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明細書 :記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5569894号 (P5569894)
公開番号 特開2010-226996 (P2010-226996A)
登録日 平成26年7月4日(2014.7.4)
発行日 平成26年8月13日(2014.8.13)
公開日 平成22年10月14日(2010.10.14)
発明の名称または考案の名称 記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法
国際特許分類 C12Q   1/48        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI C12Q 1/48 ZNAZ
C12N 15/00 A
G01N 21/64 F
請求項の数または発明の数 2
全頁数 18
出願番号 特願2009-077592 (P2009-077592)
出願日 平成21年3月26日(2009.3.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 The Journal of Neuroscience,”Upregulation of Calcium/Calmodulin-Dependent Protein Kinase IV Improves Memory Formation and Rescues Memory Loss with Aging”,2008年10月1日,http://www.jneurosci.org/cgi/content/short/28/40/9910
審査請求日 平成24年3月21日(2012.3.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
発明者または考案者 【氏名】喜田 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100122574、【弁理士】、【氏名又は名称】吉永 貴大
審査官 【審査官】櫛引 明佳
参考文献・文献 特表2004-537047(JP,A)
特開2004-053416(JP,A)
特表2002-542453(JP,A)
特開2008-167678(JP,A)
Kida et al,Nature Neruosecience,Vol.5,No.4,p.348-355,2002
Wei et al,Nature Neurosecience,Vol.5,No.6,p.573-579,2002
調査した分野 C12N 15/00-15/90
G01N 21/64
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質で標識されたカルモジュリンと、
蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質で標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、
前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、
前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記第1の蛍光物質と、前記第2の蛍光物質との接近に基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、
測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較することを特徴とする、
記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、
前記蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質で標識されたカルモジュリンのアミノ酸配列が、配列番号:1において、N末端側からアミノ酸配列番号が1~239番がCFP、240~241が連結部位、242~390番がカルモジュリンであり、
前記蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質で標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVのアミノ酸配列が、配列番号:2において、N末端側からアミノ酸配列番号が1~239番がYFP、240~243番が連結部位、244~716番がカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVである、
記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法。
【請求項2】
蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質とで標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、
カルモジュリンと、
前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、
前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記カルモジュリン依存性キナーゼIVの立体構造が変化することに基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、
測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較することを特徴とする、
記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、
前記蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質とで標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVのアミノ酸配列が、配列番号:3において、N末端側からアミノ酸配列番号が1~239番がYFP、240~243番が連結部位、244~716番がカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIV、717~718番が連結部位、719~963番がCFPである、
記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用した、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老化に伴う記憶能力の減退は、人類共通の悩みであり、高齢化社会を迎える我が国においても切実な問題である。また、認知症やパーキンソン病などに記憶能力の減退と関連する疾患は多い。このような記憶能力の減退に対する治療法の開発や創薬のターゲットとなる遺伝子を発見することが望まれている。
【0003】
記憶障害を改善させるためのターゲットとなる遺伝子は、真に記憶制御に関わる遺伝子でなければならない。実際には、その働きを強めれば記憶能力が向上し、逆に、弱めれば記憶能力が減退する遺伝子こそが記憶能力を正に制御しているといえる。
【0004】
しかしながら、現在までに、記憶能力が高まった遺伝子変異マウスは報告されているものの、個体レベルで遺伝子制御の強弱に応じた記憶能力の変化が明確にされた例はほとんどない。
【0005】
