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明細書 :高屈折率熱可塑性光学材料とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5923816号 (P5923816)
公開番号 特開2013-133430 (P2013-133430A)
登録日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発行日 平成28年5月25日(2016.5.25)
公開日 平成25年7月8日(2013.7.8)
発明の名称または考案の名称 高屈折率熱可塑性光学材料とその製造方法
国際特許分類 C08G  79/00        (2006.01)
G02B   1/04        (2006.01)
FI C08G 79/00
G02B 1/04
請求項の数または発明の数 10
全頁数 8
出願番号 特願2011-285427 (P2011-285427)
出願日 平成23年12月27日(2011.12.27)
審査請求日 平成26年12月26日(2014.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】幸塚 広光
【氏名】内山 弘章
【氏名】小田 進也
個別代理人の代理人 【識別番号】100098969、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 正行
審査官 【審査官】佐藤 のぞみ
参考文献・文献 特開昭58-134161(JP,A)
特開昭60-104132(JP,A)
特開2009-132762(JP,A)
特開2010-006997(JP,A)
特開2008-197273(JP,A)
調査した分野 C08G 79/00-79/14
C08L 85/00-85/04
C08K 3/00-13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
メタロキサンポリマーと、このメタロキサンポリマー中の金属原子に対して配位可能なキレート化合物とを備え、メタロキサンポリマーの金属原子に前記キレート化合物が配位しており、配位前の前記キレート化合物が25℃で固体であることを特徴とする高屈折率熱可塑性光学材料。
【請求項2】
前記金属原子がチタン、ジルコニウム及び亜鉛のうちから選ばれる一種以上である請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
前記キレート化合物がβジケトン、カルボン酸、またはエチレンジアミン誘導体である請求項1に記載の光学材料。
【請求項4】
金属塩、有機溶剤、25℃で固体であるキレート化合物及び水を含む溶液からなる高屈折率熱可塑性光学材料前駆体溶液。
【請求項5】
前記金属塩が金属アルコキシド、金属硝酸塩、金属塩化物塩、金属カルボン酸塩又はそれらの組み合わせである請求項4に記載の溶液。
【請求項6】
前記金属塩が金属アルコキシドまたは金属酢酸塩である請求項4に記載の溶液。
【請求項7】
前記キレート化合物がβジケトン、カルボン酸、またはエチレンジアミン誘導体である請求項4に記載の溶液。
【請求項8】
前記キレート化合物がβジケトンまたはエチレンジアミン誘導体であって、そのカルボニル基の炭素及びアミノ基の窒素が環状構造の構成要素ではない請求項4に記載の溶液。
【請求項9】
前記金属塩とキレート化合物のモル比が1:1.0~2.5である請求項4に記載の溶液。
【請求項10】
請求項4に記載の溶液を濃縮することにより粘性を上げ、成形した後、前記キレート化合物の融点よりも高く沸点よりも低い温度で加熱することを特徴とする高屈折率熱可塑性光学材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高屈折率熱可塑性光学材料とその製造方法に関する。この高屈折率熱可塑性光学材料は、発光デバイス、光学デバイス、電子デバイスなどの分野で好適に利用されうる。
【背景技術】
【0002】
前記の各デバイス分野では光路を制御するために、高い屈折率と、キャスティング(鋳造)による成形を可能とする熱可塑性を兼ね備えた材料が望まれている。そのような材料の実現を目指して従来より、有機高分子をマトリックスあるいはバインダーとし、チタニアやジルコニアなどの高屈折率の金属酸化物の微粒子を分散させる(特許文献1)、有機高分子と、高屈折率のメタロキサンポリマーあるいは金属酸化物ナノ粒子を複合化させる(非特許文献1、2)などの技術が知られている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2005-213410
