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明細書 :歩行支援装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5725553号 (P5725553)
公開番号 特開2013-052159 (P2013-052159A)
登録日 平成27年4月10日(2015.4.10)
発行日 平成27年5月27日(2015.5.27)
公開日 平成25年3月21日(2013.3.21)
発明の名称または考案の名称 歩行支援装置
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2011-193411 (P2011-193411)
出願日 平成23年9月5日(2011.9.5)
審査請求日 平成26年6月30日(2014.6.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】▲高▼岩 昌弘
【氏名】則次 俊郎
【氏名】佐々木 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】岩田 洋一
参考文献・文献 韓国登録特許第10-0957379(KR,B1)
特開2006-326185(JP,A)
特開平5-137742(JP,A)
調査した分野 A61H 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
装着者の下腿に装着される下腿装具と、
前記装着者の足に装着され、前記下腿装具に底屈及び背屈方向に揺動可能に連結される足装具と、
前記下腿装具に対して前記足装具を揺動するアクチュエータと、を備えた歩行支援装置であって、
前記下腿装具の足関節部に設けられ、前記足装具を揺動可能に軸支する支持軸と、
前記装着者の足底前部の下方に配置され、立脚終期における前記装着者の体重移動の際に前記足底前部に踏まれることで、圧縮空気を生成するとともに圧送するポンプ手段と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記足装具に一体的に固定されるケース体と、
前記ケース体内に設けられ、前記ポンプ手段に対して気密に連通され、前記ポンプ手段から圧縮空気が供給されて膨張するとともに前記ポンプ手段に圧縮空気が排出されて収縮することで容積が可変な容積可変手段と、
前記支持軸に取り付けられるとともに前記容積可変手段の一側に配置され、前記容積可変手段の膨張時の圧力を受けて、前記下腿装具に対して前記足装具を底屈方向に揺動する板状の受圧部材と、
前記容積可変手段を前記受圧部材を介して収縮させるように付勢する付勢部材と、を備え、
前記装着者の爪先が離地する際に、前記付勢部材の反力により前記容積可変手段から前記ポンプ手段に圧縮空気が排出されることで、前記下腿装具に対して前記足装具を背屈方向に揺動することを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
前記受圧部材は、前記支持軸に一体的に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
前記受圧部材は、前記支持軸に所定の範囲で揺動可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
前記容積可変手段は、膨縮可能な袋体と、当該袋体を前記受圧部材との間で保持し、前記受圧部材に対する位置が可変である袋体保持部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の歩行支援装置。
【請求項5】
前記容積可変手段は、チューブ体により前記ポンプ手段と気密に連通することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の歩行支援装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の体重を利用して、装着者の歩行動作を支援する歩行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の事故要因の上位に歩行時の転倒があげられ、高齢者は一度転倒すると骨折しやすく寝たきりになるケースさえある。これは、高齢者が足関節背屈群筋の筋力低下のため歩行が摺足状となり、わずかな段差でもつまづきやすいためであると考えられる。また、高齢者のみならず、疾病やケガ等により下肢に障害を持つため、歩行が困難になる場合もある。自立した日常生活において歩行は不可欠であり、歩行を支援する装置の開発が進められている。
【0003】
これまで幾つかの歩行支援装置が開発されており、歩行支援装置としてはバネ等の受動要素を用いたものと、アクチュエータを用いて能動的に歩行動作を支援するものに別けられる。前者における従来技術としては、踵に設置したバネの反力を利用して踵を持ち上げ易くするもの(特許文献1参照)や、足が上がる際のふくらはぎの筋肉の隆起を利用して爪先を持ち上げるように機構的な工夫をしたもの(特許文献2参照)、内圧の変化で剛性が調整できる空気圧受動要素を用いたもの(非特許文献1参照)などが報告されている。
【0004】
一方、後者における従来技術としては、磁場で粘性が変化するMR流体を用いて足関節のモーメントを調整するもの(非特許文献2参照)、空気圧シリンダを用いて下肢全体の動作を支援するもの(非特許文献3)などがある。
【0005】
また、非特許文献4に記載された技術は、本願発明者が従来実施していたもので、装着者の体重を利用するという観点では本願発明と原理は同じであるが、アクチュエータや駆動方法の観点で全く異なるものである。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平10-262706号公報
【特許文献2】特開2007-195900号公報
【0007】