本発明者らは、記憶形成の過程において、遺伝子発現が誘導されることに着目し、Ca2+情報伝達経路がこの遺伝子発現に重要であることを示してきた(非特許文献1)。また、この情報伝達経路に存在するリン酸化酵素であるカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIV(以下、「CaMKIV」という)は、この機能が弱まると記憶形成能力が重篤な障害を受けることが共同研究中のグループより報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Satoshi Kida,Sheena A.Josselyn,Sandra Pena de Ortiz,Jeffrey H.Kogan, Itzamarie Chevere,Shoichi Masushige,and Alcino J.Silva.CREB required for the stability of new andreactivated fear memories.Nature Neuroscience.USA,NPG New York 1st Apr,2002,volume 5,number 4,pp348-355.
【非特許文献2】Feng Wei,Chang-Shen Qiu,Jason Liauw,Daphne A.Robinson,Nga Ho,Talal Chatila & Min ZhuoCalucium-calmodulin-dependent protein kinase IV is required for fear memory.Nature Neuroscience., USA,NPGNew York,1st May,2002,volume 5,number 6, pp573-579.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先に述べたように、わが国では認知症やパーキンソン病などに記憶能力の減退と関連する疾患が多いため、記憶能力の減退に対する治療法の開発や創薬のターゲットとなる遺伝子を発見することが望まれている。
【0008】
本発明者らは、CaMKIVの働きを高めると記憶能力が向上するのではないかと仮説を立てて、脳内でCaMKIVを過剰に発現する遺伝子操作マウスを開発し、この遺伝子操作マウスの解析を行った。
【0009】
その結果、脳内でCaMKIVを過剰に発現する遺伝子操作マウスでは野生型(普通の)マウスの約1.7倍量のCaMKIVが記憶形成の中枢である海馬に存在しており、この酵素の働きが強まっていること、細胞レベルにおける記憶形成のモデルと考えられている長期増強(LTP)が強まっていることが明らかとなった。さらに、記憶能力テストの結果、複数の課題において、この変異型マウスの記憶能力が顕著に向上していることが明らかとなった。
【0010】
以上のように、CaMKIVの働きが弱まると記憶能力が低下し、強まると記憶能力が向上することから、CaMKIVは記憶能力の正の制御因子として働いていると結論した。従って、CaMKIVをターゲットとして、記憶能力の減退に対する被検化合物の効果を検討すれば、新薬の開発につながるものと思われる。
【0011】
しかしながら、従来、新薬の効果を検証するには、一般的に、新薬を動物に直接注射して、in vivoでその効果を検証するが、そのような手法では膨大な数の動物、労力及びコストが必要になる。これは記憶能力の減退に対する被検化合物の新薬の効果を検証する場合も同様である。
【0012】
そこで本発明は、かかる知見に基づき、CaMKIVをターゲットとした、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために、(1)記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質で標識されたカルモジュリンと、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質で標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記第1の蛍光物質と、前記第2の蛍光物質との接近に基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較することを特徴とする、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、(2)記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質とで標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、カルモジュリンと、前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記カルモジュリン依存性キナーゼIVの立体構造が変化することに基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較することを特徴とする、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
記憶能力の正の制御因子として働いているCaMKIVをターゲットとした、本発明のスクリーニング方法によれば、試験管レベル(in vitro)で新薬の効果を評価することができるため、新薬開発にかかる労力とコストの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスクリーニング方法の概要を説明するための図である。
【図2】第1の蛍光物質としてCFPを使用し、第2の蛍光物質としてYFPを使用した場合のスクリーニング方法の概要を説明した図である。
【図3】発現ベクターを細胞に導入して融合タンパク質群発現細胞を得るために使用する融合タンパク質群をコードする遺伝子を示す図である。
【図4】図3で得られたタンパク質を用いてCaMKIVの活性を検出する原理を説明するための図である。
【図5】被検化合物として、イオノマイシンのみを添加した場合とKN-93を同時添加した場合とで、CaMKIVの蛍光強度が変化する様子を蛍光顕微鏡で経時的に観察した結果を示す図である。
【図6】図5における蛍光強度の比を経時的に測定した結果を示す図である。
【図7】細胞内カルシウムイオン濃度増加前と増加5分後において蛍光エネルギー移動値を測定した結果を示す図である。
【図8】発現ベクターを細胞に導入して融合タンパク質群発現細胞を得るために使用する融合タンパク質群をコードする遺伝子を示す図である。
【図9】図8で得られたタンパク質を用いてCaMKIVの活性を検出する原理を説明するための図である。
【図10】被検化合物として、イオノマイシンのみを添加した場合とKN-93を同時添加した場合とで、細胞内カルシウムイオン濃度増加後にCaMKIVの構造変化により蛍光強度が変化する様子を蛍光顕微鏡で経時的に観察した結果を示す図である。
【図11】図10における蛍光強度の比を経時的に測定した結果を示す図である。
【図12】細胞内カルシウムイオン濃度増加前と増加5分後において蛍光エネルギー移動値を測定した結果を示す図である。
【図13】YFP-CaMKIV発現ベクターを示す図である。
【図14】CFP-CaM発現ベクターを示す図である。
【図15】YFP-CaMKIV-CFP発現ベクターを示す図である。
【図16】カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIV(CaMKIV)が活性化するメカニズムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法について説明する。図16は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIV(CaMKIV)が活性化するメカニズムを説明するための図である。

