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明細書 :放射線量測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5920707号 (P5920707)
公開番号 特開2013-178192 (P2013-178192A)
登録日 平成28年4月22日(2016.4.22)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成25年9月9日(2013.9.9)
発明の名称または考案の名称 放射線量測定装置
国際特許分類 G21K   4/00        (2006.01)
FI G21K 4/00 L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2012-042925 (P2012-042925)
出願日 平成24年2月29日(2012.2.29)
審査請求日 平成26年12月17日(2014.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】黒堀 利夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】藤本 加代子
参考文献・文献 特開昭64-020471(JP,A)
特開昭52-030487(JP,A)
特開昭57-132078(JP,A)
特開平04-110791(JP,A)
特開平05-119155(JP,A)
特開2002-071811(JP,A)
特開平07-294648(JP,A)
特開2006-266880(JP,A)
調査した分野 G21K 4/00
G01T 1/00-1/12
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
銀活性リン酸塩ガラス層を有するディスクと、当該ディスクを回転制御する回転機構と、当該ディスクに励起光を照射するためのレーザー光照射手段と、当該ディスクから発する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたことを特徴とする放射線量測定装置。
【請求項2】
前記レーザー光照射手段は、放射線照射により前記ディスクに記録された放射線量蓄積情報を消去するための加熱手段にも併用可能にしたことを特徴とする請求項1記載の放射線量測定装置。
【請求項3】
前記レーザー光照射手段は、前記ディスクに記録された放射線量蓄積情報のビルドアップ現象を解消するためのプレヒート手段にも併用可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線量測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線量を二次元的に測定及び解析できる放射線量測定装置及びこれに用いるディスク状のセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
銀イオンを含有するリン酸塩ガラスは、銀活性リン酸塩ガラスと称され、放射線量の蛍光ガラス線量計の素子として知られている。
銀活性リン酸塩ガラスはX線、β線、γ線等の放射線の照射により銀関連の誘起された誘起蛍光中心が累積的に蓄積され、波長300~410nmの紫外線等で励起すると蛍光を発光する。
この現象は、ラジオフォトルミネッセンス(RPL)と称されている。
放射線量計には熱刺激ルミネッセンス(TSL)及び光刺激ルミネッセンス(OSL)現象を利用したものも知られているが、銀活性リン酸塩ガラスを用いたRPLは、高感度(最小検知感度:10μGy)で高空間分解能(1μm以下)を有し、広いダイナミックレンジと直線性(10μGy~100Gy)を有していることを本発明者は確認した。
また、銀活性リン酸塩ガラスは他の材料に比較して放射線照射から時間が経過すると蛍光が減少してしまうフェーディング特性が1%/年以下と優れていて、放射線量の読み出しにおいて誘起蛍光中心が消滅しないことから繰り返し読み出しが可能であり、放射線量の積算も可能である。
【0003】
特許文献1は銀活性リン酸塩ガラスを用いた円柱状の放射線量計素子を開示し、特許文献2は銀活性リン酸塩ガラスを用いた方形の照合ガラスを開示するが、いずれも二次元放射線量センサとして用いたものではない。
【0004】
本発明者は、これまでに空間分解能及びフェーディング特性を改善したBaFBr:Eu2+系のイメージングプレートを提案している(特許文献3)。
これは光刺激ルミネッセンス現象を用いたものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-73137号公報
【特許文献2】特開平7-294648号公報
【特許文献3】特開2006-251690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は簡単な機構で、放射線量の二次元測定及び当該放射線量の蓄積情報の読み出しが可能な放射線量測定装置の提供を目的とする。
また、この放射線量測定装置内で誘起蛍光中心(放射線量の蓄積情報)の消去が可能であり、繰り返し使用できる放射線量二次元センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放射線量測定装置は、銀活性リン酸塩ガラス層を有するディスクと、当該ディスクを回転制御する回転機構と、当該ディスクに励起光を照射するためのレーザー光照射手段と、当該ディスクから発する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記レーザー光照射手段は、放射線照射により前記ディスクに記録された放射線量蓄積情報を消去するための加熱手段にも併用可能にすることもできる。
