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明細書 :高純度乳酸の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5721162号 (P5721162)
公開番号 特開2011-200161 (P2011-200161A)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
発行日 平成27年5月20日(2015.5.20)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
発明の名称または考案の名称 高純度乳酸の製造方法
国際特許分類 C12P   7/56        (2006.01)
C12R   1/84        (2006.01)
FI C12P 7/56
C12P 7/56
C12R 1:84
請求項の数または発明の数 8
微生物の受託番号 NPMD NITE P-902
全頁数 15
出願番号 特願2010-070038 (P2010-070038)
出願日 平成22年3月25日(2010.3.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本農芸化学会関東支部 日本農芸化学会関東支部2009年度大会講演要旨集 2009年10月31日
審査請求日 平成25年3月13日(2013.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
発明者または考案者 【氏名】中西 載慶
【氏名】徳田 宏晴
【氏名】本間 裕人
【氏名】鈴木 三知代
個別代理人の代理人 【識別番号】100122574、【弁理士】、【氏名又は名称】吉永 貴大
審査官 【審査官】菅原 洋平
参考文献・文献 特開昭63-173596(JP,A)
特開昭60-133881(JP,A)
国際公開第2010/032697(WO,A1)
調査した分野 C12P 7/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
D-乳酸及びL-乳酸を含む乳酸溶液を調製する乳酸溶液調製工程と、
該乳酸溶液中でL-乳酸資化性菌であるピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)を培養し、該乳酸溶液中のL-乳酸を資化させることによってD-乳酸の純度を高めるL-乳酸除去工程と、
を有する高純度乳酸の製造方法。
【請求項2】
前記乳酸溶液が、D-乳酸生産菌を培養して得られる乳酸発酵液である、請求項1に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項3】
前記L-乳酸除去工程が、25~40℃、pH2.6~7.0の条件下で振とう培養により実施される、請求項1又は2に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項4】
前記D-乳酸生産菌による乳酸溶液調製工程の終了後、前記L-乳酸資化性菌によるL-乳酸除去工程を実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項5】
前記乳酸溶液調製工程の終了後、前記乳酸溶液を遠心分離する工程を含む、請求項4に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項6】
前記D-乳酸生産菌による乳酸溶液調製工程と、前記L-乳酸資化性菌によるL-乳酸除去工程とを同時に実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項7】
培養開始から24時間経過までは前記D-乳酸生産菌の最適生育条件で培養を実施し、 培養開始から24時間経過後は前記L-乳酸資化性菌の最適生育条件で培養を実施する、 請求項6に記載の高純度乳酸の製造方法。
【請求項8】
前記D-乳酸生産菌の最適生育条件が、35~40℃、pH4.5~5.5の嫌気培養であり、
前記L-乳酸資化性菌の最適生育条件が、30~35℃、pH3.0~3.8の好気培養である、
請求項7に記載の高純度乳酸の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いた高純度D-乳酸の製造方法に関し、詳しくは、D-乳酸及びL-乳酸を含む溶液からL-乳酸資化性菌によってL-乳酸を除去する高純度D-乳酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石資源の枯渇への危惧や地球環境保全の観点から、生分解性プラスチックに対する関心が高まっており、中でもバイオマスを原料として生産が可能なポリ乳酸系バイオプラスチックが注目されている。
【0003】
ポリ乳酸のモノマーである乳酸は、光学活性が異なるL‐乳酸とD‐乳酸の2つのエナンチオマーが存在する。どちらかのエナンチオマーのみ、すなわち、L‐乳酸あるいはD‐乳酸でポリ乳酸を合成した場合、ラセミ体であるDL‐乳酸を原料とした場合と比べて、結晶性や延伸性、耐熱性、成型加工性等の優れたポリマーができることがよく知られている。ちなみに、L‐乳酸で合成したポリ乳酸は、ポリ‐L‐乳酸、D‐乳酸で合成した場合は、ポリ‐D‐乳酸という。
【0004】
ポリ‐L‐乳酸あるいはポリ‐D‐乳酸を合成する場合、その原料モノマーであるL‐乳酸あるいはD‐乳酸の純度が重合度やガラス転移点に大きく影響する。さらに、原料モノマーへの他方のエナンチオマーの混入は、合成されたポリ乳酸の融点を下げることが知られている。そのため、工業用プラスチック素材としてポリ乳酸を使用するためには、ポリ乳酸製造のための原料乳酸の光学純度が高いことが必要となる。
【0005】
ところで、これまでのポリ乳酸は、人体で生成される乳酸がL‐乳酸であることなどの理由からポリ‐L‐乳酸が主流であった。そのため、その原料となるL‐乳酸生産のための研究やその光学純度を高める研究がなされてきた。例えば、特開平9-121844号公報には、高光学純度のL-乳酸を生産する新規バチルス(Bacillus) sp. SHO-1(FERM P‐15234)を培養し、この培養物から光学純度95%以上のL-乳酸を採取することが開示されている(特許文献1)。
【0006】
ところが最近になって、ポリ‐L-乳酸とポリ‐D‐乳酸とを混合して得られるステレオコンプレックス型ポリ乳酸が、ポリ‐L‐乳酸あるいはポリ‐D‐乳酸と比較して、その強度や耐熱性の点でさらに優れた特性を有することが見いだされた。例えば、特開2000‐17163号公報には、L-乳酸、D-乳酸及び/又は乳酸以外の共重合成分により構成された非晶性ポリマーを特定の混合重量比で溶融ブレンドした結晶性ポリ乳酸ステレオコンプレックスポリマー組成物が、成形加工性に優れ、低コストで得られる旨が開示されている(特許文献2)。そのため、効率的なD‐乳酸生産方法および光学純度の高いD‐乳酸生産方法の開発が必要となった。
【0007】
一般的な乳酸の生産方法は、合成法及び発酵法の2つが知られている。合成法は、アセトアルデヒドに青酸を作用させ、生成したシアンヒドリンを加水分解して乳酸を合成する場合と、アセトアルデヒドと一酸化炭素とを高圧下で反応させて合成する場合が知られている。一方、発酵法は、ショ糖、ブドウ糖、デンプン、ジャガイモ等のバイオマス原料を乳酸生産菌によって発酵させて得た乳酸を精製する。
【0008】
合成法によって合成された乳酸の光学純度は、L‐乳酸:D‐乳酸比が1:1のラセミ体となる。
【0009】
一方、発酵法においては、発酵に用いる微生物を選択することによってL‐乳酸あるいはD-乳酸の光学純度を高めることができる。例えば、D‐乳酸生産菌を用いることによって、比較的純度の高いD‐乳酸を生産することができる。
【0010】
また、遺伝子工学的手法によって改変した微生物を用いた高純度D‐乳酸の生産についての研究も行われており、例えば、Ishida, N.らは、高光学純度D‐乳酸の効率的生産を目的として、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を欠損したサッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)にロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides) NBRC 3426株由来のD‐乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入してグルコースからのD‐乳酸生産を試みたところ、光学純度99.9%のD‐乳酸を生産したことが開示されている(非特許文献1、特許文献3)。
【0011】
ところで、D-乳酸およびL-乳酸のように光学活性の異なる物質を分割する方法には、(1)ラセミ体にキラル化合物(光学分割剤)を作用させてジアステレオマーを形成させ、ジアステレオマー間の物理的な性質、例えば溶解度などの差異を利用して、それぞれのジアステレオマーを分別結晶化した後、得られた単一のジアステレオマーから光学分割剤を取り除くことで目的のエナンチオマーを得る結晶化による光学分割法、(2)不斉要素をもつ固定相を用いたカラムクロマトグラフィーによって、その保持時間の差異を利用して分割する光学分割法、(3)酵素の高い不斉識別能によって一方のエナンチオマーを選択的に反応させる酵素法の3つが知られている。さらに、結晶化による光学分割方法には、優先晶出法、ジアステレオマー法、包接錯体法、優先富化法がある。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開平9‐121844号公報
【特許文献2】特開2000‐17163号公報
【特許文献3】特開2005‐102625号公報
【0013】