【0018】
CaMKIVは記憶形成の中枢である海馬の興奮性ニューロンに存在するタンパク質であり、転写因子CREBを中心として記憶形成に必要なタンパク質群をリン酸化する役割を有している。脳の中で長期的な記憶が形成される際、海馬興奮性ニューロン内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が上昇する。そして、カルシウムイオンがカルシウムイオン結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)に結合して、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)複合体が形成される。

【0019】
CaMKIVは普段、不活性型で存在しているが、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)がCaMKIVに相互作用すると、CaMKIVの立体構造が変化して活性型に変化する。その後、カルシウムイオン濃度が低下して、CaMKIVからCa2+/CaMが離れるとCaMKIVは不活性型に戻る。

【0020】
また、カルシウムイオンの高濃度が維持されるような場合には、CaMKIVはカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)によって200番目のトレオニン残基(T200)がリン酸化されることが知られており、このリン酸化によってCa2+/CaMが離れた後もCaMKIVは活性型として維持される。

【0021】
このT200のリン酸化によって、Ca2+/CaMが結合した場合と同様な構造変化が維持され、CaMKIVの活性化状態が維持されると考えられている。また、この場合には脱リン酸化酵素が働いて、CaMKIVが脱リン酸化を受けることで不活性化型に戻る。

【0022】
図1は本発明のスクリーニング方法の概要を説明するための図である。CaMKIVが活性型か不活性型かを判断する指標は2つある。1つには、図1(A)に示すように、CaMKIVとカルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)の相互作用を検出するスクリーニング系である。すなわち、YFP-CaMKIVとCFP-CaM間の相互作用によりCFPとYFP間の距離が短くなり、433nmの波長を励起すると、CFPからの発光が蛍光エネルギー移動によりYFPに吸収され、475nm(水色)ではなく527nm(黄色)の発光波長が観察されるため、これを検出するものである。

【0023】
2つには、図1(B)に示すように、CaMKIVの立体構造の変化を検出するスクリーニング系である。すなわち、カルシウムイオン(Ca2+)/カルモジュリンとの相互作用やT200のリン酸化によってCaMKIVの構造変化を誘導すると、CFPからYFPへの蛍光エネルギー移動が起こらなくなり、CFPからの発光が強く観察されるため、これを検出するものである。

【0024】
従って、本実施形態のスクリーニング方法は、「CaMKIVとカルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)との相互作用を利用するスクリーニング方法」と、「CaMKIVの立体構造が変化することを利用するスクリーニング方法」に分類される。但し、それらは各々単独で使用してもよく、両者を組み合わせて使用してもよい。

【0025】
1.CaMKIVの相互作用を利用するスクリーニング方法
本実施形態のスクリーニング方法は、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質で標識されたカルモジュリンと、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質で標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記第1の蛍光物質と、前記第2の蛍光物質との接近に基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較するものである。

【0026】
本実施形態に使用される、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質(アクセプター)としては、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonance
Energy Transfer:FRET)を起こす組み合わせである限り、その種類を問わない。

【0027】
蛍光物質の具体例としては、例えば、CFP(cyan fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent protein)、GFP(green fluorescent protein)、RFP(red fluorescent protein)、BFP(Blue fluorescent protein)、フルオロセイン(FITC)、ローダミン、Cy5、Cy5.5、テキサスレッド、アクリジンオレンジ、サイバーグリーン、Cy3等、ならびにこれらの誘導体を含む公知のあらゆる蛍光物質が挙げられる。

【0028】
第1の蛍光物質(ドナー)と第2の蛍光物質(アクセプター)との組み合わせの例としては、例えば、CFPとYFP、GFPとRFP、BFPとGFP、フルオロセインとCFP、フルオロセインとローダミン、Cy5とCy5.5など多様な組み合わせが挙げられる。

【0029】
また、用いる蛍光物質は、可視光域内(350~700nm付近)に励起波長を有し、さらに可視光域内に発光波長を有するものが好ましく、水溶液中での蛍光強度が強いものが特に好ましい。

【0030】
蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる蛍光物質およびエネルギー移動のエネルギー受容体(アクセプター)となる蛍光物質は、エネルギー受容体となる物質の励起スペクトルがエネルギー供与体となる物質の放射スペクトルと重複するように選択すればよい。それぞれの蛍光物質の励起波長および蛍光波長は公知であり、また容易に測定することができる。この蛍光物質に固有の励起波長および蛍光波長に基づいて蛍光物質の組合わせを適宜選択することができる。

【0031】
本実施形態において、相互作用が生じたときにエネルギー供与体とエネルギー受容体が蛍光共鳴エネルギー移動を起こすのに適切な配向を保つ相対的位置に存在するように蛍光物質をカルモジュリン及びCaMKIVに含ませる必要がある。

【0032】
このためには、カルモジュリンにおいてはN末端側にCFPを遺伝子工学的に融合した融合タンパク質(CFP-CaM)(配列番号:1)を作製すればよい。CFP-CaMのアミノ酸配列のうち、1~239番のアミノ酸配列がCFP、240~241番のアミノ酸配列が連結部位、242~390番のアミノ酸配列がカルモジュリン(CaM)であり、CFP-CaMは一続きのタンパク質(融合タンパク質)として発現させる。

