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明細書 :本態性高血圧症の判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5071998号 (P5071998)
公開番号 特開2007-053995 (P2007-053995A)
登録日 平成24年8月31日(2012.8.31)
発行日 平成24年11月14日(2012.11.14)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 本態性高血圧症の判定方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 F
C12M 1/00 A
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2005-244730 (P2005-244730)
出願日 平成17年8月25日(2005.8.25)
審査請求日 平成20年7月9日(2008.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】中山 智祥
【氏名】相馬 正義
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】名和 大輔
参考文献・文献 特開2004-113094(JP,A)
国際公開第2004/070057(WO,A1)
特開2004-222503(JP,A)
Hypertension,2003,42(4),p.761-7
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE(STN)
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト卵胞刺激ホルモン受容体遺伝子の遺伝子多型と、個体の高血圧症状の有無とを関連づける、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無の判定方法であって、
前記遺伝子多型がrs1394205で特定されるものであり、当該多型がAアレルである場合は前記遺伝的要因を有すると判定し、当該多型がGアレルである場合は前記遺伝的要因を有さないと判定することを特徴とする、
前記方法。
【請求項2】
ヒト卵胞刺激ホルモン受容体遺伝子の遺伝子多型の検出結果に基づいて、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を判定する方法であって、
前記遺伝子多型がrs1394205で特定されるものであり、当該多型がAアレルである場合は前記遺伝的要因を有すると判定し、当該多型がGアレルである場合は前記遺伝的要因を有さないと判定することを特徴とする、
前記方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法に用いるオリゴヌクレオチドであって、卵胞刺激ホルモン受容体をコードする遺伝子配列又はその相補配列中に存在するrs1394205で特定される遺伝子多型部位を含むように作製された、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のオリゴヌクレオチドが支持体に固定された、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無の判定用マイクロアレイ。
【請求項5】
請求項3に記載のオリゴヌクレオチド及び/又は請求項4に記載のマイクロアレイを含む、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無の判定用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、本態性高血圧症であることを判定する方法に関する。詳しくは、遺伝子多型を利用した本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本態性高血圧症(Essential Hypertension, EH)は、既知の原因無く起こる高血圧症であり、原因が明らかな二次性高血圧症と大別されている。本態性高血圧症は、高血圧全症例のおよそ80~90%を占めており、おそらく各種の正常血圧調節機構における様々な障害が要因となって生じ得るものと言えるが、多くは遺伝的に条件づけられていると考えられており、いわゆる多因子遺伝性疾患に属するものとされている。
【0003】
本態性高血圧症は、このように多因子遺伝性疾患であるため、従来より、その原因遺伝子や疾患感受性遺伝子の決定は極めて困難であった。
【0004】
その理由として、疾患の臨床症状及び特徴的臨床データ(これらを表現型という)が一定ではなく、家系内での遺伝形式も一定でないことが多い点が挙げられる。また、表現型は成人年齢に達してから現れることが大半であり、患者当人の両親の遺伝子型を調べようとしても既に存命していないことが多い、ということも理由の一つであった。
【0005】
このような問題を解決するために提案された方法として、アンジオテンシノージェン遺伝子に着目した罹患同胞対法が知られている(非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、有効であると認めるに足りるデータは未だ得られておらず、また準備や分析等に非常に時間と労力を有するということもあり、擬陽性の結果を頻繁に生じ得る信頼性の低いものであった。