【非特許文献1】小澤他:空気圧受動要素を利用した短下肢装具の開発、ロボティックスメカトロニクス講演会2007講演論文集、1A2-K02、2007
【非特許文献2】赤澤他:メカトロニクスを導入した短下肢装具の研究開発、平成15年度兵庫県福祉のまちづくり工学研究所報告書
【非特許文献3】Tkasyoshi Fujita et al. ,Development of Pneumatically Assisted Walking System,Proc.of the 6th JFPS Int.Symp.On Fluid Power,pp.734-739,2005
【非特許文献4】Masahiro Takaiwa et al. ”Development of Energy Autonomous Type Pneumatic Walking Support Shoes”,J.of Robotics and Mechatoronics,Vol.21,No.3,pp.353-358,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来技術の中で、ばねの復元力を利用するものはエネルギーの観点からは優位であるが、その機構上大きな支援効果を達成するのは容易でない。一方、アクチュエータを用いて能動的に支援する装置は高い支援効果が得られる反面、装置が大掛かりとなるなどの問題が生じる。さらに、アクチュエータを用いて能動的に支援する装置は、機構的に複雑で高価なものであったり、アクチュエータ等を駆動する際に電気エネルギーを必要としたりするものであった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電気エネルギーを一切使用せず、簡便で安価な歩行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、
装着者の下腿に装着される下腿装具と、
前記装着者の足に装着され、前記下腿装具に底屈及び背屈方向に揺動可能に連結される足装具と、
前記下腿装具に対して前記足装具を揺動するアクチュエータと、を備えた歩行支援装置であって、
前記下腿装具の足関節部に設けられ、前記足装具を揺動可能に軸支する支持軸と、
前記装着者の足底前部の下方に配置され、立脚終期における前記装着者の体重移動の際に前記足底前部に踏まれることで、圧縮空気を生成するとともに圧送するポンプ手段と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記足装具に一体的に固定されるケース体と、
前記ケース体内に設けられ、前記ポンプ手段に対して気密に連通され、前記ポンプ手段から圧縮空気が供給されて膨張するとともに前記ポンプ手段に圧縮空気が排出されて収縮することで容積が可変な容積可変手段と、
前記支持軸に取り付けられるとともに前記容積可変手段の一側に配置され、前記容積可変手段の膨張時の圧力を受けて、前記下腿装具に対して前記足装具を底屈方向に揺動する板状の受圧部材と、
前記容積可変手段を前記受圧部材を介して収縮させるように付勢する付勢部材と、を備え、
前記装着者の爪先が離地する際に、前記付勢部材の反力により前記容積可変手段から前記ポンプ手段に圧縮空気が排出されることで、前記下腿装具に対して前記足装具を背屈方向に揺動するものである。
【0011】
請求項2においては、
前記受圧部材は、前記支持軸に一体的に取り付けられるものである。
【0012】
請求項3においては、
前記受圧部材は、前記支持軸に所定の範囲で揺動可能に取り付けられるものである。
【0013】
請求項4においては、
前記容積可変手段は、膨縮可能な袋体と、当該袋体を前記受圧部材との間で保持し、前記受圧部材に対する位置が可変である袋体保持部を備えるものである。
【0014】
請求項5においては、
前記容積可変手段は、チューブ体により前記ポンプ手段と気密に連通するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気エネルギーを一切使用しないため、簡便で安価な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る歩行支援装置の構成を模式的に示す側面図。
【図2】第1実施形態に係るアクチュエータの構成を示す正面図。
【図3】歩行支援装置の実施例を示す図。
【図4】歩行支援装置による歩行支援動作を示す説明図であり、(a)は足接地状態を示す図、(b)は立脚終期を示す図、(c)は遊脚初期を示す図。
【図5】歩行時の足関節角度を示す図。
【図6】歩行支援装置の発生モーメントを示す図。
【図7】歩行支援装置単体の動作を示す図。
【図8】歩行支援装置装着時の動作を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る歩行支援装置の構成を模式的に示す側面図。
【図10】第2実施形態に係るアクチュエータの構成を示す正面図。
【図11】支持軸に取り付けられた受動部材(装着者の前傾姿勢時)を示す一部断面側面図。
【図12】支持軸に取り付けられた受動部材(バルーン膨張時)を示す一部断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態に係る歩行支援装置20について図1、図2を用いて説明する。

