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明細書 :ポリアセン類の合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5334169号 (P5334169)
公開番号 特開2009-143903 (P2009-143903A)
登録日 平成25年8月9日(2013.8.9)
発行日 平成25年11月6日(2013.11.6)
公開日 平成21年7月2日(2009.7.2)
発明の名称または考案の名称 ポリアセン類の合成方法
国際特許分類 C07C  46/00        (2006.01)
C07C  50/22        (2006.01)
FI C07C 46/00
C07C 50/22
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2008-297593 (P2008-297593)
出願日 平成20年11月21日(2008.11.21)
優先権出願番号 2007303231
優先日 平成19年11月22日(2007.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年11月18日(2011.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】日秋 俊彦
【氏名】岩村 秀
【氏名】陶 究
【氏名】中村 暁子
【氏名】澤田 武則
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】今井 周一郎
参考文献・文献 特開2004-256532(JP,A)
特開2006-199682(JP,A)
国際公開第2006/119853(WO,A1)
特開2001-081053(JP,A)
特開2005-306820(JP,A)
Green Chemistry,2004年 3月22日,vol.6,p.227-231
調査した分野 C07C 50/22
特許請求の範囲 【請求項1】
温度150℃以上、圧力0.4MPa以上である高温高圧水中、触媒無添加において、少なくとも1分子中に隣接する2個のアルデヒド基を有する芳香族系アルデヒド化合物と、2個のカルボニル基を有する環状ケトン化合物である1,4-シクロヘキサンジオンから交差アルドール縮合反応により、ポリアセン類を合成することを特徴とするポリアセン類の合成方法。
【請求項2】
ポリアセン類が3環から7環の縮合芳香族炭化水素である請求項に記載の合成方法。
【請求項3】
アルデヒド化合物がο-フタルアルデヒドであり、環状ケトン化合物が1,4-シクロヘキサンジオンであり、ポリアセン類がペンタセンキノンである請求項に記載の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒や触媒を用いることなく、ポリアセン類を合成反応させる方法に関する。より具体的には、高温高圧水中(超臨界水中ないし亜臨界水中)で、触媒無添加において、ポリアセン類を効率よく、短時間で合成反応させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセン類はベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素であって、いずれも光や酸素に敏感な化合物であり、有機半導体、蛍光色素などの性質が研究されている化合物群である。通常3環から7環の化合物がポリアセン類として知られている。そのなかでもペンタセンは、5つのベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素、すなわち5環式炭化水素であり、分子間凝集力が強いため高い結晶性を有し、有機半導体中でも高いキャリア移動度を有している。ペンタセンの有機半導体としての特性は、有機薄膜トランジスタや有機電界効果トランジスタにおける利用が研究されている。中でも、用途として太陽電池や有機ELディスプレイなどの有機半導体として有望視されており、2007年5月にペンタセンを用いてプラスチックフィルム上の有機TFT駆動有機ELディスプレイでフルカラー表示を実現したことが発表されている(非特許文献1)。
【0003】
ペンタセンは、通常ペンタセンキノンを還元して得られ、ペンタセンキノンは、1961年ブルックナーとトマスにより、有機溶媒中で水酸化カリウムを塩基触媒として用い、フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子より脱水縮合反応を経る合成法が開発されている。
この典型的な有機化学反応で鍵となる求電子反応の促進には、有機溶剤や塩基触媒の使用が不可欠である。したがって、生成物を取り出す際には、酸を加えて中和を行い、さらに溶媒を留去するか水蒸気蒸留する必要があり、分離工程でのコスト増加につながっている。また、炭化水素系、エーテル系、含塩素系有機溶媒など各種有機溶媒には揮発性のものが多く、大部分は大気中に放出され、エネルギー・資源の浪費となっているばかりでなく、対流圏オゾンの発生及びスモッグの原因という環境負荷を与えてきた。
【0004】
一方、超臨界状態またはこれに近い亜臨界状態にある高温高圧水環境では、水は、常温常圧の有機溶媒に相当する低い誘電率を示し、更に高いイオン積も有することから、有機物に対して高い溶解性を示すことが知られている。また、高いHやOH濃度の反応場を形成できるため、従来有機溶媒中で酸・塩基触媒を用いて行なわれてきた有機合成反応を、多量の有機溶媒や酸・塩基触媒を用いることなく進行させ得る可能性が示唆され、代表的な求電子置換反応であるフリーデル・クラフツアルキル化及びアシル化について無触媒で進行することが報告されている(非特許文献2)。
また、このような超臨界水中での有機合成に関して、α位に少なくとも1つの水素原子を有するカルボニル化合物のアルドール縮合反応によりα,β-不飽和カルボニル化合物を生成させることが報告されている(特許文献1)が、ここでは、α位に少なくとも1つの水素原子を有するカルボニル化合物として、2,5-ヘキサンジオンを原料とし、3-メチル-2-シクロペンテノンを製造することが示されているだけであり、その他の汎用性を有するアルドール縮合反応については何ら記載されていない。