【非特許文献1】Jeunemaitre X, et. al., Molecular basis of human hypertension: role of angiotensinogen, Cell, 71(1), p.169-180, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を判定するにあたり、簡便であり且つ擬陽性の結果が低減された信頼性の高い上記判定の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、本態性高血圧症の原因遺伝子や疾患感受性遺伝子として考えられる多種多様な遺伝子の中でも、下垂体ホルモン受容体の1種である、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体(Follicle stimulating hormone receptor, FSHR)遺伝子に着目した。そして、FSHR遺伝子中に存在する遺伝子多型、及び当該遺伝子多型(特にSNP)により構成されるハプロタイプが、本態性高血圧症の遺伝子マーカーとして非常に有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
(1) ヒト卵胞刺激ホルモン受容体遺伝子の遺伝子多型、及び/又は当該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の高血圧症状の有無とを関連づけることを特徴とする、本態性高血圧症の判定方法。
【0010】
本発明の判定方法においては、前記遺伝子多型として、例えば、一塩基多型、インサーション多型、デレーション多型及び塩基繰り返し多型からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。また、前記遺伝子多型として、より具体的に、例えば、後に示す表1に示されるものから選ばれる少なくとも1つを挙げることもできる。
【0011】
本発明の判定方法においては、前記ハプロタイプとして、例えば、後に示す表2に示されるものから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0012】
(2) 卵胞刺激ホルモン受容体をコードする遺伝子配列又はその相補配列中に存在する遺伝子多型部位を含むように作製されたオリゴヌクレオチド。
【0013】
(3) 上記(2)に記載のオリゴヌクレオチドが支持体に固定されたマイクロアレイ。
【0014】
(4) 上記(2)に記載のオリゴヌクレオチド及び/又は上記(3)に記載のマイクロアレイを含む、本態性高血圧症判定用キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を判定するにあたり、非常に簡便であり且つ擬陽性の結果が大きく低減された信頼性の高い新規判定方法を提供することができる。また、上記判定方法に用い得るオリゴヌクレオチド、マイクロアレイ及び判定用キットを提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明の概要
本発明は、本態性高血圧症(EH)の遺伝的要因の有無を判定するための方法であり、本方法は、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)遺伝子における遺伝子多型に着目し、その検出結果と、高血圧症状の有無との関連づけを行うことにより上記判定を行うというものである。
【0017】
本発明は、本態性高血圧症の原因遺伝子や疾患感受性遺伝子として候補に挙げられる多くの遺伝子の中でも、FSHR遺伝子という特定の遺伝子に着目し、このFSHR遺伝子中に存在する遺伝子多型、及び当該遺伝子多型により構成されるハプロタイプが、本態性高血圧症の遺伝子マーカーとして非常に有用であるとの新規な知見に基づき完成されたものである。これにより、従来の罹患同胞対法等にはよらない遺伝的要因の有無の判定が初めて可能となった。さらに本発明では、本態性高血圧症と関連性のある遺伝子多型のうち所望の多型にのみ着目すれば足りるため、本発明の方法は、従来法に比べて判定結果を非常に容易かつ明確に得ることができ、しかも擬陽性の可能性を十分に低減することができる(つまり高い信頼性を有する)という優れた効果を有するものである。
【0018】
ところで、近年よく用いられるようになった遺伝子多型の解析方法として、関連解析がある。これは連鎖解析とは異なり家系を調べるのではなく、疾患群(case)及び非疾患群(control)の情報をそれぞれ大量に収集し、両群での遺伝子多型の頻度差を見るものである。この解析方法は、多因子遺伝性疾患の原因遺伝子又は疾患感受性遺伝子の選択及び決定に対して成果を上げつつある方法である。今回、本発明者は、この関連解析を利用して、FSHR遺伝子内の遺伝子多型と本態性高血圧症との関連性、特にFSHR遺伝子内の一塩基多型(SNP)と本態性高血圧症との関連性について明らかにした。そして、あるSNPが本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を判定するために特に有用であることを見出した。また本発明者は、上記有用な遺伝子多型(特にSNP)を選定するために、ハプロタイプ解析を行うようにし、特に有用な遺伝子多型を絞り込むことに成功した。これらの過程は、本発明の判定方法の信頼性を高めることに大きく繋がるものである。

2.卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)の遺伝子多型
本発明のFSHR遺伝子多型は、主に一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP(又はSNPs))、インサーション/デレーション型多型、及び塩基配列の繰り返し数が異なっていることにより生じる多型を含み、限定はされない。
【0019】
SNPとは、遺伝子配列中の特定の1塩基が他の塩基に置換することによる多型を意味する。インサーション/デレーション多型とは、1以上の塩基が欠失/挿入することによる多型を意味する。また、塩基配列の繰り返し数の異なることにより生じる多型(塩基繰り返し多型)には、繰り返す塩基数の違いによりマイクロサテライト多型(塩基数:2~4塩基程度)とVNTR (variable number of tandem repeat)多型(繰り返し塩基:数~数十塩基)があり、その繰り返し塩基数が個々人によって異なっている多型を意味する。
【0020】
本発明の方法において好ましく利用できるFSHR遺伝子多型の情報を、下記の表1に例示列挙する(配列番号1~5)。表1に示される多型情報は、一塩基多型(SNP)に関するものである。表1に示される遺伝子多型の中でも、配列番号1、2、4及び5の塩基配列中に示される多型がより好ましく、更に好ましくは配列番号1、2及び5の塩基配列中に示される多型、特に好ましくは配列番号1の塩基配列中に示される多型である。
【0021】
【表1】
JP0005071998B2_000002t.gif

