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明細書 :エタノールの製造方法およびエタノール製造システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4237684号 (P4237684)
公開番号 特開2005-065695 (P2005-065695A)
登録日 平成20年12月26日(2008.12.26)
発行日 平成21年3月11日(2009.3.11)
公開日 平成17年3月17日(2005.3.17)
発明の名称または考案の名称 エタノールの製造方法およびエタノール製造システム
国際特許分類 C12P   7/08        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI C12P 7/08
C12M 1/00 H
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2004-232363 (P2004-232363)
出願日 平成16年8月9日(2004.8.9)
優先権出願番号 2003288690
優先日 平成15年8月7日(2003.8.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年3月7日(2007.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 昌治
【氏名】本多 宏明
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100122574、【弁理士】、【氏名又は名称】吉永 貴大
審査官 【審査官】三原 健治
参考文献・文献 特開昭59-006882(JP,A)
Bioprocess Engineering, 1999, Vol.20, p.561-563
Trends in Biotechnology, 1985, Vol.3, p.96-99
Appl. Microbiol. Biotechnol., 1994, Vol.41, p.296-301
Energy from Biomass 1, 1987, p.290-294
Process Biochemistry, 1999, Vol.34, p.115-119
Biotech. Bioeng., 1985, Vol.27, p.34-40
Journal of Scientific and Industrial Research, 1997, Vol.56, p.86-90
日本生物工学会大会講演要旨集、2001年、第281頁、653
調査した分野 C12P 7/00-7/66
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
CAplus(STN)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
G-Search
特許請求の範囲 【請求項1】
デンプン質を含む食品廃棄物を用い、発酵によりエタノールを製造する方法において、
前記食品廃棄物から、水分含量が30重量%以下のペレットを形成するペレット形成工程と、
前記ペレットに水分を添加し、麹菌を接種して好気的条件下で糖化ペレットを得る糖化工程と、
前記糖化ペレットと酵母と水とから構成される発酵もろみの発酵開始時の水分含量を30~60重量%に調整して固体発酵を行う固体発酵工程と、
を備えたエタノールの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記食品廃棄物の水分含量を調整する前処理工程を備えた請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項3】
前記麹菌は、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス
ソーヤ(Aspergillus sojae)又はアスペルギルス サイトイ(Aspergillus saitoi)から選択される請求項1又は2に記載のエタノールの製造方法。
【請求項4】
さらに、固体発酵工程の後、前記発酵もろみを蒸留してエタノールを得る工程と、蒸留残渣から家畜の飼料を得る工程と、を備えた請求項1~のいずれか1項に記載のエタノールの製造方法。
【請求項5】
さらに、固体発酵工程の後、前記発酵もろみを真空蒸留してエタノールを得る工程を備えた請求項1~3のいずれか1項に記載のエタノールの製造方法。
【請求項6】
デンプン質を含む食品廃棄物から、水分含量が30重量%以下のペレットを形成するペレット形成装置と、
記ペレットに水分を添加し、麹菌を接種して好気的条件下で培養することにより糖化ペレットを製造する製麹装置と、
前記糖化ペレットと酵母と水とから構成された水分含量30~60%の発酵もろみを嫌気的条件下で発酵させる固体発酵槽と、
発酵終了後の発酵もろみを蒸留してエタノールを回収する蒸留装置と、
