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明細書 :固体材料の水素分析装置及びその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5445833号 (P5445833)
公開番号 特開2011-021976 (P2011-021976A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成23年2月3日(2011.2.3)
発明の名称または考案の名称 固体材料の水素分析装置及びその方法
国際特許分類 G01N  21/63        (2006.01)
FI G01N 21/63 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2009-166652 (P2009-166652)
出願日 平成21年7月15日(2009.7.15)
審査請求日 平成23年12月26日(2011.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】香川 喜一郎
【氏名】福元 謙一
【氏名】仁木 秀明
個別代理人の代理人 【識別番号】100110814、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 敏郎
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 特開平09-189656(JP,A)
特開2005-257506(JP,A)
特開2008-204798(JP,A)
特表平11-502934(JP,A)
RAMLI M et al,Hydrogen analysis in solid samples by utilizing He metastable atoms induced by TEA CO2 laser plasma in He gas at 1 atm,Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy,2007年,Vol.62, No.12,Page.1379-1389
調査した分野 G01N 21/62-21/74
H05H 1/00- 1/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射して前記測定部位にプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析装置において、
固体材料表面の測定部位に向けて不活性ガスを噴射するガス供給手段と、
前記測定部位に向かってレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射手段と、
レーザー照射中においてプラズマから発せられる光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析手段とを有し、
前記ガス供給手段の不活性ガスの供給口を前記プラズマが発生する領域の内側に配置し、プラズマが発生する領域における前記不活性ガスの圧力を、噴射により周囲の雰囲気の圧力よりも高圧にすること、
を特徴とする固体材料の水素分析装置。
【請求項2】
前記ガス供給手段から前記測定部位に前記不活性ガスを噴射するガス供給口を、前記測定部位を中心とする円周上に複数配置したことを特徴とする請求項1に記載の固体材料の水素分析装置。
【請求項3】
前記ガス供給手段から前記測定部位に前記不活性ガスを噴射するガス供給口に対向して遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体材料の水素分析装置。
【請求項4】
固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射して前記測定部位にプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析方法において、
前記固体材料表面の測定部位に向けて不活性ガスを噴射するガス供給工程と、
前記測定部位に向けてレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射工程と、
レーザー照射中においてプラズマから発せられる光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析工程とを有し、
前記ガス供給工程では、プラズマが発生した領域の内側で前記不活性ガスを噴射させ、プラズマが発生した領域の圧力を周囲の雰囲気よりも高圧にすること、