【非特許文献1】Ishida, N. et al.,J. Biosci. Bioeng., 101(2), 172-177 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
合成法によって合成された乳酸の光学純度は、上記のようにL‐乳酸:D‐乳酸比が1:1のラセミ体となるため、D‐乳酸を高純度で製造することができない。
【0015】
乳酸菌により発酵法で生産される乳酸の光学純度は、L‐乳酸およびD‐乳酸のいずれにおいても、高いもので97~98%程度であり、数パーセント含まれる光学異性体の存在が、ポリ乳酸の結晶性や融点の低下とそれに伴うバイオプラスチック強度の低下や生産効率の悪化の一因となっている。
【0016】
また、遺伝子工学的手法による高光学純度乳酸生産菌の育種などに関する検討も現在進められているが、組み換え菌においても、その培養を繰り返すことで遺伝情報の欠落やそれに伴う形質の変化が生じることや、遺伝子組換え体の取り扱いが非常に難しいことなどの問題がある。
【0017】
さらに、物理化学的な光学分割法により、DL‐混合乳酸から多量の高光学純度乳酸を製造することは必ずしも容易ではない。
【0018】
従って、本発明の目的は、生物学的手法を用いた簡便な高純度D-乳酸の生産であって、乳酸溶液中のL‐乳酸を選択的あるいは優先的に資化する菌によって、簡便、効率的かつ低コストで高純度D‐乳酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は、D‐乳酸及びL‐乳酸を含む乳酸溶液を調製する乳酸溶液調製工程と、該乳酸溶液中でL‐乳酸資化性菌を培養し、該乳酸溶液中のL‐乳酸を資化させることによってD‐乳酸の純度を高めるL‐乳酸除去工程と、を有する高純度D‐乳酸の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る高純度乳酸の生産方法によれば、L‐乳酸を優先的に資化する能力が高い新規L‐乳酸資化性菌を使用し、D‐乳酸及びL‐乳酸を含む乳酸溶液中のL‐乳酸をこのL‐乳酸資化性菌によって資化させることで、簡便、効率的かつ低コストでL-乳酸を除去し、高純度のD‐乳酸の生産を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ピキア マンシュリカLAAM001株(受番号:NITE -902)の顕微鏡写真である。
【図2】DL-乳酸を含む培地を乳酸溶液として高光学純度D-乳酸の生産を実施した結果を示す図である。
【図3】D‐乳酸発酵液を乳酸溶液として高光学純度D-乳酸の生産を実施した結果を示す図である。
【図4】DL‐乳酸発酵液及びL‐乳酸発酵液を乳酸溶液として高光学純度D-乳酸の生産を実施した結果を示す図である。
【図5】D‐乳酸発酵液及びL‐乳酸発酵液を乳酸溶液として高光学純度D-乳酸の生産を実施した結果を示す図である。
【図6】ラクトバチルス デルブリュッキー141株とピキア マンシュリカLAAM001株の混合培養法により高純度D‐乳酸生産を実施した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の高純度乳酸の製造方法は、D‐乳酸及びL‐乳酸を含む乳酸溶液を含む乳酸溶液を調製する乳酸溶液調製工程と、該乳酸溶液中でL‐乳酸資化性菌を培養し、該乳酸溶液中のL‐乳酸を資化させることによってD‐乳酸の純度を高めるL‐乳酸除去工程を有する。