【0033】
一方、CaMKIVにおいてはN末端側にYFPを遺伝子工学的に融合した融合タンパク質(YFP-CaMKIV)(配列番号:2)を作製すればよい。YFP-CaMKIVのアミノ酸配列のうち、1~239番のアミノ酸配列がYFP、240~243番のアミノ酸配列が連結部位、244~716番のアミノ酸配列がCaMKIVである。

【0034】
なお、本実施形態では上記の方法以外にも例えば、他の蛍光タンパク質群の組み合わせを用いたり、有機化学的に他の蛍光物質を付加することも可能である。

【0035】
本実施形態において「記憶能力の減退に対する被検化合物」とは、例えば、認知症、パーキンソン病、ダウン症、統合失調症、またはこれらに類似する疾病など記憶障害を伴う疾患、さらには、加齢に伴う記憶能力の減退を治療又は改善する化合物を意味する。

【0036】
標識されたカルモジュリン及びCaMKIVと前記被検化合物を接触させるためには培養細胞等の生細胞内で発現ベクターを用いて融合タンパク質群CFP-CaM及びYFP-CaMKIVを発現させればよく、また、大腸菌で生産させた融合タンパク質群、あるいは、in vitroの反応系を用いて合成した融合タンパク質群を用いて溶液中で両者間の結合を検出することもできる。

【0037】
本実施形態において、「相互作用」とは、通常は、タンパク質と標的分子間のイオン結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる分子間に働く力による作用を示すが、この用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。

【0038】
励起光の光源としては特に制限はなく、例えば、ブロードな紫外光や可視光をフィルターや分光器を用いて所望の波長範囲とした光源を用いてもよいし、レーザー等の単色光を用いてもよい。レーザー光源を使う場合は、ヘリウムカドミウムレーザー(442nm)、ブルーダイオードレーザー(405nm)、Arレーザー(457nm)、LD励起固体レーザー(430nm)等を用いてもよい。二光子励起法であれば800nm付近のパルスレーザーを用いてもよい。

【0039】
本実施形態においては、第1の蛍光物質で標識されたカルモジュリン(CaM)がカルシウムイオン(Ca2+)と結合しカルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)が形成されると、さらにこれが第2の蛍光物質で標識されたCaMKIVと相互作用し、CaMKIVが活性型に変化する。このとき、第1の蛍光物質と第2の蛍光物質との接近により、第1の蛍光物質から第2の蛍光物質に蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonance Energy Transfer:FRET)が起こり、第2の蛍光物質が発色する。すなわち、CaMKIVが活性型で存在している状態では、第2の蛍光物質の蛍光強度が増加し、第1の蛍光強度が低下する。

【0040】
一方、CaMKIVが不活性型で存在している状態では、第1の蛍光物質と第2の蛍光物質との間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は起こらないか、蛍光共鳴エネルギー移動の効率が低いため、第1の蛍光物質の蛍光強度は高いままであり、第2の蛍光物質の蛍光強度は低いままである。

【0041】
なお、測定においては、エネルギー供与体である第1の蛍光物質またはエネルギー受容体である第2の蛍光物質の両方またはいずれかの物質からの蛍光を測定すればよい。

【0042】
蛍光強度の測定は、所定の波長を単波長で測定してもよいし、一定の範囲の波長について蛍光スペクトルを測定してもよい。エネルギー受容体またはエネルギー供与体からの蛍光の増加と減少の程度を測定することにより、CaMKIVの活性を検出することができる。

【0043】
この際、第1の蛍光物質からの蛍光強度と第2の蛍光物質からの蛍光強度の比を測定し、比から蛍光共鳴エネルギー移動が起きたかどうかを判断することもできる。また、蛍光の測定は、強光によりアクセプター(第2の蛍光物質)を選択的に褪色させて、ドナー(第1の蛍光物質)の蛍光回復程度を計測することで蛍光共鳴エネルギー移動の効率を算出するフォトブリーチング法で行うことも(第2の蛍光物質をブリーチングする前後の第1の蛍光物質の蛍光強度をそれぞれFb、FaとするとFRET効率=1-(Fb/Fa)で表される)、定常光励起発光を測定する方法で行うことも、時間分解蛍光測定法により行うこともできる。蛍光測定は、通常用いられている蛍光分光光度計により行うことができる。また、市販の蛍光共鳴エネルギー移動解析装置を用いてもよい。

【0044】
このような性質を利用して、記憶能力の減退に対する被検化合物を添加し、測定された蛍光値と、被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較すれば、被検化合物がCaMKIVの活性に及ぼす効果を測定することが可能になるため、かかる被検化合物のスクリーニングに有用である。