を特徴とする固体材料の水素分析方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性ガス中の金属等の固体材料にレーザーを照射することで発生するプラズマから前記固体材料に含まれる水素の濃度を分析する水素分析装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不活性ガスを充填した密閉容器内に金属等の固体材料を置き、この固体材料にレーザーを照射し、そのとき発生するプラズマから、前記固体材料に含まれる水素濃度を定量的に分析する方法及び装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、本願の発明者らは、大気圧ヘリウム雰囲気中においてジルカロイの表面にTEACO2レーザー及びYAGレーザーを照射してレーザープラズマ分光分析を行い、水素プラズマ発光強度とジルカロイ中の水素濃度との間に相関関係があることを確認しており、大気圧下のヘリウム雰囲気中での二重パルスレーザー照射プラズマ分光分析法による水素濃度の定量分析手法を報告している(非特許文献1から3参照)。
【0003】
ところで、上記したようなレーザーを用いた水素分析装置及び方法において、固体材料に含まれる水素濃度を正確に分析するには、当該固体材料に含まれる水素以外の水素を排除する必要がある。このような水素の存在源は主として水分であることから、上記した従来の水素分析装置及び方法においては、固体材料を密閉容器内に収容して大気から隔離するとともに、前記密閉容器を加熱して壁面に付着した水分を蒸発させつつ密閉容器内の真空引きを行い、さらに、前記密閉容器内を水素含有量0の不活性ガスで満たして、水分由来の水素を除去している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-28580号公報
【0005】

【非特許文献1】福元謙一、「レーザー光による原子炉材料中のオンサイト水素分析技術の開発」原子力システム研究開発事業成果報告会資料集、独立行政法人科学技術振興機構、平成20年1月22日
【非特許文献2】Muliadi Ramli et al.,"Hydrogen analysis in solid samples by utilizing He metastable atoms induced by TEA CO2 laser plasma in He gas at 1 atm", Spectrochimica Acta Part B 62, ELSEVIER, 2007.10.10, pp.1379-1389
【非特許文献3】Muliadi Ramli et al.,"New Method of Laser Plasma Spectroscopy for Metal Samples Using Metastable He Atoms Induced by Transversely Excited Atomspheric-Pressure CO2 Laser in He Gas at 1 atm", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.3, 2008, pp.1595-1601
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このように徹底的な水分の排除を行っても、測定対象の固体材料に含まれる水素以外の水素が検出されていることが、本願発明者によって確認された。
図8は、上記した従来の水素分析装置を用いた場合において、固体材料に含まれる水素濃度(ppm)とHα発光強度との関係を示すグラフである。このグラフからは、固体材料に含まれる水素濃度が0になってもHα発光強度が0にはならないことがわかる。このことは、従来の水分除去作業では、残留水分を0にすることは困難であることを示している。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、固体材料に含まれる水素以外の水素の影響をほぼ完全に除去して、当該固体材料に含まれる水素濃度の定量分析を正確に行うことができる水素分析装置及びその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためには、まず、固体材料に含まれる水素以外の水素が、どこに含まれるのかを特定する必要がある。
そのため、本発明の発明者は、図9に示すような実験装置を作製して実験を行った。
【0008】