【0023】
本実施形態で使用されるD‐乳酸及びL‐乳酸を含む乳酸溶液は、公知の方法によって合成された合成乳酸、あるいはショ糖、ブドウ糖、デンプン、ジャガイモなどを原料として乳酸生産菌による乳酸発酵によって生成された発酵乳酸を用いることができる。D‐乳酸生産収率の観点からは、乳酸溶液は、D-乳酸生産菌による乳酸発酵で生産された乳酸であることが好ましい。

【0024】
本実施形態で使用されるD‐乳酸生産菌としては、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)及びスポロラクトバチラス属(Sporolactobacillus)に属する微生物などが好ましく使用できる。

【0025】
これらのうち、D-乳酸の生産能の高いものを選択することが好ましく、例えば、ラクトバチルス デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ビフィダス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス ビフィダス ペンシルバニカス(Lactobacillus bifidus Pennsylvanicus)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス コーカシカス(Lactobacillus caucasicus)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ヒルガルディ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス ラクティア(Lactobacillus lactia)、ラクトバチルス ライヒマニ(Lactobacillus leichmannii)、ラクトバチルス サーモフィルス(Lactobacillus thermophilus)、及びラクトバチルス トリコデス(Lactobacillus trichodes)等の、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する微生物が好ましく、その中でもD‐乳酸の生産比率が高いラクトバチルス デルブリュッキー(Lactobacillus delbrueckii)であることがより好ましい。

