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明細書 :伝搬遅延時間測定システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5008041号 (P5008041)
登録日 平成24年6月8日(2012.6.8)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
発明の名称または考案の名称 伝搬遅延時間測定システム
国際特許分類 H04L  12/56        (2006.01)
H04L  29/14        (2006.01)
FI H04L 12/56 400B
H04L 13/00 315A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2009-516156 (P2009-516156)
出願日 平成19年12月25日(2007.12.25)
国際出願番号 PCT/JP2007/074831
国際公開番号 WO2008/146427
国際公開日 平成20年12月4日(2008.12.4)
優先権出願番号 2007140083
優先日 平成19年5月28日(2007.5.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年12月22日(2010.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】木原 雅巳
個別代理人の代理人 【識別番号】100119677、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 賢治
【識別番号】100115794、【弁理士】、【氏名又は名称】今下 勝博
審査官 【審査官】玉木 宏治
参考文献・文献 特開2001-111618(JP,A)
八木 敬宏 他,ボトルネックリンク速度推定ツールの提案と精度検証,情報処理学会研究報告 2003-QAI-6-17,2003年 2月 7日
八木 敬宏 他,UDPペアパケットを用いたボトルネックリンク速度推定ツールの提案,電子通信学会技術研究報告(信学技報) IN2003-92,2003年10月10日
調査した分野 H04L 12/00-66
H04L 29/14
特許請求の範囲 【請求項1】
送信時刻を格納した測定用パケットを複数連続して送信する伝搬遅延時間測定装置と、
前記伝搬遅延時間測定装置から送信された前記測定用パケットを前記伝搬遅延時間測定装置に返送する応答装置と、
を有する伝搬遅延時間測定システムであって、
前記応答装置は、直前の前記測定用パケットを受信した時刻から所定の時間内に受信した前記測定用パケットのみを前記伝搬遅延時間測定装置に返送し、
前記伝搬遅延測定装置は、前記応答装置から返送された前記測定用パケットを受信し、受信した前記測定用パケットのうちの少なくともいずれか1つを用いて前記伝搬遅延時間測定装置と前記応答装置との間の伝搬遅延時間を測定することを特徴とする伝搬遅延時間測定システム。
【請求項2】
送信時刻を格納した測定用パケットを複数連続して送信する伝搬遅延時間測定装置と、
前記伝搬遅延時間測定装置から送信された前記測定用パケットを前記伝搬遅延時間測定装置に返送する応答装置と、
を有する伝搬遅延時間測定システムであって、
前記伝搬遅延時間測定装置は、直前の前記測定用パケットを受信した時刻から所定の時間内に受信した前記測定用パケットのみを用いて伝搬遅延時間を測定することを特徴とする伝搬遅延時間測定システム。
【請求項3】
前記伝搬遅延時間測定装置は、直前の前記測定用パケットを受信した時刻から所定の時間内に受信した前記測定用パケットのみを用いて伝搬遅延時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の伝搬遅延時間測定システム。
【請求項4】
前記伝搬遅延時間測定装置は、受信した前記測定用パケットのうちのn個目の前記測定用パケットを用いて伝搬遅延時間を測定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝搬遅延時間測定システム(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。
【請求項5】
前記伝搬遅延時間測定装置は、受信した前記測定用パケットのうちのn個目以降の前記測定用パケットの全てを用いて伝搬遅延時間を測定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝搬遅延時間測定システム(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。
【請求項6】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記測定用パケットをm個(但し、3≦m≦連続して送信した測定用パケットの個数)送信し、
