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明細書 :硬組織再生治療用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5424353号 (P5424353)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 硬組織再生治療用組成物
国際特許分類 A61K  35/74        (2006.01)
A61P   1/02        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 35/74 D
A61P 1/02
A61P 19/08
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2010-536637 (P2010-536637)
出願日 平成21年7月27日(2009.7.27)
国際出願番号 PCT/JP2009/003530
国際公開番号 WO2010/052814
国際公開日 平成22年5月14日(2010.5.14)
優先権出願番号 2008285437
優先日 平成20年11月6日(2008.11.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年5月28日(2012.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】本田 雅規
【氏名】石原 和幸
【氏名】阿部 修
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】加藤 文彦
参考文献・文献 Eur J Oral Sci,2008年 6月,Vol.116, No.3,p.207-16
Infect Immun,1999年,Vol.67, No.6,p.2841-6
Infect Immun,1994年,Vol.62, No.4,p.1289-97
Oral Dis,1997年,Vol.3, No.2,p.106-12
調査した分野 A61K 35/74
A61P 1/02
A61P 19/08
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ストレプトコッカス・ミュータンス(treptococcus mutansおよび/またはポルフィロモナス・ジンジバリス(orphyromonus gingivalis)の菌体破砕物を含む硬組織再生治療用組成物であって、該菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が0.01μg/ml以上10μg/ml以下である硬組織再生治療用組成物
【請求項2】
象牙質および/または歯周組織の再生に用いる請求項1に記載の硬組織再生治療用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬組織再生治療用組成物を有効成分として含む歯髄覆罩剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の硬組織再生治療用組成物を有効成分として含む骨組織の再生用治療剤。
【請求項5】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutansおよび/またはポルフィロモナス・ジンジバリス(orphyromonus gingivalis)の菌体破砕物を含むヒト歯髄由来線維芽細胞(Human dental pulp-derived fibroblasts)象牙芽細胞または骨芽細胞への分化促進用組成物であって、該菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が0.01μg/ml以上10μg/ml以下であるヒト歯髄由来線維芽細胞(Human dental pulp-derived fibroblasts)の象牙芽細胞または骨芽細胞への分化促進用組成物
【請求項6】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutansおよび/またはポルフィロモナス・ジンジバリス(orphyromonus gingivalis)の菌体破砕物を含む細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性向上用組成物であって、該菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が0.01μg/ml以上10μg/ml以下であるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性向上用組成物
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はS.mutans(Streptococcus mutans)および/またはP.gingivalis(Porphyromonus gingivalis)を含む硬組織再生治療用組成物に関する。さらに詳しくは、象牙質および/または歯周組織の再生や、骨組織の再生用治療剤に有効成分として含まれる当該硬組織再生治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、S.mutansはカリエス(虫歯)の原因菌、P.gingivalisは歯周病の原因菌とされてきた。そのため、カリエスや歯周病の治療や予防等のために、S.mutansに対する殺菌活性を有し、かつ間葉系幹細胞の細胞増殖効果を有する塩基性抗菌ペプチド(例えば、特許文献1参照)や、ポリフェノールを有効成分として含有するP.gingivalisの歯周組織への付着阻害剤(例えば、特許文献2参照)、P.gingivalisより引き起こされる疾病および感染を治療または予防するための特定のアミノ酸を含む免疫原性ポリペプチド(例えば、特許文献3参照)等が開発されてきた。
【0003】
しかし、S.mutansやP.gingivalisは、口腔内に常在する菌であり、存在しているからといって必ずしもカリエスや歯周病になるわけではなく、これらの細菌が低濃度感染することで、カリエスや歯周病が惹起されると考えられた。
