TOP > 国内特許検索 > ヒアルロニダーゼ阻害剤 > 明細書

明細書 :ヒアルロニダーゼ阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5548979号 (P5548979)
公開番号 特開2011-068605 (P2011-068605A)
登録日 平成26年5月30日(2014.5.30)
発行日 平成26年7月16日(2014.7.16)
公開日 平成23年4月7日(2011.4.7)
発明の名称または考案の名称 ヒアルロニダーゼ阻害剤
国際特許分類 A61K  31/702       (2006.01)
A61K  31/737       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
A61P  15/06        (2006.01)
A61K   8/60        (2006.01)
A61K   8/73        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
FI A61K 31/702
A61K 31/737
A61P 43/00 111
A61P 35/04
A61P 15/06
A61K 8/60
A61K 8/73
A61Q 19/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2009-221568 (P2009-221568)
出願日 平成21年9月25日(2009.9.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年9月25日 社団法人日本生化学会が発行する「第82回日本生化学会大会プログラム・講演要旨集」に発表
審査請求日 平成24年6月18日(2012.6.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
発明者または考案者 【氏名】遠藤 正彦
【氏名】柿崎 育子
【氏名】小泉 英誉
個別代理人の代理人 【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
審査官 【審査官】池上 京子
参考文献・文献 特開2007-126453(JP,A)
調査した分野 A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の(1)~(4)から選択される少なくとも1種を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
(1)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(2)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(3)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(4)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩
【請求項2】
ヒアルロニダーゼがエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.35)である請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】
阻害対象とするヒアルロニダーゼの活性が糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性である請求項2記載の阻害剤。
【請求項4】
下記の(5)~(6)から選択される少なくとも1種を有効成分とするエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.35)の糖転移活性の阻害剤。
(5)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(6)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品などの分野において、また、糖鎖工学技術上における反応制御ツールなどとして有用なヒアルロニダーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素であり、加水分解酵素である動物由来の酵素と、脱離酵素である微生物由来の酵素に大別され、動物由来の酵素は、その作用部位(基質特異性)により、さらにエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.35)や、エンド-β-グルクロニダーゼ(EC3.2.1.36)などに分類される。哺乳動物のヒアルロニダーゼは、生体内においてヒアルロン酸を分解することで、加齢を含む種々の生命現象、感染、がんの転移、早産・流産などに関与していることが知られている。従って、その阻害剤は、がんや早産・流産などに対する医薬品の有効成分として期待される他、化粧品成分や食品素材などとしても期待される。また、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼは、糖鎖加水分解活性に加えて糖転移活性を有することが知られており、糖鎖工学技術上においてアクセプターの糖鎖を伸張するために利用することができる。従って、その糖転移活性を阻害する物質は、糖鎖伸張反応の停止や伸張させる糖鎖長の制御を目的とした利用性なども期待される。
【0003】
ヒアルロニダーゼ阻害剤の探索はこれまでにも数多くなされており、種々の化学構造を有するヒアルロニダーゼ阻害剤が提案されている。多糖やオリゴ糖を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤についての報告もいくつか存在し、例えば、特許文献1には、コンドロイチン硫酸などが早産や流産を防止するためのヒアルロニダーゼ阻害剤として有用であることが記載されている。また、特許文献2には、所定の生物学的活性を有する硫酸化多糖を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤が記載されている。特許文献3には、化学合成や、コンドロイチン硫酸などを出発原料として調製することができる硫酸基を持たない2~8個の構成単糖からなるオリゴ糖誘導体が抗炎症・抗アレルギー作用を有するヒアルロニダーゼ阻害剤として有用であることが記載されている。
【0004】
以上のように、コンドロイチン硫酸などの硫酸化多糖がヒアルロニダーゼ阻害活性を有することは特許文献1や特許文献2などから既に知られているところであるが、その医薬品としての利用を考えた場合、長鎖のコンドロイチン硫酸などはエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼの基質となることから、生体内で酵素活性を阻害する側面と酵素の基質として作用する側面を併せ持つので、目的とする薬理効果を十分に発揮させることができないという問題がある。加えて、硫酸化多糖は、その構成糖に対する硫酸基の結合位置や結合数、立体構造などの点において著しい多様性を有していることから、医薬品の有効成分たる化学物質としての均一性を担保することが困難であるという問題がある。また、従来技術においては、ヒアルロニダーゼに対する阻害活性とは、その糖鎖加水分解活性に対する阻害活性を意味しており、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼが有する糖転移活性に対して多糖やオリゴ糖がどのような活性を有するかは、特許文献1~特許文献3を含め、従来技術からは全く推し量ることができない状況にある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-309544号公報
【特許文献2】特開2000-178196号公報
【特許文献3】特開平5-178876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、医薬品の有効成分たる化学物質としての均一性を担保することが可能であり、糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性に対して阻害活性を有するオリゴ糖を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼであるウシ精巣性ヒアルロニダーゼの基質となるコンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、ヒアルロン酸のそれぞれを構成するオリゴ糖の中に、当該酵素の糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性に対する阻害活性を有するものを見出した。
【0008】
上記の知見に基づいてなされた本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、請求項1記載の通り、下記の(1)~(4)から選択される少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とする。
(1)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(2)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(3)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(4)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩
た、請求項2記載の阻害剤は、請求項1記載の阻害剤において、ヒアルロニダーゼがエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼであることを特徴とする。
また、請求項3記載の阻害剤は、請求項2記載の阻害剤において、阻害対象とするヒアルロニダーゼの活性が糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性であることを特徴とする。
また、本発明のエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.35)の糖転移活性の阻害剤は、請求項4記載の通り、下記の(5)~(6)から選択される少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とする。
(5)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(6)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医薬品の有効成分たる化学物質としての均一性を担保することが可能であり、糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性に対して阻害活性を有するオリゴ糖を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の(A)における(1)および(2)において規定されるオリゴ糖(Ch4S-4およびCh4S-6)を得るためのプロトコルである。
【図2】同、(3)および(4)において規定されるオリゴ糖(Ch6S-4およびCh6S-6)を得るためのプロトコルである。
【図3】同、(5)および(6)において規定されるオリゴ糖(HA4およびHA6)を得るためのプロトコルである。
【図4】実施例の(B)の実験1における被験オリゴ糖のヒアルロニダーゼが有する糖鎖加水分解活性に対する阻害活性を示すグラフである。
【図5】同、各種濃度のCh4S-6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートである。
【図6】実施例の(B)の実験2における被験オリゴ糖のヒアルロニダーゼが有する糖鎖加水分解活性に対する阻害活性を示すグラフである。
【図7】同、各種濃度のCh4S-6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートである。
【図8】実施例の(C)における被験オリゴ糖のヒアルロニダーゼが有する糖転移活性に対する阻害活性を示すグラフである。
【図9】同、各種濃度のHA6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、下記の(1)~(6)から選択される少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするものである。
(1)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(2)[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(3)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(4)[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(5)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖またはその塩。
(6)[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖またはその塩。
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤の阻害対象となるヒアルロニダーゼとしては、例えば、糖鎖加水分解活性および糖転移活性を有するエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼが挙げられる。