【0018】
歩行支援装置20は、図1に示すように、短下肢装具1と、ポンプ手段2と、アクチュエータ3と、を備える。
なお、図1においては、歩行支援装置20を靴に搭載する状態を考慮して、靴の踵部15も模式的に記載している。

【0019】
短下肢装具1は、側面視略L字状の短下肢用の装具である。短下肢装具1は、短下肢装具1の上部装具であり、装着者の下腿(ひざから足首までの部分)に装着される下腿装具4と、短下肢装具1の下部装具であり、装着者の足に装着され、下腿装具4の足関節部4a(図2参照)にて底屈及び背屈方向に揺動可能に連結される足装具5から構成される。
なお、図1においては、上向き矢印方向(時計回り方向)が底屈方向を示し、下向き矢印方向(反時計回り方向)が背屈方向を示す。

【0020】
下腿装具4は、歩行時に装着者の下腿を保持する装具であり、足装具5上に立設して配置され、下腿背面を覆う装具である。下腿装具4は、装着者の下腿背面に当接した状態で、下腿装具4の上端部に配設される着脱可能な装着ベルト6により装着者の下腿前面を止めることで、装着者の下腿を一体的に保持するものである。下腿装具4は、例えば、プラスチック等の合成樹脂や弾性素材を用いて形成可能である。また、下腿装具4は、当該下腿装具4の下端部に位置するとともに装着者の足関節に対応する足関節部4a(図2参照)を有し、当該足関節部4aには支持軸7が一体的に設けられている。

【0021】
支持軸7は、下腿装具4の足関節部4aに設けられ、足装具5を揺動可能に軸支する軸部材である。支持軸7は、その表面に雄ネジ部7aを形成している。支持軸7は、足関節部4a外側面から所定長外側に突出して配置され、下腿装具4の足関節部4aに一体的に固定されている。また、支持軸7は、アクチュエータ3の揺動軸になる。

【0022】
足装具5は、歩行時に装着者の足底後部を保持する装具であり、下腿装具4の足関節部4aに揺動可能に連結され、装着者の足底後部を載置する装具である。ここで、装着者の足の部位名称について説明すると、「足底部」とは、装着者が立地したときに地面に対向する足裏部分をいい、より具体的には、装着者が靴やスリッパ等の履物を履いたときには、当該履物の底に対応する足裏部分をいう。また、上記「足底後部」とは、足底部のうち踵及び土踏まずの部分をいい、後述する「足底前部」とは、足底部のうち踵及び土踏まずの部分を除いた爪先部分をいうものである。足装具5は、装着者の足底後部を載置した状態で、足装具5の側壁部に配設される着脱可能な装着ベルト8により装着者の甲部を止めることで、装着者の足を一体的に保持するものである。足装具5は、例えば、プラスチック等の合成樹脂や弾性素材を用いて形成可能である。また、足装具5は、当該足装具5の上端部に位置するとともに装着者の足関節に対応する足関節部5aを有し、当該足関節部5aには挿通連結部材9(図2参照)が一体的に設けられている。

【0023】
挿通連結部材9は、足装具5の足関節部5aに設けられ、支持軸7を挿通するとともに後述するケース体10と連結するための部材である。挿通連結部材9は、段付き円柱状の部材であり、足装具5の幅方向に支持軸7を挿通するとともに、支持軸7のすべり軸受けとなる挿通孔9a、ケース体10を当接支持するための円柱状突出部9b、及びネジ締結によりケース体10を一体的に固定するための3つの取付突出部9cを有する。