受信した前記測定用パケットを用いて伝搬遅延時間を測定し、測定した前記伝搬遅延時間同士の差で求められるパケット間伝搬遅延時間差を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝搬遅延時間測定システム。
【請求項7】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記mの値が可変であることを特徴とする請求項6に記載の伝搬遅延時間測定システム。
【請求項8】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記パケット間伝搬遅延時間差がゼロに集中する前記mの値を求め、当該mの値を用いて前記パケット間伝搬遅延時間差を算出することを特徴とする請求項7に記載の伝搬遅延時間測定システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットが往復する時間を測定する伝搬遅延時間測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信ネットワークの保守管理や携帯電話での測位のため、通信ネットワークにおいて伝搬遅延時間を測定している(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
図4に、従来の伝搬遅延時間の測定方法の概略図を示す。通信ネットワーク200では、サーバ210から測定用パケットaをクライアント220に送信する。その後、測定用パケットaを受信したクライアント220が測定用パケットaをサーバ210に返送し、これをサーバ210が受信し、測定用パケットaが往復する時間から通信ネットワーク200の伝搬遅延時間を測定することができる。

【特許文献1】特開2005-130256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の伝搬遅延時間の測定方法では、通信ネットワーク200に接続されたルータ等のネットワーク中継機器(不図示)の負荷及び処理状況に伝搬遅延時間が依存するため、測定用パケットaの送信タイミングによって伝搬遅延時間が大きく変動する問題がある。この問題は、通信ネットワーク200のトラフィックが少ない状態でも発生する。さらに、通信ネットワーク200のデータの送受信に与える影響を少なくするために測定用パケットaの送信タイミングをずらすと、この伝搬遅延時間の変動が大きくなってしまう。
【0005】
以下、この問題を具体的に説明する。図5に、通信ネットワークにおけるサーバとクライアントの伝搬遅延時間の関係を示す。図5の上段は、サーバの時間軸であり、図5の下段はクライアントの時間軸である。図5において、tsからts1及びtr1からtrまでは、サーバでの測定用パケットの処理時間である。また、tr2からts2まではクライアントでの測定用パケットの処理時間である。これら測定用パケットの処理時間は、測定用パケットの送信タイミングによって変化する。このため、測定される伝搬遅延時間は、その分布が変化するだけでなく、その絶対値も変化する。図6に、通信ネットワークにおける伝搬遅延時間の分布の変化の一例を示した。
【0006】
通信ネットワークのデータの送受信が影響を受けないように、通信ネットワークのトラフィックを測定しながら測定用パケットを送信する必要がある。一般的に、通信ネットワークでは、トラフィックが低い時ほど伝搬遅延時間の精度が高くなる。伝搬遅延時間は、ネットワーク中継機器のデジタル回路で発生するジッタやネットワーク中継機器のバッファメモリによって変動するので、複数回測定して統計的処理を施す必要がある。このとき、通信ネットワークのトラフィックが変動して測定用パケットの送信タイミングが変化すると、測定される伝搬遅延時間も大きく変動する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、精度の高い伝搬遅延時間を測定できる伝搬遅延時間測定システムを提供することを目的とする。
【0008】
発明者は、測定用パケットを複数連続して送信すると伝搬遅延時間の変動が小さくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
具体的には、本発明に係る伝搬遅延時間測定システムは、送信時刻を格納した測定用パケットを複数連続して送信する伝搬遅延時間測定装置と、前記伝搬遅延時間測定装置から送信された前記測定用パケットを前記伝搬遅延時間測定装置に返送する応答装置と、を有する伝搬遅延時間測定システムであって、前記伝搬遅延時間測定装置は、前記応答装置から返送された前記測定用パケットを受信し、受信した前記測定用パケットのうちの少なくともいずれか1つを用いて前記伝搬遅延時間測定装置と前記応答装置との間の伝搬遅延時間を測定することを特徴とする。
【0010】
上記伝搬遅延時間測定システムは、精度の高い伝搬遅延時間を測定することができる。