を備えたエタノール製造システム。
【請求項7】
前記蒸留装置が真空蒸留装置である、請求項6に記載のエタノールの製造システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン質を含む原料を用い、発酵によりエタノールを生産する方法に係り、詳細には、エタノール生産過程で廃液を生じることないエタノールの製造方法およびエタノール製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
わが国における廃棄物の排出状況(1996年)は産業廃棄物が4億500万トン、一般廃棄物が5069万トンであり、近年になってもその排出量に大きな変動はみられない。これらの廃棄物のうち、食品廃棄物は、1940万トンを占め、その内訳は一般廃棄物が1600万トン(事業系から600万トン、家庭系から1000万トン)食品製造業から排出される事業系の産業廃棄物が340万トンとなっている。総排出量1940万トンの内、91%が焼却処分され再資源化製品への転換は9%にとどまっている。
【0003】
この現状下において、2001年(平成13年5月1日)に食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(通称、食品リサイクル法)が施行された。そのため、食品製造、加工卸売り、小売業、外食産業等の食品関連業者は事業場内から排出される食品廃棄物の発生抑制や再生利用に取り組まなければならなくなった。
【0004】
食品廃棄物の排出削減対策としては、発生抑制、再生利用、減量化が優先順位となっているが、特に再生利用(堆肥、飼料、燃料等への変換)のための技術が望まれている。
【0005】
なかでも、食品廃棄物をアルコールに転換するアルコール発酵法は国内においても実用化に向けた開発が積極的に実施されている。例えば、特開2002-159954号公報には、一次処理地点に設けられた一次処理設備でセルロース系廃棄物に酵素液を作用させて糖を生成し、この糖化工程で生成した糖を含有する糖含有液を二次処理地点に設けられた中央設備へ輸送し、中央設備で、糖含有液を用いて発酵を行うことにより、アルコールを取得する方法が開示されている(特許文献1)。

【特許文献1】特開2002-159954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエタノール発酵法は、液状の発酵もろみでアルコール発酵を行う、いわゆる液体発酵法を採用する。そのため、COD濃度の高い蒸留排液やアルコール回収後に残存する蒸留残渣が発生するため、これらの処理・処分対策に苦慮している。
【0007】
そこで本発明では、従来のアルコール発酵法を根本から見直し、蒸留排液を伴う液体発酵とは異なる固体発酵法の適用を試みた。即ち、本発明は、固体発酵法による新規アルコール生成方法およびシステムを開発し、アルコール生成過程において廃液を排出しないエタノールの製造方法及びエタノール製造システムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、デンプン質を含む原料を用い、発酵によりエタノールを得るエタノールの製造方法において、前記原料からペレットを形成するペレット形成工程と、前記ペレットに麹菌を接種して糖化ペレットを得る糖化工程と、前記糖化ペレットと酵母と水とから構成される発酵もろみの発酵開始時の水分含量を30~60重量%に調整して固体発酵を行う固体発酵工程と、を備えたエタノールの製造方法を提供するものである。
【0009】
ここで、固体発酵とは、酵母の生育とエタノール発酵が可能な最小量の水分を保つ発酵もろみを用い、発酵開始から終了まで固形状で行う発酵法をいう。
【0010】
従来の液体発酵法では、還元糖を5~10重量%程度含む水溶液に酵母を添加して培養し、アルコール発酵の終了後、蒸留によりエタノールを回収する際、廃液と発酵残渣が生成されるが、固体発酵法では、蒸留によりエタノールを回収した後は発酵残渣のみ生成されるため、廃液の発生がなく、廃液処理のための作業やコストが不要となる。また、液体発酵法と比較して水分含量が低いため、悪臭の発生が少なく、エタノールの回収も容易である。
【0011】
また、デンプン質を含む原料をペレット化することにより、発酵原料の取り扱いを容易にすることができる。また、運搬も容易となるため、運送コストを抑えることができる。更に、糖化工程において、麹菌が生育し易くなるため、糖化効率の向上を図ることができる。なお、上記ペレットは米粒大の大きさに形成することがより好ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、前記原料の水分含量が70%以上である場合、前記原料の水分含量を調整する前処理工程を備えることが好ましい。
【0013】