臨床の現場において、カリエスが惹起された段階で、カリエスの進行とは逆に、象牙質が再生することが観察されている。これは、カリエスによって象牙質が融解され、象牙質のマトリックスに存在する増殖因子が象牙細管を通って象牙芽細胞に刺激を与えたことによって起こるものと考えられている。
このことから、本発明者らは、低濃度の細菌の感染によって、歯髄細胞、歯根膜細胞等の細胞の増殖が活発化され、これによって象牙質や歯周組織の再生が促進される可能性があると考え、これらの細菌を含む硬組織再生治療用組成物について検討を行った。
【0004】
象牙質や歯周組織の再生剤としては、水酸化カルシウムによる歯髄覆罩剤や、増殖因子による歯周組織再生剤が提供されているが、いずれにおいても100%の成功率を得ることは難しく、まだ、改良すべき点が残されているのが現状である。そこで、新たな硬組織再生治療用組成物が提供されることが期待されている。
〔先行文献〕

【特許文献1】特開2005-281225号公報
【特許文献2】特許第3837172号公報
【特許文献3】特表2007-529195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、S.mutansおよび/またはP.gingivalisが高濃度で存在する場合には、カリエスや歯周病の原因菌として作用をするが、低濃度で存在する場合には、歯髄細胞の象牙芽細胞または骨芽細胞への分化を促進することを見出した。そこで、S.mutansおよび/またはP.gingivalisを低濃度含む硬組織再生治療用組成物を得て、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)~(8)の硬組織再生治療用組成物等に関する。
(1)S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物。
(2)S.mutansおよび/またはP.gingivalisが菌体破砕物である上記(1)に記載の硬組織再生治療用組成物。
(3)S.mutansおよび/またはP.gingivalisの菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が100μg/ml未満である上記(1)または(2)に記載の硬組織再生治療用組成物。
(4)象牙質および/または歯周組織の再生に用いる上記(1)~(3)のいずれかに記載の硬組織再生治療用組成物。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の硬組織再生治療用組成物を有効成分として含む歯髄覆罩剤。
(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載の硬組織再生治療用組成物を有効成分として含む骨組織の再生用治療剤。
(7)S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む細胞の分化促進用組成物。
(8)S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む細胞のアルカリフォスファターゼ(以下、ALPとする)活性向上用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬組織再生治療用組成物によって象牙質および/または歯周組織の再生を行うことで、カリエスや歯周病等のS.mutansおよび/またはP.gingivalisよって引き起こされる疾病や感染を治療または予防することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】S.mutansを含む硬組織再生治療用組成物のALP活性を示した図である(試験例1)。
【図2】P.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物のALP活性を示した図である(試験例1)。
【図3】硬組織再生治療用組成物によるhDPFのBSP発現を示した図である(試験例1)。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」は、S.mutans、P.gingivalisまたはこれらを組合せて含む組成物であり、骨,歯,毛髪,爪等の硬組織の再生に利用できるものであればいずれのものも含まれる。象牙質や歯周組織等の再生に利用できるものであることが特に好ましい。
【0011】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」に含まれるS.mutans、P.gingivalisは、「硬組織再生治療用組成物」として人体等に投与した場合に安全なものであれば、細菌の寄託機関等に保管されているものや市販されているもの等、いずれのものも用いることができる。また、患者由来のS.mutans、P.gingivalisを採取して、それ自体を含ませることもできる。
【0012】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」に含まれるこれらの細菌は、「硬組織再生治療用組成物」として効果があるものであれば、生菌でも、破砕等した死菌であっても良いが、安全面において死菌の方がより好ましい。
【0013】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」に含まれるこれらの細菌は、菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が100μg/ml未満となるように含まれることが好ましく、特に10μg/ml以下の低濃度で含まれることが好ましい。
【0014】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」は、骨,歯,毛髪,爪等の硬組織の再生に用いることができるものであることが好ましく、特に歯髄細胞、歯根膜細胞等に作用し得る、象牙質、歯周組織またはこれらのいずれの再生にも用いることができるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の「硬組織再生治療用組成物」は、歯髄覆罩剤や骨組織の再生用治療剤の有効成分として用いることができる。