【0045】
2.CaMKIVの立体構造が変化することを利用するスクリーニング方法
本実施形態のスクリーニング方法は、記憶能力の減退に対する被検化合物のスクリーニング方法であって、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質とで標識されたカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVと、カルモジュリンと、前記被検化合物と、を溶液中で接触させ、前記カルモジュリンがカルシウムイオンと結合した時に形成されるカルシウムイオン/カルモジュリン複合体と、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVとが相互作用した時の、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVの立体構造が変化することに基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定し、測定された蛍光値と、前記被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較するものである。また、前記被検化合物存在下で、カルシウムイオン/カルモジュリンとは非依存的に、前記カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVの立体構造が変化することに基づく、前記第1の蛍光物質と前記第2の蛍光物質の蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光値を測定してもよい。

【0046】
すなわち、本実施形態では、CaMKIV中に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のエネルギー供与体(ドナー)となる蛍光物質と、エネルギー移動のエネルギー受容体(アクセプター)となる蛍光物質の2種類の蛍光物質を含んでいる点が、先述した実施形態とは異なる。

【0047】
本実施形態に使用される、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる第1の蛍光物質および蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質(アクセプター)としては、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonance
Energy Transfer:FRET)を起こす組み合わせである限り、その種類を問わない。

【0048】
蛍光物質の具体例としては、例えば、CFP(cyan fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent
protein)、GFP(green fluorescent protein)、RFP(red fluorescent protein)、BFP(Blue fluorescent protein)、フルオロセイン(FITC)、ローダミン、Cy5、Cy5.5、テキサスレッド、アクリジンオレンジ、サイバーグリーン、Cy3等、ならびにこれらの誘導体を含む公知のあらゆる蛍光物質が挙げられる。

【0049】
第1の蛍光物質(ドナー)と第2の蛍光物質(アクセプター)との組み合わせの例としては、例えば、CFPとYFP、GFPとRFP、BFPとGFP、フルオロセインとCFP、フルオロセインとローダミン、Cy5とCy5.5など多様な組み合わせが挙げられる。

【0050】
また、用いる蛍光物質は、可視光域内(350~700nm付近)に励起波長を有し、さらに可視光域内に発光波長を有するものが好ましく、水溶液中での蛍光強度が強いものが特に好ましい。

【0051】
蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる蛍光物質およびエネルギー移動のエネルギー受容体(アクセプター)となる蛍光物質は、エネルギー受容体となる物質の励起スペクトルがエネルギー供与体となる物質の放射スペクトルと重複するように選択すればよい。それぞれの蛍光物質の励起波長および蛍光波長は公知であり、また容易に測定することができる。この蛍光物質に固有の励起波長および蛍光波長に基づいて蛍光物質の組合わせを適宜選択することができる。

【0052】
本実施形態において、構造変化が起こっていないときにエネルギー供与体とエネルギー受容体が蛍光共鳴エネルギー移動を起こすのに適切な配向を保つ相対的位置に存在するようにCaMKIVに含ませる必要がある。

【0053】
このためには、カルモジュリンにおいてはN末端側にYFPを、C末端側にCFPをそれぞれ遺伝子工学的に融合した融合タンパク質(YFP-CaMKIV-CFP)(配列番号:3)を作製すればよい。YFP-CaMKIV-CFPのアミノ酸配列のうち、1~239番のアミノ酸配列がYFP、240~243番のアミノ酸配列が連結部位、244~716番のアミノ酸配列がCaMKIV、717~718番のアミノ酸配列が連結部位、719~963番のアミノ酸配列がCFPを示し、YFP-CaMKIV-CFPを一続きの融合タンパク質として発現させる。

【0054】
なお、本実施形態では上記の方法以外にも例えば、他の蛍光タンパク質群の組み合わせを用いたり、有機化学的に他の蛍光物質を付加することも可能である。

【0055】
本実施形態において「記憶能力の減退に対する被検化合物」とは、例えば、認知症、パーキンソン病、ダウン症、統合失調症、またはこれらに類似する疾病など記憶障害を伴う疾患、さらには、加齢に伴う記憶能力の減退を治療又は改善する化合物を意味する。

【0056】
標識されたCaMKIVと前記被検化合物を接触させるためには培養細胞等の生細胞内で発現ベクターを用いて融合タンパク質YFP-CaMKIV-CFPを発現させればよく、また、大腸菌で生産させた融合タンパク質、あるいは、in vitroの反応系を用いて合成した融合タンパク質を用いて溶液中で両者間の結合を検出することもできる。

【0057】
第1及び第2の蛍光物質で標識されたCaMKIVは、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)と相互作用することができ、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)と相互作用すると、立体構造が変化する。この立体構造が変化することにより、エネルギー供与体である第1の蛍光物質とエネルギー受容体である第2の蛍光物質の立体的な位置が変動し、両者の距離および配向が変化し両者の間で起こる蛍光共鳴エネルギー移動の効率が変化する。

