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明細書 :音源方向判定装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5004276号 (P5004276)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
発明の名称または考案の名称 音源方向判定装置及び方法
国際特許分類 G01S   3/803       (2006.01)
FI G01S 3/803
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2006-545100 (P2006-545100)
出願日 平成17年11月16日(2005.11.16)
国際出願番号 PCT/JP2005/021040
国際公開番号 WO2006/054599
国際公開日 平成18年5月26日(2006.5.26)
優先権出願番号 2004332383
優先日 平成16年11月16日(2004.11.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月7日(2008.11.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593116962
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】羽入 敏樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100086335、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 榮一
【識別番号】100096677、【弁理士】、【氏名又は名称】伊賀 誠司
審査官 【審査官】中村 説志
参考文献・文献 特開2002-039851(JP,A)
特開2004-012151(JP,A)
特開平11-337632(JP,A)
特表2001-505396(JP,A)
特表平09-505699(JP,A)
特開平10-104329(JP,A)
特開昭60-147666(JP,A)
藤門祐介、外3名,“複数の指向性マイクロホンの方向別感度差を利用した音源方向推定に関する基礎的検討”,2005年度大会(近畿)学術講演梗概集,日本建築学会,2005年 7月31日,D-1分冊,p.171-172
羽入敏樹、外2名,“空間デコンボリューションに基づく指向性マイクロホンの新しいアルゴリズム”,電子情報通信学会技術研究報告,2004年 6月18日,Vol.104,No.143,p.13-17
調査した分野 G01S 3/00- 3/86
G01S 5/18- 5/30
G01S 7/52- 7/64
G01S15/00-15/96
H04R 1/00-31/00
G10L11/00-23/00
G01H 1/00-17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
任意の場所に設けられる観測点において、それぞれ所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する、指向特性の感度最大方向を基準方向に向けて配置される第1の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を90度方向に向けて配置される第2の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を180度方向に向けて配置される第3の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を270度方向に向けて配置される第4の受信部とからなる受信手段と、
上記所定の指向特性が基準方向に向いている上記第1の受信部と、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いている上記第3の受信部の角度ごとの感度差である第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いている上記第2の受信部と、270度方向に向いている上記第4の受信部の角度ごとの感度差である第2の感度差データベースとを格納する格納手段と、
上記第1の受信部で受信した信号と、上記第3の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第1の演算手段と、
上記第2の受信部で受信した信号と、上記第4の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第2の演算手段と、
上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定手段と、
上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向の判定に用いる領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定手段とを備えることを特徴とする音源方向判定装置。
【請求項2】
上記到来方向確定手段により得られた音源の到来角度と、各受信部で受信した信号のレベルと、各受信部の方向別感度とに基づき、当該音源のレベルを算出するレベル算出手段を備えることを特徴とする請求項1記載の音源方向判定装置。
【請求項3】
上記受信手段は、上記第1の受信部、上記第2の受信部、上記第3の受信部及び上記第4の受信部に対して指向特性が垂直方向に向けて配置される第5の受信部と、上記第5の受信部に対して指向特性が180度方向に向けて配置される第6の受信部とを有し、
上記第5の受信部で受信した信号と、上記第6の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第3の演算手段とを備え、