【0011】
本発明に係る伝搬遅延時間測定システムでは、前記応答装置は、直前の前記測定用パケットを受信した時刻から所定の時間内に受信した前記測定用パケットのみを前記伝搬遅延時間測定装置に返送することが好ましい。
【0012】
上記伝搬遅延時間測定システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0013】
本発明に係る伝搬遅延時間測定システムでは、前記伝搬遅延時間測定装置は、直前の前記測定用パケットを受信した時刻から所定の時間内に受信した前記測定用パケットのみを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい。
【0014】
上記伝搬遅延時間測定システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0015】
本発明に係る伝搬遅延時間測定システムでは、前記伝搬遅延時間測定装置は、受信した前記測定用パケットのうちのn個目の前記測定用パケットを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。
【0016】
上記伝搬遅延時間測定システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0017】
本発明に係る伝搬遅延時間測定システムでは、前記伝搬遅延時間測定装置は、受信した前記測定用パケットのうちのn個目以降の前記測定用パケットの全てを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。
【0018】
上記伝搬遅延時間測定システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0019】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記測定用パケットをm個(但し、3≦m≦連続して送信した測定用パケットの個数)送信し、受信した前記測定用パケットを用いて伝搬遅延時間を測定し、測定した前記伝搬遅延時間同士の差で求められるパケット間伝搬遅延時間差を算出することが好ましい。
クロストラフィックによって伝搬遅延時間に遅れが生じた場合、パケット間伝搬遅延時間差はゼロ近傍から外れる。パケット間伝搬遅延時間差がゼロ近傍となった組合せに共通する伝搬遅延時間を判定することで、クロストラフィックの生じていない測定用パケットを抽出することができる。これにより、クロストラフィックに影響されない安定な伝搬遅延時間の測定をすることができる。さらに、クロストラフィックが生じているかいないかを判断するための閾値をゼロを中心に設定することができる。
【0020】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記mの値が可変であることが好ましい。
mの値が増えると、伝搬遅延時間の組合せの総数が増える。伝搬遅延時間の組合せの総数が可変であることで、クロストラフィックの影響をより少なくすることができる。
【0021】
前記伝搬遅延時間測定装置は、前記パケット間伝搬遅延時間差がゼロに集中する前記mの値を求め、当該mの値を用いて前記パケット間伝搬遅延時間差を算出することが好ましい。
伝搬遅延時間の組合せの総数が増えると、パケット間伝搬遅延時間差がゼロ近傍となる伝搬遅延時間の組合せの数は増える。パケット間伝搬遅延時間差がゼロ近傍に集中するmの値を用いてパケット間伝搬遅延時間差を算出することで、クロストラフィックの影響の少ない伝搬遅延時間を測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、精度の高い伝搬遅延時間を測定できる伝搬遅延時間測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システムの概略図である。
【図2】伝搬遅延時間測定システムの応答装置の概略図である。
【図3】伝搬遅延時間測定システムの伝搬遅延時間測定装置の概略図である。
【図4】従来の伝搬遅延時間の測定方法の概略図である。
【図5】通信ネットワークにおけるサーバとクライアントの伝搬遅延時間の関係を示す図である。
【図6】通信ネットワークにおける伝搬遅延時間の分布の変化の一例を示すグラフである。
【図7】測定用パケットを1個送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図8】測定用パケットを2個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図9】測定用パケットを3個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図10】測定用パケットを4個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図11】測定用パケットを5個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図12】測定用パケットを10個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示すグラフである。