【0058】
ここで、「立体構造が変化する」とは、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)がCaMKIVと相互作用し、CaMKIVの活性部位が露出して、相手側のタンパク質をリン酸化できるようになる状態をいう。この場合、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)と相互作用していない状態では、CaMKIVはN末端とC末端が近づいた「閉じた」状態であるが、カルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)と相互作用すると、N末端とC末端の距離が離れて「開いた」状態となり、活性部位が露出する。

【0059】
励起光の光源としては特に制限はなく、例えば、ブロードな紫外光や可視光をフィルターや分光器を用いて所望の波長範囲とした光源を用いてもよいし、レーザー等の単色光を用いてもよい。レーザー光源を使う場合は、ヘリウムカドミウムレーザー(442nm)が一般的であるが、ブルーダイオードレーザー(405nm)、Arレーザー(457nm)、LD励起固体レーザー(430nm)等を用いてもよい。二光子励起法であれば800nm付近のパルスレーザーを用いてもよい。

【0060】
本実施形態においては、第1及び第2の蛍光物質で標識されたCaMKIVが不活性型で存在する場合は、第1の蛍光物質と第2の蛍光物質とが接近していることにより、第1の蛍光物質から第2の蛍光物質に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起こり、第2の蛍光物質が発色する。すなわち、CaMKIVが不活性型で存在している状態では、第2の蛍光物質の蛍光強度は高いままであり、第1の蛍光強度は低いままである。

【0061】
一方、第1及び第2の蛍光物質で標識されたCaMKIVがカルシウムイオン/カルモジュリン(Ca2+/CaM)と相互作用すると、CaMKIVが活性型に変化する。このとき、CaMKIVの立体構造が変化するため、第1の蛍光物質から第2の蛍光物質に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起こらなくなるか、蛍光共鳴エネルギー移動の効率が低下するため、第1の蛍光物質の蛍光強度が増加し、第2の蛍光物質の蛍光強度が低下する。

【0062】
なお、測定においては、エネルギー供与体である第1の蛍光物質またはエネルギー受容体である第2の蛍光物質の両方またはいずれかの物質からの蛍光を測定すればよい。

【0063】
蛍光強度の測定は、所定の波長を単波長で測定してもよいし、一定の範囲の波長について蛍光スペクトルを測定してもよい。エネルギー受容体またはエネルギー供与体からの蛍光の増加と減少の程度を測定することにより、CaMKIVの活性を検出することができる。

【0064】
この際、第1の蛍光物質からの蛍光強度と第2の蛍光物質からの蛍光強度の比を測定し、比から蛍光共鳴エネルギー移動が起きたかどうかを判断することもできる。また、蛍光の測定は、強光によりアクセプター(第2の蛍光物質)を選択的に褪色させて、ドナー(第1の蛍光物質)の蛍光回復程度を計測することで蛍光共鳴エネルギー移動の効率を算出するフォトブリーチング法で行うことも(第2の蛍光物質をブリーチングする前後の第1の蛍光物質の蛍光強度をそれぞれFb、FaとするとFRET効率=1-(Fb/Fa)で表される)、定常光励起発光を測定する方法で行うことも、時間分解蛍光測定法により行うこともできる。蛍光測定は、通常用いられている蛍光分光光度計により行うことができる。また、市販の蛍光共鳴エネルギー移動解析装置を用いてもよい。