また、前記ペレットは、その水分含量が30重量%以下とすることが好ましい。前記ペレットの水分含量を30重量%以下にすることによって、水分活性が低下する結果、発酵原料が酸化・腐敗することがなくなり、保存安定性を向上することができるとともに、発酵原料から生じる悪臭の低減を図ることができる。更に、重量が軽くなるため、運送コストを抑えることもできる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記麹菌は、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス オリゼ(Asperugillus oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)又はアスペルギルス サイトイ(Aspergillus saitoi)から選択されることが好ましい。
【0015】
また、本発明はデンプン質を含む原料を用い、発酵によりエタノールを製造する方法において、前記原料に麹菌を接種して糖化原料を得る糖化工程と、前記糖化原料と酵母と水とから構成される発酵もろみの発酵開始時の水分含量を30~60重量%に調整して固体発酵を行う固体発酵工程と、を備えたエタノールの製造方法を提供するものである。
【0016】
発酵原料は、その水分含量が70%未満であれば水分調整の必要もなく、ペレット化を行わなくても直接糖化工程に付すことができる。従って、水分含量が70%未満の原料を用いる場合はより簡易に固体発酵の発酵原料とすることができ、前処理工程及びペレット形成工程を省略できるためエタノール製造のコストも低減することができる。
【0017】
更に、本発明は、デンプン質を含む原料からペレットを形成するペレット形成装置と、麹菌を接種した前記ペレットを培養することにより糖化ペレットを製造する製麹装置と、前記糖化ペレットと酵母と水とから構成された水分含量30~60%の発酵もろみを嫌気的条件下で発酵させる固体発酵槽と、発酵終了後の発酵もろみを蒸留してエタノールを回収する蒸留装置と、を備えたエタノール製造システムを提供するものである。
【0018】
このような構成とすることにより、アルコール発酵の終了後において蒸留を行う際にも廃液の発生がなく、廃液処理のための作業やコストが不要となる。また、液体発酵法と比較して水分含量が低いため、悪臭の発生が少なく、エタノールの回収も容易である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルコール発酵を、水分含量の比較的少ない固体発酵法で行うため、アルコール回収の際に問題となっていた廃液の発生がなく、廃液処理のための作業やコストが不要となる。また、蒸留後の残渣は酵母や麹菌由来のタンパク質を豊富に含むため、家畜用の飼料として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図を参照しつつ本発明を更に詳細に説明する。図1は、本実施形態のエタノール製造システム1の概要を示したものである。
【0021】
図に示すように、本実施形態のエタノール製造システム1は、圧縮装置10、蒸気乾燥装置20、ペレット形成装置30、製麹装置40、固体発酵槽70、蒸留装置80、精留装置84とから構成される。以下、これらの構成について説明する。
【0022】
圧縮装置10は、デンプン質を含む原料であって、その水分含量が70重量%以上のものをホッパー12から投入し、圧縮ローラー14で原料中の水分を除去するとともに、原料中に含まれる夾雑物を除去するためのものである。
【0023】
蒸気乾燥装置20は、圧縮装置10から供給された原料に、高温・高圧の過熱蒸気Sを吹き付け、撹拌羽21で撹拌を行いつつ、原料中に含まれる水分が10~60重量%になるまで乾燥するためのものである。
【0024】
ペレット形成装置30は、蒸気乾燥装置20で水分含量が10~30重量%まで乾燥された原料から、粒状のペレットを形成するためのものである。形成されるペレットは米粒大の大きさであることが好ましい。
【0025】
製麹装置40は、ペレット形成装置30で製造されたペレットに麹菌を接種し、ペレット中に含まれるデンプン質を麹菌の酵素によって糖化することにより、糖化ペレットを得るためのものである。
【0026】
製麹装置40の一例を図2に示す。さらに、製麹装置40の一部を詳細に図3に示す。図2、図3に示すように、製麹装置40は、後述するフィルム容器41を収容する恒温槽42、空気を送風するための送風ポンプ43、送風ポンプ43の空気の流量を調整するための流量計44、空気に適度な湿度を与えるために内部に水を満たした加湿器45、加湿器45に送風ポンプから送られてきた空気を拡散するための撒気筒46、空気中の雑菌を除去するための精密フィルタ47、恒温槽41の温度調節を行う加熱器48と冷却器49を備えている。なお、加湿器45と精密フィルタ47との間の接続チューブ90には、空気の逆流を防止するための逆止弁50が接続されている。
【0027】
フィルム容器41は可撓性の素材からなり、給気チューブ91が接続された給気口51、排気チューブ92が接続された排気口52、麹菌(図示せず)を投入するためのロート53が接続された接種口54、温度センサ55をフィルム容器41の内部に設置するための温度センサー設置口56が形成されている。