【0022】
表1中の「位置」は、FSHR遺伝子のヒトゲノム上の位置を意味し、エクソン(Exon)、イントロン(Intron)を表す。「遺伝子多型名」は、ゲノム上の位置におけるSNP名であり、いずれも、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、及びセレラ・ディスカバリーSystem-Applied Biosystems社(Applied Biosystems-Celera Discovery System)のウェブサイト(http://www.appliedbiosystems.com/)を用いて確認されるアクセッション番号(accession number)で示している(後者により確認されるアクセッション番号は括弧内に示した。)。
【0023】
表1の「配列」には51塩基からなる塩基配列(配列番号1~5)が表示されており、その26番目にSNP部位を表示してある。「a/g」と表示したものは「a」と「g」のSNPであることを意味し、「a/t」と表示したものは「a」と「t」のSNPであることを意味する。
なお、「26番目の塩基」は多型部位の塩基を意味し、当該塩基が必ずしも1個の塩基であるとは限らない。従って、仮に、デレーション型の多型であった場合は塩基は存在しないため塩基数としては算入しないこととし、また、複数の塩基が繰り返されていた場合であっても「第26番目の塩基」として数えることとする。
【0024】
本発明においてFSHR遺伝子多型の情報を得る方法は、限定はされず、例えばGenBankのdbSNP等の各種データベースで検索して得る方法や、以下に説明する方法を採用できる。
【0025】
まず、ヒトから採取した血液検体等から、フェノール法等を用いてゲノムDNAを精製する。その際、GFX Genomic Blood DNA Purification Kit等の市販のゲノムDNA抽出キットや装置を用いてもよい。次に、得られたゲノムDNAを鋳型として、PCR法によりゲノムDNAをいくつかに分けて増幅し、シークエンス用の鋳型DNAとする。本発明は、遺伝子の多型を対象とするため、PCR法に用いる酵素はなるべくfidelityの高いものを用いることが望ましい。FSHRの5'非翻訳領域(5’UTR 及び5’flanking region)は、開始コドンよりも上流99bpまでの領域、好ましくは500bpまでの領域について、所望により2つの領域に分けてPCR増幅を行うことが好ましい。エクソン1、2、3、・・・、10、及びイントロン1、2、3、・・・、9は、それぞれの箇所毎にPCR法により全域を増幅する。エクソン10は終止コドンより下流の約230bpを含んでもよい。3'非翻訳領域は終止コドンよりも下流に230bp、好ましくは500bpまでの領域について、所望により2つの領域に分けてPCR増幅を行うことが好ましい。これらのPCR断片の全領域の塩基配列を、GenBankに公開されている配列情報に基づいて設計したプライマーを用いて約400bpずつシークエンス法により解読し、目的の遺伝子多型を得ることができる。
【0026】
本発明においては、あらゆるFSHR遺伝子多型を含むオリゴヌクレオチドを提供することができるが、中でも好ましくは、表1の配列番号1~5(より好ましくは配列番号1、2、4及び5、更に好ましくは配列番号1、2及び5、特に好ましくは配列番号1)に示される塩基配列中の多型部位(第26番目の塩基)を含む少なくとも10塩基、好ましくは10~100塩基、より好ましくは10~60塩基の塩基配列又はこれに相補的な塩基配列から選択されるオリゴヌクレオチドである。具体的には、配列番号1~5(より好ましくは配列番号1、2、4及び5、更に好ましくは配列番号1、2及び5、特に好ましくは配列番号1)に示す塩基配列又はこれに相補的な塩基配列から選択されるオリゴヌクレオチドが好ましい。

3.ハプロタイプ解析
本発明の方法においては、上記遺伝子多型のうちSNPを用いてハプロタイプを構築し、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無の判定に利用することができる。通常、非翻訳領域外に存在する未知の遺伝子多型を明らかにするのは非常に困難である。従って、上記ハプロタイプは、遺伝子多型と本態性高血圧症との関連性を見出すために非常に有用である。
【0027】
ハプロタイプとは、通常、一方の親に由来する1つの染色体で、相互に比較的に近隣に存在する遺伝子やSNP等の組合せのことをいう。例えば、数個のSNPが特定の疾患の発生に関与している場合、その関連SNPのハプロタイプ解析が疾患原因を解明する鍵となることがある。
【0028】
ハプロタイプ解析の対象となるSNPは、一般には、その多型頻度が10%以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは20%以上のもの、更に好ましくは30%以上のものである。また、ハプロタイプ解析の対象となるSNPは、全部であってもその一部であってもよい。
【0029】
ハプロタイプ解析は、種々のコンピュータープログラムで行うことが可能であり、例えば、
SNPAlyze version 3.2(DYNACOM Co., Ltd. Yokohama, Japan)(http://www.dynacom.co.jp/products/package/snpalyze/index.htmlで入手可能)、
Arlequin program(http://anthro.unige.ch/arlequinで入手可能)(Schneider S, Roessli D, Excoffier L. Arlequin 2000: a software for population genetics data analysis.Ver 2.000. Genetics and Biometry Lab, Dept of Anthropology Univ of Geneva.)、及び
GeneSpring GT (Varia)(トミーデジタルバイオロジー(株))
等を用いて行うことができる。
【0030】
ハプロタイプ解析の例として、表1に示した5箇所のSNPに関し、SNPAlyze version 3.2を用いてハプロタイプを推定する。疾患(EH)群において推定されるハプロタイプを下記の表2に示す。
【0031】
【表2】
JP0005071998B2_000003t.gif