【0026】
前記D‐乳酸生産菌を培養するための条件として、使用培地は、乳酸菌が増殖し、D‐乳酸を生産するためのものであればよく、乳酸菌の培養に一般的に用いられる様々な液体培地を用いることができる。好適な培地としては、GYP培地、MRS培地などを挙げることができ、その中でも、GYP培地を用いることがより好ましい。また、培養温度は、15~50℃の範囲で適宜決定することできるが、乳酸菌の培養至適温度を考慮すると25~45℃に設定することが好ましい。乳酸発酵は嫌気的条件下で行われるため、静置培養又は嫌気的条件下での撹拌培養又はこれらの組み合わせで培養することが好ましい。

【0027】
本実施形態におけるL‐乳酸除去工程は、D‐乳酸およびL‐乳酸を含む乳酸溶液からL‐乳酸資化性菌によってL‐乳酸を除去することにより、乳酸溶液中のD-乳酸の純度を高める工程である。

【0028】
上述のように、D‐乳酸生産菌で乳酸発酵を実施した場合であっても、実際のD-乳酸の純度は高いもので97~98%程度であり、L-乳酸が数%混在している。そのため、100%に近い純度が要求されるバイオプラスチック製造においては、数パーセント含まれるL-乳酸の存在が、ポリ乳酸の結晶性や融点の低下とそれに伴うバイオプラスチック強度の低下や生産効率の悪化の一因となっている。従って、本実施形態の高純度乳酸の製造方法においては、L-乳酸を特異的に資化し、D-乳酸を資化しない又はD-乳酸資化能の低いL‐乳酸資化性菌を選択することが重要となる。

【0029】
本実施形態に使用されるL‐乳酸資化性菌は、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)であることが好ましく、その中でも特に、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)は、L‐乳酸の選択的資化能及び前記乳酸溶液からのD‐乳酸生産収量の観点から好ましい。

【0030】
ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)は本発明者らが土壌からスクリーニングして得られた酵母であり、形態観察、炭素源資化性試験、26S rDNA-D1/D2塩基配列の解析を行い本菌の同定を試みた結果、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)と同定されたものである。

【0031】
本菌株の栄養細胞は広楕円形であり、多極出芽による栄養増殖を示した。また、子のうにおける1~4個の帽子形の胞子形成、および偽菌糸の形成が確認された(図1)。また、炭素源資化性試験から、ヘキサデカンを資化せず、N-アセチル-D-グルコサミンを資化することが明らかとなり(表1)、これらの性質はピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)の性質と一致していた。さらに26S rDNA-D1/D2塩基配列は、子のう菌系酵母の一種であるピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)の基準株IFO 10726Tに対して100%の相同率を示した。

【0032】
【表1】
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【0033】
前記L‐乳酸除去工程の条件は適宜設定し得るが、例えば、L‐乳酸資化性菌を添加し、25~40℃、pH2.6~7.0で好気培養(120oscillations/min)することによって実施することができる。

【0034】
本実施形態において、前記乳酸溶液調製工程の終了後に前記L‐乳酸除去工程を実施することができる。かかる場合、前記乳酸溶液調製工程の終了後に、乳酸溶液を遠心分離等によりD-乳酸生産菌を除去し、上清(D‐乳酸純度97~98%)をL‐乳酸除去工程に供することが好ましい。これにより、D‐乳酸純度が99.8%以上の高光学純度D‐乳酸溶液を得ることができる。

【0035】
また、前記乳酸溶液調製工程と、前記L‐乳酸除去工程とを同時に実施することもできる。かかる場合、D‐乳酸生産菌を培養する培地にD‐乳酸生産菌とL‐乳酸資化性菌を添加し、所定条件で培養することにより、D‐乳酸純度が99.6%以上の高光学純度D‐乳酸溶液を得ることができる。このように、乳酸溶液調製工程とL‐乳酸除去工程とを同時に実施するとことで、より効率的に高光学純度D‐乳酸を得ることができる。