Zr(ジルコニウム)で形成された固体材料としての金属材料Sは、含有水素濃度が0ppmのものを用いる。また、金属材料Sとしては、レンズ200によって集光されるレーザー光のスポット径とほぼ同じ直径又はこれよりも若干小さい直径を有する細線状のものを用いた。金属材料Sは、加熱して表面の水分を予め蒸発させているが、残留した水分はレーザー光の予備照射により飛散・除去することができ、かつ、線径を小さく(1mm程度)することで、前記予備照射によっても除去できなかった水分由来の水素の影響はほぼ0にできると推測した。
【0009】
密閉容器100は、従来の分析方法と同様に、加熱と真空引きにより壁面や内部の水分を除去した上で、ヘリウムガス等の不活性ガスを充填する。当該不活性ガスとしては、水素を含ないものでなければならないことは勿論である。
この実験装置で、密閉容器100内に配置した金属材料Sの先端に、金属材料Sの軸線と同方向から、レンズ200で集光したレーザー光を照射する。これにより金属材料Sの先端にプラズマが発生し(プラズマが発生した領域を符号Pで示す)、このプラズマを図示しない分光分析器で分析して水素濃度を測定した。
【0010】
この実験装置を用いた実験の結果、水分由来の水素が検出された。このことから、金属材料Sの周囲の雰囲気中に水分由来の水素が残留していて、この水素がプラズマ化した領域Pに侵入して検出されたものと推測できる。
【0011】
この推測から、本発明の発明者は、金属材料Sの周囲の雰囲気中に含まれる水素が、プラズマ化した領域Pに侵入しないようするべく、プラズマ化した領域Pと前記雰囲気との間に隔離手段を設ければよいことに想到した。
【0012】
そのための一つの方法は、プラズマが発生する領域の内外に圧力差を設けること、すなわち、固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射して前記測定部位にプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析方法において、前記固体材料表面の測定部位に向けて不活性ガスを噴射するガス供給工程と、前記測定部位に向けてレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射工程と、レーザー照射中においてプラズマから発せられる光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析工程とを有し、前記ガス供給工程では、プラズマが発生した領域の内側で前記不活性ガスを噴射させ、プラズマが発生した領域の圧力を周囲の雰囲気よりも高圧にするすることである。
この方法によれば、プラズマ化する領域の圧力が測定部位の周囲の圧力よりも高いので、水分が前記領域に浸入しにくくなる。
【0013】
他の方法は、プラズマが発生する領域とその周囲との間に壁を設けて隔離すること、すなわち、固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射して前記測定部位にプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析方法において、前記測定部位を収容でき、プラズマが発生する領域の大きさに可能な限り近い大きさのチャンバを準備する工程と、このチャンバ内に前記測定部位を配置する工程と、前記チャンバ内に配置された不活性ガスの供給口から前記チャンバ内に不活性ガスを供給するガス供給工程と、前記測定部位に向かってレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射工程と、レーザー照射中においてプラズマから発せられる光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析工程とを有する方法とすることである。
この方法では、プラズマ化する領域がチャンバによって周囲の雰囲気から隔離されているので、前記雰囲気中の水分が前記領域に浸入することはない。また、チャンバの容量が小さいので、たとえチャンバの加熱と真空引きによっても水分が完全に除去できなくても、残留する水分の絶対量がきわめて微量であるため、固体材料の水素濃度分析に与える影響をきわめて小さくすることができる。
なお、上記の方法はそれぞれ単独で実施しても効果が得られるが、これら二つの発明を組み合わせることで、より高精度に水素濃度分析を行うことができる。
【0014】