【0028】
フィルム容器41内の温度は温度センサ55で計測され、温度センサ50に接続された温度計57に表示される。また、排気チューブ92の下流にはフィルム容器41内の圧力を調整するための圧力調整コック54が装着されると共に、排気チューブ92から排出された排気の温度および湿度を計測するための温湿度センサ60、排気中の炭酸ガス濃度を測定するための炭酸ガスセンサ61により、フィルム容器41内の環境が常時監視される。
【0029】
なお、フィルム容器41は恒温槽42に設置された支柱62により、恒温槽42内に支持される。
【0030】
ペレットPおよび麹菌Aspは、図2に示すように、フィルム容器41の中に投入され、通気を行いつつ一定温度で培養されることにより、ペレットP中のデンプン質が糖化され、糖化ペレットとなる。
【0031】
固体発酵槽70は、前記糖化ペレットに酵母Yを添加し、発酵もろみの水分含量を30~60重量%に設定して固体発酵を行うためのものである。固体発酵槽70には、温度を酵母Yの至適温度に保持するためのヒーター71と、添加酵母Yの均一化並びに添加酵母Yの増殖に必要な酸素を供給するための撹拌羽72を備えている。なお、発酵中は撹拌羽72は停止しており、嫌気的条件下で固体発酵が進行する。
【0032】
蒸留装置80は、発酵が終了した発酵もろみからエタノールを蒸留し、高濃度のエタノールを得るためのものである。蒸留装置は単式蒸留機、連続式蒸留機、真空蒸留機等を使用することができる。蒸留を行うことにより、固体発酵を終了した発酵もろみから約60重量%のエタノールを得ることができる。
【0033】
精留装置84は、更に高品質、高濃度のアルコールを得る目的で使用されるものである。精留を行うことにより、最終的に90重量%以上のエタノールを得ることができる。
【0034】
次に、既述の装置を用いてデンプン質を含む原料からエタノールを生産する方法について説明する。
【0035】
<原料の調製>
発酵原料としては、デンプン質を含むものであれば特に制限はなく、食品、農産物、農産廃棄物、飲食店や給食センター等から排出される調理残渣などを使用することができる。調理残渣などの食品廃棄物は夾雑物や水分を多量に含んでいることが多いため、水分含量が70%以上の原料を用いる場合は図1に示す圧縮装置10を使用して夾雑物を除去した上で大まかな脱水を行い、蒸気乾燥機20を用いて更に乾燥を行ない、水分含量を30重量%以下にする。
【0036】
更に、ペレット形成装置30により原料をペレット化する。形成されるペレットの大きさは適宜設定可能であるが、後述する糖化工程において麹菌の繁殖を効率よく行う観点から米粒大の大きさに形成することが好ましい。
【0037】
このように原料を乾燥しペレット化することにより、発酵原料としての品質を安定化することができ、取り扱いも容易となるとともに、後述する糖化工程における糖化を効率よく行うことができる。
【0038】
なお、原料の水分含量が70重量%未満の場合は、特に水分含量を調整することなくペレット化してもよい。また、破砕等の手段により容易に粒状化することが可能な場合はペレット形成装置30以外の手段を用いてもよい。
【0039】
<糖化工程>
ペレット化された原料は、製麹装置40を使用して糖化される。図3に示したフィルム容器41に、ペレットを入れ、更に、蒸留水で水分含量が30~60重量%となるように調整し、フィルム容器内の空気を真空ポンプ等で真空状態にした後、オートクレーブ等で滅菌する。
【0040】
次に、別途、30℃、3日間培養したふすま麹を種菌として、ロート53から接種する。そして恒温槽42の温度を麹菌の至適温度に設定し、通気を行いながら製麹を行なう。このようにして麹菌を培養することにより、原料のデンプン質が糖化された糖化ペレットを得る。
【0041】
麹菌としては、Aspergillus oryzae KBN606(醤油用)、Aspergillus oryzae KBN615(醤油用)、Aspergillus sojae KBN650(醤油用)、Aspergillus oryzae KBN930(味噌用)、Aspergillus oryzae KBN943(麦味噌用)、Aspergillus oryzae KBN1015(清酒用)、Aspergillus kawachii KBN2001(焼酎用)、Aspergillus kawachii P10-1(焼酎用)、Aspergillus awamori KBN2012(焼酎用)、Aspergillus saitoi KBN2024(泡盛用)等を挙げることができ、特にAspergillus kawachii KBN2001(焼酎用)、Aspergillus kawachii P10-1、Aspergillus oryzae KBN1015、Aspergillus oryzae KBN943、Aspergillus sojae KBN650、Aspergillus saitoi KBN2024、Aspergillus awamori KBN2012を用いることが好ましい。
