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明細書 :ホタテガイ高品質白干しの生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5344693号 (P5344693)
公開番号 特開2010-004883 (P2010-004883A)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
発行日 平成25年11月20日(2013.11.20)
公開日 平成22年1月14日(2010.1.14)
発明の名称または考案の名称 ホタテガイ高品質白干しの生産方法
国際特許分類 A23L   1/33        (2006.01)
A23B   4/03        (2006.01)
FI A23L 1/33 C
A23B 4/04 501Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2009-142727 (P2009-142727)
出願日 平成21年5月26日(2009.5.26)
優先権出願番号 2008162530
優先日 平成20年5月27日(2008.5.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年5月21日(2012.5.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
発明者または考案者 【氏名】山崎 雅夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100122574、【弁理士】、【氏名又は名称】吉永 貴大
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 特開2009-005701(JP,A)
日本食品保蔵科学学会第57回大会要旨集,2008年,p.57
調査した分野 A23L 1/31-1/333
A23B 4/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
G-Search
特許請求の範囲 【請求項1】
ホタテガイの貝柱を、NaCl濃度が0.5重量%~飽和濃度でかつ温度が-5~40℃の水溶液に1時間以上浸漬することにより塩味を付与した後、二番煮を行うことなく焙乾し、次いで、あん蒸を行うことを特徴とするホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項2】
過熱水蒸気によって、貝柱重量が焙乾前の1/5~4/5となる程度まで減少するように焙乾した後、温湿度調整下にあん蒸を行うことを特徴とする請求項1に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項3】
貝柱が、一番煮などの加熱脱殻により得られた貝柱である請求項1又は2に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項4】
貝柱が、脱殻後に冷凍した凍結貝柱である請求項1~のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項5】
凍結貝柱を、NaCl濃度0.5~10(重量)%でかつ温度-5~10℃の水溶液中に12時間以上浸漬することにより解凍した後、二番煮を行うことなく、過熱水蒸気にて焙乾し、次いで、あん蒸を行うことを特徴とする請求項に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項6】
温度110~250℃の過熱水蒸気により3~30分間焙乾を行うことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項7】
過熱水蒸気による焙乾とあん蒸とを、この順序で1回ずつ行う請求項1~のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
【請求項8】
あん蒸工程において、処理雰囲気を、当初から5~50℃でかつ20~80%RHに調整することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の高品質ホタテ白干しの生産方法。
【請求項9】
あん蒸工程において、当初は室温であん蒸を行い、開始から2~7日後に、雰囲気を5~70℃で20~80%RHに調整することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の高品質ホタテ白干しの生産方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はホタテガイ(帆立貝)の貝柱を用いて高品質の白干しを良好な生産性で低コストに生産する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホタテガイは、古くから、その貝柱が刺身などの生食用と、「白干し」と称せられる乾燥貝柱として食用に供せられている。
【0003】
従来、かかるホタテガイの白干し製品(以下、単に「白干し」という)は、例えば、特開平11-42051号公報(特許文献1)に記載されているように、原貝洗浄→一番煮→貝柱摘出→二番煮→焙乾(通風乾燥)→あん蒸(乾燥)→選別・計量・包装の各工程を経て生産されるのが一般的である(図1参照)。しかし、これらの工程を順次行うには多くの時間を要するという問題があるため、本発明者は、さきに、特開2005-137340号(特許文献2)において、過熱水蒸気により焙乾を行うことにより生産時間を大幅に短縮するとともに白干しの品質を向上させる方法を提案した。
【0004】
しかしながら、これらの方法は、いずれも食塩水中で蒸煮する二番煮を行うことを前提としている。すなわち、白干しの生産における二番煮の役割としては、1)塩味の付与、2)予備脱水(乾燥効率の向上)、3)褐変原因物質の排除や関連酵素の失活等による過度の褐変の抑制、などがあげられ、この二番煮の工程は白干しを生産する上で必須と考えられている。
【0005】
ところが、本発明者の研究によれば、この二番煮において貝柱の栄養成分や旨味成分(呈味成分ともいう)が抜け出ていることが判明した。例えば、二番煮後に液の全糖量と蛋白質量を測定すると、貝柱1個あたり合計約600~800mgの全糖量と蛋白質が検出され、二番煮工程でそれと同等又はそれ以上の量の糖と蛋白質が抜け出ていることが判明した。この傾向は、特に冷凍した凍結貝柱を使用して白干しを生産する場合に顕著である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】 特開平11-42051号公報
【特許文献2】 特開2005-137340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、上述のような貝柱中の栄養成分や旨味成分が抜け出て低減する二番煮工程なしで、良好な品質の白干しを生産する方法を提供することにある。また、二番煮工程をなくすことで、従来の方法に比べて低コストで良好な品質の白干しを生産する方法を提供することにある。さらに、従来白干しの生産に殆ど使用されなかった冷凍した凍結貝柱を用いた場合でも、良好な品質の白干し製品を生産し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ホタテガイの貝柱を、特定のNaCl含有水溶液に浸漬し、その貝柱に焙乾を行い、引続き、あん蒸を行うことによって、旨味成分が増し、外観も良好な白干しを、従来よりも高い生産性で生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の如き方法によって、二番煮なしで、ホタテガイの高品質白干しが生産される。
(1)ホタテガイの貝柱を、NaCl濃度が0.5重量%~飽和濃度でかつ温度が-5~40℃の水溶液に1時間以上浸漬することにより塩味を付与した後、二番煮を行うことなく焙乾し、次いで、あん蒸を行うことを特徴とするホタテ白干し製品の生産方法。
(2)過熱水蒸気によって、貝柱重量が焙乾前の1/5~4/5となる程度まで減少するように焙乾した後、温湿度調整下にあん蒸を行うことを特徴とする上記(1)に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)貝柱が、一番煮などの加熱脱殻により得られた貝柱である上記(1)又は(2)に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)貝柱が、脱殻後に冷凍した凍結貝柱(玉冷)である上記(1)~()のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)凍結貝柱を、NaCl濃度0.5~10(重量)%でかつ温度-5~10℃の水溶液中に12時間以上浸漬することにより解凍した後、二番煮を行うことなく、過熱水蒸気にて焙乾し、次いで、あん蒸を行うことを特徴とする上記()に記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)温度110~250℃の過熱水蒸気により3~30分間焙乾を行うことを特徴とする上記(1)~()のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)過熱水蒸気による焙乾とあん蒸とを、この順序で1回ずつ行う上記(1)~()のいずれかに記載のホタテ白干し製品の生産方法。
)あん蒸工程において、処理雰囲気を、当初から5~50℃でかつ20~80%RHに調整することを特徴とする上記(1)~()のいずれかに記載の高品質ホタテ白干しの生産方法。
)あん蒸工程において、当初は室温であん蒸を行い、開始から2~7日後に、雰囲気を5~70℃で20~80%RHに調整することを特徴とする上記(1)~()のいずれかに記載の高品質ホタテ白干しの生産方法。