【図13】送信する測定用パケットの個数と伝搬遅延時間のピーク値の関係を示すグラフである。
【図14】送信する測定用パケットの個数と伝搬遅延時間の最小値の関係を示すグラフである。
【図15】伝搬遅延時間測定システムの第2の概略図である。
【図16】伝搬遅延時間測定装置の送受信する測定用パケットの説明図である。
【図17】パケット間伝搬遅延時間差の分布の一例を示すグラフである。
【図18】クロストラフィックなどの遅延の影響を受けている伝搬遅延時間の抽出方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
100 伝搬遅延時間測定システム
101 伝搬遅延時間測定システム
110 伝搬遅延時間測定装置
111 伝搬遅延時間測定装置
120 応答装置
130a、130b ルータ
200 通信ネットワーク
210 サーバ
220 クライアント
a、a1、a2、a3 測定用パケット
b 直前の測定用パケット
ΔT 遅延
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、具体的に実施形態を示して本願発明を詳細に説明するが、本願の発明は以下の記載に限定して解釈されない。なお、同一の機器には同一の符号を付した。
【0026】
図1に、本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システムの概略図を示した。本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システム100は、送信時刻を格納した測定用パケットaを複数連続して送信する伝搬遅延時間測定装置110と、伝搬遅延時間測定装置110から送信された測定用パケットaを伝搬遅延時間測定装置110に返送する応答装置120と、を有する伝搬遅延時間測定システム100であって、伝搬遅延時間測定装置110は、応答装置120から返送された測定用パケットaを受信し、受信した測定用パケットaのうちの少なくともいずれか1つを用いて伝搬遅延時間測定装置110と応答装置120との間の伝搬遅延時間を測定する。
【0027】
伝搬遅延時間測定装置110は、例えば、サーバ、ワークステーション又はホストコンピュータがある。伝搬遅延時間測定装置110は、例えば、CPU等の演算装置、メモリ、ハードディスク等の記憶手段、マウス、キーボード、ディスプレイ、プリンタ等の入出力手段、LANポート等の通信インターフェースを有する(不図示)。なお、伝搬遅延時間測定装置110は、伝搬遅延時間を測定する機能を有すればよく、複数であっても良い。
【0028】
応答装置120としては、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ又はホストコンピュータがある。応答装置120は、例えば、演算装置、記憶手段、入出力手段及び通信インターフェースを有する。
【0029】
図1は、伝搬遅延時間測定装置110と応答装置120が1対1で接続された例である。伝搬遅延時間測定システム100では、1台の伝搬遅延時間測定装置110に複数の応答装置120が接続されても良い。この場合、伝搬遅延時間測定システム100は、伝搬遅延時間測定装置110とそれぞれの応答装置120の間の伝搬遅延時間を測定することができる。
【0030】
測定用パケットaは、伝搬遅延時間測定装置110での送信時刻が格納される。伝搬遅延時間測定システム100がTCP/IPを利用するのであれば、測定用パケットaは、例えば、送信時刻、識別番号、ポート番号、伝搬遅延時間測定装置110のIPアドレス、及び、応答装置120のIPアドレスが格納される。伝搬遅延時間測定装置110は、測定用パケットaの送信時刻と返送された測定用パケットaを受信した時刻の差から伝搬遅延時間を測定することができる。また、応答装置120は、測定用パケットaを返送する際、返送時刻を測定用パケットに記録することが好ましい。伝搬遅延時間測定システム100は、伝搬遅延時間測定装置110から応答装置120までの往路と応答装置120から伝搬遅延時間測定装置110までの復路の伝搬遅延時間をそれぞれ測定することができる。なお、測定用パケットaは、データを格納しても良い。
【0031】
