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明細書 :ノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒並びにノルボルネン系付加重合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4997655号 (P4997655)
公開番号 特開2011-202153 (P2011-202153A)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月8日(2012.8.8)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
発明の名称または考案の名称 ノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒並びにノルボルネン系付加重合体の製造方法
国際特許分類 C08F   4/70        (2006.01)
C08F  32/04        (2006.01)
FI C08F 4/70
C08F 32/04
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2011-036048 (P2011-036048)
出願日 平成23年2月22日(2011.2.22)
優先権出願番号 2010046551
優先日 平成22年3月3日(2010.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年12月8日(2011.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】若槻 康雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100066980、【弁理士】、【氏名又は名称】森 哲也
【識別番号】100109380、【弁理士】、【氏名又は名称】小西 恵
【識別番号】100103850、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
【識別番号】100116012、【弁理士】、【氏名又は名称】宮坂 徹
審査官 【審査官】牧野 晃久
参考文献・文献 国際公開第2008/121804(WO,A1)
特開2009-227810(JP,A)
特開2007-246914(JP,A)
特開2007-077279(JP,A)
韓国公開特許第2011-0019054(KR,A)
特表2002-531648(JP,A)
調査した分野 C08F 4/00- 4/82
C08F 32/00- 32/08
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ノルボルネン又は置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とするノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
【請求項2】
下記化学式(I)で表されるノルボルネン系モノマーの付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とするノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
【化1】
JP0004997655B2_000007t.gif
ただし、化学式(I)中のRは、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基,フェニル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシル基,エステル基,アルキルオキシカルボニル基,アリールオキシカルボニル基,カルボキシル基,ホルミル基,水酸基,アミノ基,イミノ基,アミド基,シアノ基,メルカプト基,スルフィド基,ジスルフィド基,スルホニル基,ハロゲン基,又は水素原子である。
【請求項3】
3級ホスフィンをさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
【請求項4】
0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、及び、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムの少なくとも一方を触媒として用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを助触媒として用いて、ノルボルネン及び置換基が導入されたノルボルネン誘導体のうち少なくとも前記ノルボルネン誘導体からなるモノマーを付加重合することを特徴とするノルボルネン系付加重合体の製造方法。
【請求項5】
3級ホスフィンを安定化剤として用いることを特徴とする請求項4に記載のノルボルネン系付加重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ノルボルネン誘導体が5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチルであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のノルボルネン系付加重合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系モノマーの付加重合に好適なパラジウム触媒に関する。また、本発明は、ノルボルネン系付加重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)の付加重合体は、優れた耐熱性と透明性とを併せ持つ安価なプラスチック材料として期待されているものの、脆さや溶媒溶解性の低さが問題となって工業化には至っていない。そこで、脆さや溶媒溶解性を改良するために、エステル基等の置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合体について、活発に研究が行われている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特再2006-64814号公報
【特許文献2】特開平8-198919号公報
【0004】

【非特許文献1】Wakatsuki, Macromol. Rapid Commun.,2006,27,p.1752
【非特許文献2】Nozaki et al.,Organometallics,2006,25,p,4588-4595
【非特許文献3】Blank et al., Coordination Chemistry Reviews,2009,253,p.827-861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エステル基等の極性置換基が導入されたノルボルネン誘導体は、置換基を有しないノルボルネン(以降は無置換ノルボルネンと記すこともある)と比べて重合性が著しく低いので、無置換ノルボルネンの付加重合に従来使用されていた種々の金属錯体触媒(例えば、シクロペンタジエニルが2価のパラジウムに配位した錯体)の触媒活性は、ノルボルネン誘導体の付加重合及び無置換ノルボルネンとノルボルネン誘導体の付加共重合に対しては十分とは言えなかった。
【0006】
その中でも、2価のパラジウム錯体触媒についてはいくつかの前例はあるものの、極性置換基が導入されたノルボルネン誘導体に対して使用される従来の2価のパラジウム錯体触媒は、高価であることに加えて、製造や取り扱いが難しいという問題点を有していた。さらに、従来の2価のパラジウム錯体触媒は溶媒溶解性が低いので、溶解力は高いものの有害なハロゲン系溶媒(例えばクロロホルム)を重合溶媒として使用する必要があった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、無置換ノルボルネンのみならず極性置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合に対しても十分な触媒活性を有するとともに、安価で化学的安定性が高く、しかも溶媒溶解性に優れるノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を提供することを課題とする。
【0007】
また、有害なハロゲン系溶媒を重合溶媒として使用する必要が無いことに加えて、重合性が低いノルボルネン誘導体を付加重合することができるノルボルネン系付加重合体の製造方法を提供することを併せて課題とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム錯体触媒は、ノルボルネン又は置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム錯体触媒は、下記化学式(I)で表されるノルボルネン系モノマーの付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】
JP0004997655B2_000002t.gif