【0036】
培養条件は、培養開始から24時間経過まではD‐乳酸生産菌の至適生育条件で培養を実施し、培養開始から24時間経過後はL‐乳酸資化性菌の至適生育条件で培養を実施することが好ましい。培養開始から24時間経過までD‐乳酸生産菌の至適生育条件で培養することで、培地中に乳酸が蓄積されていき、培養開始から24時間経過後はL‐乳酸資化性菌の至適生育条件で培養することで、培養液中に混在しているL‐乳酸をL‐乳酸資化性菌により資化させ、これを除去していくことができる。

【0037】
D‐乳酸生産菌の至適生育条件は、35~40℃、pH4.5~5.5の静置培養あるいは嫌気条件下での撹拌培養とし、L‐乳酸資化性菌の至適生育条件は、30~35℃、pH3.0~3.8の振とう培養あるいは通気撹拌培養とすることが好ましい。かかる培養条件で培養することで、前半はD‐乳酸生産菌の乳酸発酵に適した嫌気的条件となり、後半はL‐乳酸資化性菌によるL-乳酸の資化・除去に適した好気的条件となるため、より効率よく高光学純度D‐乳酸を得ることができる。
【実施例】
【0038】
1.各種ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)の乳酸資化特性
(1)L‐乳酸資化性菌
ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)と既知のピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)7菌株(NBRC1004株、NBRC1284株、NBRC1789株、NBRC1790株、NBRC10062株、NBRC100562株、NBRC10562株)のL‐乳酸資化特性を比較検討した。
【実施例】
【0039】
(2)乳酸生産菌
乳酸生産菌としては、ラクトバチルス デルブリュッキ サブスピーシーズ デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)141株(D‐乳酸生産菌)、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)1532株(L-乳酸生産菌)およびラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)NRIC 1067株(DL-乳酸生産菌)を使用した。
【実施例】
【0040】
(3)乳酸資化特性の評価
YM培地を用いて培養した各L‐乳酸資化性菌の培養液を使用し、これらをそれぞれLYP培地(DL-Lactic acid:Purity 85.0~90.0%(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)2.5%、Peptone0.25%、Yeast extract(BD.Bacto)0.25%、KH2PO40.04%、pH3.8)に添加して30℃で72時間培養を行ったのち、培養液中に残存するD-乳酸およびL-乳酸の濃度を定量し、乳酸資化特性を評価した。
【実施例】
【0041】
L‐乳酸及びD‐乳酸の分別定量は、酵素法(DL‐乳酸測定用Fキット:ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によって行った。なお、DL‐乳酸の分別定量に供する培養液試料の調製は、以下のとおりである。すなわち、マイクロチューブに、培養液の遠心分離(4℃、12,000rpm、10分)上清を入れてキャップをロックした後、80~90℃の温浴中で15分間加温することにより、培養液中に含まれる各種酵素を失活させた。これを水浴中で冷却した後、遠心分離(4℃、12,000rpm、10分)し、回収した上清を定量試験に用いた。また、対照(Control)には試料液の代わりに同量の蒸留水を用いた。
【実施例】
【0042】
結果を表2に示す。表2に示すように、いずれの菌においても、培養液中の残存乳酸濃度は、初発乳酸濃度の約1/2~1/4程度となっており、用いた全ての菌が乳酸資化能を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0043】
また、乳酸資化の様相から、いずれもL-乳酸の資化力が強く、その特性がピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の場合と類似していることが明らかとなったが、D-乳酸の割合が最も高くなったピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)NBRC1790株においても、その比はD:L=81.66:18.34に過ぎなかった。
【実施例】
【0044】
以上のことから、L-乳酸資化能はピキア マンシュリカ(P. manshurica)に比較的広範に認められる共通の性質であるものの、他の菌よりもD-乳酸を資化せず特異的にL-乳酸を資化する特性を有するという観点からは、分離菌ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)は、極めて特異な菌であることが明らかとなった。
【実施例】
【0045】