上記格納手段は、上記所定の指向特性が、垂直方向に向いているときと、上記垂直方向に対して180度方に向いているときの第3の感度差データベースを有しており、
上記到来角度判定手段は、上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果と、上記第3の演算手段で得られた演算結果とを比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース、上記第2の感度差データベース及び上記第3の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定し、
上記到来方向確定手段は、上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース、上記第2の感度差データベース及び上記第3の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定することを特徴とする請求項1記載の音源方向判定装置。
【請求項4】
任意の場所に設けられる観測点において、それぞれ所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信し、指向特性の感度最大方向を基準方向に向けて配置される第1の受信部で受信した信号と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を180度方向に向けて配置される第3の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第1の演算工程と、
上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を90度方向に向けて配置される第2の受信部で受信した信号と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を270度方向に向けて配置される第4の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第2の演算工程と、
上記第1の演算工程で得られた演算結果と、上記第2の演算工程で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記所定の指向特性が基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定工程と、
上記到来角度判定工程により得られた判定結果に基づき、上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定工程とを備えることを特徴とする音源方向判定方法。
【請求項5】
所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する受信手段と、
上記受信手段を、任意の場所に設けられる観測点において、指向特性の感度最大方向を基準方向、上記基準方向に対して、90度方向、180度方向及び270度方向に向くように回転駆動する回転駆動手段と、
上記所定の指向特性が上記基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースを格納する格納手段と、
上記受信手段の指向特性が上記基準方向に向いているときに受信した信号と、上記受信手段の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第1の演算手段と、
上記受信手段の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときに受信した信号と、270度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第2の演算手段と、
上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定手段と、
上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースからから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定手段とを備えることを特徴とする音源方向判定装置。
【請求項6】
上記到来方向確定手段で得られた音源の到来角度と、各受信部で受信した信号のレベルと、各受信部の方向別感度とに基づき、当該音源のレベルを算出するレベル算出手段を備えることを特徴とする請求項5記載の音源方向判定装置。
【請求項7】
上記回転駆動手段は、上記受信手段の指向特性の感度最大方向を、任意の場所に設けられる観測点において、基準方向、上記基準方向に対して、90度方向、180度方向、270度方向及び上下垂直方向に回転駆動する構成であり、
上記受信手段が上記基準方向に対して一方の垂直方向に向いているときに受信した信号と、上記受信手段が他方の垂直方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第3の演算手段とを備え、
上記格納手段は、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して上下垂直方向に向いているときの第3の感度差データベースを有しており、
上記到来角度判定手段は、上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果と、上記第3の演算手段で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース、上記第2の感度差データベース及び上記第3の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定し、