【0042】
なお、製造した糖化ペレットは、次回の糖化工程の種菌(スターター)として利用することができる。
【0043】
<発酵工程>
糖化ペレットは、水、酵母とともに発酵槽70に投入され、添加酵母Yの均一化並びに添加酵母Yの増殖に必要な酸素を供給するため、撹拌羽72で1~2時間に1回程度の割合で1~2日間、間歇的に撹拌を行った後、嫌気的条件下で発酵が行われる。なお、発酵もろみはその水分含量が30~60重量%に調整される。このように水分含量を調整することにより、発酵開始から終了まで廃液を発生することなくアルコール発酵を行うことができる。
【0044】
なお、水分含量が30重量%未満の場合はほとんどアルコールは生成されず、一方、水分含量が60重量%を超える場合、特に70重量%以上の場合はアルコール回収後に廃液が発生するため好ましくない。
【0045】
温度は酵母の至適温度により適宜設定することができるが、コスト面からみた場合、温度20~25℃が経済的であるためかかる温度に設定することが好ましい。
【0046】
酵母はアルコール発酵に一般に用いられるサッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces serevisiae)属の酵母を使用することができる。なお、発酵終了後のもろみのうち、一部を次回の発酵の種菌(スターター)として使用することができる。発酵終了時点でのアルコール濃度は、約5重量%程度である。
【0047】
<蒸留・精留工程>
発酵終了後、固体もろみは蒸留装置80によって蒸留され、アルコール濃度が約60重量%にまで濃縮される。更に、精留装置84により精留することにより、最終的にアルコール濃度を90重量%以上とすることができる。
【0048】
得られたアルコールは工業用アルコールとして種々の分野で利用することができる。なお、蒸留残渣は酵母や麹菌に由来するタンパク質を豊富に含み、栄養学的に優れていることから、家畜の飼料として有効利用することができる。
【実施例1】
【0049】
食品残渣を原料として、固体発酵によりエタノールの生産を行った例を説明する。発酵原料として、給食センターおよび学生食堂から排出された食品残渣を用いた。食品残渣はごみ圧縮装置((株)西原環境衛生研究所製)により、予め食品残渣以外の夾雑物を除去するとともに、過剰の水分を除去した。
【0050】
その後、蒸気乾燥機((株)西原環境衛生研究所製)により、水分含量が20%以下になるように食品残渣を蒸気乾燥した。
【0051】
次に、形成機((株)西原環境衛生研究所製)を使用して食品残渣を米粒大に粒状化した乾燥ペレット(以下「食品残渣ペレット」と称する)を製造した。なお、食品残渣ペレットの組成は水分20重量%、全糖20重量%、還元糖7重量%、タンパク質18重量%であった。
【0052】
次に、この食品残渣ペレット1000gに、蒸留水700mlを添加して混合し、狭窄式の供給口、排気口、接種口を備えた袋状のラミネートフィルム(縦約300mm、横約400mm、高さ約40mm)に入れ、袋をヒートシールして密閉フィルム容器とした(図3参照)。
【0053】
次いで、フィルム容器に設けられた接種口より、30℃、3日間で別途培養したふすま麹(Aspergillus sojae KBN650)を、種麹として2g接種した。種麹の接種後、前記フィルム容器を図2に示す恒温槽に設置し、34℃で、5L/分の給気をしながら2~3日間製麹を行うことにより、糖化した食品残渣ペレットを得た。
【0054】
糖化した食品残渣ペレット1000gに、更に上記のように調製した食品残渣ペレット1000gを投入し、水分含量が60重量%となるように水を添加して十分に撹拌混合し、これを密閉式の固体発酵槽に投入した。そして、これに、以下の表1に示す組成からなるYM培地で25℃、2日間培養した焼酎酵母(Saccharomyces cerevisiae)200mlを添加し、25℃、5日間、固体発酵を行った。なお、発酵開始から2日間は、1時間に1回の割合で発酵もろみの撹拌を行った。
【0055】
【表1】
JP0004237684B2_000002t.gif

【0056】
発酵終了後、発酵もろみを蒸留器((株)ユニフローズ社製)を用いて蒸留することにより、アルコール分67%のエタノール100mlを得た。なお、蒸留後の残渣は家畜の飼料に供された。
【実施例2】
【0057】
発酵原料として、製パン工場から廃棄された廃パン(主として食パンの耳の部分)を用いた。廃パンは水分含有量が36重量%と乾燥しているため、水分調整のための前処理を行わなかった。また、廃パンは約1cm角に破砕したものを用いた。なお、廃パンの組成は、水分36重量%、全糖40重量%、還元糖22重量%、脂質2重量%、灰分2重量%、その他20重量%であった。
【0058】
次にこの廃パン1000gを狭窄式の供給口、排気口、接種口を備えた袋状ラミネートフィルム(縦約300mm、横約400mm、高さ約40mm、)に入れて、袋をヒートシールして密閉フィルム容器とした(図3参照)。
【0059】