【0024】
ポンプ手段2は、装着者の足底前部の下方に配置され、立脚終期における前記装着者の体重移動の際に前記足底前部に踏まれることで、圧縮空気を生成するとともに圧送するものである。ポンプ手段2としては、例えば、プラスチック製で蛇腹状の足踏み式のフットポンプ等を用いることが可能である。また、図3に示す歩行支援装置20の実施例では、ポンプ手段2として、平面視長方形状で空気を封入可能な食品包装用部材(スパウト付パウチ)を利用したものである。この食品包装用部材をポンプ手段2として用いた場合には、足踏み式のフットポンプに比べて、薄型形状であるため足底前部の下方に配置し易く、コンパクトなフットポンプとなり得る。また、ポンプ手段2は、生成した圧縮空気を外部に圧送するとともに後述する容積可変手段13から圧送されてくる圧縮空気を内部に導入するためのポート2a(図3参照)を備える。また、図3に示すように、ポート2aには、屈曲自在なチューブ体であるエアチューブ14を介してアクチュエータ3内に配設されるバルーン13aに接続されている。エアチューブ14は、ポンプ手段2とバルーン13aとの間において、空気を気密に連通可能な連通手段となる。

【0025】
アクチュエータ3は、下腿装具4に対して足装具5を揺動するためのものであり、足装具5の足関節部5aに取り付けられるベーン型アクチュエータである。アクチュエータ3は、ケース体10、ケース体10の中心部に挿通連結部材9を介して挿通される支持軸7、受圧部材であるベーン11、付勢部材であるねじりコイルばね12、及び容積可変手段13、を備える。

【0026】
ケース体10は、有底円筒状のケース部材であり、足装具5に一体的に固定されるものである。ケース体10は、その中央部に支持軸7を挿入して、当該支持軸7を突出して配置するための挿入孔10aが開口されている。ケース体10は、3つの取付突出部9cを介して足装具5に一体的に固定されている。また、ケース体10には、図示しない蓋部材によりケース体10の開口部を閉じることが可能である。

【0027】
容積可変手段13は、ケース体10内に設けられ、前記ポンプ手段2に対して気密に連通され、前記ポンプ手段2から圧縮空気が供給されて膨張するとともに前記ポンプ手段2に圧縮空気が排出されて収縮することで、容積が可変な手段である。本実施形態における容積可変手段13は、前記支持軸7に対して略対称に配置される二つの膨縮可能な袋体(本実施形態においては、袋状弾性体)であるバルーン13a・13aと、当該バルーン13a・13aを後述する受圧部材であるベーン11との間で保持し、当該ベーン11に対する位置が可変である袋体保持部13b・13bとを備える。袋体保持部13b・13bは、各バルーン13a・13aの一端を保持するためにケース体10内に一体的に設けられた二つの平板状の壁部材である。袋体保持部13b・13bは、ケース体10内において後述する受圧部材であるベーン11と対向する位置に配置され、各バルーン13a・13aは各袋体保持部13b・13bとベーン11における各袋体保持部13b・13bとの各対向面との間に配置される。各袋体保持部13b・13bは、各バルーン13a・13aの膨張時に発生する底屈方向(図1においては、上向き矢印で示す時計回り方向)の押圧に対して受圧可能に配置される。すなわち、各袋体保持部13b・13bは、各バルーン13a・13aの底屈方向の押圧に抗する位置に配置されている。また、袋体保持部13b・13bは、図1に示すように、装着者が直立している状態の場合(バルーン13a・13a収縮時)、ベーン11と所定間隔を維持するように保持される。袋体保持部13b・13bは、袋体保持部13b・13bとベーン11との間隔を、当該間隔の調整機構(図示せず)により、袋体保持部13b・13bを移動させて、ベーン11に対して近接したり、もしくは離間したりしてその間隔を調整することができる。各バルーン13a・13aの一端には、前述したエアチューブ14が連結されており、各バルーン13a・13aとポンプ手段2とを気密に連通している。こうして、前述したポンプ手段2と、各バルーン13a・13aとは、エアチューブ14で連通されるとともに、所定量のエアが予め封入され、気密に保持される。

【0028】
ベーン11は、支持軸7に一体的に取り付けられるとともに容積可変手段13が有する各バルーン13a・13aの一側に配置され、容積可変手段13の膨張時の圧力を受けて、下腿装具4に対して足装具5を底屈方向に揺動するための板状の受圧部材である。ベーン11の長さ方向中央に形成される略円柱状の基部にはベーン11の短手方向を貫通するとともにその内部に雌ネジ部を形成したネジ孔11aが設けられている。

