmol/μlのFプライマー溶液及びRプライマー溶液各々0.8μl、ヌクレオチド三リン酸(Takara社製造)各々25mM、2.5mMのMgCl4μl、TaqDNAポリメラーゼ(Takara社製)0.2U/40μl、水25.0μl及び10倍緩衝液(Takara社製)4μlの混合物計40μlの系にて、PCR装置(PerkinElmer GeneAmp9700)を用いて増幅した。PCR条件は、95℃で3分間、続いて98℃25秒間、63℃1分間、72℃1分間のサイクルを30サイクル、その後、72℃で10分間の後、4℃に保温とした。
【0016】
プライマー配列
Fプライマー:TGGCATATGAGCAGGTGAAGGG(配列番号:3)
Rプライマー:CCACGTCGCAGGTTGAATTGT(配列番号:4)
得られたPCR産物をエタノール沈殿により精製し、dry upペレットにした後、制限酵素溶液(10x緩衝液(第一化学)5μl、水44μl及び制限酵素BsmAI1(第一化学)1μlと反応させ、1.5%アガロースゲル電気泳動にかけた。
制限酵素BsmAIの認識配列はGAGACであり、上記配列番号1の配列の塩基番号182の部位の塩基がAである場合は切断され、Cである場合は切断されない。
上記の方法により、各試料を分析したところ、下記の表に示す結果が得られた。表中、Aは上記配列番号1の配列の塩基番号182の部位がAである遺伝子型を意味し、Cは、該塩基がCである遺伝子型を意味する。なお、被験者は全て日本人である。
【0017】
【表1】
JP0004111481B2_000002t.gif【0018】
これを対立遺伝子頻度として下記の表に示した。
【0019】
【表2】
JP0004111481B2_000003t.gif【0020】
上記の結果をχ2解析により分析したところ、対立遺伝子と表現型とは統計学的に有意な相関を有していた(p値=0.0076)。
従って、配列番号1の塩基番号182がCである場合に心筋梗塞の発症の危険性が高いと判定することができる。
【0021】
実施例2:
ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン1の上流側に存在するVNTR多型を調べるために、心筋梗塞と診断された患者110名(MI群)及び年齢を一致させた健常者134名(non-MI群)を年齢を一致させて選択した。各患者の抹消血白血球から実施例1と同様の標準的な方法により、下記に示す方法によりヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子のエキソン1の上流側の約200塩基を増幅した。プライマーとしては、下記の配列を有するプライマーを使用した。
Fプライマー:5'-ACATTTTCCCCCAGGCCTGAGCTGC-3'(配列番号:5)
Rプライマー:5'-CGGCTCAGTAGCAGCAGCAGCAACAGT-3'(配列番号:6)
【0022】
50ngの上記ゲノムDNA、32Pで標識した上記配列を有するFプライマー0.125pmol、未標識のRプライマー0.125pmol、ヌクレオチド三リン酸(Takara社製)各々25mM、2.5mMのMgCl4μl、TaqDNAポリメラーゼ(Takara社製)0.2U/40μl、水25.0μl及び10倍緩衝液(Takara社製)4μlの混合物を調製し、PCR装置(PerkinElmer GeneAmp9700)を用いて増幅した。PCR条件は95℃で3分間、続いて98℃25秒間、68℃90秒間、72℃の2Stepサイクルを30サイクル、その後、72℃で10分間の後、4℃に保温とした。
増幅された断片をpCRTM2.1(Invitrogen)にサブクローニングした後、ジデオキシ法によりDNAシーケンシングを行い、これを標準とした。各群のサンプル及び標準のプラスミドクローンを増幅した後、同時に6%ポリアクリルアミドシーケンシングゲルにて電気泳動する事により遺伝子型を決定した。なお、7タンデムリピートアレルPCR産物の大きさは317bpであり、3タンデムリピートアレルPCR産物の大きさは281bpであった。
non-MI群及びMI群のタンデムリピート数を下記に示す。なお、被験者は全て日本人である。
【0023】
【表3】
JP0004111481B2_000004t.gif【0024】
これを対立遺伝子頻度として下記の表に示した。
【0025】
【表4】
JP0004111481B2_000005t.gif【0026】
上記の結果をχ2解析により分析したところ、対立遺伝子と表現型とは統計学的に有意な相関を有していた(p値=0.0375)。従って、繰り返し数が少ない場合に心筋梗塞発症の危険性が高いと考えられ、ヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の上記VNTR多型は心筋梗塞の遺伝的要因の判定に利用できることが明らかである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の方法により、心筋梗塞の遺伝的要素を有するか否かが判定でき、これにより心筋梗塞の危険性を予測することができる。さらに、その結果に基づき、食餌内容等の生活習慣の改善により心筋梗塞の環境的要因を最低限に押さえる指導を行い、心筋梗塞の予防または治療を行うことができる。
【配列表】
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