図1では、伝搬遅延時間測定装置110は、測定用パケットaを2個連続して送信している。図7に、測定用パケットを1個送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示した。また、図8~図12に、測定用パケットをそれぞれ2,3,4,5,10個連続して送信した場合の伝搬遅延時間のピーク値と伝搬遅延時間の分布の関係を示した。図7~図12から、連続送信する測定用パケットの個数を増やすと伝搬遅延時間の分布が狭くなり、それが安定することがわかる。図13に、送信する測定用パケットの個数と伝搬遅延時間のピーク値の関係を示した。また、図14に、送信する測定用パケットの個数と伝搬遅延時間の最小値の関係を示した。図13及び図14から、送信する測定用パケットの個数が3個から5個の範囲で伝搬遅延時間のピーク値及び最小値が最小となることがわかる。以上より、測定用パケットは、3個から5個連続して送信することが好ましく、3個連続して送信することがより好ましい。なお、測定用パケットaは、5個以上連続して送信して良いことは言うまでもない。
【0032】
図1の伝搬遅延時間測定装置110は、それぞれの測定用パケットaを送信する時刻を送信時刻として測定用パケットaに記録する。そして、伝搬遅延時間測定装置110は、測定用パケットaの送信時刻と、返送されたその測定用パケットaを受信した時刻の差から伝搬遅延時間を測定することができる。測定用パケットaを連続して複数送信することで、伝搬遅延時間測定システム100は、測定用パケットaの送信タイミングの変化による伝搬遅延時間の分布の変動を最小限に抑え、精度が高い伝搬遅延時間を測定することができる。さらに、伝搬遅延時間測定システム100は、測定用パケットaの送信タイミングを監視及び制御する手間を無くすことができる。
【0033】
通常、ネットワーク中継機器(不図示)は、中継する測定用パケットaやデータを一時的に保存するバッファメモリを有する。測定用パケットaがバッファメモリに保存されることで応答装置120に到着する時間が遅くなり、その間に伝搬遅延時間も大きく変動する。以下、複数の測定用パケットaを連続して送信することで、測定される伝搬遅延時間の精度が高くなる理由について述べる。測定用パケットaをバッファメモリに保存されたとしても、測定用パケットaが連続していることからバッファメモリが直ぐにあふれそうになる。このため、バッファメモリの空き領域を確保するため、ネットワーク中継機器は、バッファメモリに保存された測定用パケットaを直ぐに送信し、測定用パケットaがバッファメモリに保存される時間を極めて短くすることができると推測される。すなわち、伝搬遅延時間測定システム100は、複数の測定用パケットaを連続して送信することで、測定用パケットaがバッファメモリに保存されない又は極めて短い時間しか保存されないようにして、精度が高い伝搬遅延時間の測定を可能としている。
【0034】
本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システム100では、伝搬遅延時間測定装置110は、受信した測定用パケットaのうちのn個目の測定用パケットaを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。また、伝搬遅延時間測定装置110は、最後に送信した測定用パケットaを用いて伝搬遅延時間を測定することがより好ましい。例えば、伝搬遅延時間測定装置110が3個の測定用パケットaを連続して送信した場合、伝搬遅延時間測定装置110は、3個目の測定用パケットaのみを用いて伝搬遅延時間を測定する。通常、1個目の測定用パケットaの伝搬遅延時間は、2個目以降の測定用パケットaの伝搬遅延時間よりも精度が低い。そして、2個目、3個目と後に送信した測定用パケットaほど、伝搬遅延時間の精度が高くなる。これによって、伝搬遅延時間測定100システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システム100では、伝搬遅延時間測定装置110は、受信した測定用パケットaのうちのn個目以降の測定用パケットaの全てを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい(但し、2≦n≦連続して送信した測定用パケットの個数)。例えば、伝搬遅延時間測定装置110が5個の測定用パケットaを連続して送信した場合、伝搬遅延時間測定装置110は、3個目移行の測定用パケットaの全てを用いて伝搬遅延時間を測定する。この場合、伝搬遅延時間測定装置110は、全ての測定用パケットaの伝搬遅延時間を測定し、これらを平均しても良い。また、伝搬遅延時間測定装置110は、複数の測定用パケットaのうち最小の伝搬遅延時間のものを伝搬遅延時間としても良い。さらに、伝搬遅延時間測定装置110は、複数の測定用パケットaのうち最大の伝搬遅延時間のものを伝搬遅延時間としても良い。複数の測定用パケットaを用いて伝搬遅延時間を測定するので、伝搬遅延時間測定100システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0036】