【非特許文献1】http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200705/07-053/index.html
【非特許文献2】K.Chandler等 AIChE J., 1998,44,2080
【特許文献1】特開2005-306820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリアセン類の合成反応を、有機溶媒や酸・塩基触媒を用いることなく、環境負荷を与えないで効率よく、短時間で化学合成できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、超臨界状態ないし亜臨界状態の高温高圧水環境において、触媒無添加で、ポリアセン類の合成反応が進行することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、ポリアセン類の合成反応が、高温高圧水環境において、自発的に短時間で進行することを見出したものである。この手法は、有機溶媒や酸・塩基触媒を用いることがないので、低環境負荷のプロセスであることに加え、生成物が水相と分離して取得できるため、分離取得工程の簡略化が達成できるメリットもある。
本発明者らは、ポリアセン類の合成反応のモデルとして少なくとも1分子中に1個のアルデヒド基を有する芳香族系アルデヒド化合物2分子と、少なくとも1個のケト基を有する環状ケトン化合物1分子を選択して検討をしたところ、水のみを溶媒とし、かつ触媒の添加なしに交差アルドール縮合反応が進行し、各種ポリアセン類が効率よく、短時間で合成されることが明らかとなった。また本発明者らは、ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセンキノンの合成についても検討したところ、水のみを溶媒とし、かつ触媒の添加なしに交差アルドール縮合反応が進行し、ペンタセン-6,13-キノン誘導体が効率よく、短時間で合成されることが明らかとなった。
これらの反応は、上述のようなポリアセン類化合物を合成する上で基本となる反応であるので、少なくとも置換基に1個の活性水素を有する芳香族系アルデヒド化合物2分子と少なくとも1個のケト基を有する環状ケトン化合物1分子とにより、交差アルドール縮合反応が進行し、各種ポリアセン誘導体化合物への反応に応用しうるものである。
【0007】
すなわち、本発明は、次に関するものである。
(1)高温高圧水中、触媒無添加において、ポリアセン類を合成することを特徴とするポリアセン類の合成方法。
(2)少なくとも1分子中に1個のアルデヒド基を有する芳香族系アルデヒド化合物と、少なくとも1個のケト基を有する環状ケトン化合物から交差アルドール縮合反応により、ポリアセン類を合成する上記(1)に記載の合成方法。
(3)ポリアセン類が3環から7環の縮合芳香族炭化水素である上記(1)または(2)記載の合成方法。
(4)アルデヒド化合物がο-フタルアルデヒドであり、環状ケトン化合物が1,4-シクロヘキサンジオンであり、ポリアセン類がペンタセンキノンである上記(2)に記載の合成方法。
(5)温度150 ℃以上、圧力0.4 MPa以上で反応させる上記(1)~(4)のいずれかに記載の合成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の合成方法は、有害な有機溶媒や酸・塩基触媒を用いないので、環境調和型の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
本発明において原料となるアルデヒド類は、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するか、2個のアルデヒド基を有するか、又は置換基を有するアルデヒド類であり、アルデヒド類を1つまたは2つ以上用いることができる。アルデヒド類には例えばο-フタルアルデヒド、2-アセチルベンズアルデヒド、1,2-ジアセチルベンゼン、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドなどがあり、特にο-フタルアルデヒドを用いることが好ましい。環状ケトン類としては、環状ジケトン、特に1,4-シクロヘキサンジオンを原料とするのが好ましい。
ο-フタルアルデヒド2分子と、1,4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、ペンタセン-6,13-キノンが生成する(式(1))。
【化1】
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【0010】
具体的に、置換基を有するジアルデヒド類を用いた反応について以下に示す。
ペンタセン誘導体として、2-アセチルベンズアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子では、次の反応が進行し、5,7-ジメチルペンタセン-6,13-キノンと5,12-ジメチルペンタセン-6,13-キノンが生成する(式(2))。
【化2】
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【0011】
またペンタセン誘導体として、ο-フタルアルデヒドと2-アセチルベンズアルデヒド1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子では、次の反応が進行し、5-ジメチルペンタセン-6,13-キノンが生成する(式(3))。
【化3】
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【0012】
さらにペンタセン誘導体として、1,2-ジアセチルベンゼン2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からは、5,7,12,14-テトラメチルペンタセン-6,13-キノンが(式(4))、ο-フタルアルデヒドと1,2-ジアセチルベンゼン1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子からは、5,14-ジメチルペンタセン-6,13-キノンが(式(5))、1,2-ジアセチルベンゼンと2-アセチルベンズアルデヒド1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子からは、5,7,14-トリメチルペンタセン-6,13-キノンが生成する(式(6))。