次いで、フィルム容器に設けられた接種口より、30℃、3日間で別途培養したふすま麹(Aspergillus saitoi KBN2024)を、種麹として2g接種した。種麹の接種後、前記フィルム容器を図2に示す恒温水槽に設置し、34℃で、5L/分の給気をしながら2~3日間製麹を行うことにより、糖化したパン麹を得た。
【0060】
得られたパン麹1000gに、更に1cm角に破砕した廃パン1000gを投入し、水分含量が60重量%となるように水を添加して十分撹拌混合した後、密閉式の固体発酵槽に投入した。これに、表1に示す組成からなるYM培地で25℃、2日間培養した焼酎酵母(Saccharomyces cerevisiae)200mlを添加し、25℃、3日間、固体発酵を行った。なお、発酵開始から1日間は、1時間に1回の割合で発酵もろみの撹拌を行った。
【0061】
発酵終了後、発酵もろみを真空蒸留機で蒸留し、約100mlのエタノールを得た。
【実施例3】
【0062】
発酵原料として、バナナの皮を用いた。バナナの皮は圧縮装置((株)西原環境衛生研究所製)により、バナナの皮以外の夾雑物を予め除去するとともに、水分含量が20重量%以下になるようにバナナの皮を蒸気乾燥した後、形成機((株)西原環境衛生研究所製)を使用して米粒大に粒状化した乾燥ペレット(以下「バナナペレット」と称する)を製造した。なお、ペレット化する前のバナナの皮の組成は、水分82重量%、全糖12重量%、還元糖6重量%、脂質2重量%、タンパク質3重量%、灰分1重量%であった。
【0063】
次にバナナペレット1000gを狭窄式の供給口、排気口、接種口を備えた袋状ラミネートフィルム(縦300mm、横約400mm、高さ約40mm)に入れて、袋をヒートシールして密閉フィルム容器とした(図3参照)。
【0064】
次いで、フィルム容器に設けられた接種口より、30℃、3日間で別途培養したふすま麹(Aspergillus sojae KBN650)を、種麹として2g接種した。種麹の接種後、前記フィルム容器を図2に示す恒温水槽に設置し、34℃で、5L/分の給気をしながら2~3日間製麹を行うことにより、糖化したバナナペレットを得た。
【0065】
糖化したバナナペレット1000gに、更に米粒大に粒状化したバナナの皮1000gを投入し、水分含量が60重量%となるように水を添加して十分撹拌混合し、これを密閉式の固体発酵槽に投入した。これに、表1に示す組成からなるYM培地で25℃、2日間培養した焼酎酵母(Saccharomyces cerevisiae)200mlを添加し、25℃、5日間、固体発酵を行った。なお、発酵開始から1日間は、1時間に1回の割合で発酵もろみの撹拌を行った。
【0066】
発酵終了後、発酵もろみを真空蒸留機にて蒸留を行うことにより、約50mlのエタノールを得た。
【実施例4】
【0067】
発酵原料として、東京農業大学所有の農場で栽培したタロイモを用いた。タロイモは水分含有量が69重量%であったため水分調整のための前処理は行わなかった。また、タロイモは約1cm角に破砕したものを用いた。なお、タロイモの組成は、水分69重量%、全糖23重量%、還元糖6重量%、タンパク質3重量%であった。
【0068】
次にこのタロイモ1000gを狭窄式の供給口、排気口、接種口を備えた袋状ラミネートフィルム(縦300mm、横約400mm、高さ約40mm)に入れて、袋をヒートシールして密閉フィルム容器とした(図3参照)。
【0069】
次いで、フィルム容器に設けられた接種口より、30℃、3日間で別途培養したふすま麹(Aspergillus awamori KBN2012)を、種麹として2g接種した。種麹の接種後、前記フィルム容器を図2に示す恒温水槽に設置し、34℃で、5L/分の給気をしながら2~3日間製麹を行うことにより、糖化したタロイモ麹を得た。
【0070】
糖化したタロイモ麹の1000gに、更に約1cm角に破砕したタロイモ1000gを投入し、水分含量が60重量%となるように水を添加して十分撹拌混合し、これを密閉式の固体発酵槽に投入した。これに、表1に示す組成からなるYM培地で25℃、2日間培養した焼酎酵母(Saccharomyces cerevisiae)200mlを添加し、25℃、5日間、固体発酵を行った。なお、発酵開始から1日間は、1時間に1回の割合で発酵もろみ撹拌を行った。
【0071】
発酵終了後、発酵もろみを真空蒸留機で蒸留し、約100mlのエタノールを得た。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態のエタノール製造システム1の概要を示したものである。
【図2】製麹装置40の一例を示す図である。
【図3】製麹装置40の一部を詳細に示した図である。
【符号の説明】
【0073】
1:エタノール製造システム、10:圧縮装置、20:蒸気乾燥装置、30:ペレット形成装置、40:製麹装置、41:フィルム容器、70:固体発酵槽、80:蒸留装置、84:精留装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2