この「歯髄覆罩剤」としては、本発明の「硬組織再生治療用組成物」をそのまま用いたもの、または水酸化カルシウム等と組み合わせたもの等が挙げられる。また、「骨組織の再生用治療剤」としては、本発明の「硬組織再生治療用組成物」をそのまま用いたもの、またはコラーゲン、BMPやFGFなどの増殖因子等と組み合わせたもの等が挙げられる。この「骨組織の再生用治療剤」は、骨組織の再生のために、ゲル状にして骨欠損部にシリンジにて注入する方法や、コラーゲンのスポンジなどに浸み込ませて骨欠損部に移植する方法等に用いることができる。
さらに、本発明の「硬組織再生治療用組成物」は、増殖因子等と組合せて、歯周組織再生剤とすることもできる。
これらの「歯髄覆罩剤」や「骨組織の再生用治療剤」等は薬剤としての形態は特に問わないが、一般に知られているゲル剤、保湿剤、増粘剤等と組合せて、軟膏剤、塗布剤として提供することもできる。
【0016】
本発明の「分化促進用組成物」とは、S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含むものであり、細胞の分化を誘導し、または促進するものであればいずれのものも含まれる。例えば、歯髄細胞の象牙芽細胞または骨芽細胞への分化を促進するS.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む組成物が挙げられる。
【0017】
本発明の「ALP活性向上用組成物」とは、S.mutansおよび/またはP.gingivalisを含むものであり、細胞のALP活性を向上するものであればいずれのものも含まれる。例えばヒト歯髄由来線維芽細胞(Human dental pulp-derived fibroblasts:以下、hDPFとする)のALP活性を向上するS.mutansおよび/またはP.gingivalisを含む組成物が挙げられる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
<硬組織再生治療用組成物の調製>
1.S.mutansを含む硬組織再生治療用組成物
以下のa.~d.の工程によりS.mutansを含む硬組織再生治療用組成物を調製した。
a.Todd Hewit broth(Becton Dickinson and Company)に接種したS.mutans MT8148Rを、10%CO,10%Hおよび80%Nの嫌気条件下で、37℃で2日間培養した。
b.菌体を遠心分離(10,000×g、20分間、4℃)によって回収し、PBS(pH7.4)で2回洗浄した。
c.超音波破砕機(Bioruptor UCD-200T,株式会社コスモバイオ)を用いて30秒の超音波破砕と1分のインターバルで60分間繰り返し菌体を破砕した。
d.破砕抽出物を遠心分離(10,000×g、20分間、4℃)し、上清をS.mutans(菌体破砕物)を含む硬組織再生治療用組成物として用いた。
【0019】
2.P.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物
以下のa.~d.の工程によりP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物を調製した。
a.P.gingivalis ATCC 33277を、ヘミン(5mg/ml)、メナジオン(0.5mg/ml)および10%脱線維素ウマ血液を添加したトリプティックソイ培地(Triptic Soy broth)に接種し、10%CO,10%Hおよび80%Nの嫌気条件下で、37℃で2日間培養した。
b.菌体を遠心分離(10,000×g、20分間、4℃)によって回収し、PBS(pH7.4)で2回洗浄した。
c.超音波破砕機(Brason,Danbury,CT,USA)を用いて出力100W,30秒の超音波破砕と1分間のインターバルで5分間繰り返し菌体を破砕した。
d.破砕抽出物を遠心分離(10,000×g、20分間、4℃)し、上清をP.gingivalis(菌体破砕物)を含む硬組織再生治療用組成物として用いた。
【0020】
[試験例1]
<硬組織再生治療用組成物の検討>
1.試料
1)硬組織再生治療用組成物
実施例1において調製した各硬組織再生治療用組成物における菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度をプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories,Herculs,CA,USA)を用いて調べ、菌体破砕物に含まれるタンパク質の最終濃度が100μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlまたは0.01μg/mlとなるように調製して用いた。
2)リポポリサッカリド(Lipopolysaccaride:LPS)
比較試料として大腸菌O55が産生したLPSを用いた。LPS濃度が10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlまたは0.01μg/mlとなるように調製して用いた。
【0021】
3)hDPF以下のa.~e.の工程によりhDPFを調製した。
a.歯列矯正術を受けている3人の患者から、矯正治療中にhDPFが含まれている下顎の3番目の臼歯を抜歯しhDPFを採取した。
b.歯髄組織を歯から分離し、1mm以下の小片に細分化した。それから、60U/mlのディスパーゼII(合同酒精株式会社)および2mg/mlのコラゲナーゼ(和光純薬工業株式会社)を含むHBS溶液(Hank’s Balanced Salt Solution)で、37℃で20分間酵素処理した。
c.少量の組織を10cm培養皿に入れ、10%FCS血清(JRH Bioscience,Lenexa,KS,USA)、グルタミン(Gibco,Invitrogen)、100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco,Invitrogen)および100μMアスコルビン酸を添加したα-MEM培地(和光純薬工業株式会社)を含む増殖培地で培養した。
d.組織から這い出した細胞を培養し、3日ごとに培地を交換し、継代培養されたhDPFの形態を位相差顕微鏡で観察した。
e.コンフレントになった細胞を0.05%のトリプシンおよび0.02%EDTAで剥離し、継代培養を行い、2代目のhDPFを試験に用いた。
【0022】
2.試験および結果
1)細胞増殖