【0011】
ただし、化学式(I)中のRは、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基,フェニル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシル基,エステル基,アルキルオキシカルボニル基,アリールオキシカルボニル基,カルボキシル基,ホルミル基,水酸基,アミノ基,イミノ基,アミド基,シアノ基,メルカプト基,スルフィド基,ジスルフィド基,スルホニル基,ハロゲン基,又は水素原子である。
【0012】
また、本発明に係るノルボルネン系付加重合体の製造方法は、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、及び、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムの少なくとも一方を触媒として用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを助触媒として用いて、ノルボルネン及び置換基が導入されたノルボルネン誘導体のうち少なくとも前記ノルボルネン誘導体からなるモノマーを付加重合することを特徴とする。
このような本発明に係るノルボルネン系付加重合体の製造方法においては、前記ノルボルネン誘導体を5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチルとすることができる
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、無置換ノルボルネンのみならずノルボルネン誘導体の付加重合に対しても十分な触媒活性を有するとともに、安価で化学的安定性が高く、しかも溶媒溶解性に優れる。
また、本発明に係るノルボルネン系付加重合体の製造方法は、有害なハロゲン系溶媒を重合溶媒として使用する必要が無いことに加えて、重合性が低いノルボルネン誘導体を付加重合することができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ノルボルネン誘導体の付加重合反応を示す化学反応式である。
【図2】無置換ノルボルネンとノルボルネン誘導体の付加共重合反応を示す化学反応式である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムである。ノルボルネン系付加重合用の触媒としていずれか一方を使用してもよいし、両方を併用してもよい。
このようなノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、2価のパラジウム錯体を還元し0価のパラジウムとしつつ、配位子であるジベンジリデンアセトン(1,5-ジフェニル-1,4-ペンタジエン-3-オン、以下dbaと略記することもある)を配位させて錯体とすることにより製造することができる。

【0017】
得られた0価のパラジウム錯体を単離してもよいが、単離しなくても、系中で2価のパラジウム錯体を還元して0価のパラジウム種が発生した状態であれば、同様な触媒作用が期待できる。ジベンジリデンアセトンは、市販品(例えばAldrich 社が販売している)を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
このようなノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、化学的に非常に安定であるので、合成や取り扱いが容易である。また、安価であるとともに、溶媒溶解性に優れる。

【0018】
さらに、このノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、無置換ノルボルネンのみならずノルボルネン誘導体の付加重合に対しても十分な触媒活性を有する。よって、無置換ノルボルネンやノルボルネン誘導体やこれら両者のコモノマーの付加重合に好適であり、重合性の低いノルボルネン誘導体であっても問題なく重合させて、高分子量の付加(共)重合体を得ることができる。共重合させるモノマーの種類は、全部で2種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。

【0019】
例えば、エステル基のような極性基が導入されたノルボルネン誘導体は、無置換ノルボルネンと比べて重合性が低いが、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を用いれば、高分子量の付加(共)重合体を得ることができる。図1に、ノルボルネンの5位に置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合反応を示す化学反応式を、図2に、無置換ノルボルネンと前記ノルボルネン誘導体の付加共重合反応を示す化学反応式を図示する。これらの化学反応式における置換基Rは、前記化学式(I)中のRと同様である。

【0020】
さらに、ノルボルネン誘導体と、エチレン,プロピレン,スチレン等の他のオレフィン系モノマーとを共重合することも可能である。
なお、本発明においては、無置換ノルボルネンとノルボルネン誘導体とを総称してノルボルネン系モノマーと記すこともある。また、本発明においては、ノルボルネン誘導体の付加重合体と、該ノルボルネン誘導体及び無置換ノルボルネンの付加共重合体とを総称して、ノルボルネン系付加重合体と記す。

【0021】
このノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒により付加重合が可能なノルボルネン系モノマーの種類は特に限定されるものではないが、前記化学式(I)で表されるノルボルネン系モノマーが好適である。代表例としては、化学式(I)中のRがメチルエステル基である5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチルがあげられる。もちろんRは、メチルエステル基に限らず、エチルエステル基等のアルキルエステル基でもよい。