【化4】
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【化5】
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【化6】
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【0013】
さらにペンタセン誘導体として、1,2-ナフタレンジカルバルデヒド2分子と1、4-シクロヘキサンジオン1分子からは、ジベンゾペンタセン-6,13-キノンが(式(7))、ο-フタルアルデヒドと1,2-ナフタレンジカルバルデヒド1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子からは、ベンゾ[a]ペンタセン-6,13-キノンと他が生成する(式(8))。
【化7】
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【化8】
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【0014】
ヘキサセン誘導体として、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドとο-フタルアルデヒド1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子では、次の反応が進行し、へキサセン-7,14-キノンが(式(9))、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドと2-アセチルベンズアルデヒド1分子ずつと1、4-シクロヘキサンジオン1分子では、8-メチルへキサセン-7,14-キノンが(式(10))、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドと1、2-ジアセチルベンゼン1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子では、8,13-ジメチルへキサセン-7,14-キノンが生成する(式(11))。
【化9】
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【化10】
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【化11】
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【0015】
ヘプタセン誘導体として、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子で、次の反応が進行し、ヘプタセン-7,16-キノンが生成する(式(12))。
【化12】
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【0016】
高温高圧水は、常温常圧の有機溶媒に相当する低い誘電率を示すが、本発明者らは、温度150℃~500℃、圧力0.4MPa~100MPaの高温高圧水環境でポリアセン類の合成が効率よく、短時間で進行することを見出した。特に温度250℃以上、圧力4 MPa以上の高温高圧水環境でポリアセン類の合成が効率よく、短時間で進行することを見出した。
本発明で高温高圧水中、無触媒において、ο-フタルアルデヒド2分子と、1,4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、ペンタセン-6,13-キノンの生成、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドとο-フタルアルデヒド1分子ずつと1、4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、へキサセン-7,14-キノンの生成、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、ヘプタセン-7,16-キノンの生成を確認できたことにより、高温高圧水中で交差アルドール縮合反応が自発的に短時間で進行されることが明らかになった。また置換基を有するアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子から置換基を導入したポリアセン誘導体の生成を確認できたことにより、高温高圧水中で交差アルドール縮合反応が自発的に短時間で進行されることが明らかになった。
このことは、原料のジアルデヒドを変えることによって、各種多環式化合物、例えば3環のアントラキノン、4環のナフタセンキノン、5環のぺンタセンキノン、6環のヘキサセンキノン、7環のヘプタセンキノンおよびこれらの誘導体が自発的に短時間で合成されるものである。
【0017】
なお、ここで高温高圧水とは、水の超臨界状態ないし亜臨界状態をいい、水の超臨界状態とは、水の臨界点(臨界温度Tc=374度、臨界圧力Pc=22.1MPa)を超えて、液体と気体の境界線がなくなった状態のことをいう。また、亜臨界状態とは、温度が150℃以上374℃未満、圧力が0.4MPa以上22.1MPa未満の状態で、液体と気体が併存した状態のことをいう。
反応溶媒に使用する水としては、水道水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられるが、反応収率を向上させるためには、イオン交換水、純水、超純水を使用することが好ましく、イオン交換水、純水、超純水を脱気した状態で使用することがより好ましい。
【0018】
加熱してから所定時間経過後、回分式反応管を、氷浴または冷水浴等に浸すことにより急冷して反応を停止させる。氷浴の水温については特に制限はないが、例えば、0℃~10℃である。冷水浴の水温については特に制限はないが、例えば、10℃~25℃である。なお、ここで反応時間は、金属溶融塩浴に回分式反応管を投入した時点から氷浴または冷水浴に投入した時点までとする。つまり、反応時間には昇温時間も含まれる。昇温時間は、昇温過程での副反応の抑制等の点からできるだけ短い方が好ましく、通常は1分以内~3分以内に反応温度まで到達することがより好ましい。