【0032】
表2に示したハプロタイプの中でも、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無の判定に好ましく利用できるものは、No.1~25のハプロタイプであり、より好ましくはNo.1~16のハプロタイプ、さらに好ましくはNo.1~13のハプロタイプ、特に好ましくはNo.1~9のハプロタイプである。
【0033】
次に、上記ハプロタイプ頻度をもとにして、連鎖不平衡解析を行う。連鎖不平衡の尺度を示す値であるD'値及びr2値は、以下の定義説明に基づき算出することができる。なお、連鎖不平衡とは多型と多型が染色体上で連鎖しているためにメンデルの独立の法則による平衡状態から逸脱している場合をいい、逆に、連鎖平衡とは二つの多型間の染色体上の関係が独立な場合をいう。
定義説明:
D'値について
まず、連鎖不平衡を表す指標として連鎖不平衡係数(D)がある。連鎖不平衡が無いとき、D = 0であり、D > 0のとき、正の連鎖不平衡という。例えばSNP1とSNP2とで形成されるハプロタイプは1-1, 1-2, 2-1, 2-2の4種類でありそれぞれの頻度をp11, p12, p21, p22とすると、D値は以下の式で表される。
【0034】
D = p11×p22 - p12×p21
次に、D値の取り得る最大値をDmax、取り得る最小値をDminとすると、D値を標準化した値として、D'値が以下の式で表される。
【0035】
D' = D/Dmax (D値が正の場合)
D' = D/Dmin (D値が負の場合)
一般にD'値が1に近い場合、連鎖不平衡があるため各々のSNPは一つのハプロタイプブロックに位置すると言える。D'値がどれくらい1に近ければ、各々のSNPが一つのハプロタイプブロックに位置すると言えるかについては、決まった基準はないが、本発明においてはD' > 0.5という基準を好ましく用い得る。
【0036】
r2値について
r2値も連鎖不平衡の指標の一つである。r2値の算出式やD'値との違いについては、下記文献“Devlin, B. and Risch, N.,"A comparison of linkage disequilibrium measures for fine-scale mapping.", Genomics, vol.29, p.311-322 (1995)”が参照できる。
【0037】
一般にペアのSNPs同士が1に近いr2値を取るとき、それら2つを同時にハプロタイプを用いた関連解析に用いることは不利であるので、片方を用いてハプロタイプを推定することが好ましい。r2値がどれくらい1に近ければ不利となるかについては、決まった基準はないが、本発明においてはr2 < 0.1という基準を好ましく用い得る。
【0038】
疾患(EH)群におけるFSHR遺伝子多型間の連鎖不平衡を示す一例を図1に示す。
【0039】
図1中のD'値に着目すると、rs1394205+rs2055571、rs11692782+rs1007541+rs2268361のSNPの組み合わせにおいて、有意な連鎖不平衡が確認される。つまり、最初の2個のSNP(rs1394205及びrs2055571)は1つのハプロタイプブロックに位置し、次の3個のSNP(rs11692782、rs1007541及びrs2268361)は別の一つのハプロタイプブロックに位置することがわかる。また、r2値に着目すると、rs1394205+rs2055571のSNPの組み合わせにおいてはr2値は0.1より大きく、この2個のSNP(rs1394205及びrs2055571)を同時にハプロタイプを用いた関連解析に用いることは不利であることがわかる。
【0040】
ハプロタイプブロックは、ハプロタイプ解析の結果から、例えば、SNPAlyze version 3.2(上掲)及びArlequin program(上掲)等を用いて連鎖ブロックを推定することができる。
【0041】
推定されたハプロタイプブロック中の特定のSNPを調べると、間接的に同一ブロック内で連鎖しているSNPの情報を知ることができる。つまり、FSHR遺伝子多型を調べる際に、すべてのSNPを解析する必要はなく、特定のいくつかのSNPについてのみタイピングを行えばよい。

4.卵胞刺激ホルモン受容体遺伝子多型と本態性高血圧症との相関
卵胞刺激ホルモン受容体の遺伝子に多型が生じると、FSHRの発現量や機能が変化すると考えられる。従って、FSHR遺伝子多型と、FSHRに関する様々な表現型とは相関関係にある場合がある。単一遺伝子病としてのFSHR遺伝子異常では、通常、男性及び女性ともに性腺機能障害による不妊症が症状として表れるが、表現型の一つとして高血圧症がある。ここで、表現型とは、疾患(EH)の発症に関する表現型を挙げることができる。この疾患の発症に関する表現型としては、例えば、末梢血管における血圧測定での高血圧検出、頭痛、ほてり、頚部痛、眼痛、吐き気などの高血圧症状等が挙げられる。
【0042】
FSHR遺伝子多型と表現型との相関は、以下のように調べることができる。FSHR遺伝子多型は、健常人における連鎖不平衡解析及びハプロタイプ解析の結果、推定された連鎖ブロック内の代表的な多型、例えばSNPを選択する。次に、被験(患者)個体におけるこの多型(例えばSNP)についての多型頻度を解析し、健常人の多型頻度との比較を行う。比較においてはχ2乗検定(カイ二乗検定)などの統計手法を用いることが有効である。
【0043】
表現型又は症状が、例えば末梢血管における血圧測定での高血圧検出の場合、さらに、stage1: 140-159/90-99 (mmHg)、stage2: 160以上/100以上 (mmHg)(高血圧合同委員会による血圧分類 JNC7, 2003年)といった分類ができる。そして、各分類毎に、健常人と対象者の多型頻度や遺伝子型を比較する。その結果、対照群と多型頻度に有意差のあった多型は、疾患(EH)にかかっているか否か、又は疾患へのかかりやすさ等を評価し、当該疾患の遺伝的要因の有無を判定するのに用いることができる。ただし、遺伝子多型の傾向は、人種や出身地等に影響されることが示唆されているため、関連する多型(例えばSNP)を見出すのに用いた母集団と同様な遺伝子多型を示す集団内において、当該多型を用いる上記の評価を行うことが望ましい。