上記到来方向確定手段は、上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース、上記第2の感度差データベース及び上記第3の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定することを特徴とする請求項5記載の音源方向判定装置。
【請求項8】
所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する受信部の指向特性が基準方向に向いているときに受信した信号と、上記基準方向に対して180度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第1の演算工程と、
上記受信部の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときに受信した信号と、270度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第2の演算工程と、
上記第1の演算工程で得られた演算結果と、上記第2の演算工程で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記所定の指向特性が上記基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定工程と、
上記到来角度判定工程により得られた判定結果に基づき、上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定工程とを備えることを特徴とする音源方向判定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、音源の方向を判定する音源方向判定装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、日本国において2004年11月16日に出願した日本特許出願番号2004-332383を基礎として優先権を主張するものであり、この出願を参照することにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
音場をより的確に評価するには、方向情報の把握が重要である。これまで室内音場の測定では、近接4点法(近接4点法による空間情報の把握と展開、遠藤健二、山崎芳男、伊藤毅、建築音響研究委員会資料AA85-21(1985.7)及び、特開2000-354290号公報を参照)や正四面体頂点法等を用いて、各チャンネルのマイクロホンに入射される音波の時間差によって音の方向情報を抽出していた。
【0004】
しかしながら、一つのマイクロホンに同時に複数の音波が入射された場合、それらの音波を区別することが難しく、音波の到来方向の推定に誤差が生じてしまう。また、音波の到来方向の推定作業は、試験信号(インパルス信号)の応答(インパルス応答)に対して後処理で解析されるため、リアルタイムの方向情報を得ることが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特別な試験信号を用いずに、騒音や楽音信号に対してリアルタイムに音源の到来方向を推定することができる音源方向判定装置及び方法を提供することにある。
【0006】
本発明に係る音源方向判定装置は、任意の場所に設けられる観測点において、それぞれ所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する、指向特性の感度最大方向を基準方向に向けて配置される第1の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を90度方向に向けて配置される第2の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を180度方向に向けて配置される第3の受信部と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を270度方向に向けて配置される第4の受信部とからなる受信手段と、上記所定の指向特性が基準方向に向いている上記第1の受信部と、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いている上記第3の受信部の角度ごとの感度差である第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いている上記第2の受信部と、270度方向に向いている上記第4の受信部の角度ごとの感度差である第2の感度差データベースとを格納する格納手段と、上記第1の受信部で受信した信号と、上記第3の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第1の演算手段と、上記第2の受信部で受信した信号と、上記第4の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第2の演算手段と、上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定手段と、上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向の判定に用いる領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定手段とを備える。
【0007】