【0019】
反応温度は、150℃以上であれば特に制限はないが、250℃以上であることが好ましく、水の臨界温度である374℃以上であることがより好ましい。反応温度が高いほど反応時間が短くなるため好ましいが、回分式反応管等の耐熱温度、安全性の問題等を考慮して反応温度を決めればよい。反応温度は、安全性の点から600℃以下であることが好ましく、500℃以下であることがより好ましく、450℃以下であることがさらに好ましい。
【0020】
圧力は、0.4MPa以上であれば特に制限はないが、4MPa以上であることが好ましく、水の臨界圧力である22.1MPa以上であることがより好ましい。反応圧力が高いほど反応時間が短くなるため好ましいが、回分式反応管等の耐圧性、安全性の問題等を考慮して反応圧力を決めればよい。
【0021】
反応時間は、反応温度と圧力との組合せにより決まることが多いため、反応温度と圧力(ここでは、使用する水の量)を調整することにより、所望の反応時間に制御することができる。したがって、反応時間については制限ないが、例えば、1分~20時間の間で設定することができる。上述したように、反応温度及び圧力が高いほど反応時間が短くなるため好ましい。また、副反応が起こる反応では反応時間を短くすることにより、副反応を抑制することができ、生成物の純度を向上することができるため好ましい。また、反応時間を短くすることで製造効率を向上させることができる。反応条件としては、例えば、反応温度250℃~450℃、反応圧力4MPa~50MPa、反応時間1~60分などという条件を設定することができる。
[実施例]
【0022】
以下には、ο-フタルアルデヒド2分子と、1,4-シクロヘキサンジオンを原料とする場合、ペンタセン-6,13-キノンを生成する反応、2,3-ナフタレンジカルバルデヒドとο-フタルアルデヒド1分子ずつと1,4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、へキサセン-7,14-キノンを生成する反応、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子を原料とする場合、ヘプタセン-7,16-キノンを生成する反応について本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0023】
<反応手順>
実験に用いた回分式反応管は、SUS316製、内容積10cm、最高使用条件は、温度537 ℃、圧力35MPaである。
反応管に超純水約1~6gとο-フタルアルデヒド約0.01~3g、1,4-シクロヘキサンジオン約0.01~3gを仕込み、密閉した後、所定温度に設定した金属溶融塩浴に投入することで反応を開始させた。温度は250~400℃、圧力は4~30 MPa、反応時間は1~30分(昇温時間約1分を含む)に設定した。
所定時間経過後、金属溶融塩浴から反応管を引き上げ、冷水浴で急冷し、反応を停止させた。その後回収液の一部をテトラヒドロフラン中に溶解させ、内部標準物質としてn-ヘキサノールを添加したのち、生成物について下記分析手段により定性・定量分析した。
【0024】
<分析手段(GC/MS)>
島津製作所社製GC(GC-2010)/MS(GCMS-QP2010)により生成物の定性、定量分析を行なった。注入量は、島津製作所製オートインジェクターAOC-20iを使用し、注入量は1μL、気化室の温度を340℃に設定し、カラム恒温槽内は60~280℃の温度範囲で20℃/minの速度で昇温させた。また、線速度を28cm/sec、スプリット比を100:1として分析を行った。カラムにはJ&W(Agilent Technologies)社製DB-5MSを使用した。
【実施例1】
【0025】
反応管に超純水3.6082g、ο-フタルアルデヒド0.2697g、1,4-シクロヘキサンジオン0.1182gを仕込み、温度250℃、圧力4MPaで20分反応させた。このときのο-フタルアルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオン、超純水のモル比は、1:0.5:100である。
反応生成物を定量分析、定量分析したクロマトグラフおよびマススペクトルの結果を図1、2に示す。図1は、実験試料(上段)と標準物質としての純物質ペンタセン-6,13-キノン(下段)についてのGC/MSクロマトグラフであり、横軸は保持時間である。図2は、実験試料(上段)と標準物質としての純物質ペンタセン-6,13-キノン(下段)についてのGC/MSマスクロマトグラフであり、横軸は分子量を示している。以上の結果からペンタセン-6,13-キノンの生成を確認できた。

【実施例2】
【0026】
ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセン-6,13-キノンを生成する反応に関して、最適条件を検討するために、実施例1において反応時間を1分から30分で変化させて反応させた。ペンタセン-6,13-キノンの収率結果を表1に示す。
この結果から、温度250℃、圧力4MPaの条件では、反応時間に応じて収率は上昇していくが、反応時間20分での高温高圧水中での反応においてペンタセン-6,13-キノンの収率が一番良いことが分かった。
【0027】
【表1】
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【実施例3】
【0028】
ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセン-6,13-キノンを生成する反応に関して、最適条件を検討するために、実施例2の反応時間を4分とした実験において、反応器内の空気をArガスで除去した後、反応させた。ペンタセン-6,13-キノンの生成を確認した結果を表2に示す。
この結果から、温度250℃、圧力4MPa、反応時間4分の条件では、反応器内の空気の除去により原料の酸化分解等の副反応が抑制され、ペンタセン-6,13-キノンの収率が良くなることが分かった。