本発明の水素分析装置は固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射して前記測定部位にプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析装置において、固体材料表面の測定部位に向けて不活性ガスを噴射するガス供給手段と、前記測定部位に向かってレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射手段と、レーザー照射中においてプラズマから発せられる光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析手段とを有し、前記ガス供給手段の不活性ガスの供給口を前記プラズマが発生する領域の内側に配置し、プラズマが発生する領域における前記不活性ガスの圧力を、噴射により周囲の雰囲気の圧力よりも高圧にする構成としてある。
この構成によれば、プラズマ化する領域の圧力が測定部位の周囲の圧力よりも高いので、水分が前記領域に浸入しにくくなる。
この場合、前記ガス供給手段から前記測定部位に前記不活性ガスを供給するガス供給口は、前記ガス供給手段から前記測定部位に前記不活性ガスを供給するガス供給口を、前記測定部位を中心とする円周上に複数配置するとよい。また、前記ガス供給手段から前記測定部位に前記不活性ガスを供給するガス供給口に対向して遮蔽部材を設けてもよい。
このようにすることで、プラズマ化する領域の不活性ガスの圧力を容易に高めることができる。
【0015】
本発明の水素分析装置の他の実施形態は固体材料表面の測定部位に不活性ガスを供給しつつレーザーを照射してプラズマを発生させ、このプラズマの光から前記測定部位の水素を分析する固体材料の水素分析装置において、前記測定部位を収容でき、プラズマが発生する領域の大きさに可能な限り近い大きさのチャンバと、前記チャンバに不活性ガスを供給するとともに前記不活性ガスの供給口が前記チャンバの内側に配置されたガス供給手段と、前記チャンバに収容された前記測定部位に向かってレーザーを照射することで前記測定部位にプラズマを発生させるレーザー照射手段と、レーザー照射中においてプラズマから発せられた光を測定して、測定された水素の発光波長の発光強度に基づいて前記固体材料に含まれる水素濃度を分析する分析手段とを有する構成としてある。
この構成によれば、プラズマが発生した領域がチャンバによって周囲の雰囲気から隔離され、かつ、チャンバの内容積が十分に小さいので、残留することのある水分の絶対量も微量である。そのため、プラズマが発生した領域に前記雰囲気中の水分由来の水素が侵入することがない。

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラズマが発生した領域の不活性ガスの圧力を周囲の雰囲気の圧力よりも高い圧力としたり、プラズマが発生した領域を前記雰囲気からチャンバで隔離することで、前記雰囲気中の水素がプラズマが発生した領域に侵入することがなく、固体材料に含まれる水素濃度を精度よく、かつ正確に分析することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる水素分析装置の概略図、図2は、レーザー照射時における測定部位の拡大図である。
水素分析装置1は、分析する固体材料である金属材料Sを載置する載置台3と、この載置台3に載置された金属材料Sの測定部位にレーザーを照射するレーザー照射手段2と、金属材料Sの前記測定部位に向けてからヘリウムや窒素,アルゴン等の不活性ガスを供給するガス供給手段4と、レーザー照射により発生したプラズマの光を受光して水素濃度の分析を行う分析手段5とを有している。
【0018】

本発明に用いることのできる金属材料Sは、表面の所定の測定部位がレーザー照射手段2から出力されるレーザー光の光軸に一致するように位置決めされている。金属材料Sとしては、水素を内蔵する金属材料であれば、分析対象とすることができる。特に、水素による脆化が問題となるジルカロイ等のジルコニウム系材料、チタン系材料、鉄鋼等の鉄系材料といった金属材料を分析する場合に好適である。
【0019】

[レーザー照射手段] レーザー照射手段2は、パルス発生器22からのパルス信号に生成されたパルス状のレーザー光を、出力部21から金属材料Sの測定部位に向けて出力する。 出力されるレーザー光は、金属材料S表面にアブレーションを生じない程度で表面近傍にプラズマを発生させるエネルギ密度を有するものである。例えば、炭酸ガスレーザーを用いる場合には、パワー密度108~5×109W/cm2でパルス幅50~500ナノ秒のレーザー照射装置を用いればよい。なお、こうしたレーザー光を照射することが可能であれば、炭酸ガスレーザー以外のレーザー、例えばYAG (イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーを用いることができる。なお、炭酸ガスレーザーを用いて不活性ガス中の前記測定部位にレーザー光を照射することで前記測定部位近傍の不活性ガスがプラズマ化し、YAGレーザーを用いてレーザー光を照射することで前記測定部位の金属材料Sがプラズマ化する。