5.サンプル調製および遺伝子多型の検出法
被験対象者からのゲノムサンプルは、血液、唾液、皮膚等のいずれから抽出することもでき、ゲノムサンプルを採取できるものであれば、これらに限定されない。ゲノムDNAの抽出及び精製法は周知である。例えば、ヒトから採取した血液、唾液、皮膚等の検体から、フェノール法等を用いてゲノムDNAを精製する。その際、GFX Genomic Blood DNA Purification Kit等の市販のゲノムDNA抽出キットや装置を用いてもよい。検出しようとする遺伝子多型(SNP等)がオープンリーディングフレーム中にある場合は、ゲノムDNAの代わりにmRNAやtotal RNAを抽出してもよい。以下に、上記被験サンプルからの遺伝子多型の検出法(概略)を例示する。
【0044】
(1) PCR法を用いた検出
PCRにより被験サンプルを増幅するには、Fidelityの高いDNAポリメラーゼ、例えば、KOD Dashポリメラーゼ(TOYOBO社)等を用いることが好ましい。用いるプライマーは、被験サンプル中の対象SNPを増幅できるようにプライマーの任意の位置に遺伝子多型が含まれるように設計し合成する。
【0045】
増幅反応終了後は、増幅産物の検出を行い、多型の有無を判定する。
【0046】
(2) 塩基配列決定法による検出
本発明においては、ジデオキシ法に基づく塩基配列決定法により本発明の多型を検出することもできる。塩基配列決定に用いるシークエンサーには、市販のABIシリーズ(アマシャムバイオサイエンス)等を用いることができる。
【0047】
(3) DNAマイクロアレイによる検出
DNAマイクロアレイは、支持体上にヌクレオチドプローブが固定されたものであり、DNAチップ、Gene チップ、マイクロチップ、ビーズアレイなどを含む。
【0048】
まず、被験サンプルのポリヌクレオチドを単離し、PCRにより増幅し、蛍光レポーター基により標識する。続いて、標識化DNA/mRNA, total RNAをアレイと共にインキュベートする。次にこのアレイをスキャナーに差し込み、ハイブリダイゼーションパターンを検出する。ハイブリダイゼーションのデータは、プローブアレイに結合した(すなわち標的配列に取り込まれた)蛍光レポーター基からの発光として採集する。標的配列と完全に一致したプローブは、標的配列と一致していない部分を有するものよりも強いシグナルを生じる。アレイ上の各プローブの配列及び位置は分かっているため、相補性によって、プローブアレイと反応させた標的ポリヌクレオチドの配列を決定することができる。
【0049】
(4) TaqMan PCR法による検出
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴ(TaqManプローブ)とTaq DNAポリメラーゼによるPCR反応とを利用した方法である。詳しくは、まず、TaqManプローブが鋳型DNAとハイブリダイゼーションし、その後、PCRプライマーからの伸長反応が起こる。そうすると、Taq DNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性により蛍光色素結合部分が切断されて、蛍光色素が遊離し、クエンチャーの影響を受けなくなり発色するので、この蛍光を検出することで特定の多型(SNP等)を同定し、ゲノムタイプを判定することができる。TaqMan PCR法で用いるアレル特異的オリゴ(TaqManプローブという)は、前記遺伝子多型情報に基づいて設計することができる。
【0050】
(5) インベーダー法による検出
インベーダー法は、アレル特異的オリゴと鋳型とをハイブリダイゼーションすることにより遺伝子多型を検出する方法である。詳しくは、インベーダー・オリゴがターゲットDNAとプローブ間の二重鎖に少なくとも1塩基の浸入(インベージョン)を起こして部分的な三重鎖構造を形成すると、構造特異的な5'-ヌクレアーゼがプローブ5'末端部分を切断する。そして、目標とする多型(SNP等)箇所の核酸配列に対応してインベージョンを発生させるインベーダ・オリゴを利用することで特定の多型(SNP等)を同定し、ゲノムタイプを判定することができる。インベーダー法を行うためのキットは市販されており、この方法により容易に遺伝子多型を検出することが可能である。