また、本発明に係る音源方向判定方法は、任意の場所に設けられる観測点において、それぞれ所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信し、指向特性の感度最大方向を基準方向に向けて配置される第1の受信部で受信した信号と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を180度方向に向けて配置される第3の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第1の演算工程と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を90度方向に向けて配置される第2の受信部で受信した信号と、上記基準方向に対して指向特性の感度最大方向を270度方向に向けて配置される第4の受信部で受信した信号のレベル差を算出する第2の演算工程と、上記第1の演算工程で得られた演算結果と、上記第2の演算工程で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記所定の指向特性が基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定工程と、上記到来角度判定工程により得られた判定結果に基づき、上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定工程とを備える。
【0008】
また、本発明に係る音源方向判定装置は、所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する受信手段と、上記受信手段を、任意の場所に設けられる観測点において、指向特性の感度最大方向を基準方向、上記基準方向に対して、90度方向、180度方向及び270度方向に向くように回転駆動する回転駆動手段と、上記所定の指向特性が上記基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースを格納する格納手段と、上記受信手段の指向特性が上記基準方向に向いているときに受信した信号と、上記受信手段の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第1の演算手段と、上記受信手段の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときに受信した信号と、270度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第2の演算手段と、上記第1の演算手段で得られた演算結果と、上記第2の演算手段で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定手段と、上記到来角度判定手段により得られた判定結果に基づき、上記格納手段に格納されている上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースからから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定手段とを備える。
【0009】
また、本発明に係る音源方向判定方法は、所定の指向特性を有し、音源から到来してくる信号を受信する受信部の指向特性が基準方向に向いているときに受信した信号と、上記基準方向に対して180度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第1の演算工程と、上記受信部の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときに受信した信号と、270度方向に向いているときに受信した信号のレベル差を算出する第2の演算工程と、上記第1の演算工程で得られた演算結果と、上記第2の演算工程で得られた演算結果を比較し、当該比較結果に基づき、上記所定の指向特性が上記基準方向に向いているときと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して180度方向に向いているときの第1の感度差データベースと、上記所定の指向特性が上記基準方向に対して、90度方向に向いているときと、270度方向に向いているときの第2の感度差データベースから音源の到来角度を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの大きな領域の感度差を参照し、音源の到来角度を判定する到来角度判定工程と、上記到来角度判定工程により得られた判定結果に基づき、上記第1の感度差データベース及び上記第2の感度差データベースから音源の到来方向を判定する領域として決定される感度差が変化する傾きの小さな領域の感度差を参照し、音源の到来方向を確定する到来方向確定工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明を適用した音源方向判定装置の構造を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明を適用した音源方向判定装置に備えられている受信部及び処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、マイクロホンの指向特性を示す図である。
【図4】図4は、受信部の他の構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、受信部の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6A及び図6Bは、図5に示した受信部において、ターンテーブルによりマイクロホンを回転させる際の説明に供する図である。
【図7】図7A及び図7Bは、180度反対向きの指向特性の感度差を算出する説明に供する図である。
【図8】図8A及び図8Bは、図7に示した図に基づいて得られる感度差曲線を示す図である。
【図9】図9は、音源の到来方向及び到来角度を判定する手順についての説明に供するフローチャートである。
【図10】図10は、各方向における受信レベルを示す図である。
【図11】図11は、マイクロホンから任意の位置に音源を配置したときの構成を示す図である。
【図12】図12は、各方向における受信レベルを示す図である。
【図13】図13は、本発明を適用した音源方向判定装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図14】図14は、マイクロホンから任意の位置に音源を配置したときの構成を示す図である。