【0012】
上記の(1)において規定される[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖は、コンドロイチン4-硫酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGalNAc(4S)の1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化1】
JP0005548979B2_000002t.gif

【0013】
上記の(2)において規定される[4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖は、コンドロイチン4-硫酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGalNAc(4S)の1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化2】
JP0005548979B2_000003t.gif
上記の(3)において規定される[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖は、コンドロイチン6-硫酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGalNAc(6S)の1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化3】
JP0005548979B2_000004t.gif

【0014】
上記の(4)において規定される[4GlcUAβ1-3GalNAc(6S)β1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖は、コンドロイチン6-硫酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGalNAc(6S)の1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化4】
JP0005548979B2_000005t.gif

【0015】
上記の(5)において規定される[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が2つ結合した4糖からなるオリゴ糖は、ヒアルロン酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGlcNAcの1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化5】
JP0005548979B2_000006t.gif

【0016】
上記の(6)において規定される[4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1]の二糖単位が3つ結合した6糖からなるオリゴ糖は、ヒアルロン酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、下記の化学構造式で表される(還元末端のGlcNAcの1β位と非還元末端のGlcUAの4α位はいずれも水酸基である)。
【化6】
JP0005548979B2_000007t.gif

【0017】
上記の(1)~(6)において規定されるオリゴ糖の塩としては、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。