6.キット
本発明において、FSHR遺伝子多型(例えばSNP)部位を含むオリゴヌクレオチドは、本態性高血圧症判定用キットに含めることができる。
【0051】
本発明のキットは、本発明を実施するために必要な1種以上の成分を含むものである。例えば、本発明のキットは、酵素を保存若しくは供給するためのもの、及び/又は遺伝子多型検出を実施するために必要な反応成分を含むことができる。そのような成分としては、限定されるものではないが、本発明のオリゴヌクレオチド、酵素緩衝液、dNTP、コントロール用試薬(例えば、組織サンプル、ポジティブ及びネガティブコントロール用標的オリゴヌクレオチドなど)、標識用及び/又は検出用試薬、固相支持体、説明書などが挙げられる。また本発明のキットは、必要な成分のうちの一部のみを含む部分的キットであってもよく、その場合には、ユーザーが他の成分を用意することができる。
【0052】
本発明のキットは、上記オリゴヌクレオチドを支持体に固定したマイクロアレイとして提供することもできる。マイクロアレイは、支持体上に本発明のオリゴヌクレオチドが固定されたものであり、DNAチップ、Geneチップ、マイクロチップ、ビーズアレイなどを含む。当該マイクロアレイは、上記オリゴヌクレオチドと共に本発明のキットに含まれていてもよい。
【0053】
本発明のキットは、前述のごとく、FSHR遺伝子多型を含むオリゴヌクレオチドを含む。従って、治療用の薬物を患者等に使用する前、又は使用後の段階で、採血してFSHR遺伝子を単離し、この遺伝子をキット中のオリゴヌクレオチドと反応させて遺伝子型を同定する。同定された遺伝子型と、高血圧症状の有無とを関連づけることにより、本態性高血圧症の遺伝的要因の有無を、簡便に且つ擬陽性の確率を大きく低減し、高い信頼性をもって判定することができる。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
本態性高血圧症性に対する有用な遺伝子マーカーの特定
本態性高血圧症(EH)の遺伝的要因の有無を判定するために有用な遺伝子マーカーを特定するため、ヒトFSHR遺伝子内に存在する遺伝子多型(特にSNP)に着目し、以下の手順で解析を行った。
【0055】
(1) 被験対象
本態性高血圧症の疾患群(EH群)として、合計235人(うち男性158人、女性79人)のEH患者を対象とした。なお、疾患群に含める条件は、初診後2カ月以内の診察における3回以上の機会で、収縮期血圧(SBP) 160mmHg以上及び/又は拡張期血圧(DBP) 100mmHg以上であり、かつ、降圧剤を服用していないこととした。また、すでに二次性高血圧と診断されていないことも条件とした。
【0056】
一方、コントロール群(NT群)として、合計237人(うち男性152人、女性83人)の正常血圧者(normotensive、NT)を対象とした。なお、NT群に含める条件は、高血圧家族歴がなく、収縮期血圧が130mmHg未満であり且つ拡張期血圧が100mmHg未満であることとした。高血圧家族歴とは、対象者の祖父母、おじ、おば、両親又は兄弟が過去に高血圧症であるとの診断を受けていることと定義した。
【0057】
(2) DNA抽出
EH群及びNT群からのDNAの抽出は、フェノール・クロロホルム法とそれに続くエタノール沈殿法により行った(Nakayama T, Soma M, Rahmutula D, Ozawa Y, Kanmatsuse K: Isolation of the 5'-flanking region of genes by thermal asymmetric interlaced polymerase chain reaction. Medical science monitor: international medical journal of experimental and clinical research 7: 345-349, 2001. を参照)。以下にその概略を示す。
【0058】
すなわち、EDTA2Na採血管(7ml又は5ml)に採血し、遠心して血漿を除いた後、SDSバッファーとNonidet P40 (NP40)によって白血球膜及び核膜を破壊した。蛋白分解酵素としてProreinase Kを使用し、その後、フェノール・クロロホルム法により蛋白を除去して、エタノール沈殿法によりDNAを抽出した。
【0059】
(3) 遺伝子型の決定(Genotyping)
ヒトFSHR遺伝子内に存在するSNPをGenBankのdbSNPデータベースより検索し、マイナーアレル頻度 (発生頻度が小さい方の対立遺伝子の頻度)が20%より大きい5つのSNPを選択した(図2参照)。マイナーアレル頻度が比較的高いSNPは、遺伝子関連研究の遺伝子マーカーとして非常に有用だからである。SNPのallelic頻度に関する情報は、NCBI及びセレラ・ディスカバリーSystem-Applied Biosystems社のウェブサイト(順に、 HYPERLINK "http://www.ncbi.nlm.nih.gov" http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ ; http://www.appliedbiosystems.com/)から得た。
【0060】
上記5つのSNPの位置、多型情報、並びに、NCBI及びセレラ・ディスカバリーSystem-Applied Biosystems社におけるアクセッション番号(accession number)(後者により確認されるアクセッション番号は括弧内に示した。)は、以下の表3に示す通りである。
【0061】
【表3】
JP0005071998B2_000004t.gif