【図15】図15は、図13に示す音源方向判定装置によりホワイトノイズを処理した結果を示す図である。
【図16】図16は、図13に示す音源方向判定装置により男声アナウンスを処理した結果を示す図である。
【図17】図17Aは、ホワイトノイズのエネルギー加重平均角度を示し、図17Bは、男声アナウンスのエネルギー加重平均角度を示す図である。
【図18】図18A及び図18Bは、各時間窓内エネルギーの到来方向と大きさを円によって表した図である。
【図19】図19A及び図19Bは、SN比が10dBの暗騒音がある状態での方向推定の結果を示す図である。
【図20】図20A及び図20Bは、SN比が30dBの暗騒音がある状態での方向推定の結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明は、例えば、図1に示すような構造の音源方向判定装置1に適用される。音源方向判定装置1は、信号を受信(受音)する複数のマイクロホンからなる受信部2と、受信部2で受信された信号に所定の信号処理を行う処理部3を備えている。
【0013】
受信部2は、例えば、図2に示すように、任意の場所に設けられる観測点において、それぞれ所定の指向特性Dを有し、音源から到来してくる信号を受信する、指向特性Dが0度方向((基準)前方方向)に向けて配置されるマイクロホン10Aと、マイクロホン10Aに対して指向特性Dが90度方向(右方向)に向けて配置されるマイクロホン10Bと、マイクロホン10Aに対して指向特性Dが180度方向(後方方向)に向けて配置されるマイクロホン10Cと、マイクロホン10Aに対して指向特性Dが270度方向(左方向)に向けて配置されるマイクロホン10Dと、マイクロホン10A乃至マイクロホン10Dに対して指向特性Dが垂直方向に向けて配置されるマイクロホン10E(上方垂直方向)と、マイクロホン10Eに対して指向特性Dが180度方向(下方垂直方向)に向けて配置されるマイクロホン10Fとからなる。なお、受信部2は、マイクロホン10A乃至マイクロホン10Dの4つで構成されていても良い。また、マイクロホンの配置において、音響中心が問題となるが、全てのマイクロホンをほぼ同一点に設置し、音響中心を揃えても良いし、任意の一点から全てのマイクロホンの音響中心までの距離が等しくなるように配置されていても良い。
【0014】
また、マイクロホン10A乃至マイクロホン10Fが有する指向特性Dは、例えば、図3に示すような汎用性の高いカーディオイド状の指向特性である。
【0015】
また、受信部2は、図4に示すように、マイクロホン10を水平方向に回転駆動する水平方向回転駆動部20と、マイクロホン10を垂直方向に回転駆動する垂直方向回転駆動部21と、水平方向回転駆動部20及び垂直方向回転駆動部21を制御する制御部22からなる構成であっても良い。
【0016】
水平方向回転駆動部20は、制御部22の制御に応じてマイクロホン10を水平方向に任意の角度回転駆動する。垂直方向回転駆動部21は、制御部22の制御に応じてマイクロホン10を垂直方向に任意の角度回転駆動する。
【0017】
このような構成によれば、マイクロホン10を3次元的に駆動することが可能となり、図2に示す例のように、6つのマイクロホンで構成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0018】
また、受信部2は、図5に示すように、マイクロホン10がターンテーブル30上に配置されている構成であっても良い。ターンテーブル30は、駆動部31により制御され、マイクロホン10を0度方向(基準方向)、90度方向、180度方向及び270度方向に向くように順次回転駆動する。また、ターンテーブル30によりマイクロホン10を回転させる際に、音響中心が問題となるが、マイクロホン10の音響中心をターンテーブル30の回転軸Aと一致させて、回転駆動しても良いし(図6A)、マイクロホン10の音響中心をターンテーブル30の回転軸Aから一定距離保ちながら、回転駆動しても良い(図6B)。
【0019】
つぎに、処理部3の構成について以下に説明する。処理部3は、図2、図5に示すように、受信部2で受信された信号に基づいて信号レベルを演算する演算処理部11と、マイクロホンの指向特性D等の各種情報が格納されているデータベース12を備えている。
【0020】
データベース12には、音源の到来方向の判定に用いる情報と、音源の到来角度の判定に用いる情報が予め格納されているものとする。ここで、データベース12に格納されている情報について説明する。データベース12には、図7Aに示すように、指向特性Dが0度方向(基準方向)に向いているときと、指向特性Dが180度方向に向いているときの第1の感度差データベース(図8A)と、また、図7Bに示すように、指向特性Dが90度方向に向いているときと、指向特性Dが270度方向に向いているときの第2の感度差データベース(図8B)とが格納されている。また、第1の感度差データベース及び第2の感度差データベースとから、音源の到来方向の判定に用いる領域と、音源の到来角度の判定に用いる領域とが決定される。したがって、図8から分かるように、感度差データベースの傾きが大きいところほど角度推定精度は高い、すなわち角度分解能に偏りが出ないので、後述する演算処理部11では、この範囲を音源の到来角度の判定に用い、一方、感度差データベースの傾きはフラットであるが感度差データベースが大きい範囲を音源の到来方向の判定に用いる。
【0021】
また、上述例は、2次元の場合、すなわち互いに直交するマイクロホンが4つ配置されている場合であって、3次元の場合には、上下垂直方向に指向特性が向いているときの第3の感度差データベースを演算した情報も併せてデータベース12に格納しておく。このような構成により、3次元における音源の到来方向及び到来角度の判定が可能となる。
【0022】