図2に、伝搬遅延時間測定システムの応答装置の概略図を示した。応答装置120は、測定用パケットaを受信したら直ぐに返送しても良い。また、本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システム100では、応答装置120は、直前の測定用パケットbを受信した時刻から所定の時間内に受信した測定用パケットaのみを伝搬遅延時間測定装置(不図示)に返送することが好ましい。図2では、伝搬遅延時間測定装置が2個の測定用パケットaを送信し、直前の測定用パケットbが既に応答装置120で受信され、2個目の測定用パケットaを受信するところである。また、図2では、遅延ΔTは、直前の測定用パケットbと測定用パケットaの受信時刻の差である。
【0037】
遅延ΔTが小さいときは、測定する伝搬遅延時間に与える影響は少ない。一方、遅延ΔTが大きくなると、測定する伝搬遅延時間の精度を低下させる。このため、遅延ΔTが所定の時間内に測定用パケットaのみ伝搬遅延時間測定装置に返送する。これによって、伝搬遅延時間測定装置120での伝搬遅延時間のばらつきを低減し、伝搬遅延時間測定100システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0038】
なお、応答装置120における所定の時間内とは、例えば、1秒以上、3秒以下である。
【0039】
図3に、伝搬遅延時間測定システムの伝搬遅延時間測定装置の概略図を示した。本実施形態に係る伝搬遅延時間測定システム100では、伝搬遅延時間測定装置110は、直前の測定用パケットbを受信した時刻から所定の時間内に受信した測定用パケットaのみを用いて伝搬遅延時間を測定することが好ましい。図2と同様に、伝搬遅延時間測定装置120が測定する伝搬遅延時間のばらつきを低減し、伝搬遅延時間測定100システムは、伝搬遅延時間の精度をより高くすることができる。
【0040】
なお、伝搬遅延時間測定装置110における所定の時間内とは、例えば、1秒以上、6秒以下である。
【0041】
図15に、伝搬遅延時間測定システムの第2の概略図を示した。伝搬遅延時間測定システム101では、伝搬遅延時間測定装置111と応答装置120の間にルータ130a及び130bが配置されている点で図1に示した伝搬遅延時間測定システム100と異なる。伝搬遅延時間測定装置111と応答装置120は、伝搬遅延時間測定システム100で説明したように、ルータ130a及び130bを介して測定用パケットaの送受信を行う。ここで、測定用パケットaは、連続した3個以上の測定用パケットで構成される。
【0042】
伝搬遅延時間測定システム101では、ルータ130a及びルータ130bの間でクロストラフィックが生じることがある。このため、例えば測定用パケットaの伝送時にクロストラフィックが生じると、測定用パケットaの伝搬遅延時間が遅くなる。伝搬遅延時間測定装置111は、図1で説明した伝搬遅延時間測定装置110に加え、クロストラフィックの影響を排除することを特徴とする。以下、伝搬遅延時間測定装置111の詳細について説明する。
【0043】
図16に、伝搬遅延時間測定装置の送受信する測定用パケットの説明図を示す。伝搬遅延時間測定装置は、m個の測定用パケットa1、a2、a3を送受信する。ここで、mは、3以上でありかつ連続して送信した測定用パケットの個数以下の整数である。本実施形態では、m=3とするが、4以上であることで、クロストラフィックの影響を排除する効果をより高めることができる。
【0044】
伝搬遅延時間測定装置は、受信した測定用パケットa1、a2、a3を用いて伝搬遅延時間を測定する。伝搬遅延時間測定装置が測定用パケットa1、a2、a3を送信する時刻は、それぞれ、時刻TS(1)、TS(2)、TS(3)である。伝搬遅延時間測定装置が測定用パケットa1、a2、a3を受信する時刻は、それぞれ、時刻TR(1)、TR(2)、TR(3)である。このとき、測定用パケットa1の伝搬遅延時間Δt1は、時刻TR(1)-時刻TS(1)によって算出される。測定用パケットa2、a3についても同様にして、測定用パケットa2の伝搬遅延時間Δt2及び測定用パケットa3の伝搬遅延時間Δt3が算出される。
【0045】
そして、伝搬遅延時間測定装置は、測定した伝搬遅延時間同士の差で求められるパケット間伝搬遅延時間差を算出する。たとえば、伝搬遅延時間Δt1と伝搬遅延時間Δt2の差を算出することによって、測定用パケットa1と測定用パケットa2のパケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,2を算出する。同様に、伝搬遅延時間Δt1と伝搬遅延時間Δt3の差を算出することによって、測定用パケットa1と測定用パケットa3のパケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,3を算出する。伝搬遅延時間Δt2と伝搬遅延時間Δt3の差を算出することによって、測定用パケットa2と測定用パケットa3のパケット間伝搬遅延時間差ΔBB2,3を算出する。伝搬遅延時間の組合せごとのパケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,2、ΔBB1,3、ΔBB2,3を算出する。