【0029】
ねじりコイルばね12は、容積可変手段13が有するバルーン13a・13aを受圧部材であるベーン11を介して収縮させるように付勢する付勢部材である。ねじりコイルばね12は、その中央の環状部に支持軸7を挿入した状態でケース体10の内部奥側に配置される。ねじりコイルばね12は、一方のねじりコイルばね12端部をバルーン13aが当接する面の反対側の面となるベーン11の一側に当接するともに、他方のねじりコイルばね12端部をケース体10内に一体的に突出して設けられたコイル係止部10bに係止されている。

【0030】
こうして、図2に示すように、足装具5が有する挿通連結部材9の挿通孔9aに、下腿装具4が有する支持軸7が挿入される。そして、足装具5の足関節部5aには、3つの取付突出部9cを介してケース体10が取り付けられる。また、ねじりコイルばね12は、その中央の環状部に支持軸7を挿入した状態でケース体10の内部奥側の所定の位置に配置される。ベーン11は、その基部に有する雌ネジ部を支持軸7に形成された雄ネジ部7aに螺合して取り付けられ、ナットにより支持軸7の中途部に一体的に固定される。下腿装具4の足関節部4a外側と足装具5の足関節部5a内側とは、互いに摺動自在に配置される。ケース体10が一体的に固定された足装具5は、ベーン11と下腿装具4との間に連結された支持軸7上に軸支されるとともに、下腿装具4に対して揺動可能に配置される。そして、ケース体10内の袋体保持部13b・13bとベーン11との間にバルーン13a・13aが介装される。こうして、アクチュエータ3は、足装具5の足関節部5aの外側に配置される。

【0031】
以上のように、歩行支援装置20には、短下肢装具1の足装具5の足関節部5aにベーン型のアクチュエータ3が取り付けられている。下腿装具4(上部装具)側には、支持軸7を介してベーン11が固定され、足装具5(下部装具)側には、ケース体10が固定されている。アクチュエータ3には、付勢手段としてねじりコイルばね12が内蔵されており、足が尖足(爪先が下に向く動作)する回転(揺動)方向に対してねじりコイルばね12によるばね反力を生じる。また、ベーン11をばね反力に抗して駆動するためにケース体10の袋体保持部13b・13bとベーン11との間ににバルーン13a・13aを挿入している。バルーン13a・13a内の圧力は足底部の前方部に設置したポンプ手段2を踏むことで生成される。具体的な歩行支援装置20を用いた歩行支援動作を以下に述べる。

【0032】
次に、以上のように構成された歩行支援装置20による歩行支援動作について図4を用いて具体的に説明する。

【0033】
図4に歩行支援動作を示す。図4(a)で足が接地した後、図4(b)に示すように重心が前方に移動し、踵が離地する立脚終期となる。この時、足底前部の下方に配置しているポンプ手段2(フットポンプ)を装着者の体重により踏むことで、ポンプ手段2内の空気が圧縮されて、この圧縮空気がポンプ手段2と連通された2個のバルーン13a・13aへ移動する。そして、ねじりコイルばね12によるばね反力に抗してベーン11を駆動することで歩行支援装置20は装着者の足と同様に尖足状態となる。続いて、図4(c)に示すように、爪先が離地することで、バルーン13a・13a内の空気はねじりコイルばね12の復元力を利用してポンプ手段2内へ戻るとともに、足装具5の足関節部5aに背屈モーメントを生じる。すなわち、アクチュエータ3は、装着者の爪先が離地する際に、ねじりコイルばね12の反力により容積可変手段13のバルーン13a・13aからポンプ手段2に圧縮空気が排出することで、下腿装具4に対して足装具5を背屈方向に揺動することができる。歩行支援装置20ではポンプ手段2(フットポンプ)が足底部の前方部に設置されているため踵が離地する立脚終期でしっかりと体重によりポンプ手段2(フットポンプ)を圧縮できるとともに、躓きやすい階段の昇降時にも動作可能である。また、歩行支援装置20においては、ポンプ手段2、バルーン13a・13a、及びエアチューブ14によって空気圧回路が構成されており、当該空気圧回路は完全密封しているので雨天や水たまり等での歩行支援装置20の使用にも耐えられる。また、袋体保持部13b・13bは、ベーン11に対する位置を変更することが可能であるため、例えば、体重の軽い人の場合は、ベーン11と袋体保持部13b・13bとの間隔を、標準間隔(図1に示す袋体保持部13b・13bとベーン11との間隔)よりも近接させたり、体重の重い人の場合は、標準間隔よりも離間させたりすることで、ベーン11と袋体保持部13b・13bとが、各バルーン13a・13aにより受ける受圧量を調整することができる。すなわち、ベーン11と袋体保持部13b・13bとが、各バルーン13a・13aから受ける受圧量を可変とすることで、下腿装具4に対する足装具5の揺動量の調節が可能となり、装着者の体重の軽重への対応が可能となる。