【表2】
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【実施例】
【0046】
2.ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株の培養特性
(1)培養温度の検討
ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の培養温度条件を検討した。なお、該試験はYM培地を用いて調製した菌体を種菌として用い、これをLYP培地に添加して、25℃、30℃、35℃あるいは40℃で72時間振とう培養(120 oscillations/min)した。
【実施例】
【0047】
試験したすべての温度で菌体の増殖が認められた。特に、増殖速度は、培養温度35℃までは温度の上昇と共に増加し、最大菌体濃度はOD660値で約25となった。一方、培養温度40℃の場合では、菌体増殖速度及び菌体濃度ともに低下した。以上のことから、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の生育および乳酸資化に関わる最適培養温度は30~35℃であると考えられた。
【実施例】
【0048】
(2)初発pHの検討
ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の培養時における培地の初発pHについて検討した。なお、該試験はYM培地を用いて調製した菌体を種菌として用い、これを1N‐HClあるいは6N‐NaOHによって初発pHを2.6~7.0に調整したLYP培地に添加し、30℃で72時間振とう培養(120 oscillations/min)した。
【実施例】
【0049】
培地の初発pHが3.0~4.6の範囲で菌体の増殖が良好であり、培養72時間後にOD660値が約20~25であった。また、初発pHが3.0~3.8の範囲で特に良好な乳酸資化が認められ、初発乳酸量の約60%に相当する乳酸が資化された。一方、培地の初発pHを2.6以下あるいは7.0以上にした場合は、菌体増殖及び乳酸資化力が低下した。特に、該菌株のL‐乳酸資化能を利用した高純度D‐乳酸生産において、培地の初発pHは、菌体の増殖が最も良好であり、高い乳酸資化性が認められたpH3.8が最も良いことが分かった。
【実施例】
【0050】
(3)窒素源の検討
該菌株の培養時における培地の窒素源として添加する素材の種類について検討を行った。なお、該試験はYM培地を用いて調製した菌体を種菌として用い、前記LYP培地の窒素源をYeast extract 0.1%及び各種窒素源素材0.4%に置換した培地を用いて、30℃で72時間振とう培養(120 oscillations/min)を行った。
【実施例】
【0051】
窒素源素材としてPeptoneあるいはExtract ehlrichを添加した場合、菌体の増殖が良好であり、培養72時間後の菌体濃度がOD660値で20以上になり、初発乳酸量の約55~60%が資化された。また、硫酸アンモニウムを添加した場合では、先の2つの条件の場合と比較して十分な菌体の増殖は認められなかった(OD660値は12.88)ものの、乳酸資化量は同程度であった。これらに対して、硝酸ナトリウムあるいは尿素を添加した場合では、菌体濃度(OD660値は12以下)及び乳酸資化量(初発乳酸量の23~50%程度)は低い値であった。このように、該菌株の培養時における培地の窒素源としては、有機態窒素及びアンモニア態窒素のいずれも使用可能であった。
【実施例】
【0052】
(4)窒素源濃度の検討
さらに培地の窒素源の添加濃度についても検討を行った。なお、該試験はYM培地を用いて調製した菌体を種菌として用い、本培養で使用するLYP培地の窒素源素材をYeast extractおよびPeptoneとした。
【実施例】
【0053】
窒素源濃度0.3%以上の場合、菌体の増殖及び乳酸の資化が良好であり、乳酸資化速度も高い値を示した。中でも、窒素源濃度を0.7%とした場合、培養72時間後に菌体濃度が最大(OD660値は26.9)となり、初発乳酸量の約63%が資化された。これに対し、窒素源濃度0.1%の場合は、培養72時間後の菌体濃度(OD660値は9.75)は小さく、資化された乳酸量も初発量の50%以下であった。以上を総合的に考慮すれば、培地の窒素源及びその濃度は、Yeast extract 0.25%とPeptone 0.25%とを含む場合が最適であると判断された。ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の増殖範囲及び最適培養条件を表3に示す。
【実施例】
【0054】
【表3】
JP0005721162B2_000004t.gif
【実施例】
【0055】
3.乳酸試薬からの高光学純度D-乳酸の生産
(1)実験方法
実験には、市販の乳酸(DL-乳酸比50:50)を用いて調製したLYP培地を使用し、ここにあらかじめYM培地を用いて培養したピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)を添加して振とう培養を行い、液中の乳酸光学純度を経時的に測定した。