【0062】
EH群及びNT群の個々の遺伝子型の決定は、TaqMan PCR法を用いたAssays-on-Demandキット(Applied Biosystems社製、Branchburg、ニュージャージー)を使用して行った。各SNPのGenotypingに用いたPCRプライマー及びTaqManプローブは、上記キットではミックスされた状態であり、これを使用した。なお、いずれのTaqManプローブも、5'末端がレポーター色素となる蛍光色素VIC又はFAMで標識され、3'末端がクエンチャー色素となるNFQで標識されている。
【0063】
当該TaqMan PCRは、以下の反応液組成で、GeneAmp9700(Applied Biosystems社)を使用し、「熱変性:95℃(10分)→アニーリング:92℃(15秒)→伸長:60℃(1分)」を1サイクルとして計40サイクル行った。

PCR 反応組成液
鋳型DNA: 2ng(dry upのため0μL)
2× TaqMan Universal
Master Mix UNG: 12.5μL
20× Assays-on-Demand: 0.43μL
TEバッファー: 0.82μL
滅菌水: 11.25μL
合計: 25μL

PCR産物の蛍光強度の検出は、ABI PRISM7700 Sequence Detector (Applied Biosystems社)を使用して行い、その結果に基づきEH群及びNT群に属する個々の遺伝子型を決定した。
【0064】
遺伝子型と対立遺伝子のoverall distributionは、EH群及びNT群間の2×3か2×2個の分割表を使用しカイ二乗検定で分析した。統計的な分析は、StatView5.0(SAS株式会社製)とSPSS Dr. II(SPSS株式会社製)を使用した。その結果を下記表4に示す。統計的有意差はp<0.05とした(*印)。【表4】
JP0005071998B2_000005t.gif

【0066】
以上の結果より、上記5つのSNPのうち、本態性高血圧症(EH)の遺伝的要因の有無を判定するために使用できる有用な遺伝子マーカーとしては、rs1394205、rs2055571、rs1007541及びrs2268361のSNPが好ましく、中でも、rs1394205、rs2055571及びrs2268361のSNPがより好ましく、rs1394205のSNPが最も好ましいことが分かった。特に、rs1394205のSNPは、女性において極めて有用な遺伝子マーカーとなることも分かった。
【0067】
(4) 連鎖不平衡解析及びハプロタイプを用いた関連解析
上述した5つのSNPについて、連鎖不平衡(LD)解析、及びハプロタイプを用いた関連解析を行った。両解析は、SNPAlyzeバージョン3.2 (DYNACOM株式会社製、横浜(日本))を使用して行った。なお、上記SNPAlyzeバージョン3.2は、デモ版がウェブサイト( HYPERLINK "http://www.dynacom.co.jp/products/package/snpalyze/index.html" http://www.dynacom.co.jp/products/package/snpalyze/index.html)から取得可能である。
【0068】
解析結果は、図1に示す通りである。上記両解析によっても、前述したGenotypingの結果と同様に、EHの遺伝的要因の有無を判定するために使用できる有用な遺伝子マーカーとしては、rs1394205、rs2055571、rs1007541及びrs2268361のSNPが好ましく、中でも、rs1394205、rs2055571及びrs2268361のSNPがより好ましく、rs1394205のSNPが最も好ましいことが分かった。
【実施例2】
【0069】
「rs1394205」のGアレル及びAアレルの転写活性の測定
実施例1において、EHの遺伝的要因の有無の判定に最も有用な遺伝子マーカーであるrs1394205のSNPについて、このSNPと、このSNPの上流領域とを含むレポーターコンストラクトによる転写活性測定を行った。以下にその手順を示す。
【0070】
(1) Gアレル又はAアレルのDNA断片を含むプラスミドの準備
rs1394205のSNPの多型部位を含む塩基配列を有するプラスミドを構築した。当該プラスミドとしては、Gアレル(野生型)の多型部位を含むものと、Aアレル(変異型)の多型部位を含むものをそれぞれ構築した。
【0071】
まず、図3に示すように、以下の2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、FSHR遺伝子のExon1領域の一部を鋳型(Gアレル及びAアレル)としてPCRを行い、rs1394205のSNPの多型部位を含む断片を増幅した。
【0072】
Fプライマー:
5'-ATGGTACCCCTTAGGTCAGGGTGTAAGAAACCC-3' (配列番号6)
(FSHR遺伝子の開始コドンから数えて-202~-226)
Rプライマー:
5'-ATAAGCTTGGCCATAATTATGCATCCATCCACC-3' (配列番号7)
(FSHR遺伝子の開始コドンから数えて-19~+6)
上記プライマーは、FSHR遺伝子の上流-250塩基までの領域に主要なプロモーター活性(コアプロモーター活性)があるという公知の知見に基づき、その領域を解析できるように設計されたものである。これらのプライマーは、Kpn I制限酵素切断部位(Fプライマー)と、Hind III制限酵素切断部位(Rプライマー)を含むものである。
【0073】
上記PCRは、以下の反応液組成で、GeneAmp9700(Applied Biosystems社)を使用し、「熱変性:98℃(25秒)→アニーリング:63℃(30秒)→伸長:72℃(2分)」を1サイクルとして計35サイクル行った。