【発明の効果】
【0010】
以上の如き本発明方法によれば、図2に示すように、二番煮工程を経ることなく白干しを生産するので、二番煮を行う従来の方法に比べ、製品の白干し中に貝柱の旨味成分が多く残っており、食味の改善された製品が得られるという利点がある。また、二番煮を経て生産された白干しに比べ、製品にてり(光沢)があり、外観においても優れた高品質の製品が得られる。
【0011】
さらに、本発明方法では、二番煮の工程を行わないので、そのためのエネルギー、設備などが不要となり、その結果、生産コストも大幅に低減する。また、原料貝柱として通常の加熱脱殻した貝柱だけでなく、冷凍した凍結貝柱も使用できるため、ホタテガイの漁期以外の時期でも、またホタテガイ産地以外の地域でも、いつでも一定品質の白干し製品を生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 従来の白干しの生産工程を示す工程図
【図2】 本発明方法による白干しの生産工程を示す工程図
【図3】 当初から一定条件であん蒸を行ったときの処理試料における製造期間中の褐変と水分活性値との関係を示すグラフ
【図4】 温湿度調整あん蒸の開始時期が白干し色調に及ぼす影響を示すグラフ
【図5】 一番煮により開殻脱殻した貝柱について、食塩水、海洋深層水に浸漬した実験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
<原料となるホタテガイ貝柱>
本発明方法において原料となるホタテガイ(帆立貝)の貝柱としては、従来の方法(一番煮)で得られる加熱貝柱やその冷凍品および生鮮貝柱やその冷凍品である凍結貝柱を使用する。殻つきの原貝から貝柱を摘出する方法としては、手作業など貝柱を摘出する方法、水番煮(一番煮)または水蒸気処理を行って開殻させ貝柱を摘出する方法などが適宜採用される。本発明者が特開2006-280348号で提案した過熱水蒸気による開殻・脱殻法は、凍結原貝を効率的に開殻・脱殻することができ、生鮮原貝は勿論、凍結原貝からでも貝柱を得ることができるので、本発明においても有効に採用することができる。また、本発明方法では、生鮮原貝から手作業などで貝柱を取り出し、そのまま凍結した「玉冷」と呼ばれる凍結貝柱も使用可能である。