【0020】
[ガス供給手段] ガス供給手段4は、ヘリウムや窒素,アルゴン等の不活性ガスを収容したガスボンベ42と、このガスボンベ42から供給された不活性ガスを金属材料Sの測定部位に向けて噴射する供給管41とを有していて、供給管41の途中部位に設けられた弁43により前記測定部位に供給される不活性ガスの量が制御されるようになっている。この制御は、オペレータが手動で行うようにしてもよいが、コントローラ6によって自動的に行うようにしてもよい。
【0021】

供給管41の先端のガス噴射口41aは、図2に示すように、レーザー光が照射される測定部位(図2において黒塗りの部分)の近傍に配置される。測定部位の中心とガス噴射口41aとの間の距離Lは、レーザー光の照射によってプラズマ化される領域Pの不活性ガスの圧力が、領域Pの外側の雰囲気の圧力よりも高くなるようにする。このように領域Pの圧力をこれより外側の雰囲気の圧力より高くすることで、雰囲気中の水分の領域P内への侵入を阻止することができる。
【0022】

距離Lは、発生するプラズマの大きさ、噴射される不活性ガスの単位時間当たりの供給量及びガス噴射口41aの口径、測定部位の周囲に設置するガス噴射口41aの数等の条件によって決定されが、水素濃度の分析に支障を与えない範囲内で前記測定部位に可能な限り近いものであるのが好ましい。具体的には、少なくとも照射されるレーザー光の半径よりも僅かに大きい程度(レーザー光の直径が1.0mmの場合は、0.5mm~1mm程度)とするのがよい。 ガス噴射口41aの数は、領域Pの圧力をこれより外側の雰囲気の圧力より高くすることができるのであれば、一つであってもよいし、複数であってもよい。 ガス噴射口41aを複数設ける場合は、一つのガス供給手段4から前記複数のガス噴射口41aに不活性ガスが分配・供給されるようにしてもよいし、図示の例のように、複数のガス供給手段4から複数のガス噴射口41aに不活性ガスが供給されるようにしてもよい。
【0023】

図3(a)~(d)は、ガス噴射口41aの配置例を示す概略平面図である。中央の黒い点は測定部位、つまりレーザー光が照射される部位を表している。 ガス噴射口41aを複数設ける場合は、ガス噴射口41aの口径及び単位時間当たりのガス供給量を同じにするとともに、図3(a),(b)に示すように、前記測定部位を中心とする半径L(Lについては図2参照)の同一の円周R上に配置するのが好ましい。なお、複数のガス噴射口41aの間隔は、図示の例のように均等間隔としてもよいが、領域Pの圧力をこれより外側の雰囲気の圧力より高くすることができるのであれば、領域Pの圧力をこれより外側の雰囲気の圧力より高くすることができるのであれば、不均等であってもよい。 図3(a)に示す例では、二つのガス供給管41の二つのガス噴射口41aを対向して配置し、図3(b)に示す例では、四つのガス供給管41のガス噴射口41aを対向して配置している。
【0024】
図3(c)の例では、ガス供給管41を直角に配置して二つのガス噴射口41aが直交するように配置している。また、この例では、二つのガス噴射口41aのそれぞれに対向するように、逆L字形の遮蔽板45を設けている。このような遮蔽板45は、ガス噴射口41aから噴射された不活性ガスが衝突することで拡散を阻止し、ガス噴射口41aを対向して配置した場合と同等の効果が期待できる。 従って、このような遮蔽板45を利用すれば、ガス噴射口41aが一つでも領域Pの圧力を高めることは可能で、例えば、図3(d)に示すように、コの字形の遮蔽板45の内部に測定部位を配置し、この内部に向けて一つのガス噴射口41aから不活性ガスが噴射されるようにしてもよい。
【0025】

[分析手段] 分析手段5は、金属材料Sの測定部位の近傍に生じるプラズマの発光状態を測定するための光ファイバ51と、この光ファイバ51に入射した光が入力され、入力された光を分析する分析器52と、この分析器52による分析結果を送信して表示する表示部53とを有している。
【0026】

分析器52は、入力された光を分光して波長毎の発光強度を測定し、後述するように、水素の発光波長(Hα;656.2nm)及び酸素の発光波長(777.1nm)の発光強度に基づいて測定部位に含まれる水素を定量的に分析する。 なお、光ファイバ51の代わりに所定範囲の光波長のみを通過させる光学フィルタを装着した光電増倍管を設けて、水素及び酸素の発光波長を含む範囲の波長の光のみを光電増倍管に入射させて測定し、分析するようにしてもよい。