【実施例】
【0056】
(2)結果
図2はDL-乳酸を含む培地(LYP培地)を乳酸溶液として高光学純度D‐乳酸の生産を実施した結果を示す図である。図2に示すように、培養開始直後より菌体の良好な増殖が認められ、培養開始48時間で菌体量は定常となった。また、菌体増殖と連動するような型式でのL-乳酸濃度の急激な低下が観察され、これに起因すると思われる培養液pHの上昇も認められた。しかしながら、培養液中のD-乳酸濃度にはほとんど変化が見られなかった。培養開始72時間後における培養液中のDL比は88.1:11.9であり、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の添加によるD-乳酸の光学純度向上が認められた。
【実施例】
【0057】
以上のことから、L-乳酸を優先的あるいは選択的に資化するというピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の特性に着目し、本菌の培養系を利用することで、高光学純度D-乳酸の調製が十分に可能であることが示唆された。
【実施例】
【0058】
4.乳酸発酵液からの高光学純度D‐乳酸の生産
(1)乳酸発酵液の調製
乳酸溶液として、上記1.(2)に記載の乳酸生産菌を液体培養して得られた乳酸発酵液を使用した。その調製手順は以下の通りである。
【実施例】
【0059】
すなわち、100ml容三角フラスコにMRS broth培地(Oxoid社製)50mlを入れ、121℃、10分の条件でオートクレーブ滅菌を行った。ここに前記1.(2)に記載の乳酸生産菌を1白金線接種し、各乳酸生産菌の適温(Lb. delbrueckii 141株:37℃、Lb. plantarum NRIC1067株:30℃、Lb. paracasei 1532株:30℃)で24時間静置培養した(前培養)。
【実施例】
【0060】
500ml容三角フラスコにGYP培地(Glucose 1%、Yeast extract 1%、Peptone 0.5%、CH3COONa・3H2O 0.1%、MgSO4・7H2O 0.02%、FeSO4・7H2O 0.001%、MnSO4・4H2O 0.001%、NaCl 0.001%、Tween80 0.05%)300mlを入れ、121℃、10分の条件でオートクレーブ滅菌をした後、ここに上述の前培養液3mlおよび、あらかじめ乾熱滅菌(180℃、120分)した炭酸カルシウム6.0gを添加し、マグネティックスターラーにより液を穏やかに撹拌しながら、各乳酸生産菌の生育最適温度で48時間培養(本培養)した。
【実施例】
【0061】
そして、培養液を遠心分離(4℃、10000G、30分)して得た上清を、121℃、10分の条件でオートクレーブ滅菌したあと流水で急冷し、これを乳酸発酵液とした。
【実施例】
【0062】
なお乳酸発酵液の名称は、その調製に使用した乳酸菌の種類によって、それぞれD‐乳酸発酵液(Lb. delbrueckii 141株により調製)、DL‐乳酸発酵液(Lb. plantarum NRIC 1067株により調製)およびL‐乳酸発酵液(Lb. paracasei 1532株により調製)とした。
【実施例】
【0063】
各乳酸発酵液に含まれる乳酸のDL比は乳酸生産菌の種類によって異なり、D‐乳酸発酵液はDL比=97.6:2.4、DL‐乳酸発酵液はDL比=51.4:48.6、L‐乳酸発酵液はDL比=6.1:93.9であった。
【実施例】
【0064】
(2)実験方法
D‐乳酸発酵液(DL比=97.6:2.4)に、あらかじめYM培地を用いて培養したピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)を添加してこれを30℃で振とう培養し、培養液中の乳酸光学純度を経時的に測定した。また、比較対象として、DL‐乳酸発酵液(DL比=51.4:48.6)、L‐乳酸発酵液(DL比=6.1:93.9)を乳酸溶液として用いた場合についても同様に実施した。
【実施例】
【0065】
(3)結果
図3はD‐乳酸発酵液を乳酸溶液として高光学純度D‐乳酸の生産を実施した結果を示す図である。図3に示すように、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)は培養開始直後より良好に生育し、培養開始48時間でその菌体量はほぼ定常値となった。また、菌体増殖と連動して培養液中のL-乳酸もその大部分が資化されたが、D-乳酸は初発の半分以上が残存しており、培養開始72時間のD-乳酸濃度は約8.8g/l(回収率57.33%)であった。また同時点における培養液中の乳酸のDL比は約99.8:0.2であった。
【実施例】
【0066】
以上のことから、D-乳酸生産菌の発酵液を対象とした場合においても、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の乳酸資化特性を利用した高光学純度D-乳酸の調製が可能であることが示唆された。
【実施例】
【0067】