PCR 反応組成液
鋳型DNA(100ng/μL): 1μL
TaqDNAポリメラーゼ: 0.1μL (5unit/μL)
Fプライマー(10pmol/μL): 0.4μL
Rプライマー(10pmol/μL): 0.4μL
dNTP(2.5mM): 3.2μL
10× バッファー: 2μL
25mM MgCl2: 2μL
滅菌水: 適量(10.9μL)
合計: 20μL

次いで、得られたPCR産物をKpn IとHind IIIによって消化し、消化後の断片を、ルシフェラーゼレポーターベクターpGV-B2(東洋インキ社製、東京)をKpn IとHind IIIで消化して得られた断片(ルシフェラーゼ遺伝子を含む断片)に挿入して、サブクローニングすることにより、Gアレルを持つプラスミド(G-プラスミド)及びAアレル(A-プラスミド)を持つプラスミドを構築した。Gアレル及びAアレルのいずれを持つプラスミドであるかは、公知の塩基配列決定法によって確認した。
【0074】
(2) GアレルとAアレルの転写活性測定
上記(1)で得られたG-プラスミド及びA-プラスミドを、それぞれ、Chinese hamster ovary (CHO) 細胞に導入した。具体的には、ルシフェラーゼ・アッセイシステム(PicaGene Dual SeaPansy、東洋インキ社製)を用いたリポソーム法により、以下のようにして導入した。
【0075】
まず、60~70%コンフルエントのCHO細胞をOptiMEM (Lipofectamine、Gibco BRL、ゲイザースバーグMD)にて37℃で30分間プレインキュベーションした。
【0076】
別途、上記(1)で得られたG-プラスミド(1μg)、及びチミジンキナーゼ(TK)を含むpRLプラスミド(200ng、東洋インキ社製)を、リポソーム液 (Lipofectamine、Gibco BRL、6μl/well) に、20分間、室温下で溶解させ、両プラスミドが脂質でコーティングされたもの(リポソーム封入プラスミド)を得た。また、G-プラスミドの代わりにA-プラスミドを用いた以外は上記と同様にして、リポソーム封入プラスミドを得た。なお、pRLプラスミドは、効率が正常であることを確認するためのコントロール(内部標準)とするものである。
【0077】
次いで、上記プレインキュベーション後の細胞懸濁液を、マルチウェルプレートの各wellに0.8mlずつ入れ、この各wellに上記リポソーム封入プラスミドを添加して、37℃で3時間インキュベーションした。その後、新しいメディウムに代え、さらに37℃で48時間インキュベーションした。
【0078】
上記インキュベーション後の各wellのCHO細胞を、細胞溶解液(400μl)で溶解し、その後、溶解していない細胞と残骸を取り除くために遠心分離した。
【0079】
遠心分離後の抽出産物(50μl)を、ルシフェラーゼ活性の測定に用いた。当該測定は、抽出産物を少なくとも3等分して、それぞれ、ルミノメータ(LB-9507、Berthold、Bad Wildbad、ドイツ)を使用して行った。すべての検出データは内部標準であるpRL-TK活性で補正した。
【0080】
以上のようにして得られた、GアレルとAアレルの転写活性測定の結果を、図4のグラフに示した。図4では、Gアレルの転写活性を1.0としたときの、Aアレルの転写活性を相対値で表している。各データは平均値±SDとして示した。統計的な分析は、StatView5.0(SAS株式会社)とSPSS Dr. II(SPSS株式会社)を使用した。共変量の量的な効果を評価するために、マルチプルロジスティクス回帰分析をSPSS IIで施行した。統計的有意差はp<0.05とした。図4に示す結果から、Aアレルの転写活性は、Gアレルの転写活性に対して56%と低かった。これにより、ヒトFSHR遺伝子のExon1非翻訳領域に存在するrs1394205のSNPのA alleleは、転写活性を低下させ、本態性高血圧症に関連することが示された(特に女性において顕著である。)。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】FSHR遺伝子における遺伝子多型(SNP)間の連鎖不平衡を示す図である。
【図2】FSHR遺伝子における遺伝子多型(SNP)の位置と種類を示す図である。
【図3】実施例2で用いたプライマーの結合位置を示す図である。
【図4】実施例2における転写活性測定の結果を示すグラフである。

【配列表フリ-テキスト】
【0083】
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3