【0027】

[作用の説明] 上記構成の水素分析装置1の作用を、本発明の水素分析方法の一実施形態とともに説明する。 レーザー光を金属材料S表面の測定部位に照射するに先立ち、載置台3,金属材料S及びガス供給管41等を加熱し、水分を除去する。また、前記測定部位にレーザーの予備照射を行い、前記測定部位に残存している可能性のある微量の水分を飛ばす。 次いで、弁43を開いて、ガス供給管41のガス噴射口41aから測定部位に向けて不活性ガスを噴射させる。不活性ガスの供給量が規定値に達したら、レーザー光を金属材料S表面の測定部位に照射する。これにより、測定部位の近傍にプラズマが発生する。
【0028】
例えば炭酸ガスレーザーを用いた場合、プラズマは高温状態になるため、金属材料Sの表面がプラズマの温度によりわずかに溶融して溶融領域が形成される。溶融領域に含まれる水素は、他の原子に比べて軽量であるため、溶融領域から容易に離脱することができプラズマの中に飛散するようになる。プラズマ中には不活性ガスの準安定状態が形成されているため、飛散した水素原子が準安定状態に衝突して励起され発光するようになる。一方、金属材料Sに含まれる母体元素等の水素以外の原子についてアブレーションが生じないため、プラズマ中に飛散することはない。また、プラズマの発生領域(図2及び図3において符号Pで示す領域)の圧力は、その外側の雰囲気の圧力よりも高いから、雰囲気中の水素がプラズマ中に侵入することはない。そのため、プラズマの発光現象を分析すれば、測定部位に含まれる水素を精度よく、かつ正確に定量分析することができる。
【0029】
[第二の実施形態]
図4は本発明の水素分析装置の第二の実施形態である。なお、先の実施形態と同一部位,同一部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。 この実施形態の水素分析装置1′では、密閉可能な密閉容器8内に載置台3を設け、密閉容器8の上部にレーザー光が通過する窓部81を設けている。ガス供給管41の先端が密閉容器8の内部に導入され、先の実施形態と同様に、載置台3に載置された金属材料Sの測定部位の近傍に配置される。 密閉容器8内の圧力を一定に保つために、密閉容器8には排気管83が接続され、密閉容器8の外部に配置された吸気ポンプ85に弁84を介して接続されている。
【0030】
また、密閉容器8には密閉容器8内の圧力を検知する圧力センサ82が設けられていて、この圧力センサ82からの検知信号に基づいて、コントローラ6が弁84の開度を制御して、密閉容器8内の圧力が一定に維持されるようになっている。これにより、密閉容器8内には一定圧力の不活性ガスが充填されることになる。密閉容器8内の圧力は大気圧と同じかそれより低い減圧状態に設定するとよい。また、真空に近い低圧状態に設定してもよい。特に、不活性ガスとしてHeを用い、レーザーとしてYAGレーザーを用いる場合は、10Torr(1.333×103Pa)付近でプラズマの発光効率が高くなることから、10Torr程度の低圧にするのが好ましい。
この実施形態においても、測定部位の近傍に配置したガス噴射口から不活性ガスを噴射して少なくとも不活性ガスが、プラズマが発生する領域Pの圧力を密閉容器8内の他の部分の圧力よりも高くする。
この実施形態では、密閉された密閉容器8を水素含有量が0の不活性ガスで満たすことができるので、密閉容器8内の雰囲気中の水素がプラズマ中に侵入する可能性をより小さくすることができる。
【0031】
[第三の実施形態]
図5に本発明の第三の実施形態を示す。図5では、測定部位の近傍を拡大図で示している。
先の実施形態では、測定部位の近傍にガス供給管41のガス噴射口41aを配置し、ガス噴射口41aから噴射される不活性ガスにより、少なくともプラズマが発生する領域Pの圧力を、その周囲の雰囲気の圧力より高くすることで、前記雰囲気中の水素がプラズマ中に侵入しないようにしていた。
【0032】
この実施形態では、プラズマが発生する領域Pの大きさよりも僅かに大きいチャンバ9を準備し、このチャンバ9内に前記測定部位を収容するとともに、チャンバ9内にガス供給管41を導入して、その先端のガス噴射口41aから前記測定部位に向けて不活性ガスを供給するようにしている。
チャンバ9の形状は立方形状でも半球状でよい。また、チャンバ9の大きさは、レーザーの種類及び出力、金属材料Sの種類、不活性ガスの種類及び測定部位周辺の不活性ガスの圧力等の条件によって異なるが、例えば、出力500mJの炭酸ガスレーザーを用いて大気圧と同程度のHe雰囲気中でジルコニア(Zr)にレーザー光を照射した場合のプラズマの平均直径が1cm程度であることから、1cmを目安に可能な限り小さいチャンバ9を準備するとよい。