図4及び図5はDL‐乳酸発酵液及びL‐乳酸発酵液を乳酸溶液として高光学純度D‐乳酸の生産を実施した結果を示す図である。DL‐乳酸発酵液(DL比=51:49)を使用してもD‐乳酸発酵液を使用した場合と比較してピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の生育にほとんど差は認められなかった。しかしながら、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)を添加した直後から、液中に多量に存在しているL-乳酸が直ちに資化され、これを伴って培養液pH値が急激に上昇した。
【実施例】
【0068】
分離菌ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)によるL-乳酸の資化は培養72時間でほぼ停止し、その時点における液中の乳酸のDL比は81:19であったことから、分離菌によるD-乳酸の光学純度向上が確認されたが、その光学純度や収量はD‐乳酸発酵液を用いた場合と比べると低い値であった。
【実施例】
【0069】
一方、液中のL-乳酸含量が極めて高いL‐乳酸発酵液(DL比=6.1:93.9)を用いた場合には、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の添加によりL-乳酸が資化されたが、72時間の培養を行っても系内にL-乳酸が多量に残存しており、乳酸のDL比は11:89であったことからD-乳酸の光学純度が向上したと考えられるが、その程度は極めて低いものであった。
【実施例】
【0070】
以上のことから、ピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)のL-乳酸資化特性を利用すれば、乳酸発酵液の種類を問わずその液中D-乳酸の光学純度を向上させることが可能であることが示された。また、高光学純度の乳酸を高収量で得るためには、D-乳酸の初発光学純度や濃度が高い試料を用いることが望ましいことが推察された。
【実施例】
【0071】
4.混合培養法における高純度D‐乳酸生産
これまでの高光学純度D-乳酸の調製は、「D-乳酸溶液の調製」と「D-乳酸の高光学純度化」という2段階の工程からなっており、各工程で使用する種菌もそれぞれ別途用意する必要があることから、工程の運転・管理の簡素化や生産効率の向上に関して改善すべき問題点も少なくないと考えられた。そこで、これら問題の解決策の1つとして、ラクトバチルス デルブリュッキ(Lb. delbrueckii)141株とピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)との混合培養による高光学純度D-乳酸の生産を試みた。
【実施例】
【0072】
(1)実験方法
坂口フラスコを用いた振とう培養法によるラクトバチルス デルブリュッキ(Lb. delbrueckii)141株とピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)との混合培養を行い、高光学純度D-乳酸の生産を試みた。実験には、炭酸カルシウム0.5%を添加したGYP培地を使用し、培養開始から24時間後まではD-乳酸生産菌であるラクトバチルス デルブリュッキ(Lb. delbrueckii)141株の最適生育温度である37℃で静置培養を行い、培養24時間目以降はL-乳酸資化性菌であるピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の最適生育温度である30℃で振とう培養を行った。
【実施例】
【0073】
(2)結果
図6はラクトバチルス デルブリュッキー(Lb. delbrueckii)141株とピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)の混合培養法により高純度D‐乳酸生産を実施した結果を示す図である。図6に示すように、OD660で表される菌体の生育は典型的なシグモイド曲線となり、培地に添加したグルコースは培養開始後約48時間で消費されたことから、いずれの菌も培養期間全体を通じて良好に生育していると考えられた。
【実施例】
【0074】
また、D-乳酸の生産形態は菌体の増殖と連動しており、72時間の混合培養により11.98g/l(対糖収率59.90%)のD-乳酸が得られた。一方、培養液中のL-乳酸濃度は培養開始24時間目までは増加し、その濃度は最大で約0.2g/lに達したが、それ以後濃度は徐々に低下し、72時間の培養で0.05g/lとなった。72時間の培養で得られたD‐乳酸の光学純度は99.58%であり、ラクトバチルス デルブリュッキ(Lb. delbrueckii)141株とピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)との混合培養により、極めて高光学純度のD-乳酸を効率的に生産可能であることが明らかとなった。
図面
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
4
【図1】
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