【0014】
<NaCl含有水溶液への浸漬処理>
本発明方法では、ホタテガイの貝柱を、必要により水洗を行った後、NaCl濃度が0.5重量%~飽和濃度、好ましくは1.0~10.0重量%、で、かつ、温度が-5~40℃、好ましくは-1~10℃、の水溶液(例えば、食塩水)中に1時間以上浸漬することにより塩味を付与する。
浸漬に用いる上記水溶液のNaCl濃度が上記範囲より低いと、製品の白干しに必要な塩味が不足するだけでなく、次の過熱水蒸気による焙乾によって貝柱の水分率を必要程度まで低減させることが困難となる。一方、浸漬液の温度が上記範囲を超えると、浸漬中に貝柱中の旨味成分が抜け出すおそれが生じるため、好ましくない。
なお、白干しの用途によっては、この浸漬処理に供給する貝柱を予め複数の小片に分割(切り分け)し、その状態で浸漬処理を行ってもよく、その場合は、浸漬処理時間を短縮することができる。
この際、1気圧を超えるように加圧した雰囲気下で浸漬処理を行うのが好ましく、かかる加圧下での浸漬処理を採用することによって、処理時間を大幅に短縮することが可能である。特に好ましい圧力は1.5~3気圧である。
このNaCl含有水溶液への浸漬処理を実施するに際し、当該水溶液に調味液を添加することも可能である。

【0015】
凍結状態にあるホタテガイの凍結貝柱(例えば玉冷)を使用する場合は、以下のような特定の条件の解凍水に浸漬し、解凍すると同時に塩味付けを行う。解凍に使用する液としては、NaCl濃度が0.5~10重量%(好ましくは1.0~10.0重量%)で温度が-5~10℃の範囲内の水溶液を使用するのが望ましい。
この温度範囲で解凍すると貝柱中の旨味成分であるATP(アデノシン三リン酸)関連物質の分解を抑えつつ円滑に解凍することが出来る。
浸漬時間は1時間以上あれば十分であり、解凍と同時に塩味付与する場合は、通常、12~24時間浸漬するのがよい。この浸漬によって、凍結している貝柱が解凍されると同時に適度の塩味が付与される。
なお、一番煮貝柱などの加熱脱殻を行った貝柱については、すでに加熱変性しているので、ATP関連物質の分解は進行しない。
なお、上記水溶液として、NaCl濃度が上記範囲内にある食塩水、海洋深層水、海水などを使用することができる。

【0016】
いずれの場合も、上記NaCl水溶液に、アミノ酸、糖などの呈味成分を添加してもよく、また、後述の焙乾時に生じるドリップ(これには呈味成分が含まれる)の回収液等を再利用して、該回収液を添加してもよい。これらの場合は、貝柱に塩味だけでなく旨味も同時に付与することができる。

【0017】
<焙乾>
本発明方法では、上記のような特定条件にて上記NaCl含有水溶液濃度で浸漬処理をした貝柱を、二番煮を行うことなく焙乾する。焙乾は通常の方法でもよいが、過熱水蒸気(SHS)で焙乾するのが好ましい。具体的には、貝柱を過熱水蒸気焙乾装置内へ供給して貝柱中の水分活性が0.9以下まで水分を除去するのが好適である。水分活性測定はRotronic社製測定装置(HygroPalm)を用いるのが適当である。この過熱水蒸気焙乾によって、貝柱重量が焙乾前の1/5~4/5となる程度まで減少させるのが好ましい。
この過熱水蒸気焙乾では、温度が110~250℃、好ましくは120~180℃の過熱水蒸気(SHS)で、3~30分間加熱するのが適当である。白干しの表面成分を保持し、表面の艶(光沢)を出すために、本発明では過熱水蒸気による焙乾は1回だけでよいが、何回かに分けて行ってもよく、例えば、5分×4回でもよい。ただし、焙乾工程は1日だけでよい。いずれの場合も、あん蒸工程に入る前に貝重量が1/5~4/5になるように1回又は複数回焙乾を実施する。
なお、この過熱水蒸気による焙乾を行うに当り、被処理貝柱を複数の小片に分割して焙乾しても差しつかえない。