【0018】
(1)~(6)において規定されるオリゴ糖は、それぞれコンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、ヒアルロン酸の構成オリゴ糖として公知の物質であり、例えば、ウシ精巣性ヒアルロニダーゼを用いたこれらの多糖の酵素分解と、各種のクロマトグラフィーを用いた精製を行うことによって調製することができる(必要であればBiocemistry,33(1994),6503-6507などを参照のこと)。出発原料として使用することができる多糖の由来は特段限定されるものではなく、コンドロイチン4-硫酸およびコンドロイチン6-硫酸は、例えば、ウシ、クジラ、サメ、サケなどの動物(魚類を含む)の皮、骨、軟骨などに多く含まれていることは周知の通りである。ヒアルロン酸の由来は動物であっても微生物であってもよく(動物由来のヒアルロン酸としては例えばニワトリのトサカに含まれているものなどがよく知られている)、市販されているものを使用することができる。また、(1)~(6)において規定されるオリゴ糖は、化学合成によっても調製することができる(必要であればChem.Eur.J.,13(2007),529-540やAngew.Chem.Int.Ed.,43(2004),5221-5224などを参照のこと)。

【0019】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤をがんや早産・流産などに対する医薬品の有効成分として利用する場合、(1)~(6)において規定されるオリゴ糖またはその塩を、自体公知の方法で各種の製剤形態(錠剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤など)に製剤化し、経口的または非経口的に投与すればよい。その投与量は、患者の年齢や体重、症状の程度、健康状態などの条件によって適宜設定されるべきものである。また、例えばアンチエイジングのための化粧品成分などとして利用する場合、自体公知の基材や配合成分などとともにクリーム剤やローション剤などに製剤化して投与することができる。また、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、食品素材として利用することも可能であり、種々の形態の食品(サプリメントを含む)にヒアルロニダーゼ阻害作用を発揮するに足る有効量を添加して食してもよい。