【0034】
次に、歩行動作時における支援効果について実験により検証した結果を示す。

【0035】
(歩行支援装置による歩行支援目標について)
図5に歩行時の足関節角度の変化を示す。足関節角度は直立した状態を基準(0[deg.])とし、背屈(爪先を上に持ち上げる動作)方向を正とする。踵が地面から離れ(図中HO:Heel Off)てから急速に尖足し、爪先が離地(図中TO:Toe Off)した後約20[deg.]背屈している。また、本願発明者が行った先行研究で足を尖足した状態から20[deg.]背屈させるのに必要な足関節モーメントは約2[Nm]である。これより、背屈モーメント2[Nm]、背屈角度20[deg.]を支援率100%時の目標値とする。

【0036】
次に、図3に示す歩行支援装置20を用いて歩行時の支援効果を調べた実験結果を示す。

【0037】
図6に、直立状態(0[deg.])から尖足状態(約24[deg.])までの、足関節角度とばね反力による背屈モーメントの関係を示す。最大尖足角度で0.9[Nm]のモーメントが得られ、上述した支援目標の約50%となる。図7は装着していない状態の歩行支援装置20に対してフットポンプを踏む動作を繰り返した結果である。図7の上側の波形はポンプ内圧力、図7の下側の波形は足関節角度を示す。繰り返しポンプを踏む動作に応じて約20[deg.]の尖足と初期状態(0[deg.])までの復帰を連続して実行できることが確認できた。

【0038】
図8は歩行支援装置20を装着し、足を上げて脱力した状態で、図7で示した実験と同様の実験を行った結果である。図8の上側の波形はポンプ内圧力、図8の下側の波形は足関節角度を示す。なお、フットポンプは他の被験者が踏んでいる。装置側から見ると足が負荷となり尖足角度は-15[deg.]程度と図7に比べて小さいが、フットポンプから足を離した遊脚期に相当する状態では約-5[deg.]まで戻っていることから、装置自体が足を約10[deg.]背屈させていることがわかる。これは要求される背屈角度の約半分であるが、図6からも本装置は約50%の支援率を有するため、ほぼ妥当な結果である。結果として、歩行支援装置20による十分な支援効果が確認できた。

【0039】
次に、本発明の第2の実施形態に係る歩行支援装置40について図9から図12を用いて説明する。
なお、第2の実施形態に係る歩行支援装置40については、前述した歩行支援装置20と同様の部材及び同様の機能を有する部分については、その説明を省略し、歩行支援装置20と異なる部分について、その説明を行うものとする。

【0040】
歩行支援装置40は、図9に示すように、短下肢装具1と、ポンプ手段2と、アクチュエータ3と、を備える。

【0041】
短下肢装具1は、側面視略L字状の短下肢用の装具である。短下肢装具1は、短下肢装具1の上部装具であり、装着者の下腿(ひざから足首までの部分)に装着される下腿装具24と、短下肢装具1の下部装具であり、装着者の足に装着され、下腿装具24の足関節部24a(図10参照)にて底屈及び背屈方向に揺動可能に連結される足装具5から構成される。
なお、図9においては、上向き矢印方向(時計回り方向)が底屈方向を示し、下向き矢印方向(反時計回り方向)が背屈方向を示す。

【0042】
下腿装具24は、歩行時に装着者の下腿を保持する装具であり、足装具5上に立設して配置され、下腿前面を覆う装具である。下腿装具24は、装着者の下腿前面に当接した状態で、下腿装具24の上端部に配設される着脱可能な装着ベルト26により装着者の下腿背面を止めることで、装着者の下腿を一体的に保持するものである。下腿装具24は、例えば、プラスチック等の合成樹脂や弾性素材を用いて形成可能である。また、下腿装具24は、当該下腿装具24の下端部に位置するとともに装着者の足関節に対応する足関節部24aを有し、当該足関節部24aには支持軸27が一体的に設けられている。