【0018】
従来は、二番煮(塩水煮)によって塩味付けとともに予備脱水を行っており、この工程は白干しを生産する上で不可欠とされているが、本発明者の研究によれば、上記の条件で浸漬処理(塩味付与)した貝柱は、過熱水蒸気焙乾を採用することにより、二番煮なしでも効率よく脱水・乾燥することができ、貝柱中の水分を目的とする水分率まで除去・低減させることができることがわかった。
なお、焙乾工程における過熱水蒸気処理の具体的条件については、本発明者が先に提案した特開2005-137340号に記載の条件を参考にすることができる。
本発明では、上述のように二番煮を実施しないので、二番煮工程での旨味成分の離脱が生じない

【0019】
<あん蒸>
上記の条件で過熱水蒸気で焙乾した貝柱は、引き続き、温湿度が調節された空間内であん蒸が行われる。このあん蒸では、温度及び時間の条件を選定することによって製品の白干しの色調をコントロールすることができる。本発明者は先に特願2007-165625号において、二番煮を行った貝柱について好適な色調を実現するあん蒸の方法を提案したが、その方法は本発明でも同様に適用可能である。
この方法では、過熱水蒸気で焙乾した貝柱を、あん蒸装置(恒温恒湿槽)内のネット上に並べ、装置内へ温度及び湿度を調整した空気を循環させるが、この際、温度・湿度を以下のようにコントロールする。

【0020】
本発明にしたがって、二番煮工程なしで白干しを生産するに当り、NaCl濃度が0.5重量%~飽和濃度でかつ温度が-5℃から40℃の水溶液に1時間以上浸漬することにより塩味付与を行った貝柱に、110~250℃の過熱水蒸気により焙乾を行ったものは、次のあん蒸工程において、少なくとも該工程の途中から温湿度条件が管理された雰囲気中で行うこと、特に、あん蒸工程において、処理雰囲気を、当初から5~50℃でかつ20~80%RHに調整するか、又は、当初は室温であん蒸を行い、開始から2~7日後に、雰囲気を5~70℃で20~80%RHに調整すること、が好適である。

【0021】
焙乾した貝柱のあん蒸工程では、これまで天日・通風乾燥が主として行われているが、本発明方法では、槽内の温湿度を積極的にコントロールできる恒温恒湿機や恒温恒湿室を使用した温湿度調整あん蒸を行う。あん蒸における温湿度調整を行うことで製品の白干しの色調を調整することは従来知られていないが、後述する実施例に示すように、この工程で意図的に雰囲気の温湿度調整をすることにより非常に高く評価されるアメ色(a値2.0付近)の製品が得られる。

【0022】
あん蒸の具体的条件としては、例えば、
(a)当初から温度5~50℃、相対湿度20~80%RHに調整した雰囲気中で実施する方法、あるいは、
(b)当初は室温で行い、開始から2~7日後に、雰囲気を温度5~70℃、相対湿度20~80%RHに調製して実施する方法、
のいずれかが採用される。

【0023】
上記のあん蒸工程により貝柱の水分率が16(重量)%以下になっている場合は、それを製品とするが、水分がそれより多い場合は、引き続き、水分率が16%になるまで再度のあん蒸を繰り返す。すなわち、本発明では、過熱水蒸気による焙乾は1回限りでもよいが、上記のあん蒸は、上記の温湿度条件コントロールを1セットとして2回以上繰り返し行ってもよい。特に、1回のあん蒸では貝柱の水分率が16重量%以下まで低下しない場合には、2回以上行うことが望ましい。あん蒸工程中の雑菌繁殖を抑える目的であん蒸時にUV(紫外線)照射を行うことが推奨される。

【0024】
なお、製品の色調の調整を念頭に置いた生産では、焙乾後に比較的高水分含量であることがポイントになると思われる。この場合、菌繁殖のリスクが高まるが、表面殺菌法としても有用性が知られているSHSが有効であり、特にこれとUV(紫外線)照射を組み合わせたあん蒸法が高品質白干しの生産法として好適である。
ホタテ貝柱は、白干し生産において過度の褐変を引き起こす可能性があるが、本発明では、上記の各工程と温湿度コントロール下でのあん蒸を組み合わせることで、製造期間を5~10日程度と従来の35日~40日間から1/4~1/7に短縮するとともに、好ましい色調と呈味をもつ製品を生産することが可能になる。
なお、本発明の方法では、このあん蒸を行う際も、焙乾した貝柱を複数の小片に分割して、あん蒸工程に供給するようにしても差しつかえない。