【0020】
さらに、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、生化学分野における研究試薬などとしても利用することができ、とりわけエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼが有する糖転移活性に対して阻害活性を有する本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、アクセプターに対する糖鎖伸張反応の停止剤や伸張させる糖鎖長の制御剤などとしての新たな用途を提供するものであり、糖鎖工学技術上における反応制御ツールとなる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0022】
(A)(1)~(6)において規定されるオリゴ糖の調製
ウシ精巣性ヒアルロニダーゼ(シグマアルドリッチ社、Type1-S)を用いた出発原料とする多糖の酵素分解と、クロマトグラフィーを用いた精製を行うことによって得た。具体的には、(1)および(2)において規定されるオリゴ糖は、イワシクジラ軟骨由来のコンドロイチン4-硫酸(特許第3731150号公報に記載の方法によって得たプロテオグリカンからJ.Biol.Chem.,277(2002),18397-18403に記載の方法によって調製したもの、分子量:約32000)から図1に示すプロトコルに従って得た。(3)および(4)において規定されるオリゴ糖は、サメ軟骨由来のコンドロイチン6-硫酸(上記のイワシクジラ軟骨由来のコンドロイチン4-硫酸の調製方法と同様の方法で調製したもの、分子量:約64000)から図2に示すプロトコルに従って得た。(5)および(6)において規定されるオリゴ糖は、微生物由来のヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)から図3に示すプロトコルに従って得た。得られたオリゴ糖の純度は、Biocemistry,33(1994),6503-6507、Connective Tissue,26(1994),153-159、Glycoconj.J.,9(1992),174-179、Glycobiology,8(1998),719-724、Anal.Biochem.,325(2004),35-40などに記載の方法に従った高速液体クロマトグラフィーおよびイオンスプレー式質量分析計(パーキンエルマー社、PE-Sciex API-100)を用いて分析し、標準品との同一性を確認した。定量にはカルバゾール硫酸法を用いた。得られたオリゴ糖の性状はすべて白色粉末であり、分子量は以下の通りである(ただしNa塩の分子量については保有するNa原子の数によってバリエーションがある)。
(1)において規定されるオリゴ糖(以下「Ch4S-4」と略称することもある)
分子量:963.8(Na塩:1024.8)
(2)において規定されるオリゴ糖(以下「Ch4S-6」と略称することもある)
分子量:1396.2(Na塩:1528.2)
(3)において規定されるオリゴ糖(以下「Ch6S-4」と略称することもある)
分子量:963.8(Na塩:1024.8)
(4)において規定されるオリゴ糖(以下「Ch6S-6」と略称することもある)
分子量:1396.2(Na塩:1528.2)
(5)において規定されるオリゴ糖(以下「HA4」と略称することもある)
分子量:776.8(Na塩:820.8)
(6)において規定されるオリゴ糖(以下「HA6」と略称することもある)
分子量:1156.2(Na塩:1222.2)
【実施例】
【0023】
(B)(1)~(6)において規定されるオリゴ糖のヒアルロニダーゼ阻害活性の評価(その1:糖鎖加水分解活性に対する阻害活性)
(実験1:方法)
ウシ精巣性ヒアルロニダーゼ(シグマアルドリッチ社、Type1-S)のヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)を基質とする糖鎖加水分解活性に対する阻害活性によって評価した。反応緩衝液として100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)-150mM塩化ナトリウムを用い、各種濃度の被験オリゴ糖を添加し、37℃で1時間反応させた。被験オリゴ糖を添加しない場合における糖鎖加水分解生成物の4糖と6糖の生成量を高速液体クロマトグラフィーで検出されたピーク面積からそれぞれ求め、その総和を糖鎖加水分解活性が100%とし、同様にして求めた被験オリゴ糖を添加した場合における糖鎖加水分解生成物の4糖と6糖の生成量の総和からその糖鎖加水分解活性を被験オリゴ糖を添加しない場合における糖鎖加水分解活性に対する相対値として算出し、被験オリゴ糖を添加しない場合における糖鎖加水分解活性(100%)から被験オリゴ糖を添加した場合における糖鎖加水分解活性を差し引いた数値を糖鎖加水分解活性に対する阻害活性(%)とした。なお、高速液体クロマトグラフィーによる反応生成物の分析は以下の条件で行った。
・ カラム:YMC-Pack Polyamine IIカラム(ワイエムシー社、ID4.6mm×250mm)
・ 溶出液:50mM-246mMのリン酸二水素ナトリウムの直線勾配
・ 流速:1.0mL/分
・ 検出:215nmにおける吸光度による
(実験1:結果)
図4に示す。なお、図4には、コンドロイチン4-硫酸((A)において調製した分子量が約32000のもの)とヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)のそれぞれを出発原料として、化学処理(J.Biochem.Biophys.Methods,10(1984),143-151)によって調製した、2糖からなるN-アセチルコンドロシン(Ch2:硫酸基は脱離によって持たない)とヒアロビウロン酸(HA2)の糖鎖加水分解活性に対する阻害活性もあわせて示す。図4から明らかなように、Ch4S-4,Ch4S-6,Ch6S-4,Ch6S-6は、ヒアルロニダーゼが有する糖鎖加水分解活性を濃度依存的に阻害したが、HA4,HA6は阻害活性を有していなかった。また、Ch2,HA2も阻害作用を有していなかった。各種濃度のCh4S-6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートを図5に示す。図中の4~12の数値はそれぞれ糖鎖加水分解生成物の構成糖の数とその溶出位置を意味し、添加したCh4S-6の濃度が高くなるにつれて、糖鎖加水分解生成物の生成量の減少(ヒアルロニダーゼが有する糖鎖加水分解活性に対する濃度依存的な阻害活性)が見て取れる。