【0022】
このようなノルボルネン系モノマーの付加重合においては、助触媒を用いてもよい。助触媒としては、ホウ素化合物が好適である。具体例としては、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([Ph3 C][B(C6 F5 )4 ])、トリチルテトラキス(フルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等があげられる。助触媒の使用量は特に限定されるものではないが、触媒と等モル量が好ましい。

【0023】
さらに、触媒の安定化剤を用いてもよい。安定化剤としては3級ホスフィン(PR3 )が好適である。3級ホスフィンのRは特に限定されるものではなく、アルキル基やフェニル基が例としてあげられる。安定化剤の使用により、触媒活性や分子量を制御することが可能である。
付加重合を行う際には、ノルボルネン系モノマー,重合溶媒,触媒,助触媒,安定化剤等を混合するが、その混合順序は特に限定されない。

【0024】
付加重合を溶液中で行う場合には、重合溶媒が使用される。重合溶媒の種類は特に限定されるものではなく、ペンタン,ヘキサン,ヘプタンなどの脂肪族炭化水素や、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素や、ベンゼン,トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素が使用可能である。また、ジクロロメタン,クロロホルム,クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素や、ニトロメタン,ニトロベンゼン,アセトニトリルなどの含窒素系炭化水素や、ジエチルエーテル,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類が使用可能である。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。

【0025】
ただし、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、溶媒溶解性が優れているので、溶解力が高いハロゲン化炭化水素を使用する必要はなく、溶解力がさほど高くない炭化水素(脂肪族炭化水素,脂環式炭化水素,芳香族炭化水素)でも問題なく使用することができる。有害なハロゲン化炭化水素を使用する必要がないので、廃溶媒の後処理等が簡便になる。

【0026】
また、重合温度は特に制限されるものではなく、室温(25℃程度)で問題なく重合することができる。ただし、触媒活性,ノルボルネン系モノマーの重合性によっては、加熱下で重合を行ってもよい。また、重合速度や分子量などを調節したい場合にも、重合温度を調整するとよい。重合温度が高すぎると、触媒の活性が低下したり、付加重合体が劣化するおそれがあるので、150℃程度を上限とすることが好ましい。