チャンバ9は、第二の実施形態の密閉容器8と同様に密閉できるのが好ましく、レーザー光が通過する窓91と、チャンバ9内の圧力を一定に保つための排気管93とが設けられている。
【0033】
この実施形態では、チャンバ9により測定部位及びプラズマ化する領域Pを周囲の雰囲気から遮蔽することで、前記雰囲気からプラズマ中に水素が侵入しないようにする。また、チャンバ9の内部容積が微小であること及びチャンバ9の内部が水素含有量0の不活性ガスで満たされることから、チャンバに残留することのある水素の量を極めて微量にすることができ、測定部位に含まれる水素濃度を精度よく、かつ正確に分析することができる。
なお、この実施形態においては、先の実施形態と同様にガス噴射口41aを前記測定部位の近傍に配置し、プラズマ化する領域Pの圧力をチャンバ9内の雰囲気の圧力よりも高くすることで、前記雰囲気中からプラズマ中への水素の侵入をさらに抑制することができる。
【0034】
[実施例1]
第二の実施形態の水素分析装置1′を使って、本発明の実証実験を行った。設定した条件は以下のとおりである。
なお、金属材料としては、含有水素濃度0ppmのジルコニア(Zr)を用いた。また、密閉容器8内の雰囲気の圧力は大気圧より僅かに高いものとした。
(1)ガス噴射口
口径 1.5mm
数 1個
測定部位の中心からの距離L L=0.5mm
ガスの種類 He
ガスの流量 7リットル/分
(2)レーザー
レーザーの種類 YAGレーザー
パルス幅 8ns
エネルギ 100mJ
(3) 分光器
多チャンネル型分光器(ATAGO Macs-320)
【0035】
[比較例1]
ガスの流量を2リットル/分とした以外は上記と同じ条件とした。この程度の流量では、プラズマ化する領域Pは周囲の雰囲気の圧力とほぼ同じ状態であると考えられる。
【0036】
上記の条件の下での実験結果を図6に、比較結果を図7のグラフに示す。図6及び図7において、(a)のグラフにおける水素(H)の発光波長(656.2nm)近傍を、それぞれ(b)に拡大して示す。
図6のグラフに示すように、水素(H)の発光波長(656.2nm)においてピークがみられず、水分由来の水素が検出されていないことがわかる。 図7のグラフでは、水素(H)の発光波長(656.2nm)においてピークがみられ、水分由来の水素が検出されている。 以上の結果から、プラズマが発生する領域Pの圧力を雰囲気の圧力より高くすることで、前記雰囲気から水分由来の水素が、プラズマが発生した領域Pに侵入しないようにできることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、水素による脆化が問題となるジルカロイ等のジルコニウム系材料、チタン系材料、鉄鋼等の鉄系材料といった金属材料を分析する場合に好適であるが、このような金属材料に限らず、他の固体材料、例えばシリコン等の半導体材料や石英等にも適用が可能である。また、コンパクトな装置構成で固体材料にほとんどダメージを与えることがなく、大気圧状態でも測定できるため、原子炉、ビル、橋梁といった構造物の構造材に対して測定することが可能であり、幅広い分野における水素の定量分析に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる水素分析装置の概略図である。
【図2】レーザー照射時における測定部位の拡大図である。
【図3】図3(a)~(d)は、ガス供給口の配置例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の水素分析装置の第二の実施形態である。
【図5】本発明の第三の実施形態にかかり、測定部位の近傍の拡大図である。
【図6】本発明の実施例にかかるグラフである。
【図7】本発明の比較例にかかるグラフである。
【図8】従来の水素分析装置を用いた場合において、固体材料に含まれる水素濃度(ppm)とHα発光強度との関係を示すグラフである。
【図9】固体材料に含まれる水素以外の水素が、どこに含まれるのかを特定するための実験装置の概略図である。
【符号の説明】
【0039】
S 金属材料
1,1′ 水素分析装置
2 レーザー照射手段
3 載置台
4 ガス供給手段
41 ガス供給管
41a ガス噴射口
42 ガスボンベ
5 分析手段
6 コントローラ
8 密閉容器
9 チャンバ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8