【0029】
【表2】
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【実施例4】
【0030】
ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセン-6,13-キノンを生成する反応に関して、最適条件を検討するために、実施例2において温度、圧力のみを温度370℃、圧力21MPaに変えて反応させた。反応時間毎のペンタセン-6,13-キノンの収率結果を表3に示す。
この結果から、温度370℃、圧力21MPa、反応時間7分での高温高圧水中での反応によりペンタセン-6,13-キノンの収率が一番良いことが分かった。
【0031】
【表3】
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【実施例5】
【0032】
ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセン-6,13-キノンを生成する反応に関して、最適条件を検討するために、実施例2において温度、圧力のみを温度400℃、圧力30MPaに変えて反応させた。反応時間毎のペンタセン-6,13-キノンの収率結果を表4に示す。
この結果から、温度400 ℃、圧力30MPa、反応時間10分での高温高圧水中での反応によりペンタセン-6,13-キノンの収率が一番良いことが分かった。
【0033】
【表4】
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【実施例6】
【0034】
ο-フタルアルデヒド2分子と1,4-シクロヘキサンジオン1分子からペンタセン-6,13-キノンを生成する反応に関して、最適条件を検討するために、実施例1において反応管に超純水3.5392~3.6234g、ο-フタルアルデヒド0.5334~0.1114g、1,4-シクロヘキサンジオン0.2211~0.0457gを仕込み、温度250℃、圧力4MPaで20分反応させた。このときのο-フタルアルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオン、超純水のモル比は、表5に示すとおりである。モル比毎のペンタセン-6,13-キノンの収率結果を表5に示す。
この結果から、温度250℃、圧力4MPa、反応時間20分での高温高圧水中での反応では、ο-フタルアルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオン、水のモル比が、0.42:0.21:100のとき、収率が最大の51.5%と非常に生成効率が良くなっている。すなわちこのことは高温高圧水中での原料としてのο-フタルアルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオンの仕込み量が少ない場合の方が反応進行し収率が良いことが分かった。これは、仕込み原料濃度に対する水の解離により生成するOH濃度の割合が増加したことにより、効率よく反応が進行したためと考えている。
【0035】
【表5】
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【0036】
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【実施例7】
【0037】
反応管に超純水3.5743g、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド0.0457g、o-フタルアルデヒド0.0333g、1,4-シクロヘキサンジオン0.0556gを仕込み、温度250℃、圧力4MPaで20分反応させた。このときの2,3-ナフタレンジカルバルデヒド、o-フタルアルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオン、超純水のモル比は1:1:1:400である。
反応生成物を定性分析したGC/MSマスクロマトグラフを図3、アルデヒド成分及びジオン成分の転化率は表6に示す。図3については、目的物質であるヘキサセン-7,14-キノンの分子量である358とメインのピークが一致している結果からヘキサセン-7,14-キノンの生成を確認できた。
【0038】

【表6】
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【実施例8】
【0039】
反応管に超純水3.5743g、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド0.0913g、1,4-シクロヘキサンジオン0.0278gを仕込み、温度250℃、圧力4MPaで20分反応させた。このときの2,3-ナフタレンジカルバルデヒド、1,4-シクロヘキサンジオン、超純水のモル比は1:0.5:400である。
反応生成物を定性分析したGC/MSマスクロマトグラフを図4、アルデヒド成分及びジオン成分の転化率は表7に示す。図4については、目的物質であるヘプタセンン-7,16-キノンの分子量である408とメインのピークが一致している結果からヘプタセンン-7,16-キノンの生成を確認できた。
【0040】
【表7】
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【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のとおり、本発明によって、高温高圧水中、触媒無添加において、芳香族アルデヒド2分子と環状ケトン化合物からポリアセン類の合成反応が短時間のうちに進行することを見出した。この合成反応は、多環式化合物であるポリアセン類を合成する上で基本となる反応であるので、各種多環式化合物への反応に応用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1の生成物と標準物質のガスクロマトグラフィー。
【図2】実施例2の生成物と標準物質のGC/MS。
【図3】実施例7の生成物のGC/MS。
【図4】実施例8の生成物のGC/MS。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3