また、前記レーザー光照射手段は、前記ディスクに記録された放射線量蓄積情報のビルドアップ現象を解消するためのプレヒート手段にも併用可能にすることができる。
【0009】
本発明の特徴の1つは、ディスク型の放射線量二次元センサに形成した点にある。
例えば、Blu-ray Disc Associationが策定したBlu-ray Discは波長405nmの青色半導体レーザー光及び開口率(NA)0.85程度のレンズを用いて0.32μmのトラックピッチの情報読み出し(書き込み)を行っている。
また、銀活性リン酸塩ガラス(以下PG:Ag材と称する)は紫外線で励起すると放射線量の蓄積量に対応して強度が異なる蛍光を発光する。
従って、PG:Ag材でディスクを形成すればブルーレイディスクレコーダー等の光ピックアップ装置を用いて、あるいはその簡単な改造にて放射線量二次元情報の読み出しが可能である。
【0010】
放射線量を二次元的に蓄積し、その蓄積情報を読み取るにはPG:Ag材層の厚みは、0.05mm以上あればよい。
しかし、このような薄さでは取扱いが大変であり、ディスクの大きさをCD規格,DVD規格と同様の直径12cm,厚さ1.2mmにすると共通性があり便利である。
そこで、本発明に用いる放射線量二次元センサディスク(以下、単にディスクと称する)は、例えばポリカーボネート、ホウ素ケイ酸塩ガラス(光学ガラス)等からなる円盤状の基板にPG:Ag材を積層するのが好ましい。
PG:Ag材層の厚みは0.05~0.6mm、好ましくは0.05~0.3mmである。
この場合に全体の厚みを1.2mmにするには、ポリカーボネートの厚みを0.6~1.15mmにすることになる。
なお、PG:Ag材層を0.6mmよりも厚くしたり、PG:Ag材だけで1.2mmにしてもよい。
また、本発明に用いるディスクの大きさ、厚みを上記CD規格、DVD規格に必ずしも一致させる必要もない。
【0011】
PG:Ag材に放射線が照射されると、その電離作用によりガラス中に電子及びホールが生成される。
電子はAgに捕獲され、ブルーRPL(470nm)の発光中心となるAgセンターを形成する。
一方、ホールは一旦ガラス網目構造のPOセンターを経由し、ある時間経過後にAgに捕獲され、オレンジRPL(560nm)の発光中心となるAg2+センターになる。
従って、オレンジRPLを検出信号とする場合には、このようなビルドアップ現象を解消するために50~150℃、好ましくは60~100℃にプレヒート(低温加熱)するのが好ましい。
このプレヒート手段として放射線量蓄積情報を読み取る際に励起光に用いるレーザー光照射手段の出力を少しアップさせることで併用できる。
レーザー光をビームとしてディスクを回転させながら局所的に照射するから、小さな出力でよい。
【0012】
PG:Ag材は、350~400℃のアニーリング(加熱処理)にて誘起蛍光中心を消去でき、繰り返し使用できる。
そこで、本発明者は前記放射線量の読み取りの際に用いる励起光のレーザー光照射手段の出力を調整することでディスクを回転させながら局所的に加熱でき、このアニーリング処理に併用できることを明らかにした。
【0013】
PG:Ag材を円盤状のポリカーボネート基板等の樹脂基板、あるいはホウ素ケイ酸塩ガラス等の光学ガラス基板上に、積層したことにより半導体レーザー光の照射にて局所的に順次350~400℃に加熱することができる。
ディスクのベース材に光学ガラス等の透明基板を用いると、表面側から励起光を照射し、裏面側から蛍光等を検知し、放射線量蓄積情報を読み取ることができる。
【0014】
また、ポリカーボネート等の樹脂基板上にPG:Ag材を積層する場合に、このポリカーボネート層とPG:Ag材層との間に例えばAl蒸着膜等の厚さ5~30nmの極薄い反射層を形成してもよい。
このようにPG:Ag材層の下に反射層を形成すると、レーザー光照射の出力を相対的に小さくしても約400℃位までに局所的に加熱しながらディスクを回転加熱処理できる。
アニーリングを目的としてレーザー光を用いる場合には、PG:Ag材層の厚みを0.6mm以下にするのが好ましく、0.05~0.3mm程度がさらによい。
【発明の効果】
【0015】
本発明で放射線量二次元センサとして銀活性リン酸塩ガラスを用いた、あるいはこのPG:Ag材を積層したディスクにしたことにより、ディスクを回転制御し、半導体レーザー光を励起光に用いて発光する蛍光の強度を順次読み取ることができ、高い分解能にて放射線量の蓄積情報を二次元的に測定することができる。
また、ディスクを回転させながらレーザー光をビームとして局所的に順次照射するので、レーザー光の照射手段の出力を調整することで、プレヒートやアニーリングにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るディスクの構造例を示す。
【図2】本発明に係る装置の測定構成例を示す。
【図3】試験,評価に用いた装置の配置図を示す。
【図4】X線照射後、室温でディスクを放置した時の経過時間とRPL強度の関係を示す。
【図5】累積放射線量及びプレヒートとオレンジRPL強度の関係を示す。
【図6】(a)はX線照射前,(b)はX線照射後のPG:Agディスクに波長352nmのブラックライトを照射した時のRPLを示す。
【図7】400rpmで回転するディスクから測定したオレンジRPLのオシロスコープ波形を示す。
【図8】図7のデータをディスク形状に描いた時のRPL強度分布を示す。
【図9】(a)はマスキングしてX線照射したPG:Agディスクにブラックライト(352nm)を照射した写真を示し、(b)は測定装置から得られたデータを基にパソコンで再構築した(a)の2-Dイメージを示す。