【0027】
このようにして得られたノルボルネン系付加重合体は、ノルボルネン誘導体のホモポリマー又はノルボルネン誘導体と無置換ノルボルネンのコポリマーであるので、優れた耐熱性と透明性とを併せ持ち且つ安価であることに加えて、靱性を有し溶媒溶解性が高い。例えば、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチルのホモポリマーや、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチルと無置換ノルボルネンのコポリマーは、上記のような優れた性能を有している。このような性能を有するノルボルネン系付加重合体は、例えば、エンジニアリングプラスチック、耐衝撃性耐熱性プラスチックとして使用可能である。また、電子部品、エアコンディショナー用フィルターの材料として使用可能である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示して、本発明を具体的に説明する。本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を用いて、ノルボルネン系モノマーの付加重合を行った。使用した薬品等は以下の通りである。
(1)触媒
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2 )は、文献 (T. Ukai, H. Kawazura, Y. Ishii, J. Organometal. Chem. 65 (1974) 253) に従って合成した。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2 (dba)3 )は、Aldrich 社製の市販品を使用した。なお、上記文献に従って簡便に合成したビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムをクロロホルム中で再結晶すると、クロロホルム付加体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・CHCl3 が得られ、これも市販されている。
【実施例】
【0029】
(2)助触媒
トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、Strem 社製のものを使用した。
(3)安定化剤
3級ホスフィン(PR3 )であるトリフェニルホスフィン(RがPh基),トリシクロヘキシルホスフィン(RがC6 H11基)については、市販品を使用した。また、ジベンジリデンアセトンについては、Aldrich 社製の市販品を使用した。
【実施例】
【0030】
(4)モノマー
無置換ノルボルネン(以降はNBと記す)は、Aldrich 社製のものを使用した。5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル(以降はNBCと記す)は、Aldrich 社製のものを使用した。endo/exo比は約0.75であった。
(5)重合溶媒
ナトリウムケチルと還流した後に蒸留して精製したトルエン、又は、市販のトルエンにアルゴン若しくは窒素ガスをバブリングし脱酸素したものを使用した。
【実施例】
【0031】
〔実施例1〕
NBの付加重合体(ホモポリマー)を製造した例を説明する。アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NB 1.0g(10.64mmol)のトルエン溶液6mLを入れ、Pd(dba)2 1.2mg(2.09μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.92mg(2.08μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、室温で5分間攪拌した。
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、2時間減圧乾燥すると、1.0gのポリノルボルネンが得られた。得られたポリノルボルネンは、テトラヒドロフラン、クロロホルムに不溶であった。
【実施例】
【0032】
〔実施例2〕
NBCの付加重合体(ホモポリマー)を製造した例を説明する。アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NBC 1.246g(8.20mmol)のトルエン溶液6mLを入れ、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート37.5mg(40.65μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてPd(dba)2 23.4mg(40.70μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、室温で15h攪拌した。
【実施例】
【0033】
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、2時間減圧乾燥すると、NBCの付加重合体0.329gが得られた。得られた付加重合体は、テトラヒドロフラン、クロロホルムに可溶であった。また、この付加重合体の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として用いて求めたところ、数平均分子量は4200で、分子量分布は2.20であった。
【実施例】
【0034】
〔実施例3〕
触媒としてPd(dba)2を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、安定化剤の種類及び量並びに重合温度を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、安定化剤としてトリフェニルホスフィンを触媒と等モル量使用し、重合温度が50℃である例(表1のrun8を参照)について説明する。
【実施例】
【0035】
【表1】
JP0004997655B2_000003t.gif
【実施例】
【0036】
アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NB 0.382g(4.065mmol)とNBC 0.623g(4.065mmol)のトルエン溶液3mLを入れ、そこにトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.75mg(0.813μmol)とトリフェニルホスフィン0.213mg(0.813μmol)を含むトルエン溶液6mLを添加した。さらに、Pd(dba)2 0.468mg(0.814μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、50℃で15h攪拌した。
【実施例】
【0037】
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、2時間減圧乾燥すると、NBとNBCの付加共重合体0.471gが得られた。得られた付加共重合体は、テトラヒドロフラン、クロロホルムに可溶であった。また、この付加共重合体をGPCにより分析したところ、数平均分子量は61600で、分子量分布は2.26であった。さらに、付加共重合体について核磁気共鳴( 1H-NMR)スペクトル測定を行って、メチルエステル基のメチルの水素のピーク面積から、付加共重合体中のNBC骨格のモル比を計算したところ、約30モル%であった。
【実施例】
【0038】
次に、重合温度が室温又は80℃であること以外はrun8と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun7,9に示す。重合温度が室温であるrun7は、重合体は得られたものの、溶媒に不溶であった。重合体中のNBCのモル比が低く、NBのホモポリマーに近い溶媒溶解性を示したものと考えられる。
さらに、安定化剤としてトリフェニルホスフィンを触媒の0.5倍モル量使用したこと以外はrun7~9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun4~6に示し、安定化剤としてトリシクロヘキシルホスフィンを触媒と等モル量使用したこと以外はrun7~9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun10~12に示し、安定化剤を使用しなかったこと以外はrun7~9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun1~3に示す。
【実施例】
【0039】
〔実施例4〕
触媒としてPd2 (dba)3 を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)、触媒量、助触媒の量、重合温度、及び重合時間を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)が0.5、触媒量が5000、助触媒の量が0.5、重合温度が70℃、重合時間が40hである例(表2のrun28を参照)について説明する。なお、触媒量は、仕込みモノマーと触媒とのモル比(全モノマー/触媒)であり、助触媒の量は、触媒と助触媒とのモル比(触媒/助触媒)である。