【実施例】
【0024】
(実験2:方法)
ヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)にかわりに、ヒアルロン酸に由来する8糖からなるオリゴ糖((A)における(1)~(6)において規定されるオリゴ糖の調製の際に得られたもの)を基質として用いること以外は実験1と同様の実験を行った。
(実験2:結果)
図6に示す。図6から明らかなように、この実験2によっても、実験1とほぼ同様の結果が得られた。各種濃度のCh4S-6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートを図7に示す。
【実施例】
【0025】
(C)(1)~(6)において規定されるオリゴ糖のヒアルロニダーゼ阻害活性の評価(その2:糖転移活性に対する阻害活性)
(方法)
6糖からなるピリジルアミノ(PA)化ヒアルロン酸構成オリゴ糖((A)において得られたHA6をJ.Biochem.,110(1991),132-135に記載の方法でピリジルアミノ化したもの)をアクセプターとし、ヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)をドナーとする、ウシ精巣性ヒアルロニダーゼ(シグマアルドリッチ社、Type1-S)の糖転移活性に対する阻害活性によって評価した。反応緩衝液として100mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.0)を用い、各種濃度の被験オリゴ糖を添加し、37℃で1時間反応させた。被験オリゴ糖を添加しない場合における糖転移生成物(6糖~20糖の偶数糖からなるPA化ヒアルロン酸構成オリゴ糖)の生成量を高速液体クロマトグラフィーで検出されたピーク面積からそれぞれ求め、その総和を糖転移活性が100%とし、同様にして求めた被験オリゴ糖を添加した場合における糖転移生成物の生成量の総和からその糖転移活性を被験オリゴ糖を添加しない場合における糖転移活性に対する相対値として算出し、被験オリゴ糖を添加しない場合における糖転移活性(100%)から被験オリゴ糖を添加した場合における糖転移活性を差し引いた数値を糖転移活性に対する阻害活性(%)とした。なお、高速液体クロマトグラフィーによる反応生成物の分析は以下の条件で行った。
・ カラム:YMC-Pack Polyamine IIカラム(ワイエムシー社、ID4.6mm×250mm)
・ 溶出液:50mM-246mMのリン酸二水素ナトリウムの直線勾配
・ 流速:1.0mL/分
・ 検出:320nmの励起波長と400nmの蛍光波長でのPAのモニタリングによる
(結果)
図8に示す。なお、図8には、コンドロイチン4-硫酸((A)において調製した分子量が約32000のもの)とヒアルロン酸(フードケミファ社、分子量:約80000)のそれぞれを出発原料として、化学処理(J.Biochem.Biophys.Methods,10(1984),143-151)によって調製した、2糖からなるN-アセチルコンドロシン(Ch2:硫酸基は脱離によって持たない)とヒアロビウロン酸(HA2)の糖転移活性に対する阻害活性もあわせて示す。図8から明らかなように、Ch4S-4,Ch4S-6,Ch6S-4,Ch6S-6に加え、HA4,HA6も、ヒアルロニダーゼが有する糖転移活性を濃度依存的に阻害したが、Ch2,HA2は阻害作用をほとんど有していなかった。各種濃度のHA6を添加した場合と添加しなかった場合の実験結果をまとめた代表的なクロマトグラムチャートを図9に示す。図中の6~20の数値はそれぞれ糖転移生成物の構成糖の数とその溶出位置を意味し、添加したHA6の濃度が高くなるにつれて、糖転移生成物の生成量の減少(ヒアルロニダーゼが有する糖転移活性に対する濃度依存的な阻害活性)が見て取れる。
【実施例】
【0026】
(D)まとめ
以上の結果から、ヒアルロニダーゼが有する糖鎖加水分解活性と糖転移活性のいずれに対しても阻害活性を有する物質として、初めてCh4S-4,Ch4S-6,Ch6S-4,Ch6S-6が見出された。また、HA4,HA6は、糖転移活性に対してのみ選択的に阻害活性を有することがわかった。例えばCh4S-6とHA6は、化学構造上、ヘキソサミンの4位の置換基とその立体配置の相違しかないにもかかわらず、ヒアルロニダーゼが有する酵素活性に対する阻害活性に大きな相違があることは、予想をはるかに超える事実であった。
【実施例】
【0027】
製剤例1:錠剤
以下の組成で各成分を混合し、打錠して、(1)において規定されるオリゴ糖のナトリウム塩を50mg含む500mgの錠剤400個を製造した。
(1)において規定されるオリゴ糖のナトリウム塩 ・・・ 20g
馬鈴薯澱粉 ・・・ 6g
ステアリン酸タルク ・・・ 4g
6%HPC乳糖 ・・・ 170g
(合計200g)
【実施例】
【0028】
製剤例2:顆粒剤
以下の組成で各成分を混合し、圧縮成形し、粉砕し、整粒して、20~50メッシュの5%顆粒剤を製造した。
(4)において規定されるオリゴ糖のナトリウム塩 ・・・ 10g
乳糖 ・・・ 187g
ステアリン酸マグネシウム ・・・ 3g
(合計200g)
【実施例】
【0029】
製剤例3:注射剤
(5)において規定されるオリゴ糖のナトリウム塩1.5gを生理食塩水100mLに溶解し(合計1.5g/100mL)、バイアルに充填した後、加熱殺菌を行って、静注用注射剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、医薬品の有効成分たる化学物質としての均一性を担保することが可能であり、糖鎖加水分解活性および/または糖転移活性に対して阻害活性を有するオリゴ糖を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8