ここで、演算処理部11により音源の到来方向及び到来角度を判定する手順について図9に示すフローチャートにしたがって説明する。なお、以下では、マイクロホンが0度方向(基準方向)、90度方向、180度方向及び270度方向にそれぞれ指向特性の感度最大方向を向けて構成されている2次元の場合を想定して説明する。
【0023】
ステップST1において、演算処理部11は、受信部2から供給される信号に基づき、各方向の信号レベルを演算し、各方向の受信レベル差を算出する。受信部2は、各方向における信号を受信し、受信した信号を演算処理部11に供給する。ここで、図10に演算処理部11により算出された結果を示す。0度方向(基準方向)の受信レベルは、約-1dBであり、90度方向の受信レベルは、約-14dBであり、180度方向の受信レベルは、約-12dBであり、270度方向の受信レベルは、約0dBである。
【0024】
ステップST2において、演算処理部11は、ステップST1の工程で算出された各方向の受信レベルに基づき、0度方向(基準方向)と180度方向(以下、0度-180度方向という。)の受信レベル差と、90度方向と270度方向(以下、90度-270度方向という。)の受信レベル差をそれぞれ算出する。0度-180度方向の受信レベル差は、11dB(=-1-(-12))であり、90度-270度方向の受信レベル差は、14dB(=0-(-14))である。
【0025】
ステップST3において、演算処理部11は、0度-180度方向の受信レベル差と、90度-270度方向の受信レベル差を比較する。
【0026】
ステップST4において、演算処理部11は、ステップST3の工程により得られた比較結果に基づいて、データベース12に格納されている第1の感度差データベース及び第2の感度差データベースから決定される音源の到来角度を判定する領域を参照し、音源の到来角度を判定する。演算処理部11は、ステップST3の工程により得られる比較結果より、受信レベル差の小さい方、すなわち0度-180度方向の受信レベル差(11dB)に基づいて音源の到来角度を判定する。演算処理部11は、データベース12に格納されている情報(図8A)から、0度-180度方向の受信レベル差(11dB)の交点が55度若しくは305度であることが分かる。
【0027】
つぎに、ステップST5において、演算処理部11は、ステップST4の工程により得られた音源の到来方向に基づき、データベース12に格納されている第1の感度差データベース及び第2の感度差データベースから決定される音源の到来方向の判定に用いる領域を参照し、音源の到来方向を確定する。演算処理部11は、比較結果より、受信レベル差の大きい方、すなわち90度-270度方向の受信レベル差(14dB)に基づいて音源の到来方向を判定する。演算処理部11は、データベース12に格納されている情報(図8B)から、90度-270度方向の受信レベル差(14dB)の交点が共に180度~360度の範囲(左方向)にあることが分かる。なお、音源の到来方向は、0度-180度方向のレベル差からは前(0度~90度および270度~360度)か後(90度~270度)のどちらか、90度-270度方向のレベル差からは右(0度~180度)か左(180度~360度)のどちらか大まかな方向が判定される。
【0028】
したがって、演算処理部11は、ステップST5の工程により得られた音源の到来方向(180度~360度の範囲)に基づき、音源の到来角度を305度であると判定する。
【0029】
上述は、図11に示すように、マイクロホン10から第1の方向(0度(基準)方向)に5.5m行き、そこから第4の方向(270度方向)に8m行った場所に配置した音源(A地点)からTSP(Time Stretched Pulse,時間伸長パルス)信号(500Hz)を発生させて、本発明に係る音源方向判定装置1により測定したものである。受信部2から音源の位置を計算すると、約304.5度となる。したがって、本発明に係る音源方向判定装置1では、ほとんど誤差なく音源位置を判定することができたことになる。
【0030】
また、ステップST6において、演算処理部11は、ステップST4及びステップST5の工程により得られた音源の到来角度に基づき、音源のレベルを算出する。音源のレベルは、最も大きいレベルで測定されたマイクロホンで行う。本実施例の場合には、マイクロホン10Aに対して指向特性Dが270度方向に向けて配置されるマイクロホン10D(0dB)である。音源の到来角度は、ステップST5の工程により得られているので、マイクロホン10Dを基準にした音源の到来角度は、305度-270度=35度となる。したがって、マイクロホン10Dの指向方向と音源の到来方向との感度差データベースの絶対値を、当該マイクロホン10Dの測定レベルに補正することにより音源のレベルを得ることができる。
【0031】
なお、ステップST4の工程(音源の到来角度の判定)と、ステップST5の工程(音源の到来方向の確定)は、逆の順番であっても良い。
【0032】
また、図11に示すように、受信部2から0度(基準)方向に8m行った場所に配置した音源(B地点)からTSP信号を発生させた場合の例について以下に述べる。
【0033】
図12は、演算処理部11により受信部2から供給された信号に基づき、各方向における信号レベルを演算したものである。0度(基準)方向の受信レベルは、約0dBであり、90度方向の受信レベルは、約-6dBであり、180度方向の受信レベルは、約-16dBであり、270度方向の受信レベルは、約-6dBである。
【0034】
また、図12より、0度-180度方向の受信レベル差は、16dB(=0-(-16))であり、90度-270度方向の受信レベル差は、0dB(=-6-(-6))である。
【0035】
したがって、音源の到来方向の判定には、受信レベル差の大きい方、すなわち0度-180度方向の受信レベル差に基づいて行い、音源の到来角度の判定には、受信レベル差の小さい方、すなわち90度-270度方向の受信レベル差に基づいて行う。
【0036】