細胞カウントキット-8(WST-8;Dojindo,Kumamoto,Japan)を用いて細胞増殖を測定した。即ち継代2代目のhDPFを1×10cells/well(12well)となるように培養皿に播種し、本発明の硬組織再生治療用組成物またはLPSをそれぞれ添加した完全培地で培養を行った。また、硬組織再生治療用組成物またはLPSを添加しないhDPFをコントロールとして、培養を行った。培養14日目、28日目の細胞数をWST-8kit(キシダ化学株式会社)を用い、吸光度450nm(SmartSpeckTM 3000,BIO-RAD)で測定後、細胞数を算定することで調べた。
その結果、S.Mutans またはP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物では、コントロールに比べて細胞の増殖が少なかった。特に、P.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物では、菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が100μg/mlと高濃度のものにおいて、有意に細胞の増殖が少なかった。
LPSを用いた場合にはいずれもコントロールと同様に細胞が増殖したことから、本発明のS.Mutans またはP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物においてhDPFの増殖が抑制されたのは、菌体破砕液中のLPSの関与によるものではないことが示唆された。
【0023】
2)ALP活性
継代2代目のhDPFを3×10cells/well(12well)となるように培養皿に播種し、本発明の硬組織再生治療用組成物またはLPSをそれぞれ添加した増殖培地で培養を行った。また、硬組織再生治療用組成物またはLPSを添加しないhDPFをコントロールとして、培養を行った。培養14日目、28日目のALP活性を、SIGMA-FADT r-nitorophenyl Phosphate tablet sets(Sigma,St.Louis,Mo,USA)を用いて吸光度405nm(SmartSpeckTM 3000,BIO-RAD)で酵素反応を調べることによって定量した。
【0024】
その結果、図1に示したように、S.mutansを含む硬組織再生治療用組成物では、菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が10μg/mlのものが、コントロールまたは菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が100μg/mlと高濃度であるものと比べて有意にALP活性が高かった。菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が1μg/ml、0.1μg/mlまたは0.01μg/mlのものもこれらに比べてALP活性が高いことから、低濃度のS.mutansを含む硬組織再生治療用組成物がhDPFに作用することで象牙芽細胞または骨芽細胞への分化を促進し、象牙質の再生に働くことが示唆された。
また、図2に示したように、P.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物を用いた場合には、菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が0.01μg/mlのものが、コントロールまたは菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が100μg/mlと高濃度であるものと比べて有意にALP活性が高かった。菌体破砕物に含まれるタンパク質の濃度が10μg/ml、1μg/mlまたは0.1μg/mlのものもこれらに比べてALP活性が高いことから、低濃度のP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物も、hDPFに作用することで象牙芽細胞または骨芽細胞への分化を促進し、象牙質の再生に働くことが示唆された。
【0025】
3)硬組織形成細胞マーカー遺伝子の発現確認
上記2.2)において、ALP活性の増加がみられた菌体破砕物に含まれるタンパクの最終濃度が1μg/mlとなるように調製したS.mutansを含む硬組織再生治療用組成物、菌体破砕物に含まれるタンパクの最終濃度が0.01μg/mlとなるように調製したP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物をそれぞれ添加した増殖培地で、継代2代目のhDPFを10日間培養し、硬組織形成細胞マーカーであるbone sialoprotein(BSP)のmRNAの発現を調べた。硬組織再生治療用組成物を添加しないhDPFをコントロールとした。
培養後の各細胞からRNAを、トライゾール溶液(invitrogen)を用いて抽出し、SuperScript III reverse transcriptase(Invitrogen)によってcDNAに変換した。その後、Ex Taq DNA polymerase(Takara),と20mM primers(配列表配列番号1、2)によって増幅し、BSPのmRNAの発現量を比較解析した。

【0026】
その結果、菌体破砕液を添加していない細胞においては、BSPの発現がみられなかったが、菌体破砕物に含まれるタンパクの最終濃度が1μg/mlとなるように調製したS.mutansを含む硬組織再生治療用組成物、または菌体破砕物に含まれるタンパクの最終濃度が0.01μg/mlとなるように調製したP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物を用いた場合には、図3に示すようにBSPの発現が増加することが示された。
従って、この結果より、本発明のS.mutansを含む硬組織再生治療用組成物およびP.gingivalisを含む硬組織再生治療用組成物がhDPFに作用することで象牙芽細胞または骨芽細胞への分化を促進し、象牙質の再生に働くことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の硬組織再生治療用組成物は象牙質および/または歯周組織の再生に働くことから、歯髄覆罩剤や骨組織の再生用治療剤の有効成分として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2