【0025】
<調味加工>
本発明方法を実施するに当り、上記の焙乾工程あるいはあん蒸工程を終えた貝柱を調味液に浸漬することにより、白干しの味を改善あるいは調整することもできる。

【0026】
<包装、製品化>
上記の如き方法で生産された白干しは、必要に応じ、検品後、1個ずつフィルムなどで包装され、適当な個数ごとに容器へ収納され、最終製品となる。

【0027】
上述のごとく、本発明方法によれば、二番煮なしで高品質の白干しを生産することが可能となり、二番煮工程による栄養成分や旨味成分の溶出がなく、かつ、製品の色に「くすみ」がない、てり(光沢)のある外観となるので、商品価値の高い品質のすぐれた白干しを生産することができる。

【0028】
しかも、本発明方法は、図2からも明らかなように、二番煮工程がないため、従来二番煮に要していた設備、エネルギーなどが不要となり、しかも5~10日程度で生産できるので、生産性が高まるだけでなく、効率性も高まり生産コストも低減することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を詳述するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。なお、例中の%は特に断らない限り重量%を意味する。
[実施例1]
北海道常呂漁業協同組合冷凍工場より購入したホタテガイ凍結貝柱(Sサイズ玉冷)を用いて実験を行った。
15個の凍結貝柱について、NaCl濃度が0.9%~6%、温度-1~0℃の食塩水に、24時間浸漬し、解凍すると同時に塩味付けを行った。
【実施例】
【0030】
続いて、二番煮を行うことなく、焙乾を行った。焙乾では清本鐵工社製小型過熱水蒸気装置(K・SO-0935S)を用いて貝柱を150℃の過熱水蒸気で、4分30秒間加熱した。焙乾は1回とし、引き続いてあん蒸を40~60℃、40~75%RHの範囲で製品の水分活性が0.65以下になるまで行った。水分活性測定は、Rotronic社製測定装置(Hygro Palm)を用いた。測定に当り、試料貝柱の15個のうち10個を無作為に選択して測定した。
【実施例】
【0031】
なお、焙乾直前の所定試料5個についてコニカミノルタ製色彩色差計(CR-400)により、表面のL値を測定し、L値を明るさ(明度)、a値を褐変度として評価した。なお、北海道水産試験場によると一等品の条件としてa値4.5以下、L値40以上が目安となっている。
【実施例】
【0032】
続いて、焙乾後の貝柱をあん蒸するに当り、あん蒸方法としては、干物ネットに室温放置(15~20℃、RH約30%)する方法により行った。あん蒸は貝柱水分が16%になるまで繰り返し行った。
また、比較のため、従来のように二番煮を行ったものを、同様に焙乾・あん蒸して、白干しを生産した。
【実施例】
【0033】
それぞれの条件と焙乾ドリップに含まれる糖分(Brix)と塩分(Salt)を定量し、表1に示す結果を得た。また、浸漬又は二番煮後の処理液の溶出還元糖量、溶出全糖量、溶出糖の平均重合度(溶出全糖量/溶出還元糖量)、溶出タンパク質量を求めた。その結果を表2に示す。さらに、浸漬又は二番煮後の処理液および焙乾時のドリップから、生産過程における貝柱1個当りの溶出物の合計量を求めた。その結果を表3に示す。
これらの結果から、二番煮を行わない本発明の方法では糖やタンパク質などの旨味成分の溶出が少ないことが判る。
【実施例】
【0034】
【表1】
JP0005344693B2_000002t.gif
【実施例】
【0035】
【表2】
JP0005344693B2_000003t.gif
【実施例】
【0036】
【表3】
JP0005344693B2_000004t.gif
【実施例】
【0037】
また、各試験区の重量変化を調べた。その結果を表4に示す。さらに、得られた各白干しについて、それぞれの塩分(NaCl)の含有暈を測定した。その結果を表5に示す。
【実施例】
【0038】
【表4】
JP0005344693B2_000005t.gif
【実施例】
【0039】
【表5】
JP0005344693B2_000006t.gif
製品1個を20mlの水に一晩浸漬後、溶液について測定