ゆえに、音源の到来方向は、0度-180度方向のレベル差(16dB)を用いて、図8Aから読み取ると、0度~90度及び270度~360度(すなわち前方向)の範囲と判定され、また、音源の到来角度は、90度-270度方向のレベル差(0dB)を用いて、図8Bから読み取ると、0度と判定される。
【0037】
このようにして、本発明に係る音源方向判定装置1は、汎用性の高い所定の指向特性Dを有するマイクロホン10を有する受信部2と、受信部2のマイクロホンの配置に応じて、予め180度反対向きのマイクロホンの指向特性の感度差データベース(第1の感度差データベース及び第2の感度差データベース)が格納されているデータベース12と、受信部2から受信した各方向の受信レベルから各方向の受信レベル差を算出し、算出された各方向の受信レベル差と、データベース12に格納されているマイクロホン10の指向特性Dに基づく第1の感度差データベース及び第2の感度差データベースを参照し、音源の到来方向及び到来角度並びにレベルを判定する演算処理部11を備えるので、180度反対向きの指向特性の感度差データベースを使用することにより、感度差データベース関数が直線的になり、角度分解能に偏りが生じないため、音源の到来方向、角度及びレベルをほとんど誤差なく判定することができる。
【0038】
したがって、本願発明に係る音源方向判定装置1は、特殊な指向特性を有するマイクロホンではなく、汎用性の高い指向特性を有するマイクロホンを用いて音場の測定を行うため、当該測定結果に基づいて客観性の高い判定をすることができる。
【0039】
<他の実施例>
また、本発明に係る音源方向判定装置1を応用すれば、騒音や楽音等の任意の音源に対してリアルタイム動作で音源の方向推定を行うことができ、例えば、不思議音等の騒音源や遮音の弱い箇所を特定することや、ホール等で実際に演奏している状態における空間印象のリアルタイム評価に利用することができる。以下に、実施の態様について説明する。
【0040】
音源方向判定装置40は、図13に示すように、信号を受信(受音)する複数のマイクロホンからなる受信部41と、受信部41で受信された信号に対して任意の時間窓幅で時分割処理を行う時分割部42と、時間窓幅を設定する設定部43と、時分割部42で時分割された信号に対してフーリエ変換を行う周波数分析部44と、周波数分析部44により周波数分析された信号に対して、所定の信号処理を行う処理部45とを備えている。
【0041】
受信部41は、図2に示した受信部2と同様の構成である。なお、以下では、単一指向性のマイクロホンを4つ(マイクロホン10A~10D)用いた場合を想定して説明する。
【0042】
時分割部42は、設定部43により設定された時間窓幅に基づいて、受信部41で受信された信号を時間方向に分割する。
【0043】
設定部43は、任意の幅で時間窓を設定する。なお、設定部43では、少なくとも、受信部41で受信される信号の単位波長(1周期)よりも大きい幅を設定するものとする。
【0044】
周波数分析部44は、時分割部42から出力された信号に対してフーリエ変換を行い、時間窓幅ごとに周波数分析を行う。
【0045】
処理部45は、上述した処理部3と同様の構成であり、周波数分析部44から供給された信号に基づいて、受信部41で受信された信号の信号レベルを演算する演算処理部11と、マイクロホンの指向特性D等の各種情報が格納されているデータベース12を備えている。
【0046】
演算処理部11は、図7Aに示すように、指向特性Dが0度(基準)方向に向いているときと、指向特性Dが180度方向に向いているときの感度差データベースを演算し(図8A)、また、図7Bに示すように、指向特性Dが90度方向に向いているときと、指向特性Dが270度方向に向いているときの感度差データベースを演算する(図8B)。
【0047】
また、既述したように、感度差データベースは、約±20dBと大きいが、演算処理部11は、角度分解能が低い部分(傾きが緩やかな部分)により音の到来方向(前後)の判定を行い、感度差データベースが小さいが、角度分解能が高い部分(傾きが急な部分)により音の到来角度の判定を行う。
【0048】
また、到来角度の算出式を一次式により近似すると以下のようになる。
【0049】
※到来方向(前後)の判定式
45度~135度:θ=-3.0883(L0-L180)+90 ・・・(1)
225度~315度:θ=3.0883(L0-L180)+270 ・・・(2)
※到来角度の判定式
315度~45度:θ=-3.0883(L270-L90)+360 ・・・(3)
135度~225度:θ=3.0883(L270-L90)+180 ・・・(4)
但し、θは、角度を示し、L0、L90、L180、L270は、それぞれ、0度、90度、180度、270度の方向に向けられているマイクロホンのレベルを示している。
【0050】
また、(3)式において、θの値が360を超えた場合には、得られた値から360を差し引くこととする。また、上述した(1)式乃至(4)式は、データベース12に格納されるものであるが、その場合には、上述した第1の感度差データベース及び第2の感度差データベースは、データベース12には格納されないものとする。
【0051】
ここで、音源方向判定装置40により、異なる二つの音源から所定の信号を出力した場合に、それぞれの音の到来方向を演算した結果について説明する。
【0052】
具体的には、図14に示すように、マイクロホン10から一の方向(324度)に音源(C地点)を配置し、また、マイクロホン10から他の方向(37度)に音源(D地点)を配置した。
【0053】
<C地点からホワイトノイズ、男声アナウンスを出力した場合>
まず、音源(C地点)から5秒間連続して出力された定常音と、同様に音源(C地点)から5秒間連続して出力された変動音について、音源方向判定装置40によりリアルタイムに音の到来方向を算出した結果を以下に示す。なお、定常音は、ホワイトノイズであり、変動音は、男声アナウンスである。また、測定においては、暗騒音(back ground noise)による影響を回避するため、SN比が10dB及び30dBの状況を想定し、4方向のマイクロホンに無相関のピンクノイズを加算した。