【0004】

【非特許文献1】C.C. Chang, W.C. Chen, "High-refractive-index thin films prepared from aminoalkoxysilane-capped pyromellitic dianhydride-titania hybrid materials," J. Polym. Sci. Pt. A - Polym. Chem., 39, 3419 (2001)
【非特許文献2】H.W. Su, W.C. Chen, "High refractive index polyimide-nanocrystalline-titania hybrid optical materials," J. Mater. Chem., 18, 1139 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の材料においては、有機高分子成分が熱可塑性を担い、金属酸化物あるいはメタロキサンポリマーが高屈折率を担っている。そのため、熱可塑性を高めるために有機高分子成分の含有比率を上げると高屈折率が実現できず、屈折率を高めるために金属酸化物あるいはメタロキサンポリマーの含有比率を上げると熱可塑性が実現できない。
それ故、この発明の課題は、高屈折率と熱可塑性を兼ね備えた有機・無機ハイブリッドの光学材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明の有機・無機ハイブリッドの光学材料は、
メタロキサンポリマーと、このメタロキサンポリマー中の金属原子に対して配位可能なキレート化合物とを備え、メタロキサンポリマーの金属原子に前記キレート化合物が配位しており、配位前の前記キレート化合物が25℃で固体であることを特徴とする。
【0007】
メタロキサンポリマーは、繰り返し単位[金属原子-酸素原子]を骨格とする無機高分子である。このハイブリッド材料においてはメタロキサンポリマーの各金属原子にキレート化合物がほぼ均一に配位しており、メタロキサンポリマー中の金属-酸素結合部分が金属酸化物と同様に高屈折率を担う。一方、このハイブリッド材料の熱可塑性のメカニズムは、ハイブリッド材料中のキレート化合物同士のファンデアヴァールス結合に起因していると推定される。前記キレート化合物として25℃で液体であるものを用いたハイブリッド材料は、熱可塑性を有しない。
【0008】
前記金属原子は、好ましくはチタン、ジルコニウム及び亜鉛のうちから選ばれる一種以上である。これらの金属の酸化物は、高屈折率であることが知られているからである。前記キレート化合物は、好ましくはβジケトン、カルボン酸、またはエチレンジアミン誘導体である。これらの化合物は容易に入手可能だからである。
【0009】
この発明の有機・無機ハイブリッドの光学材料を製造する適切な方法は、
金属塩、有機溶剤、25℃で固体であるキレート化合物及び水を含む有機・無機ハイブリッド材料前駆体溶液を準備し、この前駆体溶液を成形可能な程度に粘性が上がるまで濃縮し、前記キレート化合物の融点よりも高く沸点よりも低い温度で加熱することを特徴とする。そして、濃縮後、加熱前に所望の形状に成形する。この方法により、加熱時に溶液中の有機溶剤が蒸発するとともに、金属塩の重合と金属に対するキレート化とが進行し、熱可塑性材料が得られる。前記キレート化合物として25℃で液体であるものを用いたハイブリッド材料が熱可塑性を有しないのは、加熱中にキレート化合物が蒸発してしまうからであると推定される。
【0010】
金属塩として、好ましい一つは金属アルコキシドであり、他の一つは金属硝酸塩、金属塩化物塩、金属酢酸塩等の金属カルボン酸塩又はそれらの組み合わせである。いずれも加水分解により容易に酸化物を生じうるからである。また、前記キレート化合物がβジケトンまたはエチレンジアミン誘導体であるときは、そのカルボニル基の炭素及びアミノ基の窒素が環状構造の構成要素ではないものが好ましい。官能基の原子が環状構造の構成要素であると、金属原子に配位することが極めて困難だからである。前記金属塩とキレート化合物の好ましいモル比は1:1.0~2.5である。モル比がこの範囲にあるとき、キレート化合物が金属塩の周囲に過不足無くほぼ均等に配位すると想定できるからである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明の有機・無機ハイブリッド材料は、高屈折率と熱可塑性を兼ね備えているので、これを所望の形状に成形することにより、様々な光路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の試料hの光吸収スペクトルである。