【0046】
ここで、パケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,2、ΔBB1,3、ΔBB2,3は、上記算出手順に限定されない。たとえば、パケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,2は、測定用パケットa1の送信時刻TS(1)と測定用パケットa2の送信時刻TS(2)の時間差ΔBS1,2を測定し、測定用パケットa1の受信時刻TR(1)と測定用パケットa2の受信時刻TR(2)の時間差ΔTR1,2を測定し、時間差ΔBS1,2と時間差ΔTR1,2の差によっても算出することができる。測定用パケットa1、a2、a3について、クロストラフィックなどの何らの障害も生じなければ、パケット間伝搬遅延時間差ΔBB1,2、ΔBB1,3、ΔBB2,3はゼロとなる。
【0047】
図17に、パケット間伝搬遅延時間差の分布の一例を示す。伝搬遅延時間測定装置や応答装置などにおけるネットワークデバイス内で遅延を受けると、パケット間伝搬遅延時間差ΔBBの分布は、図17(a)に示すように、ゼロを頂点とする分布になる。しかし、ネットワークデバイス内での遅延やクロストラフィックなどの遅延が生じると、パケット間伝搬遅延時間差ΔBBは、ゼロから外れる。そして、遅延が大きいほど、パケット間伝搬遅延時間差ΔBBの数値は大きくなる。例えば、クロストラフィックが生じると、パケット間伝搬遅延時間差ΔBBの分布は、図17(b)に示すように、ゼロ近傍から外れた位置にも頂点が現れる。
【0048】
パケット間伝搬遅延時間差ΔBBがゼロ近傍となる伝搬遅延時間の組をフィルタリングすることで、クロストラフィックの影響を受けていない伝搬遅延時間を抽出することができる。ゼロ近傍は、例えば、ゼロを中心とする一定範囲αを閾値としたΔBB<0±αで表される範囲である。一定範囲αは、クロストラフィックの影響のみを排除するのか、または、伝搬遅延時間測定装置111内での遅延を許容するのかによって変えることができる。パケット間伝搬遅延時間差ΔBBの値によってフィルタリングすれば、閾値の絶対値を毎回設定する必要はない。さらにどのようなネットワークであっても一定の閾値αで対応することができる。
【0049】
パケット間伝搬遅延時間差ΔBBがゼロ近傍となる伝搬遅延時間の組であっても、クロストラフィックの影響を受けているものもある。例えば、共通のクロストラフィックの影響を受けた伝搬遅延時間の組合せである。伝搬遅延時間測定装置111は、この組合せをさらに排除することが好ましい。
【0050】
図18は、クロストラフィックなどの遅延の影響を受けている伝搬遅延時間の抽出方法の一例を示す説明図である。パケット間伝搬遅延時間差がゼロ近傍であった伝搬遅延時間の組合せをポイント1、パケット間伝搬遅延時間差がゼロ近傍ではなかった伝搬遅延時間の組合せをゼロポイントとして、伝搬遅延時間の組合せごとにポイントを加算していく。そして、ポイントが一定以上となった伝搬遅延時間を選択する。例えば、図16で説明したmが3の例では、ポイントが2以上となった伝搬遅延時間Δt1及びΔt3を選択する。選択した伝搬遅延時間Δ1、Δ3だけから伝搬遅延時間を再度算出することで、クロストラフィックの影響の少ない伝搬遅延時間を測定することができる。
【0051】
図15に示す伝搬遅延時間測定装置111では、さらに、mの値が可変であることが好ましい。さらに、伝搬遅延時間測定装置111では、パケット間伝搬遅延時間差がゼロに集中するmの値を求め、当該mの値を用いてパケット間伝搬遅延時間差を算出することが好ましい。例えば、mの値を増加させ、伝搬遅延時間の組合せの総数が増えると、パケット間伝搬遅延時間差ΔBBの分布が明確になる。パケット間伝搬遅延時間差ΔBBがゼロ近傍となった回数が一定数を超えたか否かを判定することで、クロストラフィックの影響を受けていない測定用パケットをより正確に特定することができる。そして、測定用パケットの数が1からmまでの伝搬遅延時間の組合せのパケット間伝搬遅延時間差ΔBBからクロストラフィックの影響を受けていない伝搬遅延時間をフィルタリングする。mの値を変化させることでパケット間伝搬遅延時間差ΔBBの分布が明確になるので、伝搬遅延時間測定装置111は、クロストラフィックの影響を受けていない伝搬遅延時間を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る伝搬遅延時間測定システムは、パケット通信を行う通信ネットワークの保守及び管理に利用することができる。特に、本発明に係る伝搬遅延時間測定システムは、通信ネットワークの特性、接続状況の確認やトラブルシューティングに利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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