【0043】
支持軸27は、下腿装具24の足関節部24aに設けられ、足装具5を揺動可能に軸支する軸部材である。支持軸27は、その表面に摺動部27aを形成しており、後述する受圧部材であるベーン31の摺動孔31aに挿入可能である。摺動部27a外周面には、その半周に亘って、所定幅の案内溝27bが形成されている。当該案内溝27bは、後述するベーン31の基部に取り付けられた位置決めネジ28をベーン31の揺動方向に沿って案内するものである。支持軸27は、足関節部24a外側面から所定長外側に突出して配置され、下腿装具24の足関節部24aに一体的に固定されている。また、支持軸27は、アクチュエータ3の揺動軸になる。

【0044】
アクチュエータ3は、下腿装具24に対して足装具5を揺動するためのものであり、足装具5の足関節部5aに取り付けられるベーン型アクチュエータである。アクチュエータ3は、ケース体10、ケース体10の中心部に挿通連結部材9を介して挿通される支持軸27、受圧部材であるベーン31、付勢部材であるねじりコイルばね12、及び容積可変手段13、を備える。

【0045】
ケース体10は、有底円筒状のケース部材であり、足装具5に一体的に固定されるものである。ケース体10は、その中央部に支持軸27を挿入して、当該支持軸27を突出して配置するための挿入孔10aが開口されている。ケース体10は、3つの取付突出部9cを介して足装具5に一体的に固定されている。また、ケース体10には、図示しない蓋部材によりケース体10の開口部を閉じることが可能である。

【0046】
ベーン31は、支持軸27に所定の範囲で揺動可能に取り付けられるとともに容積可変手段13が有する各バルーン13a・13aの一側に配置され、容積可変手段13の膨張時の圧力を受けて、下腿装具24に対して足装具5を底屈方向に揺動するための板状の受圧部材である。ベーン31の長さ方向中央に形成される略円柱状の基部にはベーン31の短手方向を貫通するとともにその内部に支持軸27を挿入するための摺動孔31aが設けられている。また、ベーン31の基部には、前記案内溝27bと対応する位置にベーン31の軸方向に垂直にネジ孔が形成され、当該ネジ孔に六角穴付き位置決めネジ28を螺合可能となっている。当該ネジ孔に位置決めネジ28を螺合することで、位置決めネジ28先端は摺動孔31a内に所定長突出するとともに(図11参照)、摺動孔31aに挿入される支持軸27の案内溝27bにより案内され、案内溝27bの一端により係止可能になる。

【0047】
こうして、図10に示すように、足装具5が有する挿通連結部材9の挿通孔9aに、下腿装具24が有する支持軸27が挿入される。そして、足装具5の足関節部5aには、3つの取付突出部9cを介してケース体10が取り付けられる。また、ねじりコイルばね12は、その中央の環状部に支持軸27を挿入した状態でケース体10の内部奥側の所定の位置に配置される。ベーン31は、その基部に有する摺動孔31a内に支持軸27を挿入して取り付けられ、ナットにより支持軸27の中途部に取り付けられる。また、位置決めネジ28は、支持軸27の基部に設けられたネジ孔へ螺合され、位置決めネジ28の先端が案内溝27b内に突出して設けられる。下腿装具24の足関節部24a外側と足装具5の足関節部5a内側とは、互いに摺動自在に配置される。ケース体10が一体的に固定された足装具5は、ベーン31と下腿装具24との間に連結された支持軸27上に軸支されるとともに、下腿装具24に対して揺動可能に配置される。そして、ケース体10内の袋体保持部13b・13bとベーン31との間にバルーン13a・13aが介装される。こうして、アクチュエータ3は、足装具5の足関節部5aの外側に配置される。