【図2】実施例2の試料の光吸収スペクトルである。

【実施例】
【0013】
—実施例1—
金属アルコキシドとしてチタンテトラノルマルブトキシドTi(O-nC494及びジルコニウムテトラノルマルプロポキシドZr(O-nC374を準備した。アセトン中に表1に記載のβジケトンのうち1種または2種、いずれかのアルコキシド及び脱イオン水を、モル比でアルコキシド:βジケトン:水:アセトンが1:2:1:20となるように加えることにより、前駆体溶液を調製した。2種のβジケトンを加えるときはそれらが互いに等モルとなるように調製した。
【0014】
【表1】
JP0005923816B2_000002t.gif

【0015】
溶液を室温で1時間撹拌した後、80℃で表2に示す種々の時間濃縮したところ、粘りけのある樹脂状になった。この粘りけのある溶液をシリコン(100)基板の上に滴下し、オーブンで10分間表2に示す種々の温度で乾燥することにより、厚さ700μmの試料を製造した。室温まで放置した後、ピンセットで触れることにより、試料が硬いか軟らかいかを評価した。次に、同じ温度で再度3分間加熱して冷却前に硬さを評価した後、冷却して試料をポリエチレンの袋に1日間封入し、室温で再び硬さを評価した。
【0016】
また、各段階における試料の光学的透明度を評価するために、前記シリコン(100)基板に代えて清浄なシリカガラス基板の上で試料を製造し、同じシリカガラス基板を対照とし、分光測光計(ジャスコ社製型式V-570)を用いて光吸収スペクトルを測定した。試料の厚さは、5μm及び200μmであった。評価結果を表2に併記する。一例として試料hのスペクトルを図1に示す。
【0017】
【表2】
JP0005923816B2_000003t.gif

【0018】
試料の屈折率を、屈折率1.9648のプリズムを備えるプリズムカップラー(メトリコン コーポレーション社製型式2010)を用いて測定した。測定結果を表3に示す。
【0019】
【表3】
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【0020】
表2に示すように、常温で固体のβジケトンを少なくとも1種用いた試料d、f-o、p-rは、試料pを除く全てが熱可塑性を有し、クラックの無い、黄みがかった透明であった。いずれの試料もβジケトンの融点よりも高い温度で可塑性を示していること、及びβジケトンによるキレート環の存在を示す黄みがかっていることから、試料の熱可塑性はβジケトンの融点に起因するものではないと認められる。即ち、試料の熱可塑性は、試料中で金属に配位したキレート化合物同士のファンデアヴァールス結合に起因するものと推定される。
【0021】
一方、常温で液体のβジケトンのみを用いた試料a-c、eは、いずれも加熱時でさえ硬く、熱可塑性を有さず、しかも加熱時もしくは濃縮時の段階で不透明であった。これらの試料においては、βジケトンが濃縮時に蒸発してしまい、アルコキシドの重縮合反応が促進されたために、試料が硬化したものと推定される。尚、試料pは、βジケトンを用いているが、アルコキシドとβジケトンとのモル比が1:1であったので、加水分解と重縮合を抑制するのに十分にキレート化しなかったものと推定される。
表3に示すように、屈折率は1.65~1.73の範囲であった。
【0022】
—実施例2—
エタノールに酢酸亜鉛Zn(CH3COOH)2・2H2O及び1-フェニルブタン-1,3-ジオンを、モル比で順に酢酸亜鉛:βジケトン:エタノール=1:1:30となるように加えることにより、白色沈殿を含む前駆体溶液を調製した。
【0023】
溶液を遠心分離し、上澄み液を80℃で1時間濃縮したところ、粘りけのある樹脂状になった。再度遠心分離したところ、上澄み液の粘りけが増した。この粘りけのある溶液をシリコン(100)基板の上に滴下し、オーブンで10分間120℃で乾燥することにより、厚さ270μmの試料を製造した。室温まで放置した後、ピンセットで触れたところ、試料は硬くなっていた。次に、同じ温度で再度3分間加熱して冷却前にピンセットで触れたところ、軟らかかった。
【0024】
試料の屈折率は、1.66であった。前記シリコン(100)基板に代えて清浄なシリカガラス基板の上で試料を製造し、実施例1と同様に光吸収スペクトルを測定した。測定結果を図2に示す。
試料を熱分析したところ、温度が1000℃に達しても重量が0にならなかった。従って、試料中に酸化亜鉛のメタロキサンポリマーが含まれていると認められた。
図面
【図1】
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【図2】
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