【実施例】
【0040】
【表2】
JP0004997655B2_000004t.gif
【実施例】
【0041】
アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NB 0.236g(3.30mmol)とNBC 0.764g(6.60mmol)を入れ、トルエン6mLを加えた。そこにトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.92mg(1.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、さらに、Pd2 (dba)3 0.916mg(1.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、70℃で40h攪拌した。
【実施例】
【0042】
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、真空ポンプで減圧しながら10時間乾燥すると、NBとNBCの付加共重合体が51%の収率で得られた。得られた付加共重合体は、テトラヒドロフラン、クロロホルムに可溶であった。また、この付加共重合体をGPCにより分析したところ、数平均分子量は10400で、分子量分布は2.73であった。さらに、付加共重合体について核磁気共鳴( 1H-NMR)スペクトル測定を行って、メチルエステル基のメチルの水素のピーク面積から、付加共重合体中のNBC骨格のモル比を計算したところ、60モル%であった。
次に、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)、触媒量、助触媒の量、重合温度、及び重合時間のうち1つ以上の条件を変更したこと以外はrun28と全く同様にして付加共重合体を製造した例を、表2のrun21~27に示す。
【実施例】
【0043】
〔実施例5〕
触媒としてPd2 (dba)3 を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、安定化剤の種類及び量並びに重合温度を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、安定化剤としてdbaを触媒と等モル量使用し、重合温度が50℃である例(表3のrun33を参照)について説明する。
【実施例】
【0044】
【表3】
JP0004997655B2_000005t.gif
【実施例】
【0045】
アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NB 0.382g(5.0mmol)とNBC 0.618g(5.0mmol)を入れ、トルエン6mLを加えた。そこにトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.92mg(1.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、さらに、dba 0.23mg(1.0μmol)を含むトルエン溶液1mLを添加し、最後にPd2 (dba)3 0.916mg(1.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、50℃で20h攪拌した。
【実施例】
【0046】
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、真空ポンプで減圧しながら10時間乾燥すると、NBとNBCの付加共重合体が80%の収率で得られた。得られた付加共重合体は、テトラヒドロフラン、クロロホルムに可溶であった。また、この付加共重合体をGPCにより分析したところ、数平均分子量は72600で、分子量分布は1.93であった。さらに、付加共重合体について核磁気共鳴( 1H-NMR)スペクトル測定を行って、メチルエステル基のメチルの水素のピーク面積から、付加共重合体中のNBC骨格のモル比を計算したところ、16モル%であった。
次に、安定化剤の種類及び量並びに重合温度のうち1つ以上の条件を変更したこと以外はrun33と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表3のrun31,32,34~40に示す。
【実施例】
【0047】
〔実施例6〕
エステル基が導入されたノルボルネン誘導体は、シクロペンタジエンとアクリル酸エステルのDiels-Alder反応で容易に合成されるため、入手し易いものの、同反応固有の立体選択性(endo-ruleとして良く知られている) によりendo体が優先して生成する。例えば、M. Onakaらの文献(M. Onaka, N. Hashimoto, R. Yamasaki, Y. Kitabata, Chem. Lett. 2002, pp. 166-167.)に従えば、95モル%endo体が容易に得られる。高温での反応でもendo/exo比はほぼ1前後であり、exo体を効率よく得ることは難しい。exo体は、endo体との混合物からガスクロマトグラフィー分取によって取得されているに過ぎない。
【実施例】
【0048】
しかるに、エステル基が導入されたノルボルネン誘導体を既知の2価のパラジウム触媒により重合させる場合には、exo体が重合性に富みendo体は低反応性であることが示されていた(例えば、S. Breuning, W. Risse, Makrimol. Chem. 1992, 193, pp. 2915-2927; J.K. Funk, C. E. Andes, A. Sen, Organometallics 2004, 23, pp. 1680-1683.; M. Kang, A. Sen, Organometallics 2004, 23, pp. 5396-5398 を参照)。
【実施例】
【0049】
本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、ノルボルネン誘導体のendo体を優先的に重合させることができる。以下に、NBCの付加重合体(ホモポリマー)を製造した際のexo体とendo体の反応性を比較した例を説明する。
アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NBC 1.522g(10.0mmol、endo/ exo異性体比は0.75)を入れ、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート18.4mg(20.0μmol)とトリシクロヘキシルホスフィン5.6mg(20.0μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてPd(dba)2 11.5mg(20.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加した後、さらにトルエンを加えて全量を20mLとした。そして、この混合溶液を70℃に加熱しながら所定の時間攪拌した。
【実施例】
【0050】
ガラス容器の内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、2時間減圧乾燥すると、NBCの付加重合体が得られた。得られた付加重合体の質量を測定し、ポリマーの収率を求めた。一方、濾液をアスピレーターで減圧濃縮し、その残渣からカラムクロマトグラフィーによりNBCを回収した。すなわち、直径3cm、長さ5cmのガラス管にアルミナを充填剤として充填したカラムを用いるとともに、ヘキサンを移動相として用いて、前記残渣から無色の溶出液を得た。そして、この溶出液を減圧濃縮した後、濃縮物をCDCl3 に溶解して核磁気共鳴( 1H-NMR)スペクトル測定を行った。
メチルエステル基のメチルの水素のピーク(exo体は3.69ppm、endo体は3.62ppm)の面積から、回収されたNBCのendo/exo比を求めた結果を、表4に示す。
【実施例】
【0051】
【表4】
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【実施例】
【0052】
表4に示すポリマーの収率及び回収されたNBCのendo/exo比から、明らかにexo体よりもendo体の方が重合反応に多く消費されたことが分かる。
よって、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を用いれば、従来入手しやすかったモノマー、すなわち、endo体が主成分であるノルボルネン誘導体を原料とした場合にも、付加重合体を容易に製造することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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