【0065】
このような性質を利用して、記憶能力の減退に対する被検化合物を添加し、測定された蛍光値と、被検化合物の非存在下で同様に測定した蛍光値とを比較すれば、被検化合物がCaMKIVの活性に及ぼす効果を測定することが可能になるため、かかる被検化合物のスクリーニングに有用である。
【実施例】
【0066】
1)蛍光物質の標識(融合タンパク質群の発現ベクターの概略)
ヒト由来のCaMKIV cDNAのオープンリーディングフレームの5’末端側にTCC GGA GGC GGC配列を付加し、3’末端側にAGATCT配列を導入し、pEYFP-C1 Vector(クロンテック社)のBspEIとBglIIの制限酵素サイトに導入して、YFP-CaMKIV発現ベクターを構築した(図13)。
【実施例】
【0067】
マウス由来のCaM cDNAのオープンリーディングフレームの5’末端側にTCC GGA配列を付加し、3’末端側にGAA TTC配列を導入し、pECFP-C1 Vector(クロンテック社)のBspEIとEcoRIの制限酵素サイトに導入して、CFP-CaM発現ベクターを構築した(図14)。
【実施例】
【0068】
ヒト由来のCaMKIV cDNAのオープンリーディングフレームの5’末端側にTCC GGA GGC GGC配列を付加し、3’末端の終止コドンTAAの代わりにGGTACCを導入し、pEYFP-C1 Vector(クロンテック社)のBspEIとKpnIの制限酵素サイトに導入し、その後、このKpnIとBamHIのサイトにオープンリーディングフレームの5’末端側にGGTACCを導入したCFP cDNAを導入して、YFP-CaMKIV-CFP発現ベクターを構築した(図15)。
【実施例】
【0069】
2)細胞への遺伝子導入(Transfection)
100μlのFBS free DMEM (Nissui社製, 05915)にYFP-αCaMKIV-CFP、あるいはYFP-CaMKIVとCFP-CaMの発現Vectorをそれぞれ2μgとPLUS(商標)Reagent (invitrogen社製, 11514-015)を2μl加え、15分間室温で放置した。その後Lipofectamine(商標)Reagent (invitrogen社製, 18324-012)を2μl加えた100μlのFBS free DMEMを加え、更に15分間室温で放置した後にFBS free DMEMを800μl加え、全量を5×105個のHela細胞を播種したDishに添加した。CO2インキュベーター (37℃, 5% CO2) で2時間培養した後に10% FBS contain DMEMを1ml加え、CO2インキュベーター (37℃, 5% CO2) で48時間培養した後にImagingを行った。
【実施例】
【0070】
3)蛍光値の測定
Transfectionから48時間後に培地をHBSS buffer (5mM KCl,0.4mM KH2PO4,137mM NaCl,4mM NaHCO3,0.3mM Na2HPO4,pH 7.4) 1.95mlに交換し、CO2インキュベーター (37℃, 5% CO2) で30分培養後にImagingを行った。細胞の観察には倒立顕微鏡IX70 (OLYMPUS社製) を用いた。YFPの励起用フィルターとして500AF25 (OMEGA OPTICAL社製) 、蛍光検出用のフィルターとして535DF25 (OMEGA OPTICAL社製) を用いた。また、CFPの励起用フィルターとして440DF21 (OMEGA OPTICAL社製) 、蛍光検出用のフィルターとして480DF30(OMEGA OPTICAL社製)を用いた。
【実施例】
【0071】
経時的に蛍光強度の比を測定する場合には、観察開始から30秒毎に440DF21でCFP (Donor社製) を励起した際のCFPの蛍光画像を480DF30で取得し、YFPの蛍光画像を535DF25で取得した。2つの蛍光検出用フィルターの切り替えはフィルターホイールをコンピュータ制御下で回転させて行った。取得した蛍光画像の取り込みはDouble-View system (浜松ホトニクス社製) を介して冷却CCDカメラ:ORCA-ER (浜松ホトニクス社製) で行った。観察する細胞は、本実験で使用するFRETシステムで蛍光強度が1000~3000付近のものを選んだ。imaging開始から5分後に薬剤添加を行い、その後20分間観察を行った。取得した画像はAQUACOSMOS (浜松ホトニクス社製) を用いて解析し、Emission Ratio (CFP励起のYFPの蛍光/CFP励起のCFPの蛍光) を算出した。
【実施例】
【0072】
フォトブリーチング法を用いてFRET発生効率を求める場合には、前記同様に蛍光強度が1000~3000付近の細胞を選んだ。始めに440DF21でCFPを励起した際のCFPの蛍光画像を480DF30で取得し、500AF25でYFPを励起した場合のYFPの蛍光画像を535DF25で取得した。YFPとCFPの蛍光画像を取得した後、535nmの光を細胞に1分間照射し、YFPを退色させた(Acceptor bleaching)。その後、CFPの蛍光画像とYFPの蛍光画像を再び取得した。取得した画像はAQUACOSMOSを用いて解析し、Acceptor bleachingによってYFPの退色が観察された場合、FRET efficiency (1-Acceptor bleaching後のCFPの蛍光強度/ Acceptor bleaching前のCFPの蛍光強度) を算出した。薬剤添加を行う場合は、添加5分後に前述と同様の方法でAcceptor bleachingを行った。
【実施例】
【0073】
1.相互作用(アクティブの時に蛍光する)を利用したスクリーニング方法
(1)概要の説明