ただし、製品塩分量%=〔(製品重量+20)×食塩分重量%〕/製品重量
【実施例】
【0040】
次に、それぞれの白干しを男女計5名で官能検査により、市販白干しに比べて、1(不良)、2(やや悪い)、3(普通)、4(やや良好)、5(非常に良好)の5段階で評価した結果、表6に示す結果を得た。評価では、市販白干しに比べて、1(不良)、2(やや悪い)、3(普通)、4(やや良好)、5(非常に良好)に区分し、5名の平均を四捨五入して表示した。試験区全般に150℃,4.5分×1回の焙乾では3.5/5程度の固形分量となり水分が多いために、二番煮を充分行った試験区でも、あん蒸工程中に変形を生じやすかった。しかし、この問題は焙乾後の貝柱重量が3/5程度以下になるまで焙乾を実施することで解決できた。
【実施例】
【0041】
【表6】
JP0005344693B2_000007t.gif
【実施例】
【0042】
[実施例2]
実施例1において、あん蒸を、所定の温湿度に設定した東京理化製恒温恒湿機(KCL-2000A)を用いる方法に変えて同様の試験を行った。
【実施例】
【0043】
(白干しのあん蒸条件と色調調節)
褐変のモデル実験として、褐変が見られたGlu(グルコース)、G6P(グルコース-6-リン酸)の各溶液を加えた食塩水を浸漬液として用いて塩味付けを実施し、過熱水蒸気焙乾後、あん蒸を行い、白干し製造を行った。
温湿度調整(50℃、60%RH)でのあん蒸を当初から実施すると、6日間で所定の水分(16%以下)となり、製造中の白干しの褐変は過度な上昇が見られ、特にGlu処理が高い値を示した。しかしながら、モデル実験で褐変が見られたG6Pはコントロールである食塩水処理と色調に差はなく、白干しの褐変に影響しなかった。貝柱成分の褐変時にG6P含量に変化が見られることから、その褐変への関与が推察されているが、実際に白干し製造時にG6Pを添加しても色調への影響があまり見られなかったことは興味深い結果となった。
【実施例】
【0044】
あん蒸を室温で実施後、温湿度調整(50℃、60%RH)あん蒸を途中から実施すると、あん蒸温度の上昇と共に、褐変は進行したがGlu処理とコントロールとで差は無く、それぞれ7日間で一等級製品の色調であるa値2前後で製品となった。すなわち、この方法は、Glu処理などの褐変し易い状況であっても過度な褐変は生じないあん蒸方法であることがわかった。
【実施例】
【0045】
水分活性と褐変との関係を図3に示した。製造の進行と共に製品水分活性は低下し褐変は上昇する傾向にあり、特に水分活性0.8付近で大きく褐変値が上昇した。
【実施例】
【0046】
異なる温湿度調整あん蒸とその実施タイミングを変えて製造した製品の色調を図4に示した。この結果、あん蒸温度が40℃程度であれば、温湿度調整あん蒸を焙乾後の当初より実施していても、a値2前後の好ましい製品色調となることがわかった。一方、50℃のあん蒸温度では、好ましい製品の色調とするには、室温あん蒸を2~3日実施した後に、温湿度調整あん蒸を導入しなければならず、上述の図3の結果と併せて考えると、貝柱の水分活性が0.8~0.7前後の時点であん蒸温度が高いと褐変を進行させる可能性が大きいことがわかる。なお、40℃、80%RHの温湿度調整あん蒸を実施した試験区の全ての白干しは、実際の加工現場で一等級の評価を得た。
【実施例】
【0047】
[実施例3]
殻付きの生鮮原貝を沸騰水中で15分間加熱(一番煮)により開殻脱殻し、内臓を除去したホタテガイ貝柱を用い、NaCl濃度6%の食塩水(1℃)又はNaCl濃度3%の海洋深層水(温度1℃)にて塩水浸漬処理を行った。それぞれ、浸漬時間を、6時間、24時間、48時間と変えて実験を行い、各貝柱中のATP関連物質の含有量を測定した。結果は図5に示す通りであった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明方法によれば、二番煮なしで、高い生産性と効率性で低コストに良好な高品質のホタテガイ白干しを生産することが可能になるため、本発明方法は、漁業及び食品工業にとって有用な技術である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4