【図10】(a)はマスキングしてX線照射したPG:Agディスクにブラックライト(352nm)を照射した写真を示し、(b)は測定装置から得られたデータを基にパソコンで再構築した(a)の3-Dイメージを示す。
【図11】分解能の測定結果を示す。
【図12】加熱温度とオレンジRPL強度の関係を示す。
【図13】レーザー出力5mWにおける蛍光中心の消去実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に本発明に係る放射線量二次元センサとしてのディスク10の構造例を示す。
好ましいディスク10の構造は、厚さ0.9~1.15mm,直径12cmの円盤状のポリカーボネート基板2に厚さ5~30nmのAl蒸着膜からなる反射層3を形成し、この上に0.05~0.3mmの銀活性リン酸塩ガラス層(PG:Ag材層)1を積層したものであるが、今回評価用に試作したディスク10は、厚み0.6mmのポリカーボネート基板2の上に10nmのAl蒸着膜を形成し、その上に0.6mmのPG:Ag材層を積層した。
なお、ディスクのベース材としてホウ素ケイ酸塩ガラス(光学ガラス)を用いることもできる。
また、この光学ガラスをベース材として用いた場合に表面にAgを蒸着し、熱拡散により表面がAg活性を有するガラスディスクにしてもよい。
さらには、本発明者が特許文献3に開示したように光学ガラスからなるディスクの表面にBaFBr:Eu2+系の薄膜をスピンコート法等により形成し、光刺激ルミネッセンス(OSL)にて表面から励起光を照射し、裏面側から放射線量蓄積情報を読み取ることもできる。

【0018】
試作した放射線量測定装置の構成図を図2に示し、図3に装置配置図(写真)を示す。
ディスクを回転機構に保持し、励起レーザー光をレンズを介してこのディスク表面にビーム照射し、発光した蛍光の強度をフィルターやレンズ等を介してオシロスコープにて測定した。
回転するディスクの位置をX-Y制御装置で径方向に移動制御しながら、ディスクに記録された放射線量の蓄積情報を二次元データとして読み取ることができる。
なお、蛍光には波長約470nmのブルー光と、波長約560nmのオレンジ光が発光する。

【0019】
事前調査として、ビルドアップ現象の確認をすべく、試作したディスクに7.35Gyの放射線量のX線を照射し、室温でディスクを放置した時間とRPL強度の関係を調査した結果を図4のグラフに示す。
また、図5のグラフはX線の照射の経過と、オレンジRPLの蛍光強度の関係を示す。
サンプル1は0.82Gyの照射後に1.64Gy照射し、それをプレヒートし、サンプル2は逆に1.64Gy照射後に0.82Gy照射し、プレヒートしたものであり、サンプル3は1.64Gy照射後にプレヒートし、さらに0.82Gy照射した後にプレヒートしたものである。
図4の結果等も考慮して、プレヒート条件は70℃×30分程度がよく、図5のグラフからPG:Ag材に照射した放射線量は経過を問わず累積的に蓄積し、70℃×30分のプレヒートにより総放射量が一致することが確認できた。
また、波長375nmのレーザー光にて出力10mW×3~5分にてプレヒート処理ができた。

【0020】
次に本発明に係る二次元放射線量センサの分解能を調査した。
ディスクにマスキングし、X線照射(7.35Gy)後の図6は、X線照射(7.35 Gy)前(a)と後(b)のPG:Agディスクに波長352nmのブラックライトを照射した時のRPLを示す。
図7にディスクの回転数400rpmでのオレンジRPLのオシロスコープ波形を示し、図8は、図7のデータをディスク形状に変換した時のオシロスコープで測定したRPL強度分布を示す。
また、図9(a)はマスキングしてX線照射したPG:Agにブラックライト(352nm)を照射した写真と(b)はパソコンで再構築した(a)の2-Dイメージを示す。
さらに、図10に、図9と同様、(a)はマスキングしてX線照射したPG:Agにブラックライト(352nm)を照射した写真と(b)はパソコンで再構築した(a)の3-Dイメージを示す。
さらに図11に分解能の測定結果の1例を示す。
分解能としては1μmレベル有することが分かる。

【0021】
次に波長371nm,レーザー光出力100W/cm(7.9mW,φ100μm)を照射し続けながら、温度制御付きヒーター上にX線照射したPG:Ag材試料をおいて、そのオレンジRPL強度の温度依存性を各温度で調査し、その結果を図12のグラフに示す。
この結果、200℃以上にてオレンジRPL強度が弱くなることから、200℃以上の加熱にて蛍光励起中心が消去し始めることがわかった。
今回の試作装置でレーザー光が最大出力となる、出力71kW/cm(5mW,φ3μm)のときのオレンジRPL強度を図13のグラフに示す。
この条件では、今回の試作のPG:Ag材層の厚みが0.6mmであったためにオレンジRPLの蛍光中心を完全に消去することはできなかったが、図12,図13のグラフからレーザー光の出力をアップするか、PG:Ag材層の厚みを0.05~0.3mm程度に薄くすれば消去できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るディスク型の放射線量二次元センサは、RPLのみならずTSLやOSLにも展開できる。
二次元的な放射線量の測定及び解析に用いるのが有効であり、例えばX線を用いた応力状態の解析や原子力発電所、医療現場における放射線量計としても利用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 PG:Ag材層
10 ディスク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12