【0054】
ここで、ホワイトノイズを処理した結果を図15に示し、男声アナウンスを処理した結果を図16に示す。また、設定部43により、窓関数(矩形窓)を変化させた場合における到来角度の算出値の違いと、時間幅の違いを比較検討した結果を図17に示す。なお、到来角度の算出は、上述した(1)式乃至(4)式を用いて、1オクターブバンド毎に算出した。また、図17Aでは、ホワイトノイズを時間窓毎のエネルギーで重み付けをした荷重平均角度により表しており、図17Bでは、男声アナウンスを時間窓毎のエネルギーで重み付けをした荷重平均角度により表している。
【0055】
これらの結果から、変動音、定常音共にばらつきはあるものの、実際の音源方向(324度)に近い値で方向推定できていることが分かる。また、時間窓幅の影響については、「4096」及び「32768」共にほとんど変化が無かった。このように数cmの小さいサイズのマイクロホンシステムにも関わらず、低音域から高音域までほぼ同精度で方向推定ができている。
【0056】
<C地点から男声アナウンスを出力し、同時にD地点から女声アナウンスを出力した場合>
つぎに、音源(C地点)から男声アナウンスが出力され、また、同時に、音源(D地点)から女声アナウンスが出力されたときに、音源方向判定装置40によりリアルタイムに音の到来方向を算出した結果を以下に示す。なお、測定においては、暗騒音(back ground noise)による影響を回避するため、SN比が10dB及び30dBの状況を想定し、4方向のマイクロホンに無相関のピンクノイズを加算した。
【0057】
図18は、各時間窓内エネルギーの到来方向と大きさを円によって表現したものである。これを見ると、500Hz(図18A)及び2kHz(図18B)ともに大きいエネルギーが音源方向の324度付近と、37度付近に連なっており、2つの音源方向を分離抽出できているのが分かる。
【0058】
また、SN比が10dBと30dBの暗騒音がある状態での方向推定の結果をそれぞれ図19及び図20に示す。
【0059】
SN比が10dBの暗騒音がある状態における結果を見ると、500Hz(図19A)及び2kHz(図19B)ともに到来角度を推定するまでには至らなかったが、315度~45度の範囲の方向から音が到来していることは推察できる。
【0060】
一方で、SN比が30dBの暗騒音がある状態における見ると、ノイズの影響はほとんど無く、500Hz(図20A)及び2kHz(図20B)ともに、音源を分離して到来角度を推定できている。つまり、SN比が10dB以下では推定精度が低くなることが分かった。
【0061】
しかし、図19から明らかなように、ノイズに対する結果は、0度、90度、180度、270度とマイクロホンの軸方向に算出される傾向があり、これを逆手に取れば、音源を統計的に分離することができるものと推察される。
【0062】
このようにして、本発明に係る音源方向判定装置40は、信号を受信(受音)する複数のマイクロホンからなる受信部41と、受信部41で受信された信号に対して任意の時間窓幅で時分割処理を行う時分割部42と、時間窓幅を設定する設定部43と、時分割部42で時分割された信号に対してフーリエ変換を行う周波数分析部44と、周波数分析部44により周波数分析された信号に対して、所定の信号処理を行う処理部45とを備えるので、騒音や楽音等の任意の音源に対してリアルタイム動作で音源の方向推定を行うことができる。
【0063】
<応用例>
また、本発明に係る音源方向判定装置40と、映像を撮像する映像撮像装置を組み合わせることにより、様々な利用形態が考えられる。
【0064】
例えば、映像撮像装置と音源方向判定装置40とを一体的に構成するものが考えられる。なお、本構成には、映像撮像装置により撮像された映像に、音源方向判定装置40により音源の方向を判定した結果を重ね合わせる重合部と、重合部によって重合された結果を表示する表示部が備えられているものとする。
【0065】
例えば、遮音が要求される部屋から音が漏れているときに、当該装置を遮音室のドアに向けて撮像し、撮像した映像に漏れ音の到来方向とそのレベルを重ね合わせることにより、当該ドアのどの位置から、どのくらいのレベルの音が漏れているのかを視覚的に提供することができる。
【0066】
また、例えば、音源方向判定装置40による音源方向の判定結果を監視カメラに通知するような構成にするものが考えられる。なお、本構成においては、音源方向判定装置40による音源方向の判定結果に基づいて、監視カメラの撮像方向を調整する調整部が備えられているものとする。
【0067】
例えば、部屋の所定位置に本構成に係る装置を備えておき、この部屋に侵入した者が音を立てた場合に、音源方向判定装置40によって音の到来方向を判定し、当該判定結果に基づいて、監視カメラの撮像方向を調整することにより、侵入者を監視カメラによって捉えることが可能になる。
【0068】
また、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上詳細に説明したように、本発明に係る音源方向判定装置及び方法は、特殊な指向特性を有するマイクロホンではなく、汎用性の高い指向特性を有するマイクロホンを用いて音場の測定を行うため、当該測定結果に基づいて客観性の高い判定をすることができる。
【0070】
また、本発明に係る音源方向判定装置及び方法は、音源の到来方向及び到来角度の判定に、マイクロホンの構成に応じた、180度反対向きの指向特性の感度差を使用するので、感度差関数が直線的になり、角度分解能に偏りが生じないため、音源の到来方向、角度及びレベルをほとんど誤差なく正確に判定することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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