【0048】
次に、以上のように構成された歩行支援装置40による歩行支援動作について図4、図11及び図12を用いて具体的に説明する。

【0049】
図4に歩行支援動作を示す。図4(a)で足が接地した後、図4(b)に示すように重心が前方に移動し、踵が離地する立脚終期となる。この時、足底前部の下方に配置しているポンプ手段2(フットポンプ)を装着者の体重により踏むことで、ポンプ手段2内の空気が圧縮されて、この圧縮空気がポンプ手段2と連通された2個のバルーン13a・13aへ移動する。そして、ねじりコイルばね12によるばね反力に抗してベーン31を駆動することで歩行支援装置40は装着者の足と同様に尖足状態となる。続いて、図4(c)に示すように、爪先が離地することで、バルーン13a・13a内の空気はねじりコイルばね12の復元力を利用してポンプ手段2内へ戻るとともに、足装具5の足関節部5aに背屈モーメントを生じる。すなわち、アクチュエータ3は、装着者の爪先が離地する際に、ねじりコイルばね12の反力により容積可変手段13のバルーン13a・13aからポンプ手段2に圧縮空気が排出することで、下腿装具4に対して足装具5を背屈方向に揺動することができる。歩行支援装置40ではポンプ手段2(フットポンプ)が足底部の前方部に設置されているため踵が離地する立脚終期でしっかりと体重によりポンプ手段2(フットポンプ)を圧縮できるとともに、躓きやすい階段の昇降時にも動作可能である。また、歩行支援装置40においては、ポンプ手段2、バルーン13a・13a、及びエアチューブ14によって空気圧回路が構成されており、当該空気圧回路は完全密封しているので雨天や水たまり等での歩行支援装置40の使用にも耐えられる。また、袋体保持部13b・13bは、ベーン31に対する位置を変更することが可能であるため、例えば、体重の軽い人の場合は、ベーン31と袋体保持部13b・13bとの間隔を、標準間隔(図1に示す袋体保持部13b・13bとベーン31との間隔)よりも近接させたり、体重の重い人の場合は、標準間隔よりも離間させたりすることで、ベーン31と袋体保持部13b・13bとが、各バルーン13a・13aにより受ける受圧量を調整することができる。すなわち、ベーン31と袋体保持部13b・13bとが、各バルーン13a・13aから受ける受圧量を可変とすることで、下腿装具24に対する足装具5の揺動量の調節が可能となり、装着者の体重の軽重への対応が可能となる。

【0050】
さらに、歩行支援装置40では、図11に示すように、装着者が前傾姿勢を取った際に、すなわち、装着者の下腿に一体的に装着された下腿装具24が傾斜する際に、下腿装具24に一体的に固定されている支持軸27がベーン31に対して摺動しても、案内溝27bに対応する所定範囲において位置決めネジ28が係止されることがなく、装着者が自然な前傾姿勢を取ることが可能である。一方、図12に示すように、バルーン13a・13aの膨張時には、ベーン31は支持軸27に設けられた案内溝27bの一端を位置決めネジ28により係止されるため、ベーン31にばねの反力が蓄積させることができる。

【0051】
本実施形態に係る歩行支援装置20、40は、靴やスリッパ等に組み込むことで、屋内・屋外を問わず装着者の歩行支援を行うことができる。

【0052】
以上の如く、本実施形態に係る歩行支援装置20、40は、足が地面に接地時に装着者の体重(位置エネルギー)を利用して足底前部に設置したポンプ手段2であるフットポンプを踏むことで、圧縮空気を生成し、爪先離地時にベーンタイプのアクチュエータ3を駆動することで爪先を上に向けるモーメント(背屈モーメント)を足装具5の足関節部5aに生成することで歩行を支援する機構である。

【0053】
本発明では、背屈群筋力の低下により遊脚期に尖足状態となり易い高齢者や下肢に障害を持つ人がつまづくことなく歩けることを目指し、足関節の背屈動作を能動的に支援する歩行支援装置を開発したものである。本装置は、装着者の体重(位置エネルギー)を利用して生成した圧縮空気のエネルギーを足関節まわりの仕事に変換するもので、電気エネルギーを一切用いない特徴を有する。そのため、本発明によれば、小型・軽量化を達成でき、少ない製作コストで、簡便で安価な歩行支援装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 短下肢装具
2 ポンプ手段
3 アクチュエータ
4 下腿装具
4a 足関節部
5 足装具
7 支持軸
10 ケース体
11、31 ベーン(受圧部材)
12 ねじりコイルばね(付勢部材)
13 容積可変手段
13a バルーン
13b 袋体保持部
20、40 歩行支援装置
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
10
【図12】
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