図2は、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体となる第1の蛍光物質としてCFPを使用し、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー受容体となる第2の蛍光物質としてYFPを使用した場合のスクリーニング方法の概要を説明した図である。
【実施例】
【0074】
(2)蛍光物質の標識
図3は、カルモジュリンとCaMKIVとの結合を指標にして、細胞内あるいは試験管内においてスクリーニングを実施するための蛍光物質を融合したタンパク質群の構造を示す図である。図3(A)はCFPとカルモジュリン(CaM)をコードする遺伝子、図3(B)はYFPとCaMKIVをコードする遺伝子を示す。
【実施例】
【0075】
(3)スクリーニング方法の説明
図4は、上記(2)で得られたタンパク質を用いてCaMKIVの活性を検出する原理を説明するための図である。CFP-CaMとYFP-CaMKIVが相互作用していない状態では、CFPを励起する波長の光を照射するとCFPからの発光波長が検出されるが、両者が相互作用した状態では、CFPを励起する波長の光を照射するとCFPからの発光がYFPに吸収される蛍光共鳴エネルギー移動が起こり、YFPからの発光波長が検出されるようになる。
【実施例】
【0076】
図5は、被検化合物として、イオノマイシンのみを添加した場合とKN-93を同時添加した場合とで、CaMKIVの蛍光強度が変化する様子を蛍光顕微鏡で経時的に観察した結果を示す図である。細胞内カルシウムイオン濃度増加後にCaMKIVとカルモジュリンの相互作用により蛍光強度の比が増加する様子を経時的に蛍光顕微鏡で観察した結果を示したのが上図であり、CaMKIVの活性化を阻害するKN-93によってこの結合を妨げた結果を示したのが下図である。
【実施例】
【0077】
図6は、図5における蛍光強度の比を経時的に測定した結果を示す図である。図面の上線がイオノマイシンのみを添加した結果、下線がKN-93を同時添加した結果を示す。細胞内カルシウムイオン濃度を増加させるイオノマイシンは測定開始後1分で細胞培養上清に添加した。イオノマイシンのみを添加した場合に蛍光強度の比が増加して、蛍光共鳴エネルギー移動が起こっており、CaMKIVとCaMとの相互作用が起こったことが示された。
【実施例】
【0078】
図7は、フォトブリーチング法を用いて、細胞内カルシウムイオン濃度を増加させるイオノマイシン添加前と添加5分後においてそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動効率を測定した結果を示す図である。イオノマイシン添加5分後において蛍光エネルギー移動効率の増加が観察され、CaMとCaMKIVが相互作用したことが示され、一方、KN93を同時添加した場合には、蛍光エネルギー移動効率の増加は観察されず、CaMとCaMKIVの相互作用は認められなかった。
【実施例】
【0079】
2.立体構造の変化(アクティブの時に蛍光しない)を利用したスクリーニング方法の説明
(1)蛍光物質の標識
図8は、発現ベクターを細胞に導入して融合タンパク質群発現細胞を得るために使用する融合タンパク質をコードする遺伝子を示す図であり、YFP、CaMKIVとCFPをコードする遺伝子を示す。
【実施例】
【0080】
(2)スクリーニング方法の説明
図9は、上記(1)で得られたタンパク質を用いてCaMKIVの活性を検出する原理を説明するための図である。YFP-CaMKIV-CFPが構造変化していない状態では、CFPとYFPとの距離が近いため、CFPを励起する波長の光を照射するとCFPからの発光がYFPに吸収される蛍光共鳴エネルギー移動が起こり、YFPからの発光波長が検出される。一方、CaMKIVが活性化型となり、YFP-CaMKIV-CFPの構造変化が起こると、CFPとYFPの間の距離が長くなるため、CFPを励起する波長の光を照射するとCFPからの発光波長が強く検出されるようになる。
【実施例】
【0081】
図10は、被検化合物として、イオノマイシンのみを添加した場合とKN-93を同時添加した場合とで、CaMKIVの蛍光強度が変化する様子を蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。細胞内カルシウムイオン濃度増加後にCaMKIVの構造変化により蛍光強度の比が低下する様子を経時的に蛍光顕微鏡で観察した結果を示したのが上図であり、CaMKIVの活性化を阻害するKN-93によってこの構造変化を妨げた結果を示したのが下図である。
【実施例】
【0082】
図11は、図10における蛍光値を経時的に測定した結果を示す図である。図面の下線がイオノマイシンのみを添加した結果、上線がKN-93を同時添加した結果を示す。細胞内カルシウムイオン濃度を増加させるイオノマイシンは測定開始後1分で細胞培養上清に添加した。イオノマイシンのみを添加した場合に蛍光強度の比が低下して、蛍光共鳴エネルギー移動が起こらなくなったこと、つまり、CaMKIVの構造変化が起こったことが示された。
【実施例】
【0083】
図12は、フォトブリーチング法を用いて、細胞内カルシウムイオン濃度を増加させるイオノマイシン添加前と添加5分後においてそれぞれ蛍光共鳴エネルギー移動効率を測定した結果を示す図である。イオノマイシン添加5分後において蛍光エネルギー移動効率の低下が観察され、CaMKIVが構造変化したことが示され、一方、KN93を同時添加した場合には、蛍光エネルギー移動効率の低下は観察されず、CaMとCaMKIVの相互作用は認められなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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